IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-荷電粒子線装置 図1
  • 特許-荷電粒子線装置 図2
  • 特許-荷電粒子線装置 図3
  • 特許-荷電粒子線装置 図4
  • 特許-荷電粒子線装置 図5
  • 特許-荷電粒子線装置 図6
  • 特許-荷電粒子線装置 図7
  • 特許-荷電粒子線装置 図8
  • 特許-荷電粒子線装置 図9
  • 特許-荷電粒子線装置 図10
  • 特許-荷電粒子線装置 図11
  • 特許-荷電粒子線装置 図12
  • 特許-荷電粒子線装置 図13
  • 特許-荷電粒子線装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
H01J37/20 B
H01J37/20 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021002167
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107301
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 修一
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-088237(JP,A)
【文献】特開平11-185686(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0181059(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
H01J 37/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料室と、
前記試料室に接続された試料交換室と、
前記試料交換室に着脱可能な試料容器と、
前記試料容器と前記試料交換室との間において、試料を搬送する搬送装置と、
を含み、
前記搬送装置は、
前記試料を掴むチャック装置と、
前記チャック装置を所定方向に移動させる移動機構と、
前記チャック装置を動作させる駆動部と、
前記駆動部の動力を前記チャック装置に伝達する動力伝達機構と、
を含み、
前記動力伝達機構は、
前記駆動部の動力を受けるシャフトと、
前記シャフトに前記所定方向の力が加わった場合に弾性変形する弾性部材と、
前記シャフトから伝達された回転運動を、直線運動と回転運動を含むらせん運動に変換するボールねじと、
を含み、
前記チャック装置は、前記ボールねじから伝達されたらせん運動によって動作する、荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記動力伝達機構は、前記駆動部の回転運動を規制するボールスプラインを含む、荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記ボールねじは、ねじ軸を含み、
前記シャフトは、前記ねじ軸に回転運動を伝達し、
前記ねじ軸は、前記シャフトの回転運動によってらせん運動する、荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記駆動部は、前記試料交換室の外に配置されている、荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記試料交換室と前記試料容器との間に設けられた真空シールを含む、荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡などの荷電粒子線装置において、試料を保持するカートリッジを自動で試料室に搬送する自動搬送装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、試料容器と試料交換室との間においてカートリッジが収容されたマガジンを搬送する第1搬送ロッド、および試料交換室と試料室との間においてカートリッジを搬送する第2搬送ロッドを備えた荷電粒子線装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-88237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の荷電粒子線装置では、試料容器と試料交換室との間において、第1搬送ロッドが試料容器に収容されたマガジンを掴むときには、第1搬送ロッドによってマガジンが押されて試料容器に力が加わる。これにより、試料交換室と試料交換室の接続部分に隙間ができて、試料容器内に大気が流入してしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る荷電粒子線装置の一態様は、
試料室と、
前記試料室に接続された試料交換室と、
前記試料交換室に着脱可能な試料容器と、
前記試料容器と前記試料交換室との間において、試料を搬送する搬送装置と、
