(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】リジェネバーナ用耐火物ユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F23M 5/00 20060101AFI20230424BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20230424BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20230424BHJP
F23M 5/02 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
F23M5/00 E
F27D7/02 A
F27D1/00 G
F23M5/02
(21)【出願番号】P 2021024630
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】522123566
【氏名又は名称】マフテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】秦 雄作
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 友幸
(72)【発明者】
【氏名】河本 祐作
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122281(WO,A1)
【文献】特表昭56-500328(JP,A)
【文献】特開2008-190761(JP,A)
【文献】米国特許第05178819(US,A)
【文献】中国特許出願公開第111578277(CN,A)
【文献】特開2001-141203(JP,A)
【文献】特開平10-205715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23M 5/00
F27D 7/02
F27D 1/00
F23M 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を備えるバーナ用耐火物であって、それぞれの貫通孔は複数の無機繊維圧縮成型体から形成され
ており、
前記無機繊維圧縮成型体の炉殻に固定する側の面の略中央部に固定金具が取り付けられており、
前記固定金具は前記無機繊維圧縮成型体の圧縮方向に長尺であることを特徴とするバーナ用耐火物。
【請求項2】
前記無機繊維圧縮成型体を形成する無機繊維集合体のマットの幅が50mm以上である請求項1に記載のバーナ用耐火物。
【請求項3】
前記無機繊維圧縮成型体の圧縮方向は、前記バーナ用耐火物において前記複数の貫通孔が並んだ方向と同じ方向である、請求項1
または2に記載のバーナ用耐火物。
【請求項4】
前記複数の貫通孔のうち燃焼空気が出入りする貫通孔内部には、無機繊維製板体が板面を孔に対して略放射状として積層された筒状成型体を備え、該貫通孔の炉殻側の断面積は、炉内側の断面積よりも大きい、請求項1~
3のいずれか1項に記載のバーナ用耐火物。
【請求項5】
前記筒状成型体が交換可能な構造を有する請求項
4に記載のバーナ用耐火物。
【請求項6】
前記無機繊維圧縮成型体が、前記貫通孔を形成する切り欠き構造を少なくとも1つ備える、請求項1~
5のいずれか1項に記載のバーナ用耐火物。
【請求項7】
炉内側の面積が0.5m
2以上である、請求項1~
6のいずれか1項に記載のバーナ用耐火物。
【請求項8】
ケーシングに取り付けられる、請求項1~
7のいずれか1項に記載のバーナ用耐火物。
【請求項9】
天井に取り付けられる、請求項1~
8のいずれか1項に記載のバーナ用耐火物。
【請求項10】
複数の貫通孔を備え、それぞれの貫通孔は複数の無機繊維圧縮成型体から形成されるバーナ用耐火物の製造方法であって、
複数の無機繊維圧縮成型体の圧縮方向を、形成される複数の貫通孔が並んだ方向と同じ方向にするとともに、複数の無機繊維圧縮成型体が備える切り欠き構造を組み合わせて、
貫通孔を形成するように、前記複数の無機繊維圧縮成型体を配置する工程を備える、バーナ用耐火物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれか1項に記載のバーナ用耐火物を構成する、無機繊維圧縮成型体。
【請求項12】
請求項1~
9のいずれか1項に記載のバーナ用耐火物を備える、リジェネバーナ。
【請求項13】
請求項1
2に記載のリジェネバーナを備える工業炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナ用耐火物、バーナ用耐火物の製造方法、リジェネバーナ、および、リジェネバーナを備える工業炉に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱炉や熱処理炉など工業炉の天井あるいは側壁に装着され挿入されるバーナの周囲は、耐化物であるバーナタイルによって取り囲まれている。例えば、天井に備えられるリジェネバーナ用の耐火物は1m×1.5mなど比較的大きなケーシングに取付けられることが多い。また一つの耐火物が、燃料噴射孔や燃焼用の空気が出入りする空気孔など、炉内外に貫通する複数の貫通孔を備え、また貫通孔の角度が炉壁に対して炉内外方向に垂直ではなく、角度がついていることが多い。
【0003】
これらの用途の耐火物には、従来キャスタブルが使用されているが、該キャスタブル製のバーナタイルは、耐熱衝撃性が低く亀裂が入りやすい。特に大型のバーナタイルになると、より亀裂が入りやすい。また、近年は省エネの観点から、バーナタイル以外の天井の耐火材をファイバー化することが多く、その場合、キャスタブル製のバーナタイルとファイバー製の耐火材との熱膨張の違いや耐熱衝撃性の違いから、キャスタブル製のバーナタイルに、より亀裂が入りやすく、キャスタブル製のバーナタイルは崩れて落下の恐れがある。天井から密度の高い、重たいバーナタイルの破片が落ちてくると、人命にも関わるため、いち早くバーナタイルをファイバー化したいという要望がある。
