(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの自己放電検査方法及び蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20230424BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230424BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230424BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20230424BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20230424BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20230424BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20230424BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
H01M10/04 Z
H01G11/84
H01G13/00 361Z
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2021029777
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大倉 才昇
(72)【発明者】
【氏名】田中 瑠璃
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016558(JP,A)
【文献】特開2021-015712(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03783378(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 10/48
H01M 10/44
H01M 10/04
H01G 11/84
H01G 13/00
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの自己放電を検査する蓄電デバイスの自己放電検査方法であって、
上記蓄電デバイスは、
第1荷重で押圧され、デバイス電圧が第1デバイス電圧に充電されている状態で、荷重を上記第1荷重から減少させると、上記デバイス電圧が上記第1デバイス電圧よりも低下する特性を有しており、
上記第1荷重で押圧され、上記第1デバイス電圧に充電された上記蓄電デバイスの、上記第1デバイス電圧を検知する電圧検知工程と、
外部電源から、上記第1デバイス電圧に等しい大きさの電源電圧を上記蓄電デバイスに印加し続ける電圧継続印加工程と、
上記外部電源から上記蓄電デバイスに流れる電源電流を検知する電流検知工程と、
検知した上記電源電流
が安定した時点で流れる安定時電源電流を用いて、又は、上記安定時電源電流に至るまでの上記電源電流の経時変化を用いて、上記蓄電デバイスの自己放電状態を判定する判定工程と、
上記電圧継続印加工程の開始後、上記電源電流が安定する前
で、上記判定工程の前に、上記蓄電デバイスに掛けられた荷重を上記第1荷重から荷重減少量だけ減少させる荷重減少工程と、を備える
蓄電デバイスの自己放電検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスの自己放電検査方法であって、
前記荷重減少工程は、
前記電圧継続印加工程の開始後で、予め定めた第1時間経過後に、前記蓄電デバイスに掛けられた前記荷重を減少させる工程であり、
前記荷重減少量は、
上記蓄電デバイスが自己放電の良好な良品デバイスであり、且つ、
上記良品デバイスについて、上記電圧継続印加工程の開始から上記第1時間経過後に、上記荷重を前記第1荷重から上記荷重減少量だけ減少させた場合に、前記電源電流が、荷重減少に伴う前記デバイス電圧の低下によ
り増加した後、
上記良品デバイスの安定時電源電流値に安定する良品用荷重減少量である
蓄電デバイスの自己放電検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の蓄電デバイスの自己放電検査方法であって、
前記荷重減少工程は、
前記電圧継続印加工程の開始後、予め定めた第2時間経過後に、前記蓄電デバイスに掛けられた前記荷重を減少させる工程であり、
前記荷重減少量は、
上記蓄電デバイスの自己放電電流がしきい電流値の大きさであるしきいデバイスであり、且つ、
上記しきいデバイスについて、上記電圧継続印加工程の開始から上記第2時間経過後に、上記荷重を前記第1荷重から上記荷重減少量だけ減少させた場合に、前記電源電流が、荷重減少に伴う前記デバイス電圧の低下によ
り増加した後、
上記しきいデバイスの安定時電源電流値に安定するしきい用荷重減少量である
蓄電デバイスの自己放電検査方法。
【請求項4】
組み立てた未充電の蓄電デバイスを予め定めた充電状態まで初充電して、予め充電された蓄電デバイスとする初充電工程と、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの自己放電検査方法により、初充電された上記蓄電デバイスの自己放電状態を検査する検査工程と、を備える
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの自己放電状態を判定する蓄電デバイスの自己放電検査方法、及び、この自己放電検査方法を含む蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイスの製造に当たっては、電極体等の内部に鉄や銅などの金属異物が混入する場合があり、混入した金属異物に起因して蓄電デバイスに内部短絡に起因する自己放電が生じることがある。このため、蓄電デバイスの製造過程において、蓄電デバイスにおける内部短絡の有無や自己放電電流の大きさなど自己放電の状態を判定したい場合がある。
【0003】
この蓄電デバイスの自己放電の検査手法としては、例えば、以下が知られている。即ち、予め充電された蓄電デバイスの検知前デバイス電圧を測定しておき、外部電源から、検知前デバイス電圧に等しい電源電圧を蓄電デバイスに印加し続ける。すると、外部電源から蓄電デバイスに流れる電源電流が0から徐々に増加し、蓄電デバイスの自己放電電流に等しい大きさとなって安定する。そこで、この電源電流を検知し、この検知した電源電流に基づいて、蓄電デバイスの自己放電電流の大小を判定する。なお、関連する従来技術として、特許文献1(特許文献1の特許請求の範囲等を参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の自己放電検査方法でも、電源電流の大きさが増加しほぼ安定するまでに時間が掛かる、電池の良否を判定するのに、安定時電源電流の大きさとしきい電流値とを比較するなど、良否判定が面倒であった。
ところで発明者らは、充電され、且つ、荷重が掛けられた電池について、掛けられている荷重を減少させると、電池電圧(開放電圧)が僅かに低下する場合があることを見出した。
