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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】溶融ガラス撹拌チャンバ
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/187 20060101AFI20230424BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
C03B5/187
C03C3/093
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020562064
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 KR2019001227
(87)【国際公開番号】W WO2019151747
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】10-2018-0011606
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンビン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ドンウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウイホ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョンジン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヨンギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジヒョン
(72)【発明者】
【氏名】オム,チュチョン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,チョンス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンウォン
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-041264(JP,A)
【文献】特開2014-009137(JP,A)
【文献】特開2010-126432(JP,A)
【文献】特表2013-512184(JP,A)
【文献】特表2012-504096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/00-5/44
C03B 7/08-7/098
C03C 1/00-14/00
C04B 38/00-38/10
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌チャンバであって、
溶融ガラスを受け入れるように構成された撹拌容器;
前記撹拌容器上に位置づけられたカバー;及び
前記カバーを通過し、前記溶融ガラスを撹拌するように構成されたスターラー
を備えており、
前記カバーが、カバー本体と、該カバー本体の表面を覆う無機セラミック層とを含み、
前記カバー本体は、多孔質であり、凹部と、該凹部内に配置された熱源とを含み、
前記熱源は、無機フィラーに囲まれた前記凹部内に保持され、
前記無機セラミック層が、前記カバー本体の少なくとも上面及び底面と、前記無機フィラーの露出部分とを覆っている、
撹拌チャンバ。
【請求項2】
前記無機セラミック層がガラス層を含む、請求項1に記載の撹拌チャンバ。
【請求項3】
前記ガラス層が、80質量%~90質量%のシリカ(SiO、1質量%~3質量%の酸化ホウ素(B、2質量%~5質量%のアルミナ(Al、1質量%~3質量%の酸化ナトリウム(NaO)、2質量%~4質量%の酸化カリウム(KO)、2質量%~6質量%の酸化亜鉛(ZnO)、及び0.1質量%~2質量%のジルコニア(ZrO)を含む、請求項2に記載の撹拌チャンバ。
【請求項4】
前記無機フィラーがセメントである、請求項1~3のいずれか一項に記載の撹拌チャンバ。
【請求項5】
前記カバーが、前記カバー本体の少なくとも上面及び底面を覆う貴金属クラッド層、および、該貴金属クラッド層の下面に設けられた耐火酸化物層をさらに含み、該貴金属クラッド層が前記無機セラミック層上に設けられている、請求項1~のいずれか一項に記載の撹拌チャンバ。
【請求項6】
前記カバーが、前記スターラーが通過する中心孔を有しており、かつ、境界領域に沿って第1の本体と第2の本体とに分割されており、
前記第1の本体が、長手方向に前記境界領域に沿って水平に突出するシート部分を含む、
請求項1~のいずれか一項に記載の撹拌チャンバ。
【請求項7】
前記シート部分が、前記第2の本体と少なくとも部分的に重なっている、請求項に記載の撹拌チャンバ。
【請求項8】
前記シート部分が、前記撹拌容器の内側部分に面している前記第1の本体の下側部分に設けられている、請求項に記載の撹拌チャンバ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2018年1月30日出願の韓国特許出願第10-2018-0011606号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、溶融ガラスから形成されたガラスシートの欠陥を低減することができる溶融ガラス撹拌チャンバに関する。
【背景技術】
【0003】
平坦なガラスシートの製造装置は、溶融ガラスを撹拌するための撹拌装置を含む。
【0004】
撹拌装置は、溶融ガラスを収容するように構成された撹拌容器、該撹拌容器を覆うように構成されたカバー、及び撹拌容器内に配置された撹拌翼を備えている。時間の経過とともに、カバーの内側に配置された白金をベースとした熱源が大気中の酸素と反応する。酸化された白金は、望ましくないことに、白金凝縮物の形態でガラスに取り込まれ、したがってガラスシートに欠陥を生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、カバーから生じる欠陥を低減することができる溶融ガラス撹拌チャンバを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つ以上の実施形態によれば、撹拌チャンバは、溶融ガラスを受け入れるように構成された撹拌容器;該撹拌容器上に位置づけられたカバー;及び、該カバーを通過し、溶融ガラスを撹拌するように構成されたスターラーを備えることができ、該カバーは、多孔質のカバー本体と、該カバー本体の表面を覆う無機セラミック層とを含む。
