(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】気体圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20230424BHJP
F04C 28/24 20060101ALI20230424BHJP
F04C 28/28 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
F04B49/06 341A
F04C28/24
F04C28/28 C
(21)【出願番号】P 2021514842
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020013114
(87)【国際公開番号】W WO2020213353
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2019076771
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】森田 謙次
(72)【発明者】
【氏名】高野 正彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷 征和
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/130303(WO,A1)
【文献】特開2013-032728(JP,A)
【文献】実開昭57-025191(JP,U)
【文献】実開昭61-053581(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F04C 28/08
F04C 28/24
F04C 28/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を圧縮して圧縮気体を吐き出す圧縮機本体と、これに駆動力を供給する電動機と、前記電動機に所定の周波数電力を供給する電力変換装置と、吐出配管系統と連通する放気系統に配置して前記圧縮気体を大気圧環境に放出する放気弁と、制御装置とを有し、吐出圧力が所定圧力に達すると前記放気弁を開として前記圧縮機本体の負荷を軽減させるアンロード運転を行う気体圧縮機であって、
複数の前記放気系統を有し、該複数の放気系統毎に前記放気弁を配置し且つそれぞれの前記放気弁の下流側に開閉圧力が互いに異なる圧力調整弁を備え、
前記制御装置が、
前記放気弁のうち1つの放気弁を選択して、前記アンロード運転を行うものであ
り、且つ、
前記圧縮機本体が吐き出す圧縮気体の圧力に応じて、前記電力変換装置にP、PI又はPIDのいずれかの可変速制御指令及び一定速制御指令による両方の運転を選択的に可能とするものであり、
前記アンロード運転中に制御する前記放気弁が、前記可変速制御指令の運転及び一定速制御指令の運転毎に異なるものである気体圧縮機。
【請求項2】
請求項
1に記載の気体圧縮機であって、
前記気体圧縮機が給液式の圧縮機であり、前記圧縮機本体が吐き出す気液混合の圧縮気体から圧縮気体と液体を分離するとともに、分離した前記液体を前記圧縮機本体に還流する液体分離タンクを備えるものである気体圧縮機。
【請求項3】
請求項
1に記載の気体圧縮機であって、
前記圧縮機本体が、容積型又は遠心型である気体圧縮機。
【請求項4】
請求項
1に記載の気体圧縮機であって、
前記気体が空気である気体圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体圧縮機に係り、アンロード運転制御を行う気体圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
吸込み気体を圧縮する圧縮室に油や水といった液体を供給して圧縮気体を生成する気体圧縮機が知られている。以下、圧縮する気体を空気、供給する液体を油とした給油式の空気圧縮機を例として説明する。
【0003】
空気圧縮機の容量制御には、大きく二つの制御に分けることができる。一方は、吐出ライン圧力の圧力変動量により消費空気量を検出し、部分負荷時の消費動力を低減する圧力変動容量制御である。他方は、吐出ライン圧力を一定に保ち、消費空気量の増減に応じて圧縮機回転数を制御する定圧容量制御である。
