(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】香味吸引器
(51)【国際特許分類】
A24F 40/40 20200101AFI20230424BHJP
【FI】
A24F40/40
(21)【出願番号】P 2021529578
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2019026163
(87)【国際公開番号】W WO2021001902
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】井上 康信
(72)【発明者】
【氏名】隅井 干城
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-533932(JP,A)
【文献】特表2018-522551(JP,A)
【文献】特表2019-505192(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055761(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/115475(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0029319(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
香味吸引器であって、
香味源受入口と、
前記香味源受入口から挿入された香味源を加熱するための加熱チャンバと、
第1空気インレットと、
前記第1空気インレットから前記加熱チャンバの延在方向に離間する第2空気インレットと、
前記加熱チャンバの前記香味源受入口とは反対側の端部に接続される曲管と、を有し、
前記曲管は、前記加熱チャンバに接続される第1端部と、前記第1端部と反対側の開口端部とを有し、
前記香味吸引器は、前記第1空気インレットと前記曲管の前記開口端部を通過する第1空気流路と、前記第2空気インレットと前記曲管の前記開口端部を通過する第2空気流路と、を有する、香味吸引器。
【請求項2】
請求項1に記載された香味吸引器において、
前記第1空気インレットは、前記第2空気インレットよりも前記香味源受入口に対して遠位側に設けられる、香味吸引器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された香味吸引器において、
前記第1空気流路と前記第2空気流路は、合流するように構成される、香味吸引器。
【請求項4】
請求項3に記載された香味吸引器において、
前記第1空気流路は、前記第1空気インレットと前記加熱チャンバとを連通し、
前記第2空気流路は、前記第2空気インレットと前記加熱チャンバとを連通し、
前記第1空気流路と前記第2空気流路は、前記加熱チャンバと前記第1空気インレット及び前記第2空気インレットとの間で、合流するように構成される、香味吸引器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載された香味吸引器において、
前記香味源受入口及び前記第1空気インレットを備えたハウジングを有し、
前記第1空気インレットは、前記加熱チャンバの長手方向に対して角度を有する前記ハウジングの表面に形成される、香味吸引器。
【請求項6】
請求項
1に記載された香味吸引器において、
前記曲管は、L字状に形成され、
前記
開口端部は、前記加熱チャンバの長手方向に対して略直交する方向に開
口し、
前記香味吸引器は、前記開口端部の少なくとも一部を開閉可能に覆う蓋を有する、香味吸引器。
【請求項7】
請求項
1に記載された香味吸引器において、
前記香味吸引器は、前記第1空気流路と前記第2空気流路とが合流する空間と、前記空間の少なくとも一部を開閉可能に覆う蓋を有する、香味吸引器。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載された香味吸引器において、
前記香味源は、たばこである、香味吸引器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味吸引器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料の燃焼をすることなく香味等を吸引するための香味吸引器が知られている。このような香味吸引器として、例えば、揮発成分を含むたばこから成る喫煙材を加熱することでエアロゾルを形成する、喫煙材加熱装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された喫煙材加熱装置では、喫煙材を収容する第1開口部と、第1開口部の反対側に位置する第2開口部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新たな構造を有する香味吸引器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態によれば、香味吸引器が提供される。この香味吸引器は、香味源受入口と、前記香味源受入口から挿入された香味源を加熱するための加熱チャンバと、第1空気インレットと、前記第1空気インレットから前記加熱チャンバの延在方向に離間する第2空気インレットと、を有する。