本発明は、かかる知見に鑑みてなされたものであって、改良された蓄電デバイスの自己放電検査方法、及び、この自己放電検査方法を含む蓄電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、蓄電デバイスの自己放電を検査する蓄電デバイスの自己放電検査方法であって、上記蓄電デバイスは、第1荷重で押圧され、デバイス電圧が第1デバイス電圧に充電されている状態で、荷重を上記第1荷重から減少させると、上記デバイス電圧が上記第1デバイス電圧よりも低下する特性を有しており、上記第1荷重で押圧され、上記第1デバイス電圧に充電された上記蓄電デバイスの、上記第1デバイス電圧を検知する電圧検知工程と、外部電源から、上記第1デバイス電圧に等しい大きさの電源電圧を上記蓄電デバイスに印加し続ける電圧継続印加工程と、上記外部電源から上記蓄電デバイスに流れる電源電流を検知する電流検知工程と、検知した上記電源電流が安定した時点で流れる安定時電源電流を用いて、又は、上記安定時電源電流に至るまでの上記電源電流の経時変化を用いて、上記蓄電デバイスの自己放電状態を判定する判定工程と、上記電圧継続印加工程の開始後、上記電源電流が安定する前で、上記判定工程の前に、上記蓄電デバイスに掛けられた荷重を上記第1荷重から荷重減少量だけ減少させる荷重減少工程と、を備える蓄電デバイスの自己放電検査方法である。
【0007】
上述の検査方法で検査する蓄電デバイスは、上述のように、蓄電デバイスに掛けられた荷重を減少させると、デバイス電圧(開放電圧)が低下する特性を有している。
そして、上述の検査方法では、蓄電デバイスの第1デバイス電圧を検知する電圧検知工程、第1デバイス電圧に等しい大きさ電源電圧を印加し続ける電圧継続印加工程、電流検知工程、及び、判定工程を行う。加えて、電圧継続印加工程の開始後、電源電流が安定する前に、蓄電デバイスに掛けられた荷重を第1荷重から荷重減少量だけ減少させる荷重減少工程を備えている。
【0008】
荷重を変化させない場合、電圧継続印加工程によって電源電圧を印加し続けると、蓄電デバイスの自己放電により、デバイス電圧が徐々に低下し、やがて安定する。
上述の検査方法では、これに加えて、荷重減少工程によって荷重を減少させるので、この荷重の減少によってもデバイス電圧を低下させることができる。つまり、デバイス電圧の低下を早めることができるので、荷重減少量を適切に設定することにより、電源電流を従来に比して早期に安定させたり、電源電流の変化の様子から、蓄電デバイスの良否を容易に判定できたりするなどの、改良された新たな検査手法を提供することができる。
【0009】
上述の蓄電デバイスの自己放電検査方法は、後述するように、蓄電デバイスの製造過程において行うことができるほか、自動車等に搭載された或いは単独で市場に置かれた以降の、使用中、使用済の蓄電デバイスに対して行うこともできる。
また、「蓄電デバイス」としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタが挙げられる。
第1デバイス電圧は、外部から蓄電デバイスに流れる電流をゼロとした場合に、蓄電デバイスの端子間に生じる開路電圧であり、必ずしも蓄電デバイスの端子を回路から切断(開路)して測定する必要はない。
【0010】
判定工程では、電源電流に基づいて自己放電状態を判定する。具体的には、電源電流が安定した時点で流れる安定時電源電流を用いて判定する手法や、安定時電源電流に至るまでの電源電流の経時変化を用いて、自己放電状態を判定する手法が挙げられる。安定時電源電流を用いて自己放電状態を判定する手法としては、例えば、まず供試された蓄電デバイスについて、安定時電源電流の値を得る。その上で、この安定時電源電流の値と基準とするしきい電流値との大小から、自己放電状態の良否(OK/NG)を判定する手法、安定時電源電流の大きさに応じたA/B/C…などの複数ランクにランク分けする手法などの判定手法が挙げられる。
【0011】
一方、安定時電源電流に至るまでの電源電流の経時変化から自己放電状態を判定する手法としては、例えば、先ず安定時電源電流に至るまでの電源電流の経時変化から、推定安定時電源電流の値を推定する。その上で、この推定安定時電源電流の値としきい電流値との大小から、自己放電状態の良否(OK/NG)を判定する手法、推定安定時電源電流の大きさに応じたA/B/C…などの複数ランクにランク分けする手法などの判定手法が挙げられる。また、電源電流の単位時間あたりの変化量や、増加から減少に転じたか否かなどの変化の推移から、直接、蓄電デバイスの自己放電状態の良否判定やランク分けを行う判定手法も挙げられる。
【0012】
なお、検知した電源電流の経時変化とは、電圧継続印加工程の開始以降、蓄電デバイスを流れる電源電流の値が安定するまでの期間に生じる、電源電流の時間的な変化をいい、例えば、予め定めた期間に生じる電源電流の増加量や増加の傾きなどで示すことができる。また、電圧継続印加工程において十分な時間が経過した時点では、蓄電デバイス内を流れる自己放電電流の大きさに対応する安定な電源電流が流れる。この安定した電源電流を安定時電源電流とする。
【0013】
(2)(1)の蓄電デバイスの自己放電検査方法であって、前記荷重減少工程は、前記電圧継続印加工程の開始後で、予め定めた第1時間経過後に、前記蓄電デバイスに掛けられた前記荷重を減少させる工程であり、前記荷重減少量は、上記蓄電デバイスが自己放電の良好な良品デバイスであり、且つ、上記良品デバイスについて、上記電圧継続印加工程の開始から上記第1時間経過後に、上記荷重を前記第1荷重から上記荷重減少量だけ減少させた場合に、前記電源電流が、荷重減少に伴う前記デバイス電圧の低下により増加した後、上記良品デバイスの安定時電源電流値に安定する良品用荷重減少量である蓄電デバイスの自己放電検査方法とすると良い。
【0014】
この検査方法では、予め、自己放電が良好な良品デバイス、即ち、自己放電電流がしきい電流値よりも小さな良品デバイスについて、良品用荷重減少量を得ておく。具体的には、上述の良品デバイスについて、電圧継続印加工程の開始から第1時間経過後に荷重を第1荷重から荷重減少量だけ減少させた場合に、荷重減少に伴うデバイス電圧の低下により、電源電流が急激に増加した後、速やかに安定する荷重減少量を得ておき、これを良品用荷重減少量とする。
【0015】
そしてこの検査方法では、荷重減少工程において、電圧継続印加工程の開始から第1時間経過後に、荷重を第1荷重から良品用荷重減少量だけ減少させる。
このため、供試された蓄電デバイスが、良品デバイスである場合には、電源電流は速やかに安定する。一方、供試された蓄電デバイスが、良品デバイスよりも自己放電電流が大きい蓄電デバイス(例えば、後述するしきいデバイス、不良デバイス)であった場合には、荷重減少に伴うデバイス電圧の低下により、電源電流が急激に増加するが、その後、徐々に増加する期間を経て、やがて安定する。
従ってこの検査方法によれば、供試される蓄電デバイスが、良品デバイスであってもなくても、荷重減少工程を有さないために電源電流が徐々に増加する従来の検査方法に比して、早期に蓄電デバイスの良否を判定することが可能となる。
【0016】
なお、電圧継続印加工程の開始後、荷重減少工程を開始する第1時間を、遅くとも、電圧継続印加工程の開始の後、良品デバイスについて、荷重減少工程を行わず、電圧継続印加工程を行った場合に、電源電流が安定するのに掛かる安定到達時間の1/2以内とするのが好ましい。第1時間が、安定到達時間の1/2を越えると、荷重減少工程を行うことによる安定到達時間短縮の効果が小さくなるからである。第1時間としては、電圧継続印加工程の開始の直後(例えば、30秒以内)とするのが最も好ましい。