【0004】
ここで、圧力変動容量制御はインバータを搭載しない空気圧縮機に用いられ、圧縮機本体の回転速度は一定である(以下、「一定速機」という場合がある。)。一定速機の容量制御には、圧縮機本体の吸気側に配置する吸込絞り弁の開度を調整する吸込絞り制御と、圧縮機本体の吐出側に配置する放気弁を開閉させる放気制御とがある。これらの一方或いは両方を用いるものが知られている。
【0005】
定圧容量制御では、圧縮機本体の回転数を増減させるため、インバータを搭載した圧縮機に用いられる(以下、「可変速機」という場合がある。)。この可変速機では、目標として設定された圧力に達するまでは、インバータによって高回転で運転し、当該設定圧力を上回ると、インバータによって回転数を低下させる可変速運転を行う制御となっている。例えば、ユーザ側の圧縮空気使用量が多く、ユーザ側吐出圧力が目標圧力より下回っていれば、定格上の最高回転数で運転し、やがてユーザ側の使用量が減少し、ユーザ側吐出圧力が目標圧力を上回ると、回転数を低下させて省エネを行うようになっている。回転数を変化させる制御としては、P、PI又はPID(Proportional、Integral、Differential)という吐出圧力に比例して回転数を変化させる制御方法が一般に知られている。そして、更に消費動力の低減を狙う手法として、このようなインバータによる回転数制御に加えて、吸込絞り弁制御や放気制御を併用する運転方法が知られている。
【0006】
例えば、特許文献1は、目標圧力(P0)を基調としてPID制御運転を行うが、ユーザ側の空気使用量が低下し、ユーザ側吐出圧力がP0に向かって昇圧するにつれて、P0を保つように回転数を低下させる制御を行う。このP0を保つ回転数から更にP0を超える上限圧(P1)にまで上昇すると、回転数が下限回転数の状態で、ユーザ側吐出口より上流側の圧縮空気を大気に放気する等して、圧縮機本体の負荷(電動機の負荷)を低下させ、動力をより低減させる運転方法を開示する。
【0007】
このように一定速機、可変速機の何れにおいても、油分離タンク内の圧縮空気の放気量を多くすれば、油分離タンク内部の圧力が低下するため、圧縮機本体に作用する負荷をより軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、給油式空気圧縮機の場合、油分離タンク内部の圧力を潤滑油の供給圧力として利用するものが多い。給油式圧縮機において、圧縮作動室に供給される油の作用は、圧縮気体の冷却作用、圧縮機構内部の圧縮漏れを防止するシール作用及び圧縮機構の内部摩擦を低減する潤滑作用等がある。例えば、圧縮機構がスクリュー形式であれば、潤滑油は、圧縮空気の冷却、ロータ同士或いはロータと圧縮機本体ケーシングのボア面のシールや潤滑を行う。そして、上記吸込絞り弁制御や放気制御の実行中も、ロータ同士やロータとボア面間の潤滑の為に、一定以上の潤滑油が圧縮作動室に供給される必要がある。よって、吸込絞り弁制御や放気制御の間も、十分な油を供給し続ける必要から、油分離タンク内部圧力を所定圧力以上に確保しなければならないが、放気量が多ければ当該所定圧力を確保できない虞がある。
【0010】
この点、放気経路上に特定の圧力に応じて開閉するオリフィス等を配置し、放気制御中も油分離タンク内部の圧力(制御圧力)を一定以上確保することもできるが、かかる油分離タンク内部の圧力は圧縮機毎に異なるため、それらの仕様に合ったオリフィスを適宜用意しなければならないという課題がある。
【0011】
更に、油分離タンク内部の圧力を確保する他の方法としては、放気制御中に電動機の回転数を増加させることでもできるが、動力増加の要因にもなる。
【0012】
また、インバータ制御の給油式空気圧縮機は、多くの場合可変速制御を実行するのが通常であるが、インバータからの出力周波数を一定にし、一定速機と同様な使用をすることも可能である。即ちインバータを搭載する給油式圧縮機で、P、PI、PIDといった可変速制御と、電動機の回転速度一定とした一定速制御という両方の運用を行うことも可能である。このような場合、可変速制御時と一定速制御時で、上記アンロード制御における油分離タンク内部圧力即ち制御圧力が同一でないこともあり、いずれかの場合には圧縮機本体供給する油が不足する虞もある。
