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特許7267321改善された特異性を有する改変型Tリンパ球
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】改善された特異性を有する改変型Tリンパ球
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20230424BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230424BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230424BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230424BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230424BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230424BHJP
【FI】
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
C12N5/0783
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021010816
(22)【出願日】2021-01-27
(62)【分割の表示】P 2018237851の分割
【原出願日】2014-02-06
(65)【公開番号】P2021072827
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】61/761,548
(32)【優先日】2013-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509307635
【氏名又は名称】セルジーン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ビタオ リアング
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート アボット
(72)【発明者】
【氏名】ウエイ リウ
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/079000(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/17
C12N 5/00-5/28
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変型Tリンパ球であって:
a) 第一の抗原を結合する第一の細胞外抗原結合ドメインと、第一の細胞内シグナルドメインとを含む、第一のポリペプチドであって、該第一の抗原が、腫瘍細胞上の抗原、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原であり、該第一のポリペプチドが、共刺激性ドメインを含まず、かつ該第一の細胞内シグナルドメインが、CD3ζシグナルドメインである、又はそれを含む、前記第一のポリペプチド;及び
b) 第二の抗原を結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、又は該第二の抗原を結合する受容体と、1以上の共刺激性ドメインを含む第二の細胞内シグナルドメインとを含む、第二のポリペプチドであって、該1以上の共刺激性ドメインが、共刺激性CD27ポリペプチド配列、共刺激性CD28ポリペプチド配列、共刺激性OX40(CD134)ポリペプチド配列、及び共刺激性4-1BB(CD137)ポリペプチド配列のうちの1以上を含む、前記第二のポリペプチドを含み、
該第二の抗原が、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-10(IL-10)、及びインターロイキン-13(IL-13)からなる群から選択され;かつ
該改変型Tリンパ球が、該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの両方がそれぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、最大の細胞傷害性を呈するようになる、前記改変型Tリンパ球。
【請求項2】
前記第一の抗原結合ドメイン又は前記第二の抗原結合ドメインのいずれか又は両方が、scFv抗体断片である、請求項1記載の改変型Tリンパ球。
【請求項3】
前記第一の抗原が、腫瘍細胞上の抗原である、請求項1又は2記載の改変型Tリンパ球。
【請求項4】
前記腫瘍細胞が、固形腫瘍中の細胞である、請求項1~3のいずれか一項記載の改変型Tリンパ球。
【請求項5】
前記第一の抗原が、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原である、請求項1又は2記載の改変型Tリンパ球。
【請求項6】
前記腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原が、Her2、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PSMA、BCMA、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、癌抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、上皮性膜タンパク質(EMA)、上皮性腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、肉眼的嚢胞性疾患液体タンパク質(GCDFP-15)、HMB-45抗原、タンパク質メラン-A(Tリンパ球に認識されるメラノーマ抗原;MART-1)、myo-D1、筋特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメント、神経特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシス、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼイソ酵素タイプM2の二量体形(腫瘍M2-PK)、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイトリーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上皮性抗原)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパク質である、請求項5記載の改変型Tリンパ球。
【請求項7】
前記第一の抗原が、インテグリンαvβ3(CD61)、ガラクチン、K-Ras(V-Ki-ras2キルステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子)、又はRal-Bである、請求項1又は2記載の改変型Tリンパ球。
【請求項8】
前記第二の抗原が、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、及びインターロイキン-8(IL-8)からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項記載の改変型Tリンパ球。
【請求項9】
改変型Tリンパ球であって:
a) 第一の抗原を結合する第一の細胞外抗原結合ドメインと、1以上の共刺激性ドメインを含む第一の細胞内シグナルドメインとを含む、第一のポリペプチドであって、該第一の抗原が腫瘍細胞上の抗原、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原であり、かつ該1以上の共刺激性ドメインが、共刺激性CD27ポリペプチド配列、共刺激性CD28ポリペプチド配列、共刺激性OX40(CD134)ポリペプチド配列、及び共刺激性4-1BB(CD137)ポリペプチド配列のうちの1以上を含む、前記第一のポリペプチド;及び
b) 第二の抗原を結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、又は該第二の抗原を結合する受容体と、第二の細胞内シグナルドメインとを含む、第二のポリペプチドであって、該第二のポリペプチドが、共刺激性ドメインを含まず、かつ該第二の細胞内シグナルドメインが、CD3ζシグナルドメインである、又はそれを含む、前記第二のポリペプチドを含み、
該第二の抗原が、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-10(IL-10)、及びインターロイキン-13(IL-13)からなる群から選択され;かつ
該改変型Tリンパ球が、該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの両方がそれぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、最大の細胞傷害性を呈するようになる、前記改変型Tリンパ球。
【請求項10】
前記第一の抗原結合ドメイン又は前記第二の抗原結合ドメインのいずれか又は両方が、scFv抗体断片である、請求項9記載の改変型Tリンパ球。
【請求項11】
前記第一の抗原が、腫瘍細胞上の抗原である、請求項9又は10記載の改変型Tリンパ球。
【請求項12】
前記腫瘍細胞が、固形腫瘍中の細胞である、請求項9~11のいずれか一項記載の改変型Tリンパ球。
【請求項13】
前記第一の抗原が、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原である、請求項9又は10記載の改変型Tリンパ球。
【請求項14】
前記腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原が、Her2、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PSMA、BCMA、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、癌抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、上皮性膜タンパク質(EMA)、上皮性腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、肉眼的嚢胞性疾患液体タンパク質(GCDFP-15)、HMB-45抗原、タンパク質メラン-A(Tリンパ球に認識されるメラノーマ抗原;MART-1)、myo-D1、筋特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメント、神経特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシス、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼイソ酵素タイプM2の二量体形(腫瘍M2-PK)、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイトリーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上皮性抗原)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパク質である、請求項13記載の改変型Tリンパ球。
【請求項15】
前記第一の抗原が、インテグリンαvβ3(CD61)、ガラクチン、K-Ras(V-Ki-ras2キルステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子)、又はRal-Bである、請求項9又は10記載の改変型Tリンパ球。
【請求項16】
前記第二の抗原が、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、及びインターロイキン-8(IL-8)からなる群から選択される、請求項9~15のいずれか一項記載の改変型Tリンパ球。
【請求項17】
T細胞生存モチーフをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項記載の改変型Tリンパ球。
【請求項18】
前記T細胞生存モチーフが、IL-7受容体(IL-7R)の細胞内シグナルドメイン、IL-12受容体の細胞内シグナルドメイン、IL-15受容体の細胞内シグナルドメイン、IL-21受容体の細胞内シグナルドメイン、もしくはTGFβ受容体の細胞内シグナルドメインであるか、又はそれらに由来する、請求項17記載の改変型Tリンパ球。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項記載の改変型Tリンパ球を含む、その必要がある個体の腫瘍を治療するための医薬組成物。
【請求項20】
前記腫瘍が、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、上咽頭癌、メラノーマ、悪性メラノーマ、皮膚癌、結腸癌、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、ユーイング肉腫、末梢性原始神経外胚葉腫瘍、固形胚細胞腫瘍、肝芽細胞腫、神経芽細胞腫、非横紋筋肉腫軟部組織肉腫、骨肉腫、網膜芽腫、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、神経膠芽細胞腫、粘液腫、線維腫、又は脂肪腫である、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記腫瘍が、リンパ腫であり、該リンパ腫が、慢性リンパ性白血病(小型リンパ性リンパ腫)、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、節外周辺帯B細胞リンパ腫、MALTリンパ腫、節周辺帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ腫、Tリンパ球前リンパ球性白血病、Tリンパ球大型顆粒リンパ球性白血病、侵攻性NK細胞白血病、成人Tリンパ球白血病/リンパ腫、節外性NK/Tリンパ球リンパ腫、鼻型、腸疾患型Tリンパ球リンパ腫、肝脾Tリンパ球リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉腫、セザリー症候群、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症、血管免疫芽球性Tリンパ球リンパ腫、末梢性Tリンパ球リンパ腫(不特定)、未分化大細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、又は非ホジキンリンパ腫である、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項22】
その必要がある個体の腫瘍を治療するための医薬の製造のための、請求項1~18のいずれか一項記載の改変型Tリンパ球の使用。
【請求項23】
前記腫瘍が、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、上咽頭癌、メラノーマ、悪性メラノーマ、皮膚癌、結腸癌、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、ユーイング肉腫、末梢性原始神経外胚葉腫瘍、固形胚細胞腫瘍、肝芽細胞腫、神経芽細胞腫、非横紋筋肉腫軟部組織肉腫、骨肉腫、網膜芽腫、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、神経膠芽細胞腫、粘液腫、線維腫、又は脂肪腫である、請求項22記載の使用。
【請求項24】
前記腫瘍が、リンパ腫であり、該リンパ腫が、慢性リンパ性白血病(小型リンパ性リンパ腫)、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、節外周辺帯B細胞リンパ腫、MALTリンパ腫、節周辺帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ腫、Tリンパ球前リンパ球性白血病、Tリンパ球大型顆粒リンパ球性白血病、侵攻性NK細胞白血病、成人Tリンパ球白血病/リンパ腫、節外性NK/Tリンパ球リンパ腫、鼻型、腸疾患型Tリンパ球リンパ腫、肝脾Tリンパ球リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉腫、セザリー症候群、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症、血管免疫芽球性Tリンパ球リンパ腫、末梢性Tリンパ球リンパ腫(不特定)、未分化大細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、又は非ホジキンリンパ腫である、請求項22記載の使用。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2013年2月6日に出願された、米国仮特許出願第61/761,548号に対する優先権を
主張し、その開示はその全てが参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(1. 技術分野)
本明細書における開示は、免疫学分野、及びより具体的には、Tリンパ球又は他の免疫
細胞の改変に関する。
【背景技術】
【0003】
(2. 背景)
Tリンパ球(また、T細胞とも呼ばれる)のような免疫系の細胞は、特定の抗原の認識又
はそれらとの相互作用に際し、細胞の活性化をもたらす受容体又は受容体複合体を通じて
、特定の抗原を認識し、かつそれらと相互作用する。そのような受容体の一例は、8つの
タンパク質の複合体である、抗原特異的Tリンパ球受容体複合体(TCR/CD3)である。T細
胞受容体(TCR)はTリンパ球の表面に発現する。一構成要素であるCD3は、不変の構造を
有し、リガンドによるTCRの占拠に続く細胞内シグナルを担う。抗原-CD3複合体に対するT
リンパ球受容体(TCR/CD3)は、主要組織適合複合体(MHC)のタンパク質により提示され
る、抗原ペプチドを認識する。MHC複合体及びペプチドは、抗原提示細胞及び他のTリンパ
球の標的の表面に発現する。TCR/CD3複合体が刺激されると、Tリンパ球が活性化し、その
結果、抗原特異的な免疫応答が起こる。該TCR/CD3複合体はエフェクター機能、及び免疫
系の調節において、中心的役割を果たす。
【0004】
Tリンパ球が完全に活性化するためには、第二の共刺激性シグナルを必要とする。その
ようなシグナルがないと、Tリンパ球は、TCRに対する抗原の結合に応答しなくなるか、又
はアネルギー状態となる。そのような共刺激性シグナルは、例えば、Tリンパ球タンパク
質であるCD28によりもたらされ、このタンパク質は、抗原提示細胞上のCD80及びCD86と相
互作用する。もう一つのTリンパ球タンパク質である、ICOS(誘導性共刺激タンパク質)
は、ICOSリガンドと結合したときに、共刺激性シグナルをもたらす。
【0005】
TCR複合体の本質的な抗原結合、シグナル及び刺激性機能は、一般にキメラ抗原受容体
(CAR)と呼ばれる単一ポリペプチド鎖に対する、遺伝子組換え法により低下させられて
きた。例えば、Eshharの米国特許第7,741,465号;Eshharの米国特許出願公開第2012/0093
842号を参照されたい。そのようなCARを備えたTリンパ球は、一般にCAR-Tリンパ球と呼ば
れる。しかしながら、そのようなCARがTリンパ球を、特異的腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的
抗原に対し効率的に標的化し、かつTリンパ球を、そのような抗原を発現する腫瘍細胞を
殺すべく効率的に標的化することができる一方、そのような設計は、Tリンパ球を、その
ような抗原を発現する、正常で健康な細胞までも殺すよう方向付けるという、重大な副作
用を生じさせる。そのように、そのようなCAR-Tリンパ球の使用は一般に、腫瘍に体内の
いかなる他の細胞にも発現しない抗原が発現するという、比較的稀な状況に限定されてい
る。
【0006】
本明細書に記載されるのは、現在のCAR設計のこの欠点を克服する、キメラ受容体を含
む改変型Tリンパ球である。
【発明の概要】
【0007】
(3. 概要)
第一の態様において、本明細書で提供されるのは、改変型リンパ球、例えば、少なくと
も2つの異なるポリペプチド、例えばキメラ受容体を含む改変型Tリンパ球である。ここで
、該免疫シグナルは、例えばキメラ受容体である、第一のポリペプチドの、第一の抗原へ
の結合に由来し、第二のポリペプチド、例えばキメラ受容体により産生される共刺激性シ
グナルから分離されている。かつここで、該共刺激性シグナルは、第二のキメラ受容体に
よる、第二の抗原の抗原結合に依存する。本明細書の全体にわたって使用される「第一の
ポリペプチド」は、主たる抗原結合免疫シグナルを生成するポリペプチドを示し、「第二
のポリペプチド」は、共刺激性免疫シグナルを生成するポリペプチドである。特定の実施
態様において、2つのポリペプチド(例えば、キメラ受容体)は、改変型Tリンパ球に1つ
のCARコンストラクトを用いて導入され、該ポリペプチドは、1つのORFから2つの異なるポ
リペプチドを(実質的に等量)発現することを可能とする開裂配列(T2A又はP2A)により
、分離される。
【0008】
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって、第一の
抗原に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及び第一の細胞内シグナルドメインを含
み、共刺激性ドメインを含まない、第一のポリペプチド;及び第二の抗原と結合する第二
の細胞外抗原結合ドメイン、又は該第二の抗原と結合する受容体;及び第二の細胞内シグ
ナルドメインを含む、第二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリンパ球(CAR-Tリンパ球
)である。ここで、該改変型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナ
ルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合に
のみ、最大の細胞傷害性を呈するようになる。具体的な実施態様において、該第一の抗原
結合ドメインに該第一の抗原が結合し、該第二の結合ドメインに該第二の抗原が結合しな
いこと、又は該第二の抗原結合ドメインに該第二の抗原が結合し、該第一の結合ドメイン
に第一の第二の抗原が結合しないことは、該改変型Tリンパ球のアネルギー、又は該第一
の抗原若しくは該第二の抗原に対する該Tリンパ球の非応答性を誘導する。
【0009】
他の具体的な実施態様において、該第一の抗原結合ドメイン及び該第二の抗原結合ドメ
インは、独立に、受容体の抗原結合部位、抗体の抗原結合部位、又は他のペプチド系高分
子抗原結合剤である。特定の具体的な実施態様において、該第一の抗原結合ドメイン又は
該第二の抗原結合ドメインのいずれか又は両方は、scFv抗体断片である。具体的な実施態
様において、該第一のポリペプチド又は該第二のポリペプチドのいずれか又は両方は、さ
らに膜貫通ドメインを含む。他の具体的な実施態様において、該第一のポリペプチド又は
該第二のポリペプチドは、T細胞生存モチーフを含む。具体的な実施態様において、該T細
胞生存モチーフは、CD28 T細胞生存モチーフである。他の具体的な実施態様において、該
T細胞生存モチーフは、IL-7受容体(IL-7R)の細胞内シグナルドメイン、IL-12受容体の
細胞内シグナルドメイン、IL-15受容体の細胞内シグナルドメイン、IL-21受容体の細胞内
シグナルドメイン、又はトランスフォーミング成長因子β(TGFβ)受容体の細胞内シグ
ナルドメインである。他のより具体的な実施態様において、該第一のポリペプチド又は該
第二のポリペプチドは、T細胞生存モチーフを含む、CD28分子の一部を含む。より具体的
な実施態様において、該第一のポリペプチド又は該第二のポリペプチドは、T細胞生存モ
チーフを含む、CD28分子を含む。特定の具体的な実施態様において、該第一の細胞内シグ
ナルドメインは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含むポリペプチド
配列を含む。より具体的な実施態様において、前記ポリペプチド配列は、CD3ζシグナル
ドメインである。
【0010】
特定の具体的な実施態様において、該第一の抗原は、腫瘍細胞上の抗原である。より具
体的な実施態様において、該腫瘍細胞は、固形腫瘍中の細胞である。他のより具体的な実
