(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】流体セル、マット装置、および流体セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/10 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
A47C27/10 Z
(21)【出願番号】P 2021114789
(22)【出願日】2021-07-12
(62)【分割の表示】P 2020023353の分割
【原出願日】2016-09-30
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390039985
【氏名又は名称】パラマウントベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】大野 健太
(72)【発明者】
【氏名】富永 悠介
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-160044(JP,A)
【文献】特開2017-124012(JP,A)
【文献】登録実用新案第3094799(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体を充填可能な可撓筒と、
前記可撓筒の両端開口を各別に閉塞した一対の閉塞部と、
前記閉塞部から前記可撓筒の長手方向の外側に向けて突出
し、前記可撓筒の上面と下面との間に設けられ、上下方向に所望の長さで延びた耳部と、
を備えるエアセル。
【請求項2】
前記可撓筒内に流体が充填された状態において、前記可撓筒の上面の一部の高さが、前記耳部の高さよりも高い請求項1に記載のエアセル。
【請求項3】
前記一対の閉塞部は、
前記可撓筒内に流体が充填されていない状態において、前記可撓筒の上面が下方向に窪んだ状態で、前記可撓筒の前記両端開口を各別に閉塞している請求項1または2に記載のエアセル。
【請求項4】
前記耳部は、上下方向に沿って前記可撓筒の全域にわたって形成されている請求項
1~3のいずれか1つに記載のエアセル。
【請求項5】
前記耳部には、他のエアセルに連結され、互いの相対変位を規制する規制部が形成されている請求項1~
4のいずれか1つに記載のエアセル。
【請求項6】
前記上下方向において、前記耳部の長さは前記規制部の長さよりも長い請求項5に記載のエアセル。
【請求項7】
前記可撓筒には、前記可撓筒の内部を2つの充填室に区画する区画壁が設けられ、
前記区画壁は、前記可撓筒の内部を上下方向に区画する請求項1~6のいずれか1つに記載のエアセル。
【請求項8】
前記可撓筒の側面に給排気口が設けられている請求項1~7のいずれか1つに記載のエアセル。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載のエアセルを複数備えたマット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体セル、マット装置、および流体セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内部に流体を充填可能な可撓筒と、可撓筒が径方向に挟み込まれた状態で可撓筒の内周面同士が固着されてなり、可撓筒の両端開口を各別に閉塞した閉塞部と、を備えた流体セルが知られている。この種の流体セルでは、可撓筒内に流体が充填された際に、可撓筒の軸方向の端部に角部が生じる。この角部は、可撓筒の径方向のうち、閉塞部において可撓筒が挟み込まれる方向に交差する一方向の外側に向けて尖っている。
前記角部の発生を抑えるため、例えば下記特許文献1に示されるような流体セルが知られている。この流体セルでは、可撓筒における軸方向の端部に、前記挟み込まれる方向に延びる底辺、および軸方向の外側に向けて突出する頂角を有する平面視三角形状の耳部を、閉塞部を形成した後に形成することで、前記角部の発生を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しなしながら、前記従来の流体セルにおいては、閉塞部を形成した後に、耳部を別途各別に形成する作業が必要になり、作業工数が嵩んでいた。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、工数を抑えて簡便に製造することができる流体セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)内部に流体を充填可能な可撓筒と、前記可撓筒が径方向に挟み込まれた状態で前記可撓筒の内周面同士が固着されてなり、前記可撓筒の両端開口を各別に閉塞した一対の閉塞部と、を備えた流体セルにおいて、前記可撓筒における軸方向の端部には、前記可撓筒の径方向のうち、前記閉塞部において前記可撓筒が挟み込まれる方向に交差する一方向の内側に向けて折り込まれた谷折り部が形成され、前記閉塞部は、前記軸方向に沿って前記谷折り部が形成された位置に配設されていることを特徴とする。