気体圧縮機において、制御圧力を可変とすると共にアンロード制御時に適切な制御圧力を確保し得る技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を適用する。即ち、気体を圧縮して圧縮気体を吐き出す圧縮機本体と、これに駆動力を供給する電動機と、前記電動機に所定の周波数電力を供給する電力変換装置と、吐出配管系統と連通する放気系統に配置して前記圧縮気体を大気圧環境に放出する放気弁と、制御装置とを有し、吐出圧力が所定圧力に達すると前記吸込絞り弁を閉又は前記放気弁を開として前記圧縮機本体の負荷を軽減させるアンロード運転を行う気体圧縮機であって、複数の前記放気系統を有し、該複数の放気系統毎に前記放気弁を配置し且つそれぞれの前記放気弁の下流側に開閉圧力が互いに異なる圧力調整弁を備え、前記制御装置が、前記放気弁のうち1つの放気弁を選択して、前記アンロード運転を行うものであり、且つ、前記圧縮機本体が吐き出す圧縮気体の圧力に応じて、前記電力変換装置にP、PI又はPIDのいずれかの可変速制御指令及び一定速制御指令による両方の運転を選択的に可能とするものであり、前記アンロード運転中に制御する前記放気弁が、前記可変速制御指令の運転及び一定速制御指令の運転毎に異なるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、制御圧力を可変とすることができると共に適切な制御圧力を確保することができる。本発明の他の課題・構成・効果については以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来例の給油式空気圧縮機の構成を示す模式図である。
【
図2】従来例の一定速制御によるロード・アンロード制御の遷移を示す図である。
【
図3】従来例の可変速制御によるロード・アンロード制御の遷移を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1による給油式空気圧縮機の構成を示す模式図である。
【
図5】実施例1によるロード・アンロード制御の遷移を示す図である。
【
図6】本発明の実施例2による給油式空気圧縮機の構成を示す模式図である。
【
図7】実施例2によるロード・アンロード制御の遷移を示す図である。
【
図8】本発明の実施例3による給油式圧縮機の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
【0019】
まず、従来例を説明し、その後、本発明の実施形態について説明する。
図1に、従来の給油式空気圧縮機の構成を模式的に示す。給油式空気圧縮機200(以下、「圧縮機200」という場合がある。)は、インバータ5(電力変換装置)からの電力の供給を受けた電動機4によって圧縮機本体3が駆動すると、吸込絞り弁2を介して、大気空気が圧縮機本体に吸い込まれる。吸い込まれた大気空気は、圧縮機本体3の圧縮作用により昇圧され、圧縮機本体3の吐出口から所定圧力の圧縮空気が吐き出される。ここで、圧縮機本体3の圧縮室には、圧縮吸気の冷却、空気漏れ防止のシール及び部材同士の潤滑のために潤滑油が供給され、圧縮機本体3からは気液混合の圧縮空気が吐き出されるようになっている。
【0020】
圧縮機本体3からの圧縮空気は、油分離タンク6(液体分離タンク)へと流入し、圧縮空気と潤滑油が分離される。油分離タンク6で分離された圧縮空気は、アフタクーラ8で冷却された後、ユーザ使用設備へと送り込まれる。
【0021】
他方、油分離タンク6で分離された潤滑油は、その油温が温度調整弁12の閾値よりも低い場合は、温度調整弁12からオイルフィルタ14を経由し、圧縮機本体3へと潤滑油を給油する。油温が閾値よりも高い場合は、温度調整弁12からオイルクーラ13側に流れ、所定の温度範囲になるよう潤滑油を冷却し、オイルフィルタ14を経て、圧縮機本体3に潤滑油を給油するようになっている。油分離タンク6で分離された油を再度圧縮機本体に循環させる圧力は、圧縮機本体3の吐出空気圧力となる。即ち油分離タンク6の内部圧力によって、潤滑油が圧送されるようになっている。
【0022】
油分離タンク6の空気系統下流には、圧縮機本体3の吸込み側に分岐する分岐配管が配置し、その管路上に放気弁10を備える。放気弁10は制御装置15からの指令に応じて開閉を行う弁体である。放気弁10が開のとき、油分離タンク6内部の空気(逆止弁7よりも上流側の空気)が圧縮機本体3の吸込み側に放気されるようになっている。これによって電動機の負荷が軽減され省エネが実現される。