【0007】
無機セラミック層はガラス層を含みうる。ガラス層は、約80質量%~約90質量%のシリカ(SiO)、約1質量%~約3質量%の酸化ホウ素(B)、約2質量%~約5質量%のアルミナ(Al)、約1質量%~約3質量%の酸化ナトリウム(NaO)、約2質量%~約4質量%の酸化カリウム(KO)、約2質量%~約6質量%の酸化亜鉛(ZnO)、及び約0.1質量%~約2質量%のジルコニア(ZrO)を含みうる。
【0008】
カバー本体は、凹部と、該凹部内に配置された熱源とを含みうる。熱源は、無機フィラーに囲まれた凹部に保持することができる。無機セラミック層は、カバー本体の少なくとも上面及び底面と、無機フィラーの露出部分とを覆うことができる。無機フィラーはセメントでありうる。
【0009】
カバーは、カバー本体の少なくとも上面及び底面を覆う貴金属クラッド層をさらに含んでよく、該貴金属クラッド層は無機セラミック層上に設けられる。カバーは、撹拌容器の内側部分に面している貴金属クラッド層の表面を覆う耐火酸化物層をさらに備えることができる。
【0010】
カバーは、スターラーが通過する中心孔を有することができ、境界領域に沿って第1の本体と第2の本体とに分割することができ、第1の本体は、長手方向に境界領域に沿って水平に突出するシート部分を含む。シート部分は、第2の本体と少なくとも部分的に重なり合うことができる。シート部分は、撹拌容器の内側部分に面している第1の本体の下側部分に設けることができる。
【0011】
1つ以上の実施形態によれば、撹拌チャンバは、溶融ガラスを受け入れるように構成された撹拌容器;該撹拌容器上のカバー;及び、該カバーを通過し、溶融ガラスを撹拌するように構成されたスターラーを備えることができ、該カバーは、スターラーが通過する中心孔を有する、多孔質のカバー本体を含み、該カバー本体は、境界領域に沿って第1の本体と第2の本体とを含み、該第1の本体は、長手方向に境界領域に沿って水平に突出するシート部分を含む。
【0012】
シート部分は、第2の本体と少なくとも部分的に重なり合うことができる。第1の本体及び第2の本体の各々の表面は、無機セラミック層で覆うことができる。第1の本体の下側部分は貴金属クラッド層を含み、シート部分は貴金属クラッド層の表面に取り付けられる。
【0013】
1つ以上の実施形態によれば、撹拌チャンバは、溶融ガラスを受け入れるように構成された撹拌容器;該撹拌容器上のカバー;及びカバーを通過し、溶融ガラスを撹拌するように構成されたスターラーを備えることができ、該カバーは、カバーの少なくとも下面に貴金属クラッド層を含み、溶融するガラスに面している貴金属クラッド層の表面は、約3質量%~約5質量%のCaO、約0.2質量%~約1質量%のSiO、約0.2質量%~約1質量%のAl、約0.5質量%~約3.5質量%のHfO、及び残余のZrOを含む耐火酸化物層によって覆われている。
【0014】
耐火酸化物層は、約0.01質量%~約0.3質量%のFe及び約0.01質量%~約0.9質量%のMgOをさらに含みうる。
【0015】
耐火酸化物層の厚さは、約2ミル(約0.0508mm)~約8ミル(約0.2032mm)でありうる。
【0016】
カバーは、撹拌本体を通過する中心孔を有するカバー本体を備えることができ、該カバーは、中心孔を通って延びる境界領域に沿って第1の本体と第2の本体とに分割されており、該第1の本体及び第2の本体の各々の表面は、無機セラミック層によって覆われ、境界領域を横切って水平に突出するシート部分が第1の本体に設けられる。
【0017】
本開示の実施形態は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明からより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の一実施形態によるガラス製造装置の略図
図2】本開示の一実施形態による溶融ガラス撹拌チャンバの斜視図
図3】本開示の一実施形態によるカバーの第1の本体の斜視図
図4図3の線IV-VI’に沿った断面図
図5図4の線V-V’に沿った断面に関して、カバー本体と無機セラミック層との間の界面を画成する方法を概念的に示すグラフ
図6】本開示の別の実施形態によるカバーの第1の本体の側面断面図
図7A】本開示の実施形態によるカバー用の第1の本体を製造する方法を逐次的に示す側面断面図
図7B】本開示の実施形態によるカバー用の第1の本体を製造する方法を逐次的に示す側面断面図
図7C】本開示の実施形態によるカバー用の第1の本体を製造する方法を逐次的に示す側面断面図
図8】本開示の別の実施形態によるカバーの第1の本体の側面断面図
図9A】本開示の一実施形態によるカバーの第1の本体の表面に耐火酸化物層を形成する方法を示す斜視図
図9B】本開示の一実施形態によるカバーの第1の本体の表面に耐火酸化物層を形成する方法を示す斜視図
図10】本開示の一実施形態によるカバーの第1の本体を示す図
図11A】本開示の他の実施形態によるカバーの第1の本体の断面図
図11B】本開示の他の実施形態によるカバーの第1の本体の断面図
図12】本開示の一実施形態による、無機セラミック層の性能を試験するための試験装置を示す概念図
図13】実施例1及び比較例1のヘリウムガス漏洩試験の実施結果を示すグラフ
図14A】実施例2及び比較例2における垂下比較試験のための試料の分解斜視図
図14B】実施例3及び比較例3における垂下比較試験のための試料の分解斜視図
図15】実施例2及び3並びに比較例2及び3における垂下比較試験の実施結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
これより、添付の図面を参照して、例示的な実施形態を以下により充分に説明する;しかしながら、特許請求の範囲は異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、例示的な実装形態を当業者に十分に伝えるように提供されている。
【0020】