【0004】
特許文献1には、セラミックファイバーブランケットを十文字または放射状あるいはモザイク状に積層し、バーナタイルの中央部に形成する炉内面側で拡開するラッパ状または円筒状のバーナ挿入孔にセラミックファイバーブランケットの繊維先端を位置せしめてなるセラミックファイバー製バーナタイルが記載されている。
【0005】
特許文献2には、繊維質断熱材ブランケットを加圧下に積層し形成された、単位ブロックを備えた、炉内被加工面のライニング施工に用いられる繊維質断熱材ブロックが記載されている。
【0006】
特許文献3には、無機繊維成形体よりなり、炉内外方向に貫通した、バーナ用の主孔を有するバーナタイルにおいて、該バーナタイルの少なくとも炉内側は、該主孔を取り囲む内套部と、該内套部の外周を取り囲む外套部とを有し、該内套部では、無機繊維製板体が、板面を主孔に対し略放射方向として積層されており、該外套部では、無機繊維ブランケットが該内套部の外周を複数回周回していることを特徴とするバーナタイルが記載されている。
【0007】
特許文献4には、外周を覆う鋼製の炉殻と、該炉殻の内側に設けられた綿状セラミック断熱材でなる内壁部とを備えた炉の縦壁を貫通して形成され、バーナの火炎吹き出し口側が取り付けられる横穴内に、該バーナから吹き出される火炎と該内壁部との間を遮って、火炎が貫通する火炎貫通空間を備えるように成形されたセラミックファイバー成形品でなる横穴部材が設けられていることを特徴とする炉体構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平6-281132号公報
【文献】特開2011―226771号公報
【文献】特許第6409786号
【文献】特許第6062873号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のセラミックファイバー製バーナタイルの場合、内筒部を形成するブランケットを固定するために、炉内側に突出した鉄皮(固定金具)をつけることが必要で、施工が煩雑になる。また、固定金具が炉内側に飛び出ているので、耐熱性の点から劣っている。
また、上記の固定方式では、ブランケットを圧縮して設置することができないため、内筒部の強度が十分でなく、吸引時の排気時や高温予熱空気が供給されるときなどに内壁や貫通孔の内周面が風食される問題がある。また耐熱性不足から、ブランケットが収縮し、省エネ効果の低下やケーシングに熱が伝わり破損するといった問題があった。
【0010】
特許文献2の繊維質断熱材ブロックを施工する場合、無機繊維のブランケットを圧縮しブロック化し、炉壁に固定する側の面に固定金具(固定ロッドとチャネル)を取付けてなる断熱ブロックを、炉壁に直角に設けたスタッドに、該固定金具を介して取り付けるモジュール工法が採用されており、落下を防ぐ観点から天井取付け用の断熱部材として好適である。しかし、断熱ブロックの強度の観点から、上記断熱ブロックの炉壁に固定する側の面の中央部付近に固定金具が取り付けられているため、断熱ブロックの中央部付近に孔を形成することができないという課題があった。
【0011】
上記問題を解決するために、固定金具を断熱ブロックの炉壁に固定する側の面の端部に取付けると、固定金具がある側とない側とで圧縮のバランスが崩れて、断熱ブロックの強度が低下するといった問題がある。また、断熱ブロックの炉壁に固定する側の面の中央部に貫通孔を設けて、該面の両端に固定金具を取り付け、圧縮のバランスを取る方法も考えられるが、複数の固定金具を取り付けた場合は、固定金具の取り付け位置やケーシングに溶接するスタッドの取り付け位置の精度が非常に高くないと取付けることができないという課題が考えられる。
【0012】
特許文献3に記載のバーナタイルでは、孔内周面の耐風食性が高く、バーナタイルの使用としては好適であるが、面の大きさが0.25m2以上の成型体は、賦形板を使用して押縮作製することが困難であるので、大型のバーナタイル用途には適さない。また複数個の貫通孔がある場合は、孔間を均一圧縮することが困難で、孔間の寸法精度が低くなるといった問題や孔間の強度が低下するといった問題があった。
特許文献3に記載のバーナタイルを大型のケーシングに取付けられるように製作するには、複数個のバーナタイルを組み合わせて作らなければいけない。しかし複数個のバーナタイルを大型のケーシングに固定するには背面のみに接着してケーシングに固定する箇所もでるため、接着力が不十分で、バーナタイルが天井から落下する可能性があり、天井部には適さないという問題がある。
また、リジェネバーナに使用されるバーナタイルは、複数個の穴を持つが、孔間の距離が比較的短いものが多い。特許文献3に記載のバーナタイルを複数個組み合わせて用いた場合、貫通孔からバーナタイルの外周面までの距離が30mm未満になることもあり、厚みが不十分で孔から外周面までの強度が不十分となるといった問題があった。
【0013】
特許文献4に記載の方法では、横穴部材を孔の内側に挿入しているが、天井で使用する場合は、該横長部材と綿状セラミック断熱材である内壁部とを接着する必要がある。しかし接着だけでは長期使用で接着剤が剥がれて横穴部材が落下するという懸念がある。また、横穴部材にフランジをつけることで接着剤は必要なくなるが、フランジ部のみで横穴部材の重量を支えるため、フランジ部が破損し、横穴部材が落下するという懸念がある。
【0014】
以上より、本発明は、大型のケーシングに取付けられる、複数孔を備えた、バーナ用耐火物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の事項を見出した。
・複数の無機繊維圧縮成型体を組み合わせることにより、大型のケーシングに取り付ける用途に適用できること、
・貫通孔を、複数の無機繊維圧縮成型体で形成することで、無機繊維圧縮成型体自体の強度を維持し、かつ、貫通孔間の強度を保持できること、
【0016】
以上の事項を元に、本発明者は以下の発明を完成させた。
第1の本発明は、複数の貫通孔を備えるバーナ用耐火物であって、それぞれの貫通孔は複数の無機繊維圧縮成型体から形成されることを特徴とするバーナ用耐火物である。