を含み、
前記搬送装置は、
前記試料を掴むチャック装置と、
前記チャック装置を所定方向に移動させる移動機構と、
前記チャック装置を動作させる駆動部と、
前記駆動部の動力を前記チャック装置に伝達する動力伝達機構と、
を含み、
前記動力伝達機構は、
前記駆動部の動力を受けるシャフトと、
前記シャフトに前記所定方向の力が加わった場合に弾性変形する弾性部材と、
前記シャフトから伝達された回転運動を、直線運動と回転運動を含むらせん運動に変換するボールねじと、
を含み、
前記チャック装置は、前記ボールねじから伝達されたらせん運動によって動作する
【0007】
このような荷電粒子線装置では、シャフトにチャック装置を移動させる方向の力が加わった場合に弾性変形する弾性部材を含むため、チャック装置が試料を掴むときに、試料に加わる力を低減できる。そのため、チャック装置が試料を掴むときに、試料を介して試料容器に加わる力を低減でき、試料容器内に大気が流入することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。
図2】第1搬送装置を説明するための図。
図3】ボールスプラインを模式的に示す断面図。
図4】チャック装置を説明するための図。
図5】チャック装置を説明するための図。
図6】チャック装置を説明するための図。
図7】チャック装置を説明するための図。
図8】動力伝達機構の動作を説明するための図。
図9】動力伝達機構の動作を説明するための図
図10】弾性部材の機能を説明するための図。
図11】実施形態に係る電子顕微鏡の動作を説明するための図。
図12】実施形態に係る電子顕微鏡の動作を説明するための図。
図13】実施形態に係る電子顕微鏡の動作を説明するための図。
図14】実施形態に係る電子顕微鏡の動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
なお、以下では、本発明に係る荷電粒子線装置として、電子線を用いる電子顕微鏡を例に挙げて説明するが、本発明に係る荷電粒子線装置は、電子線以外の荷電粒子線(イオンビームなど)を用いる装置であってもよい。
【0011】
1. 電子顕微鏡
1.1. 電子顕微鏡の構成
まず、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に一実施形態に係る電子顕微鏡100の構成を示す図である。なお、図1には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。図1では、Z軸は、上下方向に延びる軸である。
【0012】
電子顕微鏡100は、図1に示すように、試料容器2と、試料室10と、試料ホルダー20と、試料交換室30と、第1搬送装置40と、第2搬送装置50と、真空排気装置60と、制御部70と、を含む。電子顕微鏡100は、例えば、透過電子顕微鏡である。
【0013】
試料室10は、鏡筒12に設けられている。鏡筒12内には、図示はしないが、電子源、電子源から放出された電子線を試料に照射するための照射光学系、および試料を透過した電子線で透過電子顕微鏡像を結像するための結像系が配置されている。また、電子顕微鏡100は、図示はしないが、結像系で結像された像を検出するための検出器や、試料から放出されたX線を検出するための検出器などを備えている。
【0014】
試料室10は、不図示の対物レンズのポールピースの上極と下極との間の空間を含む。試料室10は、真空排気装置によって真空排気されている。試料室10には、試料ホルダー20の取付け部22が配置されており、取付け部22にカートリッジ6が取り付けられる。
【0015】
試料ホルダー20は、ゴニオメーターステージ24によって位置決めされる。ゴニオメーターステージ24は、試料ホルダー20に保持された試料を傾斜させることができる。例えば、電子顕微鏡100では、互いに直交する2軸に関して試料を傾斜させることができる。
【0016】
試料ホルダー20は、カートリッジ6が取り付けられる取付け部22を有している。カートリッジ6には試料が固定されている。カートリッジ6が取付け部22に取り付けられることで、電子顕微鏡100において、試料を観察することができる。
【0017】
試料交換室30は、試料室10に接続されている。試料交換室30と試料室10との間には、仕切り弁32が設けられている。
【0018】
試料交換室30には、試料容器2が接続される。図示の例では、試料容器2が接続部材36を介して、試料交換室30に接続されている。試料容器2は、接続部材36に対して着脱可能である。試料交換室30と試料容器2との間には、仕切り弁34が設けられている。試料交換室30および試料容器2は、真空排気装置60によって真空排気される。
【0019】
接続部材36に試料容器2が接続された状態において、接続部材36と試料容器2との間には、真空シール38が配置される。真空シール38は、例えば、Oリングである。真空シール38によって、試料交換室30に試料容器2が接続された場合に、試料交換室30内および試料容器2内を気密にできる。
