(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】眼の画像データ処理
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20230424BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20230424BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230424BHJP
G06T 3/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
A61B3/10 100
A61B3/12
A61B3/10 300
G06T1/00 290Z
G06T3/00 770
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021058560
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2021-07-26
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509012991
【氏名又は名称】オプトス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プラヴィーン チェリヤン アショック
(72)【発明者】
【氏名】マイケル フェルフック
(72)【発明者】
【氏名】スリラム ヴィクラマン シタラクシュミ アマ
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-217755(JP,A)
【文献】特開2019-195636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/10
A61B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼(280)の部分の各々の撮像領域のデジタル画像(132)を取得するように動作可能な眼撮像装置(200)のスキャンパラメータ(θ,φ)であって、前記眼(280)の前記部分における各々のスキャン位置を示す前記眼撮像装置(200)のスキャンパラメータ(θ,φ)の値を、前記眼(280)の前記部分の各々の撮像領域における指定された眼の特徴間の距離を計算するための変換係数(CF
h,CF
v)の各々の値に、関連付けるマッピング(125)を生成するマッピング生成モジュール(140)であって、
前記変換係数(CF
h
,CF
v
)は、前記眼(280)の前記撮像領域内の第1の眼の特徴を表す前記デジタル画像(132)内の第1の画素(136-1)と前記眼(280)の前記撮像領域における第2の眼の特徴を表す前記デジタル画像(132)内の第2の画素(136-2)との間の距離(138)を、前記眼(280)の前記撮像領域内の第1の眼の特徴と第2の眼の特徴との間の距離に変換する係数であり、
前記マッピング生成モジュール(140)は、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値に従って前記眼撮像装置(200)のモデルが動作するときに、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値を間引いて、前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値の範囲を複数の区間に分けた
各区間にある一連の前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値のうちの前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値の各々を、前記眼撮像装置(200)のモデルを通って伝播する光線が前記眼(280)のモデルに入射する部分に対応する位置に、関連付けたシミュレーション結果を生成するために、前記眼撮像装置(200)のモデルと前記眼(280)のモデルを通る光線伝播のコンピュータシミュレーションを実行するステップ(S110)と、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値の各々について、前記眼(280)のモデルの前記部分内の前記対応する位置と、前記一連の前記スキャンパラメータ(θ、φ)のうちの前記スキャンパラメータ(θ、φ)に隣接する前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値に対応する前記眼(280)のモデルの前記部分内の対応する位置との間の距離を計算するステップ(S120)と、
前記複数の区間の各々について
、前記計算された距離の各々を、前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値と前記一連のスキャンパラメータ(θ、φ)のうちの前記スキャンパラメータ(θ、φ)に隣接する前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値の差で割る
ことにより、前記眼(280)の前記部分を横切る距離の変化率を示す前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値に対する前記変換係数(CF
h
,CF
v
)の各々の値を前記複数の区間の各々に対して生成するステップ(S130)とによって、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の前記複数の区間の各々に対応して生成された前記変換係数(CF
h
,CF
v
)の各々を記憶した前記マッピング(125)を生成するように構成されるマッピング生成モジュール。
【請求項2】
眼撮像装置(200)の制御部(205)によって生成された眼球撮像データを処理して、眼(280)の部分の撮像領域における指定された眼の特徴間の距離を計算するための変換係数を決定する装置(100)であって、
前記眼(280)の前記部分の前記撮像領域のデジタル画像(132)を取得するときに、前記眼撮像装置(200)によって実行される走査の前記眼(280)におけるスキャン位置を示す前記眼撮像装置(200)の前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値を、前記眼球撮像データから取得するように構成されたスキャンパラメータ取得モジュール(110)と、
請求項1に記載のマッピング生成モジュール(140)と、
前記デジタル画像(132)の各々の画素の画素値は、前記スキャンパラメータ(θ、φ)の異なる各々の値を使用しながら前記眼撮像装置(200)で前記撮像領域を撮像中に取得され、前記デジタル画像(132)内の前記画素間の距離(138)を前記眼(280)の前記撮像領域内の対応する位置間の距離に変換するための前記変換係数(CF
h,CF
v)の各々の値を、前記取得したスキャンパラメータ(θ,φ)の値と前記マッピング生成モジュール(140)によって生成された前記マッピング(125)とを用いて決定する変換係数決定モジュール(120)と、
前記決定された変換係数(CF
h,CF
v)の値に関連付けて前記デジタル画像(132)を格納するように構成されたデータ記憶モジュール(130)と、を備える装置。
【請求項3】
前記マッピング生成モジュール(140)は、前記コンピュータシミュレーションにおいて、前記眼(280)の生物学的測定値を使用して、前記眼(280)のモデル及び前記眼撮像装置(200)のモデルを通る光線伝播をモデル化するように構成される請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記眼(280)の前記撮像領域における第1の眼の特徴を表す前記デジタル画像(132)における画素の
うちの前記第1の画素(136-1)の指定と、前記眼(280)の前記撮像領域における第2の眼の特徴を表す前記デジタル画像(132)における画素の
うちの前記第2の画素(136-2)の指定とを受け取るステップと、
前記デジタル画像(132)における前記第1の画素(136-1)と前記第2の画素(136-2)との間の距離(138)を、前記眼(280)の前記撮像領域における前記第1の眼の特徴と前記第2の眼の特徴との間の距離に変換するために、前記変換係数(CF
h,CF
v)の前記決定された値を使用するステップとによって、
前記眼(280)の前記撮像領域における前記指定された眼の特徴間の距離を決定するように構成された距離計算モジュール(150)をさらに備える、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記眼(280)の前記部分が、前記眼(280)の網膜を含む請求項2~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記マッピング(125)が、前記眼撮像装置(200)によって前記網膜の広視野の走査でカバーされるスキャンパラメータ(θ,φ)の値の範囲にわたる前記スキャンパラメータ(θ,φ)の値を、前記変換係数(CF
h,CF
v)の各々の値に関連付ける請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置(100)は、前記眼球撮像データとして、OCT撮像装置の制御部(205)によって生成されたOCT撮像データを処理するように構成され、
前記スキャンパラメータ取得モジュール(110)は、前記眼(280)の前記部分の前記撮像領域のデジタルOCT画像を取得するときに、前記OCT撮像装置によって実行されるOCTスキャンの前記眼(280)内のOCTスキャン位置を示す前記OCT撮像装置のスキャンパラメータ(θ,φ)の値を、前記OCT撮像データから取得するように構成される請求項2~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
眼(280)の部分の各々の撮像領域のデジタル画像(132)を取得するように動作可能な眼撮像装置(200)のスキャンパラメータ(θ,φ)であって、前記眼(280)の前記部分における各々のスキャン位置を示す前記眼撮像装置(200)のスキャンパラメータ(θ、φ)の値を、前記眼(280)の前記部分の各々の撮像領域における指定された眼の特徴間の距離を計算するための変換係数(CF
h,CF
v)の各々の値に、関連付けるマッピング(125)を生成するためにコンピュータによって実行される方法であって、
前記変換係数(CF
h
,CF
v
)は、前記眼(280)の前記撮像領域内の第1の眼の特徴を表す前記デジタル画像(132)内の第1の画素(136-1)と前記眼(280)の前記撮像領域における第2の眼の特徴を表す前記デジタル画像(132)内の第2の画素(136-2)との間の距離(138)を、前記眼(280)の前記撮像領域内の第1の眼の特徴と第2の眼の特徴との間の距離に変換するための係数であり、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値に従って前記眼撮像装置(200)のモデルが動作するときに、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値を間引いて、前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値の範囲を複数の区間に分けた
各区間にある一連の前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値のうちの前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値の各々を、前記眼撮像装置(200)のモデルを通って伝播する光線が前記眼(280)のモデルに入射する部分の対応する位置に、関連付けたシミュレーション結果を生成するために、前記眼撮像装置(200)のモデルと前記眼(280)のモデルを通る光線伝播のコンピュータシミュレーションを実行するステップ(S110)と、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値の各々について、前記眼(280)のモデルの前記部分内の前記対応する位置と、前記一連の前記スキャンパラメータ(θ、φ)のうちの前記スキャンパラメータ(θ、φ)に隣接する前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値に対応する前記眼(280)のモデルの前記部分内の対応する位置との間の距離を計算する(S120)ステップと、