図において、層及び領域の寸法は、説明を明確にするために誇張されている場合がある。層又は要素が別の層又は要素の「上」にあると称される場合、それは他方の層又は要素の上に直接存在してもよく、あるいは、介在層が存在してもよいことも理解されよう。加えて、層が2つの層の「間にある」と称される場合、それは2つの層の間の唯一の層であってもよく、あるいは、1つ以上の介在層が存在してもよいこともまた理解されよう。同様の参照番号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0021】
本明細書で用いられる場合、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目の1つ以上のありとあらゆる組合せを含む。例えば、「又は」という用語は排他的ではなく、「及び/又は」と同じ意味を有すると理解することができる。「~の少なくとも1つ」などの表現は、要素のリストに付随する場合、その要素のリスト全体を修飾するのであって、リストの個々の要素は修飾しない。
【0022】
「第1」、「第2」などの用語は、さまざまな構成要素を説明するために使用されうるが、このような構成要素は、上記の用語に限定されてはならない。上記の用語は、ある構成要素を別の構成要素と区別するためにのみ用いられる。例えば、以下で論じられる第1の構成要素は、本開示の教示から逸脱することなく、第2の構成要素と呼ぶことができ、同様に、第2の構成要素は、第1の構成要素と呼ぶことができる。
【0023】
本明細書で用いられる用語は、単に特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、限定することは意図されていない。文脈で明確に異なる意味を有しない限り、単数で使用される表現には複数での表現が包含される。本明細書で用いられる場合、例えば、「含む」、「含有する」、「含んでいる」、及び/又は「含有している」などの用語は、述べられた特徴、整数、工程、動作、要素、成分、及び/又はそれらのグループの存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、成分、及び/又はそれらのグループのうちの1つ以上の存在又は追加を排除するものではないことが理解されよう。
【0024】
特に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本願が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書に明示的に定義されていない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されないことがさらに理解されよう。
【0025】
本明細書に記載されるすべての方法の動作は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。実施形態は、記載された動作の順序に限定されない。例えば、2つの連続して記載されたプロセスは、実質的に同時に実行してもよく、あるいは、記載された順序とは逆の順序で実行してもよい。
【0026】
よって、例えば製造技術及び/又は許容誤差の結果として、図の形状からの変化が予想される。したがって、実施形態は、本明細書に示される領域の特定の形状に限定されると解釈されるべきではなく、例えば製造に起因する、形状の偏差を含むべきである。
【0027】
図1は、さまざまな実施形態による例示的なガラス製造装置1の略図である。
【0028】
図1を参照すると、ガラス製造装置1は、溶融容器100、清澄容器200、溶融ガラス撹拌チャンバ300、送達容器500、及び成形装置700を備えることができる。幾つかの実施形態によれば、ガラス製造装置1は、シートタイプのガラスを製造することができるが、さらなる実施形態では、ガラス製造装置は、ガラス棒、ガラス管、ガラス容器、及びガラス外囲器を含むさまざまな他のガラス物品を製造することができる。
【0029】
溶融容器100、清澄容器200、溶融ガラス撹拌チャンバ300、送達容器500、及び成形装置700は、直列に配置されたガラス製造プロセスステーションとすることができる。ガラス製品を製造するための所定のプロセスが、これらのステーションで実行される。幾つかの実施形態によれば、ガラス製造装置によって実行される製造プロセスは、ダウンドロープロセス、スロットドロー溶融成形プロセス(二重溶融プロセスを含む)、フロートガラス成形プロセス、及び圧延プロセスを含みうる。
【0030】
幾つかの実施形態によれば、溶融容器100、清澄容器200、溶融ガラス撹拌チャンバ300、送達容器500、及び成形装置700の各々は、白金、又は白金-ロジウム、白金-イリジウム、及びそれらの組合せなどの白金含有金属を含みうる。幾つかの実施形態によれば、溶融容器100、清澄容器200、溶融ガラス撹拌チャンバ300、送達容器500、及び成形装置700の各々は、パラジウム、レニウム、ルテニウム、及びオスミウム、並びに他の金属を含みうる。幾つかの実施形態によれば、成形装置700は、セラミック材料又はガラスセラミック材料を含みうる。
【0031】
溶融容器100は、貯蔵容器10からバッチ材料11を受け入れる。バッチ材料11は、駆動装置15が備わったバッチ送達装置13によって溶融容器100に挿入される。選択コントローラ17は、矢印a1で示されるように、所望の量のバッチ材料11を溶融容器100に導入するように駆動装置15が動作するように構成することができる。幾つかの実施形態によれば、ガラスレベルプローブ19を使用して、スタンドパイプ21内の溶融ガラスMGのレベルを測定し、測定された溶融ガラスMGのレベルを、通信回線23を介してコントローラ17に送信することができる。
【0032】
幾つかの実施形態によれば、清澄容器200は、第1の導管150によって溶融容器100に接続される。第1の導管150は、溶融ガラスMGが流れる通路を含む。以下に記載される第2及び第3の導管250及び350もまた、溶融ガラスMGが流れる通路を提供する。第1の導管150は、導電性を有し、高温条件で使用可能な材料を含みうる。幾つかの実施形態によれば、第1の導管は、例えば、白金、白金-ロジウム、白金-イリジウム、又はそれらの組合せなどの白金含有金属を含みうる。幾つかの実施形態によれば、第1から第3の導管は、モリブデン、パラジウム、レニウム、タンタル、チタン、タングステン、ルテニウム、オスミウム、ジルコニウム、又はそれらの合金、及び/又は二酸化ジルコニウムを含みうる。