【0023】
アフタクーラ8の下流側配管には、圧力センサ9が配置する。圧力センサ9は圧縮機200の吐出空気圧力を検出し、その結果を制御装置15に出力する。制御装置15は、吐出空気圧力値を監視し、インバータ5に周波数指令値を出力したり、放気弁10の開閉等の全体制御を行う。
【0024】
なお、
図1ではインバータ5を搭載した可変速機を示すが、一定速機の構成は、
図1においてインバータ5が無い点及び制御装置が一定速回転の電力供給を電動機4に行うようにする点以外は、ほぼ同様の構成である。
【0025】
次いで、従来例の一定速制御、可変速制御による「アンロード制御」の遷移について説明する。
【0026】
図2に、一定速制御時の「アンロード制御」による時系列変化を示す。吐出ライン圧力がPU(上限圧力)に達すると、制御装置15は、吸込絞り弁2を閉、放気弁10を開として油分離タンク6内の圧力を放気弁10から放気させ、放気弁制御を開始する。吐出ライン圧力がPL(下限圧力)に低下するまでは、油分離タンク6内の圧力は放気を続けるが、オリフィス(圧力調整弁)11が閉塞することで、油分離タンク内圧PTL(アンロード安定圧力)で安定する。
【0027】
吐出ライン圧が圧力PL(下限圧力/ロード復帰圧力)まで低下すると、制御装置15は、吸込絞り弁2を開、放気弁10を閉とする。これにより油分離タンク6内の圧力が昇圧し、吐出ライン圧力が昇圧する。なお、電動機4の回転数はNFであり常に一定である。
【0028】
図3に、従来例の可変速制御(PID制御とする)による「アンロード制御」による時系列変化を示す。
【0029】
吐出ライン圧力が圧力PC(目標圧力)に到達すると、圧力PCで安定するように、P、PI、PIDによりインバータ5の出力周波数を変化させ電動機4の回転数を増減させる(
図3中では、減速中として図示する)。電動機4の回転数が下限回転数NV1まで低下しても圧縮空気の消費量が減少すれば吐出ライン圧は徐々に増加し、やがて圧力PUに達する。圧力PUに到達すると、一定速制御と同様に、油分離タンク6内圧を放気弁10から放気して減圧させる。
【0030】
図2、
図3に示すように、一定速制御と可変速制御では、電動機の回転数が異なるものの「アンロード制御」開始後に、油分離タンク6内圧を放気させる動作は同じである。
【実施例1】
【0031】
以上の従来例を踏まえ、本発明の実施例1を説明する。
【0032】
図4に、本発明を適用した実施例1による給油式空気圧縮機100(以下、「圧縮機100」という場合がある。)。の構成を示す。なお、本実施例では、圧縮気体を空気、圧縮室に供給する液体を油として説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、圧縮媒体が他の気体であってもよいし、圧縮室に供給する液体も水等の他の液体でもよい。
【0033】
圧縮機100は、圧縮機本体3、電動機4、インバータ5、油分離タンク6、アフタクーラ8、オイルクーラ13及び制御装置15を備え、これらを筐体内に格納するパッケージ型の圧縮機である。
【0034】
圧縮機本体3は、互いに回転する雄雌のスクリューロータの噛み合いによって圧縮空気を生成する容積型のスクリュー圧縮機本体である。なお、本発明は他の容積型圧縮機や回転型の圧縮機を適用することもできる。また、シングルスクリューロータ形式や3以上のスクリューロータを使用するものであってもよく又圧縮機本体が複数台からなる多段圧縮機本体であってもよい。
【0035】
インバータ5は、電源17から電力の供給を受け、これを制御装置15からの周波数指令値に応じて所定の周波数に変換した電力を電動機4に供給する。電動機4は種々の形式の電動機を適用することができる。電動機4の出力軸側は、圧縮機本体3のスクリューロータと直接的或いはギアやベルト等を介して間接的に接続し、圧縮機本体3に駆動力を供給する。
【0036】
油分離タンク6は、圧縮機本体3から吐き出された気液混合(油と空気)の圧縮空気から油と水を衝突分離、旋回分離或いはこれら両方によって分離する分離器である。分離された圧縮空気は、吐出配管系統に流れ、油分離タンク6から下流側への流れを許可する逆止弁7及び空冷式或いは液冷式のアフタクーラ8を介して圧縮空気の使用側(ユーザ側)に供給されるようになっている。