【0017】
(3)(1)の蓄電デバイスの自己放電検査方法であって、前記荷重減少工程は、前記電圧継続印加工程の開始後、予め定めた第2時間経過後に、前記蓄電デバイスに掛けられた前記荷重を減少させる工程であり、前記荷重減少量は、上記蓄電デバイスの自己放電電流がしきい電流値の大きさであるしきいデバイスであり、且つ、上記しきいデバイスについて、上記電圧継続印加工程の開始から上記第2時間経過後に、上記荷重を前記第1荷重から上記荷重減少量だけ減少させた場合に、前記電源電流が、荷重減少に伴う前記デバイス電圧の低下により増加した後、上記しきいデバイスの安定時電源電流値に安定するしきい用荷重減少量である蓄電デバイスの自己放電検査方法とすると良い。
【0018】
この検査方法では、予め、自己放電電流がしきい電流値の大きさであるしきいデバイスについて、しきい用荷重減少量を得ておく。具体的には、上述のしきいデバイスについて、電圧継続印加工程の開始から第2時間経過後に荷重を第1荷重から荷重減少量だけ減少させた場合に、荷重減少に伴うデバイス電圧の低下により、電源電流が急激に増加した後、速やかに安定する荷重減少量を得ておき、これをしきい用荷重減少量とする。
【0019】
この検査方法では、荷重減少工程において、電圧継続印加工程の開始から第2時間経過後に、荷重を第1荷重からしきい用荷重減少量だけ減少させる。
このため、供試された蓄電デバイスが、しきいデバイスである場合には、電源電流は速やかに安定する。一方、供試された蓄電デバイスが、しきいデバイスよりも自己放電電流が大きい不良デバイスであった場合には、荷重減少に伴うデバイス電圧の低下により、電源電流が急激に増加するが、その後、徐々に増加する期間を経て、やがて安定する。他方、供試された蓄電デバイスが、しきいデバイスよりも自己放電電流が小さい良品デバイスであった場合には、荷重減少に伴うデバイス電圧の低下により、電源電流が急激に増加した後、反転し、速やかに減少して安定する。
つまり、供試される蓄電デバイスが、しきいデバイス、良品デバイス、不良デバイス、のいずれであるかによって、電源電流の挙動が異なるものとなる。このため、電源電流の安定を持たなくとも、判定工程で、検知した上記電源電流に基づいて、蓄電デバイスの良否を容易に判定できる。
【0020】
特に、判定工程で、電源電流が急激に増加した後、反転し、速やかに減少する供試デバイスは良品デバイスと判定し、その他は不良デバイスと判定することで、従来よりも、早期に良否を判定できる。
【0021】
なお、「しきい電流値」とは、第1デバイス電圧に充電された蓄電デバイスの自己放電電流の電流値と比較して、蓄電デバイスの良否を判定するのに用いる基準の電流値、又は、複数のランクの属否を判定するのに用いる複数の基準の電流値のうち、いずれかの基準の電流値をいう。
【0022】
また、電圧継続印加工程の開始後、荷重減少工程を開始する第2時間を、遅くとも、電圧継続印加工程の開始の後、良品デバイスについて、荷重減少工程を行わず、電圧継続印加工程を行った場合に、電源電流が安定するのに掛かる安定到達時間の1/2以内とするのが好ましい。第2時間が、安定到達時間の1/2を越えると、荷重減少工程を行うことによる安定到達時間短縮の効果が小さくなるからである。第2時間としては、電圧継続印加工程の開始の直後(例えば、30秒以内)とすると良い。
【0023】
(4)さらに他の解決手段は、組み立てた未充電の蓄電デバイスを予め定めた充電状態まで初充電して、予め充電された蓄電デバイスとする初充電工程と、上述の(1)~(3)のいずれかに記載の蓄電デバイスの自己放電検査方法により、初充電された上記蓄電デバイスの自己放電状態を検査する検査工程と、を備える蓄電デバイスの製造方法である。
【0024】
上述の蓄電デバイスの製造方法では、初充電工程の後に、上述の自己放電検査方法による検査工程を行う。このため、蓄電デバイスの初期段階における短絡の有無や程度を、改良された新たな検査手法で検査して蓄電デバイスを製造できる。
【0025】
なお、初充電工程と検査工程との間には、蓄電デバイスを開放状態で高温下に放置する高温エージング工程や、その後の冷却工程を設けると、蓄電デバイスの電圧が安定になり易く、さらに好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態1,2及び変形形態1に係る電池の縦断面図である。
【
図2】実施形態1,2及び変形形態1に係り、電池の自己放電検査の検査工程を含む電池の製造工程のフローチャートである。
【
図3】実施形態1,2及び変形形態1に係る電池を、荷重を増減可能な治具に装着した状態を示す説明図である。
【
図4】実施形態1,2及び変形形態1に係る電池の自己放電検査方法に関し、電池に外部電源を接続した状態の回路図である。
【
図5】実施形態1及び参考形態に係り、良品及び不良の各電池について、電圧印加時間tに対する、電源電圧VP、荷重BL及び電源電流IPの時間変化を模式的に示すグラフである。
【
図6】変形形態1及び参考形態に係り、良品及び不良の各電池について、電圧印加時間tに対する、電源電圧VP、荷重BL及び電源電流IPの時間変化を模式的に示すグラフである。
【
図7】実施形態2及び参考形態に係り、良品
、不良
及びしきいの各電池について、電圧印加時間tに対する、電源電圧VP、荷重BL及び電源電流IPの時間変化を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1を、図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施形態1に係るリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」ともいう)1の縦断面図を示す。この電池1は、直方体箱状の電池ケース10と、この内部に収容された扁平状捲回型の電極体20及び電解液15と、電池ケース10に支持された正極端子部材30及び負極端子部材40等から構成されている。本実施形態1では、正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物、具体的にはリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を、負極活物質として、炭素材料、具体的には黒鉛を用いている。なお、後述する変形形態1、実施形態2及び参考形態に係る電池1も同様である。
【0028】
次いで、電池1の電池内部の絶縁性を判定する自己放電検査方法、及びこれを含む電池1の製造方法について説明する(
図2参照)。まず「組立工程」S1において、未充電の電池1X(
図1参照)を組み立てる。後述する初期電池電圧測定工程S7~判定工程S11及び荷重減少工程S12は、電池1の製造方法における検査工程にも相当している。
【0029】
次に、「荷重付与工程」S2において、組み立てた電池1X(後の電池1)に荷重BLとして、予め定めた第1荷重BL1(本実施形態1では、例えばBL1=918kgf=9kN)を付与する。具体的には、
図3に示すように、拘束治具KJを用いて、第1荷重BL1で電池厚み方向(