【0033】
清澄容器200は、清澄管として機能する。清澄容器200は溶融容器100の下流に配置される。清澄容器200は、溶融容器100から溶融ガラスMGを受け入れる。幾つかの実施形態によれば、高温プロセスを清澄容器200内で実行して、溶融ガラスMGからブリスタ(すなわち、ガス状含有物)を除去することができる。幾つかの実施形態によれば、清澄容器200は、溶融ガラスMGを加熱することによって溶融ガラスMGが清澄容器200を通過する間に、溶融ガラスMGからブリスタを除去するように構成される。幾つかの実施形態によれば、溶融ガラスMGが清澄容器200内で加熱されると、溶融ガラスMGに含まれる清澄剤が酸化還元反応を起こし、それによって、酸素及び他のガスを溶融ガラスMGから除去することができる。具体的には、溶融ガラスMGに含まれるブリスタは、酸素、二酸化炭素及び/又は二酸化硫黄を含む可能性があり、清澄剤の還元反応で発生する酸素と結合することができ、したがって、ブリスタの体積が増加しうる。成長したブリスタは、清澄容器200内の溶融ガラスMGの自由表面に向かって浮上し、溶融ガラスMGから分離されうる。ブリスタは、清澄容器200の上部の気相空間を通じて清澄容器200の外部に排出されうる。
【0034】
幾つかの実施形態によれば、溶融ガラス撹拌チャンバ300は、清澄容器200の下流に配置される。溶融ガラス撹拌チャンバ300は、清澄容器200から供給される溶融ガラスMGを均質化することができる。溶融ガラス撹拌チャンバ300にスターラー310を設けて、溶融ガラス撹拌チャンバ300に対して回転させ、その中で溶融ガラスMGを流動させて混合させることができる。スターラー310は、溶融ガラスMGを撹拌して、撹拌チャンバ300を出る前に溶融ガラスMGを均質化することができる。
【0035】
送達容器500は、溶融ガラス撹拌チャンバ300の下流に配置することができる。送達容器500は、第3の導管350によって溶融ガラス撹拌チャンバ300に接続される。出口導管600が送達容器500に接続される。溶融ガラスMGは、出口導管600を通じて成形装置700の入口650に移送される。
【0036】
成形装置700は、送達容器500から溶融ガラスMGを受け入れる。成形装置700は、溶融ガラスMGをシート状のガラス製品へと成形することができるが、さらなる実施形態では、成形装置は、溶融ガラスを、棒、管、外囲器などの他の形状の物体へと成形することができる。例えば、成形装置700は、溶融ガラスMGを連続したガラスリボンへと成形するための溶融延伸機を含みうる。成形装置700に流入した溶融ガラスMGは、成形装置700から溢れ出ることができる。溢れ出た溶融ガラスMGは、重力と、エッジロール750及び牽引ロール800などの適切に配置されたロールの組合せとによって下方向に移動して、溶融ガラスリボンを形成する。
【0037】
図2は、一実施形態による溶融ガラス撹拌チャンバ300の斜視図である。
【0038】
図2を参照すると、溶融ガラス撹拌チャンバ300は、内部に溶融ガラスMGを収容するように構成された撹拌容器320、該撹拌容器320上に配置されたカバー330、及び該カバー330を貫通して溶融ガラスMGを撹拌するように構成されたスターラー310を含みうる。
【0039】
撹拌容器320は、第2の導管250及び第3の導管350に接続されうる。上述のように、溶融ガラスMGは、第2の導管250を通じて撹拌容器320内に導入され、第3の導管350を通じて撹拌容器320の外に排出される。
【0040】
スターラー310は、撹拌棒314と、それに取り付けられた複数のブレード312とを含みうる。
【0041】
カバー330は、撹拌容器320の開口部を覆うように構成される。カバー330の中心には、そこを通じて撹拌棒314が貫通する中心孔338を設けることができる。カバー330の内部には、熱源332を設けることができる。
【0042】
カバー330は、2つの本体、すなわち、第1の本体330a及び第2の本体330bを含むことができる。第1の本体330a及び第2の本体330bは互いに分離されてよく、それらの間に配置され、中心孔338と交差する境界領域を有する。図2は、カバー330が2つの本体に分割される例を示しているが、別の実施形態では、カバー330は3つ以上の本体に分割されてもよい。
【0043】
第1の本体330a及び第2の本体330bは、それぞれ、カバー本体334と、その内部に埋め込まれた熱源332とを含みうる。
【0044】
熱源332は、白金又は白金合金を含み、電力が供給されると熱を発生することができる。具体的には、熱源332は、純粋な白金又は白金合金を含むことができる。白金合金は、白金と、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、及びオスミウム(Os)のうちの少なくとも1つとの合金でありうる。
【0045】
カバー本体334は耐火材を含むことができる。幾つかの実施形態では、カバー本体334は多孔質材料を含むことができる。例として、カバー本体334は、例えばCrystallite HF339(BUCHER Emhart Glass社から入手可能)又はAN485(Saint Gobain社から入手可能)などの材料を含むことができる。
【0046】
図3は、一実施形態によるカバー330の第1の本体330aの斜視図であり、図4は、図3の線IV-IV’に沿った断面を示している。以下の説明は第1の本体330aに焦点を当てているが、この説明が第2の本体330b、又はカバー330が3つ以上の本体に分割される実施形態における追加の本体にも等しく適用できることは、当業者に理解されるであろう。
【0047】
図3及び4を参照すると、カバー本体334には、熱源332を収容するように構成された凹部334Rを設けることができる。凹部334Rは、図4の視線の方向に延在してもよく、あるいは、カバー本体334の円周方向又は半径方向など、別の方向に延在してもよい。凹部334R内に熱源332を収容することができる。
【0048】
熱源332は、無機フィラー334fに囲まれた凹部334Rに埋め込まれ、固定されうる。無機フィラー334fは、例えばセメントでありうる。