前記複数の区間の各々について
、前記計算された距離の各々を、前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値と前記一連のスキャンパラメータ(θ、φ)のうちの前記スキャンパラメータ(θ、φ)に隣接する前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値の差で割る
ことにより、前記眼(280)の前記部分を横切る距離の変化率を示す前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値に対する前記変換係数(CF
h
,CF
v
)の各々の値を前記複数の区間の各々に対して生成するステップ(S130)と、
を備え、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の前記複数の区間の各々に対応して生成された前記変換係数(CF
h
,CF
v
)の各々を記憶した前記マッピング(125)を生成する方法。
【請求項9】
前記眼撮像装置(200)の制御部(205)によって生成された眼球撮像データを処理するさらなるステップであって、
前記眼(280)の前記部分の前記撮像領域のデジタル画像(132)を取得するときに、前記眼撮像装置(200)によって実行される走査の前記眼(280)におけるスキャン位置を示す前記眼撮像装置(200)の前記スキャンパラメータ(θ,φ)の値を、前記眼球撮像データから取得するステップ(S10)と、
前記デジタル画像(132)の各々の画素の画素値は、前記スキャンパラメータ(θ,φ)の異なる各々の値を使用しながら前記眼撮像装置(200)で前記撮像領域を撮像中に取得され、前記デジタル画像(132)内の前記画素間の距離(138)を前記眼(280)の前記撮像領域内の対応する位置間の距離に変換するための前記変換係数(CF
h,CF
v)の各々の値を、前記取得したスキャンパラメータ(θ,φ)の値と前記マッピング(125)とを用いて決定するステップ(S20)と、
前記決定された変換係数(CF
h,CF
v)の値に関連付けて前記デジタル画像(132)を格納するステップ(S30)とによって、
前記眼(280)の前記部分の前記撮像領域における指定された眼の特徴間の距離を計算するための変換係数(CF
h,CF
v)を決定するためのステップをさらに備えた請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コンピュータシミュレーションは、前記眼(280)の生物学的測定値を使用して、前記眼(280)のモデル及び前記眼撮像装置(200)のモデルを通る光線伝播をモデル化する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記眼(280)の前記撮像領域における第1の眼の特徴を表す前記デジタル画像(132)における画素の第1の画素(136-1)の指定と、前記眼(280)の前記撮像領域における第2の眼の特徴を表す前記デジタル画像(132)における画素の第2の画素(136-2)の指定とを受け取るステップ(S40)と、
前記デジタル画像(132)における前記第1の画素(136-1)と前記第2の画素(136-2)との間の距離(138)を、前記眼(280)の前記撮像領域における前記第1の眼の特徴と前記第2の眼の特徴との間の距離に変換するために、前記変換係数(CF
h,CF
v)の前記決定された値を使用するステップとによって、
前記撮像領域内の前記指定された眼の特徴間の距離を決定するステップをさらに含む請求項9、又は請求項9に従属する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記眼の前記部分が、前記眼(280)の網膜を含み、
前記マッピング(125)は、前記眼撮像装置(200)によって前記網膜の広視野の走査でカバーされるスキャンパラメータ(θ,φ)の値の範囲にわたる前記スキャンパラメータ(θ,φ)の値を、前記変換係数(CF
h,CF
v)の各々の値に関連付ける請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
OCT撮像装置の制御部(205)で生成されたOCT撮像データは、前記眼球撮像データとして処理され、
前記取得するステップ(S10)が、前記眼(280)の前記部分の前記撮像領域のデジタルOCT画像を取得するときに、前記OCT撮像装置によって実行されるOCTスキャンの前記眼(280)内のOCTスキャン位置を示すOCT撮像装置のスキャンパラメータ(θ,φ)の値を、前記OCT撮像データから取得するステップを含む請求項9、又は請求項11、又は、請求項9に従属する請求項10及び12のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項14】
コンピュータプロセッサ(320)によって実行されると、コンピュータプロセッサ(320)が、請求項8から13のいずれか1項に記載の方法を実行するコンピュータ読み取り可能な命令を含むコンピュータプログラム(390)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書における例示的な態様は、一般に、データ処理の分野に関し、より具体的には、眼球撮像データを処理するための技法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナベースの眼撮像システムでは光ビームが走査要素を介して被検者の眼の部分(例えば、網膜)を横切って走査され、眼から反射された戻り光が、走査要素で走査中にカバーされる多数の走査角のそれぞれにおいて撮像システムによってサンプリングされる。サンプリングされた戻り光に基づいて、眼の部分の画像化された領域のデジタル画像が生成される。様々な眼撮像システムが、この原理に従って動作し、例えば、眼底フルオレセイン血管造影(FFA)、インドシアニングリーン(ICG)血管造影、及び眼底自己蛍光(FAF)を含むいくつかの網膜撮像モダリティに使用することができる走査レーザ検眼鏡(SLO)があり、(数ある中でも)例えば、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像システムがある。取得されたデジタル画像は、被験者の健康に関する貴重な情報をもたらすことが可能になる。例えば、網膜のデジタル画像は、黄斑変性及び緑内障のような眼の疾患、並びに糖尿病、高血圧及び被験者を苦しめる可能性のある他の心血管疾患のような全身性疾患の合併症を検出、診断及び管理することを可能にし得る。
【0003】
取得されたデジタル画像の分析において、撮像された関心のある特徴のサイズ(例えば、血管の直径または病変のサイズ)を測定することができ、その結果、経時的な特徴のサイズのあらゆる変化を検出することができることは、しばしば貴重である。一例として、US 2010/0150415 A1は画像化された特徴のサイズを計算するための座標再マッピングアプローチを開示しており、ここでは2次元広視野網膜画像内の特徴の測定値が2次元画像内の2つ以上の指定された座標に関して定義され、次いで、これらの座標は網膜の3次元モデル内の等価な座標にマッピングされ、特徴のサイズは3次元モデル内の等価な座標を使用して計算される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の眼の特徴サイズを計算するための既知の座標再マッピングアプローチに伴う問題は、再マッピングとそれに続く距離計算の演算にコンピュータリソースが必要になることである。これらの欠点は、例えば、網膜又は眼の他の部分の狭い視野の画像が高いフレームレートで取得され、その結果、比較的複雑な再マッピングとそれに続く距離計算を数多く実行する必要があるアプリケーションにおいては、公知のアプローチで解決するのはとりわけ困難である。本発明者らは、(とりわけ)この種のアプリケーションにおいて、多数の画像の画素(又はデジタル画像における指定された距離を定量化するために使用される他の単位)によって表現されるデジタル画像における点間の距離を、長さの単位、例えばミリメートルなどのメートル単位で表現され得る、眼の撮像された部分における対応する点間の物理的距離に変換するための情報を、デジタル画像のそれぞれに対して提供するのが望ましいということを認識した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、本明細書の第1の例示的な態様によれば、眼撮像装置の制御部によって生成された眼球撮像データを処理して、眼球の部分の撮像領域内の指定された眼の特徴間の距離を計算するための変換係数を評価するための装置を考案した。本装置は、眼球撮像データから、眼の部分の撮像領域のデジタル画像を取得するために眼撮像装置によって実行される走査により得られる眼球の部分内のスキャン位置を示す、眼撮像装置のスキャンパラメータの値を取得するように構成されたスキャンパラメータ取得モジュールを備える。装置は、スキャンパラメータの取得された値と、スキャンパラメータの値と変換係数のそれぞれの値との間のマッピングとを使用するように構成された変換係数評価モジュールをさらに備え、変換係数のそれぞれの値はスキャンパラメータのそれぞれの値に対するスキャンパラメータの関数を用いて、眼の部分を横切る距離をシミュレートした変化率を示し、異なるスキャンパラメータの値をそれぞれ使用して、各画素が眼撮像装置による領域の撮像中に取得されるデジタル画像内の画像間の距離を、眼の領域内の対応する位置間の距離に変換するための変換係数のそれぞれの値を決定する。装置は、決定された変換係数の値に対応付けてデジタル画像を記憶するように構成されたデータ記憶モジュールをさらに備える。
【0006】
本発明者らは、本明細書の第2の例示的な態様によれば、眼の部分の撮像領域において指定された眼の特徴間の距離を計算するための変換係数を評価するために、眼撮像装置の制御部によって生成された眼球撮像データを処理するコンピュータに実装された方法を考案した。この方法は、眼球撮像データから、眼撮像装置によって実行される走査により得られる眼球内のスキャン位置を示す眼撮像装置のスキャンパラメータの値を取得して、眼の部分の撮像領域の画像を定義する画像データを取得するステップを含む。この方法は、スキャンパラメータの記録された値と、スキャンパラメータの値と変換係数のそれぞれの値との間のマッピングとを使用するステップをさらに含み、変換係数の各値は、スキャンパラメータのそれぞれの値に対するスキャンパラメータの関数を用いて眼の部分を横切る距離をシミュレートした変化率を示すものであり、異なるスキャンパラメータの値をそれぞれ使用して、眼撮像装置による領域の撮像中にそれぞれの画素値が取得される画像内の画素間の距離を、眼の領域内の対応する位置間の距離に変換するための変換係数のそれぞれの値を決定する。さらに、本方法は、変換係数の決定された値に関連付けて画像データを記憶するステップを含む。
【0007】
本発明者らは、本明細書の第3の例示的な態様によれば、眼撮像装置が眼の部分のそれぞれの撮像領域のデジタル画像を取得するように動作可能な、眼の部分におけるそれぞれのスキャン位置を示す眼撮像装置のスキャンパラメータの値を、眼球の部分のそれぞれの撮像領域における指定された眼の特徴間の距離を計算するための変換係数のそれぞれの値に関連付けるマッピングを生成するコンピュータ実装方法を考案した。この方法は、眼撮像装置のモデル及び眼のモデルを通る光線伝播のコンピュータシミュレーションを実行して、一連のスキャンパラメータの値のうちのスキャンパラメータの各値を、眼撮像装置のモデルがスキャンパラメータの値に従って動作するときに眼撮像装置のモデルを通って伝播する光線が入射する眼のモデルの部分内の対応する位置に、対応付けるシミュレーション結果を生成するステップを含む。この方法は、さらに、スキャンパラメータの値のそれぞれについて、眼の部分のモデル内の対応する位置と、一連の値のうちの隣接する値に対応する眼の部分のモデル内の位置との間の距離を、計算するステップを含む。この方法は、さらに、スキャンパラメータの値の関数の対応する値と、一連の値のうちのスキャンパラメータの隣接する値の関数の値との間の差で、計算された距離の各々を除算して、スキャンパラメータの値のそれぞれについて、スキャンパラメータの関数を用いて眼の部分を横切る距離の変化率を示す変換係数のそれぞれの値を生成するステップを含む。
【0008】