【0006】
本発明の他の一形態によれば、香味吸引器が提供される。この香味吸引器は、香味源受入口と、前記香味源受入口から挿入された香味源を加熱するための加熱チャンバと、前記加熱チャンバの前記香味源受入口とは反対側の端部に接続される第1端部を有する管状部材と、前記管状部材と連通する第1空気インレットと、前記加熱チャンバの作用により生じる固体又は液体が、前記管状部材から前記第1空気インレットに到達することを抑制する抑制部材を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本実施形態に係る香味吸引器の全体斜視図である。
【
図1B】香味発生物品を保持した状態の本実施形態に係る香味吸引器の全体斜視図である。
【
図3】
図1Aに示した矢視3-3における断面図である。
【
図4】曲管の第2端部近傍の拡大斜視図である。である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0009】
図1Aは、本実施形態に係る香味吸引器の全体斜視図である。
図1Bは、香味発生物品を保持した状態の本実施形態に係る香味吸引器の全体斜視図である。本実施形態に係る香味吸引器10は、例えば、エアロゾル源を含んだ香味源を有する香味発生物品110を加熱することで、香味を含むエアロゾルを生成するように構成される。
【0010】
図1A及び
図1Bに示すように、香味吸引器10は、トップハウジング11Aと、ボトムハウジング11Bと、カバー12と、スイッチ13と、蓋部14と、第2空気インレット15と、キャップ16と、を有する。トップハウジング11Aとボトムハウジング11Bとは、互いに接続されることで、香味吸引器10の最外のアウタハウジング11を構成する。アウタハウジング11は、使用者の手に収まるようなサイズである。使用者が香味吸引器10を使用する際は、香味吸引器10を手で保持して、香味を吸引することができる。
【0011】
トップハウジング11Aは、図示しない開口を有する。カバー12は、当該開口を閉じるようにトップハウジング11Aに結合され、ハウジングの一部を構成し得る。
図1Bに示すように、カバー12は、香味発生物品110を挿入可能な開口12aを有する。蓋部14は、カバー12の開口12aを開閉するように構成される。具体的には、蓋部14は、カバー12に取り付けられ、開口12aを閉鎖する第1位置と開口12aを開放する第2位置との間を、カバー12の表面に沿って移動可能に構成される。これにより、蓋部14は、香味吸引器10の内部への香味発生物品110のアクセスを許可又は制限することができる。
【0012】
スイッチ13は、香味吸引器10の作動のオンとオフとを切り替えるために使用される。例えば、使用者は、
図1Bに示すように香味発生物品110を開口12aに挿入した状態でスイッチ13を操作することで、図示しない加熱部材に図示しない電源から電力が供給され、香味発生物品110を燃焼させずに加熱することができる。香味発生物品110が加熱されると、使用者は、香味発生物品110の香味吸引器10から突出した部分(
図1Bにおいて図示された部分)を吸引することで、香味を吸引することができる。
【0013】
第2空気インレット15は、アウタハウジング11の内部空間に格納される加熱アセンブリ41(
図3参照)の内部に空気を導入するための通気口である。キャップ16は、ボトムハウジング11Bに着脱自在に構成されている。キャップ16がボトムハウジング11Bに取り付けられることで、ボトムハウジング11Bとキャップ16との間に第2空気インレット15が形成される。キャップ16は、例えば図示しない貫通孔又は切欠き等を有し得る。なお、本明細書において、香味吸引器10の長手方向とは、香味発生物品110が開口12aに挿入される方向をいう。また、本明細書の香味吸引器10において、空気等の流体が流入する側(例えば、第2空気インレット15側)を上流側とし、流体が流出する側(例えば開口12a側)を下流側とする。
【0014】
次に、本実施形態に係る香味吸引器10に使用される香味発生物品110の構成について説明する。
図2は、香味発生物品110の断面図である。