【0007】
この発明では、閉塞部が、軸方向に沿って谷折り部が形成された位置に配設されている。このため、可撓筒内に流体を充填して膨張させた際に、可撓筒の軸方向の端部が、谷折り部の内面同士が離間するように前記挟み込まれる方向に広がろうとする。これにより、可撓筒の軸方向の端部に、前記一方向の外側に向けて尖る角部が生ずるのを抑えることができる。また、谷折り部を形成した上で閉塞部の位置を調整すれば、可撓筒の軸方向の端部に前記角部が生ずることを抑えることが可能になるので、閉塞部の径方向の端部に、平面視三角形状の耳部を、別途各別に形成する構成と比べて、工数を抑えて簡便に流体セルを製造することができる。
【0008】
(2)上記(1)に係る流体セルであって、前記谷折り部の、互いに対向する一対の内面には、これらの内面同士を互いに固定する固定部が形成され、前記閉塞部および前記固定部は、一体に形成されてもよい。
【0009】
この場合、可撓筒内に流体を充填して膨張させた際に、固定部に固定された谷折り部の内面同士が互いに拘束される。したがって、可撓筒の軸方向の端部において、固定部の周囲に位置する外周面を、前記一方向と直交する平坦面状に形成することができる。
また、閉塞部および固定部を一体に形成することができるので、より一層簡便に流体セルを製造することができる。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)に係る流体セルであって、前記閉塞部は、前記可撓筒の両端縁よりも前記可撓筒における軸方向の内側に配置され、前記可撓筒には、前記閉塞部から前記軸方向の外側に向けて突出する耳部が形成されてもよい。
【0011】
この場合、可撓筒に耳部が形成されているので、例えば、耳部に、流体セルをマット装置に取付けるための取付部材を配設すること等ができる。
【0012】
(4)上記(3)に係る流体セルであって、前記閉塞部は、前記一方向に沿って延びるとともに、前記一方向に沿って前記可撓筒の全域にわたって配置され、前記耳部は、前記一方向に沿って前記可撓筒の全域にわたって形成されてもよい。
【0013】
この場合、耳部が、前記一方向に沿って可撓筒の全域にわたって配置されている。このため、耳部の面積を大きく確保することができ、例えば、耳部に取付ける取付部材の数量や形状等について自由度をもって選択すること等ができる。
【0014】
(5)上記(3)又は(4)に係る流体セルであって、前記耳部には、他の流体セルに連結され、互いの相対変位を規制する規制部が形成されてもよい。
【0015】
この場合、耳部に形成された規制部により、複数の流体セル同士の相対変位が規制され、流体セルの自立性を高めることができる。
【0016】
(6)上記(1)から(5)のうちのいずれか1つに係る流体セルであって、前記可撓筒には、前記可撓筒の内部を2つの充填室に区画する区画壁が設けられ、前記区画壁は、前記可撓筒の内部を、前記一方向に区画してもよい。
【0017】
この場合、可撓筒の内部が、谷折り部が折り込まれた前記一方向に2つの充填室に区画されている。したがって、この可撓筒を前記一方向に自立させ易くすることができる。さらに、固定部の周囲に位置する外周面を、前記一方向に直交する平坦状に形成することができるので、流体セル上に横たわる使用者の使い心地を良好にすることができる。
【0018】
(7)本発明に係るマット装置は、上記(1)から(6)のうちのいずれか1つに係る流体セルであることを特徴とする。
【0019】
この場合、マット装置において、前述の各作用効果を奏功させることができる。
【0020】
(8)本発明に係る流体セルの製造方法は、上記(2)に係る流体セルの製造方法であって、前記固定部と前記閉塞部とを同時に形成することを特徴とする。
【0021】
この場合、固定部と閉塞部とを同時に形成するので、工数を抑えて簡便に流体セルを製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、工数を抑えて簡便に流体セルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るマット装置の模式斜視図である。
【
図2】
図1に示すマット装置における流体セルの斜視図である。
【
図3】
図2に示す流体セルの軸方向の端部の正面図である。
【
図4】
図3に示す流体セルに空気を充填する過程における(a)正面図、(b)上 面図である。
【
図5】
図2に示す流体セルの製造過程において(a)谷折り工程を、(b)閉塞工 程および固定工程を、(c)取付部材を配設する工程を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る流体セルの変形例のうち、(a)第1変形例、(b)第 2変形例を示す正面図である。
【