施態様において、該腫瘍細胞は血液癌の細胞である。他の具体的な実施態様において、該
抗原は、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原である。より具体的な実施態様において、該腫
瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原は、Her2、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PSMA(前立腺特異
的膜抗原)、B細胞成熟抗原(BCMA)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗
原(CEA)、癌抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、上皮性膜タンパク質
(EMA)、上皮性腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、CD34、
CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維酸性タン
パク質(GFAP)、肉眼的嚢胞性疾患液体タンパク質(gross cystic disease fluid prote
in)(GCDFP-15)、HMB-45抗原、タンパク質メラン-A(Tリンパ球に認識されるメラノー
マ抗原;MART-1)、myo-D1、筋特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメント、神経特
異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシン、チログロブ
リン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼイソ酵素タイプM2の二量体形(腫瘍M2-PK
)、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EphA2、CSPG4、CD138、
FAP(線維芽細胞活性化タンパク質)、CD171、カッパ、ラムダ、5T4、αvβ6インテグリ
ン、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD
70、CD123、EGFR、EGP2、EGP40、EpCAM、胎児性AchR、FRα、GD3、HLA-A1+MAGE1、HLA-A1
+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、Lewis-Y、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、P
RAME、ROR1、サバイビン、TAG72、TEM、VEGFR2、EGFRvIII(表皮性成長因子バリアントII
I)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、プロ
ステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイトリーディングフレームタンパク質)
、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上皮性抗原)、異常rasタンパク質、又
は異常p53タンパク質である。具体的な実施態様において、該第一の抗原はPSCAである。
他の具体的な実施態様において、該第一の抗原はPSMAである。他の具体的な実施態様にお
いて、該第一の抗原はBCMAである。他の具体的な実施態様において、該第一の抗原結合ド
メインがHER2に特異的である場合、改変型T細胞の第二のポリペプチドの抗原結合ドメイ
ンは、MUC-1に特異的でない。
【0011】
他の具体的な実施態様において、該第一の抗原は、インテグリンαvβ3(CD61)、ガラ
クチン、K-Ras(V-Ki-ras2キルステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子)又はRal-Bである。
【0012】
他の具体的な実施態様において、該第二の抗原は、成長因子、サイトカイン、又はイン
ターロイキンである。特定の実施態様において、該第二の抗原は、分子、例えば、血管形
成又は脈管形成に関連する、成長因子、サイトカイン、又はインターロイキンである。よ
り具体的な実施態様において、該第二の抗原は、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維
芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、イン
スリン様成長因子(IGF)、又はインターロイキン-8(IL-8)である。従って、該第二の
抗原結合ドメインは、例えば、VEGF、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8に特異的な抗体(
又はその断片、例えば、scFv);又はVEGF、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8に対する受
容体であり得る。具体的な実施態様において、該第二の抗原結合ドメインは、VEGF、bFGF
、PDGF、HGF、IGF、TGF-β、IL4、IL-10、IL13、又はIL-8に対する受容体である。他の具
体的な実施態様において、該第二の抗原結合ドメインは、VEGFに対する受容体であり、こ
こで、該VEGFに対する受容体は、VEGFR、例えば、VEGFR1、VEGFR2、又はVEGFR3である。
【0013】
他の具体的な実施態様において、該第二の抗原により提供されるシグナル伝達の活性化
は、抗原に起因するものではなく、低酸素に関連する。より具体的な実施態様において、
該刺激は、低酸素誘導性因子-1α(HIF-1α)、HIF-1β、HIF-2α、HIF-2β、HIF-3α、
又はHIF-3βが活性化することにより誘導される。
【0014】
他の具体的な実施態様において、該第二の抗原は、インターロイキンである。
【0015】
他の具体的な実施態様において、該第二の抗原は損傷関連分子パターン分子(DAMP;ま
た、アラーミンとしても知られる)である。より具体的な実施態様において、該DAMPは、
熱ショックタンパク質、染色体関連タンパク質高移動度グループボックス1(HMGB1)、S1
00A8(また、MRP8、又はカルグラニュリンAとしても知られる)、S100A9(また、MRP14、
又はカルグラニュリンBとしても知られる)、血清アミロイドA(SAA)、デオキシリボ核
酸、アデノシントリリン酸、尿酸、又はヘパリン硫酸である。
【0016】
特定の具体的な実施態様において、該第二の抗原は、腫瘍細胞により提示される抗原に
結合する、抗体上の抗原である。
【0017】
具体的な実施態様において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球(CAR-Tリン
パ球)であって、第一の抗原に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及び第一の細胞
内シグナルドメインを含み、共刺激性ドメインを含まない、第一のポリペプチド;及びVE
GFに結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン結合、及び第二の細胞内シグナルドメイン(
共刺激性ドメイン)を含む第二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリンパ球(CAR-Tリン
パ球)である。ここで、該改変型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン及び該第二のシ
グナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場
合に、最大の細胞傷害性を呈するようになる。具体的な実施態様において、該第一の抗原
は、PSCA、PSMA、又はBCMAである。他の具体的な実施態様において、該第一の細胞外抗原
結合ドメインは、抗体又はその断片(例えば、scFv)、例えば、PSCA、PSMA、又はBCMAに
特異的な抗体又はその断片を含む。他の具体的な実施態様において、VEGFに結合する該抗
原結合ドメイン結合は、VEGFに対する受容体、すなわち、VEGFRである。他の具体的な実
施態様において、該VEGFRはVEGFR1、VEGFR2、又はVEGFR3である。他の具体的な実施態様
において、該VEGFRはVEGFR2である。
【0018】
本明細書のいかなる実施態様の具体的な実施態様においても、該第二のポリペプチドは
1以上の共刺激性ドメインを含む。具体的な実施態様において、該1以上の共刺激性ドメイ
ンは、共刺激性CD27ポリペプチド配列、共刺激性CD28ポリペプチド配列、共刺激性OX40(
CD134)ポリペプチド配列、共刺激性4-1BB(CD137)ポリペプチド配列、TILR2、TILR4、T
ILR7、TILR9、Fc受容体γ鎖、Fc受容体ε鎖、又は共刺激性誘導性T細胞共刺激性(ICOS)
ポリペプチド配列のうちの1以上を含む。
【0019】
本明細書で提供される改変型Tリンパ球の具体的な実施態様において、該第一のポリペ
プチドは、細胞外腫瘍抗原結合ドメイン及びCD3ζシグナルドメインを含み、かつここで
、該第二のポリペプチドは抗原結合ドメインを含み、該抗原は血管形成又は脈管形成因子
、及び1以上の共刺激性分子シグナルドメインである。該血管形成因子は、例えば、VEGF
であり得る。該1以上の共刺激性分子シグナルモチーフは、例えば、CD27、CD28、OX40、I
COS、及び4-1BBのそれぞれに由来する、共刺激性シグナルドメインを含み得る。より具体
的な実施態様において、該第一のポリペプチドは、細胞外腫瘍抗原結合ドメイン及びCD3
ζシグナルドメインを含み、かつここで、該第二のポリペプチドは抗原結合ドメインを含
み、該抗原はVEGF、及びCD27、CD28、OX40、ICOS、及び4-1BBのそれぞれに由来する、共
刺激性シグナルドメインである。より具体的な実施態様において、該第一のポリペプチド
又は該第二のポリペプチドは、T細胞生存モチーフを含む。より具体的な実施態様におい
て、該T細胞生存モチーフは、IL-7受容体(IL-7R)の細胞内シグナルドメイン、IL-12受
容体の細胞内シグナルドメイン、IL-15受容体の細胞内シグナルドメイン、IL-21受容体の
細胞内シグナルドメイン、又はトランスフォーミング成長因子β(TGFβ)受容体の細胞
内シグナルドメインであるか、又はこれらに由来する。そのため、該改変型Tリンパ球の
、より具体的な実施態様において、該第一のポリペプチドは細胞外腫瘍抗原結合ドメイン
及びCD3ζシグナルドメインを含み、かつここで、該第二のポリペプチドは抗原結合ドメ
インを含み、該抗原はVEGF、IL-7受容体細胞内T細胞生存モチーフ、及びCD27、CD28、OX4
0、ICOS、及び4-1BBのそれぞれに由来する、共刺激性シグナルドメインである。
【0020】
改変型Tリンパ球の他の具体的な実施態様において、該第一の抗原は、腫瘍特異的抗原
又は腫瘍関連抗原であり、かつ該第一の細胞内シグナルドメインは、CD3ζシグナルドメ
インを含み;かつここで、該第二のポリペプチドは、該第二の抗原に結合する抗原結合ド
メイン、及びCD27、CD28、OX40、ICOS、及び4-1BBのそれぞれに由来する、共刺激性シグ
ナルドメインを含む。より具体的な実施態様において、該第二のポリペプチドは、細胞内
T細胞生存モチーフ、例えば、IL-7受容体(IL-7R)の細胞内シグナルドメイン、IL-12受
容体の細胞内シグナルドメイン、IL-15受容体の細胞内シグナルドメイン、IL-21受容体の
細胞内シグナルドメイン、又はトランスフォーミング成長因子β(TGFβ)受容体の細胞
内シグナルドメインである、又はこれらに由来する、T細胞生存モチーフをさらに含む。
【0021】
本明細書で提供される、いかなる改変型Tリンパ球の具体的な実施態様においても、該
第二の抗原はVEGF又はIL-4である。
【0022】
特定の実施態様において、該第一の抗原結合ドメイン又は該第二の抗原結合ドメインの
みが、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原と結合し、該第一の抗原結合ドメイン又は該第二
の抗原結合ドメインのもう一方が、腫瘍特異的抗原又は腫瘍関連抗原ではない抗原と結合
する。そのような実施態様において、第一又は第二の刺激性シグナルの一方のみが、腫瘍
特異的抗原又は腫瘍関連抗原により生成される;第一又は第二の刺激性シグナルのもう一
方は、他のタイプの抗原、例えば、腫瘍環境に関連する抗原(例えば、タンパク質又は他
の生体分子)により生成される。
【0023】
また、特定の実施態様において、本明細書で提供されるのは、第一及び第二のポリペプ
チド、並びに1以上のさらなるポリペプチド、例えば、抗原結合ドメイン及びシグナルド
メインを含む、1以上のさらなるポリペプチドを含む、改変型Tリンパ球である。具体的な
実施態様において、該ポリペプチドのうちの1つのみ(例えば、該第一のポリペプチド、
該第二のポリペプチド、又は該1以上のさらなるポリペプチドのうちの1つのみ)が腫瘍関
連抗原又は腫瘍特異的抗原に結合する、抗原結合ドメインを含む;それぞれの残りの該ポ
リペプチドは、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原ではない抗原と結合する、抗原結合ドメ
インを含む。他の具体的な実施態様において、2以上の該第一のポリペプチド、該第二の
ポリペプチド、及び該1以上のさらなるポリペプチドは、1以上の腫瘍関連抗原又は腫瘍特
異的抗原と結合する抗原結合ドメインを含み、ここで、少なくとも1つの該ポリペプチド
は腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原に結合しない、抗原結合ドメインを含む。
【0024】
他の態様において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって、第一の抗
原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及び第一の細胞内シグナルドメインを含む
、第一のポリペプチド;及び第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、又は
該第二の抗原と結合する受容体;及び第二の細胞内シグナルドメインを含み、共刺激性ド
メインを含まない、第二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、
該改変型リンパ球は該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの両方が、
それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、最大の細胞傷害
性を呈するようになる。具体的な実施態様において、該第一の抗原結合ドメインに該第一
の抗原が結合し、該第二の結合ドメインに該第二の抗原が結合しないこと、又は該第二の
抗原結合ドメインに該第二の抗原が結合し、該第一の抗原結合ドメインに第一の第二の抗
原が結合しないことにより、該改変型Tリンパ球のアネルギー、又は該改変型Tリンパ球の
、該第一の抗原に対する非応答性が誘導される。具体的な実施態様において、該第一の抗
原結合ドメイン及び該抗原結合ドメインは、独立に、受容体の抗原結合部位又は抗体の抗
原結合部位である。他の具体的な実施態様において、該第一の抗原結合ドメイン又は該第
二の抗原結合ドメインの、いずれか又は両方は、scFv抗体断片である。具体的な実施態様
において、該第一のポリペプチド及び/又は該第二のポリペプチドは、膜貫通ドメインを
さらに含む。より具体的な実施態様において、該第一のポリペプチド又は該第二のポリペ
プチドは、T細胞生存モチーフ、例えば、本明細書に記載されるいずれかのT細胞生存モチ
ーフを含む。
【0025】
他の具体的な実施態様において、該第一の抗原は腫瘍細胞、例えば、固形腫瘍又は血液
癌細胞中の細胞上の抗原である。具体的な実施態様において、該第一の抗原は、腫瘍関連
抗原又は腫瘍特異的抗原、例えば、Her2、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PSMA(前立腺特異
的膜抗原)、B細胞成熟抗原(BCMA)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗
原(CEA)、癌抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、上皮性膜タンパク質
(EMA)、上皮性腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、CD34、
CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維酸性タン
パク質(GFAP)、肉眼的嚢胞性疾患液体タンパク質(GCDFP-15)、HMB-45抗原、タンパク
質メラン-A(Tリンパ球に認識されるメラノーマ抗原;MART-1)、myo-D1、筋特異的アク
チン(MSA)、ニューロフィラメント、神経特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホス
ファターゼ、シナプトフィシン、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナー
ゼイソ酵素タイプM2の二量体形(腫瘍M2-PK)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパ
ク質である。特定の実施態様において、該腫瘍関連抗原は、CD19、CD22、CD27、CD30、CD
70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパ
ク質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP
(T細胞受容体ガンマオルターネイトリーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、又はS
TEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上皮性抗原)である。
【0026】
他の具体的な実施態様において、該第一の抗原は、インテグリンαvβ3(CD61)、ガラ
クチン、K-Ras(V-Ki-ras2キルステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子)又はRal-Bである。
【0027】
特定の具体的な実施態様において、該第二の細胞内シグナルドメインは、免疫受容体チ
ロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、例えば、CD3ζシグナルドメインを含む、ポリペ
プチド配列を含む。具体的な実施態様において、該第二の抗原は成長因子、サイトカイン
、又はインターロイキンである。他の具体的な実施態様において、該第二の抗原は、血管
形成又は脈管形成に関連する、成長因子、サイトカイン、又はインターロイキン、例えば
、VEGF、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8である。他のより具体的な実施態様において、
該第二のキメラ受容体によるシグナル伝達は、低酸素関連因子、例えば、HIF-1α、HIF-1
β、HIF-2α、HIF-2β、HIF-3α、又はHIF-3βが活性化することにより誘導される。他の
具体的な実施態様において、該第二の抗原はインターロイキンである。他の具体的な実施
態様において、該第二の抗原はDAMP、例えば、熱ショックタンパク質、HMGB1、S100A8、S
100A9、SAA、DNA、ATP、尿酸、又はヘパリン硫酸である。他の具体的な実施態様において
、該第二の抗原は、投与ペプチド、例えば、抗体又は合成ポリペプチドである。他の具体
的な実施態様において、該第二の抗原は、腫瘍細胞により提示される抗原に結合する、抗
体上の抗原である。特定の具体的な実施態様において、該第一のポリペプチド及び/又は
該第二のポリペプチドは1以上の共刺激性ドメイン、例えば、共刺激性CD27ポリペプチド
配列、共刺激性CD28ポリペプチド配列、共刺激性OX40(CD134)ポリペプチド配列、共刺
激性4-1BB(CD137)ポリペプチド配列、TILR2、TILR4、TILR7、TILR9、Fc受容体γ鎖、Fc
受容体ε鎖、又は共刺激性誘導性T細胞共刺激性(ICOS)ポリペプチド配列のうちの1以上
を含む。先のいずれかの実施態様において、具体的な実施態様において、該第一のポリペ
プチド又は該第二のポリペプチドは、T細胞生存モチーフを含み、例えば、該T細胞生存モ
チーフは、IL-7受容体(IL-7R)の細胞内シグナルドメイン、IL-12受容体の細胞内シグナ
ルドメイン、IL-15受容体の細胞内シグナルドメイン、IL-21受容体の細胞内シグナルドメ
イン、又はトランスフォーミング成長因子β(TGFβ)受容体の細胞内シグナルドメイン
であるか、又はこれらに由来する。
【0028】
他の態様において、本明細書で提供されるのは、疾病又は疾患を有する個体を治療する
方法であり、ここで、該疾病又は疾患は、第一の抗原により特徴づけられるか、特徴づけ
ることが可能であり、かつ第二の抗原と関連する。一実施態様において、該第一の抗原は
、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
(3.1 図面の簡単な説明)
図1】4つのCARである、SP:シグナルペプチド;EC:細胞外;TM:膜貫通;IC:細胞内の略図。
【0030】
図2】4つのCARである、SP:シグナルペプチド;EC:細胞外;TM:膜貫通;IC:細胞内の略図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(4. 発明の詳細な説明)
本明細書で提供されるのは、所望の抗原を提示する細胞に方向づけられた、遺伝的に改
変された免疫系細胞、例えばTリンパ球(Tリンパ球)であり、現行のTリンパ球をベース
治療法と比較し、そのような細胞に対しより高い特異性を示すものである。一般に、現行
の改変型Tリンパ球は、キメラ抗原受容体又はCARとして知られるポリペプチドを発現する
よう改変されている。例えば、Eshharの米国特許第7,741,465号を参照されたい。CARを発
現するTリンパ球は、CAR-Tリンパ球として知られている。CARの一般構造は、細胞外部位
及び細胞内部位を含む1つのポリペプチド鎖を含み;Tリンパ球の細胞膜にCARをつなぎと
めるため、膜貫通部位が任意に追加されている。該細胞外部位は、関心のある抗原、例え
ば細胞上の抗原、例えば、腫瘍特異的抗原又は腫瘍関連抗原に結合することのできる、ド
メイン又はモチーフを含む。該細胞内部位は、CARの細胞外部位への抗原の結合に応答し
て、Tリンパ球が活性化するために必要な、主たる抗原結合シグナルを伝達することので
きる、ドメイン又はモチーフを含む。一般に、このドメインまたはモチーフは、ITAM(免
疫受容体チロシンベース活性化モチーフ)を含むか、又はそのものである。CARに適したI
TAMを含むポリペプチドは、例えば、ジータCD3鎖(CD3ζ)、又はそのITAMを含む部分を
含む。Tリンパ球が十分に活性化するために、第二の共刺激性シグナルを必要とすること
を踏まえ、より最近は、CARの設計が繰り返されており、細胞内部位に、1以上の共刺激性
モチーフ、典型的には、CD27、CD28又はCD137(4-1BB)の共刺激性部位がさらに含まれる
。そのような設計により、CARを発現するTリンパ球が、該CARの細胞外ドメインに関心の
対象となる抗原が結合した際に、十分に活性化されることを可能とし、それによりCAR-T
リンパ球が抗原を有する細胞を殺すことが可能となる。
【0032】
そのような改変型Tリンパ球は、特定の抗原を有する有害な細胞を殺すのにとても有効
となり得るが、それらには、そのような抗原を低量であるが、検出可能な量発現する正常
細胞を殺す作用もある。改変型Tリンパ球のそのような腫瘍外活性は、受容者の正常組織
に重篤な損傷、及び死さえももたらし得る。例えば、ERBB2を過剰発現する腫瘍に方向づ
けられた1010個のCAR-Tリンパ球を投与された転移性結腸癌患者は、投与後15分以内に肺
の痛みを経験し、続いて多臓器不全及び出血により死亡した。Morganらの文献 「ERBB2を
認識するキメラ抗原受容体を、遺伝子導入されたTリンパ球の投与後の、深刻な不利益事
象の事例報告(Case Report of a Serious Adverse Event Following the Administratio