図2に示す実施形態においては、香味発生物品110は、充填物111と、充填物111を巻装する第1の巻紙112と、を含む基材部110Aと、基材部110Aとは反対側の端部を形成する吸口部110Bと、を有する。基材部110Aと吸口部110Bとは、第1の巻紙112とは異なる第2の巻紙113によって連結されている。ただし、第2の巻紙113を省略し、第1の巻紙112を用いて基材部110Aと吸口部110Bとを連結することもできる。
【0015】
図2中の吸口部110Bは、紙管部114と、フィルタ部115と、紙管部114とフィルタ部115との間に配置された中空セグメント部116と、を有する。中空セグメント部116は、例えば、1つ又は複数の中空チャネルを有する充填層と、充填層を覆うプラグラッパーとで構成される。充填層は、繊維の充填密度が高いため、吸引時、空気やエアロゾルは、中空チャネルのみを流れることになり、充填層内はほとんど流れない。香味発生物品110において、フィルタ部115でのエアロゾル成分の濾過による減少を少なくしたいときに、フィルタ部115の長さを短くして中空セグメント部116で置き換えることは、エアロゾルのデリバリ量を増大させるために有効である。
【0016】
図2中の吸口部110Bは、3つのセグメントから構成されているが、本実施形態において、吸口部110Bは、1つ又は2つのセグメントから構成されていてもよいし、4つ又はそれ以上のセグメントから構成されていてもよい。例えば、中空セグメント部116を省略し、紙管部114とフィルタ部115とを互いに隣接配置して吸口部110Bを形成することもできる。
【0017】
図2に示す実施形態において、香味発生物品110の長手方向の長さは、40mm~90mmであることが好ましく、50mm~75mmであることがより好ましく、50mm~60mmであることがさらに好ましい。香味発生物品110の円周は、15mm~25mmであることが好ましく、17mm~24mmであることがより好ましく、20mm~23mmであることがさらに好ましい。また、香味発生物品110における基材部110Aの長さは20mm、第1の巻紙112の長さは20mm、中空セグメント部116の長さは8mm、フィルタ部115の長さは7mmであってよいが、これら個々のセグメントの長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。
【0018】
本実施形態において、香味発生物品110の充填物111は、所定温度で加熱されてエアロゾルを発生するエアロゾル源を含有し得る。エアロゾル源の種類は、特に限定されず、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質及び/又はそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル源として、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、及びこれらの混合物を挙げることができる。充填物111中のエアロゾル源の含有量は、特に限定されず、十分にエアロゾルを発生するとともに、良好な香喫味の付与の観点から、通常5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、また、通常50重量%以下であり、好ましくは20重量%以下である。
【0019】
本実施形態における香味発生物品110の充填物111は、香味源としてたばこ刻みを含有し得る。たばこ刻みの材料は特に限定されず、ラミナや中骨等の公知のものを用いることができる。香味発生物品110における充填物111の含有量の範囲は、円周22mm、長さ20mmの場合、例えば、200mg~400mgであり、250mg~320mgであることが好ましい。充填物111の水分含有量は、例えば、8重量%~18重量%であり、10重量%~16重量%であることが好ましい。このような水分含有量であると、巻染みの発生を抑制し、基材部110Aの製造時の巻上適性を良好にする。充填物111として用いるたばこ刻みの大きさやその調製法については特に制限はない。例えば、乾燥したたばこ葉を、幅0.8mm~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20μm~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8mm~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。さらに、上記のシート加工したものについて刻まずにギャザー加工したものを充填物111として用いてもよい。また、充填物111は、1種又は2種以上の香料を含んでいてもよい。当該香料の種類は特に限定されないが、良好な喫味の付与の観点から、好ましくはメンソールである。
【0020】