本発明者らは、本明細書の第4の例示的な態様によれば、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、上述の第2の例示的な態様及び第3の例示的な態様のうちの少なくとも1つによる方法を実行させるコンピュータ読み取り可能な命令を備えるコンピュータプログラムを考案した。コンピュータプログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されてもよく、又はコンピュータ読み取り可能な信号によって搬送されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
例示的な実施形態は以下に記載される添付の図面を参照して、これに限定されるものではなく、例として、ここで詳細に説明される。図面の異なる図に現れる同様の参照番号は別段の指示がない限り、同一又は機能的に同様の要素を示すことができる。
【
図1】本明細書の第1の例示的な実施形態による、眼球撮像データを処理するための装置の概略図である。
【
図2】
図1の装置によって処理されるイメージングデータを取得するための、組み合わされたSLO-OCT撮像装置の例示的な形態の眼撮像装置の実施を示すブロック図である。
【
図3】プログラマブル信号処理ハードウェアにおける第1の例示的な実施形態の装置の例示的な実装を示すブロック図である。
【
図4】本明細書の第1の例示的な実施形態による、眼球撮像データを処理するコンピュータ実装方法を示すフローチャートである。
【
図5】第1の例示的な実施形態において使用されるスキャンパラメータ値と変換係数値との間のマッピングを、ルックアップテーブルの形態で示した例である。
【
図6】例示的な実施形態による、スキャンパラメータの値と変換係数の値との間のマッピングを生成するコンピュータ実装方法を示すフローチャートである。
【
図7A】眼撮像装置のモデル及び眼のモデルを通る光線伝播のコンピュータシミュレーションの概略図である。
【
図7B】例示的な実施形態による、スキャンパラメータの値と変換係数の値との間のマッピングを導出するために使用することができる、
図7Aにおけるコンピュータシミュレーションに基づいて生成されたルックアップテーブルの例である。
【
図8】眼撮像装置のモデル及び眼のモデルを通る光線伝播の概略図である。
【
図9A】Hガルバノメータミラー傾斜角θとVガルバノメータミラー傾斜角φの関数で計算された水平角変換係数の3次元プロット図である。
【
図9B】Hガルバノメータミラー傾斜角θとVガルバノメータミラー傾斜角φの関数で計算された水平角変換係数のグレースケールプロット図である。
【
図10A】Hガルバノメータミラー傾斜角θとVガルバノメータミラー傾斜角φの関数で計算された垂直角変換係数の3次元プロット図である。
【
図10B】Hガルバノメータミラー傾斜角θとVガルバノメータミラー傾斜角φとの関数で計算された垂直角変換係数のグレースケールプロット図である。
【
図11】例示的な一実施形態による、変換係数の値を使用して、眼の撮像領域内の指定された眼の特徴間の距離を計算する、コンピュータによって実施される方法を示すフローチャートである。
【
図12】眼の画像化された領域における指定された眼の特徴に対応する2つの指定された画素を有するOCT Bスキャン画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
【0011】
図1は、眼撮像装置の制御部によって生成された眼球撮像データを処理するように構成された、第1の例示的な実施形態による装置100の概略図である。装置100は、眼球撮像データに基づいて、眼撮像装置によって撮像された(又は撮像されるべき)眼の部分の領域における指定された眼の特徴間の距離を計算するための変換係数を評価するように構成される。眼の部分は本実施形態の例のように、眼の網膜であってもよい。しかしながら、本明細書に記載される技術は、代わりに、例えば、眼の前眼部における1つ以上の構造のような、眼の別の部分が撮像された領域に関する距離計算のための変換係数を評価するために使用されてもよい。
【0012】
図1に示すように、装置100は、スキャンパラメータ取得モジュール110と、変換係数評価モジュール120と、データ記憶モジュール130とを備える。装置100は、本実施形態の例のように、マッピング生成モジュール140と、距離計算モジュール150とをさらに備えることができる。装置100の例示的な実装及びその図示された構成要素モジュールの機能は、以下でより詳細に説明される。
【0013】
図2は、スキャンパラメータ取得モジュール110によって処理されるべき眼球撮像データを生成するための眼撮像装置の実装例を示す。
図2の例では、眼撮像装置が走査レーザ検眼鏡(SLO)機能と光コヒーレンストモグラフィ(OCT)機能とを組み合わせたSLO-OCT眼撮像装置200の組み合わせの構成をとる。しかしながら、眼撮像装置は、組み合わされたSLO-OCT眼撮像装置である必要はなく、代わりに、網膜又は眼の他の部分を撮像するために1つ又は複数の走査要素を使用する任意の他の撮像システム、例えば、SLO撮像システム又はOCT撮像システムの構成をとることができることに留意されたい。
【0014】
組み合わされたSLO-OCT撮像装置200は、OCTエンジン210と、焦点機構212と、Vガルバノメータミラー214とを有するOCT撮像部を備える。また、SLO-OCT撮像装置200は、SLOエンジン220とポリゴンミラー230とを有するSLO撮像部を備えている。また、SLO-OCT撮像装置200は、ダイクロイックミラー240と、スリットミラー250と、Hガルバノメータミラー260と、楕円ミラー270とを含む共用光学系を有する。OCTエンジン210及びSLOエンジン220の動作は、SLO-OCT撮像装置200の制御部205によって制御され、この制御部はOCTエンジン210及びSLOエンジン220の両方と通信する(
図2に示すように)ように構成された単一の信号処理ハードウェア、又はOCTエンジン210及びSLOエンジン220をそれぞれ制御するように構成された2つの別個のハードウェアであってもよい。
【0015】
図2では、SLOエンジン220がSLOビームスプリッタ、SLO光源、SLO光検出器を備え、これらは(制御部205と組み合わせて)被検者の眼280の網膜のデジタルSLO画像を生成するように構成される。SLO光源はSLO光を放射し、このSLO光は、本実施例のように、赤色光及び緑色光、並びに近赤外光を含むことができる。ビームスプリッタは、SLO光源からのSLO光をポリゴンミラー230に導き、眼280から反射されたSLO光(すなわち、入射SLO光が眼280によって反射された光)をSLO光検出器に戻すように導く。
【0016】
ポリゴンミラー230は、SLOビームスプリッタからのSLO光を共用光学系に反射する。特に、
図2の例に示すように、ポリゴンミラー230は、図示しない駆動モータによって駆動されると、図示した軸Cを中心に回転することにより、SLO光をY方向に走査する。眼280から反射され、共用光学系を介してSLO撮像部に導かれた光は、SLO光検出器によって検出され、SLO光検出器からの信号は制御部205によって処理されて、例えば網膜の約80%までを覆う網膜の超広角(UWF)画像であり得るSLO画像を生成する。
【0017】
OCTエンジン210は、眼280の網膜の部分のデジタル断層画像を生成するために使用され、本実施例では、OCT光源、光カプラ、参照ミラー、及びOCT光検出器(図示せず)を含むようにしてもよい。OCT光源は、低コヒーレンス光を放射して光カプラに供給され、参照光と信号光に分けられる。参照光は、参照ミラーに導光され、参照ミラーで反射されて光カプラに導光される。信号光は、焦点機構212によってVガルバノメータミラー上に導光され、このミラーで信号光を反射して共有光学系に導光される。
図2の例に図示されているように、Vガルバノメータミラー214は駆動モータによって駆動されると軸Bを中心として回転することによって、信号光をY方向(すなわち垂直方向)に走査する。また、Vガルバノメータミラー214は、眼280によって反射され信号光から生じたOCT光をOCTエンジン210に戻すように導光する。眼280から反射されたOCT光は、干渉光を生成するために光カプラで参照光と重ねられる。干渉光は、OCT光検出器によって検出され、検出結果はデジタルOCT画像を生成するために制御部205に用いられる。
【0018】
図2において、ダイクロイックミラー240は、SLO撮像部のポリゴンミラー230からのSLO光を透過させることでスリットミラー250にSLO光を導光し、OCT撮像部のVガルバノメータミラー214からのOCT信号光を反射させることで、スリットミラー250にOCT信号光を導光する。
【0019】
スリットミラー250は、入射光をHガルバノメータミラー260に向けて反射する。Hガルバノメータミラー260は、スリットミラー250から楕円ミラー270へ光を反射する。そして、
図2の例に示すように、Hガルバノメータミラー260は、駆動モータ(図示せず)によって駆動されて軸Cを中心に回転することによって、放射光をX方向(すなわち水平方向)に走査する。
【0020】
楕円ミラー270は、Hガルバノメータミラー260からの光を眼280の網膜に導光する。眼280で反射された楕円ミラー270からの光は、放射光と同じ光路に沿って共用光学系内のダイクロイックミラー240に導光される。ダイクロイックミラー240は眼280から反射されたSLO光をSLO撮像部に導光し、眼280から反射されたOCT光をOCT撮像部に導光する。
【0021】
SLO-OCT撮像装置200は、SLO撮像システムのみが網膜のデジタルSLO画像を取得するように動作するSLO撮像モードと、OCT撮像システムのみが網膜のデジタルOCT画像を取得するように動作するOCTモードと、SLO撮像システム及びOCT撮像システムの両方が網膜のデジタルSLO画像及び網膜のデジタルOCT画像を同時に取得するように動作する組み合わされたSLO-OCT撮像モードとで動作可能である。
【0022】
OCT画像又はSLO画像を生成するために、SLO-OCT撮像装置200によってスキャンが実行された(又は実行されるべき)眼280内のスキャン位置は、本実施形態の例では、2つのスキャンパラメータ値によって示される。スキャンパラメータ値の各々は、網膜の走査領域が2つの異なる軸の対応する軸に沿ったどの位置であるのかの指示(例えば、走査領域の中心又は走査領域の所定の境界における点などの走査領域の所定の基準点)を提供し、その座標を単位として、網膜上の任意の点の指定することができる。しかしながら、他の実施形態の例では、網膜を横切って延びる線(直線または曲線)に沿ったスキャン位置の指示を提供するために、単一のスキャンパラメータ値を使用することができ、スキャンパラメータ値は網膜の走査領域が線に沿ったどの位置であるかの指示(例えば、走査領域の中心又は走査領域の所定の境界における点などの走査領域の所定の基準点)を提供することに留意されたい。また、スキャンパラメータは、連続的な変数である必要はなく、代わりに離散的であってもよく、スキャンパラメータ値は網膜の表面が分割される複数の異なる所定の領域の中の1つの網膜の所定の領域を単位として、スキャンの位置が識別できるような離散的な識別子であってもよいことにも留意されたい。
【0023】
上記から、スキャンパラメータは多くの異なる形態をとることができることが理解されるのであろう。一例として、SLO-OCT撮像装置200によって実行されるOCTスキャンの場合、スキャンパラメータは、OCT光ビームを回転させたときに眼280の網膜を横切ってスキャンさせる走査要素214及び260の傾斜角の指示をそれぞれ提供するようにしてもよい。走査要素214及び260の各々の傾斜角は、走査要素の基準方向に対して、その回転軸を中心とした走査要素の回転角度である。これらの傾斜角の各々の指標は、いくつかの異なる方法で提供することができ、例えば、走査要素の傾斜角を設定する対応するモータを制御するために使用される制御信号における制御値として提供され、この値は、対応する走査要素の傾斜角、つまり、網膜上のスキャン位置と所定の関係がある。この関係は、例えば、SLO-OCT撮像装置200のモデル及び眼280のモデルにおける光線伝播をシミュレートすることによって決定されてもよい。
【0024】
より具体的には、