【0037】
制御装置15は、演算装置とプログラムの協働によって種々の機能部を構成し、圧縮機100の全体制御を行う。制御装置15は、一部又は全部がアナログ制御回路から構成するものであってもよい。圧縮機100は、油分離タンク6で分離された油を圧縮機本体3に還流する油配管系統を有する。油分離タンク6で空気と分離された油は、油分離タンク6の内部圧力によって圧縮機本体3に還流されるようになっている。油配管系統は、温度調整弁12、オイルクーラ13、オイルフィルタ14を備える。温度調整弁12は温度検出機能を有する電磁三方弁であり、油分離タンク6から流れる油の温度が所定温度以上の場合にオイルクーラ13側への出口を開、所定温度未満のときにオイルクーラ13をバイパスする側の出口を開とすることで油が流れる管路を切り替え、油温を所定温度範囲内に管理するようになっている。
【0038】
また、圧縮機100は、圧縮機本体3の吸込み側に吸込絞り弁2を備える。吸込絞り弁2は、圧縮機本体3の吸気路から流入する空気量を調節する機械式又は電磁式の弁体である。例えば、後述する「アンロード制御」において、吸込絞り弁2が閉又はその開度を小とするようになっている。吸込絞り弁2が機械式の場合には、油分離タンク6(逆止弁7の上流側)の内圧を制御圧力として利用する。即ち制御配管(不図示)を介して弁体の開閉制御を内圧によって行う。
【0039】
また、圧縮機100は、油分離タンク6の下流側の吐出配管系統に圧力センサ9を備える。圧力センサ9は、逆止弁7の下流側に配置して圧縮空気の圧力を検出し、検出結果を制御装置15に出力するようになっている。制御装置15は、圧力センサ9からの入力圧力と、(ユーザが選択或いは初期値として保持する)設定圧力とを比較し、インバータ5に出力する周波数指令を決定するようになっている。本実施例では、PID制御によって圧縮機本体3を駆動させるものとして説明する。
【0040】
また、圧縮機100は、油分離タンク6の下流側に放気配管系統を備え、放気配管系統上に放気弁10Aを備える。放気配管系統は、空気の流れや圧力面で吐出配管系統と連通するが、放気弁10Aの開閉によって外部への圧縮空気の流れを制御するようになっている。放気弁10Aは、油分離タンク6の下流側且つ逆止弁7よりも上流側に配置する放気配管上に配置する。放気配管系統は、油分離タンク6の吐出配管側と、圧縮機本体の吸込み側(より詳細には吸込フィルタ1の下流側)とを接続する配管である。放気弁10Aは、後述する「アンロード制御」において、制御装置15からの指令に応じて開閉し、逆止弁7よりも上流側の圧縮空気を大気(吸込絞り弁2の一次側)に解放するようになっている。
【0041】
そして、圧縮機100は、電源17とインバータ5の間の電流値を検出する電流値検出器18を備える。電流値検出器18は、後述する「アンロード制御」において、圧縮機本体の制御圧力を管理する際の電流値を検出し、これを制御装置15に出力するようになっている。また、制御装置15は、電流値と圧力と関係を示す相関情報を予め記憶する。相関情報とは、圧縮機本体3にかかる負荷に対応する電流値の情報である。例えば、圧縮機本体3にかかる負荷(圧力)が0.3MPhのときに電流値がIL2、圧力が0.25MPhのときに、電流値がそれよりも低いIL1といった具合に、制御装置15が、電流値の入力から、油分離タンク6の内圧(逆止弁7の上流側の圧力)を判定できるようになっている。
【0042】
以上の構成を有する圧縮機100の「アンロード制御」について説明する。本実施例において、「アンロード制御」とは圧力センサ9の検出圧力が、圧縮空気の消費量が減少することによって目標圧力PCよりも高い上限圧力PUに達した場合に、吸込絞り弁2を閉(吸込絞り制御)、放気弁10Aを開(放気制御)とし、圧縮機本体3の負荷を軽減することで消費動力を削減する制御方法である。なお、「アンロード制御」時には、電動機4の回転数は最低回転数の状態となる。
【0043】
また、本実施例の特徴の一つとして、「アンロード制御」時に、圧縮機本体3に係る負荷の変動状況を電流値検出器18が検出する電流値から管理する点が上げられる。即ち圧縮機本体3の負荷が増加すると入力電流量が上昇し、負荷が軽減されると下降する。本実施例では電流値を監視することで、「アンロード制御」において圧縮機100の制御圧力を管理するようになっている。