本実施形態において、香味発生物品110の第1の巻紙112及び第2の巻紙113は、坪量が例えば20gsm~65gsmであり、好ましくは25gsm~45gsmである原紙から作られることができる。第1の巻紙112及び第2の巻紙113の厚みは、特に限定されないが、剛性、通気性、及び製紙時の調整の容易性の観点から、10μm~100μmであり、好ましくは20μm~75μmであり、より好ましくは30μm~50μmである。
【0021】
本実施形態において、香味発生物品110の第1の巻紙112及び第2の巻紙113には、填料が含まれ得る。填料の含有量は、第1の巻紙112及び第2の巻紙113の全重量に対して10重量%~60重量%を挙げることができ、15重量%~45重量%であることが好ましい。本実施形態において、好ましい坪量の範囲(25gsm~45gsm)に対して、填料が15重量%~45重量%であることが好ましい。填料としては、例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カオリン等を使用することができる。このような填料を含む紙は、香味発生物品110の巻紙として利用する外観上の観点から好ましい白色系の明るい色を呈し、恒久的に白さを保つことができる。そのような填料を多く含有させることで、例えば、巻紙のISO白色度を83%以上にすることができる。また、香味発生物品110の巻紙として利用する実用上の観点から、第1の巻紙112及び第2の巻紙113は、8N/15mm以上の引張強度を有することが好ましい。この引張強度は、填料の含有量を少なくすることで高めることができる。具体的には、上記で例示した各坪量の範囲において示した填料の含有量の上限よりも填料の含有量を少なくすることで、引張強度を高めることができる。
【0022】
次に、
図1A及び
図1Bに示した香味吸引器10の内部構造について説明する。
図3は、
図1Aに示した矢視3-3における断面図である。
図3に示すように、香味吸引器10は、アウタハウジング11の内側に設けられるインナハウジング18を有する。インナハウジング18の内部空間には、電源部20と、回路部30と、加熱装置40と、が設けられる。
【0023】
回路部30は、互いに電気的に接続された第1回路基板31と、第2回路基板32と、第3回路基板33と、を有する。第1回路基板31は、例えば、図示のように略柱状の電源21の一面に隣接して長手方向に延びて配置される。第1回路基板31と加熱装置40との間には、隔壁34が設けられており、これにより、電源部20と第1回路基板31とを収容する領域の少なくとも一部が区画される。隔壁34には、電源部20側の空間と加熱装置40側の空間とを流体連通する切欠きや貫通孔等が設けられてもよい。
【0024】
第2回路基板32は、トップハウジング11Aの内側でカバー12と電源部20との間に配置され、第1回路基板31の延在方向と直交する方向に延びる。スイッチ13は、第2回路基板32と隣接して配置される。使用者がスイッチ13を押下したとき、スイッチ13の一部が、第2回路基板32と接触し得る。第3回路基板33は、加熱装置40に対して、開口12a(
図1B参照)の反対側に形成された空間において、長手方向に延びて配置される。
【0025】
第3回路基板33は、種々の電子部品が取り付けられた主面を有する。例えば、第3回路基板33は、その主面が長手方向に対して傾斜するように、ボトムハウジング11B内に配置されてもよい。これにより、第3回路基板33の主面を大きくすることができ、ボトムハウジング11B内の空間を有効活用することができる。
【0026】
第1回路基板31、第2回路基板32、及び第3回路基板33は、例えばマイクロプロセッサ等を含み、電源部20から加熱装置40への電力の供給を制御することができる。これにより、第1回路基板31、第2回路基板32、及び第3回路基板33は、加熱装置40による香味発生物品110の加熱を制御することができる。
【0027】
電源部20は、第1回路基板31、第2回路基板32、及び第3回路基板33に電気的に接続される電源21を有する。電源21は、例えば、充電式バッテリ又は非充電式のバッテリであり得る。電源21は、第1回路基板31、第2回路基板32、及び第3回路基板33の少なくとも1つを介して、加熱装置40と電気的に接続される。これにより、電源21は、香味発生物品110を適切に加熱するように、加熱装置40に電力を供給することができる。また、図示のように、電源21は、加熱装置40と長手方向に対して直交する方向に隣接して、並列に配置される。これにより、電源21の大きさを大きくしても、香味吸引器10の長手方向の長さが長くなることを抑制することができる。
【0028】
また、香味吸引器10は、外部電源と接続可能な端子22を有する。端子22は、例えばマイクロUSB等のケーブルと接続することができる。電源21が充電式バッテリである場合は、端子22に外部電源を接続することで、外部電源から電源21に電流を流し、電源21を充電することができる。また、端子22にマイクロUSB等のデータ送信ケーブルを接続することにより、香味吸引器10の作動に関連するデータを外部装置に送信できるようにしてもよい。