図2を参照すると、SLO-OCT撮像装置200によって取得されたOCT Cスキャンの眼280の網膜上のスキャン位置は、本実施形態の例ではHガルバノメータミラー260及びVガルバノメータミラー214の傾斜角(θ,φ)の値によって決定され、ここで、上述したように、これらのミラーがそれによって反射されたOCT光ビームが(2次元の)走査領域内の幾何学的中心又は別の基準点にあるように配向されるとき、θがHガルバノメータミラー260の傾斜角を示し、φがVガルバノメータミラー214の傾斜角を示す。説明を容易にするために、傾斜角θとφそれ自体は、本実施形態の例におけるOCTスキャンのためのスキャンパラメータであるとみなされるが、スキャンパラメータはこれらの角度を示す他のパラメータ(例えば、制御信号値)であってもよいことが、上記から理解されるのであろう。
【0025】
なお、SLO-OCT撮像装置200によって撮像されるOCT画像は、Cスキャン(SLO-OCT撮像装置200によって実行される網膜の2次元OCTスキャンにおいて生成されるAスキャンの2次元アレイを含む)である必要はなく、代わりにBスキャン(SLO-OCT撮像装置200によって実行される網膜の1次元OCTスキャンにおいて生成されるAスキャンの1次元アレイを含む)であってもよい。いずれの場合も、OCT光を走査領域の中心(または他の所定の基準点)に向けるために、Hガルバノメータミラー260及びVガルバノメータミラー214が設定されたところの角度θとφを示す値によって、網膜上のスキャン位置を示すことができる。したがって、網膜上の任意の場所のスキャン位置は、2つのスキャンパラメータθ及びφの値によって示すことができる。しかしながら、SLO-OCT撮像装置200はその位置が網膜上の所定の線に沿ってのみ変化することが可能なスキャン(Bスキャン及び/又はCスキャン)を実行するように制御部205によって制御され得るが、この線に沿ったスキャン位置は単一のスキャンパラメータの値によって示すようにしてもよい。
【0026】
他方、SLO-OCT撮像装置200を用いてSLOスキャンを行う場合、眼280に走査されるSLO光の位置は、Hガルバノメータミラー260の傾斜角θ及びポリゴンミラー230の傾斜角αに依存する。したがって、SLO-OCT撮像装置200によって撮像される2次元SLO画像について、スキャンパラメータは、Hガルバノメータミラー260の傾斜角を示す水平スキャンパラメータと、ポリゴンミラー230の傾斜角αを示す垂直スキャンパラメータとを含んでもよい。
【0027】
スキャンパラメータはOCT画像又はSLO画像を生成するためにスキャンを実行するために、SLO-OCT撮像装置200によって使用される走査要素の傾斜角を示すが、スキャンパラメータはこれらの例に限定されず、その値が網膜又は眼280の他の部分上のスキャン位置の指示を提供することができる1つ又は複数の他のパラメータのうちの任意のものとすることができることに留意されたい。例えば、スキャンパラメータは、代わりに、眼280の網膜に伝播するときに走査光ビームによって規定される角度、及び眼の基準方向(例えば、眼280のレンズの光軸)、又はSLO-OCT撮像装置200において規定される基準方向の指示を提供してもよい。この種の代替案は、第2の実施形態を参照して、以下でより詳細に説明される。
【0028】
図3は、装置100がプログラマブル信号処理ハードウェアにおいてどのように実施され得るかを示す概略図である。
図3に示す信号処理装置300は、撮像データを受信するためのインタフェースモジュール310を備える。信号処理装置300は、装置100を制御するためのプロセッサ(CPU)320と、作業メモリ330(例えば、ランダムアクセスメモリ)と、プロセッサ320によって実行されると、プロセッサ320に装置100の処理動作を実行させるコンピュータが読み取り可能な命令を含むコンピュータプログラムを格納する命令記憶部340とをさらに備える。命令記憶部340は、コンピュータが読み取り可能な命令が予めロードされたROM(例えば、電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)又はフラッシュメモリの形態)を含むことができる。あるいは、命令記憶部340がRAM又は同様のタイプのメモリを備えることができ、コンピュータが読み取り可能な命令はCD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体350などのコンピュータプログラム製品、又はコンピュータが読み取り可能な命令を搬送するコンピュータが読み取り可能な信号360から、それに入力することができる。
【0029】
この実施形態の例では、
図3に示される、プロセッサ320、作業メモリ330、及び命令記憶部340を備えたハードウェア構成要素の組み合わせにより、装置100のスキャンパラメータ取得モジュール110、変換係数評価モジュール120、マッピング生成モジュール140、及び距離計算モジュール150の機能を実装するように構成され、一方、作業メモリ330又は命令記憶部340は、装置100のデータ記憶モジュール130を提供する。
【0030】
図4は、本明細書の第1の実施形態の例によるコンピュータ実装方法を示すフローチャートであり、それによって、装置100は、SLO-OCT撮像装置200の制御部205によって生成された眼球撮像データを処理して、眼280の網膜の撮像領域内の指定された眼の特徴間の距離を計算するための変換係数を評価する。
【0031】
図4のステップS10において、スキャンパラメータ取得モジュール110は、眼280の部分の撮像領域のデジタル画像を取得するために、眼撮像装置200によってスキャンが実行される眼280におけるスキャン位置を示す眼撮像装置200のスキャンパラメータの値を眼球撮像データから取得する。ステップS10において、スキャンパラメータ取得モジュール110は、本実施形態の例のように、SLO-OCT撮像装置200によってOCT Cスキャンが実行された眼280の網膜上の位置を示す第1のスキャンパラメータ値θ
C及び第2のスキャンパラメータ値φ
Cを、SLO-OCT撮像装置200によって生成された眼球撮像データの一部として受信することによって、取得してもよい。眼球撮像データは、本実施形態の例のように、SLO-OCT撮像装置200が、領域がCスキャンによってカバーされる、例えばスキャンパラメータ値の範囲ΔθとΔφに対して、眼280の網膜の撮像領域のデジタル断層画像を取得する画像取得プロセスの他の態様を特徴付けるデータを、さらに含むようにしてもよい。しかしながら、第1のスキャンパラメータ値θ
C及び第2のスキャンパラメータ値φ
Cが、SLO-OCT撮像装置200によって実行されるべきスキャン、Cスキャンの網膜上の位置を代わりに示すものであってもよいことに留意されたい。この場合、変換係数評価モジュール120によって計算された変換係数を使用して、SLO-OCT撮像装置200によって続いて取得されるデジタル断層画像内の画素間の距離を、眼280の網膜内の対応する位置間の距離に変換することができる。
【0032】
眼280の網膜の撮像部分のデジタル画像は、ステップS10において装置100によって受信されてもよい。ステップS10で受信され得る眼球撮像データ及びデジタル画像は、当業者に知られている任意の適切なファイル構造及び/又はファイルフォーマットで提供されてもよい。例えば、例示的な実施形態では、第1のスキャンパラメータ値θC、第2のスキャンパラメータ値φC、及び網膜の領域のCスキャンによってカバーされるスキャンパラメータ値の範囲ΔθとΔφ(眼球撮像データに含まれ得るCスキャンを定義/特徴付ける他のあらゆる情報項目)は、網膜の領域のデジタル画像を含むデジタル画像ファイルのヘッダー、又はデジタル画像ファイルとは別にデジタル画像ファイルのフォルダー(またはサブフォルダー)に格納されるファイルで提供されてもよい。
【0033】
図4のステップS20において、変換係数評価モジュール120は、スキャンパラメータの取得された値と、スキャンパラメータの値と変換係数のそれぞれの値との間のマッピング125とを使用して(変換係数のそれぞれの値は、スキャンパラメータのそれぞれの値に対するスキャンパラメータの関数を用いて、眼280の網膜を横切る距離をシミュレートした変化率を示す)、スキャンパラメータの異なるそれぞれの値に対して、眼撮像装置200で領域を撮像している間に、それぞれの画素値が取得されたデジタル断層画像内の画
素間の距離を、眼280の領域内の対応する位置間の距離に変換するために、変換係数のそれぞれの値を決定する。スキャンパラメータの関数は、本実施例のように、変換係数の各値が、スキャンパラメータのそれぞれの値に対するスキャンパラメータが、眼280の網膜を横切る距離のシミュレートされた変化率を示すような恒等関数であってもよい。しかしながら、関数は恒等関数に限定されず、以下に説明するように、様々な他の形態をとることができる。
【0034】
変換係数評価モジュール120は、本実施形態の例では、ステップS10で得られた第1及び第2のスキャンパラメータθC及びφCの値を、スキャンパラメータの値θ及びφと変換係数のそれぞれの値と間のマッピング125(後述するように、SLO-OCT撮像装置200及び眼280を通る光線伝播のコンピュータシミュレーションを使用して取得することができる)と共に用いて、第1及び第2のスキャンパラメータθC及びφCの受信された値について、(i)受信されたデジタルCスキャン画像内の画素間のデジタル画像内の水平方向に沿った距離を、眼280の網膜の撮像領域内の対応する位置間の網膜上の対応する方向における距離に変換するための水平角変換係数CFhに対応する値と、(ii)受信されたデジタルCスキャン画像内の画素間のデジタル画像内の垂直方向に沿った距離を、眼280の網膜の撮像領域内の対応する位置間の網膜上の対応する方向における距離に変換するための垂直角変換係数CFvに対応する値と、を決定することができる。スキャンパラメータθの所与の値に対して、水平角変換係数CFhは、スキャンパラメータθの所与の値に対するスキャンパラメータθの関数(この例では恒等関数)を用いて、眼280の網膜を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す。同様に、スキャンパラメータφの所定の値に対して、垂直角変換係数CFvは、スキャンパラメータφの所定の値に対するスキャンパラメータφの関数(この例では、恒等関数)を用いて、眼280の網膜を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す。一般に、スキャンパラメータθの関数は、スキャンパラメータφの関数と同じであっても同じでなくてもよいことに留意されたい。
【0035】
本実施形態の変形例では、SLO-OCT撮像装置200によって行われた走査がOCT-Bスキャンである場合、変換係数評価モジュール120は、ステップS10で取得した第1及び第2のスキャンパラメータθC及びφCの値を、スキャンパラメータの値θ及びφと変換係数の各値との間のマッピング125(以下に説明するように、SLO-OCT撮像装置200を介する光線伝搬のコンピュータシミュレーションを用いて取得することができる)と共に用いて、第1及び第2のスキャンパラメータθC及びφCの受信された値について、デジタルB-スキャン画像内の画素間のA-スキャン配列方向(SLO-OCT撮像装置200によって取得されたA-スキャンが配列されてB-スキャンを形成する)の距離を、眼280の網膜の撮像領域の対応する位置間の走査方向の距離に変換する単一変換係数CFの対応する値を決定することができる。
【0036】
マッピング125は、本実施形態の例では、
図5に示すように、スキャンパラメータθ及びφの値と、水平角変換係数及び垂直角変換係数CF
h及びCF
vの対応する値とを関連付けるルックアップテーブル400の形式をとることができる。しかしながら、マッピング125は、スキャンパラメータθ及びφの関数のような別の形式で提供されてもよい。さらに、マッピング125は、本実施形態の例では、SLO-OCT撮像装置200によって網膜の広角走査でカバーされるスキャンパラメータ値の範囲に及ぶスキャンパラメータの値を、水平角変換係数及び垂直角変換係数CF
h及びCF
v(又は、上述した実施形態の変形例では、各単一変換係数CF)のそれぞれの値に関連付けることができる。広角走査は、眼280の網膜の表面の少なくとも50%、より好ましくは網膜の表面の少なくとも60%、70%、又は80%をカバーすることができる。
【0037】
図4のステップS30において、データ記憶モジュール130は、例えば、決定された変換係数を格納するデータ記憶モジュール130の記憶要素をデジタル画像のファイルにリンクするポインタを用いて、
図4のステップS20で決定された水平角変換係数及び垂直角変換係数CF
h及びCF
v(又は、上記変形例で決定された単一変換係数CF)の値に対応付けてデジタル画像を格納する。
【0038】