【0017】
第1の本発明において、前記無機繊維圧縮成型体を形成する無機繊維集合体のマットの幅が50mm以上であることが好ましい。
【0018】
第1の本発明において、前記無機繊維圧縮成型体の炉殻に固定する側の面の略中央部に固定金具が取り付けられていることが好ましい。
また、前記固定金具は前記無機繊維圧縮成型体の圧縮方向に長尺であることが好ましい。例えば、
図3(a)の形態では、無機繊維圧縮成型体がX方向に圧縮されているので、固体金具はX方向に長尺となっている。
【0019】
第1の本発明において、前記無機繊維圧縮成型体の圧縮方向は、前記バーナ用耐火物において前記複数の貫通孔が並んだ方向と同じ方向であることが好ましい。
【0020】
第1の本発明において、前記複数の貫通孔のうち燃焼空気が出入りする貫通孔内部には、無機繊維製板体が板面を孔に対して略放射状として積層された筒状成型体を備え、該貫通孔の炉殻側の断面積は、炉内側の断面積よりも大きいことが好ましい。
また、前記筒状成型体が交換可能な構造を有することが好ましい。交換可能な構造とは、例えば、
図4(a)(b)に示す構造であり、この場合、筒状成型体は、炉殻の外側から取り外して交換することが可能である。
【0021】
第1の本発明において、前記無機繊維圧縮成型体が、前記貫通孔を形成する切り欠き構造を少なくとも1つ備えることが好ましい。
【0022】
第1の本発明において、炉内側の面積が0.5m2以上であることが好ましい。
【0023】
第1の本発明のバーナ用耐火物は、ケーシングに取り付けられることが好ましい。
【0024】
第1の本発明のバーナ用耐火物は、天井に取り付けられることが好ましい。
【0025】
第2の本発明は、複数の貫通孔を備え、それぞれの貫通孔は複数の無機繊維圧縮成型体から形成されるバーナ用耐火物の製造方法であって、
複数の無機繊維圧縮成型体の圧縮方向を、形成される複数の貫通孔が並んだ方向と同じ方向にするとともに、複数の無機繊維圧縮成型体が備える切り欠き構造を組み合わせて、貫通孔を形成するように、前記複数の無機繊維圧縮成型体を配置する工程を備える、バーナ用耐火物の製造方法である。
【0026】
第3の本発明は、第1の本発明のバーナ用耐火物を構成する、無機繊維圧縮成型体である。
【0027】
第4の本発明は、第1の本発明のバーナ用耐火物を備える、リジェネバーナである。
【0028】
第5の本発明は、第4の本発明のリジェネバーナを備える工業炉である。
【発明の効果】
【0029】
本発明のバーナ用耐火物によれば、大型のケーシングに取付けられる、複数孔を備えた、バーナ用耐火物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1(a)(b)は、バーナ用耐火物100の炉殻側表面を示しており、各無機繊維圧縮成型体10の配置を示す模式図である。
【
図2】
図2(a)は、無機繊維圧縮成型体10の斜視図である。
図2(b)は、無機繊維圧縮成型体10の製造方法を示す模式図である。
図2(c)は、無機繊維圧縮成型体10が炉殻50に固定されている状態を示す側面透視図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、バーナ用耐火物のブロック固定金具16の位置を説明する模式図である。
【
図4】
図4(a)は、筒状成型体30の斜視図である。
図4(b)は筒状成型体30を貫通孔20に備え、炉殻50に設置した状態のバーナ―用耐火物100の断面図である。
【
図5】
図5は、バーナ用耐火物のブロック固定金具16の位置と貫通孔を形成する無機繊維圧縮成型体10の貫通孔を形成する部分を説明する模式図である。
【
図6】
図6は、貫通孔の並ぶ方向の定義を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態の一例としてのバーナ用耐火物、該バーナ用耐火物の製造方法、該バーナ用耐火物を備えるリジェネバーナ、および、該リジェネバーナを備える工業炉について説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、数値範囲を示す「a~b」の記述は、特にことわらない限り「a以上b以下」を意味すると共に、「好ましくはaより大きい」及び「好ましくはbより小さい」の意を包含するものである。
また、本明細書における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものとする。
【0032】
<バーナ用耐火物100>
本発明のバーナ用耐火物100は、複数の貫通孔20を備えるバーナ用耐火物であって、それぞれの貫通孔20は複数の無機繊維圧縮成型体10から形成されることを特徴とする。
本発明のバーナ用耐火物100を炉内側から見た概念図を、
図1に示す。
図1(a)では、6つの無機繊維圧縮成型体10から構成され、それぞれの貫通孔20a、20b、20cはそれぞれ2つの無機繊維成型体から構成されたバーナ用耐火物100が示されており、
図2(b)では、4つの無機繊維圧縮成型体10から構成され、左右の貫通孔20a、20cはそれぞれ2つの無機繊維圧縮成型体から構成され、中央の貫通孔20bは4つの圧縮成型体から構成されたバーナ用耐火物100が示されている。
【0033】
(複数の貫通孔20)
図1に示したバーナ用耐火物は、3つの貫通孔20a、20b、20cを備えている。貫通孔20a、20cが、燃料噴射孔に相当し、貫通孔20bが燃焼空気が出入りする貫通孔に相当する。
ただし、貫通孔20の数は図示した3つに限定されず、少なくとも二つであれば、設置されるバーナの種類によって、種々の形態をとり得るが、
図1に示した3つの貫通孔を備える形態が好ましい。
【0034】
(複数の圧縮成型体10)
また、
図1(a)では、6つの無機繊維圧縮成型体10からなる形態、
図1(b)では、4つの無機繊維圧縮成型体10からなる形態を示したが、バーナ用耐火物100を構成する複数の無機繊維圧縮成型体10の数は、これらに限定されず、少なくとも2つであればよく、好ましくは4つ以上である。