【0029】
加熱装置40は、図示のように、長手方向に延びる加熱アセンブリ41と、断面略L字状の曲管50と、略筒状の挿入ガイド部材17と、を有する。加熱アセンブリ41は、複数の筒状の部材を含み、全体として筒状体をなしている。加熱アセンブリ41は、内部に香味発生物品110の一部を収納可能な加熱チャンバを構成し、香味発生物品110へ供給する空気の流路を画定する機能、及び開口12a(
図1B参照)から挿入された香味発生物品110を外周から加熱する機能を有する。挿入ガイド部材17は、例えば樹脂材料により形成され、開口12a(
図1B参照)を有するカバー12と加熱アセンブリ41の下流端との間に設けられて、加熱アセンブリ41への香味発生物品110の挿入を案内する。
【0030】
曲管50は、例えば樹脂材料により形成される。曲管50は、第1端部50aと、第2端部50bとを有する。曲管50の第1端部50aは、加熱アセンブリ41の上流側の端部、即ち開口12a(
図1B参照)とは反対側の端部に接続される。第2端部50bは、加熱アセンブリ41の加熱チャンバの長手方向に対して角度を有して開口する。具体的には、上述したように、本実施形態では曲管50はL字状であるので、第2端部50bは、加熱アセンブリ41の加熱チャンバの長手方向に対して略直交する方向に開口する。その結果、第2端部50bは、ボトムハウジング11Bに取り付けられたキャップ16と対向するように位置する。即ち、キャップ16は曲管50の第2端部50bの少なくとも一部を開閉可能に覆うことができる。曲管50は、第2端部50bから供給された空気を、第1端部50aを介して加熱アセンブリ41の加熱チャンバに導入する。なお、曲管50は、L字状に限らず、第2端部50bがアウタハウジング11の側面を向くように、任意の角度で湾曲してもよい。
【0031】
図示のように、アウタハウジング11にキャップ16が取り付けられた状態において、キャップ16とインナハウジング18との間に所定の空間A1が形成される。曲管50の第2端部50bは、この空間A1と連通する。キャップ16をアウタハウジング11から取り外すと、第2端部50bから、曲管50の内部にアクセス可能になる。したがって、キャップ16をアウタハウジング11から取り外して、曲管50の内部を、例えば任意の清掃用具で清掃することができる。また、長手方向において、曲管50の加熱アセンブリ41に対して遠位側の角部(底部側の角部)には、加熱チャンバの作用により生じる固体又は液体がたまる可能性がある。このため、図示のように、曲管50の内面のうち、長手方向において加熱アセンブリ41に対して遠位側の角部が面取りされていることが好ましい。これにより、任意の清掃用具が曲管50の角部に接触しやすくなる。
【0032】
ボトムハウジング11Bには、加熱アセンブリ41の内部に空気を導入するための第1空気インレット19及び第2空気インレット15が形成される。第1空気インレット19は、ボトムハウジング11Bの底部側に形成される。具体的には、本実施形態では、第1空気インレット19は、ボトムハウジング11Bの傾斜面に形成される。言い換えれば、第1空気インレット19は、加熱アセンブリ41の加熱チャンバの長手方向(加熱チャンバに挿入される香味発生物品110の長手方向)に対して角度を有するボトムハウジング11Bの表面に形成される。第1空気インレット19は、キャップ等によって覆われることなく、常時開放される。
【0033】
また、第2空気インレット15は、ボトムハウジング11Bの側面に形成される。したがって、第1空気インレット19は、第2空気インレット15から加熱アセンブリ41の加熱チャンバの延在方向に離間して配置される。より具体的には、第1空気インレット19は、第2空気インレット15よりも開口12a(
図1B参照)に対して遠位側に設けられている。また、本実施形態においては、長手方向において、曲管50の第2端部50bが、第1空気インレット19と第2空気インレット15との間に位置する。さらに、第2空気インレット15は、曲管50の第2端部50bよりも開口12aに対して近位端側に位置する。
【0034】
アウタハウジング11とインナハウジング18との間には、第1空気インレット19と連通する流路19Aが形成される。図示のように、流路19Aは、第1空気インレット19と空間A1とを連通する。したがって、第1空気インレット19から流入した空気は、流路19A、空間A1、及び曲管50を通じて加熱アセンブリ41の加熱チャンバに供給される。即ち、流路19A、空間A1、及び曲管50の内部空間により、第1空気インレット19と加熱アセンブリ41の加熱チャンバとを連通する第1空気流路が形成される。
【0035】