n of T lymphocytes Transfected with a Chimeric Antigen Receptor Recognizing ERBB
2)」Molecular Therapy 18(4):843-851 (2010)を参照されたい。そのような有害な腫瘍
外効果は、単鎖CAR及びそれらを発現するTリンパ球の利用可能性を厳しく制限する。
【0033】
しかしながら、そのようなCARを介した腫瘍外効果は、主たる抗原結合シグナル伝達を
共刺激から分離することで低減又は排除される。その結果、抗原の結合単独では改変型T
リンパ球の活性化に十分でなくなる。例えば、ここでは主たる及び第二のシグナルの両方
が腫瘍を有する組織に特有に認められ、正常組織では認められないことが期待されよう。
本明細書に開示されるように、この分離は、共刺激性ポリぺプチド、例えばキメラ受容体
を発現するよう改変された、又は2以上の人工ポリペプチド、例えば、キメラ受容体であ
り、少なくともその1つが主たる抗原結合シグナル伝達ドメインを含み、また、共刺激性
モチーフも含むことはなく、少なくともその1つが共刺激性ドメイン又はモチーフを含む
が、主たる抗原結合シグナル伝達ドメインを含まない、キメラ受容体(2以上のキメラ受
容体は同一の抗原と結合しない)を発現するよう改変された、Tリンパ球の使用を通じて
達成される。主たるシグナル伝達ポリペプチド(生得のTCRでも、人工ポリペプチドでも
)に加え、共刺激性ポリペプチドが結合しない場合、改変型Tリンパ球は非応答状態、ア
ネルギー、又はアポトーシスに至る。
【0034】
(4.1 二重特異性改変型Tリンパ球)
(4.1.1 第一の形態)
特定の実施態様において、本明細書で提供されるのは、特定の抗原に応答して共刺激性
シグナルを提供する1つの人工共刺激性ポリペプチド、例えば、キメラ受容体を含む改変
型Tリンパ球である;しかしながら、主たる抗原結合シグナルは、生得のT細胞受容体タン
パク質を通じて伝達される。この1つのポリペプチドは、例えば第一の抗原と結合する抗
原結合ドメイン、及び1以上の共刺激性ドメインを含むが、ITAM又はCD3ζのような主たる
抗原結合シグナル生成ドメインに欠ける。この形態において、該改変型T細胞は、主たる
抗原結合シグナルについて、生得のT細胞受容体及びCD3ζシグナルタンパク質に依存する
。共刺激性ポリペプチドは、Tリンパ球の特定の抗原への応答を増強する、共刺激性シグ
ナルを提供する。特定の実施態様において、T細胞は本来、第一の抗原、例えば、腫瘍特
異的抗原(TSA)又は腫瘍関連抗原(TAA)及び人工ポリペプチド(例えばキメラ抗原受容
体)を認識し、かつ共刺激性ポリペプチドの抗原結合ドメインもまた、該第一の抗原と結
合する。他の実施態様において、T細胞は本来、第一の抗原、例えば、腫瘍特異的抗原(T
SA)又は腫瘍関連抗原(TAA)、及び人工ポリペプチド(例えば、キメラ受容体)を認識
し、及び共刺激性ポリペプチドの抗原結合ドメインは、第二の別の抗原、例えば、異なる
TSA又はTAAと結合する。他の実施態様において、T細胞は本来、第一の抗原、例えば腫瘍
特異的抗原(TSA)又は腫瘍関連抗原(TAA)、及び人工ポリペプチド(例えば、キメラ受
容体)を認識し、かつ共刺激性ポリペプチドの抗原結合ドメインは、TSA又はTAAではない
第二の抗原に結合する。
【0035】
人工ポリペプチド(例えば、キメラ受容体)の抗原結合部位は、抗原に結合するポリペ
プチドドメイン、モチーフ又は配列のいずれでもよい。特定の実施態様において、抗原結
合ドメインは、受容体の抗原結合部位、又は抗体の抗原結合部位である。例えば、抗原結
合ドメインは、受容体又はその抗原結合部位、例えば腫瘍細胞により産生されるリガンド
に対する受容体、抗体、抗体鎖、又はその抗原結合部位、Fcドメイン、グリコホスファチ
ジルイノシトールアンカードメインなどであり得る。そのため、特定の実施態様において
、該抗原結合はscFv抗体断片である。特定の他の実施態様において、抗原結合ドメインは
、ペプチド系高分子抗原結合剤、例えば、ファージディスプレイタンパク質の別形態であ
る。特定の他の実施態様において、抗原結合ドメインは抗原に直接結合しないが、抗原に
結合する改変型タンパク質に結合する。具体的な実施態様において、例えば、抗原結合ド
メインは、抗原に結合するポリペプチド又は高分子上のリガンド、例えばアビジンに結合
するリガンド、例えばビオチンを含む。様々な実施態様において、抗原結合ドメインによ
る抗原結合は、主要組織適合複合体(MHC)に関連する抗原提示に拘束され得、又はMHCに
拘束され得ない。
【0036】
特定の実施態様において、人工ポリペプチド(キメラ受容体)の内部の1以上の共刺激
性ドメインは、共刺激性CD27ポリペプチド配列、共刺激性CD28ポリペプチド配列、共刺激
性OX40(CD134)ポリペプチド配列、共刺激性4-1BB(CD137)ポリペプチド配列、又は共
刺激性誘導性T細胞共刺激性(ICOS)ポリペプチド配列のうちの1以上を含む。
【0037】
第一の抗原は関心のある任意の抗原、例えば、細胞の表面に発現する抗原でもよい。好
ましい実施態様において、該第一の抗原は、腫瘍細胞上の抗原、例えばTAA又はTSAである
。該腫瘍細胞は、例えば固形腫瘍の細胞、又は血液癌の細胞であり得る。特定の具体的な
実施態様において、該抗原は、腫瘍関連抗原、又は腫瘍特異的抗原、例えば、Her2、前立
腺幹細胞抗原(PSCA)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、B細胞成熟抗原(BCMA)、ERK5、
アルファ-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、癌抗原-125(CA-125)、CA1
9-9、カルレチニン、MUC-1、上皮性膜タンパク質(EMA)、上皮性腫瘍抗原(ETA)、チロ
シナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、
サイトケラチン、デスミン、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、肉眼的嚢胞性疾患液体
タンパク質(GCDFP-15)、HMB-45抗原、タンパク質メラン-A(Tリンパ球に認識されるメ
ラノーマ抗原;MART-1)、myo-D1、筋特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメント、
神経特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシン、チロ
グロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼイソ酵素タイプM2の二量体形(腫瘍
M2-PK)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパク質である。特定の実施態様において
、腫瘍関連抗原は、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvII
I(表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前
立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイトリ
ーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、又はSTEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上
皮性抗原)である。
【0038】
特定の実施態様において、TAA又はTSAは癌/精巣(CT)抗原、例えば、BAGE、CAGE、CTA
GE、FATE、GAGE、HCA661、HOM-TES-85、MAGEA、MAGEB、MAGEC、NA88、NY-ESO-1、NY-SAR-
35、OY-TES-1、SPANXB1、SPA17、SSX、SYCP1、又はTPTEである。
【0039】
特定の他の実施態様において、TAA又はTSAは糖類又はガングリオシド、例えば、fuc-GM
1、GM2(癌胎児性抗原免疫原性-1;OFA-I-1);GD2(OFA-I-2)、GM3、GD3などである。
【0040】
特定の他の実施態様において、TAA又はTSAはα-アクチニン-4、Bage-1、BCR-ABL、Bcr-
Abl融合タンパク質、β-カテニン、CA 125、CA 15-3(CA 27.29\BCAA)、CA 195、CA 24
2、CA-50、CAM43、Casp-8、cdc27、cdk4、cdkn2a、CEA、coa-1、dek-can融合タンパク質
、EBNA、EF2、エプスタイン-バールウイルス抗原、ETV6-AML1融合タンパク質、HLA-A2、H
LA-A11、hsp70-2、KIAAO205、Mart2、Mum-1、2、及び3、neo-PAP、ミオシンクラスI、OS-
9、pml-RARα融合タンパク質、PTPRK、K-ras、N-ras、トリオースリン酸イソメラーゼ、G
age3、4、5、6、7、GnTV、Herv-K-mel、Lage-1、NA-88、NY-Eso-1/Lage-2、SP17、SSX-2
、TRP2-Int2、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、RAGE
、GAGE-1、GAGE-2、p15(58)、RAGE、SCP-1、Hom/Mel-40、PRAME、p53、H-Ras、HER-2/neu
、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7、
TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG
-72-4、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、13-カテニン、Mum-1、p16、TAGE、P
SMA(前立腺特異的膜抗原)、B細胞成熟抗原(BCMA)、CT7、テロメラーゼ、43-9F、5T4
、791Tgp72、13HCG、BCA225、BTAA、CD68\KP1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733(EpCAM)
、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB\70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90
、TAAL6、TAG72、TLP、又はTPSである。
【0041】
他の具体的な実施態様において、該第一の抗原は、インテグリンαvβ3(CD61)、ガラ
クチン、K-Ras(V-Ki-ras2キルステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子)、又はRal-Bである
【0042】
他の腫瘍関連及び腫瘍特異的抗原は当業者に公知であり、本明細書で提供される改変型
Tリンパ球の標的となり得る。
【0043】
人工ポリペプチドの抗原結合ドメインに結合される、第二の抗原がTSA又はTAAではない
、特定の実施態様において、抗原は、例えば成長因子、サイトカイン又はインターロイキ
ン、例えば血管形成又は脈管形成に関連する、成長因子、サイトカイン、又はインターロ
イキンであり得る。そのような成長因子、サイトカイン、又はインターロイキンは、例え
ば血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由来成長因子
(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、又はインターロイキ
ン-8(IL-8)を含み得る。
【0044】
また、腫瘍は該腫瘍近傍に限られた、低酸素環境を生み出すこともできる。そのように
、他のより具体的な実施態様において、該人工ポリペプチド(例えば、キメラ受容体)に
よるシグナル伝達は、低酸素関連因子、例えば、HIF-1α、HIF-1β、HIF-2α、HIF-2β、
HIF-3α、又はHIF-3βが活性化することにより誘導され、又は別段に低酸素応答エレメン
トが活性化することにより誘導される。
【0045】
また、腫瘍ができると、正常組織に局所の損傷ができ、損傷関連分子パターン分子とし
て知られる分子(DAMP;また、アラーミンとしても知られる)が放出され得る。特定の実
施態様において、第二の抗原はDAMP、例えば、熱ショックタンパク質、染色体関連タンパ
ク質高移動度グループボックス1(HMGB1)、S100A8(MRP8、カルグラニュリンA)、S100A
9(MRP14、カルグラニュリンB)、血清アミロイドA(SAA)、デオキシリボ核酸、アデノ
シントリリン酸、尿酸、又はヘパリン硫酸である。
【0046】
(4.1.2 第二の形態、基本構造)
一態様において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって、第一の抗原
に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及び第一の細胞内シグナルドメインを含み、
共刺激性ドメインを含まない第一のポリペプチド;及び第二の抗原に結合する第二の細胞
外抗原結合ドメイン、又は該第二の抗原に結合する受容体;及び第二の細胞内シグナルド
メインを含む、第二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改
変型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの両方が、そ
れぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、最大の細胞傷害性
を呈するようになる。一般に、2つのポリペプチドは、両方ともキメラ受容体である。該
第一の抗原結合ドメインに該第一の抗原が結合し、該第二の結合ドメインに該第二の抗原
が結合しないこと、又は該第二の抗原結合ドメインに該第二の抗原が結合し、該第一の結
合ドメインに第一の抗原が結合しないことのいずれかにより、該改変型Tリンパ球のアネ
ルギーが誘導され、又は改変型Tリンパ球が、第一の抗原結合ドメインへの第一の抗原の
結合単独に対し非応答性になる。
【0047】
第一のポリペプチド及び第二のポリペプチドの抗原結合部位は、独立に、抗原に結合す
る任意のポリペプチドドメイン、モチーフ又は配列であり得る。該第一の抗原結合ドメイ
ン及び該第二の抗原結合ドメインは独立に、受容体の抗原結合部位又は抗体の抗原結合部
位である。例えば、第一及び第二の抗原結合ドメインは受容体又はその抗原結合部位、例
えば、腫瘍細胞により産生されるリガンドに対する受容体、抗体、抗体鎖、又はその抗原
結合部位、Fcドメイン、グリコホスファチジルイノシトールアンカードメインなどであり
得る。そのため、特定の実施態様において、該第一の抗原結合ドメイン又は該第二の抗原
結合ドメインのいずれか又は両方は、scFv抗体断片である。特定の他の実施態様において
、第一及び第二の抗原結合ドメインはペプチド系高分子抗原結合剤、例えばファージディ
スプレイタンパク質の別形態であり得る。様々な実施態様において、抗原結合ドメインに
よる抗原の結合は主要組織適合複合体(MHC)に関連する抗原提示に拘束され得るか、又
はMHCに拘束され得ない。
【0048】
該細胞外及び細胞内部位に加え、該第一のポリペプチド及び/又は該第二のポリペプチ
ドは、膜貫通ドメインをさらに含むことが好ましい。膜貫通ドメインは、任意の膜貫通タ
ンパク質の膜貫通ドメインから得ることができ、又はこれらに由来することができ、かつ
そのような膜貫通ドメインの全て又は一部を含むことができる。具体的な実施態様におい
て、膜貫通ドメインは例えばCD16、サイトカイン受容体、及びインターロイキン受容体、
又は成長因子受容体などから得ることができ、又はこれらに由来することができる。
【0049】
また、第一のポリペプチド又は該第二のポリペプチドは、T細胞生存モチーフを含んで
もよい。T細胞生存モチーフは、抗原による刺激後のTリンパ球の生存を促進する、任意の
ポリペプチド配列又はモチーフであり得る。特定の実施態様において、T細胞生存モチー
フは、CD3、CD28、IL-7受容体(IL-7R)の細胞内シグナルドメイン、IL-12受容体の細胞
内シグナルドメイン、IL-15受容体の細胞内シグナルドメイン、IL-21受容体の細胞内シグ
ナルドメイン、又はトランスフォーミング成長因子β(TGFβ)受容体の細胞内シグナル
ドメインであるか、又はこれらに由来する。
【0050】
第一のポリペプチドの第一の細胞内シグナルドメインは、第一のポリペプチドの第一の
抗原結合ドメインを起点とする抗原結合シグナルを、例えば生得のTリンパ球受容体のCD3
ζ(CD3ジータ)鎖と同様の様式で伝達することのできる、任意のポリペプチドであり得
る。特定の実施態様では、第一の細胞内シグナルドメインは、免疫受容体チロシンベース
活性化モチーフ(ITAM)を含むポリペプチド配列を含む。ポリペプチド配列は、CD3ζシ
グナルドメイン又はそのシグナル伝達バリアントであることが好ましい。
【0051】
第二のポリペプチドは、1以上の共刺激性ドメインを含み、第二の抗原が第二のポリペ
プチドの第二の抗原結合ドメインに結合したときに、第二のポリペプチドが共刺激を提供
することを可能とする。任意の共刺激性モチーフ、又はその機能的部位が使用され得る。
特定の具体的な実施態様において、1以上の共刺激性ドメインは、共刺激性CD27ポリペプ
チド配列、共刺激性CD28ポリペプチド配列、共刺激性OX40(CD134)ポリペプチド配列、
共刺激性4-1BB(CD137)ポリペプチド配列、又は共刺激性誘導性T細胞共刺激性(ICOS)
ポリペプチド配列のうちの1以上を含む。
【0052】
第一の抗原は、関心のある抗原、例えば細胞表面に発現する抗原であり得る。好ましい
実施態様において、該第一の抗原は腫瘍細胞上の抗原、例えば、TSA又はTAA、例えば、先
の第5.1節に開示するTSA又はTAAのいずれかである。該腫瘍細胞は例えば、固形腫瘍又は
血液癌の細胞であり得る。
【0053】
該抗原は腫瘍又は癌種の細胞、例えばリンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、副腎皮質癌、
甲状腺癌、上咽頭癌、メラノーマ、例えば悪性メラノーマ、皮膚癌、結腸癌、類腱腫、線
維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、ユーイング肉腫、末梢性原始神経外胚葉腫瘍、固
形胚細胞腫瘍、肝芽細胞腫、神経芽細胞腫、非横紋筋肉腫軟部組織肉腫(non-rhabdomyos
arcoma soft tissue sarcoma)、骨肉腫、網膜芽腫、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、神経
膠芽細胞腫、粘液腫、線維腫、脂肪腫などの細胞上に発現する任意の抗原であり得る。よ
り具体的な実施態様において、該リンパ腫は、慢性リンパ性白血病(小型リンパ性リンパ
腫)、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンシュトレームマ
クログロブリン血症、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、節外周辺帯
B細胞リンパ腫、MALTリンパ腫、節周辺帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞
リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管
内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ腫、Tリンパ球前リ
ンパ球性白血病、Tリンパ球大型顆粒リンパ球性白血病、侵攻性NK細胞白血病、成人Tリン
パ球白血病/リンパ腫、節外性NK/Tリンパ球リンパ腫、鼻型、腸疾患型Tリンパ球リンパ腫
、肝脾Tリンパ球リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉腫、セザリー症候群、原発
性皮膚未分化大細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症、血管免疫芽球性Tリンパ球リンパ腫、
末梢性Tリンパ球リンパ腫(不特定)、未分化大細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、又は
非ホジキンリンパ腫であり得る。
【0054】
第二の抗原は、第一の抗原と異なる抗原であり得るが、第一の抗原に関係するものであ
ることが好ましい。例えば、第一及び第二の抗原の両方が、同じ腫瘍細胞種の上に存在す
る腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原であり得る。第一の抗原が腫瘍関連抗原又は腫瘍特異
的抗原であり、該第二の抗原は腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原ではないことが好ましい
。そのような実施態様において、第二の抗原は、特定の実施態様において、腫瘍の一側面
、例えば、腫瘍の環境に関係する。例えば、腫瘍は腫瘍を取り囲む組織において、炎症状
態を誘導することができ、腫瘍の末梢部に向けての、及び末梢部での血管形成を増進する
、血管新生増殖因子、インターロイキン、及び/又はサイトカインを放出することができ
る。そのため、具体的な実施態様において、第二の抗原は成長因子、サイトカイン又はイ
ンターロイキン、例えば血管形成又は脈管形成に関連する、成長因子、サイトカイン、又
はインターロイキンである。そのような成長因子、サイトカイン、又はインターロイキン
には、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由
来成長因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、又はイン
ターロイキン-8(IL-8)が含まれ得る。
【0055】
また、腫瘍は腫瘍近傍に限られた、低酸素環境を生み出すこともできる。そのように、
他のより具体的な実施態様において、該第二のキメラ受容体によるシグナル伝達は、低酸
素関連因子、例えばHIF-1α、HIF-1β、HIF-2α、HIF-2β、HIF-3α、又はHIF-3βが活性
化することにより誘導され、又は別に、低酸素応答エレメントが活性化することにより誘
導される。
【0056】
また、腫瘍ができると、正常組織に局所の損傷ができ、損傷関連分子パターン分子(DA
MP;また、アラーミンとしても知られる。)として知られる分子が放出され得る。特定の
実施態様において、第二の抗原はDAMP、例えば熱ショックタンパク質、染色体関連タンパ
ク質高移動度グループボックス1(HMGB1)、S100A8(MRP8、カルグラニュリンA)、S100A
9(MRP14、カルグラニュリンB)、血清アミロイドA(SAA)、デオキシリボ核酸、アデノ
シントリリン酸、尿酸、又はヘパリン硫酸などである。
【0057】
キメラ受容体、例えば第二のキメラ受容体ポリペプチドを、抗原本来のものではない抗
原又は取り囲む組織に方向づけることは可能である。例えば、腫瘍細胞、又は取り囲む正
常組織の細胞は、細胞上の少なくとも一つの抗原に結合する抗体と接触し得る。この場合
、抗体上の任意の抗原自体が、第二のキメラ受容体ポリペプチドの第二の抗原結合部位に
結合できる。特定の実施態様において、第一のポリペプチドの、第一の抗原結合部位に結
合する第一の抗原は、腫瘍細胞により提示される抗原に結合する、抗体上の抗原である。
特定の実施態様において、第二のポリペプチドの、第二の抗原結合部位に結合する第二の
抗原は、腫瘍細胞により提示される抗原に結合する、抗体上の抗原である。特定の実施態
様において、第一の抗原は第一の抗体上の抗原であり、第二の抗原は第二の抗体上の抗原
である。そのような実施態様において、第一の抗体は、例えば腫瘍関連抗原又は腫瘍特異
的抗原に結合する抗体であり得、第二の抗体は腫瘍に関連するサイトカイン、インターロ
イキン、成長因子、DAMP、又は他の非TAA、非TSAタンパク質に対する抗体である。
【0058】
(4.1.3. 具体的実施態様)
そのため、一形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a
) 第一の抗原に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン及び細胞内CD3ζシグナルドメイ
ンを含み、共刺激性ドメインを含まない、第一のポリペプチド;及びb) 血管形成又は脈
管形成因子に結合する細胞外抗原結合ドメイン及び第二の細胞内シグナルドメインを含む
、第二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球
