(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】パワーツールのためのセンサレスモータ制御
(51)【国際特許分類】
H02P 6/182 20160101AFI20230424BHJP
H02P 6/185 20160101ALI20230424BHJP
H02P 21/24 20160101ALI20230424BHJP
【FI】
H02P6/182
H02P6/185
H02P21/24
(21)【出願番号】P 2021560926
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(86)【国際出願番号】 US2020028251
(87)【国際公開番号】W WO2020214659
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-08
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598073073
【氏名又は名称】ミルウォーキー エレクトリック ツール コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(74)【代理人】
【識別番号】100133983
【氏名又は名称】永坂 均
(72)【発明者】
【氏名】オバーマン,ティモシー,アール.
(72)【発明者】
【氏名】フィールドビンダー,ドウグラス,アール.
(72)【発明者】
【氏名】フバー,アレックス
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/108415(WO,A1)
【文献】特開2000-350486(JP,A)
【文献】特開2015-037822(JP,A)
【文献】特開平07-177788(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102780430(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0267990(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/182
H02P 6/185
H02P 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーツールのセンサレスモータを駆動させる自動制御スイッチングのための方法であって、
モータコントローラを用いて、ユーザ入力に基づいて第1の負荷点を決定することと、
前記モータコントローラを用いて、前記第1の負荷点に対応する第1のモータ制御技術を決定することと、
前記第1のモータ制御技術に基づいて前記センサレスモータを駆動させることと、
前記モータコントローラを用いて、前記第1の負荷点から第2の負荷点への変化を決定することと、
前記モータコントローラを用いて、前記第2の負荷点に対応する第2のモータ制御技術を決定することと、
前記第2のモータ制御技術に基づいて前記センサレスモータを駆動させることと、を含
み、
前記第1の負荷点は、高速低トルク印加、高速高トルク印加、低速低トルク印加、及び低速高トルク印加で構成される群から選択される1つである、
方法。
【請求項2】
前記第1のモータ制御技術は、ブロック
整流、正弦波制御、及び
磁界方向制御で構成される群から選択される1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のモータ制御技術は、ブロック
整流、正弦波制御、及び
磁界方向制御で構成される群から選択される1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ユーザ入力は、トリガスイッチからの速度入力、トルク設定ダイヤルからのトルク限界、前進/逆転セレクタからの方向信号、及びモードセレクタからの動作モードで構成される群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の負荷点から前記第2の負荷点への前記変化は、前記ユーザ入力の変化に基づいて検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の負荷点は、高速低トルク印加、高速高トルク印加、低速低トルク印加、及び低速高トルク印加で構成される群から選択される1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
結合回路を用いて、高周波注入信号を前記センサレスモータに結合することと、
減結合回路を用いて、前記高周波注入信号に対するモータ応答を検出することと、
前記減結合回路に結合される前記モータコントローラを用いて、インバータブリッジに対するより低いスイッチング周波数を維持しながら、モータ応答に基づいてロータ位置を決定することと、
前記モータコントローラ及び前記インバータブリッジを用いて、検出されるロータ位置に基づいて前記センサレスモータを駆動させることと、を更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