図1において紙面に垂直な方向)に電池1(電池1X)を弾性的に圧縮した状態に拘束する。更に具体的には、拘束治具KJの、支持柱KJC及び固定ナットKJNで間隔が固定された2枚の固定プレートKJP1,KJP2のうち、図中下側の固定プレートKJP1と加圧プレートKJMPとの間に電池1(電池1X)を挟み、柱状の押圧部材KJMCを、その雄ネジ部KJMCsと押圧ナットKJMNと
2つのワッシャKJMW間に保持された圧縮バネKJMSとを用いて、弾性的に押し込むことで、電池1(電池1X)に荷重BLを掛ける。
【0030】
なお、予め、電池1に代えてロードセル(図示しない)を固定プレートKJP1と加圧プレートKJMPとの間に挟み、押圧ナットKJMNを締め込んで、圧縮バネKJMSの長さLL(圧縮バネKJMSの両側のワッシャKJMW同士の間隔)と、ロードセルに掛かる荷重との関係を得ておく。これにより、圧縮バネKJMSの長さLLを測定すれば、拘束治具KJによって電池1に掛けている荷重BLの大きさを検知することができる。
【0031】
このようにして電池1(電池1X)に第1荷重BL1を掛けたまま状態で、電池1について初充電工程S3から後述する継続判断工程S10まで及び荷重減少工程S12を行う。各工程において、電池1の周囲の環境温度TKは、サーミスタからなる温度センサKTを有する温度検知装置KTSを用いて検知する。また、電池1の電池温度TBは、電池ケース10の所定位置に接触させたサーミスタからなる温度センサSTを有する温度検知装置STSを用いて検知する(
図4参照)。
【0032】
次に、「初充電工程」S3において、未充電の電池1Xを初充電して電池1とする。初充電温度FT(FT=20℃)下で、拘束治具KJで拘束した電池1Xの両端子部材30,40に充放電装置(不図示)を接続して、定電流定電圧(CCCV)充電により、電池1Xの電池電圧VBが予め定めた値(本実施形態ではVB=4.0V)になるまで、電池1を初充電する。
【0033】
次に、「高温エージング工程」S4において、初充電した電池1をエージング温度ET(ET=63℃)の温度下、両端子部材30,40を開放した状態でエージング期間EK(EK=20時間)にわたり放置して、高温エージングを行う。この高温エージングを行うと、電池1の電池電圧VBは低下し、それぞれSOC80%程度に相当する電池電圧となる。
【0034】
次に、「冷却工程」S5において、冷却温度CT(CT=20℃)下の冷却室CR内に電池1を20分間配置し、ファンで強制冷却することにより、電池温度TBを概ね20℃(TB≒20℃)とする(
図2参照)。
【0035】
さらに「放置工程」S6において、環境温度TKを第1環境温度TK1(TK1=20.0℃)とした第1室KR1内に電池1を移送し、放置期間HP(例えばHP=30分間)にわたり放置して、電池1の電池温度TBを第1環境温度TK1と同じ第1電池温度TB1(TB1=20.0℃)とする(
図2参照)。そして、放置工程S6の後、後述する初期電池電圧測定工程S7~継続判断工程S10においても、電池1の電池温度TBが第1電池温度TB1である条件下で行う。
【0036】
「初期電池電圧測定工程」S7では、第1環境温度TK1の下、第1電池温度TB1(TB1=20.0℃)とした電池1の開放電圧である第1電池電圧VB1を測定する。具体的には、
図4に示すように、外部電源EPの一対のプローブP1,P2を電池1の正極端子部材30及び負極端子部材40にそれぞれ接触させて、電池1に外部電源EPを接続し、外部電源EPから電池1に流れる電源電流IPをゼロ(IP=0:直流電圧源EPEを切り離した状態)として、電池1の第1電池電圧VB1を電圧計EPVで測定する。
【0037】
図4に示す本実施形態1,2及び変形形態1で用いる外部電源EPは、直流電圧源EPEが発生する電源電圧VPを可変かつ高精度に制御できる精密直流電源であり可変定電圧電源である。この外部電源EPは、電池1に印加する電源電圧VPを高精度に測定可能な電圧計EPVのほか、外部電源EPから電池1に流れる電源電流IPを精密測定可能な電流計EPIをも有している。
【0038】
図4において、配線抵抗Rwは、外部電源EP内、及び、外部電源EPからプローブP1,P2までに分布する配線抵抗を示す。また、接触抵抗R12は、外部電源EPの一方のプローブP1と電池1の正極端子部材30との間に生じる接触抵抗と、及び外部電源EPの他方のプローブP2と電池1の負極端子部材40との間に生じる接触抵抗との和を示す。
【0039】
また
図4には、電池成分1B、直流抵抗Rs及び短絡抵抗Rpを含む電池1(良品電池1G,不良電池1N,しきい電池1TH)の等価回路も示してある。このうち電池成分1Bは、電池1がなす容量成分であり、電池成分電圧VBBを生じているとする。直流抵抗Rsは、電池1の両端子部材30,40間において、電池成分1Bに直列に存在して見える電池抵抗である。一方、短絡抵抗Rpは、電池1の内部短絡によって生じる自己放電の大きさを示す抵抗である。破線矢印で示す自己放電電流IDは、電池成分1Bから短絡抵抗Rpに流れる自己放電の電流を示す。
【0040】
電池成分電圧VBBは、電源電流IPがゼロ(IP=0)の場合における電池電圧VBに一致する。初期電池電圧測定工程S7では、第1電池電圧VB1を測定しただけであるので、続いて行う「電圧継続印加工程」S8の当初(電圧印加時間t=0)において、電池成分1Bの発生する電池成分電圧VBBは、第1電池電圧VB1に等しい(VBB=VB1,t=0)。
【0041】
なお、(一対のプローブP1,P2を端子部材30,40に接続し直すことなく)プローブP1と正極端子部材30との接続状態及びプローブP2と負極端子部材40との接触状態を維持して、この初期電池電圧測定工程S7から後述する継続判断工程S10までを行う(変形形態1及び実施形態2でも同様)。プローブP1,P2の端子部材30,40に対する接触状態が接触の度に変化して、プローブP1と正極端子部材30との間及びプローブP2と負極端子部材40との間に生じる接触抵抗R12の大きさが変動するのを避けるためである。
【0042】
実施形態1,2及び変形形態1において、複数の電池1(良品電池1G,不良電池1N,しきい電池1TH)の挙動について考察するが、考察を容易にするため、各電池1において、異なるのは、短絡抵抗Rp及びこれに流れる自己放電電流IDの大きさのみであるとし、電池成分1Bの容量や直流抵抗Rsの大きさなどは同じである(互いに等しい)とする。また、配線抵抗Rw及び接触抵抗R12も等しいとする。また、初期電池電圧測定工程S7、電圧継続印加工程S8の当初(電圧印加時間t=0)における、第1電池電圧VB1即ち電池成分1Bの電池成分電圧VBBの大きさも、各電池1ついて互いに等しいとする。
【0043】
続いて、「電圧継続印加工程」S8では、第1環境温度TK1の下、第1電池温度TB1が第1環境温度TK1に等しくなった状態で、外部電源EPの直流電圧源EPEに、前述の初期電池電圧測定工程S7で取得した第1電池電圧VB1に等しい継続電源電圧VPc(VPc=VB1)を発生させて、電池1に印加開始し(電圧印加時間t=0)、これ以降、継続電源電圧VPcの印加を継続する。即ち、外部電源EPで発生する継続電源電圧VPcを、当初に得た第1電池電圧VB1に等しい大きさのまま維持する。このようにVPc=VB1とするため、特許文献1と同様、この電圧継続印加工程S8の当初、電池1には、電源電流IPが流れない。なお、
図2に示すように、この電圧継続印加工程S8に並行して、後述する荷重減少工程S12を行う。
【0044】