は該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の
抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、最大の細胞傷害性を呈するように
なる。
【0059】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原に結合するscFv又はその抗原結合部位、及び細胞内CD3ζシグナルドメインを含み、
共刺激性ドメインを含まない、第一のポリペプチド;及びb) 血管形成又は脈管形成因子
に結合する細胞外抗原結合ドメイン、及び第二の細胞内シグナルドメインを含む、第二の
ポリペプチドを含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該第
一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及
び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、最大の細胞傷害性を呈するようになる。
【0060】
より具体的な形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a
) 腫瘍関連抗原(TAA)又は腫瘍特異的抗原(TSA)である、第一の抗原に結合する細胞外
抗原結合ドメイン、及び細胞内CD3ζシグナルドメインを含み、共刺激性ドメインを含ま
ない、第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ドメイ
ン、及び第二の細胞内シグナルドメインを含み、該第二の抗原がVEGF、bFGF、PDGF、HGF
、IGF、又はIL-8である、第二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリンパ球である。ここ
で、該改変型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの両
方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化される場合にのみ、最大の細
胞傷害性を呈するようになる。
【0061】
他のより具体的な形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であっ
て:a) 第一の抗原に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及び第一の細胞内CD3ζシ
グナルドメインを含み、共刺激性ドメインを含まず、該第一の抗原がTAA又はTSAである、
第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、及
びCD27、CD28、OX40、ICOS、及び4-1BBのうちの1以上に由来する、共刺激性シグナルドメ
インを含む第二の細胞内シグナルドメインを含み、該第二の抗原がVEGF、bFGF、PDGF、HG
F、IGF、又はIL-8である、第二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリンパ球である。こ
こで、該改変型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの
両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、最大の
細胞傷害性を呈し得る。
【0062】
他のより具体的な形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であっ
て:a) 第一の抗原に結合する細胞外抗原結合ドメイン;及び細胞内CD3ζシグナルドメイ
ンを含み、共刺激性ドメインを含まず、該第一の抗原が、Her2、PSCA、PSMA、BCMA、ERK5
、AFP、CEA、CA-125、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、EMA、ETA、チロシナーゼ、MAGE、C
D34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、GFAP、GCDFP-15
、HMB-45抗原、MART-1、myo-D1、MSA、ニューロフィラメント、NSE、胎盤アルカリホスフ
ァターゼ、シナプトフィシン、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、腫瘍M2-PK、CD19、C
D22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(表皮性成長因子バリアン
トIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、
プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイトリーディングフレームタンパク
質)、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上皮性抗原)、異常rasタンパク質
、又は異常p53タンパク質である、第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原と結合する細
胞外抗原結合ドメイン、及びCD27、CD28、OX40、ICOS、及び4-1BBのうちの1以上に由来す
る共刺激性シグナルドメインを含む、第二の細胞内シグナルドメインを含み、該第二の抗
原がVEGF、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8である、第二のポリペプチドを含む前記改変
型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン及び該第
二のシグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化さ
れた場合にのみ、最大の細胞傷害性を呈するようになる。
【0063】
他のより具体的な形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であっ
て:a) 第一の抗原に結合する細胞外抗原結合ドメイン、及び細胞内CD3ζシグナルドメイ
ンを含み、共刺激性ドメインを含まず、該第一の抗原が、Her2、PSCA、PSMA、BCMA、ERK5
、AFP、CEA、CA-125、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、EMA、ETA、チロシナーゼ、MAGE、C
D34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、GFAP、GCDFP-15
、HMB-45抗原、MART-1、myo-D1、MSA、ニューロフィラメント、NSE、胎盤アルカリホスフ
ァターゼ、シナプトフィシン、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、腫瘍M2-PK、CD19、C
D22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(表皮性成長因子バリアン
トIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、
プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイトリーディングフレームタンパク
質)、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上皮性抗原)、異常rasタンパク質
、又は異常p53タンパク質である、第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原と結合する、
第二の細胞外抗原結合ドメイン、及びCD27、CD28、OX40、ICOS、及び4-1BBの、それぞれ
に由来する共刺激性シグナルドメインを含む、細胞内シグナルドメインを含み、該第二の
抗原がVEGF、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8である、第二のポリペプチドを含む、前記
改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン及び
該第二のシグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性
化された場合にのみ、最大の細胞傷害性を呈するようになる。
【0064】
他のより具体的な形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であっ
て:a) 第一の抗原に結合するscFv又はその抗原結合部位;及び細胞内CD3ζシグナルドメ
インを含み、共刺激性ドメインを含まず、該第一の抗原が、Her2、PSCA、PSMA、BCMA、ER
K5、AFP、CEA、CA-125、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、EMA、ETA、チロシナーゼ、MAGE
、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、GFAP、GCDFP
-15、HMB-45抗原、MART-1、myo-D1、MSA、ニューロフィラメント、NSE、胎盤アルカリホ
スファターゼ、シナプトフィシン、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、腫瘍M2-PK、CD1
9、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(表皮性成長因子バリ
アントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ
)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイトリーディングフレームタン
パク質)、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上皮性抗原)、異常rasタンパ
ク質、又は異常p53タンパク質である、第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原と結合す
る細胞外抗原結合ドメイン、及びCD27、CD28、OX40、ICOS、及び4-1BBのそれぞれに由来
する共刺激性シグナルドメインを含む第二の細胞内シグナルドメインを含み、該第二の抗
原がVEGF、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8である、第二のポリペプチドを含む、前記改
変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン及び該
第二のシグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化
された場合にのみ、最大の細胞傷害性を呈するようになる。
【0065】
先の具体的な形態のいずれにおいても、該第一のポリペプチド又は該第二のポリペプチ
ドのいずれか又は両方が、T細胞生存モチーフ、例えばCD28、IL-7R、IL-12R、IL-15R、IL
-21R、TGFβRに由来するT細胞生存モチーフを含む。
【0066】
(4.1.4. 第三の形態、基本構造)
改変型Tリンパ球内に含まれる2つのポリペプチド(例えば、キメラ受容体)は、第一の
ポリペプチドの第一の抗原結合ドメインへの、第一の抗原(例えば、TAA又はTSA)の結合
によって、主たる抗原結合シグナルは産生されないが、共刺激性シグナルが産生され、か
つ第二の抗原の結合によって、主たる抗原結合シグナルが産生されるように、設計するこ
とができる。そのような形態は、2つの抗原結合という事象が、Tリンパ球を最大限に活性
化するために行われる点で、先の第一の形態と同じ利点を享受する。
【0067】
そのため、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の抗原に結
合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及び第一の細胞内シグナルドメインを含む第一の
ポリペプチド;及びb) 第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン;及び第二
の細胞内シグナルドメインを含み、共刺激性ドメインを含まない、第二のポリペプチドを
含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該第一のシグナルド
メイン及び該第二のシグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原
により活性化された場合にのみ、最大の細胞傷害性を呈するようになる。先のように、該
第一の抗原及び該第二の抗原は、異なる抗原である。具体的な実施態様において、該第一
の抗原結合ドメインに該第一の抗原が結合し、該第二の抗原結合ドメインに該第二の抗原
が結合しないこと、又は該第二の抗原結合ドメインに該第二の抗原が結合し、該第一の結
合ドメインに第一の第二の抗原が結合しないことにより、該改変型Tリンパ球のアネルギ
ーが誘導される。
【0068】
特定の実施態様において、該第一の抗原結合ドメイン及び該第二の抗原結合ドメインは
、独立に、任意の抗原結合ドメイン、例えば先の5.2節に開示する抗原結合ドメインのい
ずれか、例えば、受容体の抗原結合部位又は抗体の抗原結合部位である。より具体的な実
施態様において、該第一の抗原結合ドメイン又は該第二の抗原結合ドメインのいずれか又
は両方はscFv抗体断片である。
【0069】
第一のポリペプチドは、1以上の共刺激性ドメインを含み、それにより第一のポリペプ
チドの第一の抗原結合ドメインに、第一の抗原が結合したときに、第一のポリペプチドが
共刺激を提供することが、可能となる。任意の共刺激性モチーフ、又はそれらの機能部位
が使用され得る。特定の具体的な実施態様において、1以上の共刺激性ドメインは、共刺
激性CD27ポリペプチド配列、共刺激性CD28ポリペプチド配列、共刺激性OX40(CD134)ポ
リペプチド配列、共刺激性4-1BB(CD137)ポリペプチド配列、又は共刺激性誘導性T細胞
共刺激性(ICOS)ポリペプチド配列のうちの1以上を含む。
【0070】
第二のポリペプチドの第二の細胞内シグナルドメインは、第二のポリペプチドの第二の
抗原結合ドメインに由来する抗原結合シグナルを、例えば生得Tリンパ球受容体のCD3ζ(
CD3ジータ)鎖と同様の様式で伝達することのできる、任意のポリペプチドであり得る。
特定の実施態様において、第二の細胞内シグナルドメインは、免疫受容体チロシンベース
活性化モチーフ(ITAM)を含むポリペプチド配列を含む。ポリペプチド配列はCD3ζシグ
ナルドメイン又はそのシグナル伝達バリアントであることが好ましい。
【0071】
特定の実施態様において、該第一のポリペプチド又は該第二のポリペプチドのいずれか
は、さらに膜貫通ドメインを含む。特定の実施態様において、第一のポリペプチドは、1
以上の共刺激性ドメインを含み、これにより、第一の抗原が第二のポリペプチドの第一の
抗原結合ドメインに結合したときに、第一のポリペプチドが共刺激を提供することが可能
となる。任意の共刺激性ドメイン、又はそれらの機能部位、例えばCD27、CD28、OX40、IC
OS、及び4-1BBのそれぞれに由来する、共刺激性シグナルドメインが使用され得る。特定
の他の実施態様において、該第一のポリペプチド又は該第二のポリペプチドは、T細胞生
存モチーフを含む。
【0072】
この形態において、第一の抗原は、関心のある抗原、例えば細胞の表面上に発現する抗
原でよい。好ましい実施態様において、該第一の抗原は、腫瘍細胞上の抗原である。腫瘍
細胞は例えば、固形腫瘍又は血液癌、例えば先の5.2節に開示するいずれかの種類の癌又
は腫瘍の細胞であり得る。特定の具体的な実施態様において、該抗原はTAA又はTSA、例え
ば先の5.1節に開示するいずれかのTAA又はTSAである。
【0073】
第二の抗原は、第一の抗原と異なる任意の抗原であり得るが、第一の抗原と関係するも
のであることが好ましい。例えば、第一及び第二の抗原の両方が、同じ腫瘍細胞腫上に存
在する腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原であり得る。第一の抗原はTAA又はTSAであり、該
第二の抗原はTAA又はTSAでないことが好ましい。そのような実施態様において、第二の抗
原は、特定の実施態様において、腫瘍の一側面、例えば、腫瘍の環境と関係し得る。例え
ば、腫瘍は該腫瘍を取り囲む組織中に炎症状態を誘導し、血管形成を増進する、血管新生
増殖因子、インターロイキン、及び/又はサイトカインを腫瘍末梢部の中に、及び末梢部
で放出することができる。そのため、具体的な実施態様では、第二の抗原は成長因子、サ
イトカイン、又はインターロイキン、例えば、血管形成又は脈管形成に関連する成長因子
、サイトカイン、又はインターロイキン、例えば、VEGF、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL
-8である。他のより具体的な実施態様において、該第二のキメラ受容体によるシグナル伝
達は、低酸素関連因子、例えば、HIF-1α、HIF-1β、HIF-2α、HIF-2β、HIF-3α、又はH
IF-3βが活性化することによって誘導される。特定の他の実施態様において、第二の抗原
はDAMP、例えば、熱ショックタンパク質、HMGB1、S100A8(MRP8、カルグラニュリンA)、
S100A9(MRP14、カルグラニュリンB)、SAA、デオキシリボ核酸、アデノシントリリン酸
、尿酸、又はヘパリン硫酸である。
【0074】
(4.1.5. 具体的な実施態様)
そのため、一形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a
) 第一の抗原に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及び第一の細胞内シグナルドメ
インを含む、第一のポリペプチド;及びb) 血管形成又は脈管形成因子に結合する第二の
細胞外抗原結合ドメイン、及び細胞内CD3ζシグナルドメインを含み、共刺激性ドメイン
を含まない第二のポリペプチド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変
型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの両方が、それ
ぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、最大の細胞傷害性を
呈するようになる。
【0075】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原に結合するscFv又はその抗原結合部位、及び第一の細胞内シグナルドメインを含む第
一のポリペプチド;及びb) 血管形成又は脈管形成因子に結合する第二の細胞外抗原結合
ドメイン、及び細胞内CD3ζシグナルドメインを含み、共刺激性ドメインを含まない、第
二のポリペプチド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は
、該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の
抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、最大の細胞傷害性を呈するように
なる。
【0076】
より具体的な形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a
) 第一の抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及び第一の細胞内シグナルドメ
インを含み、該第一の抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)又は腫瘍特異的抗原(TSA)である、
第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原と結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、及
び細胞内CD3ζシグナルドメインを含み、共刺激性ドメインを含まず、該第二の抗原が、V
EGF、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8である、第二のポリペプチドを含む、前記改変型T
リンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン及び該第二の
シグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された
場合にのみ、最大の細胞傷害性を呈するようになる。
【0077】
他のより具体的な形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であっ
て:a) 第一の抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及びCD27、CD28、OX40、I
COS、及び4-1BBのうちの1以上に由来する共刺激性シグナルドメインを含む第一の細胞内
シグナルドメインを含み、該第一の抗原が、TAA又はTSAである、第一のポリペプチド;及
びb) 第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、及び細胞内CD3ζシグナルド
メインを含み、共刺激性ドメインを含まず、該第二の抗原が、VEGF、bFGF、PDGF、HGF、I
GF、又はIL-8である、第二のポリペプチド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。ここ
で、該改変型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの両
方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、最大の細
胞傷害性を呈するようになる。
【0078】
他のより具体的な形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であっ
て:a) 第一の抗原に結合する細胞外抗原結合ドメイン、及びCD27、CD28、OX40、ICOS、
及び4-1BBのうちの1以上に由来する共刺激性シグナルドメインを含む細胞内シグナルドメ
インを含み、該第一の抗原が、Her2、PSCA、PSMA、BCMA、ERK5、AFP、CEA、CA-125、CA19
-9、カルレチニン、MUC-1、EMA、ETA、チロシナーゼ、MAGE、CD34、CD45、CD99、CD117、
クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、GFAP、GCDFP-15、HMB-45抗原、MART-1、my
o-D1、MSA、ニューロフィラメント、NSE、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシ
ン、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、腫瘍M2-PK、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、G
D2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパク質1
7(Sp17)、メソセリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細
胞受容体ガンマオルターネイトリーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(プ
ロステイト1の6回膜貫通型上皮性抗原)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパク質で
ある、第一のポリペプチド;及び第二の抗原に結合する細胞外抗原結合ドメイン、及び細
胞内CD3ζシグナルドメインを含み、共刺激性ドメインを含まず、該第二の抗原がVEGF、b
FGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8である、第二のポリペプチド;を含む、前記改変型Tリン
パ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグ
ナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合
にのみ、最大の細胞傷害性を呈するようになる。
【0079】
他のより具体的な形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であっ
て:a) 第一の抗原に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及びCD27、CD28、OX40、I
COS、及び4-1BBのそれぞれに由来する共刺激性シグナルドメインを含む細胞内シグナルド
メインを含み、該第一の抗原が、Her2、PSCA、PSMA、BCMA、ERK5、AFP、CEA、CA-125、CA
19-9、カルレチニン、MUC-1、EMA、ETA、チロシナーゼ、MAGE、CD34、CD45、CD99、CD117
、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、GFAP、GCDFP-15、HMB-45抗原、MART-1、
myo-D1、MSA、ニューロフィラメント、NSE、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィ
シン、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、腫瘍M2-PK、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70
、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパク
質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T
細胞受容体ガンマオルターネイトリーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(
プロステイト1の6回膜貫通型上皮性抗原)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパク質
である、第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ドメ
イン、及び細胞内CD3ζシグナルドメインを含み、共刺激性ドメインを含まず、該第二の
抗原が、VEGF、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8である、第二のポリペプチド;を含む、
前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン
及び該第二のシグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により
活性化された場合にのみ、最大の細胞傷害性を呈するようになる。
【0080】
他のより具体的な形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であっ
て:a) 第一の抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及びCD27、CD28、OX40、I
COS、及び4-1BBのそれぞれに由来する、共刺激性シグナルドメインを含む、細胞内シグナ
ルドメインを含み、共刺激ドメインを含まず、該第一の細胞外抗原結合ドメインが、csFv
又はその抗原結合部位であり、かつ、該第一の抗原が、Her2、PSCA、PSMA、BCMA、ERK5、
AFP、CEA、CA-125、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、EMA、ETA、チロシナーゼ、MAGE、CD3
4、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、GFAP、GCDFP-15、
HMB-45抗原、MART-1、myo-D1、MSA、ニューロフィラメント、NSE、胎盤アルカリホスファ
ターゼ、シナプトフィシン、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、腫瘍M2-PK、CD19、CD2
2、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(表皮性成長因子バリアント
III)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、プ
ロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイトリーディングフレームタンパク質
)、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上皮性抗原)、異常rasタンパク質、
又は異常p53タンパク質である、第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原に結合する細胞
外抗原結合ドメイン、及び細胞内CD3ζシグナルドメインを含み、該第二の抗原が、VEGF
、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8である、第二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリ
ンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該第一のシグナルドメイン及び該第二のシ
グナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場
合にのみ、最大の細胞傷害性を呈するようになる。
【0081】
先の特定の形態のいずれにおいても、該第一のポリペプチド又は該第二のポリペプチド
のいずれか又は両方が、T細胞生存モチーフ、例えば、CD28、IL-7R、IL-12R、IL-15R、IL
-21R、TGFβRに由来するT細胞生存モチーフを含む。
【0082】
(4.1.6. 第四の形態、基本構造)
第四の形態において、改変型Tリンパ球内に含まれる2つのキメラ受容体は、第一の抗原
に方向づけられた第一のキメラ受容体が、主たる抗原結合シグナルドメイン及び共刺激性
ドメインの両方を含むが、T細胞生存モチーフを含むポリペプチド配列を含まず、対し、
第二の抗原に方向づけられた第二のキメラ受容体が、T細胞生存モチーフを含むポリペプ
チド配列を含むように構築することができる。この形態において、Tリンパ球は所望の抗
原を発現する細胞へ方向づけられ、かつ、抗原の結合に際し、抗原結合及び共刺激性シグ
ナルが生成する;しかしながら、第二の抗原に第二のキメラ受容体が結合しない場合には
、Tリンパ球は生存へと向かわない。かくして、腫瘍外効果は、再び、排除され、軽減さ
れる。
【0083】
そのため、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって、a) 第一の抗原に結
合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、シグナルドメイン、及び1以上の共刺激性モチー
フを含む、第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ド
メイン、及びT細胞生存モチーフを含み、共刺激性モチーフを含まない、第二のポリペプ
チド;を含む、改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該シグナルドメ
イン及び該T細胞生存モチーフの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により
活性化された場合にのみ、生存する。特定の実施態様において、該T細胞生存モチーフは
、IL-7受容体細胞内T細胞生存モチーフであり、CD28、IL-7R、IL-12R、IL-15R、IL-21R、
又はTGFβRに由来するT細胞生存モチーフである。特定の実施態様において、該第一のポ
リペプチド又は該第二のポリペプチドのいずれか又は両方は、膜貫通ドメインを含む。よ
り具体的な実施態様において、該第二のポリペプチドは、T細胞生存モチーフを含むCD27
、CD28、IL-7R、IL-12R、IL-15R、IL-21R、又はTGFβRのドメインを含む。
【0084】
先の記載の通り、第一の抗原結合ドメイン及び第二の抗原結合ドメインは、構造的に独
立した、任意の抗原結合ドメイン、例えば、先の5.2節に開示する抗原結合ドメインのい
ずれかであり、例えば、受容体の抗原結合部位又は抗体の抗原結合部位である。より具体
的な実施態様において、該第一の抗原結合ドメイン又は該第二の抗原結合ドメインのいず
れか又は両方は、scFv抗体断片である。第一の抗原は、関心のある抗原、例えば、細胞表
面上に発現する抗原でよい。好ましい実施態様において、該第一の抗原は、腫瘍細胞上の
抗原である。腫瘍細胞は、例えば、固形腫瘍又は血液癌、例えば、先の5.2節に開示する
いずれかの種類の癌又は腫瘍の細胞であり得る。特定の具体的な実施態様において、該抗
原は、TAA又はTSA、例えば、先の5.1節に開示するTAA又はTSAのいずれかである。第二の
抗原は、第一の抗原とは別のものであり、血管形成又は脈管形成因子、例えば、先の5.1
節に開示する血管形成又は脈管形成因子のいずれか;又は任意のDAMP、例えば、先の5.1
節で開示するDAMPであり得る。他の具体的な実施態様において、該第二のキメラ受容体に
よるシグナル伝達は、低酸素関連因子、例えばHIF-1α、HIF-1β、HIF-2α、HIF-2β、HI
F-3α、又はHIF-3βの活性化により誘導される。
【0085】
第一のポリペプチドの第一の細胞内シグナルドメインは、第一のポリペプチドの第一の
抗原結合ドメインを起点とする抗原結合シグナルを、例えば生得のTリンパ球受容体のCD3
ζ(CD3ジータ)鎖と同様の様式で、伝達できる任意のポリペプチドであり得る。特定の
実施態様において、第二の細胞内シグナルドメインは、免疫受容体チロシンベース活性化
モチーフ(ITAM)を含むポリペプチド配列を含む。ポリペプチド配列は、CD3ζシグナル
ドメイン又はそのシグナル伝達バリアントであることが好ましい。第一のポリペプチドは
、1以上の共刺激性ドメイン、例えば、任意の共刺激性モチーフ又はそれらの機能部位、
例えば、共刺激性CD27、CD28、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、又はICOSのポリペプチ
ド配列をさらに含む。
【0086】
(4.1.7. 具体的実施態様)
一形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の抗
原に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナルドメイン、及び1以上
の共刺激性モチーフを含む、第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原と結合する第二の
細胞外抗原結合ドメイン、及びT細胞生存モチーフを含み、共刺激性モチーフを含まない
、第二のポリペプチド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ
球は、該シグナルドメイン及び該T細胞生存モチーフの両方が、それぞれ該第一の抗原及
び該第二の抗原により活性化された場合にのみ生存する。
【0087】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナルドメイン、及びCD2
7、CD28、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、又はICOSに由来する共刺激性ポリペプチド配
列を含む、第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ド
メイン、及びT細胞生存モチーフを含み、共刺激性モチーフを含まない、第二のポリペプ
チド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該シグナル
ドメイン及び該T細胞生存モチーフの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原に
より活性化された場合にのみ生存する。
【0088】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナルドメイン、及びCD2
7、CD28、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、又はICOSに由来する共刺激性ポリペプチド配
列を含む第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原と結合する第二の細胞外抗原結合ドメ
イン、及びT細胞生存モチーフを含み、共刺激性モチーフを含まず、該第二の抗原が、血
管形成若しくは脈管形成因子、又はDAMPである、第二のポリペプチド;を含む前記改変型
Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該シグナルドメイン及び該T細胞生存モ
チーフの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ
、生存する。他のより具体的な実施態様においては、該第二のキメラ受容体によるシグナ
ル伝達は、低酸素関連因子、例えば、HIF-1α、HIF-1β、HIF-2α、HIF-2β、HIF-3α、
又はHIF-3βが活性化することにより誘導される。
【0089】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナルドメイン、及びCD2
7、CD28、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、又はICOSに由来する共刺激性ポリペプチド配
列を含む第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ドメ
イン、及びT細胞生存モチーフを含み、共刺激性モチーフを含まず、該第二の抗原が、VEG
F、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8である、第二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリ
ンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該シグナルドメイン及び該T細胞生存モチ
ーフの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ生
存する。
【0090】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナルドメイン、及びCD2
8、OX40、及び4-1BBに由来する共刺激性ポリペプチド配列を含む、第一のポリペプチド;
及びb) 第二の抗原と結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、及びT細胞生存モチーフを
含み、共刺激性モチーフを含まない、第二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリンパ球
である。ここで、該改変型リンパ球は、該シグナルドメイン及び前記T細胞生存モチーフ
の両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ生存す
る。
【0091】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であり:a) 第一の抗
原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナルドメイン、及びCD27
、CD28、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、又はICOSに由来する共刺激性ポリペプチド配
列を含み、該第一の抗原がTAA又はTSAである、第一のポリペプチド、及びb) 第二の抗原
と結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、及びT細胞生存モチーフを含み、共刺激性モ
チーフを含まない、第二のポリペプチド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで
、該改変型リンパ球は、該シグナルドメイン及び該T細胞生存モチーフの両方が、それぞ
れ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ生存する。
【0092】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナルドメイン、及びCD2
7、CD28、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、又はICOSに由来する共刺激性ポリペプチド配
列を含み、該第一の抗原が、TAA又はTSAである、第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗
原と結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、及びT細胞生存モチーフを含み、共刺激性
モチーフを含まず、該第二の抗原が、VEGF、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8である、第
二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、
該シグナルドメイン及び該T細胞生存モチーフの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第
二の抗原により活性化された場合にのみ生存する。
【0093】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン;細胞内CD3ζシグナルドメイン;及びCD2
7、CD28、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、又はICOSに由来する共刺激性ポリペプチド配
列を含み、該第一の抗原が、Her2、PSCA、PSMA、BCMA、ERK5、AFP、CEA、CA-125、CA19-9
、カルレチニン、MUC-1、EMA、ETA、チロシナーゼ、MAGE、CD34、CD45、CD99、CD117、ク
ロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、GFAP、GCDFP-15、HMB-45抗原、MART-1、myo-
D1、MSA、ニューロフィラメント、NSE、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシン
、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、腫瘍M2-PK、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2
(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17
(Sp17)、メソセリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞
受容体ガンマオルターネイトリーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(プロ
ステイト1の6回膜貫通型上皮性抗原)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパク質であ
る、第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原と結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン
、及びT細胞生存モチーフを含み、共刺激性モチーフを含まない、第二のポリペプチドを
含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該シグナルドメイン
及び該T細胞生存モチーフの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性
化された場合にのみ生存する。
【0094】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン;細胞内CD3ζシグナルドメイン;及びCD2
7、CD28、OX40及び4-1BBのそれぞれに由来する共刺激性ポリペプチド配列を含み、該第一
の抗原が、Her2、PSCA、PSMA、BCMA、ERK5、AFP、CEA、CA-125、CA19-9、カルレチニン、
MUC-1、EMA、ETA、チロシナーゼ、MAGE、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サ
イトケラチン、デスミン、GFAP、GCDFP-15、HMB-45抗原、MART-1、myo-D1、MSA、ニュー
ロフィラメント、NSE、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシン、チログロブリ
ン、甲状腺転写因子-1、腫瘍M2-PK、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシ
ドG2)、EGFRvIII(表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソ
セリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオ
ルターネイトリーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回
膜貫通型上皮性抗原)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパク質である、第一のポリ
ペプチド;及びb) 第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、及びT細胞生存
モチーフを含み、共刺激性モチーフを含まず、該第二の抗原が、VEGF、bFGF、PDGF、HGF
、IGF、又はIL-8である、第二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリンパ球である。ここ
で、該改変型リンパ球は、該シグナルドメイン及び該T細胞生存モチーフの両方が、それ
ぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ生存する。
【0095】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) Her2、
PSCA、PSMA、BCMA、ERK5、AFP、CEA、CA-125、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、EMA、ETA
、チロシナーゼ、MAGE、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、
デスミン、GFAP、GCDFP-15、HMB-45抗原、MART-1、myo-D1、MSA、ニューロフィラメント
、NSE、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシン、チログロブリン、甲状腺転写
因子-1、腫瘍M2-PK、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvI
II(表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前
立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイトリ
ーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上皮性
抗原)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパク質と結合する第一の細胞外抗原結合ド
メイン;細胞内CD3ζシグナルドメイン;及びCD27、CD28、OX40及び4-1BBのそれぞれに由
来する共刺激性ポリペプチド配列を含む、第一のポリペプチド;及びb) VEGFと結合する
第二の細胞外抗原結合ドメインを含み、共刺激性モチーフを含まない、第二のポリペプチ