また、
図1の形態では、バーナ用耐火物100を構成する各無機繊維圧縮成型体10のすべてが、後に説明する切り欠き構造22を有する形態を示しているが、本発明のバーナ用耐火物100は、切り欠き構造22を有していない無機繊維圧縮成型体10を、さらに備えていてもよい。
バーナ用耐火物100の大きさは、炉内側の面の面積が、複数個の貫通孔を備える場合、貫通孔の耐久性が上がるという理由により、0.5m
2以上であることが好ましい。炉内側の面の面積が0.5m
2以上の大型の耐火物とすることにより、複数の貫通孔を備えるバーナ用耐火物(例えば、リジェネバーナ用耐火物)用途として、好適に用いることができる。
【0035】
(無機繊維圧縮成型体10)
・無機繊維集合体のマット
無機繊維圧縮成型体10は、無機繊維集合体のマットを積層することにより製造される。無機繊維集合体のマットを形成する無機繊維は、特に制限されないが、例えば、シリカ、アルミナ、アルミナ/シリカ、これらを含むジルコニア、スピネル、チタニア及びカルシアの単独、または複合繊維が挙げられる。中でも、特に好ましいのは、耐熱性、耐熱衝撃性、繊維強度(靱性)、安全性の点で、アルミナ/シリカ系繊維、特に多結晶質アルミナ/シリカ系繊維である。特に、アルミナ比が70~80質量%でシリカ比が30~20質量%のアルミナ/シリカ繊維が好ましい。また、圧縮に耐えうること、および、熱に強いことから、アルミナ比が70~76質量%でシリカ比が30~24質量%アルミナ/シリカ繊維が好ましい。
【0036】
無機繊維集合体のマットとしては、安全性を確保しつつ、耐熱性や耐久性を高めるという理由により、実質的に繊維径3μm以下を含まない無機繊維の集合体にニードリング処理が施されたマット(ニードルブランケット)が好ましい。
無機繊維集合体の嵩密度は特に限定されないが、形成される断熱ブロック10の耐熱性および強度の点から、85kg/m3~150kg/m3が好ましく、90kg/m3~140kg/m3がさらに好ましく90kg/m3~128kg/m3が特に好ましい。
【0037】
無機繊維集合体のマットの厚みは適宜選択されるが、施工性や強度の点から10~30mmが好ましく、12.5~27mmがより好ましい。厚みが薄くなりすぎると、施工に手間がかかり、厚みが厚すぎると折りたたんだ時に、構造体を維持しづらいという問題点がある。
無機繊維集合体のマットのサイズ(幅)は、形成する無機繊維圧縮成型体10の大きさに応じて調整され、特に限定されない。形成するバーナ用耐火物100の大きさ、圧縮方向、および、該バーナ用耐火物を何分割するかによって、適宜、マットのサイズが調整される。具体的には、マットの最小サイズ(幅)は、無機繊維圧縮成型体の形状を維持するために、50mm以上とすることが好ましい。更に好ましくは100mm以上とすることが好ましい。
なお、無機繊維圧縮成型体10が切り欠き構造22を備える場合、該切り欠き構造22に相当する無機繊維集合体のマットの幅は、該切り欠き構造22の分、小さくなるが、その場合であっても、上記の下限以上の幅を備えることが好ましい。該幅が上記下限を超えて小さすぎる場合は、無機繊維集合体のマットを重ねたり、折り曲げたり、圧縮する作業が難しくなる。また無機繊維圧縮成型体の形状を維持することが難しくなる。
【0038】
・マットの積層方法
図2(a)に、無機繊維圧縮成型体10の一実施形態の斜視図を示す。なお、
図2(a)の無機繊維圧縮成型体10は、後に説明する切り欠き構造22を備えていない。また、
図2(b)に、無機繊維圧縮成型体10の製造方法の一例を示す模式図を示す。
無機繊維圧縮成型体10における無機繊維集合体のマットの積層方法は、特に制限されない。形成される無機繊維圧縮成型体10の大きさを備えた無機繊維集合体の板状マットを複数積層したものであってもよいし、あるいは、
図2に示すように長尺の無機繊維集合体のマット11を九十九折りしたものであってもよい。中でも、固定部付きロッド12(以下、「固定ロッド」と省略する場合がある。)を使用してブロック固定金具16を固定できるため、取付金具を無機繊維圧縮成型体10により強固に取り付けられることができ、無機繊維圧縮成型体10の耐久性が上がるため、長尺のマットを九十九折りしたものであることが好ましい。
なお、無機繊維圧縮成型体10が切り欠き構造22を備えている場合は、上記無機繊維集合体のマットの、該切り欠き構造11に該当する位置の幅が小さくなっている。
【0039】
無機繊維圧縮成型体10の嵩密度に関して特に制限はないが、96kg/m3~160kg/m3が好ましく、120kg/m3~150kg/m3がより好ましい。
無機繊維圧縮成型体10の大きさは、500mm×500mm×500mm以下とすることが、作業性の観点から好ましい。また無機繊維圧縮成型体の大きさが大きくなると製造が困難になる。
【0040】
無機繊維圧縮成型体10は、アルミナロープなどで縫製して、圧縮したり、構造を保持したりすることができる。また、無機繊維集合体のマットを積層し、圧縮面の両側をベニヤ板や金属板などの抑え板18で抑えて圧縮し、バンド19などで固定することで、無機繊維圧縮成型体10の嵩密度を高めることもできる。そうすることで施工後にバンド19を切断することによって、圧縮を開放し、無機繊維圧縮成型体10同士を密着させて、炉壁に固定することができる。
【0041】
図2(c)に、無機繊維圧縮成型体10が炉殻50に固定されている状態の側面透視図を示す。
無機繊維圧縮成型体10の炉殻50に接する面には、ブロック固定金具16を取り付けることができる。該ブロック固定金具16と、炉殻50に立設したスタッド52とを接続することにより(例えば、炉殻50に固定されたスタッド52をブロック固定金具16に設けた孔に挿入し、ブロック固定金具16裏面の無機繊維圧縮成型体10側からナット54で固定することにより)、本発明のバーナ用耐火物100を構成する各無機繊維圧縮成型体10は、炉殻50に設置される。もしくは、ブロック固定金具16にボルトやスタッドを溶接し、ケーシングを貫通させ、外側からナット等で固定することで、本発明のバーナ用耐火物の100を構成する各無機繊維圧縮成型体10は、炉殻50に設置される。