【0049】
図4に示されるように、無機フィラー334fは、カバー本体334から少なくとも部分的に露出させることができる。幾つかの実施形態では、無機フィラー334fの表面は、カバー本体334の表面と同一平面上とすることができる。
【0050】
カバー本体334の表面を無機セラミック層336で覆うことができる。一実施形態では、本明細書で用いられる無機セラミック層336は、原子間結合が完全にイオン性であるか又は主にイオン性である金属及び非金属元素間の無機化合物であり、結晶構造、部分的に結晶構造、又は非結晶(すなわち、ガラス)構造を有する材料を含む。幾つかの実施形態では、無機セラミック層336は、主成分としてシリカを含むガラス層でありうる。例えば、無機セラミック層336は、約80質量%~約90質量%のシリカ(SiO)、約1質量%~約3質量%の酸化ホウ素(B)、約2質量%~約5質量%のアルミナ(Al)、約1質量%~約3質量%の酸化ナトリウム(NaO)、約2質量%~約4質量%の酸化カリウム(KO)、約2質量%~約6質量%の酸化亜鉛(ZnO)、及び約0.1質量%~約2質量%のジルコニア(ZrO)を含みうる。
【0051】
幾つかの実施形態では、無機セラミック層336はカバー本体334の上面を覆うことができる。幾つかの実施形態では、無機セラミック層336はカバー本体334の下面を覆うことができる。幾つかの実施形態では、無機セラミック層336は無機フィラー334fの露出面を覆うことができる。
【0052】
高温での酸素との接触に起因して、白金が酸化されて気体のPtOとして失われる可能性があることから、熱源332に含まれる白金との酸素の接触を防止又は低減することが望ましい。望ましくないことに、このような気体のPtOは、撹拌チャンバ300内の溶融ガラスMG中の含有物を含めた凝縮物として、望ましくない位置に堆積する可能性がある。無機セラミック層336は、熱源332に含まれる白金と酸素との接触を防止又は低減することができる。
【0053】
無機セラミック層336の厚さは、約1mmから約5mmの範囲でありうる。無機セラミック層336の厚さが厚すぎると、層336の剥離に起因して粒子が発生する可能性がある。一方、無機セラミック層336の厚さが薄すぎると、熱源332に含まれる白金の酸化を防止する効果が不十分となる可能性がある。
【0054】
一方、カバー本体334が多孔質である場合、カバー本体334と無機セラミック層336との界面が曖昧になる可能性がある。言い換えれば、無機セラミック層336は、多孔質のカバー本体334と接触する領域において、部分的にカバー本体334の細孔内に入り込む可能性がある。
【0055】
図5は、図4の線V-V’に沿って切断した断面に関して、カバー本体334と無機セラミック層336との間の界面を画成する方法を概念的に示すグラフである。図5において、横軸は図4の線V-V’に沿った位置を表し、縦軸は無機セラミック層336を構成する材料とカバー本体334を構成する材料の質量分率を表している。図5を参照すると、カバー本体334と無機セラミック層336の質量分率が、カバー本体334が無機セラミック層336と接触している界面IFの周りで段階的に変化するセクションが存在しうる。カバー本体334と無機セラミック層336の質量分率がそれぞれ約0.5となる仮想的な界面を、カバー本体334と無機セラミック層336との間の界面として定義することができる。
【0056】
図6は、別の実施形態による第1の本体330a’の側面断面図である。図6の第1の本体330a’は、無機セラミック層336aがカバー本体334の下面のみに形成されるという点で、図4の第1の本体330aとは異なっている。したがって、以後、このような相違点を主に説明し、重複する説明は省略する。
【0057】
図6を参照すると、無機セラミック層336aは、カバー本体334の表面全体にわたっては形成されていない。幾つかの実施形態では、無機セラミック層336aは、熱源332が設けられているカバー本体334の表面のみをコーティングすることができる。幾つかの実施形態では、無機セラミック層336aは、無機フィラー334fの露出面を覆うことができる。幾つかの実施形態では、無機セラミック層336aは、無機フィラー334fの露出面と実質的に同一平面上にあるカバー本体334の表面を覆うことができる。幾つかの実施形態では、無機セラミック層336aは、無機フィラー334fの露出面と同一平面上にないカバー本体334の表面は覆わない可能性がある。
【0058】
熱源332において白金を酸化する酸素の最短経路は、無機フィラー334fが配置されている側の表面からであることから、無機セラミック層336aが片面のみ(すなわち、凹部334Rが形成された面のみ)に形成されている場合でも、図4と同様にPtの酸化及び喪失を防止する効果を得ることができる。さらには、図6の実施形態における第1の本体330a’は、図4の実施形態よりも少量の無機セラミック層336aを使用し、したがって、第1の本体330a’は、比較的費用効率が高く、製造が容易である。加えて、第1の本体330a’は、(無機セラミック層336の量が少ないことに起因して)図4の第1の本体330aよりも軽量でありうることから、動作温度でのカバー330の垂下が発生する可能性が低くなりうる。
【0059】
図7A~7Cは、実施形態による、第1の本体330a及び330a’を製造する方法を逐次的に示す側面断面図である。
【0060】
図7Aを参照すると、凹部334Rがカバー本体334の下面に形成されている。凹部334Rは、その中に熱源332(図7B参照)を収容するのに十分なサイズを有することができる。
【0061】
図7Bを参照すると、凹部334Rに熱源332を配置することができ、凹部334Rの内面と熱源332との間の空間を無機フィラー334fで満たすことができる。無機フィラー334fの材料については上述しているため、さらなる詳細な説明は省略する。
【0062】
図7Cを参照すると、無機セラミック材料層336pが、カバー本体334及び無機フィラー334fの表面に形成されている。無機セラミック材料層336pは、例えば、無機セラミック材料を分散媒に分散させたスラリー層でありうる。幾つかの実施形態では、無機セラミック層336pは、約80質量%~約90質量%のシリカ(SiO)、約1質量%~約3質量%の酸化ホウ素(B)、約2質量%~約5質量%のアルミナ(Al)、約1質量%~約3質量%の酸化ナトリウム(NaO)、約2質量%~約4質量%の酸化カリウム(KO)、約2質量%~約6質量%の酸化亜鉛(ZnO)、及び約0.1質量%~約2質量%のジルコニア(ZrO)を含む固体粉末が、水などの分散媒と約1:2~約2:1の質量比で混合された混合物を含みうる。