ド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該シグナルド
メイン及び該T細胞生存モチーフの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原によ
り活性化された場合にのみ生存する。
【0096】
(4.1.8. 第五の形態、基本構造)
第五の形態において、改変型Tリンパ球内に含まれる2つのキメラ受容体は、第一の抗原
に方向づけられた第一のキメラ受容体が、第一の細胞外抗原結合ドメイン及びT細胞生存
モチーフ、例えば細胞内T細胞生存モチーフを含むが、主たる抗原結合シグナルドメイン
(例えば、CD3ζ)及び共刺激性ドメインは含まず、対し第二の抗原に方向づけられた第
二のキメラ受容体が、主たる抗原結合シグナルドメイン(例えば、CD3ζ)、及び1以上の
共刺激性ドメインを含むポリペプチド配列を含むように、構築され得る。この形態におい
て、Tリンパ球は所望の抗原を発現する細胞に方向づけられ、かつ、抗原の結合に際し、T
リンパ球生存シグナルが生成する;しかしながら、第二の抗原に第二のキメラ受容体が結
合していない場合には、抗原結合及び共刺激性シグナルが生成しないため、Tリンパ球は
活性化しない。かくして、腫瘍外効果は、再び、排除され、又は軽減される。
【0097】
そのため、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の抗原と結
合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及びT細胞生存モチーフを含み、主たる抗原結合
シグナルドメイン又は共刺激性モチーフを含まない、第一のポリぺプチド;及びb) 第二
の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、及び1以上の共刺激性モチーフを含む
、第二のポリペプチド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ
球は、該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの両方が、それぞれ該第
一の抗原及び該第二の抗原により活性化される場合にのみ生存し、活性化される。特定の
実施態様において、該T細胞生存モチーフは、IL-7受容体の細胞内T細胞生存モチーフであ
り、CD28、IL-7R、IL-12R、IL-15R、IL-21R、又はTGFβRに由来するT細胞生存モチーフで
ある。特定の実施態様において、該第一のポリペプチド又は該第二のポリペプチドのいず
れか又は両方が、膜貫通ドメインを含む。より具体的な実施態様において、該第一のポリ
ペプチドは、T細胞生存モチーフを含むCD27、CD28、IL-7R、IL-12R、IL-15R、IL-21R、又
はTGFβRのドメインを含む。
【0098】
先の記載の通り、第一の抗原結合ドメイン及び該第二の抗原結合ドメインは、構造的に
独立した、任意の抗原結合ドメイン、例えば、先の5.2節に開示するいずれかの種類の抗
原結合ドメインであり、例えば、受容体の抗原結合部位又は抗体の抗原結合部位である。
より具体的な実施態様において、該第一の抗原結合ドメイン又は該第二の抗原結合ドメイ
ンのいずれか又は両方は、scFv抗体断片である。第一の抗原は、関心のある抗原、例えば
、細胞表面上に発現する抗原でよい。好ましい実施態様において、該第一の抗原は、腫瘍
細胞上の抗原である。腫瘍細胞は、例えば、固形腫瘍又は血液癌、例えば、先の5.1節に
開示するいずれかの種類の癌又は腫瘍の細胞であり得る。特定の具体的な実施態様におい
て、該抗原は、TAA又はTSA、例えば、先の5.1節に開示するTAA又はTSAのいずれかである
。第二の抗原は、第一の抗原とは別のものであり、血管形成又は脈管形成因子、例えば、
先の5.1節に開示する血管形成又は脈管形成因子のいずれか;又は任意のDAMP、例えば、
先の5.1節で開示するDAMPであり得る。他の具体的な実施態様において、該第二のキメラ
受容体によるシグナル伝達は、低酸素関連因子、例えば、HIF-1α、HIF-1β、HIF-2α、H
IF-2β、HIF-3α、又はHIF-3βが活性化することにより誘導される。
【0099】
第二のポリペプチドの細胞内シグナルドメインは、第二のポリペプチドの抗原結合ドメ
インを起点とする抗原結合シグナルを、例えば、生得Tリンパ球受容体のCD3ζ(CD3ジー
タ)鎖と同様の様式で、伝達できる任意のポリペプチドであり得る。特定の実施態様にお
いて、細胞内シグナルドメインは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を
含むポリペプチド配列を含む。ポリペプチド配列はCD3ζシグナルドメイン又はそのシグ
ナル伝達バリアントであることが好ましい。第二のポリペプチドは1以上の共刺激性ドメ
イン、例えば、任意の共刺激性モチーフ又はその機能部位、例えば、共刺激性CD27、CD28
、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、又はICOSポリペプチド配列をさらに含む。
【0100】
(4.1.9. 具体的実施態様)
一形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及びT細胞生存モチーフを含み、主たる
抗原結合シグナルドメインを含まず、かつ共刺激性モチーフを含まない、第一のポリペプ
チド;及びb) 第二の抗原と結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナ
ルドメイン、及び1以上の共刺激性モチーフを含む、第二のポリペプチド;を含む、前記
改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該シグナルドメイン及び該T細胞
生存モチーフが、それぞれ該第二の抗原及び該第一の抗原により活性化された場合にのみ
、活性化され、生存する。
【0101】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及びT細胞生存モチーフを含み、主たる
抗原結合シグナルドメインを含まず、かつ共刺激性モチーフを含まない、第一のポリペプ
チド;及びb) 第二の抗原と結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナ
ルドメイン、及びCD27、CD28、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、又はICOS由来の共刺激
性ポリペプチド配列を含む第二のポリペプチド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。
ここで、該改変型リンパ球は該T細胞生存モチーフ及び該シグナルドメインがそれぞれ該
第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、活性化され、生存する。
【0102】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及びT細胞生存モチーフを含み、主たる
抗原結合シグナルドメインを含まず、かつ共刺激性モチーフを含まない、第一のポリペプ
チド;及びb) 第二の抗原と結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナ
ルドメイン、及びCD27、CD28、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、又はICOS由来の共刺激
性ポリペプチド配列を含み;主たる抗原結合シグナルドメインを含まず、かつ共刺激性モ
チーフを含まず、該第二の抗原が血管形成若しくは脈管形成因子、又はDAMPである、第二
のポリペプチド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は該T
細胞生存モチーフ及び該シグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の
抗原により活性化された場合にのみ、生存する。
【0103】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及びT細胞生存モチーフを含み、主たる
抗原結合シグナルドメインを含まず、かつ共刺激性モチーフを含まない、第一のポリペプ
チド;及びb) 第二の抗原と結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナ
ルドメイン、及びCD27、CD28、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、又はICOS由来の共刺激
性ポリペプチド配列を含み、該第二の抗原が、VEGF、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8で
ある、第二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リン
パ球は、該T細胞生存モチーフ及び該シグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原
及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、生存する。
【0104】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及びT細胞生存モチーフを含み、主たる
抗原結合シグナルドメインを含まず、かつ共刺激性モチーフを含まない、第一のポリペプ
チド;及びb) 第二の抗原と結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナ
ルドメイン、及びCD28、OX40、及び4-1BB由来の共刺激性ポリペプチド配列を含む、第二
のポリペプチド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、
該T細胞生存モチーフ及び該シグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第
二の抗原により活性化された場合にのみ、生存する。
【0105】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原と結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及びT細胞生存モチーフを含み、主たる
抗原結合シグナルドメインを含まず、かつ共刺激性モチーフを含まず、該第一の抗原が、
TAA又はTSAである、第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原と結合する第二の細胞外抗
原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナルドメイン、及びCD27、CD28、OX40(CD134)、4-1B
B(CD137)、又はICOS由来の共刺激性ポリペプチド配列を含む、第二のポリペプチド;を
含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該T細胞生存モチーフ
及び該シグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化
された場合にのみ、生存する。
【0106】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原と結合する第一の抗原結合ドメイン、及びT細胞生存モチーフを含み、主たる抗原結
合シグナルドメインを含まず、かつ共刺激性モチーフを含まず、該第一の抗原が、TAA又
はTSAである、第一のポリペプチド;及びb) VEGF、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8に結
合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナルドメイン、及びCD27、CD28
、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、又はICOS由来の共刺激性ポリペプチド配列を含む、
第二のポリペプチド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球
は、該T細胞生存モチーフ及び該シグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び
該第二の抗原により活性化された場合にのみ、生存する。
【0107】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン;及びT細胞生存モチーフを含み、主たる
抗原結合シグナルドメインを含まず、かつ共刺激性モチーフを含まず、該第一の抗原が、
Her2、PSCA、PSMA、BCMA、ERK5、AFP、CEA、CA-125、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、EMA
、ETA、チロシナーゼ、MAGE、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチ
ン、デスミン、GFAP、GCDFP-15、HMB-45抗原、MART-1、myo-D1、MSA、ニューロフィラメ
ント、NSE、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシン、チログロブリン、甲状腺
転写因子-1、腫瘍M2-PK、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EG
FRvIII(表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP
(前立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイ
トリーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上
皮性抗原)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパク質である、第一のポリペプチド;
及びb) 第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、細胞内CD3ζシグナルドメ
イン;及びCD27、CD28、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、又はICOS由来の共刺激性ポリ
ペプチド配列を含む、第二のポリペプチド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。ここ
で、該改変型リンパ球は、該T細胞生存モチーフ及び該シグナルドメインの両方が、それ
ぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、生存する。
【0108】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) 第一の
抗原に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン;及びT細胞生存モチーフを含み、主たる
抗原結合シグナルドメインを含まず、かつ共刺激性モチーフを含まず、該第一の抗原が、
Her2、PSCA、PSMA、BCMA、ERK5、AFP、CEA、CA-125、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、EMA
、ETA、チロシナーゼ、MAGE、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチ
ン、デスミン、GFAP、GCDFP-15、HMB-45抗原、MART-1、myo-D1、MSA、ニューロフィラメ
ント、NSE、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシン、チログロブリン、甲状腺
転写因子-1、腫瘍M2-PK、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EG
FRvIII(表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP
(前立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイ
トリーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上
皮性抗原)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパク質である、第一のポリペプチド;
及びb) 第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン;細胞内CD3ζシグナルドメ
イン;及びCD27、CD28、OX40、及び4-1BBのそれぞれに由来する共刺激性ポリペプチド配
列を含み、該第二の抗原がVEGF、bFGF、PDGF、HGF、IGF、又はIL-8である、第二のポリペ
プチド;を含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型リンパ球は、該T細胞生
存モチーフ及び該シグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原に
より活性化された場合にのみ、生存する。
【0109】
他の形態において、本明細書で提供されるのは、改変型Tリンパ球であって:a) Her2、
PSCA、PSMA、BCMA、ERK5、AFP、CEA、CA-125、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、EMA、ETA
、チロシナーゼ、MAGE、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、
デスミン、GFAP、GCDFP-15、HMB-45抗原、MART-1、myo-D1、MSA、ニューロフィラメント
、NSE、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシン、チログロブリン、甲状腺転写
因子-1、腫瘍M2-PK、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvI
II(表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前
立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイトリ
ーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上皮性
抗原)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパク質に結合する、第一の細胞外抗原結合
ドメイン;及びT細胞生存モチーフを含み、主たる抗原結合シグナルドメインを含まず、
かつ共刺激性モチーフを含まない、第一のポリペプチド;及びb) 第二の抗原に結合する
第二の細胞外抗原結合ドメイン;細胞内CD3ζシグナルドメイン;及びCD27、CD28、OX40
、及び4-1BBのそれぞれに由来する共刺激性ポリペプチド配列を含み、該第二の抗原が、V
EGFである、第二のポリペプチドを含む、前記改変型Tリンパ球である。ここで、該改変型
リンパ球は、該T細胞生存モチーフ及び該シグナルドメインの両方が、それぞれ該第一の
抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、生存する。
【0110】
(4.1.10. 他の形態)
特定の実施態様において、改変型Tリンパ球は、第一のポリペプチドとして改変型TCRを
、及び共刺激性シグナルを産生する人工の第二のポリペプチドを含む。具体的な実施態様
において、改変型TCRは、例えば生得の抗原結合ドメインを、特定の抗原に結合するドメ
インで置き換えることにより改変される。具体的な実施態様において、Tリンパ球は抗MAR
T-1 TCRのα及びβ鎖をコードするポリヌクレオチドで形質転換される。Tリンパ球は、同
様に、TCRが抗原、例えばTSA又はTAAによって方向づけられる場合に、TCRのα及びβサブ
ユニットをコードするポリヌクレオチドで形質転換され得る。好ましい実施態様において
、改変型Tリンパ球は、人工の共刺激性ポリペプチド、例えば先の5.1節に開示される共刺
激性ポリペプチド、又は先の5.2節に開示される第二のポリペプチドのうちの一つをコー
ドするポリヌクレオチドで、さらに形質転換される。
【0111】
改変型Tリンパ球が2つのポリペプチド、例えば、キメラ受容体を含む、特定の実施態様
において、第一のポリペプチドは、第一の抗原結合ドメイン、主たる抗原結合シグナル伝
達ドメイン(例えば、CD3ζ)、及び1つの共刺激性ドメイン(例えば、CD28又はそれに由
来する共刺激性ポリペプチド配列)を含み、第二のポリペプチドは、第二の抗原結合ドメ
イン及び少なくとも1つの共刺激性ドメイン、例えば、CD27、4-1BB、OX40、IL-7Rなどに
由来する共刺激性ドメインを含む。より具体的な実施態様において、第二のポリペプチド
は、少なくとも2つ、又は少なくとも3つの共刺激性ドメインを含む。
【0112】
特定の他の実施態様において、本明細書で提供される改変型Tリンパ球は、第一の抗原
結合ドメイン、主たる抗原結合シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ)を含み、かつ共
刺激性ドメイン(例えば、CD28又はそれに由来する共刺激性ポリペプチド配列)を含まな
い、第一のポリペプチド(例えば、キメラ受容体);第二の抗原結合ドメイン及び少なく
とも1つの共刺激性ドメインを含む、第二のポリペプチド(キメラ受容体);並びに抗原
結合ドメイン及び少なくとも1つの他の共刺激性ドメインを含む第三のポリペプチドを含
む。この実施態様において、共刺激性ドメインの総数は、少なくとも2つの別個のキメラ
受容体の間で分配される。少なくとも2つの異なるキメラ受容体は同じ抗原、又は異なる
抗原に結合する抗原結合ドメインを含むことができる。
【0113】
(4.2. 単離ポリペプチド(キメラ抗原受容体))
本明細書で提供される第一及び第二のポリペプチドは、本明細書で提供される、改変型
Tリンパ球を生産するのに有用であり、例えばアシル化、アミド化、グリコシル化、メチ
ル化、リン酸化、硫酸化、SUMO化、ユビキチン化などによって改変してもよい。ポリペプ
チドは検出可能なシグナルを提供することの可能な標識、例えば放射性同位体及び蛍光化
合物で標識してもよい。第一又は第二のポリペプチドの、1以上の側鎖は、コハク酸若し
くは他のカルボン酸の酸無水物による、リシン及びアミノ末端残基の誘導体化、又は例え
ば、メチルピコリンイミダートのようなイミドエステル;ピリドキサールホスフェート;
ピリドキサール;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O-メチルイソ尿
素;2,4ペンタンジオン;及びグリオキシレートを用いたトランスアミナーゼ触媒反応に
よる誘導体化により、誘導体化してもよい。カルボキシル側鎖のアスパルチル又はグルタ
ミルは、1-シクロヘキシル-3-(2-モルフォリニル-(4-エチル)カルボジイミド又は1-エチ
ル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドのような、カルボジイミド(R-
N=C=N-R')との反応により、選択的に改変され得る。
【0114】
(4.3. 単離核酸)
開示されたポリペプチド(例えば、キメラ受容体)は、当該技術分野で周知の方法に従
って、ポリヌクレオチド配列によりコードされ得る。ポリヌクレオチドは、免疫細胞、例
えばTリンパ球の形質転換に適した、任意のポリヌクレオチドベクターに組み込まれ得る
。例えば、Tリンパ球は、第一及び第二のポリペプチド(例えば、キメラ受容体)がコー
ドされた、ポリヌクレオチドを組み込んだ合成ベクター、レンチウイルス又はレトロウイ
ルスベクター、自律複製プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、レンチウイル
ス、アデノウイルス、又はヘルペスウイルス)などを用いて、形質転換され得る。Tリン
パ球の形質転換に適したレンチウイルスベクターには、限定はされないが、例えば、米国
特許第5,994,136号;第6,165,782号;第6,428,953号;第7,083,981号;及び第7,250,299
号に記載されたレンチウイルスベクターがある。Tリンパ球の形質転換に適したHIVベクタ