【0044】
図5に、実施例1による「アンロード制御」の時系列変化を示す。本図において、最上段は、吸込絞り弁2の開閉及び放気弁10Aの開閉遷移を示し、2段目は、圧力センサ9が検出する吐出ライン圧力の遷移を示し、3段目は、電流値検出器18が検出するINV(インバータ)入力電流の遷移を示し、4段目は、電動機4の回転数(インバータ5の出力周波数に相当)を示す。また、2段目の吐出ライン圧力において、圧力PCが目標圧力(設定圧力)、圧力PUが「アンロード制御」を開始する上限圧力を示し、圧力PLがアンロード制御から「ロード制御」に復帰する下限圧力を示す。
【0045】
圧縮機の起動後、制御装置15は、インバータ5に指令を出力し、電動機4を所定の増速レートに基づいて定格上の全速回転で運転させる。これにより圧縮機本体3の吐出圧力が目標圧力PCに向かって昇圧を開始する。このとき、吸込絞り弁2は開、放気弁10Aは閉、INV入力電流値はITCである。
【0046】
時間T1で、吐出ライン圧力がPCに達すると、制御装置15は、圧力センサ9の出力値に基づいてPID制御により圧力PCを維持するように、インバータ5に周波数指令値を出力する。これにより吐出ライン圧力は圧力PCを基調として維持される。
【0047】
時間T1からT2において、圧縮空気の消費量が徐々に減少することで、インバータ5が出力する周波数が低下し、電動機4の回転数が、例えば最低回転数であるNV1まで低下する。
【0048】
時間T2において、電動機4の回転数が下限回転数である最低回転数NV1のとき、更に、圧縮空気の消費量が減少すると、吐出ライン圧力は昇圧を開始する。この負荷の増加によりインバータ入力電流値は高くなり、ITUまで上昇する。
【0049】
時間T3において、吐出ライン圧力が上限圧力PUに達すると、制御装置15は「アンロード」運転を開始する。即ち吸込絞り弁2を閉として吸い込み空気量を制限し又放気弁10Aを開として油分離タンク6(逆止弁7より下流側)の圧縮空気を大気圧環境に放気する。これにより油分離タンク6の内部圧力が急速に降圧し、圧縮機本体3の負荷が軽減され、消費動力の軽減を図ることができる。
【0050】
ここで、上述のように圧縮機本体3から吐き出された圧縮空気による圧力は、圧縮機100の制御圧力(分離油を圧縮機本体3に還流するための動力や、吸込絞り弁2の開閉動力等)として機能する。そこで、所定の制御圧力を確保するため、本実施例では、吸込み量の制限や圧縮空気の放気を電流値検出器18が検出する電流値が所定の閾値を下回るか否かによって管理するようになっている。
【0051】
具体的には、時間T4で、INV入力電流値が電流閾値IL1まで低下すると、制御装置15は、吸込絞り弁2を開、放気弁10Aを閉とし、油分離タンク内部圧力を昇圧させ、制御圧力を維持するようになっている。
【0052】
その後、油分離タンク内部圧力が上昇し、INV入力電流値が電流閾値IL1より高いIL2まで上昇すると、時間T5で吸込絞り弁2を閉、放気弁10Aを開とし、油分離タンク内部圧力を再度降圧させ、時間T6でINV入力電流値が再度IL1に低下すると、再び吸込絞り弁2を開、放気弁10Aを閉とし、油分離タンク内部圧力を昇圧させる。即ち圧縮機100は、INV入力電流値を監視することで「アンロード制御」において、制御圧力を確保するようになっている。
【0053】
その後、時間T7で、吐出ライン圧力が下限圧力PLまで降圧すると、制御装置15は「アンロード制御」から「ロード制御」に切り替える。即ち吸込絞り弁2を開、放気弁10Aを閉の状態(既にその状態にあるときに下限圧力PLに降圧した場合には、現状維持の状態)とし、インバータ5に定格での全速運転での周波数指令値を出力する。これにより吐出ライン圧力は、目標圧力PCに向かって昇圧を開始する。
【0054】
このように、本実施例によれば、「アンロード制御」において、制御圧力を確保するように油分離タンク内圧を管理することができる。
【0055】
また、INV入力電流値の上限電流値IL2と、下限電流値IL1とを変更することで、圧縮機100の種々の仕様や使用態様に応じて、任意の制御圧力を容易に設定することができ、また確実に制御圧力を確保することができる。