「電流検知工程」S9では、電流計EPIで電源電流IPを検知する。即ち、外部電源EPから電池1に流れる電源電流IPの電源電流値IP(n)(nは取得順を示す0以上の整数)を所定の時間経過毎(本実施形態では10秒間経過毎)に取得する。なお前述したように、継続電源電圧VPcを印加した当初(電圧印加時間t=0)の電源電流IPの電源電流値IP(0)はゼロとなる(IP(0)=0)。そして、電圧印加時間tの経過と共に、電源電流IP(電源電流値IP(n))は、電池1毎に異なる固有の自己放電電流IDの大きさに向けて近づくように徐々に増加する(参考形態参照)。但し、本実施形態1では、後述する荷重減少工程S12により電池1に掛けられた荷重BLを減少させるので、荷重BLを減少させると共に、電源電流IP(電源電流値IP(n))が急増し、その後、再び、電池1の自己放電電流IDの大きさに向けて変化し、ついには安定する。
【0045】
「継続判断工程」S10では、電圧継続印加工程S8及び電流検知工程S9を再度繰り返すか否かを判断する。本実施形態1では、電池1に継続電源電圧VPcを印加開始して以降、電源電流IP(具体的には、電源電流値IP(n))が安定したか否かを判断する。ここで、No即ち電源電流IPが安定していない場合には、電圧継続印加工程S8に戻り、電池1に継続電源電圧VPcを印加するのを継続し(S8)、電源電流IPを再び検知する(S9)。一方、Yes即ち電源電流IPが安定した場合には、後述する「判定工程」S11に進む。
【0046】
この継続判断工程S10において、電源電流IPが安定したか否かを判断する手法としては、例えば、継続判断工程S10で、電源電流値IP(n)の移動平均値(例えば直近の60秒間に得た7個の電源電流値IP(n-6)~IP(n)の移動平均値)を逐次算出し、その移動平均値の推移(例えば、移動平均値の差分値や微分値の大小)から、電源電流値IP(n)が安定したか否かを判断する手法が挙げられる。
【0047】
電圧継続印加工程S8に並行して行う「荷重減少工程」S12は、電圧継続印加工程S8の開始後(電圧印加時間t>0)で電源電流IPが安定する前の期間のうち、開始(t=0)から予め定めた第1時間t1経過後(t=t1)に、電池1に掛けられた荷重BLを、前述の第1荷重BL1から荷重減少量ΔBLだけ減少させる。本実施形態1では、第1時間t1=5.0分(=300秒)とし、荷重減少量ΔBLを良品用荷重減少量ΔBLg2とした。この場合に、外部電源EPから電池1に流れる電源電流IPの電源電流値IP(n)がどのように推移するかについて、以下に検討する。
【0048】
(参考形態)
ここで先ず参考形態として、特許文献1に記載の手法、即ち、
図5の中段に太い実線で示すように、電圧印加開始(t=0)以降、外部電源EPから電池1に、第1電池電圧VB1に等しい継続電源電圧VPcを印加し続けた場合の、電源電流IPの推移について、
図4,
図5を参照して検討する。なお、
図5の上段に細い実線で示すように、電池1に掛かる荷重BLは、第1荷重BL1のまま一定であるとする。
【0049】
外部電源EPから電池1に第1電池電圧VB1を印加し続けると、電圧印加時間tの経過と共に、電池成分1Bの電池成分電圧VBBは、電圧継続印加工程S8の開始時(t=0)の第1電池電圧VB1から徐々に低下する。電池成分1Bに蓄えられていた電荷が、短絡抵抗Rpを通じて自己放電電流IDにより徐々に放電されるためである。
【0050】
このため、第1電池電圧VB1の印加当初(電圧印加時間t=0)には電源電流IPは流れない(IP(0)=0)が、電池成分1Bで生じる電池成分電圧VBBが小さくなると、
図4から容易に理解できるように、直流抵抗Rs、接触抵抗R12、及び配線抵抗Rwの三者の直列抵抗の両端に電位差(VB1-VBB)が生じ、これに応じた電源電流IPが二点鎖線の矢印で示すような経路で電池1に流れる(VB1=VBB+(Rs+R12+Rw)・IP)。
【0051】
そして、
図5の下段に細い実線及び細い破線で示すように、この参考形態の電源電流IPの大きさは、電池成分1Bの電池成分電圧VBBが低下するに従って、徐々に大きくなる。但し、
図4から理解できるように、電池成分電圧VBBの低下に伴って電源電流IPが増加して、短絡抵抗Rpに生じる逆起電力Vp(Vp=Rp・IP)が、電池成分1Bに生じる電池成分電圧VBBに等しくなると、もはや、電池成分1Bから自己放電電流IDが流れ出すことが無くなる。これにより、電池成分1Bにおける電池成分電圧VBBの低下も止まって、電源電流IPは、自己放電電流IDに等しい大きさの安定時電源電流IPsとなって安定する。
【0052】
従って、供試される電池1が、良品電池(短絡抵抗Rpが大きく、自己放電電流IDがしきい電流値IDthよりも小さい電池)1Gである場合には、電池成分1Bの電池成分電圧VBBはゆっくり低下し、電源電流IPもゆっくり増加する(
図5の下段の細い実線参照)。また、この良品電池1Gの安定時電源電流値IPsgは小さい(例えば、典型的な良品電池1Gの値としてIPsg=15μAを想定する。)。
【0053】
これに対し、供試される電池1が不良電池(良品電池1Gに比して短絡抵抗Rpが小さく、自己放電電流IDがしきい電流値IDthよりも大きい電池)1Nである場合には、良品電池1Gに比して、電池成分1Bの電池成分電圧VBBが相対的に大きく低下し、電源電流IPも相対的に大きく増加する(
図5の下段の細い破線参照)。不良電池1Nの安定時電源電流値IPsnも、良品電池1Gの安定時電源電流値IPsgに比して大きくなる(例えば、典型的な不良電池1Nの値としてIPsn=27μA>IPsgを想定する。)。
【0054】
従って、安定時電源電流IPsの値(IPsg,IPsn)、あるいは電源電流IPの増加の速度(電源電流IPの経時変化)の値や変化の様子によって、供試された電池1の良否を判定することができる(特許文献1参照)。例えば、
図5の下段のグラフにおいて、電源電流IPのしきい電流値IPth(自己放電電流IDのしきい電流値IDthに等しい)を
図5に細い実線で示すように、良品電池1Gの安定時電源電流値IPsgと不良電池1Nの安定時電源電流値IPsnの中間の値に定める(例えば、IPth=20μAとする。)。これにより、取得した安定時電源電流IPsの値(IPsg,IPsn)としきい電流値IPthとの比較により、当該電池1の良否を判定できる。
【0055】
しかしこの参考形態の手法では、電池1に継続電源電圧VPcの印加を開始(t=0)してから、電池1の良否判定が可能になるのに時間が掛かる。安定時電源電流IPsの値を得て判定する場合、例えば、
図5の下段のグラフのうち、細い実線及び破線で示す上述の例では、安定時電源電流IPsの値(IPsg,IPsn)を得るのに、電圧印加時間tが55分以上経過するのを待つ必要があることが判る。
このように、従来技術では、電池1の良否判定が可能となるまでに時間が掛かるのは、電池成分電圧VBBを徐々にしか低下させられないからである。
【0056】
そこで本実施形態1では、供試する電池1に、
図5中段のグラフにおいて太い実線で示すように、電圧継続印加工程S8の開始(電圧印加時間t=0)以降、継続電源電圧VPcを印加し続ける。そして、
図5上段のグラフにおいて太い実線で示すように、第1時間t1(本実施形態ではt1=5.0分)経過した時点で、電池1に掛けられている荷重BLを、第1荷重BL1から第2荷重BL2まで速やかに(本実施形態1では1分以内、例えば10秒で)減少させる。また、荷重減少量ΔBL(=BL1-BL2)は、以下のようにして定めた良品用荷重減少量ΔBLg2とした。