ーには、限定はされないが、例えば、米国特許第5,665,577号に記載されたレンチウイル
スベクターがある。
【0115】
第一及び第二のポリペプチドの、例えば改変型Tリンパ球内での生産に有用な核酸には
、DNA、RNA、又は核酸アナログがある。核酸アナログは、塩基部分、糖部分、又はリン酸
骨格を改変することができ、デオキシチミジンのデオキシウリジンによる置換、デオキシ
シチジンの5-メチル-2'-デオキシシチジン又は5-ブロモ-2'-デオキシシチジンによる置換
を含むことができる。糖部分の改変は、リボース糖の2'ヒドロキシルを改変して2'-O-メ
チル又は2'-O-アリル糖を形成させることを含むことができる。デオキシリボースリン酸
骨格を改変して、それぞれの塩基部分が6員のモルフォリノ環に結合したモルフォリノ核
酸、又はデオキシリン酸骨格が偽ペプチド骨格に置き換わり、4種の塩基が保持される、
ペプチド核酸を生産することができる。例えば、Summerton及びWellerの文献(1997)Ant
isense Nucleic Acid Drug Dev. 7:187-195;及びHyrupらの文献(1996)Bioorgan. Med.
Chain. 4:5-23を参照されたい。さらに、デオキシリン酸骨格は、例えば、ホスホロチオ
エート又はホスホロジチオエート骨格、ホスホロアミダイト、又はアルキルホスホトリエ
ステル骨格で置換することができる。
【0116】
(4.4. Tリンパ球)
本明細書で提供される、組成物及び方法において使用されるTリンパ球は、ナイーブTリ
ンパ球又はMHC拘束を受けたTリンパ球でよい。特定の実施態様において、Tリンパ球は腫
瘍浸潤リンパ球(TIL)である。特定の実施態様において、Tリンパ球は腫瘍生検から単離
し、又は腫瘍生検から単離したTリンパ球から拡張させたものである。特定の他の実施態
様において、T細胞は末梢血液、臍帯血、又はリンパから拡張させた、Tリンパ球から単離
し、又は拡張させたものである。
【0117】
本法で使用される免疫細胞、例えば、改変型Tリンパ球は、改変型Tリンパ球を投与され
ることになる個体にとって、自己由来であることが好ましい。特定の他の実施態様におい
て、改変型Tリンパ球は、改変型Tリンパ球が投与されることになる個体にとって、同種異
系である。同種異系のTリンパ球を、改変型Tリンパ球の調製に使用する場合、個体におけ
る移植片対宿主病(GVHD)の可能性を減らすような、Tリンパ球を選択することが好まし
い。例えば、特定の実施態様において、ウイルス特異的Tリンパ球を、改変型Tリンパ球の
調製のために選択する;そのようなリンパ球は、受容者の任意の抗原に結合し、それによ
り活性化されるための固有の能力がきわめて低いと期待される。特定の実施態様において
、受容者体内での同種異系Tリンパ球の拒絶反応は、宿主に1以上の免疫抑制剤、例えば、
シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、シクロホスファミドなどを共投与すること
により軽減できる。
【0118】
一実施態様において、Tリンパ球を、個体から取得し、続いて任意に拡張させ、及び続
いて第一のポリペプチドをコードする、第一のポリヌクレオチド、及び第二のポリペプチ
ドをコードする、第二のポリヌクレオチドで形質転換させ、及び続いて任意に拡張させる
。二重形質転換体は、例えば、各ベクターに特有の選択マーカーを使用して、選択するこ
とができる。他の実施態様において、Tリンパ球を個体から取得し、続いて任意に拡張さ
せ、及び続いて第一のポリペプチド及び第二のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオ
チドで形質転換させ、及び続いて任意に拡張させる。ポリヌクレオチドを有する細胞を、
選択マーカーを用いて選択する。
【0119】
ある実施態様においては、人工の共刺激性ポリペプチド(1つの共刺激性ポリペプチド
が使用される実施態様におけるもの)に加えて、又は第一のポリペプチド及び第二のポリ
ペプチド(改変型Tリンパ球が、抗原結合シグナル、及び共刺激性シグナルを分離するポ
リペプチドを含む、実施態様におけるもの)に加えて、該改変型Tリンパ球は、生得のTCR
複合体を形成することのできる生得のTCRタンパク質、例えば、TCR-α及びTCR-βを含む
。特定の他の実施態様において、改変型Tリンパ球のTCR-α及びTCR-βをコードする生得
の遺伝子のいずれか又は両方が改変され、非機能性になっている。例えば、一部または全
体が削られる、変異が挿入されるなどである。
【0120】
特定の実施態様において、Tリンパ球は腫瘍巣から単離されるもの、例えば、腫瘍浸潤
リンパ球である;そのようなTリンパ球はTSA又はTAAに特異的であると期待される。
【0121】
特定の実施態様において、第一のポリペプチド及び第二のポリペプチドのシグナルモチ
ーフを使用して、改変型Tリンパ球の増殖と拡張を促進することができる。例えば、未改
変Tリンパ球、及びCD3ζシグナルドメイン及びCD28共刺激性ドメインを含むポリペプチド
を含むTリンパ球は、CD3及びCD28に対する抗体、例えばビーズに接着した抗体を使用して
拡張できる。例えば、米国特許第5,948,893号;第6,534,055号;第6,352,694号;第6,692
,964号;第6,887,466号;及び第6,905,681号を参照されたい。同様に、第一のポリペプチ
ド上のシグナルモチーフに対する抗体、及び第二のポリペプチドのシグナルモチーフに対
する抗体を使用して、第一及び第二のポリペプチドの両方を含むTリンパ球の増殖を刺激
することができる。
【0122】
特定の実施態様において、第一及び第二のポリペプチドが、Tリンパ球において、1つの
のベクター又は2つの別個のベクターのどちらから発現されたとしても、それぞれ第一の
ポリペプチド、及び第二のポリペプチドが結合する、第一及び第二の抗原を使用すること
により、第一のポリペプチド、及び第二のポリペプチドの両方を発現する、Tリンパ球の
選択的拡張を促進することができる。例えば、一実施態様においては、第一のポリペプチ
ドが結合する第一の抗原が、TSAであり、第二のポリペプチドが結合する第二の抗原が、
血管形成因子であり、第一のポリペプチド及び第二のポリペプチドを含むTリンパ球を、T
SA及び血管形成因子の存在下で培養すると、第一又は第二の抗原の一方を単独で存在させ
て培養した場合や、又はどちらも存在しない条件で培養した場合と比較し、増殖が増加す
る。
【0123】
特定の他の実施態様において、第一及び第二のポリペプチドを含むTリンパ球は、第一
のポリペプチドのシグナルドメインと結合する抗体と、第二のポリペプチドと結合できる
抗原を結び付けて使用して、刺激されると増殖する。例えば、第一のポリペプチドのシグ
ナルドメインが、CD3ζであり、第二のポリペプチドに結合する抗原が、VEGFである実施
態様において、第一及び第二のポリペプチドを含むTリンパ球は、該細胞をVEGF、及びCD3
ζに結合する抗体を組み合わせて存在させた条件で培養することにより、刺激されて、増
殖する。他の実施態様において、第一及び第二のポリペプチドを含むTリンパ球は、第一
のポリペプチド、及び第二のペプチドの共刺激性ドメインと結合することのできる抗原を
使用して、刺激され、増殖する。例えば、第一のポリペプチドに結合する抗原が、HER2で
あり、第二のポリペプチドの共刺激性モチーフを、CD28から得る実施態様において、第一
及び第二のポリペプチドを含むTリンパ球は、HER2タンパク質及びCD28に結合する抗体の
存在下で培養することにより刺激され、増殖する。
【0124】
先の実施態様にいずれかにおいて、抗原及び/又は抗体は、Tリンパ球を培養する培地中
で遊離して存在するか、又はそのいずれか若しくは両方を、固体支持体、例えば、組織培
養プラスチック表面、ビーズなどに付着することができる。
【0125】
改変型Tリンパ球は、必要に応じて実質的に全ての改変型Tリンパ球を殺すことを可能と
する、「自殺遺伝子」又は「安全スイッチ」を任意に含むことができる。例えば、改変型
Tリンパ球は、特定の実施態様において、HSVチミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を含むこ
とができ、この遺伝子はガンシクロビルとの接触により改変型Tリンパ球の死をもたらす
。他の実施態様において、改変型Tリンパ球は誘導性カスパーゼ、例えば誘導性カスパー
ゼ9(icaspase9)、例えば、カスパーゼ9と、特定の小分子医薬を用いて二量体化させる
ことができる、ヒトFK506結合タンパク質との融合タンパク質を含む。Straathofらの文献
、Blood 105(11):4247-4254 (2005)を参照されたい。
【0126】
(4.5. 改変型Tリンパ球の使用方法)
改変型免疫細胞、例えば本明細書で提供される改変型Tリンパ球を使用して、Tリンパ球
の標的とする、例えば、殺すことが望まれる、1種以上の細胞を有する個体を処置するこ
とができる。特定の実施態様において、殺すべき細胞は癌細胞、例えば、腫瘍細胞である
。好ましい実施態様において、癌細胞は、固形腫瘍の細胞である。具体的な実施態様にお
いて、細胞は、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、上咽頭癌、メ
ラノーマ、例えば悪性メラノーマ、皮膚癌、結腸癌、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍
、内分泌腫瘍、ユーイング肉腫、末梢性原始神経外胚葉腫瘍、固形胚細胞腫瘍、肝芽細胞
腫、神経芽細胞腫、非横紋筋肉腫軟部組織肉腫、骨肉腫、網膜芽腫、横紋筋肉腫、ウィル
ムス腫瘍、神経膠芽細胞腫、粘液腫、線維腫、脂肪腫などの細胞である。より具体的な実
施態様において、該リンパ腫は、慢性リンパ性白血病(小型リンパ性リンパ腫)、B細胞
前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリ
ン血症、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、節外周辺帯B細胞リンパ
腫、MALTリンパ腫、節周辺帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型
B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ腫、Tリンパ球前リンパ球性白
血病、Tリンパ球大型顆粒リンパ球性白血病、侵攻性NK細胞白血病、成人Tリンパ球白血病
/リンパ腫、節外性NK/Tリンパ球リンパ腫、鼻型、腸疾患型Tリンパ球リンパ腫、肝脾Tリ
ンパ球リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉腫、セザリー症候群、原発性皮膚未分
化大細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症、血管免疫芽球性Tリンパ球リンパ腫、末梢性Tリン
パ球リンパ腫(不特定)、未分化大細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、又は非ホジキンリ
ンパ腫であり得る。
【0127】
Tリンパ球により治療できる、疾病又は疾患を有する個体、例えば癌を有する個体に投
与した後の、改変型Tリンパ球の効果は、特定の疾病又は疾患に特異的で、当業者に公知
であり、疾病又は疾患の進行の指標となる1以上の基準により評価することができる。一
般に、そのような個体への改変型Tリンパ球の投与は、1以上の該基準が、検出可能な程度
に、例えば、有意に、病的な状態の値または範囲から、正常な状態の値又は範囲へと、又
はそれに向かって変動する場合に、有効である。
【0128】
改変型Tリンパ球は、任意の医薬として許容し得る溶液中で製剤化することができ、生
細胞の送達に適した溶液、例えば、生理食塩水溶液(リンゲル溶液など)、ゼラチン、糖
質(例えば、ラクトース、アミロース、デンプンなど)、脂肪酸エステル、ヒドロキシメ
チルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが好ましい。そのような調製物は、改変型T
リンパ球を加える前に滅菌することが好ましく、かつ滑剤、保存料、安定剤、乳化剤、浸
透圧に影響する塩、緩衝剤、及び着色料のような補助剤と混合することができる。改変型
Tリンパ球の製剤に使用するのに適した医薬担体は、当該技術分野で公知であり、例えば
、WO 96/05309に記載されている。
【0129】
特定の実施態様において、改変型Tリンパ球は、個別の投与量で製剤化され、該個別の
投与量は、少なくとも、最大でも、又は約1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5
×106、1×107、5×107、1×108、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010、又は1×
1011個の改変型Tリンパ球を含む。特定の実施態様において、改変型Tリンパ球は、静脈内
、動脈内、非経口、筋肉内、皮下、髄膜内、若しくは眼球内投与、又は特定の器官若しく
は組織内への投与のために製剤化される。
【実施例
【0130】
(5. 実施例)
(5.1. 実施例1:前立腺癌の治療)
個体はステージT2の前立腺癌を呈し、領域または他のリンパ節に拡がっていない(N0、
M0)。組織学等級はG2であると決定される。総合的に、個体はステージIIの前立腺癌を有
すると決定される。個体に、200 mlの生理食塩水溶液中の、1つのキメラ受容体を含む109
~1010個の改変型Tリンパ球を、30分にわたる静脈内注入により投与する。キメラ受容体
は、PSCAに結合する細胞外抗原結合領域、膜貫通ドメイン、及びCD27、CD28、4-1BB、及
びOX40のそれぞれに由来する細胞内共刺激性ドメインを含む。個体は投与から30、60、及
び90日後に、前立腺癌ステージ及びリンパ節への拡散について再び評価され、前立腺組織
生検の組織学分析が行われる。
【0131】
(5.2. 実施例2:前立腺癌の治療)
個体はステージT2の前立腺癌を呈し、領域または他のリンパ節に拡がっていない(N0
、M0)。組織学等級はG2であると決定される。総合的に、個体はステージI1の前立腺癌を
有すると決定される。個体に、200 mlの生理食塩水溶液中の、第一及び第二のキメラ受容
体を含む109~1010個の改変型Tリンパ球を、30分にわたる静脈内注入により投与する。第
一のキメラ受容体は、PSCAに結合する細胞外抗原結合領域、膜貫通ドメイン、及びCD3ζ
に由来するシグナル伝達ドメインを含む。第二のキメラ受容体は、ERK5タンパク質に結合
する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びCD27、CD28、4-1BB、及びOX40のそれぞれ
に由来する細胞内共刺激性ドメインを含む。個体は投与から30、60、及び90日後に、前立
腺癌ステージ及びリンパ節への拡散について再び評価され、前立腺組織生検の組織学分析
が行われる。
【0132】
(5.3. 実施例3:乳癌の治療)
個体は少なくとも1つの領域リンパ節に拡がったステージ3の乳癌を呈する。癌組織を除
去する外科手術の後、個体に、200 mlの生理食塩水溶液中の、第一及び第二のキメラ受容
体を含む109~1010個の改変型Tリンパ球を、30分にわたる静脈内注入により投与する。第
一のキメラ受容体は、HER2に結合する細胞外抗原結合領域、膜貫通ドメイン、及びCD3ζ
に由来するシグナル伝達ドメインを含む。第二のキメラ受容体は、エストロゲン受容体(
ER)に結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びCD27、CD28、4-1BB、及びOX40
のそれぞれに由来する細胞内共刺激性ドメインを含む。個体は投与から30、60、90、及び
180日後に、残る乳房組織の乳癌、及び他のリンパ節への拡散について評価される。
【0133】
(5.4. 実施例4:二重の抗原特異性を有する改変型Tリンパ球)
本実施例では、2つのキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変型Tリンパ球の作製について
記載する。ここで、第一のCARは、腫瘍特異的抗原に特異的な抗原結合ドメインを含み、
かつ、第二のCARは、腫瘍特異的抗原ではないが、腫瘍形成に関連する抗原に特異的な抗
原結合ドメインを含む。
【0134】
(CARのコンストラクト)
図1に示したCARを、標準の方法論により調製した。CD28ヒンジに連結した抗HER2抗体の
scFv、CD28膜貫通(TM)ドメイン、CD3ジータ鎖、及びtdTomatoレポーター遺伝子からな
る抗HER2に基づくCAR、「HER2-CARζ」を構築し、レンチウイルスベクターにクローニン
グした。このCARは、腫瘍特異的抗原に特異的な抗原結合ドメイン、及び刺激性ドメイン
を含むCARを表す。
【0135】
VEGF特異的な抗原結合ドメイン、腫瘍特異的抗原ではない抗原、並びに共刺激性ドメイ
ンを含む2つのCAR、「VEGFR2-CD28」及び「VEGFR2-28TM-CD28」を作製した。どちらのCAR
もVEGF抗原の受容体、すなわち、VEGFR2の一部からなる抗原結合部位を含む。VEGFR2-CD2
8はヒトVEGFR2細胞外(EC)ドメイン、続いてVEGFR2 TMドメイン、CD28 ICドメイン、T2A
配列(ゾーシー・アシグナ(thosea asigna)ウイルス2Aペプチド)及び(レポーター遺
伝子としての使用のための)GFPを含む。VEGFR2-28TM-CD28は、ヒトVEGFR2細胞外(EC)
ドメインに続き、CD28 TMドメイン、CD28細胞内(IC)ドメイン、T2A配列、及びGFPを含
む。
【0136】
また、VEGFを認識する対照コンストラクトも作製した。「VEGFR2」と名付けられた対照
コンストラクトは、ヒトVEGFR2細胞外(EC)ドメイン、続いてVEGFR2 TMドメイン、T2A配
列、及びGFPを含む。従って、対照コンストラクトは、VEGFR2-CD28及びVEGFR2-28TM-CD28
と名付けられたコンストラクトに存在するCD28 ICドメインを有さない。
【0137】
(T細胞におけるCARコンストラクトの発現)
先に記載のCARコンストラクトの、T細胞での発現を調べた。T細胞を単離するため、健
康なドナーの全血由来バフィーコートから、Ficoll-Paque Plus(商標)(GE Healthcare
、Piscataway、NJ)密度勾配遠心法で、末梢血単核球(PBMC)を分離した。Pan T Isolat
ion Kit II(Miltenyi Biotec、Cambridge、MA)を使用し、メーカーの説明書に従って、
PBMCから汎T細胞を、負の選択にかけた。
【0138】
HER2-CARζ、VEGFR2-CD28、VEGFR2-28TM-CD28、又はVEGFR2 CARのコンストラクトを含
むプラスミドを、初代T細胞にエレクトロポレーションにより導入し、エレクトロポレー
ションしたT細胞をRPMI-10培地中で一晩培養した。エレクトロポレーションから24時間後
にT細胞を回収し、HER2-ヒトIgG-Fcキメラタンパク質で染色し、続いて(抗HER2の検出の
ための)APC結合ヤギ抗ヒトIgG-Fcポリクローナル抗体;又は(VEGFR2の検出のための)
マウス抗ヒトVEGFR2モノクローナル抗体(mAb)で染色した。染色した細胞をフローサイ
トメトリーで分析した。全ての例で、CARの抗原結合ドメイン及びそれぞれのCARのレポー
ター遺伝子(tdTomato又はGFP)の発現が検出され、トランスジーンがT細胞に安定に伝達
されていることが確認された。IL-7により活性化されたT細胞に、それぞれのCARコンスト
ラクトを伝達することで、HER2-CARζコンストラクトが、遺伝子導入したT細胞における
抗HER2の発現をもたらすことができ、VEGFR2-CD28、VEGFR2-28TM-CD28、及びVEGFR2 CAR
コンストラクトが、遺伝子導入したT細胞において、VEGFR2の正の発現をもたらすことが
できることを、さらに確認した。
【0139】
(活性化されたT細胞によるVEGF産生及びVEGFR2発現)
内因のVEGFR2の発現が、VEGFに結合させることを意図した、VEGFR2細胞外ドメインを含
むコンストラクトにおける、VEGFR2細胞外ドメインの発現と競合しないことを確実にする
ため、予備実験を行い、活性化されたT細胞によるVEGFの産生及びVEGFR2の発現の水準を
評価した。
【0140】
ヒト初代T細胞を、先に記載の通りに単離し、ビーズ:細胞を3:1の比率とした抗CD3/CD
28 DynaBeads(登録商標)で刺激した。細胞を、50 IU/mlのIL-2存在下、RPMI-10培地中
で培養した。刺激されたT細胞によるVEGFR2の発現を、刺激から25日間にわたって(最初
の4日は毎日、続いて第一週経過後は2日ごとに)フローサイトメトリーで評価した。活性
化されたT細胞によるVEGFR2の発現は、刺激から2日後までは観察されず、続いて3日目ま
でに発現が著しく減少し、4日目までには発現が消失した。4日目以降、VEGFR2の発現は観
察されなかった。
【0141】
先に記載のDynaBeadによる活性化後のT細胞上清中のVEGF-AをCytometric Bead Array(
CBA)によって測定した。最低のVEGF分泌(< 10 pg/ml)が検出された。
【0142】
データは、活性化されたヒトT細胞における内因のVEGF及びVEGFR2の発現が最低になっ
たことを示唆している。
【0143】
(共刺激アッセイ)
VEGFR2 ECドメインを含むコンストラクトが、共刺激をもたらすことができるかどうか
評価するため、ヒト初代汎T細胞に、VEGFR2-CD28、VEGFR2-28TM-CD28、又はVEGFR2レンチ
ウイルスベクターのいずれかを遺伝子導入し、続いて固定化抗ヒトCD3及び抗ヒトVEGFR2
mAb又は可溶VEGFで刺激した。抗ヒトCD3は、二重シグナル系において第一の「シグナル」
を引き起こす(すなわち、腫瘍抗原に特異的な抗原結合ドメイン、及び活性化ドメイン(
例えば、CD3ジータ鎖)を含むCARが腫瘍抗原に結合すること)リガンドとして選択した。
T細胞を抗VEGFR2 mAb又は可溶性VEGFのいずれかと共に培養すると、VEGFR2-CD28レンチベ
クター又はVEGFR2-28TM-CD28レンチベクターのいずれかで遺伝子導入されたT細胞は、刺
激されるが、VEGFR2レンチベクターで遺伝子導入されたT細胞は、刺激されない。これは
、活性化マーカーCD69及び4-1BBの上方調節によって裏付けられる。
【0144】
さらに、VEGFR2-CD28レンチベクター及びVEGFR2-28TM-CD28レンチベクターを遺伝子導
入されたT細胞では、抗VEGFR2 mAb処理又はVEGF処理に際し、IL-2、グランザイムB、及び
IFN-γを分泌する水準が上昇するが、VEGFR2レンチベクターを遺伝子導入されたT細胞で
は、上昇しないことが確かめられた。合わせて考えると、この結果は、遺伝子導入された
T細胞におけるVEGFR2 ECドメインの発現は、VEGFR2 ECが、CD28 ICドメインを含むCARの
一部として発現する場合に、細胞内CD28シグナルをもたらすことができることを示唆して
いる。
【0145】
(HER2-CARζの機能の評価)
HER2-CARζの機能の実証は、遺伝子導入されたT細胞において、固定化HER2-Fcキメラタ
ンパク質でT細胞を刺激することにより確認された。CD28の共刺激の陽性対照として、も
う1つのコンストラクト、「HER2-CAR28ζ」を作製した。このコンストラクトは、CD28膜
貫通(TM)ドメイン及びCD3ジータ鎖の間に、CD28細胞内ドメインが含まれている点を除
いて、HER2-CARζと名付けられたCARコンストラクトと、同一である。
【0146】
HER2-Fcキメラタンパク質により、T細胞が刺激されることを確かめるため、刺激48時間
後に、T細胞の活性化マーカーである、CD69及びCD71の発現を調べた。HER2-CARζ、及びH
ER2-CAR28ζを遺伝子導入された細胞の双方において、tdTomato陽性細胞のみが、CD69及
びCD71の上方調節を示した。HER2-CAR28ζを遺伝子導入されたT細胞においては、HER2-CA
Rζを遺伝子導入されたT細胞におけるよりも、CD69及びCD71の頻度及び平均蛍光強度が高
くなる(HER2-CARζ細胞の25%が、CD69を発現していたのと比較し、42%のHER2-CAR28ζ細
胞が、CD69を発現していた(偽遺伝子導入を受けた細胞では、0.04%が発現していた);H
ER2-CARζ細胞の10%が、CD71を発現していたのと比較し、27%のHER2-CAR28ζ細胞が、CD7