図7】第1実施形態に係る流体セルの第3変形例を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る流体セルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、
図1から
図6を参照し、本発明の第1実施形態に係るマット装置10を説明する。
マット装置10としては、使用者が横たわるベッド装置や使用者が着座するクッション装置が挙げられ、本実施形態では、マット装置10の一例として、ベッド装置を採用している。以下、マット装置10における前後方向X、左右方向Y、上下方向Zを用いて各部の構成を説明する。
【0025】
図1に示すように、マット装置10は、使用者が横たわるマット部11と、マット部11への給気および排気を行う給排気部12と、給排気部12の制御を行う制御部13と、を備えている。
マット部11は、複数の流体セル15を有していて、これらの流体セル15の内部に給気することで空気を充填し、マット部11上に横たわる使用者の荷重を支える。流体セル15の内圧は、マット部11の硬さに対応しており、流体セル15の内圧を使用者の体重に応じて設定することで、マット部11の硬さを使用者にとって最適な硬さにすることができる。
【0026】
流体セル15は、マット部11において、左右方向Yに延びる棒状のセルであり、図示の例では、複数の流体セル15が、前後方向Xに連ねられて配設されることにより、マット部11を構成している。流体セル15は、例えば塩化ビニルフィルム又はウレタンフィルム等のフィルム材で形成され、中心軸線O1回りに丸められ、その両周端部同士が例えば溶着等されることで接続される。前記フィルム材の溶着部分には、左右方向Yに延びる周端線15fが形成されている。この流体セル15では、周端線15fが下端部に位置し、前記フィルム材のうち、周端線15fよりも上方に位置する部分が、後述する可撓筒15aを形成している。
互いに隣接して配置された流体セル15同士は、互いに固定されていても固定されていなくてもよい。流体セル15は、複数の流体セル15を一体に覆う図示しないカバーに、例えば後述する取付部材19としてのボタンや紐などを介して取付けること等もできる。
【0027】
図2に示すように、流体セル15は、内部に流体を充填可能な可撓筒15aと、可撓筒15aが径方向に挟み込まれた状態で可撓筒15aの内周面同士が固着されてなり、可撓筒15aの両端開口を各別に閉塞した閉塞部15bと、を備えている。可撓筒15aの中心軸線O1は、左右方向Yに沿って延びている。可撓筒15aを左右方向Yから見た平面視において、中心軸線O1と直交する径方向のうちの一方向が、上下方向Zに沿って延びている。可撓筒15aは、前後方向Xおよび左右方向Yから見て、それぞれ矩形状を呈している。なお可撓筒15aは、複数のフィルム材で形成されてもよい。
【0028】
可撓筒15aには、左右方向Yに延びる区画壁15cが形成されている。区画壁15cは、可撓筒15aの上下方向Zの中央部近傍に形成されている。区画壁15cにより、流体セル15(可撓筒15a)の内部は上下方向Zに2つの充填室に区画されている。各充填室には、空気を供給および排出するための給排気口15eが各別に設けられている。各給排気口15eには、給排気部12をなす配管がそれぞれ接続される。
【0029】
図4に示すように、可撓筒15aの左右方向Yの端部には、可撓筒15aの径方向のうち、閉塞部15bにおいて可撓筒15aが挟み込まれる方向に交差する一方向である上下方向Zの内側に向けて折り込まれた谷折り部16が形成されている。谷折り部16は、可撓筒15aの径方向のうちの一方向に折り込まれていて、図示の例では、上下方向Zの下側に向けて折り込まれている。流体セル15(可撓筒15a)から空気が排出された状態において、流体セル15が前後方向Xに折りたたまれた状態で、谷折り部16は、可撓筒15aの左右方向Yの全長にわたって形成されている。つまり、
図4に示すように、流体セル15内に空気を充填する過程においては、谷折り部16は、可撓筒15aの左右方向Yにおける全長に形成されている。なお、谷折り部16は、上面および下面にそれぞれ形成されてもよい。
【0030】
閉塞部15bは、左右方向Yに沿って谷折り部16が形成された位置に配設されている。すなわち、閉塞部15bは、谷折り部16と重なって形成されている。
閉塞部15bは、流体セル15の左右方向Yの両端部に各別に一対形成されている。閉塞部15bは上下方向Zに沿って延び、可撓筒15aの全域にわたって配置されている。 閉塞部15bは、可撓筒15aの内周面同士を互いに接着することで、可撓筒15aの両端開口を閉塞している。図示の例では、閉塞部15bは可撓筒15aの内周面同士を互いに溶着することで形成されている。
図2および
図3に示すように、谷折り部16の、互いに対向する一対の内面16cには、これらの内面16c同士を互いに固定する固定部17が形成されている。固定部17は、閉塞部15bと一体に形成されている。固定部17および閉塞部15bは、可撓筒15aを上下方向Zに縦断する溶着線によって形成されている。