図示のように、加熱アセンブリ41は、開口12aから香味吸引器10の長手方向略中央部まで延在し、長手方向中央部から底部までは、加熱アセンブリ41が存在しない空間(第3回路基板33が配置された空間)が存在する。流路19Aは、第1空気インレット19から空間A1まで、加熱アセンブリ41の周囲を通過しないように設けられている。言い換えれば、流路19Aは、加熱アセンブリ41の加熱チャンバの延在方向において、加熱チャンバから離間するように位置する。このため、流路19Aを通過する空気が加熱アセンブリ41によって影響を受けることが抑制される。
【0036】
第2空気インレット15は、キャップ16とアウタハウジング11との隙間に形成される通気口であり、空間A1と連通する。したがって、第2空気インレット15から流入した空気は、空間A1及び曲管50を通じて加熱アセンブリ41の加熱チャンバに供給される。即ち、空間A1、及び曲管50の内部空間により、第2空気インレット15と加熱アセンブリ41の加熱チャンバとを連通する第2空気流路が形成される。
【0037】
第1空気流路と第2空気流路は、加熱アセンブリ41の加熱チャンバと、第1空気インレット19及び第2空気インレット15との間で、合流する。具体的には、本実施形態では、第1空気流路と第2空気流路は空間A1において合流する。したがって、第1空気インレット19から流入した空気は、第2空気インレット15から流入した空気と空間A1において混合されて、曲管50を通じて加熱チャンバに到達する。言い換えれば、第1空気インレット19と第2空気インレット15から流入した空気は、いずれも加熱チャンバを通過して、エアロゾルを運搬するのに使用される。第1空気インレット19から加熱チャンバに流入する空気と第2空気インレット15からの加熱チャンバに流入する空気との空気の供給割合は1:2~1:10であることが好ましく、1:3~1:5であることがより好ましい。第1空気インレット19から流入する空気量を一定以下とすることで、大気中の塵等が、空気流路中に混入することを抑制できる。また、第1空気流路の流路長さは、第2空気流路の流路長さよりも長い。
【0038】
香味発生物品110は、
図1Bに示すようにカバー12の開口12aから香味吸引器10の内部に挿入されると、挿入ガイド部材17を通過し、香味発生物品110の一部が加熱アセンブリ41の内部に配置される。このため、挿入ガイド部材17は、加熱アセンブリ41側の開口の大きさよりも、カバー12側の開口の方が大きくなるように形成されることが好ましい。これにより、香味発生物品110を開口12aから挿入ガイド部材17の内部に挿入し易くなる。
【0039】
図1Bに示すように、香味発生物品110が開口12aから香味吸引器10内に挿入された状態で、使用者が、香味発生物品110の香味吸引器10から突出した部分、即ち
図2に示したフィルタ部115から吸引すると、第1空気インレット19及び第2空気インレット15から加熱アセンブリ41の内部に空気が流入する。流入した空気は、加熱アセンブリ41の内部を通過して、香味発生物品110から生じるエアロゾルと共に、使用者の口内に到達する。
【0040】
本実施形態の香味吸引器10において、加熱アセンブリ41の加熱チャンバにより香味発生物品110を加熱すると、香味発生物品110から加熱されたたばこ刻み等の固体や、蒸発したエアロゾル源が凝縮して形成される液体が発生し得る。このような固体又は液体は、加熱アセンブリ41から曲管50を介して空間A1に到達し得る。上述したように、空間A1は、流路19Aを介して第1空気インレット19と連通している。また、第1空気インレット19は、香味吸引器10の使用時は重力方向下方に位置する。このため、空間A1に到達した固体又は液体が流路19Aに入り込むと、重力方向下方に向かって移動し、第1空気インレット19から固体又は液体がアウタハウジング11の外部に到達するおそれがある。そこで、本実施形態の香味吸引器10は、上記固体又は液体が、曲管50から第1空気インレット19に到達することを抑制する抑制部材60を有する。抑制部材60は、加熱アセンブリ41の加熱チャンバと、第1空気インレットとの間の第1空気流路上に配置される。具体的には、本実施形態では、抑制部材60は、曲管50の第2端部50b近傍に設けられる。
【0041】
図4は、曲管50の第2端部50b近傍の拡大斜視図である。
図4においては、アウタハウジング11が省略されている。図示のように、インナハウジング18は、
図3等に示したキャップ16とともに空間A1を画定する縁部18Bと、縁部18Bによって囲まれるインナハウジング18の表面18Dを有する。本実施形態の縁部18Bは、短辺が略円弧状で長辺が略直線状の形状に沿って、インナハウジング18の表面からキャップ16に向かって突出する。また、インナハウジング18は、アウタハウジング11とともに流路19Aを画定する一対の縁部18Aを有する。縁部18Aは、縁部18Bから第1空気インレット19近傍まで延びており、第1空気インレット19から流入した空気を空間A1に案内するように構成される。