【0057】
即ち、良品電池1Gについて、電圧継続印加工程S8の開始から第1時間t1(=5.0分)経過した時点で、第1荷重BL1から様々な大きさの荷重減少量ΔBLで荷重BLを減少させる。そして、荷重BLの減少によって、電源電流が急激に増加した後、速やかに安定する荷重減少量ΔBLを得ておき、これを良品用荷重減少量ΔBLg2とする。具体的には、電源電流IPが急激に増加した後、徐々に増加したり逆に減少したりすること無く、電源電流IPが最も速やかに安定する大きさの荷重減少量ΔBLを、良品用荷重減少量ΔBLg2とする。この良品用荷重減少量ΔBLg2は、概ね、良品電池1Gに荷重変化前の第1時間t1時点で流れている電源電流IP(t1)と、荷重減少をさせない参考形態における良品電池1Gの安定時電源電流値IPsgとの差電流ΔIP(=IPsg-IP(t1))と、直流抵抗Rs、接触抵抗R12、及び配線抵抗Rwの三者の直列抵抗(Rs+R12+Rw)との積(ΔIP・(Rs+R12+Rw))に相当する電圧低下を、電池1に生じさせる荷重減少量ΔBLの大きさに相当する。
【0058】
ここで、供試された電池1が、良品電池1Gであった場合を考える。この場合には、
図5の下段のグラフに太い実線で示すように、電圧継続印加工程S8の開始から第1時間t1経過まで(荷重減少工程S12の開始まで)は、細い実線で示す参考形態の良品電池1Gと同様、徐々に電源電流IPが増加する。一方、第1時間t1を経過すると、電池1に掛かる荷重BLを良品用荷重減少量ΔBLg2だけ減少させたことによって生じる、電池成分電圧VBBの低下によって、電源電流IPは急激に増加する。そして、荷重BLが第2荷重BL2にまで減少すると、電源電流IPは新たな荷重(第2荷重BL2)下での良品電池1Gの安定時電源電流値IPsg2に速やかに収束し、その後、この安定時電源電流値IPsg2を保つ。ここで、細い実線で示す参考形態の場合と対比すると容易に理解できるように、良品電池1G同士で比較すると、本実施形態1の手法によれば、参考形態の手法に比して、電源電流IPが安定するまでに掛かる時間を大幅に短くできることが判る。
【0059】
次に、供試された電池1が、不良電池1Nであった場合を考える。この場合にも、
図5の下段のグラフに太い破線で示すように、電圧継続印加工程S8の開始から第1時間t1経過まで(荷重減少工程S12の開始まで)は、細い破線で示す参考形態の不良電池1Nと同様に、徐々に電源電流IPが増加する。一方、第1時間t1を経過すると、電池1に掛かる荷重BLを良品用荷重減少量ΔBLg2だけ減少させたことによって生じる、電池成分電圧VBBの低下によって、電源電流IPは急激に増加する。但し、上述の良品電池1Gの場合とは異なり、荷重BLが第2荷重BL2になった後は、電源電流IPは徐々に増加する期間を経て、やがて安定する。即ち、新たな荷重(第2荷重BL2)下での不良電池1Nの安定時電源電流値IPsn2に向けて徐々に増加し、その後、この安定時電源電流値IPsn2に達して安定になる。ここで、細い破線で示す参考形態の場合と対比すると容易に理解できるように、不良電池1N同士で比較しても、本実施形態1の手法によれば、参考形態の手法に比して、電源電流IPが安定するまでに掛かる時間を大幅に短くできることが判る。
かくして本実施形態1では、電池1が良品電池1Gの場合でも不良電池1Nの場合でも、参考形態の手法に比して、より早期に判定工程S11における電池1の自己放電状態の判定を行えることが判る。
【0060】
なお、同じ良品電池1Gについて見ると、参考形態の、即ち、第1荷重BL1下での安定時電源電流値IPsgに比して、本実施形態1の第2荷重BL2下での安定時電源電流値IPsg2は、やや小さな値となる。同じ不良電池1Nについて見ても、参考形態の、即ち、第1荷重BL1下での安定時電源電流値IPsnに比して、本実施形態1の第2荷重BL2下での安定時電源電流値IPsn2が、やや小さな値となる。荷重BLの小さい方が、自己放電電流IDが小さくなるからである。
【0061】
さて「判定工程」S11では、得られた電源電流IPに基づいて、具体的には、電圧継続印加工程S8の開始(電圧印加時間t=0)以降に得られた電源電流値IP(0),IP(1),…,IP(n)の列を用いて、電池1の自己放電状態を判定する。
【0062】
本実施形態1では、具体的には、所定の時間間隔(本実施形態では10秒毎)で取得された一連の電源電流値IP(0),IP(1),…,IP(n)のうち、電圧継続印加工程S8の終期(本実施形態では最後の60秒間)に得られた7個の電源電流値IP(n-6)~IP(n)を用い、これらを平均して平均終期電源電流値IPE(IPE=(IP(n-6)+…+IP(n))/7)を算出する。平均終期電源電流値IPEは、電圧継続印加工程S8の終期に得られる安定時電源電流IPsの値を示している。これをしきい電流値IPthと比較し、平均終期電源電流値IPEがしきい電流値IPthよりも小さい(IPE<IPth)電池1を良品電池1Gと判定する。かくして、充電され、自己放電状態を検査された電池1(良品電池1G)が製造できる。
【0063】
一方、平均終期電源電流値IPEがしきい電流値IPth以上(IPE≧IPth)の電池1を不良電池1Nと判定する。不良電池1Nと判定された電池1は除外し廃棄する。或いは、分解等して再利用する。
【0064】
上述の実施形態1では、判定工程S11において、終期に得られた複数個の電源電流値IP(n)等を平均して、安定時電源電流IPsの値に相当する平均終期電源電流値IPEを算出し、これをしきい電流値IPthと比較して電池1の良否を判定した。
しかし、継続判断工程S10で得た、直近に得た複数個(例えば7個)の電源電流値IP(n-6)~IP(n)の移動平均値MIP(n)のうち、最後に得た移動平均値MIP(n)を上述の平均終期電源電流値IPEとして、判定工程S11で電池1の自己放電状態を判定してもよい。即ち、判定工程S11において、継続判断工程S10で最後に得た移動平均値MIP(n)としきい電流値IPthと比較して、電池1の良否を判定しても良い。
【0065】
以上のように、本実施形態1の手法では、初期電池電圧測定工程S7~判定工程S11及び荷重減少工程S12による自己放電検査による、改良された新たな検査手法を提供することができる。また、本実施形態1の電池1の製造方法では、初充電工程S3の後に、初期電池電圧測定工程S7~判定工程S11及び荷重減少工程S12からなる検査工程を行う。このため、電池1の初期段階における短絡の有無や程度を、改良された新たな検査手法で検査して電池1を製造できる。
【0066】
また本実施形態1の検査方法では、電圧継続印加工程の開始から第1時間経過後に、供試する電池1に掛ける荷重BLを良品用荷重減少量ΔBLg2だけ減少させる。このため、供試される電池1が、良品電池1Gであってもなくても、従来の検査方法に比して、早期に蓄電デバイスの良否を判定することが可能となる。
【0067】
(変形形態1)
上述の実施形態1(
図5参照)では、荷重減少工程S12により、電圧継続印加工程S8の開始から第1時間t1経過後(具体的にはt1=5.0分)に、電池1の荷重BLを良品用荷重減少量ΔBLg2だけ減少させた。しかし、荷重減少工程S12は、電圧継続印加工程S8の開始後、電源電流IPが安定する前のうちのいずれのタイミングでも良い。但し、容易に理解できるように、電圧継続印加工程S8の開始の直後に荷重減少工程S12を行うのが最も好ましい。