図4を参照して上述したデータ処理動作は、OCT Cスキャンでの取得に関連して制御部205によって生成された眼球撮像データへの適用に限定されるものでも、OCT Bスキャンでの取得に関連して制御部205によって生成された眼球撮像データだけに適用されるものではなく(上述したように)、網膜又は眼280の他の部分の1次元又は2次元スキャンの結果を表すSLO画像や他の眼球画像にも適用可能である。
【0039】
図6は、本実施形態の例の(オプションの)マッピング生成モジュール140が、変換係数を決定するために変換係数評価モジュール120によって使用されるマッピング125を生成する一般的なプロセスを示す。マッピング生成モジュール140を装置100に含めることで、例えば、SLO-OCT撮像装置200における光学素子又はそれらの配置のあらゆる変更を考慮するために、及び/又はSLO-OCT撮像装置200によって撮像される被検者の眼にマッピング125を合わせるために、マッピング125を更新することが可能になるという点で有利である。しかし、工場でSLO-OCT撮像装置200の初期設定中に同じプロセスを使用して、変換係数評価モジュール120によって後で使用されるマッピング125を生成するようにしてもよい。
【0040】
図6を参照すると、ステップS110において、マッピング生成モジュール140は、シミュレーション結果を生成するために、SLO-OCT撮像装置200(又は、より一般的には任意の他のスキャナベースの眼撮像装置)のモデル及び眼280のモデルを通る光線伝播のコンピュータシミュレーションを実行することによって、マッピング125を生成する。シミュレーション結果により、スキャンパラメータの一連の値のうちのスキャンパラメータの各値を、眼撮像装置のモデルがスキャンパラメータの値に従って動作するときに眼撮像装置のモデルを通って伝播する光線が入射する眼280のモデル内の対応する位置に、関連付けることができる。
【0041】
コンピュータシミュレーションは、本実施形態の例では、眼280のモデル及び眼撮像装置のモデルを通る光線伝播をモデル化するために、眼撮像装置によって撮像される眼280の測定結果を使用することができる。これらの測定結果は、眼のサイズ及び/又は形状に関する情報を提供することができ、例えば、コンピュータ断層撮影、超音波検査、及び磁気共鳴撮像などの眼撮像技法を使用して取得することができる。この情報は眼のモデルの精度を改善することが可能であり、したがって、シミュレーション結果をより現実的なものにする。
【0042】
図6のステップS120において、マッピング生成モジュール140は、スキャンパラメータの値の各々について、眼280のモデル内の対応する位置(すなわち、眼撮像装置のモデルがスキャンパラメータの値に従って動作するときに眼撮像装置のモデルを通って伝播する光線が入射する眼280のモデル内の位置)と、一連の値のうちの隣接する値に対応する眼280のモデル内の位置(すなわち、眼撮像装置のモデルを通って伝播する光線が入射する眼280のモデル内の位置であって、眼撮像装置のモデルがスキャンパラメータの値に隣接する値であるスキャンパラメータの第2の値に従って動作するときに、眼撮像装置のモデルを通って伝播する光線が入射する位置である。隣接する値は、一連の値のうちの次の値又は前の値である。)との間の距離を計算する。
【0043】
図6のステップ130において、マッピング生成モジュール140は、計算された距離の各々を、スキャンパラメータの値の関数の対応する値と、一連の値のうちのスキャンパラメータの隣接する値の関数の値と間の差で割り、スキャンパラメータの値の各々について、スキャンパラメータの関数を用いて眼280の部分を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す変換係数のそれぞれの値を生成する。関数が恒等関数である場合、本実施形態の例では、
図6のステップ130において、マッピング生成モジュール140は、計算された距離の各々を、スキャンパラメータの対応する値と一連の値のうちのスキャンパラメータに隣接する値との間の差で割って、スキャンパラメータの値の各々について、スキャンパラメータを用いて眼280の部分を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す変換係数の値をそれぞれ生成することができる。
【0044】
図6のステップS110、S120及びS130が実行されて、
図3のステップS20によって使用されるマッピング125が生成され、
図4のステップS20が変換係数評価モジュール120によって実行される前に、ステップS110、S120及びS130は、マッピング生成モジュール140によって実行される。
【0045】
次に、
図6のプロセスのより詳細な実施形態の例を、
図7A及び
図7Bを参照して説明する。
図6のステップS110において、Hガルバノメータミラー260の傾斜角θ及びVガルバノメータミラー214の傾斜角φはそれぞれ、第1及び第2のスキャンパラメータとして用いることができ、コンピュータシミュレーションは複数の異なる可能なθ及びφの値の組み合わせのうち各ペアθ及びφの値について、
図7Aに示されるように、SLO-OCT撮像装置200のモデル606を通って眼280の網膜のモデル602上の位置へ光ビーム(光線)604が伝搬するのをトレースするために実行され得る。したがって、シミュレーション結果は、各ペアθ及びφの値に、SLO-OCT撮像装置200のモデルが各ペアのθとφの値に従って動作するときの光ビームが入射する網膜のモデル602上の対応する位置がマッピングされる。
図7Bに示すように、本実施例のように、各ペアθ及びφの値と網膜のモデル602上の対応する位置との間のマッピングは、テーブルに記憶されてもよい。
【0046】
スキャンパラメータθ及びφの値の複数のペアは、本実施形態の例のように、SLO-OCT撮像装置200が網膜全体(例えば、網膜の80%以上)を実質的に走査するために必要とされるθ及びφのそれぞれの(「最大」)範囲で、θ及びφの値の全ての可能な組み合わせに対応し、これらの範囲の各々における隣接する角度値の間の差は、それぞれの走査要素(Hガルバノメータミラー260又はVガルバノメータミラー214)が移動され得る最小の増分である。
【0047】
しかしながら、いくつかの実施例では、光線伝搬のシミュレーションが実行される複数のθ及びφの値のペアの代わりに、上述の可能な組み合わせの全ての中のサブセットであってもよい。例えば、光線伝播のシミュレーションが実行されるθ及び/又はφの値の組み合わせは、範囲は上述の「最大」範囲よりも小さい(又は、これらの角度のうちの1つの範囲が上述のそれぞれの「最大」範囲よりも小さい)θ及びφの各範囲に及ぶものであってもよい。
【0048】
マッピング生成モジュール140は、これらの傾斜角の値のペアのサブセットのみを含むスパース選択を生成するために、上述の傾斜角の値のペアを間引いてもよい(それらが「最大」範囲であるか、又は上述のより限定された範囲のうちの少なくとも1つの範囲であるかにかかわらず)。このようにθ及びφ値のペアを選択することは、記憶スペースを減らすのに有利である。さらに、シミュレーション結果は、シミュレーションが実行されていないθ及びφの中間の値については、網膜のモデル602上の光ビーム604の入射位置を決定するために補間してもよい。
【0049】
図7Aは、ステップS110において実行される光線伝播のコンピュータシミュレーションの概略図を提供し、SLO-OCT撮像装置200のモデル606によって出射される3つの異なる光ビームを図示し、各光ビームはSLO-OCT撮像装置200のモデル606が、それぞれの(異なる)ペアのθ及びφの値に従って動作するときに出射される。
図7Aに示されるように、各θ及びφの値のペアと結果は、それぞれのシミュレートされた光ビーム604が網膜のモデル602の網膜上の異なる場所に入射されることを示す。
図7Aにおいて、これらの場所の各位置は、それぞれのデカルト座標(x,y,z)で表される。
【0050】
図7Bは、SLO-OCT撮像装置200のモデル606がθ及びφのペアの値に従って動作するときに、各θ及びφの組み合わせと、光ビーム604が網膜のモデル602に入射する網膜のモデル602上の対応する場所を特定する座標の対応する組み合わせとを、関連付ける2次元テーブル600を示す。
図7Bに示すように、θ及びφの値のペアが、2次元テーブル600上に配置されてもよく、各行はφ
1からφ
nまでのφの異なる値を含み、各列はθ
1からθ
mまでのθの異なる値を含む。ここで、mとnは、整数であり等しくても等しくなくてもよい。表600の各セル610は、そのセル610に対応するθ及びφの値に対して計算された網膜のモデル602上の位置(x,y,z)を格納する。
【0051】
図6のステップS120で実施するように、マッピング生成モジュール140は、まず、テーブル600の各セル610に対して、φの値を変えながら網膜を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す垂直角変換係数CF
vをそれぞれ決定することができる。この目的のために、マッピング生成モジュール140は、テーブル600内の各セル610について、セル610内の座標値(x,y,z)によって示される網膜のモデル602上の場所と、同じθの値を有するが隣接するφの値を有するセル内の座標値(x,y,z)によって示される網膜のモデル602上の場所との間の距離を決定することができる。この文脈における「隣接する」という用語は、セル610のφの値と比較して、その行内の次に高いφの値又は次に低いφの値(または次に最も高い/最も低い値)を指す。例えば、(θ
i,φ
j)(ここで、i=1,・・・,m,j=1,・・・,nであり)は、複数の(θ、φ)の値のペアを示し、それぞれが対応する位置座標(x,y,z)を記憶するテーブル600内の対応するセル610を有する。したがって、
図6のステップS120は、表600の全ての(θ
i,φ
j), i=1,・・・,m,j=1,・・・,nの値のそれぞれの値に対して、(θ
i,φ
j)と(θ
i,φ
j+1)の各(x、y、z)の値間の距離の計算を行う。便宜上、本実施例では、(θ
i,φ
j)に対応する点(x,y,z)を本明細書ではr
θi,φjとする。
【0052】
一例として、
図7Bにおいて、マッピング生成モジュール140は、(θ
1、φ
1)及び(θ
1、φ
2)の(θ、φ)の値それぞれに対応する網膜のモデル602上の点(x
1,y
1,z
1)と点(x
2,y
2,z
2)との間の距離を計算する。この距離は本実施形態の例のように、3次元ユークリッド空間におけるピタゴラスの定理を用いて計算することができる。
【数1】
【0053】
なお、本例では、上記で算出した距離が値のペア(θ1、φ1)に対応するセル610に対応付けて記憶される。言い換えれば、テーブル600内の値(θi,φj)の各ペアに対して、角度値のペア(θi,φj)及び角度値のペア(θi,φj+1)に対して計算されたそれぞれの(x,y,z)の値の間で計算された距離は、(θi,φj)に対応するテーブル600のセル610にd(rθi,φj、rθi,φj+1)として格納されてもよい。
【0054】
また、
図6のステップS130において、マッピング生成モジュール140は、(can)パラメータ値(θ
i,φ
j)に対応する各セル610に対して、φ
j+1-φ
jの値を計算する。さらに、マッピング生成モジュール140は、そのセル610についての垂直角変換係数CF
vを生成するために、各セル610についての計算された距離d(r
θi,φj、r
θi,φj+1)を、それに対応する値φ
j+1-φ
jで割る。これは、セル610のθ及びφの値によって示される網膜上の位置に対して、φついての網膜を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す。
【0055】
本実施形態の例では、マッピング生成モジュール140が、θについても網膜の部分を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す各(θ,φ)値のペアに対する水平角変換係数CF
hをさらに決定する。この目的のために、マッピング生成モジュール140は、
図6のステップS120において、テーブル内の(θ
i,φ
j)の全ての値に対して、(θ
i,φ
j)と(θ
i+1,φ
j)のそれぞれの(x,y,z)の値の間の距離の計算をさらに実行することができる。
図6Bの例では、計算された距離が各(θ
i,φ
j)の入力に対してd(r
θi,φj,r
θi+1,φj)として記憶される。
【0056】