【0042】
図示のように、インナハウジング18は、曲管50の第2端部50bの開口と連通する開口部18Cを有する。本実施形態においては、抑制部材60は、インナハウジング18の開口部18Cの周囲に設けられる。抑制部材60は、開口部18Cの開口形状に沿って開口部18Cの第1空気インレット19側に位置する円弧状凸部60Aと、円弧状凸部60Aから第2空気インレット15側に延びる一対の直線状凸部60Bとを有する。円弧状凸部60Aと直線状凸部60Bは、ともに、インナハウジング18の表面18Dからキャップ16に向かって突出する。即ち、抑制部材60の少なくとも一部(図示の例では円弧状凸部60A)は、加熱アセンブリ41の加熱チャンバの長手方向において、曲管50の第2端部50bよりも開口12aに対して遠位側に位置することになる。直線状凸部60Bは、図示の例では、開口部18Cより第2空気インレット15側に延びている。したがって、抑制部材60は、開口部18C及び曲管50の第2端部50bの周囲を囲い、且つ第2端部50bの開口12a側(図中上側)を開放している。
【0043】
本実施形態では、第1空気インレット19から第2端部50bに空気が向かうまでに、円弧状凸部60Aによって空気が二手に別れて流れるように構成される。しかし、これに限らず、第1空気インレット19から第2端部50bに向かう空気が二手に別れないように抑制部材60を構成してもよい。具体的には、例えば、一対の直線状凸部60Bのいずれか一方を縁部18Bに結合することで空気の流れを塞ぎ、空気の流れを一方にすることができる。また、円弧状凸部60Aに代えて、
図4において横方向に延びる凸部を設け、この凸部の一方の端部を縁部18Bに結合して空気の流れを塞ぐ。これにより、凸部の他方の端部側から空気が曲管50の第2端部50bに流入することができる。
【0044】
第1空気インレット19から一対の縁部18Aの間の流路19Aを通過して空間A1に流入した空気は、円弧状凸部60Aに衝突し、円弧状凸部60A及び直線状凸部60Bに沿って第2空気インレット15側に移動して、開口部18C及び曲管50の第2端部50bに流入する。即ち、第1空気インレット19から流入した空気は、抑制部材60を回り込んで曲管50の内部に流入する。言い換えれば、第1空気インレット19から流入した空気は、抑制部材60の開口12a側の開放された部分から、曲管50の内部に流入する。
【0045】
本実施形態では、抑制部材60は、インナハウジング18に設けられているが、これに限られない。抑制部材60は、例えば、加熱チャンバの作用により生じる固体又は液体が、曲管50から第1空気インレット19に到達することを抑制するようにキャップ16に設けられていてもよい。
【0046】
以上で説明したように、本実施形態の香味吸引器10は、第1空気インレット19と、第1空気インレット19から長手方向に離間する第2空気インレット15とを有する。本実施形態の香味吸引器10を使用するとき、使用者はアウタハウジング11の側面を把持する。このとき、使用者の手が第2空気インレット15の一部を覆うと、第2空気インレット15から流入する空気が通過する第2空気流路の通気抵抗が大きくなり得る。本実施形態によれば、使用者の手によって第2空気インレット15の一部が覆われた場合であっても、第1空気インレット19から加熱アセンブリ41に安定した空気量を供給することができる。また、使用者の香味吸引器10の持ち方によっては第1空気インレット19の一部が覆われる可能性もある。この場合において、第1空気インレット19から流入する空気が通過する第1空気流路の通気抵抗が大きくなったとしても、第2空気インレット15から加熱アセンブリ41に安定した空気量を供給することができる。
【0047】
また、本実施形態の香味吸引器10は抑制部材60を有するので、加熱チャンバの作用により生じる固体又は液体が、曲管50から第1空気インレット19に到達することを抑制することができる。本実施形態では、香味発生物品110がスティック状であるとして説明したが、これに限らず、例えばカプセルの内部に香味源及びエアロゾル源を収容したカートリッジを採用してもよい。
【0048】
さらに、本実施形態では、曲管50の第2端部50bがアウタハウジング11の側面を向くことにより、第2端部50bの開口とアウタハウジング11との距離を比較的短くすることができる。その結果、第2端部50bの開口から曲管50の内部にアクセスしやすくなり、曲管50の内部のメンテナンスを容易にすることができる。
【0049】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【0050】
以下に本明細書が開示する形態のいくつかを記載しておく。