特に天井に本発明のバーナ用耐火物を固定する場合は、圧縮を開放した反発力だけでは、無機繊維圧縮成型体10が落下する可能性があるため、固定金具等を用いて、ケーシングに固定することが好ましい。
【0042】
(無機繊維圧縮成型体10の製造方法)
以下、無機繊維圧縮成型体10の製造方法の一例を示す。
【0043】
まず、所望の幅および長さを有する無機繊維集合体のマット11を切り出す。形成する無機繊維圧縮成型体10が、後に説明する切り欠き構造22を備える場合は、該切り出した無機繊維集合体のマット11は、切り欠き構造22をに相当するマットの幅が狭くなっている。この切り出した無機繊維集合体のマット11を、
図2(b)に示すように、交互に折り畳み積層させる。
また、
図2(b)に示すように、形成する無機繊維圧縮成型体10の炉殻側に刃が出るように、無機繊維集合体のマット11の折り目の内側に、固定ロッド12を取り付ける。固定ロッド12は、ブロック固定金具16と無機繊維圧縮成型体10とを固定する機能を有しており、図示したように、無機繊維集合体のマット11の折り畳み部に挿入され、固定ロッド12の刃がマットを突き抜けて、無機繊維圧縮成型体10の炉殻側に突出し、後に説明するように、この刃がブロック固定金具16に固定される。また、固定ロッド12は、無機繊維集合体のマットに挿入されており、かつ、炉壁に設置した際に、炉壁側に位置しているので、熱による損傷を抑えることができる。
【0044】
固定ロッド12の個数は、ブロック固定金具16を取り付けられるのであれば特に限定されないが、接合強度の点から、4個以上とすることが好ましい。固定ロッド12の材質は、炉内で使用した際に耐熱性を発揮できれば特に限定されないが、例えば、SUS310S、SUS304を挙げることができる。固定ロッド12の形状は、無機繊維圧縮成型体10とブロック固定金具16とを固定できるのでれば特に限定されないが、例えば、図示したような丸棒に三角形状の刃が溶接された形状を挙げることができる。
【0045】
なお、無機繊維集合体のマット11を九十九折りにした無機繊維圧縮成型体10ではなく、板状の無機繊維集合体のマット積層した無機繊維圧縮成型体10の場合は、固定ロッド12を使用してブロック固定金具16と無機繊維圧縮成型体10とを固定することができない。この場合は、積層したマットを貫くように支持金具が溶接された横串を貫通させる。耐久性の観点からすると、上記の固定ロッド12を用いてブロック固定金具16と無機繊維圧縮成型体10とを固定する方が好ましい。
【0046】
また、
図2(b)に示すように、ガイドパイプ14を無機繊維集合体のマット11の折り目の内側に取り付ける。ガイドパイプ14の孔は、ブロック固定金具16の孔に対応しており、ケーシングのスタッドと無機繊維圧縮成型体10に固定したブロック固定金具16とを接合させるために、ナット締めを炉内側から行うためのガイドの役割を担う。各無機繊維圧縮成型体10におけるガイドパイプ14の数は、各無機繊維圧縮成型体10に対応するスタッドの数と対応している。なお、ガイドパイプ14は、ナット締めが行われた後は、その機能が果たされたので除去することが好ましい。
【0047】
ガイドパイプ14の材質は特に限定されず、金属、段ボール、プラスチックの筒が使用可能である。内径は、スタッドの径やボルトの大きさによるが、10~30mmとすることが好ましい。また、ナットは、SUS310S、SUS304等の耐熱ステンレス製のナットを使用することが好ましい。
【0048】
一般的に、炉壁に設置した無機繊維集合体のマット11は、それ自体の反発力により、炉壁に固定されるが、ブロック固定金具16は、このマットの反発力に加えて、無機繊維圧縮成型体10を強固に炉壁に固定するために使用される。具体的には、上記したように、ブロック固定金具16は、固定ロッド12を介して、無機繊維圧縮成型体10の炉壁に設置される側に取り付けられる。なお、無機繊維圧縮成型体10は、該無機繊維圧縮成型体10に固定したブロック固定金具16を介して、ケーシングに立設されたスタッドに取り付けられる。そして、炉内側からスタッドにブロック固定金具16を介してナットで固定することで、炉壁に設置される。ブロック固定金具16は、炉壁(鉄皮)に取り付けられるため、熱による損傷を抑えることができる材質で構成されることが好ましく、例えば、SUS310S、SUS304などの耐熱性ステンレスにより構成することが好ましい。
【0049】
その後、
図2(a)に示すように、側面を同様のサイズの抑え板18で抑え、該抑え板18を介して、圧縮梱包機等により図示X方向に所定の厚みまで圧縮して、バンド19により固定する。バンド19は、無機繊維圧縮成型体10を所定の寸法に圧縮し固定するために使用される。バンド19の材質は、この機能を奏するのであれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)バンド、ポリエチレン(PE)バンド、鉄帯等を使用することができる。
【0050】
抑え板18は、無機繊維圧縮成型体10の側面に取り付けられ、バンド19で無機繊維圧縮成型体10を圧縮するときに、無機繊維圧縮成型体10を保護する役割を有する。無機繊維圧縮成型体10を炉壁に施工した後、バンド19を切断後、抑え板18も取り除かれる。抑え板18の材質は、特に限定されず、ベニヤ板、木板、鉄板、プラスチック板、段ボール等、適宜選択することができる。抑え板18の形状は特に限定されないが、無機繊維圧縮成型体10の側面形状に合わせて選択される。抑え板18の大きさは、特に指定されないが、無機繊維圧縮成型体10の大きさよりも少し大きいことが好ましい。
【0051】
その後、無機繊維圧縮成型体10から突出している固定ロッド12の刃に、ブロック固定金具16を取り付ける。例えば、ブロック固定金具16に設けたスリットに、固定ロッド12の刃を通して、該刃を折り曲げて溶接やビスで止めることによりブロック固定金具16を固定ロッド12に固定することができる。
【0052】
(切り欠き構造22、貫通孔20)