さらに、ステップS130において、マッピング生成モジュール140は、それぞれの角度値のペア(θi,φj)に対応するテーブル600内の各セルについて、値θi+1-θiをさらに計算する。さらに、マッピング生成モジュール140は、θについて網膜を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す水平角変換係数CFhを生成するために、(θi,φj)対応するセルごとに記憶された計算された距離d(rθ_i,φ_j, rθi+1,φj)を対応するθi+1-θiの値で割る。
【0057】
この実施形態の例では、変換係数がスキャンパラメータに対する眼の部分を横切る距離をシミュレーションした変化率を示し、ステップ20の関数は恒等関数である。そこで、マッピング生成モジュール140は、θについて網膜の部分を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す水平角変換係数CFhを、θとφのペアの値のそれぞれについて決定し、さらに、φについて網膜の部分を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す垂直角変換係数CFvを、θとφのペアの値のそれぞれについて決定する。しかしながら、他の実施形態の例では、ステップ20の関数が恒等関数でなくてもよく、例えば、スキャンパラメータの変化を、例えば、眼撮像装置によって走査される光ビームの角度などの別のパラメータの変化に相関させる関数であってもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、変換係数が、シミュレーションにおける光ビームの外角(シミュレーションにおいて走査を実行するために回転させる眼撮像装置のモデル606内のガルバノメータミラーの傾斜角によって決定される。)に対して、眼の部分を横切る距離のシミュレーションされた変化率を示すようにしてもよい。この外角は、ステップS110のコンピュータシミュレーションにおいて、眼のモデル602に入射するシミュレーションされた光ビーム604と、眼のモデル602の基準方向(例えば、眼のモデル602のレンズの光軸)との間の角度であってもよい。しかしながら、外角は、眼のモデル602に対して定義される必要はなく、代わりに、例えば、眼撮像装置のモデル606の基準方向又は基準平面に対して定義されてもよい。
【0059】
図8は、コンピュータシミュレーションにおける、眼撮像装置のモデル606及び眼のモデル602を通る光線伝播を示す。ここで、外角は、眼のモデル602における接眼レンズの光軸に対するシミュレーションされた光ビーム604の方位角α又は仰角βである。
図8では、レンズの光軸をz軸とする。入射光ビーム604の方位角αは、眼602のレンズの光軸と、(x-z)の水平平面上への入射光ビーム604を表すベクトルの投影801との間の角度として定義されてもよい。仰角は、入射光ビーム604と、水平平面上への入射光ビーム604を表すベクトルの投影801との間の角度として定義されてもよい。
図2の眼撮像システムを参照すると、方位角αは、Hガルバノメータミラーの傾斜角θの線形関数又は非線形関数のいずれであってもよい。同様に、仰角βは、Vガルバノメータミラーの傾斜角φの線形又は非線形関数とすることができる。さらに、αはφの関数であってもよく、βはθの関数であってもよい。したがって、入射光ビーム604の方位角α及び仰角βが一緒に、眼撮像システム606によって走査された光ビーム604が入射するモデル内の眼602の位置を定義する。
【0060】
一例として、第1の実施形態の例の変形例では、マッピング生成モジュールが傾斜角のペア(θ,φ)と、方位角αについて網膜の部分を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す水平角変換係数CFh'との間のマッピングを生成するようにしてもよい。さらに、変形例のマッピング生成モジュールは、傾斜角のペア(θ,φ)と、(上で定義したように)仰角βについて網膜の部分を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す垂直角変換係数CFv'との間のマッピングを生成することもできる。
【0061】
変形例のマッピング生成モジュールは、第1の実施形態の例と同様に、変換係数を決定するために、変換係数評価モジュール120によって使用されるマッピングを生成することができる。より詳細には、変形例のマッピング生成モジュールが、
図6のステップS110における実施形態の例と同様のプロセスを実行することができ、すなわち、(θ,φ)に対する複数ペアの値を選択して、(θ,φ)の値の各ペアについて、網膜上の対応する位置(x,y,z)を計算するために、計算シミュレーションを実行する。さらに、(θ,φ)の値と対応する位置(x,y,z)との間のマッピングは、
図7Bを参照しながら上述で説明したように、テーブルの形式で提供されてもよい。なお、
図6のステップS120の処理も、実施形態の例と同様に行うことができる。
【0062】
しかし、本変形例では、ステップ130の処理が実施例と異なる。実施形態の例では(計算されたようにCFh、及びCFvの変換係数の値)、隣接する(θ,φ)値のペアに対応する点間の網膜上の距離は、隣接するペア間のθ値の差(水平角変換係数CFhを生成するため)、又は、隣接するペア間のφ値の差(垂直角変換係数CFvを生成するため)で割られる。しかしながら、変形例では、変換係数が方位角α又は仰角βに対する網膜を横切る距離の変化率を表すので、変形例のマッピング生成モジュールは、複数の選択された(θ、φ)値のペアのうちの(θ、φ)値の各ペアについて、(α、β)に対する値の対応するペアを導出する追加のステップを実行する。1つのペアの(θ、φ)値から対応する(α、β)値のペアを導出するために、変形例のマッピング生成モジュールは、最初に、コンピュータシミュレーションを実行して、(θ,φ)値のペアに対応する単位ベクトル(L,M,N)を決定することができる。単位ベクトルは、その水平及び垂直ガルバノメータミラーの傾斜角が、(θ,φ)値に従って設定されたときに、眼撮像システムによってシミュレートされた眼のモデル602を走査する入射光ビーム604を(デカルト座標で)表す。変形例のマッピング生成モジュールは、さらに、各単位ベクトル(L,M,N)をデカルト座標から球面座標に変換して、単位ベクトルに対応する方位角θ及び仰角φを表す(θ,φ)値を得ることができる。
【0063】
(θ,φ)の値の複数の選択されたペアにおいて、(θ,φ)の値の各ペアに対応する(α,β)の値を取得した後、変形例のマッピング生成モジュールは、(θ,φ)の値の各ペアについて、(θ,φ)ペアのα値と、同じφ値を持つ複数の選択された(θ,φ)ペアの中から、次に高いθ値又は次に低いθ値を有する(θ,φ)ペアのα値との間の差を計算することができる。
【0064】
一例として、
図7Bのテーブル600に戻って、各セル610が(θ,φ)の値のペアに対応する場合において、変形例のマッピングジェネレータは、テーブル600内の各(θ
i,φ
j)ペアに対する(α
i,β
j)値に対応するペアを計算することができる。ここで、i=1,・・・,m,j=1,・・・,nである。変形例のマッピング生成モジュールは、変形されたステップ130において、それぞれの角度値ペア(θ
i,φ
j)に対応するテーブル600内の各セル610について、α
i+1-α
iの値をさらに計算することができる。ここで、α
i+1は、(θ
i+1,φ
j)に対応する方位角αである。
【0065】
変形例のマッピング生成モジュールは、方位角αを用いて網膜を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す水平角変換係数CFh'を生成するために、各(θi,φj)ペア(i=1,・・・,m,j=1,・・・,n)に対して、変形されたステップ120で計算された距離d(rθi,φj, rθi+1,φj)(すなわち、(θi+1,φj)と(θi,φj)のそれぞれの(x,y,z)値の間の距離)を、さらにαi+1-αiの対応する値で割ることができる。複数の選択された(θ,φ)ペアのうちの全ての(θ,φ)値のペアに対してCFh'を計算することにより、傾斜角の所望の範囲に対して、(θ,φ)とCFh'間のマッピングを確立することができる。
【0066】
さらに、変形されたステップS130において、変形例のマッピング生成モジュールは、それぞれの角度値ペア(θi,φj)に対応するテーブル600内の各セルについて、さらにβj+1-βjの値を計算することができる。ここで、βj+1は、(θi,φj+1)に対応する仰角βである。変形例のマッピング生成モジュールは、仰角βを用いて網膜を横切る距離のシミュレートされた変化率を示す垂直角変換係数CFv'を生成するために、各(θi,φj)ペアについて、計算された距離d(rθi、φj、rθi、φj+1)(すなわち、(θi,φj)及び(θi,φj+1)のそれぞれの(x,y,z)値の間の距離)を、対応するβj+1-βjで割ることができる。選択された複数の(θi,φj)ペア(i=1,・・・,m,j=1,・・・,n)の全ての(θi,φj)ペアに対して、この計算を実行することによって、(θ,φ)と対応する垂直角変換係数CFv'との間のマッピングを確立することができる。
【0067】
図9Aは、Hガルバノメータミラー傾斜角θ及びVガルバノメータミラー傾斜角φの関数として計算された水平角変換係数CF
h'の3次元プロットを示す。
図9Bは、
図9Aに示される計算結果をグレースケールで表現したものである。
【0068】
図10Aは、Hガルバノメータミラー傾斜角θ及びVガルバノメータミラー傾斜角φの関数として計算された垂直角変換係数CF
v'の3次元プロットを示す。
図10Bは、
図10Aに示される計算結果をグレースケールで表現したものである。
【0069】
図7A及び
図7Bの例は、2つのスキャンパラメータを採用し、したがって、2つの対応するマッピングのセットを使用するが、装置100は1つのスキャンパラメータのみを
用いて同様に動作し得ることを理解されたい。例えば、Vガルバノメータミラー傾斜角φのみを変化させることによって得られるOCT B-スキャンに対して、マッピング生成モジュール140は、φに対する垂直角変換係数を計算するだけでよい。次いで、この垂直角変換係数が使用され、生成されたOCTデジタル画像内の画
素間の第1の方向(例えば、垂直方向)の距離を、網膜の表面上の対応する位置間の対応する方向(例えば、垂直方向)の距離に変換することができる。
【0070】
図11は、装置100の(オプションの)距離計算モジュール150が、
図3のステップS30で決定された変換係数の値を使用して、ステップS10で取得されたデジタル画像内の2つの画素間の距離を、デジタル画像内に示される眼280の撮像領域内の対応する眼の特徴間の物理的距離に変換することによって、眼280の撮像領域内の指定された眼の特徴間の距離を決定するプロセスを示すフローチャートである。
【0071】
図11のステップS40において、距離計算モジュール150は、網膜の撮像領域(または眼280の別の撮像部分)内の第1の眼の特徴を表すデジタル画像内の画素のうち第1の画素の指定を受け取る。距離計算モジュール150は、さらに、撮像領域内の第2の眼の特徴を表すデジタル画像内の画素のうち第2の画素の指定を受け取る。第1及び第2の眼の特徴の各々は、網膜の画像化された領域における網膜の任意の部分に関係し得ることに注意すべきである。
【0072】
第1の画素及び第2の画素の指定は、本実施形態のように、ユーザが画面上のデジタル画像を見て行うことができ、ユーザは、例えば、コンピュータキーボード又はマウスなどの入力デバイスを用いて、画面上のカーソルなどを使ってデジタル画像内の関心のある特徴を指定することができる。しかしながら、この指定は、デジタル画像内の関心点を自動的に指定するパターン認識アルゴリズムを実行するソフトウェアのような画像処理ソフトウェアによって代わりに実行されてもよい。次いで、デジタル画像内の指定された画素の座標が距離計算に使用される。
【0073】
より具体的には、
図11のステップS50において、距離計算モジュール150は、
図4のステップS20で決定された変換係数の値を用いて、デジタル画像内の第1の画素と第2の画素との間の距離を、眼280の撮像領域内の第1の眼の特徴と第2の眼の特徴との間の物理的距離(すなわち、長さ単位、例えば、ミリメートル単位)に変換する。
【0074】
一例として、