【0020】
試料容器2は、試料を収容するための容器である。図示の例では、試料容器2には、マガジン4が収容されている。マガジン4には、複数のカートリッジ6を取付け可能である。なお、ここでは、試料容器2内にカートリッジ6が取り付けられたマガジン4を収容する場合について説明するが、試料容器2内にカートリッジ6を、直接、収容してもよい。
【0021】
第1搬送装置40は、試料容器2と試料交換室30との間において、カートリッジ6を搬送する。すなわち、第1搬送装置40は、試料容器2と試料交換室30との間において、試料を搬送する。ここでは、第1搬送装置40は、マガジン4を搬送することで、カートリッジ6を搬送する。
【0022】
第1搬送装置40は、チャック装置42と、チャック装置42を移動させる移動機構44と、を有している。チャック装置42は、試料を掴む。なお、試料を掴むとは、試料を直接、掴む場合と、試料が他の部材に取り付けられている場合に、当該他の部材を掴む場合と、を含む。ここでは、試料は、カートリッジ6に取り付けられ、カートリッジ6はマガジン4に装着されており、チャック装置42は、マガジン4を掴む。
【0023】
移動機構44は、チャック装置42をZ方向(すなわち、+Z方向および-Z方向)に移動させる。移動機構44は、チャック装置42が先端に取り付けられたロッド45を移動させることによって、チャック装置42を移動させる。移動機構44は、モーターや、エアーシリンダーなどの動力によってチャック装置42を移動させる。
【0024】
第2搬送装置50は、試料交換室30と試料室10との間において、カートリッジ6を搬送する。すなわち、第2搬送装置50は、試料交換室30と試料室10との間において、試料を搬送する。
【0025】
第2搬送装置50は、第1搬送装置40が掴んだマガジン4からカートリッジ6を取り出す。第2搬送装置50は、取り出したカートリッジ6を試料交換室30から試料室10に搬送し、取付け部22に取り付ける。
【0026】
第2搬送装置50は、チャック装置52と、チャック装置52を移動させる移動機構54と、を有している。チャック装置52は、カートリッジ6を掴む。
【0027】
移動機構54は、チャック装置52をX方向(すなわち、+X方向および-X方向)に
移動させる。移動機構54は、チャック装置52が先端に取り付けられたロッド55を移動させることによって、チャック装置52を移動させる。移動機構54は、モーターや、エアーシリンダーなどの動力によってチャック装置52を移動させる。
【0028】
真空排気装置60は、排気管62を介して、試料容器2を真空排気する。排気管62には、電磁弁64が設けられている。真空排気装置60は、さらに、試料交換室30を真空排気する。真空排気装置60は、排気管66を介して、試料交換室30を真空排気する。排気管66には、電磁弁68が設けられている。真空排気装置60で真空排気されることによって、試料交換室30は真空状態に維持される。
【0029】
制御部70は、仕切り弁32、仕切り弁34、第1搬送装置40、第2搬送装置50、電磁弁64、および電磁弁68を制御する。制御部70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)および記憶装置(RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)など)を含む。制御部70では、CPUで記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種制御処理を行う。
【0030】
1.2. 第1搬送装置
図2は、第1搬送装置40を説明するための図である。
【0031】
図2に示すように、第1搬送装置40は、チャック装置42と、駆動部46と、動力伝達機構48と、を含む。
【0032】
駆動部46は、回転力を発生させる。駆動部46は、例えば、回転エアーシリンダーを含み、空気圧を利用して回転力を発生させる。なお、駆動部46は、モーターなどで回転力を発生させてもよい。駆動部46が発生させた動力は、動力伝達機構48によって、チャック装置42に伝達され、チャック装置42が動作する。具体的には、駆動部46の動力によって、チャック装置42は、マガジン4を掴んだり、マガジン4を離したりする。
【0033】
駆動部46は、試料交換室30の外に配置されている。そのため、試料交換室30の真空度の低下(圧力の上昇)を防ぐことができる。
【0034】
動力伝達機構48は、第1シャフト480と、ボールスプライン482と、ボールねじ484と、第2シャフト486と、弾性部材488と、を含む。
【0035】