【0031】
流体セル15内に空気を充填した状態においては、谷折り部16は、可撓筒15aの外表面のうち、上方を向く上面における左右方向Yの両端部に、各別に形成されている。
谷折り部16は、谷折り凹部16aと、対向部16bと、を備えている。谷折り部16は、下方に向けて窪み、上方に向けて開口している。谷折り凹部16aは、上面視で2つの頂部が前後方向Xに沿って配設され、残りの頂部が左右方向Yの外側に配設された三角形状を呈する。対向部16bは、谷折り凹部16aの左右方向Yの外端部から左右方向Yの外側に向けて延びている。対向部16bは、谷折り部16の前後一対の内面16c同士が互いに前後方向Xに対向することで形成されている。対向部16bの、左右方向Yの内側の端部に、固定部17が形成されている。
【0032】
また本実施形態では、閉塞部15bは、可撓筒15aの両端縁よりも可撓筒15aにおける左右方向Yの内側に配置され、可撓筒15aには、閉塞部15bから左右方向Yの外側に向けて突出する耳部18が形成されている。耳部18は、可撓筒15aの左右方向Yにおける両端部に各別に形成されている。耳部18は、前後方向Xから見て上下方向Zに長い矩形状を呈している。
【0033】
耳部18の上下方向Zにおける両端部には、取付部材(規制部)19が上下方向Zに間隔を空けて2つ配設されている。図示の例では取付部材19は、耳部18に形成された孔に配設された合成樹脂製のスナップボタンとなっている。この取付部材19により、マット装置10の図示しないカバーに流体セル15が取付られる。取付部材19は、前記カバーを介して他の流体セル15に連結され、互いの相対変位を規制する規制部として機能する。
なお、取付部材19は、1つ又は3つ以上配設されてもよいし、耳部18の上下方向Zにおける中央部に配設してもよい。また、取付部材19として、金属製のスナップボタンを採用してもよい。
【0034】
次に、
図5を参照して流体セル15の製造方法について説明する。
まず、流体セル15をなすフィルム材を中心軸線O1回りに丸め、その両周端部同士を溶着することで接続し、周端線15fを形成する。これにより、可撓筒15aを形成する。
次に、谷折り工程として、
図5(a)に示すように、左右方向Yに沿って延びる可撓筒15aの外周面のうちの上端部を、上下方向Zの内側に向けて折り込み、谷折り部16を形成する。図示の例では、可撓筒15aの全長にわたって中心軸線O1に対して平行な谷折り部16を形成している。なお、谷折り工程では、必ずしも可撓筒15aの全長にわたって谷折り部16を形成する必要はなく、少なくとも可撓筒15aにおける左右方向Yの端部を上下方向Zの内側に向けて折り込めば足りる。また、谷折り部16は、中心軸線O1に対して傾斜して形成してもよい。
【0035】
なお、谷折り部16の溝底に画成された谷折り線16dの最大深さは、空気が充填された状態において、流体セル15の上面のうち、左右方向Yの中央部における前後方向Xの厚み寸法(以下、中央部のセル幅という)の15%から50%であることが好ましい。
谷折り線16dの最大深さが、中央部のセル幅の15%以下である場合には、可撓筒15aの左右方向Yの端部に、上方に向けて尖る角部が僅かに生ずることが確認されている。また、谷折り線16dの最大深さが、中央部のセル幅の50%以上である場合には、流体セル15の上面のうち、左右方向Yの両端部における前後方向Xの厚み寸法(以下、端部のセル幅)が、中央部のセル幅よりも大きくなってしまうことが確認されている。
【0036】
次に、
図5(b)に示すように、可撓筒15aの開口端部において、例えば図示しない溶着手段により可撓筒15aを前後方向Xの両側から挟みこんで溶着する等することで、可撓筒15aの内周面同士を互いに上下方向Zの全域にわたって接続する。これにより、谷折り部16の、互いに対向する一対の内面16c同士を互いに固定する固定工程と、可撓筒15aの両端開口を閉塞部15bにより閉塞する閉塞工程と、を同時に行う。
図5(c)に示すように、この溶着作業により、可撓筒15aの左右方向Yの両端部に、上下方向Zに沿って延びる閉塞部15bが形成されるとともに、閉塞部15bのうち、谷折り部16の谷折り線16dよりも上方に位置する部分に、固定部17が形成される。また、可撓筒15aのうち、閉塞部15bよりも左右方向Yの外側に位置する部分には、耳部18が各別に形成される。なお、この溶着作業を、フィルム材の両周端同士を溶着して前述のように周端線15fを形成する際に同時に行うことで、周端線15f、閉塞部15b、および固定部17を同時に形成してもよい。
【0037】
そして、耳部18の上下方向Zの両端部に、取付部材19を配設する。図示の例では、上側に位置する取付部材19は、谷折り部16における対向部16bに取付けられている。