図12は、上述のように、ユーザによって指定された第1の画素136-1及び第2の画素136-2を含む、網膜のOCT Bスキャン画像形式のデジタル画像132を示す。指定された画素136-1と136-2との間の距離138は、距離計算モジュール150によって、網膜内の対応する眼の特徴間の距離に変換され、これがスクリーン上でユーザに表示され得る。
【0075】
ここで、OCT画像は、所定の範囲にわたってVガルバノメータミラー214の傾斜角φを変化させることによって生成されるOCT B-スキャンであり、例えば、B-スキャンは、Vガルバノメータミラー214の走査方向に対応するx次元と、眼280の深さ方向に対応するy次元とを有する。この場合、
図7Bの例について説明した垂直角変換係数CF
v又はCF
v'を使用することによって、OCT Bスキャン画像内の任意の2つの画
素間のx次元に沿った距離を、網膜上の2つの対応する特徴間の物理的距離に変換することができる。
【0076】
より具体的には、距離計算モジュール150は、最初に、第1の指定された画素と第2の指定された画素との間の画像単位の距離を決定することができる。距離計算器150は、さらに、決定された画素の距離に対応するVガルバノメータミラー214の傾斜角φの変化δφを決定することができる。より具体的には、角度δφは、第1と第2の指定された画素との間の決定された画素の距離についての画素データを生成するために、Vガルバノメータミラー214が回転された(又は回転されるべき)角度である。この角度の変化δφは、例えば、OCT光検出器のサンプリングレート及びVガルバノメータミラーの角速度に基づいて計算されてもよい。
【0077】
したがって、垂直角変換係数が、Vガルバノメータミラーの傾斜角度φで距離の変化率を示す場合、距離計算モジュール150は、処理中のOCT Bスキャン画像に適用可能な垂直角変換係数CF
vの値に、決定された角度の変化δφを乗算することによって、2つの指定された画素に対応する網膜の特徴間の実際の(物理的)距離を計算することができる。
図4に関連して説明したように、垂直角変換係数CF
vは、ステップS10でスキャンパラメータ取得モジュール110によって受信されるφの値、すなわちφ
cに基づいて、
図4のステップS20で、変換係数評価モジュール120によって決定されてもよい。
【0078】
上記の例は、Vガルバノメータミラー214を回転させることによって生成されるOCT B-スキャン画像に関連するが、OCT B-スキャン画像はHガルバノメータミラー260の傾斜角θを変化させることによって同様に生成されてもよく、この場合、OCT B-スキャン画像はHガルバノメータミラー260の走査方向に対応する方向が、x次元になることは明らかである。このようなシナリオでは、
図7Bの例に関連して説明された水平角変換係数CF
hを使用して、OCT B-スキャン画像内の任意の2つの画素間のx次元に沿った距離を、網膜上の2つの対応する特徴間の物理的距離に変換することができる。
【0079】
上記の例では、Vガルバノメータミラー214及びHガルバノメータミラー260のうちの1つのみが、B-スキャンを取得するために回転される。SLO-OCT撮像システム200が、Hガルバノメータミラー260及びVガルバノメータミラー214の両方の傾斜角を変化させることによって、OCT Cスキャンを取得する場合、OCT Cスキャン画像は、Hガルバノメータミラー260の走査方向に対応する第1の次元(例えば、x次元)、Vガルバノメータミラー214の走査方向に対応する第2の次元(例えば、y次元)、及び眼280の深さ方向に対応する第3の方向(例えば、z次元)を有し得る。第1及び第2の次元(すなわち、x次元及びy次元)のみを有するOCT CスキャンのOCT画像スライスの場合、距離計算モジュール150は、Cスキャン画像のスライス内の2つの指定された画素間の距離を、眼280内の対応する網膜の特徴間の物理的距離に変換してもよい。特に、第1の指定された画素及び第2の指定された画素がx次元及びy次元の両方に対して互いにオフセットされている場合、距離計算モジュール150は、水平角変換係数CFh及び垂直角変換係数CFvの両方を使用して、2つの指定された画素に対応するそれぞれの網膜の特徴間の物理的距離を計算することができる。
【0080】
一例として、第1の指定された画素及び第2の指定された画素が、OCT画像スライスのx次元に沿ったa画素分の間隔が離れ、OCT画像スライスのy次元に沿ったb画素分の間隔が離れている場合、距離計算モジュール150は、距離aに対応するHガルバノメータミラー260の角度δθを決定し、さらに、距離bに対応するVガルバノメータミラー214の角度δφを決定してもよい。角度δθは、OCT画像スライスのx次元における画素の距離aに対する画素データを生成するために、Hガルバノメータミラー260が回転するのに必要な角度である。同様に、角度δφは、OCT画像スライスのy次元における画素の距離bに対する画素データを生成するために、Vガルバノメータミラーが回転するのに必要とされる角度である。δθ及びδφの値は、例えば、OCT光検出器のサンプリングレートと、Hガルバノメータミラー及びVガルバノメータミラーの既知の角速度とに基づいて計算されてもよいが、スキャンパラメータ取得モジュール110が、撮像データの一部として上述の範囲Δθ及びΔφを受信し、デジタルOCT画像スライスがA×B画素の配列で構成される場合は、それぞれa/A・Δθ及びb/B・Δφとして計算されてもよい。
【0081】
δθ及びδφを取得すると、距離計算モジュール150は、δθにステップS30で取得された水平角変換係数CFhを乗算して、2つの指定された画素に対応する網膜の特徴間の第1の方向(例えば、水平方向)に沿った第1の物理的距離を計算してもよい。距離計算モジュール150は、さらに、ステップS30で同じく得られた垂直角変換係数CFvをδφに掛けて、2つの指定された画素に対応する網膜の特徴間の第2の方向(例えば、垂直方向)に沿った第2の物理的距離を計算することができる。最後に、距離計算モジュール150は、第1の物理的距離及び第2の物理的距離を使用することによって、第1の網膜の特徴(第1の指定された画素に対応する)と第2の網膜の特徴(第2の指定された画素に対応する)との間の距離を決定することができる。例えば、第1の物理的距離に対応する第1の方向が、第2の物理的距離に対応する第2の方向と実質的に直交している場合、距離計算モジュール150は、計算された第1及び第2の物理的距離にピタゴラスの定理を適用することによって、2つの網膜の特徴間の距離を計算してもよい。この計算された距離は、装置100によってさらに出力されてもよい。例えば、装置100は、計算された距離をユーザに表示するために、コンピュータ画面又は他の視覚表示ユニットを制御するようにしもよい。
【0082】
変換係数が、恒等関数以外のスキャンパラメータの関数が距離の変化率を示す場合、(2つの指定された画素間の)決定された画素距離に対応するスキャンパラメータの変化は、最初に、スキャンパラメータの関数の値内の対応する変化に変換されることに留意されたい。変換係数(スキャンパラメータの関数に対する距離の変化率を示す)は、デジタル画像内の指定された画素間の距離に対応する眼280内の物理的距離を得るために、スキャンパラメータの関数の値の対応する変化と乗算することができる。
【0083】
以上、本明細書の例示的な実施形態に従って、以下のE1~E7に記載される装置、及び以下のE8~E14に記載されるコンピュータ実装方法、並びに以下のE15に記載されるコンピュータプログラムについて説明した。
【0084】
E1. 、眼(280)の部分の撮像領域内の指定された眼の特徴間の距離を計算するための変換係数を評価するために、眼撮像装置200の制御部205によって生成された眼球撮像データを処理するための装置(100)であって、
前記眼(280)の前記部分の前記撮像領域のデジタル画像を取得するために、前記眼球撮像データから、前記眼撮像装置(200)によって実行される走査の前記眼(280)内のスキャン位置を示す前記眼撮像装置(200)のスキャンパラメータ(θ,φ)の値を取得するように構成されたスキャンパラメータ取得モジュール110と、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の異なる各々の値を使用して、前記眼撮像装置(200)による領域の撮像中に各々の画素値が取得される前記デジタル画像内の該画素間の距離を、前記眼(280)の前記領域内の対応する位置間の距離に変換するための前記変換係数(CFh,CFv)の各々の値を決定するために、前記取得したスキャンパラメータ(θ,φ)の値と、前記スキャンパラメータ(θ,φ)の値と変換係数(CFh,CFv)の各々の値間のマッピング(125)とを使用するように構成された変換係数評価モジュール(120)であって、前記変換係数の各々の値は、前記スキャンパラメータ(θ,φ)の各々の値に対する前記スキャンパラメータ(θ,φ)の関数を用いて、前記眼(280)の部分を横切る距離をシミュレートした変化率を示す変換係数評価モジュール(120)と、
前記変換係数(CFh,CFv)の決定された値に関連付けてデジタル画像(132)を格納するように構成されたデータ記憶モジュール(130)と、を備える装置。
【0085】
E2. 前記マッピングを生成するように構成されたマッピング生成モジュール(140)をさらに備える、E1に記載の装置(100)は、
前記スキャンパラメータの値に従って眼撮像装置(200)のモデルが動作するときに、前記眼撮像装置(200)のモデルを通って伝播する光線が入射する前記眼(280)のモデルの部分の対応する位置に、一連の前記スキャンパラメータの値のうちの前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値の各々を関連付けるシミュレーション結果を生成するために、前記眼撮像装置(200)のモデル及び前記眼(280)のモデルを通る光線伝播のコンピュータシミュレーションを実行し、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の前記値の各々について、前記眼(280)のモデルの前記部分内の対応する位置と、前記一連の値うちの隣接する値に対応する前記眼(280)のモデルの前記部分内の位置との間の距離を計算し、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の前記値の各々について、前記スキャンパラメータ(θ、φ)の関数を用いて、前記眼(280)の前記部分を横切る距離の前記シミュレーションされた変化率を示す前記変換係数(CFh,CFv)の各々の値を生成するために、前記計算された距離の各々を、前記スキャンパラメータ(θ、φ)の前記値の前記関数の対応する値と、前記一連のスキャンパラメータ(θ、φ)のうちの前記隣接する値の前記関数の値との間の差で割ることによって、
前記マッピングを生成するように構成されるマッピング生成モジュール(140)を備える。
【0086】
E3. E2に記載の装置(100)は、前記マッピング生成モジュール(140)は、前記コンピュータシミュレーションにおいて、前記眼(280)の生物学的測定値を使用して、前記眼(280)のモデル及び前記眼撮像装置(200)のモデルを通る光線伝播をモデル化するように構成される。
【0087】
E4.E1からE3のいずれかに記載の装置(100)が、
前記眼(280)の前記領域における第1の眼の特徴を表すデジタル画像(132)における画素の第1の画素(136-1)の指定と、前記眼(280)の前記領域における第2の眼の特徴を表すデジタル画像(132)における画素の第2の画素(136-2)の指定とを受け取るステップと、
前記デジタル画像(132)における前記第1の画像(136-1)と前記第2の画像(136-2)との間の距離(138)を、前記眼(280)の前記領域における前記第1の眼の特徴と前記第2の眼の特徴との間の距離に変換するために、前記変換係数(CFh,CFv)の前記決定された値を使用するステップとによって、
前記眼(280)の前記撮像領域における前記指定された眼の特徴間の距離を決定するように構成された距離計算モジュール(150)をさらに備える。
【0088】
E5. E1~E4のいずれかに記載の装置(100)は、前記眼(280)の前記部分が、前記眼(280)の網膜を含む。
【0089】
E6. E5に記載の装置(100)は、前記マッピング(125)が、前記眼撮像装置(200)によって前記網膜の広視野の走査でカバーされるスキャンパラメータ値の範囲にまたがる前記スキャンパラメータの値を、前記変換係数(CFh,CFv)の各々の値に関連付ける。
【0090】
E7. E1~E6のいずれかに記載の装置(100)は、