第1シャフト480、ボールスプライン482、ボールねじ484、第2シャフト486、および弾性部材488は、ロッド45内に収容されている。ロッド45は、第1部分450と、第2部分452と、に分離されている。第1部分450には、第1シャフト480、ボールスプライン482の軸受け482b、および弾性部材488が収容されている。第2部分452には、ボールねじ484、および第2シャフト486が収容されている。第2部分452は、ボールスプライン482のスプライン軸482aに接続されている。
【0036】
第1シャフト480は、駆動部46に接続されている。第1シャフト480は、駆動部46が発生させた回転力によって、回転運動する。第1シャフト480は、ボールねじ484のねじ軸484aに接続されている。第1シャフト480は、駆動部46の回転運動をボールねじ484に伝達する。
【0037】
図3は、ボールスプライン482を模式的に示す断面図である。
【0038】
ボールスプライン482は、スプライン軸482aと、軸受け482bと、リテーナ4
82cと、を含む。リテーナ482cは、複数のボール482dを保持している。ボールスプライン482は、スプライン軸482aに設けられた溝と軸受け482bに設けられた溝との間にボール482dを介在させ、ボール482dを循環もしくは転動させることで、回転トルク(回転力)を規制しながら、直線運動をすることができる。
【0039】
図1に示すように、ボールねじ484は、第1シャフト480の回転運動を、直線運動と回転運動を含むらせん運動に変換し、チャック装置42に伝達する。ここでは、ボールねじ484は、第1シャフト480の回転運動を、直線運動と回転運動を含むらせん運動に変換し、このらせん運動を、第2シャフト486を介して、チャック装置42に伝達する。
【0040】
ボールねじ484は、ねじ軸484aと、ナット484bと、不図示のボールと、を含む。ボールねじ484では、ねじ軸484aとナット484bの間でボールが転がり運動をするため、高い効率を得ることができる。
【0041】
第1シャフト480が回転することによって、ねじ軸484aが回転する。ナット484bは、ロッド45の第2部分452に固定されている。そのため、第1シャフト480が回転することによって、ねじ軸484aがらせん運動する。このように、ボールねじ484は、第1シャフト480の回転運動を、らせん運動に変換する。ボールねじ484のねじ軸484aは、第2シャフト486に接続されている。
【0042】
ねじ軸484aがらせん運動することによって、第2シャフト486もらせん運動する。第2シャフト486は、ねじ軸484aのらせん運動をチャック装置42に伝達する。
【0043】
第2シャフト486の先端には、ベアリング487が取り付けられている。ねじ軸484aはらせん運動するため、第2シャフト486は直線運動するとともに回転運動する。第2シャフト486の先端にベアリング487が取り付けられていることによって、チャック装置42には、第2シャフト486の直線運動のみが伝達され、回転運動は伝達されない。
【0044】
第1シャフト480の中心軸、スプライン軸482aの中心軸、ねじ軸484aの中心軸、および第2シャフト486の中心軸は、同一の軸A上に位置している。軸Aは、Z軸に平行な軸であり、例えば、ロッド45の中心軸に一致する。
【0045】
弾性部材488は、スプライン軸482aに接続されている。弾性部材488は、第1シャフト480を介して、スプライン軸482aに接続されていてもよい。弾性部材488は、軸受け482bの後方に配置されている。スプライン軸482aにZ方向の力が加わった場合、すなわち、スプライン軸482aに軸Aに沿った力が加わった場合、弾性部材488は、弾性変形する。
【0046】
弾性部材488は、例えば、圧縮方向の荷重を受け止める圧縮コイルばねである。図示の例では、圧縮コイルばねの中を、第1シャフト480が通っている。なお、弾性部材488は、スプライン軸482aにZ方向の力が加わった場合に弾性変形する部材であれば、圧縮コイルばねに限定されない。
【0047】
図4図7は、チャック装置42を説明するための図である。図4および図5には、チャック装置42がマガジン4を掴んでいる状態を図示している。図6および図7には、チャック装置42がマガジン4を離している状態を図示している。なお、図5および図7は、チャック装置42をZ方向から見た図である。
【0048】
チャック装置42は、図4図7に示すように、シャフト421と、軸部材422と、ボール424と、を含む。
【0049】
図4図7に示すように、軸部材422は、第1部分422aと、第1部分422aよりも直径が小さい第2部分422bと、を有している。第2部分422bは、第1部分422aよりも軸部材422の先端、すなわち、-Z方向に位置している。軸部材422には、3つのボール424が取り付けられている。
【0050】
軸部材422には、シャフト421が接続されている。シャフト421を-Z方向に移動させることで、軸部材422が-Z方向に移動する。シャフト421を+Z方向に移動させることで、軸部材422が+Z方向に移動する。
【0051】