【0068】
そこで本変形形態1では、電圧継続印加工程S8の開始の直後に、具体的には、第1時間t1(t1≦30秒)として荷重減少工程S12を行う(
図2,
図6参照)。
なお、本変形形態1と上述の実施形態1とは、荷重減少工程S12を行うタイミングが異なるのみで、他は同様であるので、異なる部分を中心に説明し、同様な部分については説明を省略あるいは簡略化する。
【0069】
本変形形態
1に用いる電池1(
図1参照)は、実施形態1等に用いた電池1と同様であるので説明を省略する。また、電池1の製造方法(
図2参照)のうち、組立工程S1~判定工程S11も、実施形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0070】
上述したように、本変形形態1では、第1時間t1=30秒とした。また、荷重減少量ΔBLを、実施形態1とは異なる良品用荷重減少量ΔBLg3とする。
なお、この良品用荷重減少量ΔBLg3は、実施形態1で良品用荷重減少量ΔBLg2を得たのと同様、良品電池1Gについて、電圧継続印加工程S8の開始から第1時間t1(=30秒)経過した時点で、第1荷重BL1から様々な大きさの荷重減少量ΔBLで荷重BLを減少させる。そして、荷重BLの減少後に、電源電流IPが最も速やかに安定する大きさの荷重減少量ΔBLを、良品用荷重減少量ΔBLg3とする。この良品用荷重減少量ΔBLg3は、実施形態1で用いた良品用荷重減少量ΔBLg2よりも大きい(ΔBLg3>ΔBLg2)。電圧継続印加工程S8の開始から5.0分経過してから荷重減少工程S12を行う実施形態1に比して、本変形形態1では電源電流IPの増加量が少なく、電池成分電圧VBBの低下が少ないので、荷重BLの減少によって電池成分電圧VBBをより大きく低下させる必要があるからである。
【0071】
本変形形態1では、
図6の中段に太い実線で示すように、電圧継続印加工程S8の開始(電圧印加時間t=0)以降、継続電源電圧VPcを印加し続ける。そして、
図6上段のグラフにおいて太い実線で示すように、第1時間t1(本変形形態1ではt1=30秒)経過した時点で、電池1の荷重BLを、第1荷重BL1から第3荷重BL3まで、上述の良品用荷重減少量ΔBLg3(=BL1-BL3)だけ、速やかに(本変形形態1でも1分以内、例えば10秒内に)減少させた。
【0072】
この場合に、外部電源EPから電池1に流れる電源電
流IPの電源電流値IP(n)がどのように推移するかについて、
図6下段のグラフを用いて説明する。
【0073】
ここで、供試された電池1が、良品電池1Gであった場合には、
図6の下段のグラフに太い実線で示すように、電圧継続印加工程S8の開始の直後に(正確には、第1時間t1=30秒経過後から)、電池1に掛かる荷重BLを良品用荷重減少量ΔBLg3だけ減少させたことによって生じる、電池成分電圧VBBの低下によって、電源電流IPは急激に増加する。そして、荷重BLが第3荷重BL3にまで減少すると、電源電流IPは新たな荷重(第3荷重BL3)下での良品電池1Gの安定時電源電流値IPsg3に速やかに収束し、その後、この安定時電源電流値IPsg3を保つ。ここで、細い実線で示す参考形態の場合と対比すると容易に理解できるように、良品電池1G同士で比較すると、本変形形態1の手法によれば、参考形態の手法に比して(さらには実施形態1(
図5参照)の手法に比しても)、電源電流IPが安定するまでに掛かる時間を大幅に短くできることが判る。
【0074】
一方、供試された電池1が、不良電池1Nであった場合にも、
図6の下段のグラフに太い破線で示すように、電圧継続印加工程S8の開始の直後に、電池1に掛かる荷重BLを良品用荷重減少量ΔBLg3だけ減少させたことによって生じる、電池成分電圧VBBの低下によって、電源電流IPは急激に増加する。但し、上述の良品電池1Gの場合とは異なり、荷重BLが第3荷重BL3になった後は、電源電流IPは徐々に増加するようになる。即ち、新たな荷重(第3荷重BL3)下での不良電池1Nの安定時電源電流値IPsn3に向けて徐々に増加し、その後、この安定時電源電流値IPsn3に達して安定になる。ここで、細い破線で示す参考形態の場合と対比すると容易に理解できるように、不良電池1N同士で比較しても、本変形形態1の手法によれば、参考形態の手法に比して(さらには実施形態1(
図5参照)の手法に比しても)、電源電流IPが安定するまでに掛かる時間を大幅に短くできることが判る。
かくして本変形形態1では、電池1が良品電池1Gの場合でも不良電池1Nの場合でも、参考形態の手法に比して、さらには実施形態1(
図5参照)の手法に比しても、より早期に判定工程S11における電池1の自己放電状態の判定を行えることが判る。
【0075】
(実施形態2)
上述の実施形態1及び変形形態1(
図1~
図6参照)では、荷重減少工程S12において、電池1に掛かる荷重BLを、第1荷重BL1から減少させる荷重減少量ΔBLとして、良品電池1Gについて得た良品用荷重減少量ΔBLg2,ΔBLg3だけ減少させた。
【0076】
これに対し、本実施形態2(
図1~
図4,
図7参照)では、荷重減少工程S12において、荷重減少量ΔBLとしてしきい電池1THについて得たしきい用荷重減少量ΔBLthを用い、電池1に掛かる荷重BLを、第1荷重BL1からしきい用荷重減少量ΔBLthだけ減少させる点で異なる。なお、第2時間t2は、本変形形態1における第1時間t1と同じく、t2=30秒とした。そこで、異なる部分を中心に説明し、同様の部分については、説明を省略或いは簡略化する。
【0077】
本実施形態2に用いる電池1は、実施形態1等に用いた電池1と同様であるので説明を省略する。また、電池1の製造方法(
図2参照)のうち、組立工程S1~判定工程S11も、実施形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0078】
上述したように、本実施形態2では、第2時間t2=30秒とした。また、荷重減少量ΔBLを、実施形態1等とは異なるしきい用荷重減少量ΔBLthとする。
なお、このしきい用荷重減少量ΔBLthは、第1荷重BL1下での、自己放電電流IDの大きさが、しきい電流値IPthに等しいしきい電池1THについて、電圧継続印加工程S8の開始から第2時間t2(=30秒)経過した時点で、第1荷重BL1から様々な大きさの荷重減少量ΔBLで荷重BLを減少させる。そして、荷重BLの減少後に、電源電流IPが最も速やかに安定する大きさの荷重減少量ΔBLを、しきい用荷重減少量ΔBLthとする。このしきい用荷重減少量ΔBLthは、実施形態1及び変形形態1で用いた良品用荷重減少量ΔBLg2,ΔBLg3よりも大きい(ΔBLth>ΔBLg3>ΔBLg2)。
図7から容易に理解できるように、荷重減少工程S12を行うにあたり、荷重BLの減少によって電池成分電圧VBBをより大きく低下させる必要があるからである。
【0079】
本実施形態2では、前述の変形形態1と同様、
図7の中段に太い実線で示すように、電圧継続印加工程S8の開始(電圧印加時間t=0)以降、継続電源電圧VPcを印加し続ける。そして、
図7上段のグラフにおいて太い実線で示すように、第2時間t2(=30秒)経過した時点で、電池1の荷重BLを、第1荷重BL1から第4荷重BL4まで、上述のしきい用荷重減少量ΔBLth(=BL1-BL4)だけ、速やかに(本実施形態2でも1分以内、例えば10秒内に)減少させた。