このように製造された流体セル15をマット装置10として使用する際には、複数の流体セル15を、取付部材19を用いてマット装置10のカバーに取付けた状態で、給排気部12および制御部13を用いて流体セル15の内部に空気を充填する。
【0038】
ここで、空気が充填された状態において、端部のセル幅は、谷折り部16における谷折り線16dまでの深さの約2倍となっている。よって、谷折り部16の深さは、空気を充填した際の端部のセル幅に基づいて設定することができる。
また、流体セル15の耳部18に配設された取付部材19が取付けられる受け部材を、マット装置10のカバーに設ける際の前後方向Xの間隔(ピッチ)は、端部のセル幅と同等であることが好ましい。これにより、前後方向Xの流体セル15間の隙間を狭めることができ、使用者が複数の流体セル15の間に手をついた際に、手が流体セル15の間に形成された隙間に入るのを防ぐことができる。
以上より、谷折り部16の深さを、前記ピッチの半分の大きさにすることで、流体セル15間の隙間を効果的に狭めることができるといえる。
【0039】
次に、流体セル15の変形例について説明する。
図6(a)に示すように、第1変形例の流体セル25では、閉塞部25bが、上下方向Zの内側に向かうに従い漸次、左右方向Yの外側に向けて突となす曲線状に形成されている。このように閉塞部25bを形成することで、耳部18の上下方向Zの両端部に取付部材19を配設する部分を容易に確保することができる。この構成によれば、閉塞部25bが、上下方向Zに沿って延びる直線状に形成されている場合に比べて、耳部18を前後方向Xに折りたたんだときに、取付部材19が、流体セル25における前後方向Xの中央部付近に配置し易くすることができる。
また、閉塞部のその他の態様として、前後方向Xから見た平面視において、上方に向かうに従い漸次、左右方向Yの外側に向かう傾斜線や、前記平面視において、上方に向かうに従い漸次、左右方向Yの内側に向かう傾斜線をなすように形成してもよい。
【0040】
次に、
図6(b)に示すように、第2変形例の流体セル35では、耳部18に取付部材29として、上下方向Zに延びる面ファスナーが配設されている。面ファスナーは耳部18の上下方向Zのほぼ全域にわたって配設されている。このように取付部材29として面ファスナーを採用することで、スナップボタンが採用された構成と比べて、取付部材19の着脱作業を容易なものにできる。また、耳部18の広範囲にわたって面ファスナーを配設した場合には、取付部材29による取付強度を大きくすることができる。
また、取付部材のその他の態様として、耳部18に固定孔を設け、前後方向Xに複数配置された流体セル15の各固定孔に、所定間隔毎に節部が形成された固定紐を通貫させるような構成であってもよい。
【0041】
次に、
図7に示すように、第3変形例の流体セル15Aでは、谷折り部16に固定部17が形成されておらず、谷折り部16の内面16c同士が互いに固定されていない。このため、谷折り部16には、前後一対の内面16c同士が互いに前後方向Xに対向する対向部が形成されておらず、前後一対の内面16cは、谷折り凹部16aと一体となって、上方に向けて開口している。また、流体セル15Aでは、取付部材19は、耳部18の下側に1つ配設されている。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る流体セル15によれば、閉塞部15bが、軸方向に沿って谷折り部16が形成された位置に配設されている。このため、可撓筒15a内に流体を充填して膨張させた際に、可撓筒15aの軸方向の端部が、谷折り部16の内面同士が離間するように、可撓筒15aが挟み込まれる方向に広がろうとする。これにより、可撓筒15aの左右方向Yの端部に、上下方向Zの外側(上側)に向けて尖る角部が生ずることを抑えることができる。また、谷折り部16を形成した上で閉塞部15bの位置を調整すれば、可撓筒15aの左右方向Yの端部に前記角部が生ずることを抑えることが可能になるので、閉塞部15bの上下方向Zの端部に、平面視三角形状の耳部を、別途各別に形成する構成と比べて、工数を抑えて簡便に流体セル15を製造することができる。
【0043】
また、可撓筒15a内に流体を充填して膨張させた際に、固定部17に固定された谷折り部16の内面16c同士が互いに拘束される。したがって、可撓筒15aの軸方向の端部において、固定部17の周囲に位置する外周面を、可撓筒15aの径方向のうちの谷折り部16が折り込まれた一方向と直交する平坦面状に形成することができる。
また、閉塞部15bおよび固定部17を一体に形成することができるので、より一層簡便に流体セル15を製造することができる。
【0044】
また、可撓筒15aに耳部18が形成されているので、例えば、耳部18に、マット装置10に取付けるための取付部材19等を配設することができる。
また、耳部18が、前記一方向に沿って可撓筒15aの全域にわたって配置されている。このため、耳部18の面積を大きく確保することができ、例えば、耳部18に取付ける取付部材19の数量や形状等について自由度をもって選択することができる。