シャフト421を-Z方向に移動させることで、図4および図5に示すように、3つのボール424が第1部分422aに接する。シャフト421を+Z方向に移動させることで、図6および図7に示すように、3つのボール424が第2部分422bに接する。
【0052】
ここで、上述したように、第2部分422bの直径は、第1部分422aの直径よりも小さい。そのため、第2部分422bに3つのボール424が接している場合、第1部分422aに3つのボール424が接している場合と比べて、隣り合うボール424の間隔が小さくなる。したがって、3つのボール424が第2部分422bに接している場合、3つのボール424を結ぶ円の直径は、3つのボール424が第1部分422aに接している場合と比べて、小さい。
【0053】
マガジン4の上部には、筒状の取付け部8が設けられている。取付け部8の上部の開口から、軸部材422が挿入される。取付け部8の上部の開口の直径は、取付け部8の内部の直径よりも小さい。そのため、取付け部8内には、段差9が形成されている。
【0054】
チャック装置42がマガジン4を掴んで固定する場合には、チャック装置42をマガジン4に接するように移動させた後、マガジン4の取付け部8の開口に、軸部材422およびボール424を押し込む。このとき、3つのボール424は、図6および図7に示すように、第2部分422bに接している状態である。
【0055】
次に、軸部材422を-Z方向に移動させる。これにより、図4および図5に示すように、3つのボール424が、第1部分422aに接し、隣り合うボール424の間隔が拡がる。この結果、3つのボール424が段差9に引っかかり、マガジン4が固定される。
【0056】
チャック装置42がマガジン4を離す場合には、チャック装置42がマガジン4を掴んでいる状態から、軸部材422を+Z方向に移動させる。これにより、図6および図7に示すように、3つのボール424が第2部分422bに接し、隣り合うボール424の間隔が狭まる。この結果、3つのボール424が段差9に引っかからない。そのため、マガジン4の固定が解除され、チャック装置42がマガジン4を離す。
【0057】
2. 動作
2.1. 動力伝達機構
図8および図9は、動力伝達機構48の動作を説明するための図である。図8は、チャック装置42がマガジン4を掴んでいる状態を図示している。図9は、チャック装置42がマガジン4を離している状態を図示している。
【0058】
図8に示すように、駆動部46が第1シャフト480を反時計回りに回転させると、ねじ軸484aが反時計回りにらせん運動する。ねじ軸484aが反時計回りにらせん運動
すると、ねじ軸484aが-Z方向に延びる。これにより、第2シャフト486が-Z方向に移動する。
【0059】
図4に示すように、第2シャフト486が-Z方向に移動することによって、軸部材422が-Z方向に移動し、マガジン4が固定される。
【0060】
図9に示すように、駆動部46が第1シャフト480を時計回りに回転させると、ねじ軸484aが時計回りにらせん運動する。ねじ軸484aが時計回りにらせん運動すると、ねじ軸484aが+Z方向に延びる。これにより、第2シャフト486が+Z方向に移動する。
【0061】
図6に示すように、第2シャフト486が+Z方向に移動することによって、軸部材422が+Z方向に移動し、マガジン4の固定が解除され、チャック装置42がマガジン4を離す。
【0062】
2.2. 弾性部材
図10は、弾性部材488の機能を説明するための図である。
【0063】
弾性部材488は、移動機構44でチャック装置42を試料容器2に移動し、マガジン4にチャック装置42が接触したときの力を低減させる。例えば、動力伝達機構48が弾性部材488を含まない場合、マガジン4にチャック装置42が接触したときに、試料容器2が押し込まれ、真空シール38から真空リークしてしまう。
【0064】
チャック装置42でマガジン4を掴むために、図4に示すように、軸部材422およびボール424をマガジン4の取付け部8の開口に押し込むと、図10に示すように、第2シャフト486およびボールねじ484(ねじ軸484aおよびナット484b)が+Z方向に移動する。ナット484bは、ロッド45の第2部分452に固定されているため、第2部分452も+Z方向に移動する。
【0065】
ボールねじ484が+Z方向に移動することによって、ボールスプライン482のスプライン軸482aが+Z方向に移動する。このとき、スプライン軸482aに接続された弾性部材488が弾性変形する。具体的には、弾性部材488は、Z軸に沿って圧縮され、その後、元の形状に戻る。
【0066】
弾性部材488が弾性変形することによって、チャック装置42の軸部材422およびボール424をマガジン4の取付け部8の開口に押し込むときに、マガジン4に加わる力を低減できる。
【0067】
ここで、ボールスプライン482は、上述したように、回転トルクを規制しながら、直線運動をすることができる。そのため、上記のように、チャック装置42にZ方向の力が加わったときには、Z方向に移動できる。