【0063】
無機セラミック材料層336pは、ブラッシング、噴霧、ディップコーティング、又はスピンコーティングによって形成することができるが、本開示の実施形態はそれらに限定されない。
【0064】
その後、無機セラミック材料層336pは、約800℃~約2,000℃の温度で約10秒~約60分間アニールされて無機セラミック層336aを形成し、図4に示される第1の本体330aを得ることができる。
【0065】
図6に示される第1の本体330a’は、無機セラミック材料層336pが図7Cのカバー本体334の下面のみに形成されることを除き、図7A~7Cを参照して説明される方法と同じ方法によって製造することができる。
【0066】
図8は、別の実施形態による第1の本体330a”の側面断面図である。図8の第1の本体330a”は、第1の本体330a”が貴金属クラッド層333と、該貴金属クラッド層333の1つの表面に耐火酸化物層337をさらに含むという点で、図4の第1の本体330aとは異なっている。したがって、以後、このような相違点を主に説明し、重複する説明は省略する。
【0067】
貴金属クラッド層333は、少なくとも貴金属クラッド層333の上面333US又は下面333LSに形成されうる。貴金属は、白金(Pt)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、銅(Cu)、及びレニウム(Re)などの腐食及び酸化に耐性のある金属として定義される。幾つかの実施形態では、貴金属クラッド層333は、カバー本体334の上面及び下面の両方に形成することができる。幾つかの実施形態では、貴金属クラッド層333は、(図8の側壁部分SWに対応する)中心孔338の内面にも形成されうる。
【0068】
貴金属クラッド層333は、例えば、白金又は白金合金を含むことができる。例えば、白金合金は、白金と、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、及びオスミウム(Os)のうちの少なくとも1つとの合金でありうる。
【0069】
耐火酸化物層337は、貴金属クラッド層333の下面333LSに設けることができる。耐火酸化物層337は、非常に耐熱性のある酸化物材料でできている。下面333LSは、撹拌容器320に面する表面でありうる。耐火酸化物層337は、高温に曝される白金又は白金合金を覆い、曝される領域の面積を減少させ、それにより、白金の酸化還元反応及びその結果としてのカバー及び撹拌容器の内面上の反応生成物が凝縮して溶融ガラスMGに落下する可能性を低減する。これにより、このような含有物によって生じる製品不良を低減することができる。
【0070】
耐火酸化物層337の厚さは、約1ミル(=0.001インチ(約0.0254mm))~約10ミル(約0.254mm)の範囲でありうる。幾つかの実施形態では、耐火酸化物層337の厚さは、約2ミル(=0.002インチ=約0.0508mm)~約8ミル(約0.2032mm)の範囲でありうる。
【0071】
耐火酸化物層337がその上に形成される貴金属クラッド層333の下面333LSは、粗面化されうる。幾つかの実施形態では、貴金属クラッド層333の下面333LSの粗さRaは、BS EN ISO 4287:2000規格で測定して、約0.1μm~約50μmの範囲でありうる。本明細書では、Raは算術平均粗さであり、これは、粗さプロファイルの算術平均偏差である。粗さRaが大きすぎると、耐火酸化物層337の形成後の平坦性が不十分となる場合がある。粗さRaが小さすぎると、耐火酸化物層337と貴金属クラッド層333との付着性が不十分となる場合がある。
【0072】
図9A及び9Bは、一実施形態による、第1の本体330aの表面に耐火酸化物層337を形成する方法を示す斜視図である。
【0073】
図9Aを参照すると、第1の本体330aの外面を無機セラミック層336で覆うことができる。第1の本体330aの上面及び下面に貴金属クラッド層333を設けることができる。加えて、第1の本体330aの側壁SWにも、貴金属クラッド層333を少なくとも部分的に設けることができる。
【0074】
その後、貴金属クラッド層333の下面333LSは粗面化されうる。図9Aでは、理解の便宜上、第1の本体330aは、下面333LSが上向きになるように、逆さまになっている。粗面化は、例えばサンドブラストによって行うことができるが、これに限定されない。結果として、粗面化された下面333SBを得ることができる。
【0075】
図9Bを参照すると、貴金属クラッド層333の粗面化された下面333SBに耐火酸化物層337が形成される。
【0076】
耐火酸化物層337は、主成分としてジルコニア(ZrO)を含む材料層でありうる。幾つかの実施形態では、耐火酸化物層337は、約3質量%~約5質量%の酸化カルシウム(CaO)、約0.2質量%~約1質量%のシリカ(SiO)、約0.2質量%~約1質量%のアルミナ(Al)、及び約0.5質量%~約3.5質量%の酸化ハフニウム(HfO)及び約0.5質量%~約3.5質量%の酸化ハフニウム(HfO)を含むことができ、残りはジルコニア(ZrO)及び不可避的不純物である。耐火酸化物層337は、約0.01質量%~約0.3質量%の酸化鉄(Fe)及び約0.01質量%~約0.9質量%の酸化マグネシウム(MgO)をさらに含みうる。
【0077】
幾つかの実施形態では、耐火酸化物層337は、約1質量%~約2質量%の酸化ハフニウム(HfO)、約2.5質量%~約4.5質量%の酸化カルシウム(CaO)、約0.2質量%~約1.0質量%のシリカ(SiO)、約0.3質量%~約1.2質量%のアルミナ(Al)、約0.01質量%~約0.2質量%の酸化鉄(Fe)、約0.05質量%~約0.2質量%のチタニア(TiO)、及び約0.01質量%~約0.1質量%の酸化マグネシウム(MgO)を含むことができ、残りはジルコニア(ZrO)及び不可避的不純物である。
【0078】