【0056】
なお、本実施例では、PIDによる可変速制御による圧縮機を例としたが、インバータ5を使用した一定速制御による圧縮機であっても本発明を適用することができる。即ち
図2の従来例による一定速制御を用いて説明すれば、吐出ライン圧力が上限圧力PUとなり、吸込絞り弁2を閉、放気弁10Aを開として「アンロード運転(電動機回転数は一定)」の実行中に、INV入力電流値が所定の制御圧力に対応する下限電流値(IL1)となった場合に、吸込絞り弁2を開、放気弁10Aを開とし、その後、INV入力電流値がIL2を検出したときに、吸込絞り弁2を閉、放気弁10Aを開とするように制御する。これにより一定速制御であっても所望の制御圧力を確保することができる。
【0057】
また、本実施例では、吸込絞り弁2と放気弁10Aの両方を作動(開閉)するようにしたが、吸込絞り弁2及び放気弁10Aのいずれか一方のみを開閉するようにすることでも本発明の効果を得ることができる。
【0058】
また、実施例では、圧縮機100が一定速制御又は可変速制御として選択的に使用する場合にもINV入力電流値の上限電流値と下限電流値を同様として説明したが、一定速制御と可変速制御で上限電流値と下限電流値を異なる値にすることも可能である。例えば、圧力とINV入力電流の相関を示す情報を制御装置15に複数備え、一定速制御時と、可変速制御時とで、複数の相関情報のいずれかを選択するようにすることもできる。
【実施例2】
【0059】
次いで、本発明の実施例2について説明する。実施例1は、「アンロード制御」において、電流値検出器18が検出する電流値に基づいて、所望する制御圧力を確保したが、実施例2は、油分離タンク6の内部圧力(逆止弁7の上流側)を検出する圧力センサの検出圧力を用いて「アンロード制御」の制御圧力を確保する点を特徴の一つとする。
【0060】
図6に、実施例2による圧縮機100の構成を示す。なお、実施例1と同様の要素は同一符号を用いるものとし、詳細な説明を省略する場合がある。
【0061】
圧縮機100は、油分離タンク6の吐出配管系統上且つ逆止弁7の上流側の位置に圧力センサ19を備える。なお、圧力センサ19の位置はこれに限定するものではなく、逆止弁7の上流側且つ圧縮機本体3の吐出側のいずれかの位置であっても本発明を実施することはできる。
【0062】
また、制御装置15は、「アンロード制御」中の圧力閾値として下限圧力PTL1とそれよりも高い上限圧力PTL2を記憶する。PTL1及びPTL2は、吐出ライン圧力PU、目標圧力PC、下限圧力PLよりも低い圧力である。
【0063】
図7に、実施例2による「アンロード制御」の時系列変化を示す。実施例1と同様に、時間T3において、吐出ライン圧力が上限圧力PUに達すると、制御装置15は「アンロード」運転を開始する。油分離タンク6の内部圧力は急速に降圧し、圧縮機本体3の負荷が軽減される。
【0064】
時間T4で、油分離タンク内圧が下限圧力PTL1まで低下すると、制御装置15は、吸込絞り弁2を開、放気弁10Aを閉とし、油分離タンク内部圧力を昇圧させ、制御圧力を維持する。
【0065】
その後、油分離タンク内部圧力が上昇し、油分離タンクPTL2まで上昇すると、時間T5で吸込絞り弁2を閉、放気弁10Aを開とし、油分離タンク内部圧力を再度降圧させ、時間T6で油分離タンク内圧が再度PTL1に低下すると、再び吸込絞り弁2を開、放気弁10Aを閉とし、油分離タンク内部圧力を昇圧させる。即ち圧縮機100は、油分離タンク内圧を監視することで「アンロード制御」において、制御圧力を確保するようになっている。
【0066】
このように、本実施例によれば、「アンロード制御」において、制御圧力を確保するように油分離タンク内圧を管理することができる。
【0067】
また、INV入力電流値の上限圧力PTL2と、下限圧力PTL1とを変更することで、圧縮機100の種々の仕様や使用態様に対して、任意の制御圧力を容易に設定することができ、また確実に制御圧力を確保することができる。
【0068】
なお、本実施例では可変速制御による圧縮機を例としたが、実施例1と同様に、インバータ5を使用した一定速制御による圧縮機であっても本発明を適用することができる。即ち