【0045】
また、耳部18に形成された取付部材19により、隣接する複数の流体セル15同士の相対変位が規制され、流体セル15の自立性を高めることができる。
また、可撓筒15aの内部が、谷折り部16が折り込まれた一方向に2つの充填室に区画されている。したがって、この可撓筒15aを前記一方向に自立させ易くすることができる。さらに、固定部17の周囲に位置する外周面を、前記一方向に直交する平坦状に形成することができるので、流体セル15上に横たわる使用者の使い心地を良好にすることができる。
【0046】
また、本実施形態に係るマット装置10によれば、流体セル15を有しているので、マット装置10において前述の各作用効果を奏功させることができる。
また、本実施形態に係る流体セル15の製造方法によれば、固定工程と閉塞工程とが同時に行われるので、工数を抑えて簡便に流体セル15を製造することができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、
図8および
図9を参照し、本発明に係る第2実施形態の流体セル45を説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図8および
図9に示すように、流体セル45は、前後方向Xに複数の流体セル45が互いに連結され、流体セルユニット50をなしている。図示の例では、3つの流体セル45が互いに連結されている。なお、連結される流体セル45の数量としては2つ又は4つ以上であってもよい。
【0048】
流体セル45の下部には、外周面から左右方向Yの全域にわたって前後方向Xに向けて延び、互いに隣接する流体セル15同士を連結する連結片40が配設されている。連結片40は、各流体セル45における可撓筒45aの外壁と一体に形成されている。このように、連結片40により複数の流体セル45を連結し、流体セルユニット50を形成することで、マット装置10において、流体セル45の取扱性を確保することができる。
【0049】
また本実施形態では、流体セル45の耳部48に、隣接する他の流体セル45に連結され、互いの相対変位を規制する規制部49が形成されている。規制部49は耳部48の左右方向Yの端部から、前後方向Xに向けて延びている。規制部49は左右方向Yから見て前後方向Xに長い矩形帯状に形成されている。
互いに隣接する流体セル15の耳部48に形成された規制部49同士が、互いに接続されている。図示の例では、耳部48には、上下方向Zの位置を異ならせて2つの規制部49が各別に形成されている。規制部49のうち、上方に位置するものは、耳部48の上端部に形成され、下方に位置するものは、上下方向Zの中央部に形成されている。規制部49同士は、図示しない係止部同士が係止し合うことで互いに接続される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る流体セル45によれば、耳部48に形成された規制部49により、隣接する複数の流体セル45同士の相対変位が規制され、流体セル45の自立性を高めることができる。
【0051】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、流体セルとして、内部に空気を充填した流体セル15を採用した構成について示したが、このような態様に限られず、内部に液体を充填した流体セルとしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては、閉塞部15bおよび固定部17が一体に形成された構成を示したが、このような態様に限られない。閉塞部および固定部は、別体に形成してもよく、例えば、固定部が、閉塞部よりも左右方向Yの内側に位置する他の形態を適宜採用することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、可撓筒15aに、閉塞部15bと上下方向Zの全域にわたって接続され、かつ左右方向Yの外側に向けて突出する耳部18が形成された構成を示したが、このような態様に限られない。耳部は、閉塞部と上下方向Zの全域にわたって接続されていなくてもよいし、耳部が可撓筒に形成されていなくてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、可撓筒15aには、可撓筒15aの内部を、上下方向Zに2つの充填室に区画する区画壁15cが設けられた構成を示したが、このような態様に限られない。区画壁は可撓筒の内部を上下方向Zと異なる方向に区画してもよいし、可撓筒には、区画壁が設けられなくてもよい。
【0055】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 マット装置
15、25、35、45 流体セル
15a 可撓筒
15b、25b 閉塞部
16 谷折り部
16c 内面
17 固定部
18、48 耳部
19、29 取付部材(規制部)
40 連結片
49 規制部