1を発現していた(偽遺伝子導入を受けた細胞では、0.04%が発現していた))ことが観察
され、HER2-CAR28ζコンストラクトの細胞内CD28シグナルドメインが活性を有することを
示唆していた。
【0147】
また、抗VEGFR2 mAb又はVEGFと、HER2-CARζ又はHER2-CAR28ζで遺伝子導入されたT細
胞とを一緒に培養することによる影響も確認した。T細胞をHER2-Fc、及びVEGFR2 mAb又は
VEGFで48時間にわたって処理し、続いてフローサイトメトリー分析を行い、CD69及びCD71
の表面発現を評価した。先に記載の場合の増強と比較し、CD69及びCD71の両方の発現の増
強は、ごく最低限しか観察されなかった。
【0148】
(二重シグナル系の評価)
VEGFR2を介した共刺激を確認した後、HER2-CARζ及びVEGFR2-CD28ICの二重シグナルを
評価した。二重シグナルを評価するため、先に記載の通りにT細胞を単離し、これらに(i)
抗HER2ドメインを含むCAR(すなわち、HER2-CARζ);(ii) VEGFR2受容体細胞外ドメイ
ンを含むCAR(すなわち、VEGFR2-CD28、VEGFR2-28TM-CD28、又はVEGFR2と名付けられたCA
R)の両方を遺伝子導入した。遺伝子導入されたT細胞による、それぞれのCARの発現を、
先の記載の通り、フローサイトメトリーを使用して、レポーター遺伝子(すなわち、tdTo
mato又はGFP)の発現を測定することにより、確認した。
【0149】
HER2-CARζと、及び3つのVEGFR2 CARコンストラクトの内の1つ(すなわち、VEGFR2-CD2
8、VEGFR2-28TM-CD28、又はVEGFR2と名付けられたCARコンストラクト)との両方を遺伝子
導入したT細胞を、HER2-Fcと、抗VEGFR2 mAb又はVEGFのいずれかとで刺激した後、これら
T細胞による、T細胞活性化マーカーCD69及びCD71の発現を調べた。
【0150】
その結果、GFPを発現するT細胞(すなわち、VEGFR2 ECドメインを含むCARコンストラク
トを発現するT細胞)において、CD69及びCD71の発現が、用量反応的に増強されることを
観察した。また、VEGFによる刺激により、GFPを発現するT細胞(すなわち、VEGFR2 ECド
メインを含む、CARコンストラクトを発現するT細胞)における、CD69及びCD71の発現が増
幅することも示された。試験した最大用量(1 ug/ml HER2-Fc/1 ug/ml 抗VEGFR2、又は1
ug/ml HER2-Fc/100 ng/ml 抗VEGF)では、対照コンストラクト(すなわち、VEGFRと名付
けられたCARコンストラクト)を含むT細胞と比較して、VEGFR2-28TM-CD28コンストラクト
を含むT細胞において、CD69及びCD71の発現が大きく上昇することが観察された。従って
、VEGFR2の共刺激が確かめられた。対照コンストラクト(すなわち、VEGFRと名付けられ
たCARコンストラクト)を含むT細胞と比較して、VEGFR2-CD28コンストラクトを含むT細胞
による、CD69及びCD71の発現を比較すると、同様の傾向が観察された。
【0151】
この例は、2つのCARを含み、シグナルドメインが第一のCARに存在し、共刺激性ドメイ
ンが第二のCARに存在する、機能的CAR T細胞が作製できることを示している。そのような
CAR T細胞は疾病、例えば癌の治療に有用である。このような疾病の治療においては、2つ
のCARによる、2つの別個の抗原の認識に依存する、二重シグナルのアプローチを利用する
ことが望ましい。
【0152】
(5.5. 実施例5:二重の抗原特異性を有する改変型Tリンパ球)
本実施例では、本願に記載される、二重シグナルのアプローチに使用することのできる
CARを含む、改変型Tリンパ球の作製について、記載する。改変型Tリンパ球は、腫瘍特異
的抗原に、特異的な抗原結合ドメインを含む、第一のキメラ抗原受容体、及び腫瘍特異的
抗原ではないが、腫瘍形成に関連する抗原に特異的な、抗原結合ドメインを含む、第二の
キメラ抗原受容体を含む。本実施例では、2つのCARは、CARがP2Aにより分離されている、
1つのCARコンストラクトを使用して、改変型T細胞に導入される。このCARコンストラクト
により、2つの異なるCARを1つのORFから、実質的に等量発現させることが可能となる。
【0153】
図4にCARを含むコンストラクトを示す。第一のコンストラクト、「CAR1」は、抗HER2 s
cFvに続いて、CD28ヒンジ、CD28膜貫通(TM)ドメイン、CD3ジータ鎖、T2A配列、及びtdT
omatoレポーター遺伝子を含む。「CAR2」は、抗HER2 scFvに続いて、CD28ヒンジ、CD28膜
貫通(TM)ドメイン、CD28 ICドメイン、CD3ジータ鎖、T2A配列、及びtdTomatoレポータ
ー遺伝子を含む。「CAR3」は、ヒトVEGFR2細胞外(EC)ドメインに続いて、VEGFR2 TMド
メイン、P2A配列、抗HER2 scFv、CD28ヒンジ、CD28膜貫通(TM)ドメイン、及びCD3ジー
タ鎖を含む。「CAR4」は、ヒトVEGFR2細胞外(EC)ドメインに続いて、CD28膜貫通(TM)
ドメイン、CD28 ICドメイン、抗HER2 scFv、CD28ヒンジ、CD28膜貫通(TM)ドメイン、及
びCD3ジータ鎖を含む。
【0154】
CAR1は、主たるシグナルドメイン(CD3ジータ鎖)を含むが、共刺激性ドメインを含ま
ない、第一世代の抗HER2 CARを代表する。CAR 2は、主たるシグナルドメイン(CD3ジータ
鎖)及び共刺激性ドメイン(CD28 ICドメイン)の両方を含む第二世代の抗HER2 CARを代
表する。CAR3は、二重CARの対照コンストラクトであり、HER2の主たるシグナル部位(HER
2 scFV及びCD3ジータ鎖)を含み、また、VEGFR2の第二のシグナルドメインも含むが、第
二のシグナルドメインは、共刺激性ドメインを含まない。CAR4は二重CARのコンストラク
トであり、HER2の主たるシグナル部位(HER2 scFV及びCD3ジータ鎖)を含み、また、共刺
激性ドメイン(CD28 IC)を伴う、VEGFR2の第二のシグナルドメインも含む。
【0155】
汎T細胞を、先に記載の通りに単離し、これらに先に記載のCARコンストラクト(CAR1~
CAR4)を遺伝子導入し、伝達から24時間後に分析した。抗HER2の発現は、いずれのCARコ
ンストラクトを遺伝子導入したT細胞においても検出された。抗HER2及びVEGFR2の両方の
発現が、CAR3又はCAR4を遺伝子導入したT細胞において検出された。従って、先に記載のC
ARコンストラクトが、T細胞において適正に発現することが確かめられた。
【0156】
CARコンストラクトの発現を確かめたら、コンストラクトを発現するT細胞を、HER2-Fc
(0.25 ug/ml又は1.0 ug/ml)と共に培養し、HER2-scFvを含むコンストラクトの刺激を誘
導した(主たるシグナル)。単独での刺激か、又は抗VEGFR2抗体(0.25 ug/ml又は1.0 ug
/ml)若しくはVEGF(1、10、又は100 ng/ml)のいずれかと組み合わせて、VEGFR2を含む
コンストラクトの刺激を誘導した(共刺激)。CAR1又はCAR2のいずれかを遺伝子導入した
T細胞において、VEGFR2を活性化させても、抗HER2による単独の活性化について観察され
るような、刺激に対するT細胞活性化マーカーであるCD69又はCD71の、表面マーカーの発
現は変化しないことが見出された(フローサイトメトリーで評価した)。
【0157】
対照的に、CAR4を遺伝子導入したT細胞において、HER2-Fc及び抗VEGFR2の両方で刺激を
すると、HER2-Fc単独で刺激された、CAR4発現CAR T細胞におけるCD69の発現と比較して、
CD69の発現が高まった。HER2-Fc刺激に対する、このVEGFR2を介したCD69の発現の上方調
節の増強は、コンストラクト(すなわち、CAR3)のVEGFR2 CAR中に、共刺激性ドメインが
存在していない対照二重刺激CARコンストラクト(CAR3)を、遺伝子導入されたT細胞にお
いては観察されない。特に、0.25 ug/ml HER2-Fc単独で刺激した際の、CD69+ CAR4発現CA
R T細胞が、33.4%であったのと比較し、それぞれ0.25 ug/ml HER2-Fc/0.25 ug/ml抗VEGFR
2及び0.25 ug/ml HER2-Fc/1.0 ug/ml抗VEGFR2の用量で刺激をした際に、CAR4を発現するC
AR T細胞の73.6%及び72.9%が、CD69を発現した;一方、0.25 μg/ml HER2-Fc単独で刺激
した際の、CD69+ CAR3発現CAR T細胞が、4.9%であったのと比較し、それぞれ同じ用量の
、HER2-Fc及び抗VEGFR2で刺激をした際に、CAR3を発現するCAR T細胞のわずか6.13%及び3
.69%しか、CD69を発現しなかった。同様の結果は、CD71の発現を分析した際も観察された
。1.0 ug/ml HER2-Fc単独で刺激した際のCD71+ CAR4発現CAR T細胞が22.8%であったのと
比較し、それぞれ1.0 ug/ml HER2-Fc/0.25 ug/ml抗VEGFR2及び1.0 ug/ml HER2-Fc/1.0 ug
/ml抗VEGFR2の用量で刺激をした際に、CAR4を発現するCAR T細胞の45.2%及び50.7%が、CD
71を発現した;一方、1.0 μg/ml HER2-Fc単独で刺激した際の、CD71+ CAR3発現CAR T細胞
が10.3%であったのと比較し、それぞれ同じ用量のHER2-Fc及び抗VEGFR2で刺激をした際に
、CAR3を発現するCAR T細胞のわずか7.80%及び7.89%しか、CD71を発現しなかった。
【0158】
同様に、CAR4を形質導入したT細胞において、HER2-Fc及びVEGFの両方で刺激をすると、
コンストラクト(すなわち、CAR3)のVEGFR2 CAR中に、共刺激性ドメインが存在していな
い、対照二重刺激CARコンストラクト(CAR3)を形質導入したT細胞における、CD69の発現
水準と比較して、CD69の発現が高まった。特に、0.25 μg/ml HER2-Fc単独で刺激した際
の、CD69+ CAR4発現CAR T細胞が、33.4%であったのと比較し、それぞれ0.25 ug/ml HER2-
Fc/1 ng/ml VEGF、0.25 ug/ml HER2-Fc/10 ng/ml VEGF、及び0.25 ug/ml HER2-Fc/100 ng
/ml VEGFの用量で刺激をした際に、CAR4を発現するCAR T細胞の35.3%及び48.2%、及び48.
5%が、CD69を発現した;一方、0.25 μg/ml HER2-Fc単独で刺激した際の、CD69+ CAR3発
現CAR T細胞が、4.9%であったのと比較し、それぞれ同じ用量の、HER2-Fc及びVEGFで刺激
をした際に、CAR3を発現するCAR T細胞のわずか3.40%、2.69%、及び2.55%しか、CD69を発
現しなかった。CD71の発現については、1.0 μg/ml HER2-Fc単独で刺激した際の、CD71+
CAR4発現CAR T細胞が、22.8%であったのと比較し、それぞれ1.0 ug/ml HER2-Fc/1 ng/ml
VEGF、1.0 ug/ml HER2-Fc/10 ng/ml VEGF、及び1.0 ug/ml HER2-Fc/100 ng/ml VEGFの用
量で刺激をした際に、CAR4を発現するCAR T細胞の30.10%及び42.30%、及び47.30%が、CD7
1を発現することが確認された;一方、1.0 μg/ml HER2-Fc単独で刺激した際の、CD71+ C
AR3発現CAR T細胞が、10.3%であったのと比較し、それぞれ同じ用量の、HER2-Fc及びVEGF
で刺激をした際に、CAR3を発現するCAR T細胞のわずか10.70%、4.81%、及び7.33%しか、C
D69を発現しなかった。
【0159】
グランザイムBは、細胞傷害性Tリンパ球の、顆粒内に存在する酵素である。CAR1、CAR3
、又はCAR4のいずれかを遺伝子導入したT細胞による、グランザイムBの分泌を評価した。
いずれかの対照CAR(CAR1又はCAR3)を遺伝子導入したT細胞と比較し、CAR4を遺伝子導入
したT細胞では、0.25 ug/ml HER2-Fc/0.25 ug/ml抗VEGFR2及び0.25 ug/ml HER2-Fc/1.0 u
g/ml抗VEGFR2の用量の、HER2-Fc及び抗VEGFR2で刺激をした際に、発現するグランザイムB
の水準が上昇した。同様に、いずれかの対照CAR(CAR1又はCAR3)を遺伝子導入したT細胞
と比較し、CAR4を遺伝子導入されたT細胞では、0.25 ug/ml HER2-Fc/1 ng/ml VEGF及び0.
25 ug/ml HER2-Fc/100 ng/ml VEGFの用量の、HER2-Fc及びVEGFで刺激をした際に、発現す
るグランザイムBの水準が上昇した。
【0160】
CAR1、CAR3、又はCAR4を遺伝子導入されたT細胞の、HER2-Fcと、抗VEGFR2抗体又はVEGF
のいずれかとを組み合わせた刺激後の生存能力を評価した。汎T細胞を記載の通り単離し
た。24時間培養した後、HER2-Fc(1.0 ug/ml)と、抗VEGFR2抗体(0.25 ug/ml若しくは1.
0 ug/ml)又はVEGF(1 ng/ml若しくは100 ng/ml)のいずれかとにより、48時間にわたっ
てT細胞を刺激した。全体で13日間培養した後、T細胞の生存能力を決定した。それぞれの
ケースで、二重対照CAR(すなわち、CAR3)又はCAR1と名付けられた対照CARを遺伝子導入
したT細胞よりも、二重刺激CAR(すなわち、CAR4)を遺伝子導入したT細胞の方が、高い
生存能力を示した。
【0161】
この例は、実施例4の結果―第一のCARに、シグナルドメインが存在し、第二のCARに、
共刺激性ドメインが存在する、2つのCARを含む、機能的CAR T細胞が作製できること―を
裏付けるものであり、2つのCARコンストラクトが、1つのコンストラクトとしてCAR T細胞
中で発現させられること(例えば、T細胞に両方のCARを含む、1つのCARを遺伝子導入する
ことができること)をさらに示している。
【0162】
(等価物)
本開示は、本明細書に記載された特定の実施態様により範囲を限定されるものではない
。さらに、記載内容に加え、本明細書で提供される主題事項の様々な改変が、先の記載か
ら、当業者には明らかとなる。そのような改変は、添付する請求項の範囲内に位置するよ
う意図するものである。
【0163】
様々な刊行物、特許及び特許出願が本明細書に引用されており、それらの開示は、その
全てが、参照により組み込まれている。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
改変型Tリンパ球であって:
a. 第一の抗原に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及び第一の細胞内シグナル
ドメインを含む、第一のポリペプチドであって、該第一の抗原が:腫瘍細胞上の抗原、腫
瘍関連抗原、又は腫瘍特異的抗原であり;かつ該第一のポリペプチドが、共刺激ドメイン
を含まない、前記第一のポリペプチド;及び
b. 第二の抗原と結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、又は該第二の抗原と結合す
る受容体;及び1以上の共刺激性ドメインを含む第二の細胞内シグナルドメインを含む、
第二のポリペプチド;を含み、
前記第二の抗原が、血管内皮増殖因子(VEGF)又は損傷関連分子パターン分子(DAMP)
であり、該DAMPが、熱ショックタンパク質、染色体関連タンパク質高移動度グループボッ
クス1(HMGB1)、S100A8(MRP8、カルグラニュリンA)、S100A9(MRP14、カルグラニュリ
ンB)、血清アミロイドA(SAA)、デオキシリボ核酸、アデノシントリリン酸、尿酸、又
はヘパリン硫酸であり;かつ該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの
両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、最大の
細胞傷害性を呈するようになる、前記改変型Tリンパ球。
(構成2)
前記第一の抗原が、腫瘍細胞上の抗原である、構成1記載の改変型Tリンパ球。
(構成3)
前記腫瘍細胞が、固形腫瘍中の細胞である、構成1又は2記載の改変型Tリンパ球。
(構成4)
前記抗原が、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原である、構成1記載の改変型Tリンパ球。
(構成5)
前記腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原が、Her2、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PSMA、BC
MA、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、癌抗原-125(CA-125)
、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、上皮性膜タンパク質(EMA)、上皮性腫瘍抗原(ETA)
、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラ
ニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、肉眼的嚢胞性疾
患液体タンパク質(GCDFP-15)、HMB-45抗原、タンパク質メラン-A(Tリンパ球に認識さ
れるメラノーマ抗原;MART-1)、myo-D1、筋特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメ
ント、神経特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシス
、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼイソ酵素タイプM2の二量体形
(腫瘍M2-PK)、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(
表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前立腺
酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイトリーデ
ィングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上皮性抗原
)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパク質である、構成4記載の改変型Tリンパ球。
(構成6)
前記第一の抗原が、インテグリンαvβ3(CD61)、ガラクチン、K-Ras(V-Ki-ras2キル
ステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子)、又はRal-Bである、構成1記載の改変型Tリンパ球

(構成7)
前記第一の細胞内シグナルドメインが、CD3ζシグナルドメインであるか又はそれを含
む、構成1~6のいずれか一項記載の改変型Tリンパ球。
(構成8)
前記1以上の共刺激性ドメインが、共刺激性CD27ポリペプチド配列、共刺激性CD28ポリ
ペプチド配列、共刺激性OX40(CD134)ポリペプチド配列、共刺激性4-1BB(CD137)ポリ
ペプチド配列、及び共刺激性誘導性T細胞共刺激性(ICOS)ポリペプチド配列のうちの1以
上を含む、構成1~7のいずれか一項記載の改変型Tリンパ球。
(構成9)
改変型Tリンパ球であって:
a. 第一の抗原に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、及び1以上の共刺激性ドメイ
ンを含む第一の細胞内シグナルドメインを含む第一のポリペプチドであって、該第一の抗
原が:腫瘍細胞上の抗原、腫瘍関連抗原、又は腫瘍特異的抗原である、前記第一のポリペ
プチド;及び
b. 第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、又は該第二の抗原に結合す
る受容体;及び第二の細胞内シグナルドメインを含み、共刺激性ドメインを含まない、第
二のポリペプチド;を含み、
前記第二の抗原が、血管内皮増殖因子(VEGF)又は損傷関連分子パターン分子(DAMP)
であり、該DAMPが、熱ショックタンパク質、染色体関連タンパク質高移動度グループボッ
クス1(HMGB1)、S100A8(MRP8、カルグラニュリンA)、S100A9(MRP14、カルグラニュリ
ンB)、血清アミロイドA(SAA)、デオキシリボ核酸、アデノシントリリン酸、尿酸、又
はヘパリン硫酸であり;かつ該第一のシグナルドメイン及び該第二のシグナルドメインの
両方が、それぞれ該第一の抗原及び該第二の抗原により活性化された場合にのみ、最大の
細胞傷害性を呈するようになる、前記改変型Tリンパ球。
(構成10)
前記第一の抗原結合ドメイン又は前記第二の抗原結合ドメインのいずれか又は両方が、
scFv抗体断片である、構成9記載の改変型Tリンパ球。
(構成11)
前記第一の抗原が、腫瘍細胞上の抗原である、構成9又は10記載の改変型Tリンパ球。
(構成12)
前記腫瘍細胞が、固形腫瘍中の細胞である、構成9~11のいずれか一項記載の改変型Tリ
ンパ球。
(構成13)
前記第一の抗原が、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原である、構成9又は10記載の改変
型Tリンパ球。
(構成14)
前記腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原が、Her2、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PSMA、BC
MA、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、癌抗原-125(CA-125)
、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、上皮性膜タンパク質(EMA)、上皮性腫瘍抗原(ETA)
、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラ
ニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、肉眼的嚢胞性疾
患液体タンパク質(GCDFP-15)、HMB-45抗原、タンパク質メラン-A(Tリンパ球に認識さ
れるメラノーマ抗原;MART-1)、myo-D1、筋特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメ
ント、神経特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシス
、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼイソ酵素タイプM2の二量体形
(腫瘍M2-PK)、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(
表皮性成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリン、PAP(前立腺
酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマオルターネイトリーデ
ィングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(プロステイト1の6回膜貫通型上皮性抗原
)、異常rasタンパク質、又は異常p53タンパク質である、構成13記載の改変型Tリンパ球

(構成15)
前記第一の抗原が、インテグリンαvβ3(CD61)、ガラクチン、K-Ras(V-Ki-ras2キル
ステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子)、又はRal-Bである、構成9又は10記載の改変型Tリ
ンパ球。
(構成16)
前記第二の細胞内シグナルドメインが、CD3ζシグナルドメインであるか又はそれを含
む、構成9~15のいずれか一項記載の改変型Tリンパ球。
(構成17)
前記1以上の共刺激性ドメインが、共刺激性CD27ポリペプチド配列、共刺激性CD28ポリ
ペプチド配列、共刺激性OX40(CD134)ポリペプチド配列、共刺激性4-1BB(CD137)ポリ
ペプチド配列、又は共刺激性誘導性T細胞共刺激性(ICOS)ポリペプチド配列のうちの1以
上を含む、構成9~16のいずれか一項記載の改変型Tリンパ球。
図1
図2