本発明のバーナ用耐火物100は、複数の貫通孔20を備え、該貫通孔20は、複数の無機繊維圧縮成型体10から形成される。よって、該貫通孔20を形成する無機繊維圧縮成型体10は、切り欠き構造22を備える。
【0053】
本発明のバーナ用耐火物100においては、複数の無機繊維圧縮成型体10により貫通孔20が形成されるが、これに対し、一つの無機繊維圧縮成型体10にて貫通孔20を形成する場合を
図3に示す。
図3(a)に示す形態では、無機繊維圧縮成型体の圧縮の方向が複数の貫通孔が並んでいる向きと90度異なる。各無機繊維圧縮成型体10において、貫通孔20を避けて、固定金具16を取り付ける必要が生じるため、固定金具16が無機繊維圧縮成型体10の中央部付近に存在しない。このため、圧縮強度が一定にならず、無機繊維圧縮成型体10の強度が問題となる。つまり、固定金具16がある側とない側とで、バンド切断時の開放度合いが異なることが問題となる。また天井に施工した場合、取付金具が片側にあると、取付金具が無い側が垂れ下がってくる問題がある。
【0054】
図3(b)に示す形態では、各無機繊維圧縮成型体10において、貫通孔20を挟んで二つの固定金具16を取り付け、圧縮を均一化させている。しかしこの場合、固定金具16の取り付け精度が非常に高いレベルで要求され、また、対応するスタッドの位置精度も非常に高いレベルで要求され、施工が難しく現実的ではない。
本発明のバーナ用耐火物100では、切り欠き構造22を備える複数の無機繊維圧縮成型体10により、貫通孔20を形成することにより、上記問題を解決している。つまり、本発明のバーナ用耐火物100を構成する各無機繊維圧縮成型体10においては、該無機繊維圧縮成型体10の炉殻に固定する側の面の略中央部に貫通孔がなく、固定金具16が取り付けられているため、上記の問題が生じない。ここで、「略中央部」とは、好ましくは、無機繊維圧縮成型体10の炉壁に設置する側の面の重心位置から半径75mmの円の範囲内に、固定金具16の重心が位置するように設置することを意味し、または、好ましくは、無機繊維圧縮成型体10の炉壁に設置する側の面を縦および横に三分割した際に、固定金具16の重心が中央部に位置するように、設置することを意味する。
【0055】
本発明のバーナ用耐火物100は、
図5(a)に示す形態をとることもできる。本形態では、各無機繊維圧縮成型体10の圧縮方向が貫通孔の並びと90度異なっている。本形態では、取付金具16が各無機繊維圧縮成型体10の略中央部についているため、上記問題を解決している。しかし、
図5(a)に示す形態では、貫通孔を形成する無機繊維圧縮成型体10の貫通孔を形成する部分(図中の点線の丸で示した箇所Z1)には固定ロッド12を取り付けることができず、取付金具16を取り付けることができない(図中、固定ロッド12が取り付けられている位置を、点線で示している。)。そのため、天井等で使用した場合、無機繊維圧縮成型体の取付金具16から距離が離れた箇所は、ケーシングとの固定が不十分で炉内に垂れ下がる可能性がある。
【0056】
本発明のバーナ用耐火物100は、上記
図5(a)よりも好ましい形態として、
図5(b)に示す形態をとることもできる。本形態では、各無機繊維圧縮成型体10の圧縮方向が貫通孔の並びと90度異なっている。取付金具16が各無機繊維圧縮成型体10の略中央部についており、かつ取付金具16によって貫通孔の部分をもサポートしている。しかし、貫通孔間の距離が近い場合は、図中の点線の丸で示した部分Z2における切り欠き構造22を形成する無機繊維集合体のマットの大きさ(幅)が狭くなる可能性がある。幅が狭いと無機繊維集合体のマットを重ね合わせることや、折りたたむことが非常に難しくなる。また無機繊維圧縮成型体を製作したとしても、強度を十分に保てなくなる可能性がある。少なくとも無機繊維圧縮成型体10を形成する無機繊維集合体のマットの幅は50mm以上あることが好ましく、100mmあることがより好ましい。
【0057】
一方、
図1(a)、(b)に示す形態のように、各無機繊維圧縮成型体10の圧縮方向は、バーナ用耐火物100において、形成される複数の貫通孔20が並んだ方向と同じ方向であることが好ましい。
本発明のバーナ用耐火物100の貫通孔20間の強度は、無機繊維圧縮成型体10が複数の貫通孔20と同じ方向に並ぶと、貫通孔20の間が狭い場合であっても、該貫通孔間の無機繊維集合体のマットの幅を十分に取ることができ、貫通孔間の強度が良好となる。
(なお、
図1(a)の場合、最も幅が狭いところは、点線の丸で示した部分Z3のところになる。)
【0058】
一つの貫通孔20を形成する切り欠き構造22の数は、好ましくは2つ以上、より好ましくは、2~4つである。
図1(a)の形態では、各貫通孔20が、二つの切り欠き構造22から構成されており、
図1(b)の形態では、左右両端の貫通孔20a、20cが、二つの切り欠き構造から構成されており、中央の貫通孔20bが、4つの切り欠き構造22から構成されている。
【0059】
切り欠き構造22の形状は、組み合わされて貫通孔20を形成すれば、特に限定されないが、例えば、
図1(a)に示すように、断面半円状の半円柱形状、または、
図1(b)の中央部の貫通孔20bを形成する切り欠き構造22のように、横断面扇形の、4分割円柱形状とすることができる。
【0060】
無機繊維圧縮成型体10は、少なくとも一つの切り欠き構造22を備えることが好ましい。好ましくは、無機繊維圧縮成型体10は、2つ以上の切り欠き構造22を備えることが好ましい。
図1(a)の形態では、各無機繊維圧縮成型体は、1つの切り欠き構造22を備えており、
図1(b)の形態では、各無機繊維圧縮成型体は、2つの切り欠き構造22を備えている。
【0061】
本発明のバーナ用耐火物100では、貫通孔20を無機繊維マットを圧縮してなる無機繊維圧縮成型体10で形成している。また、以下に説明するように、好ましい形態では、無機繊維圧縮成型体10の圧縮方向が、バーナ用耐火物100の複数の貫通孔20が並んだ方向となっている。これにより、貫通孔20と貫通孔20の間の強度が保たれ、貫通孔間の距離を短くすることが可能であり、設備設計の自由度が高くなる。