図2の従来例による一定速制御を用いて説明すれば、吐出ライン圧力が上限圧力PUとなり、吸込絞り弁2を閉、放気弁10Aを開として「アンロード運転(電動機回転数は一定)」の実行中に、油分離タンク内圧が下限圧力PTL1となった場合に、吸込絞り弁2を開、放気弁10Aを閉とし、その後、油分離内圧PTL2を検出したときに、吸込絞り弁2を閉、放気弁10Aを開とするように制御する。これにより一定速制御であっても所望の制御圧力を確保することができる。
【0069】
また、本実施例も実施例1と同様に、吸込絞り弁2及び放気弁10Aのいずれか一方のみを開閉するようにすることでも本発明の効果を得ることができる。
【0070】
また、本実施例も実施例1と同様に、一定速制御と可変速制御を切り替えて使用する際に、一定速制御と可変速制御で油分離タンク内圧の上限圧力と下限圧力を異なる値として制御装置15に記憶し、いずれかを選択するようにしてもよい。
【実施例3】
【0071】
次いで、本発明の実施例3について説明する。実施例1及び2は、電流値検出器18や圧力センサ19の出力値を監視することで「アンロード制御」中の制御圧力の管理を行ったが、実施例3は、放気量の異なる2以上の放気弁及び放気配管系を備え、これを選択的に使用可能とする点が異なる。
【0072】
実施例1及び2でも述べたが、インバータを用いた制御は一定速も可変速(P,PI、PID)も可能である。これら両者の「アンロード制御」において、確保する制御圧力が同一とならない場合もある。或いは同じ一定速や可変速制御でも制御圧力を可変とする場合も考えられる。そこで、実施例3では、異なる制御圧力の維持を実現し得る点を特徴の一つとする。
【0073】
以下、図面を用いて実施例3を説明する。なお、上記実施例と同様の要素は同一符号を用いるものとし、詳細な説明を省略する場合がある。
【0074】
図8に、実施例3による圧縮機100の構成を示す。圧縮機100は、油分離タンク6の下流側にある放気配管系統を2つ備え、それぞれの配管系統に、放気弁10A及びオリフィス(圧力調整弁)11Aと、放気弁10Bとオリフィス(圧力調整弁)11Bとを備える。
【0075】
放気弁10Aを備える放気配管系統が可変速制御用の放気系統であり、放気弁10Bを備える放気配管系統が一定速制御用の放気系統である。制御装置15は、可変速制御時の「アンロード制御」では放気弁10Aのみの開閉を行い、一定速制御時の「アンロード制御」では放気弁10Bのみの開閉を行う。
【0076】
オリフィス11A及び11Bはバネ等を利用する機械式の開閉弁であり、所定圧力以上で開、所定圧力未満で閉となる弁体である。本例ではオリフィス11Aと、オリフィス11Bとで開(及び閉)となる圧力が異なる(例えば、オリフィス11Aが開閉する圧力がオリフィス11Bより高い)。例えば、可変速制御の場合、「アンロード制御」においてオリフィス11Aが閉となることで、所望する制御圧力を維持することができる。
【0077】
以上、本発明を実施するための実施例について説明したが、本発明は上記種々の例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更や他の実施例の置換等が可能である。
【0078】
例えば、上記例では吸込絞り弁2と、放気弁10A・10Bを備える構成としたが、吸込絞り弁又は放気弁のみを備える圧縮機であっても本発明を適用できる。
【0079】
また、圧縮機本体としてスクリュー型を例としたが、他の容積型圧縮機(回転式や往復動式等)や遠心型圧縮機であっても本発明を適用できる。
【0080】
また、上記例の可変速制御(
図5、
図7等)では、吐出ライン圧力が上限圧力PUとなった時に「アンロード制御」を開始し、その後、目標圧力PCよりも低圧の下限圧力PLとなった時に「ロード制御」に切り替えるものとして説明したが、下限圧力PLの圧力は任意であり、目標圧力PC以上から上限圧力PU未満の設定としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…吸込フィルタ、2…吸込絞り弁、3…圧縮機本体、4…電動機、5…インバータ、6…油分離タンク、7…逆止弁、8…アフタクーラ、9…圧力センサ、10A・10B…放気弁、11・11A・11B…オリフィス、12…温度調整弁、13…オイルクーラ、14…オイルフィルタ、15…制御装置、17…電源、18…電流値検出器、19…圧力センサ、100・200…圧縮機(給油式空気圧縮機)