幾つかの実施形態では、耐火酸化物層337は、原料粉末をプラズマで溶融し、溶融した原料粉末を噴霧することによって形成されうる。図9Bは、耐火酸化物層337が下面333SBに形成されうることを示すために、露出される下面333SBの一部を示している。しかしながら、他の実施形態では、耐火酸化物層337は、粗面化された下面333SBの全体に形成することができる。
【0079】
図10は、一実施形態による、カバー330の第1の本体331aを示している。第1の本体331aは、第2の本体331bとともにカバー330を構成することができる。
【0080】
図10を参照すると、第1の本体331aと第2の本体331bとの境界領域BDに沿って突出するシート部分339が、耐火酸化物層337の下に設けられうる。
【0081】
シート部分339は、第1の本体331aの下面に取り付けられているが、シート部分339の突出部分は、第2の本体331bと少なくとも部分的に重なりうる。言い換えれば、シート部分339は、中心孔338を除き、境界領域BDをほぼ完全に覆うことができる。幾つかの実施形態では、シート部分339が第1の本体331aから第2の本体331bに向かって突出する幅G1は、第1の本体331aとび第2の本体331bとの間のギャップG2より大きくなりうる。
【0082】
シート部分339は、金属又は無機材料を含みうる。幾つかの実施形態では、シート部分339は、白金又は白金合金などの金属を含みうる。幾つかの実施形態では、シート部分339は、シリカをベースとした無機材料、ジルコニアをベースとした無機材料、又はアルミナをベースとした無機材料を含みうる。幾つかの実施形態では、シート部分339は、白金とロジウムとの合金を含みうる。
【0083】
図11A及び11Bは、他の実施形態による、カバーの第1の本体331a’及び331a”の断面図である。
【0084】
図11Aを参照すると、シート部分339は、無機セラミック層336の表面に直接取り付けられうる。図11Aの第1の本体331a’は、耐火酸化物層337及び貴金属クラッド層333が省かれていることを除き、図10の実施形態における第1の本体331aと実質的に同じでありうる。
【0085】
図11Bを参照すると、シート部分339は、貴金属クラッド層333の表面に直接取り付けられうる。図11Bの第1の本体331a”は、耐火酸化物層337が省かれていることを除き、図10の実施形態における第1の本体331aと実質的に同じでありうる。
【実施例
【0086】
以下に、具体的な実施例及び比較例を参照して、本発明の構成及び効果についてさらに詳しく説明する。しかしながら、これらの例は、本開示を明確にすることのみを意図しており、本開示の範囲を限定することは意図していない。
【0087】
図12は、一実施形態による、無機セラミック層の性能を試験するためのヘリウムガス漏洩試験装置を示す略図である。
【0088】
図12を参照すると、チャンバ51は、一方の側に開口部54を備えており、試料SAはチャンバ51の開口部54に固定されている。試料SAとチャンバ51との間で漏れが生じていない状態で、入口弁52を開き、所定の圧力でヘリウム(He)ガスを供給し、出口弁53を閉じる。
【0089】
ガスが試料SAを通過することができる経路が多いと、ヘリウムセンサ43によって検出されるヘリウムの漏れの量が増加する。反対に、ガスが試料SAを通過することができる経路が少ないと、ヘリウムセンサ43によって検出されるヘリウムの漏れの量が減少する。
【0090】
約85.05質量%のシリカ(SiO)、約2.25質量%の酸化ホウ素(B)、約3.25質量%のアルミナ(Al)、約1.7質量%の酸化ナトリウム(NaO)、約2.5質量%の酸化カリウム(KO)、約4.1質量%の酸化亜鉛(ZnO)、及び約1.15質量%のジルコニア(ZrO)を含む無機セラミック層を、多孔質のAN485(Saint Gobain社から入手可能)試料上に約3mmの厚さまで形成した。
【0091】
無機セラミック層を有する試料(実施例1)及び無機セラミック層を有しない試料(比較例1)をチャンバの開口部に固定し、その上でヘリウムガス漏洩試験を行った。
【0092】
その結果、図13に示されるように、無機セラミック層を形成した場合、無機セラミック層がない場合と比べて、ガスの漏れが4分の1以下に低減されたことがわかった。したがって、無機セラミック層によって、熱源に含まれる白金の酸化を防止することができることがわかる。
【0093】
図14A及び14Bは、実施例2及び3並びに比較例2及び3における垂下比較試験のための試料の分解斜視図である。
【0094】
棒状体の試料61の表面に縦凹部61rを形成し、熱源(図示せず)及び無機フィラー63を凹部61rの上に形成し、次に、無機セラミック層67をその上に形成した(実施例2)。凹部61rの延在方向を長手方向と直交する方向に変更したことを除き、実施例2と同様にして、試料を製造した。比較のために無機セラミック層67を形成しなかったことを除き、実施例2及び3の試料と実質的に同じである比較例2及び3の試料を製造した。
【0095】
これらの試料を、所定の間隔で互いに離間した2つの支持体69で支持し、1,500℃で3日間放置した。次に、2つの支持体69の間の中央における垂下長さを測定して、図15に示す結果を得た。垂下長さとは、中央における、元の高さと1,500℃で3日間加熱した後の高さとの間の高低差である。
【0096】
図15を参照すると、無機セラミック層67は、凹部の延在方向にかかわらず、試料の垂下の低減にも寄与することが分かる。実施例2の垂下長さは、比較例2の垂下長さの3分の1未満である。実施例3の垂下長さは、比較例3の垂下長さの約半分である。
【0097】
本開示は、それらの実施形態を参照して特に示され、説明されてきたが、以下の特許請求の範囲の精神及び範囲から逸脱することなく、それらに形態及び詳細のさまざまな変更がなされうることが理解されよう。
【0098】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0099】
実施形態1
撹拌チャンバであって、
溶融ガラスを受け入れるように構成された撹拌容器;
前記撹拌容器上に位置づけられたカバー;及び
前記カバーを通過し、前記溶融ガラスを撹拌するように構成されたスターラー
を備えており、
前記カバーが、カバー本体と、該カバー本体の表面を覆う無機セラミック層とを含み、前記カバー本体が多孔質である、