前記装置(100)は、前記眼球撮像データとして、OCT撮像装置の制御部(205)によって生成された眼科用光コヒーレンストモグラフィ、OCT、撮像データを処理するように構成され、
前記スキャンパラメータ取得モジュール(110)は、前記眼(280)の前記部分の前記撮像領域のデジタルOCT画像を取得するために、前記OCT撮像データから、前記OCT撮像装置によって実行されるOCTスキャンの前記眼(280)内のOCTスキャン位置を示す前記OCT撮像装置のスキャンパラメータ(θ,φ)の値を取得するように構成される。
【0091】
E8. 眼(280)の部分の撮像領域における指定された眼の特徴間の距離を計算するための変換係数(CFh,CFv)を評価するために、眼撮像装置(200)の制御部(205)によって生成された眼球撮像データを処理するコンピュータ実装方法は、
前記眼(280)の前記部分の前記撮像領域のデジタル画像を取得するために、前記眼球撮像データから、前記眼撮像装置(200)によって実行される走査の眼(280)内のスキャン位置を示す前記眼撮像装置(200)のスキャンパラメータ(θ,φ)の値を取得するステップ(S10)と、
前記スキャンパラメータ(θ,φ)の異なる各々の値を使用して、前記眼撮像装置(200)による前記領域の撮像中に、各々の画素値が取得される前記デジタル画像(132)内の画素間の距離(138)を、前記眼(280)の前記領域内の対応する位置間の距離に変換するための前記変換係数(CFh,CFv)の各々の値を決定するために、前記スキャンパラメータ(θ,φ)の前記取得された値と、前記スキャンパラメータ(θ,φ)の値と変換係数の各々の値間の前記マッピング(125)とを使用するステップ(S20)であって、前記変換係数(CFh,CFv)の各々の値は、前記スキャンパラメータ(θ,φ)の各々の値に対する前記スキャンパラメータ(θ,φ)の関数を用いて、前記眼(280)の部分を横切る距離をシミュレートした変化率を示すステップと、
前記変換係数(CFh,CFv)の前記決定された値に関連付けて前記デジタル画像を格納するステップ(S30)と、を備える。
【0092】
E9. E8に記載のコンピュータ実装方法は、
スキャンパラメータ(θ、φ)の値に従って眼撮像装置(200)のモデルが動作するときに、前記眼撮像装置(200)のモデルを通って伝播する光線が入射する前記眼(280)のモデルの部分上の対応する位置に、一連の前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値のうちの前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値の各々を関連付けるシミュレーション結果を生成するために、前記眼撮像装置(200)のモデルと前記眼(280)のモデルを通る光線伝播のコンピュータシミュレーションを実行するステップ(S110)と、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の前記値の各々について、前記眼(280)の前記モデルの前記部分内の対応する位置と、前記一連の値うちの隣接する値に対応する前記眼(280)のモデルの前記部分内の位置との間の距離を計算するステップ(S120)と、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の前記値の各々について、前記スキャンパラメータ(θ、φ)の関数を用いて、前記眼(280)の前記部分を横切る距離の前記シミュレーションされた変化率を示す前記変換係数(CFh,CFv)の各々の値を生成するために、前記計算された距離の各々を、前記スキャンパラメータ(θ、φ)の前記対応する値の前記関数の値と、前記一連のスキャンパラメータ(θ、φ)のうちの前記隣接する値の前記関数の値との間の差で割るステップ(S130)とによって、
前記マッピングを生成するステップをさらに備える。
【0093】
E10. E9に記載のコンピュータ実装方法は、前記眼(280)の生物学的測定値を使用して、前記眼(280)のモデル及び前記眼撮像装置(200)のモデルを通る光線伝播をモデル化する。
【0094】
E11. E8~E10のいずれかに記載のコンピュータ実行方法は、
前記眼(280)の前記領域における第1の眼の特徴を表す前記デジタル画像(132)における画素のうちの第1の画素(136-1)の指定と、前記眼(280)の前記領域における第2の眼の特徴を表す前記デジタル画像(132)における画素のうちの第2の画素(136-2)の指定とを受け取るステップ(S40)と、
前記デジタル画像(132)における第1の画素(136-1)と第2の画素(136-2)との間の距離(138)を、前記眼(280)の前記領域における前記第1の眼の特徴と前記第2の眼の特徴との間の距離に変換するために、前記変換係数(CFh,CFv)の前記決定された値を使用するステップとによって、
前記撮像領域内の前記指定された眼の特徴間の距離を決定するステップをさらに備える。
【0095】
E12. E8~E11のいずれかに記載のコンピュータ実装法は、前記眼の前記部分が眼(280)の網膜を含み、前記マッピングは、前記眼撮像装置(200)による前記網膜の広視野スキャンにおいてカバーされるスキャンパラメータ(θ,φ)の値の範囲にわたる前記スキャンパラメータ(θ,φ)の値を、前記変換係数(CFh,CFv)の各々の値に関連付ける。
【0096】
E13. E8~E12のいずれかに記載のコンピュータ実装方法は、
OCT撮像装置の制御部(205)で生成された眼科用光コヒーレンストモグラフィ、OCT、撮像データは、眼球撮像データとして処理され、
前記取得するステップ(S10)は、前記眼(280)の前記部分の撮像領域のデジタルOCT画像を取得するために、前記OCT撮像データから前記OCT撮像装置によって実行されるOCTスキャンの前記眼(280)内のOCTスキャン位置を示すOCT撮像装置のスキャンパラメータ(θ,φ)の値を取得して、ステップを含む。
【0097】
E14. 眼球撮像装置(200)が眼(280)の部分の各々の撮像領域のデジタル画像を取得するように動作可能な、前記眼(280)の前記部分における各々のスキャン位置を示す前記眼撮像装置(200)のスキャンパラメータ(θ、φ)の値を、前記眼(280)の前記部分の前記各々の撮像領域における指定された眼の特徴間の距離を計算するための変換係数(CFh,CFv)の各々の値に関連付けるコンピュータ実装方法は、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値に従って眼撮像装置(200)のモデル動作するときに、前記眼撮像装置(200)のモデルを通って伝播する光線が入射する前記眼(280)のモデルの部分の対応する位置に、一連の前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値のうちの前記スキャンパラメータ(θ、φ)の値の各々を関連付けるシミュレーション結果を生成するために、前記眼撮像装置(200)のモデルと前記眼(280)のモデルを通る光線伝播のコンピュータシミュレーションを実行するステップ(S110)と、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の前記値の各々について、前記眼(280)のモデルの前記部分内の対応する位置と、前記一連の値うちの隣接する値に対応する前記眼(280)のモデルの前記部分内の位置との間の距離を計算するステップ(S120)と、
前記スキャンパラメータ(θ、φ)の前記値の各々について、前記スキャンパラメータ(θ、φ)の関数を用いて、前記眼(280)の前記部分を横切る距離の変化率を示す前記変換係数(CFh,CFv)の各々の値を生成するために、前記計算された距離の各々を、前記スキャンパラメータの前記対応する値の前記関数の値と、前記一連のスキャンパラメータ(θ、φ)のうちの前記隣接する値の前記関数の値との間の差で割るステップ(S130)とを備える。
【0098】
E15. コンピュータプロセッサ(320)によって実行されると、コンピュータプロセッサ(320)が、E8~E14の少なくとも1つに記載の方法を実行するコンピュータ読み取り可能な命令を含むコンピュータプログラム(390)。
【0099】
本明細書で説明される例示的な態様は、眼球画像処理において眼球の特徴サイズを計算するための従来の技法に関連する、特にコンピュータ技術に起因する制限を回避する。例えば、眼球の特徴サイズを計算するための既知の座標再マッピングアプローチの使用は、例えば、比較的複雑な再マッピング及びそれに続く距離計算が多数実行される必要があるので、眼の網膜又は他の部分の狭視野画像が高いフレームレートで取得されるアプリケーションにおいて、特に、遅く、膨大なリソースが必要になる計算を含み得るとう問題がある。他方、本明細書に記載される技術は、決定された変換係数値を使用することによって、従来の技術と比較して、より少ないコンピュータ処理及びメモリリソースを使用して、網膜画像内の指定された眼の特徴間の距離が実質的により速く、より計算効率的な方法で達成されることを可能にする。また、コンピュータ技術に根ざした、本明細書で説明した例示的な態様の前述の能力によって、本明細書で説明した例示的な態様はコンピュータ及びコンピュータ処理/機能を改善し、少なくとも画像処理、OCT、及びデータ処理の分野も改善する。
【0100】
前述の説明では、いくつかの例示的な実施形態を参照して、例示的な態様が説明されている。したがって、本明細書に限定的されるべきではなく、例示的なものであるとみなされるべきである。同様に、図面に示される図は、例示的な実施形態の機能及び有効な点を強調する例示的な目的のみのために提示される。例示的な実施形態のアーキテクチャは添付の図面に示されるもの以外の方法で利用され得るように、十分に柔軟性があり構成可能である。
【0101】
本発明の様々な例示的な実施形態を上記で説明したが、それらに限定されることなく例として提示されたことを理解されたい。当業者には、形態及び詳細の様々な変更をそこに行うことが可能であることは明らかであろう。したがって、本発明は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物に従ってのみ定義されるべきである。
【0102】
さらに、要約書の目的は、特許庁及び公衆が一般的に、特に特許又は法律用語又は表現に精通していない当該技術分野の科学者、技術者及び実務家が、大まかな調査から、出願の技術的開示の性質及び本質を迅速に決定することを可能にすることであろう。要約は、本明細書に提示された例示的な実施形態の範囲に関していかなる形でも限定することを意図していない。また、特許請求の範囲に列挙された任意の手順は、提示された順序で実行される必要がないことも理解されるべきである。
【0103】
本明細書は、多くの特定の詳細な実施形態を含むが、これらは、任意の発明又は特許請求の範囲の権利範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書に記載される特定の実施形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施形態の文脈で、本明細書に記載される特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で説明される様々な特徴は、複数の実施形態で別々に、又は任意の適切なサブコンビネーションで実装することもできる。さらに、特徴は、特定の組み合わせで動作するものとして上記で説明されてもよく、そのようなものとして最初に特許請求の範囲に記載されてもよいが、特許請求の範囲に記載される組み合わせの1つ又は複数の特徴が、場合によってはその組み合わせから削除されてもよく、特許請求の範囲に記載される組み合わせは、サブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形に向けられてもよい。
【0104】
ここで、いくつかの実施例及び実施形態を説明したが、上記は例示的なものであって、上記に限定されるものではなく、例として提示されていることは明らかである。
【0105】
本明細書に記載される装置は、その特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されてもよい。前述の実施形態は、説明されたシステム及び方法を限定するものではなく、例示的なものである。したがって、本明細書に記載された装置の権利範囲は、前述の詳細な説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と同等の意味及び範囲内に入る変更は、その中に包含される。