【0080】
この場合に、外部電源EPから電池1に流れる電源電
流IPの電源電流値IP(n)がどのように推移するかについて、
図7下段のグラフを用いて説明する。
【0081】
ここで、供試された電池1がしきい電池1THであった場合には、
図7の下段のグラフに太い一点鎖線で示すように、電圧継続印加工程S8の開始の直後に(正確には、第2時間t2=30秒経過後から)、電池1に掛かる荷重BLをしきい用荷重減少量ΔBLthだけ減少させたことによって生じる、電池成分電圧VBBの低下によって、電源電流IPは急激に増加する。そして、荷重BLが第4荷重BL4にまで減少すると、電源電流IPは新たな荷重(第4荷重BL4)下でのしきい電池1THの安定時電源電流値IPsth4に速やかに収束し、その後、この安定時電源電流値IPsth4を保つ。この挙動が、電池1の良否判定の基準となる。
【0082】
一方、供試された電池1が不良電池1Nであった場合にも、
図7の下段のグラフに太い破線で示すように、電圧継続印加工程S8の開始の直後には、電池1に掛かる荷重BLをしきい用荷重減少量ΔBLthだけ減少させたことによって生じる、電池成分電圧VBBの低下によって、電源電流IPは急激に増加する。但し、上述のしきい電池1THの場合とは異なり、荷重BLが第4荷重BL4になった後は、電源電流IPは徐々に増加するようになる。即ち、新たな荷重(第4荷重BL4)下での不良電池1Nの安定時電源電流値IPsn4に向けて徐々に増加し、その後、この安定時電源電流値IPsn4に達して安定になる。ここで、細い破線で示す参考形態の場合と対比すると容易に理解できるように、不良電池1N同士で比較しても、本実施形態2の手法によれば、参考形態の手法に比して(さらには実施形態1(
図5参照)の手法に比しても)、電源電流IPが安定するまでに掛かる時間を大幅に短くできることが判る。
【0083】
他方、供試された電池1が良品電池1Gであった場合にも、
図7の下段のグラフに太い実線で示すように、電圧継続印加工程S8の開始の直後には、しきい電池1THと同様、電池成分電圧VBBの低下によって、電源電流IPは急激に増加する。しかしその後、荷重BLが第4荷重BL4にまで減少すると、電源電流IPは、新たな荷重(第4荷重BL4)下での良品電池1Gの安定時電源電流値IPsg4に向かって急速に減少し、安定する。ここで、細い実線で示す参考形態の場合と対比すると容易に理解できるように、良品電池1G同士で比較すると、本実施形態2の手法によれば、参考形態の手法に比して(さらには実施形態1(
図5参照)の手法に比しても)、電源電流IPが安定するまでに掛かる時間を大幅に短くできることが判る。
【0084】
このため本実施形態2でも、変形形態1と同様の手法によって、判定工程S11で、電圧継続印加工程S8の開始(t=0)以降に得られた電源電流値IP(n)を用いて、電池1の自己放電状態を判定することができる。かくして、本実施形態2の手法によれば、従来の手法比して、極めて早期に電池1の良否を判断できる。
【0085】
判定工程S11では、他の判定手法を取ることもできる。例えば、判定工程S11で、電源電流値IP(n)を用いて、電圧印加時間tが所定の期間(例えば、t=6~7分の期間)における電源電流値IP(n)の変化の傾きが負である電池1は、良品電池1Gであると判定する。一方、良品電池1Gと判断されなかった電池1は、不良電池1Nであると判定するようにしても良い。この場合にも、実施形態1に比しても、極めて早期に電池1の良否を判定できる。
【0086】
本実施形態2の検査方法でも、初期電池電圧測定工程S7~判定工程S11及び荷重減少工程S12による自己放電検査による、改良された新たな検査手法を提供することができる。また、本実施形態2の電池1の製造方法では、初充電工程S3の後に、初期電池電圧測定工程S7~判定工程S11及び荷重減少工程S12からなる検査工程を行う。このため、電池1の初期段階における短絡の有無や程度を、改良された新たな検査手法で検査して電池1を製造できる。
【0087】
本実施形態2の検査方法では、電圧継続印加工程の開始から第1時間経過後に、供試する電池1に掛ける荷重BLをしきい用荷重減少量ΔBLthだけ減少させる。このため、電池1が、良品電池1G及び不良電池1Nのいずれであるかにより、電源電流IPの挙動が異なるので、電源電流IPの安定を待たなくとも、荷重減少工程S12を行った後(t=t2以降)、電源電流IPがしきい電流値IPthから減少したか増大したか、あるいは、減少傾向にあるか増大傾向にあるかを検知することで、供試された電池1が良品電池1Gであるか、不良電池1Nであるかを容易に判別できるため、さらに早期に判別が可能である。
【0088】
以上において、本発明を実施形態1,2及び変形形態1に即して説明したが、本発明は上述の実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態1,2及び変形形態1では、電池1の製造過程において、初期電池電圧測定工程S7~荷重減少工程S12で示す、電池1の自己放電検査の検査工程を行った。これに対し、既に市場に置かれて使用された使用済の電池1について、自己放電検査において、これらの検査工程を適用することもできる。
【0089】
また実施形態1,2及び変形形態1,2では、しきい電流値IPthを用いて、電池1の良否を判定した。しかし、複数の異なるしきい電流値を用いて、電池1を3つ以上のランクに分類するようにしても良い。
また実施形態1では、第1時間t1をt1=5.0分とした例を示した。しかし、
図5において、良品電池1Gについて荷重減少工程S12を行わないで電圧継続印加工程S8をおこなった場合(即ち、
図5の下段のグラフにおいて、細い実線で示す参考形態の場合)には、電源電流IPが安定するのに、概ね55分程度掛かっている(安定到達時間55分程度)。これから、第1時間t1を、参考形態の安定到達時間の半分のt1=27分以下すれば、安定到達時間短縮の効果が或る程度得られる。
【符号の説明】
【0090】
1 (充電済みの)電池(蓄電デバイス)
S2 荷重付与工程
KJ 拘束治具
S3 初充電工程
S6 放置工程
S7 初期電池電圧測定工程(電圧検知工程,検査工程)
S8 電圧継続印加工程(検査工程)
S9 電流検知工程(検査工程)
S10 継続判断工程(検査工程)
t 電圧印加時間
t1 第1時間
t2 第2時間
S11 判定工程(検査工程)
S12 荷重減少工程(検査工程)
BL (電池に掛けた)荷重
BL1 第1荷重
BL2 第2荷重
BL3 第3荷重
BL4 第4荷重
ΔBL 荷重減少量
ΔBLg2,ΔBLg3 良品用荷重減少量
ΔBLth しきい用荷重減少量
TB 電池温度(デバイス温度)
TB1 第1電池温度(第1デバイス温度)
VB 電池電圧(デバイス電圧)
VB1 第1電池電圧(第1デバイス電圧)
EP 外部電源
VP (外部電源の)電源電圧
VPc 継続電源電圧
IP 電源電流
IP0 初期電流値
IP(n) (取得された)電源電流値
IPs 安定時電源電流
IPth (電源電流の)しきい電流値
1B 電池成分
VBB (電池成分に生じる)電池成分電圧
Rs (電池の)直流抵抗
Rp (電池の)短絡抵抗
ID 自己放電電流
IDth (自己放電電流の)しきい電流値