第1形態によれば、香味吸引器が提供される。この香味吸引器は、香味源受入口と、前記香味源受入口から挿入された香味源を加熱するための加熱チャンバと、第1空気インレットと、前記第1空気インレットから前記加熱チャンバの延在方向に離間する第2空気インレットと、を有する。
【0051】
第2形態は、第1形態において、前記第1空気インレットは、前記第2空気インレットよりも前記香味源受入口に対して遠位側に設けられることを要旨とする。
【0052】
第3形態は、第1形態又は第2形態において、前記第1空気インレットと連通する第1空気流路と、前記第2空気インレットと連通する第2空気流路と、を有し、前記第1空気流路と前記第2空気流路は、合流するように構成されることを要旨とする。
【0053】
第4形態は、第3形態において、前記第1空気流路は、前記第1空気インレットと前記加熱チャンバとを連通し、前記第2空気流路は、前記第2空気インレットと前記加熱チャンバとを連通し、前記第1空気流路と前記第2空気流路は、前記加熱チャンバと前記第1空気インレット及び前記第2空気インレットとの間で、合流するように構成されることを要旨とする。
【0054】
第5形態は、第1形態から第4形態のいずれかにおいて、前記香味源受入口及び前記第1空気インレットを備えたハウジングを有し、前記第1空気インレットは、前記加熱チャンバの長手方向に対して角度を有する前記ハウジングの表面に形成されることを要旨とする。
【0055】
第6形態は、第1形態から第5形態のいずれかにおいて、前記加熱チャンバの前記香味源受入口とは反対側の端部に接続される曲管を有し、前記第1空気インレット及び前記第2空気インレットは、前記曲管と連通することを要旨とする。
【0056】
第7形態は、第6形態において、前記曲管は、L字状に形成され、前記曲管は、前記加熱チャンバの長手方向に対して略直交する方向に開口する開口端部を有し、前記香味吸引器は、前記開口端部の少なくとも一部を開閉可能に覆う蓋を有することを要旨とする。
【0057】
第8形態は、第2形態を引用する第6形態において、前記曲管は、前記加熱チャンバに接続される第1端部と、前記第1端部と反対側の開口端部とを有し、前記香味吸引器は、前記第1空気流路と前記第2空気流路とが合流する空間と、前記空間の少なくとも一部を開閉可能に覆う蓋を有することを要旨とする。
【0058】
第9形態は、第1形態から第8形態のいずれかにおいて、前記香味源は、たばこであることを要旨とする。
【0059】
第10形態によれば、香味吸引器が提供される。この香味吸引器は、香味源受入口と、前記香味源受入口から挿入された香味源を加熱するための加熱チャンバと、前記加熱チャンバの前記香味源受入口とは反対側の端部に接続される第1端部を有する管状部材と、前記管状部材と連通する第1空気インレットと、前記加熱チャンバの作用により生じる固体又は液体が、前記管状部材から前記第1空気インレットに到達することを抑制する抑制部材を有する。
【0060】
第11形態は、第10形態において、前記第1空気インレットから流入した空気は、前記抑制部材を回り込んで前記管状部材の内部に流入することを要旨とする。
【0061】
第12形態は、第10形態又は第11形態において、前記管状部材は、前記第1端部とは反対側の第2端部を有し、前記第2端部は、前記加熱チャンバの長手方向に対して角度を有して開口することを要旨とする。
【0062】
第13形態は、第12形態において、前記抑制部材の少なくとも一部は、前記加熱チャンバの長手方向において、前記管状部材の前記第2端部よりも前記香味源受入口に対して遠位側に位置することを要旨とする。
【0063】
第14形態は、第12形態又は第13形態において、前記管状部材は、L字状に形成され、前記管状部材の前記第2端部は、前記加熱チャンバの長手方向に対して略直交する方向に開口することを要旨とする。
【0064】
第15形態は、第12形態から第14形態のいずれかにおいて、前記香味吸引器は、前記管状部材の前記第2端部の少なくとも一部を開閉可能に覆う蓋を有することを要旨とする。
【0065】
第16形態は、第15形態において、前記香味源受入口及び前記第1空気インレットが形成されるハウジングと、前記蓋と前記ハウジングとの隙間に形成される第2空気インレットと、を有することを要旨とする。
【0066】
第17形態は、第12形態から第16形態のいずれかにおいて、前記抑制部材は、前記管状部材の前記第2端部の周囲を囲い、且つ前記第2端部の前記香味源受入口側を開放することを要旨とする。
【符号の説明】
【0067】
10…香味吸引器
11…アウタハウジング
12…カバー
12a…開口
15…第2空気インレット
19…第1空気インレット
19A…流路
41…加熱アセンブリ
50…曲管
50a…第1端部
50b…第2端部
60…抑制部材
110…香味発生物品
A1…空間