撹拌チャンバ。
【0100】
実施形態2
前記無機セラミック層がガラス層を含む、実施形態1に記載の撹拌チャンバ。
【0101】
実施形態3
前記ガラス層が、約80質量%~約90質量%のシリカ(SiO)、約1質量%~約3質量%の酸化ホウ素(B)、約2質量%~約5質量%のアルミナ(Al)、約1質量%~約3質量%の酸化ナトリウム(NaO)、約2質量%~約4質量%の酸化カリウム(KO)、約2質量%~約6質量%の酸化亜鉛(ZnO)、及び約0.1質量%~約2質量%のジルコニア(ZrO)を含む、実施形態2に記載の撹拌チャンバ。
【0102】
実施形態4
前記カバー本体が、凹部と、該凹部内に配置された熱源とを含む、実施形態1~3のいずれかに記載の撹拌チャンバ。
【0103】
実施形態5
前記熱源が、無機フィラーに囲まれた前記凹部内に保持される、実施形態4に記載の撹拌チャンバ。
【0104】
実施形態6
前記無機セラミック層が、前記カバー本体の少なくとも上面及び底面と、前記無機フィラーの露出部分とを覆っている、実施形態5に記載の撹拌チャンバ。
【0105】
実施形態7
前記無機フィラーがセメントである、請求項6に記載の撹拌チャンバ。
【0106】
前記無機フィラーがセメントである、実施形態6に記載の撹拌チャンバ。
【0107】
実施形態8
前記カバーが、前記カバー本体の少なくとも上面及び底面を覆う貴金属クラッド層をさらに含み、該貴金属クラッド層が前記無機セラミック層上に設けられている、実施形態1~7のいずれかに記載の撹拌チャンバ。
【0108】
実施形態9
前記カバーが、前記撹拌容器の内側部分に面している前記貴金属クラッド層の表面を覆う耐火酸化物層をさらに含む、実施形態8に記載の撹拌チャンバ。
【0109】
実施形態10
前記カバーが、前記スターラーが通過する中心孔を有しており、かつ、境界領域に沿って第1の本体と第2の本体とに分割されており、
前記第1の本体が、長手方向に前記境界領域に沿って水平に突出するシート部分を含む、
実施形態1~9のいずれかに記載の撹拌チャンバ。
【0110】
実施形態11
前記シート部分が、前記第2の本体と少なくとも部分的に重なっている、実施形態10に記載の撹拌チャンバ。
【0111】
実施形態12
前記シート部分が、前記撹拌容器の内側部分に面している前記第1の本体の下側部分に設けられている、実施形態11に記載の撹拌チャンバ。
【0112】
実施形態13
撹拌チャンバであって、
溶融ガラスを受け入れるように構成された撹拌容器;
前記撹拌容器上のカバー;及び
前記カバーを通過し、前記溶融ガラスを撹拌するように構成されたスターラー
を備えており、
前記カバーが、前記スターラーが通過する中心孔を有する、多孔質のカバー本体を含み、
前記カバーが、境界領域に沿って第1の本体と第2の本体とを含み、かつ
前記第1の本体が、長手方向に前記境界領域に沿って水平に突出するシート部分を含む、
撹拌チャンバ。
【0113】
実施形態14
前記シート部分が、前記第2の本体と少なくとも部分的に重なっている、実施形態13に記載の撹拌チャンバ。
【0114】
実施形態15
前記第1の本体及び前記第2の本体の各々の表面が無機セラミック層によって覆われている、実施形態13又は14に記載の撹拌チャンバ。
【0115】
実施形態16
前記第1の本体の下側部分が貴金属クラッド層を含み、前記シート部分が前記貴金属クラッド層の表面に取り付けられている、実施形態15に記載の撹拌チャンバ。
【0116】
実施形態17
撹拌チャンバであって、
溶融ガラスを受け入れるように構成された撹拌容器;
前記撹拌容器上のカバー;及び
前記カバーを通過し、前記溶融ガラスを撹拌するように構成されたスターラー
を備えており、
前記カバーが、前記カバーの少なくとも下面に貴金属クラッド層を含んでおり、前記溶融ガラスに面する前記貴金属クラッド層の表面が、約3質量%~約5質量%のCaO、約0.2質量%~約1質量%のSiO、約0.2質量%~約1質量%のAl、約0.5質量%~約3.5質量%のHfO、及び残余のZrOを含む耐火酸化物層によって覆われている、
撹拌チャンバ。
【0117】
実施形態18
前記耐火酸化物層が、約0.01質量%~約0.3質量%のFe及び約0.01質量%~約0.9質量%のMgOをさらに含む、実施形態17に記載の撹拌チャンバ。
【0118】
実施形態19
前記耐火酸化物層の厚さが約2ミル(約0.0508mm)~約8ミル(約0.2032mm)である、実施形態17又は18に記載の撹拌チャンバ。
【0119】
実施形態20
前記カバーが、前記撹拌本体が通過する中心孔を備えたカバー本体を含み、かつ、前記カバーが、前記中心孔を通って延びる境界領域に沿って第1の本体と第2の本体とに分割されており、
前記第1の本体及び前記第2の本体の各々の表面が無機セラミック層によって覆われており、前記境界領域を横切って水平に突出するシート部分が前記第1の本体に設けられている、
実施形態17~19のいずれかに記載の撹拌チャンバ。
【符号の説明】
【0120】
1 ガラス製造装置
10 貯蔵容器
11 バッチ材料
13 バッチ送達装置
15 駆動装置
17 コントローラ
19 ガラスレベルプローブ
21 スタンドパイプ
23 通信回線
43 ヘリウムセンサ
51 チャンバ
52 入口弁
53 出口弁
54 開口部
61 試料
61r 縦凹部
63 無機フィラー
67 無機セラミック層
69 支持体
100 溶融容器
150 第1の導管
200 清澄容器
250 第2の導管
300 溶融ガラス撹拌チャンバ
310 スターラー
312 ブレード
314 撹拌棒
320 撹拌容器
330 カバー
330a,330a”,331a,331a’,331a” 第1の本体
330b,331b 第2の本体
332 熱源
333 貴金属クラッド層
333US 上面
333LS 下面
333SB 粗面化された下面
334 カバー本体
334f 無機フィラー
334R 凹部
336 無機セラミック層
336p 無機セラミック材料層
337 耐火酸化物層
338 中心孔
339 シート部分
350 第3の導管
500 送達容器
600 出口導管
650 入口
700 成形装置
750 エッジロール
800 牽引ロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15