【0062】
貫通孔20間の隔壁の距離は、具体的には、貫通孔間の強度を保つことと各貫通孔間の流体のリーク防止の理由により、好ましくは30mm以上、より好ましくは50mm以上、さらに好ましくは80mm以上とすることが好ましい。また下限は、20mmまでとすることが好ましい。
【0063】
貫通孔20の形状は、特に限定されるものではないが、複雑な形状では経年による変形が起こる可能性が高まることから円形もしくは楕円形が好ましい。その大きさは、φ(直径)50mm以上、500mm以下が好ましい。
【0064】
(貫通孔の定義)
バーナ用耐火物100を構成する無機繊維圧縮成型体10に形成される貫通孔としては、燃焼空気が出入りする貫通孔、燃料噴射孔の他、覗き穴や計器を入れる穴が形成される場合もあり得るが、本発明が対象とする貫通孔は、燃焼空気が出入りする貫通孔、燃料噴射孔である。
燃焼空気が出入する貫通孔の直径(φ)は、好ましくは40mm以上、550mm以下であり、より好ましくは150mm以上、350mm以下である。また、燃料噴射孔の直径(φ)は、好ましくは20mm以上、300mm以下であり、より好ましくは50mm以上、200mm以下である。また、覗き穴や計器を入れる穴の直径(φ)は、通常、10mm以上、50mm以下である。
【0065】
(貫通孔の並ぶ方向の定義)
本発明において貫通孔の並ぶ方向とは、
図1のように、貫通孔が図示上下方向中央に(バーナ用耐火物の炉殻に設置する面の長辺に平行な方向に)揃って並んでいる場合は、図中のY1方向が貫通孔の並ぶ方向となる。
ただし、貫通孔の並ぶ方向は、上記方向に限定されず、図示上下方向に垂直な方向から斜めにずれた方向に並んでいても構わない。そのような例を
図6(a)(b)に示す。
図6(a)(b)では、貫通孔が、バーナ用耐火物の炉殻に設置面における長辺に平行な方向から斜めにずれている。このような形態において、貫通孔の並ぶ方向とは以下のように定義する。まず、いずれか一つの貫通孔の中心軸に、バーナ用耐火物の長辺および短辺に平行に、軸Y2、軸Y3を設定する。該いずれかの軸が他の貫通孔と重なっている場合(
図6(a)の場合)は、該軸(
図6(a)の場合は軸Y3)の方向を貫通孔の並ぶ方向と定義する。また、いずれの軸も他の貫通孔と重ならない場合(
図6(b)の場合)、あるいは、いずれの軸も他の貫通孔と重なっている場合は、他の貫通孔の中心との距離が近い軸を選択し、該軸(
図6(b)の場合は軸Y3)の方向を貫通孔の並ぶ方向と定義する。
【0066】
(燃焼空気が出入りする貫通孔)
本発明のバーナ用耐火物100が燃焼空気が出入りする貫通孔20を備えている場合(
図1に示した形態では、中央の貫通孔20bが燃焼空気が出入りする貫通孔に相当し、左右の貫通孔20a、20cが燃料噴射孔に相当する。)、該燃料空気が出入りする貫通孔20は、燃料噴射孔に比べて、より高い耐久性が求められる。
よって、該燃焼空気が出入りする貫通孔20の内周面に沿って、
図4(a)のような筒状成型体30を備えることが好ましい。
また、燃焼空気が出入りする貫通孔20は、筒状成型体30の離脱を防止し、筒状成型体30を安定に保持するために、貫通孔20の炉殻側の断面積は、炉内側の断面積よりも大きいことが好ましい。
図4(b)に、筒状成型体30を貫通孔20に備え、炉殻50に設置した状態のバーナ用耐火物100の断面図を示す。貫通孔20の軸心を通る断面形状は、
図4(b)に示すように、炉殻に向かって広がる台形形状であり、台形形状の斜辺が貫通孔20の軸心に対してなす角度は、好ましくは10度以上、より好ましくは15~30度である。
【0067】
・筒状成型体30
筒状成型体30の一実施形態を、
図4に示す。筒状成型体30は、無機繊維製板体31、32が板面を孔に対して略放射状として積層された構造を有していることが好ましい。
図示した筒状成型体30は、該筒状成型体30の軸心と垂直な断面が三角形又は台形の第1の板体31と、同軸心と垂直な断面が長方形の第2の板体32とを交互に積層したものである。断面三角形又は台形の第1の板体31は、三角形の頂点側又は台形の短辺側が孔34の内周面に臨むように配置される。断面長方形の第2の板体32は、長方形の一方の短辺が孔34の内周面に臨むように配置される。また、板体31,32は、各々の長手方向を孔34の軸心方向とする。板体31,32を孔34の周方向に交互に配列することにより、孔34を取り巻く板体31,32の積層体よりなる取巻体が構成される。この取巻体において、各板体31,32の板面は孔34に対して略放射方向となっている。
【0068】
以下、筒状成型体30の製造方法の一例について説明する。
まず、筒状成型体30の孔34の形状を有する型を準備する。該型の外周面にガラスクロス等よりなる離型シートを巻いた後、該型の外周に、無機繊維ブランケット製の板体31,32を、それぞれ板面が型の軸心に対し放射方向となるようにして、周方向に板体31,32が交互に積層されるように配置し、型を取り巻く。なお、板体31,32を配置する際に、該板体31,32を圧縮することが好ましい 。これにより、形成される孔34の真円度が高くなり、かつ板体31,32間に隙間が生じないようになる。
【0069】
板体31,32を圧縮する手段は、特段の制限はないが、締め付けベルトなどの補助器具を用い、所定の圧縮率に締め付けた後、包帯またはテープ類で固定することで達成できる。前記の圧縮率は、耐風食性など求められる物性から10%以上とすることが好ましく、また、圧縮による繊維の圧壊を防止するために、50%以下とすることが好ましい。
【0070】
上記で作製した圧縮体を無機質ゾルを含んだバインダー液中に浸漬する。この場合、圧縮体の軸心線方向を上下方向として、バインダー液中に浸漬することが好ましい。バインダー液は、型に形成された小孔を通って圧縮体の内周面から圧縮体の内部に浸透すると共に、外周にある包袋またはテープ類を透過して圧縮体の外周面から圧縮体の内部に浸透する。また、バインダー液は、包袋またはテープ類で覆われていない露呈面から直接に圧縮体の内部に浸透する。
【0071】