【0068】
なお、チャック装置42の軸部材422にZ方向の力が加わっても、チャック装置42では、マガジン4を掴んでいる状態が維持される。第1搬送装置40は、ボールねじ484を含むため、チャック装置42の軸部材422にZ方向の力が加わっても、ねじ軸484aの先端と、チャック装置42のシャフト421の先端との間の距離Dは変化しない。そのため、チャック装置42の軸部材422にZ方向の力が加わっても、チャック装置42は、マガジン4を掴んでいる状態を維持できる。
【0069】
チャック装置42において、距離Dを変えるためには、ねじ軸484aを回転させなけ
ればならない。チャック装置42の軸部材422にZ方向の力が加わっても、ねじ軸484aは回転しないため、マガジン4を掴んでいる状態を維持できる。
【0070】
また、上記では、チャック装置42がマガジン4を掴んでいる状態において、軸部材422にZ方向の力が加わった場合について説明したが、図6に示すように、チャック装置42がマガジン4を離している状態において、軸部材422にZ方向の力が加わった場合についても同様である。すなわち、チャック装置42がマガジン4を離している状態において、チャック装置42の軸部材422にZ方向の力が加わっても、チャック装置42では、マガジン4を離している状態が維持される。
【0071】
2.3. 電子顕微鏡の動作
2.3.1. カートリッジの取り付け
図11図14は、電子顕微鏡100の動作を説明するための図である。電子顕微鏡100では、自動で、試料容器2に収容されたカートリッジ6を、試料室10に搬送して、試料ホルダー20の取付け部22に取り付けることができる。
【0072】
マガジン4に装着されたカートリッジ6は、試料容器2に収容される。カートリッジ6を収容した試料容器2は、図11に示すように、接続部材36に取り付けられる。このとき、仕切り弁34は、閉じられている。そして、ユーザーは、カートリッジ6を導入する指示を制御部70に入力する。
【0073】
制御部70は、カートリッジ6を導入する指示を受け付けると、電磁弁64を開き、試料容器2内を真空排気する。制御部70は、試料容器2内が所定の圧力以下になると、図12に示すように、仕切り弁34を開く。
【0074】
次に、制御部70は、チャック装置42を試料容器2内に移動させて、チャック装置42にマガジン4を掴ませる。
【0075】
具体的には、まず、移動機構44を用いてチャック装置42を-Z方向に移動させて、試料容器2内のマガジン4にチャック装置42を接触させる。次に、移動機構44を用いて、さらに、チャック装置42を-Z方向に移動させて、マガジン4の取付け部8の開口に、軸部材422およびボール424を押し込む。次に、駆動部46を動作させて、軸部材422を-Z方向に移動させる。これにより、図4および図5に示すように、3つのボール424の間隔が拡がって、マガジン4が固定される。これにより、チャック装置42でマガジン4を掴むことができる。
【0076】
上記のように、チャック装置42を-Z方向に移動させて、マガジン4の取付け部8の開口に、軸部材422およびボール424を押し込むときには、マガジン4に-Z方向の力が加わる。しかしながら、電子顕微鏡100では、図10に示すように、弾性部材488が弾性変形することによって、マガジン4に加わる力を低減できる。したがって、例えば、マガジン4に-Z方向の力が加わることによって、試料容器2に-Z方向の力が加わり、試料容器2と接続部材36との間に隙間ができて、大気が試料容器2内に流入することを防ぐことができる。
【0077】
次に、制御部70は、図13に示すように、マガジン4を掴んだチャック装置42を試料交換室30に搬送した後、仕切り弁34を閉じ、仕切り弁32を開く。制御部70は、チャック装置52に、チャック装置42が掴んだマガジン4から指定されたカートリッジ6を掴ませて、カートリッジ6を掴んだチャック装置52を試料室10に搬送させ、カートリッジ6を取付け部22に取り付ける。
【0078】
次に、制御部70は、図14に示すように、チャック装置52を試料交換室30内に戻し、仕切り弁32を閉じる。
【0079】
以上の処理により、カートリッジ6を試料ホルダー20に取り付けることができる。これにより、カートリッジ6に保持された試料を電子顕微鏡100で観察することができる。
【0080】
2.3.2. カートリッジの取り外し
電子顕微鏡100では、自動で、カートリッジ6を試料ホルダー20の取付け部22から取り外し、試料交換室30に搬送することができる。さらに、電子顕微鏡100では、自動で、マガジン4を試料交換室30から試料容器2に戻すことができる。
【0081】
制御部70は、図13に示すように、仕切り弁32を開き、チャック装置52を試料室10に移動させる。制御部70は、図12に示すように、チャック装置52に、取付け部22に取り付けられたカートリッジ6を掴ませて、カートリッジ6を試料交換室30に搬送させる。制御部70は、試料交換室30にカートリッジ6を搬送させた後、仕切り弁32を閉じる。次に、制御部70は、チャック装置52が掴んだカートリッジ6を、チャック装置42が掴んだマガジン4に差し込む。