圧縮体の少なくとも内周側と外周側とにバインダー液が浸透した後、圧縮体をバインダー液から引き上げる。浸漬時間は、圧縮体の大きさ及び構造又はバインダー液の組成等に応じて、適宜調整できるが、圧縮体をバインダー液に浸透させた後、圧縮体から空泡が目視にて確認できなくなる程度まで行うことが好ましい。
【0072】
バインダー液から引き上げた圧縮体の型内の浸透したバインダー液を吸引する。そうすると、圧縮体の露呈面等を通して空気が圧縮体の内部に吸い込まれ、圧縮体に保持されていたバインダー液の一部が型の内孔内に吸い出され、排出される。所定時間バインダー液の吸引排出を行った後、圧縮体を乾燥器内へ移し、好ましくは100℃以上の温度にて乾燥させる。その後、圧縮体を乾燥器から取り出し、放冷後、外周を包んでいる包袋またはテープ類を取り外し、さらに型を脱型する。この際、型に巻いた離型シートも除去する。
【0073】
このようにして乾燥及び脱型した圧縮体を焼成炉に移し、焼成し、無機バインダーを無機繊維に焼き付ける。これにより、筒状成型体素体が得られる。筒状成型体素体には、型の脱型により孔34が形成されている。その後、筒状成型体素体から、はみ出し部分(バリ)を切除すると共に、筒状成型体素体を規格寸法になるように整形加工し、筒状成型体30とする。整形加工としては、例えばバンドソーなど高速の剪断装置を使用して加工する。
【0074】
本発明のバーナ用耐火物100の貫通孔20の内、燃料空気が出入りする貫通孔20は、該貫通孔20の炉殻側の断面積が、炉内側の断面積よりも大きいことが好ましい。そして、該燃料空気が出入りする貫通孔20に、挿入される上記した筒状成型体30は、該燃料空気が出入りする貫通孔20に沿う形状となっていることが好ましく、つまり、炉殻側が大径で、炉内側が小径である、中空の円錐台形状であることが好ましい。
図4では、孔34の軸心方向の一方(図示手前側)が大径で、他方(図示奥側)が小径である中空の円錐台形状となっている。このような形状の貫通孔20と、筒状成型体30とを組み合わせることで、筒状成型体30が貫通孔20から離脱することが防止され、特に、バーナ用耐火物100を、例えば、天井に設置した場合において、該筒状成型体30を接着することなく、貫通孔20に設置することができる。また、筒状成型体30と貫通孔20との接触面積が増え、筒状成型体30をより安定に支えることができる。
【0075】
<バーナ用耐火物100の製造方法>
本発明のバーナ用耐火物100は、各無機繊維圧縮成型体10が有する切り欠き構造22を組み合わせて貫通孔20とするように、複数の無機繊維圧縮成型体10を組み合わせるように炉壁に設置することで、製造(設置)することができる。
【0076】
各無機繊維圧縮成型体10を炉壁に設置する方法としては、例えば、バーナ用耐火物100を収納するケーシングを使用して炉殻に設置される。該ケーシングは、炉内側の面が開放された箱型であり、炉壁に設置する側の面内側にスタッドが立設されている。該スタッドに、各無機繊維圧縮成型体10が備える固定金具16の孔を通して、炉内側からボルト締めすることで、ケーシングに各無機繊維圧縮成型体10を設置できる。
ケーシングと無機繊維圧縮成型体10との間に隙間がある場合は、必要に応じてこの間に無機繊維集合体のマットが挿入される。その後、バンド19を切断し、抑え板18を取り外して、圧縮を開放して無機繊維圧縮成型体10をケーシングに固定する。
【0077】
ケーシングの炉壁に設置する側の面には、各貫通孔20に対応する位置に、孔が設けられている。該ケーシングの孔から、燃焼空気が出入りする貫通孔20に、筒状成型体30を挿入する。燃焼空気が出入りする貫通孔20は、好ましい形態として、炉殻側の孔の断面積が、炉内側の孔の断面積よりも大きく形成されているので、筒状成型体30を容易に挿入可能であり、かつ、バーナ用耐火物100がたとえ天井に設置された場合であっても、筒状成型体30の脱落を防止できる。
【0078】
上記した本発明のバーナ用耐火物100を収納したケーシングを炉壁に設置する方法としては、好ましくは、該バーナ用耐火物100を収納したケーシングを炉外から取り付けて、ケーシングのフランジ部などをボルト等で固定する方法が挙げられる。
【0079】
(無機繊維圧縮成型体10の圧縮方向)
無機繊維圧縮成型体10の圧縮方向は、バーナ用耐火物100において、形成される複数の貫通孔20が並んだ方向と同じ方向であることが好ましい。
本発明のバーナ用耐火物100の貫通孔20間の強度は、無機繊維圧縮成型体10が複数の貫通孔20と同じ方向に並ぶと、貫通孔20の間が狭い場合であっても、該貫通孔間の無機繊維集合体のマットの幅を十分に取ることができ、貫通孔間の強度が良好となる。一方、無機繊維圧縮成型体10の圧縮方向が、貫通孔20の並んだ方向と異なる場合は、極端に細い無機繊維集合体のマットで貫通孔20を形成することになり、不向きである。
【0080】
<本発明のバーナ用耐火物100の用途>
本発明のバーナ用耐火物100は、天井に設置したバーナ用の耐火物として好適である。つまり、上記したように、好ましい形態では、燃焼空気が出入りする貫通孔20が炉殻側の断面積が広く、炉内側の断面積が狭い、円錐台形状となっているため、天井に設置したとしても、貫通孔20内の筒状成型体30の離脱が防止される。また、無機繊維圧縮成型体10により構成されているので、従来のキャスタブル製バーナタイルのように、割れた破片の落下により、人命を脅かすという問題がない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のバーナ用耐火物100は、天井に設置したバーナ用の耐火物として好適である。特に、複数の孔が必要となるリジェネバーナ用の耐火物として好適である。
【符号の説明】
【0082】
100:バーナ用耐火物
10:無機繊維圧縮成型体
11:無機繊維集合体のマット
12:固定部付きロッド
14:ガイドパイプ
16:ブロック固定金具
18:抑え板
19:バンド
20a、20b、20c:貫通孔
22:切り欠き構造
30:筒状成型体
31、32:無機繊維製板体
34:孔
50:炉殻
52:スタッド
54:ナット