【0082】
制御部70は、仕切り弁34を開き、マガジン4を掴んだチャック装置42を試料容器2内に移動させて、マガジン4を試料容器2に導入する。制御部70は、駆動部46を動作させて、軸部材422を+Z方向に移動させる。これにより、図6に示すように、3つのボール424の間隔が小さくなって、マガジン4が解放される。
【0083】
制御部70は、図11に示すように、チャック装置42を+Z方向に移動させて、チャック装置42を試料交換室30に戻し、仕切り弁32を閉じる。
【0084】
以上の工程により、マガジン4を試料交換室30に戻すことができる。
【0085】
3. 作用効果
電子顕微鏡100では、第1搬送装置40は、試料容器2内のカートリッジ6を掴むチャック装置42と、チャック装置42をZ方向に移動させる移動機構44と、チャック装置42を動作させる駆動部46と、駆動部46の動力をチャック装置42に伝達する動力伝達機構48と、を含み、動力伝達機構48は、スプライン軸482aと、スプライン軸482aにZ方向の力が加わった場合に弾性変形する弾性部材488と、を含む。
【0086】
このように、電子顕微鏡100は、スプライン軸482aにZ方向の力が加わった場合に弾性変形する弾性部材488を含むため、チャック装置42がマガジン4を掴むときに、マガジン4に加わる力を低減できる。そのため、例えば、チャック装置42がマガジン4を掴むときに、マガジン4を介して試料容器2に加わる力を低減でき、試料容器2内に大気が流入することを防ぐことができる。試料容器2内に大気が流入してしまうと、試料が冷却されている場合には、試料に霜がついてしまい、試料本来の形状を観察できない。
【0087】
電子顕微鏡100では、動力伝達機構48は、駆動部46の回転運動を規制するボールスプライン482と、第1シャフト480から伝達された回転運動を直線運動と回転運動を含むらせん運動に変換するボールねじ484と、を含み、チャック装置42は、ボールねじ484から伝達されたらせん運動によって動作する。そのため、電子顕微鏡100では、チャック装置42がマガジン4に押し当てられて、動力伝達機構48がZ方向に移動しても、ねじ軸484aの先端とチャック装置42のシャフト421の先端との間の距離Dは変化しない。したがって、チャック装置42がマガジン4を掴んでいる状態において
、チャック装置42に衝撃が加わっても、マガジン4を掴んでいる状態を維持できる。同様に、チャック装置42がマガジン4を離している状態において、チャック装置42に衝撃が加わっても、マガジン4を離している状態を維持できる。
【0088】
電子顕微鏡100では、ボールスプライン482のスプライン軸482aに弾性部材488が接続されており、弾性部材488は、スプライン軸482aにZ方向の力が加わった場合に、弾性変形する。ボールスプライン482は、回転トルクを規制しながら、直線運動をすることができる。そのため、上記のように、チャック装置42の軸部材422にZ方向の力が加わったときには、スプライン軸482aをZ方向に移動できる。
【0089】
4. 変形例
上述した実施形態では、本発明に係る荷電粒子線装置が電子線を用いて試料の観察や分析を行う電子顕微鏡を例に挙げて説明したが、本発明に係る荷電粒子線装置は、電子線以外の荷電粒子線(イオンビーム等)を用いて試料の観察や分析を行う装置であってもよい。例えば、本発明に係る荷電粒子線装置は、走査透過電子顕微鏡、走査電子顕微鏡、オージェ電子分光装置、集束イオンビーム装置などであってもよい。
【0090】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0091】
2…試料容器、4…マガジン、6…カートリッジ、8…取付け部、9…段差、10…試料室、12…鏡筒、20…試料ホルダー、22…取付け部、24…ゴニオメーターステージ、30…試料交換室、32…仕切り弁、34…仕切り弁、36…接続部材、38…真空シール、40…第1搬送装置、42…チャック装置、44…移動機構、45…ロッド、46…駆動部、48…動力伝達機構、50…第2搬送装置、52…チャック装置、54…移動機構、55…ロッド、60…真空排気装置、62…排気管、64…電磁弁、66…排気管、68…電磁弁、70…制御部、100…電子顕微鏡、421…シャフト、422…軸部材、422a…第1部分、422b…第2部分、424…ボール、450…第1部分、452…第2部分、480…第1シャフト、482…ボールスプライン、482a…スプライン軸、482b…軸受け、482c…リテーナ、482d…ボール、484…ボールねじ、484a…ねじ軸、484b…ナット、486…第2シャフト、487…ベアリング、488…弾性部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14