センサレスモータと、
前記センサレスモータに動作電力を提供するように構成されるインバータブリッジと、
前記インバータブリッジに結合されるモータコントローラと、を含み、該モータコントローラは、
ユーザ入力に基づいて第1の負荷点を決定し、
前記第1の負荷点に対応する第1のモータ制御技術を決定し、
前記インバータブリッジを用いて、前記第1のモータ制御技術に基づいて前記センサレスモータを駆動させ、
前記第1の負荷点から第2の負荷点への変化を決定し、
前記第2の負荷点に対応する第2のモータ制御技術を決定し、且つ
前記インバータブリッジを用いて、前記第2のモータ制御技術に基づいて前記センサレスモータを駆動させる、
ように構成され
、
前記第1の負荷点は、高速低トルク印加、高速高トルク印加、低速低トルク印加、及び低速高トルク印加で構成される群から選択される1つである、
パワーツール。
【請求項9】
前記第1のモータ制御技術は、ブロック
整流、正弦波制御、及び
磁界方向制御で構成される群から選択される1つである、請求項
8に記載のパワーツール。
【請求項10】
前記第2のモータ制御技術は、ブロック
整流、正弦波制御、及び
磁界方向制御で構成される群から選択される1つである、請求項
8に記載のパワーツール。
【請求項11】
前記ユーザ入力は、トリガスイッチからの速度入力、トルク設定ダイヤルからのトルク限界、前進/逆転セレクタからの方向信号、及びモードセレクタからの動作モードで構成される群から選択される、請求項
8に記載のパワーツール。
【請求項12】
前記第1の負荷点から前記第2の負荷点への前記変化は、前記ユーザ入力の変化に基づいて検出される、請求項
8に記載のパワーツール。
【請求項13】
[15]
前記第2の負荷点は、高速低トルク印加、高速高トルク印加、低速低トルク印加、及び低速高トルク印加で構成される群から選択される1つである、請求項
8に記載のパワーツール。
【請求項14】
結合回路と、
減結合回路と、を更に含み、
前記モータコントローラは、
前記結合回路を用いて、高周波注入信号を前記センサレスモータに結合し、
前記減結合回路を用いて、前記高周波注入信号に対するモータ応答を検出し、
前記インバータブリッジに対するより低いスイッチング周波数を維持しながら、モータ応答に基づいてロータ位置を決定し、且つ
前記インバータブリッジを用いて、検出されるロータ位置に基づいて前記センサレスモータを駆動させる、
ように更に構成される、
請求項
8に記載のパワーツール。
【請求項15】
パワーツールのセンサレスモータを駆動させる自動制御スイッチングのための方法であって、
モータコントローラを用いて、パワーツール動作パラメータを検出することと、
前記モータコントローラを用いて、前記パワーツール動作パラメータに基づいて前記パワーツールの負荷点を決定することと、
前記モータコントローラを用いて、前記負荷点に対応するモータ制御技術を決定ことと、
前記モータコントローラを用いて、前記モータ制御技術に基づいて前記センサレスモータを駆動させることと、を含
み、
前記負荷点は、高速低トルク印加、高速高トルク印加、低速低トルク印加、及び低速高トルク印加で構成される群から選択される1つである、
方法。
【請求項16】
前記モータ制御技術は、ブロック
整流、正弦波制御、及び
磁界方向制御で構成される群から選択される1つである、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記パワーツール動作パラメータは、1つ以上のセンサを用いて検出される、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上のセンサは、モータ電流、モータ電圧、及びトルク出力で構成される群から選択される1つ以上を検出するために用いられる、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
結合回路を用いて、高周波注入信号を前記センサレスモータに結合することと、
減結合回路を用いて、前記高周波注入信号に対するモータ応答を検出することと、
前記減結合回路に結合される前記モータコントローラを用いて、インバータブリッジに対するより低いスイッチング周波数を維持しながら、モータ応答に基づいてロータ位置を決定することと、
前記モータコントローラ及び前記インバータブリッジを用いて、検出されるロータ位置に基づいて前記センサレスモータを駆動させることと、を更に含む、
請求項
15に記載の方法。
【請求項20】
パワーツールであって、
センサレスモータと、
前記センサレスモータに動作電力を提供するように構成されるインバータブリッジと、
前記インバータブリッジに結合されるモータコントローラと、を含み、該モータコントローラは、
パワーツール動作パラメータを検出し、
前記パワーツール動作パラメータに基づいて当該パワーツールの負荷点を決定し、
前記負荷点に対応するモータ制御技術を決定し、
前記インバータブリッジを用いて、前記モータ制御技術に基づいて前記センサレスモータを駆動させる、
ように構成され
、
前記負荷点は、高速低トルク印加、高速高トルク印加、低速低トルク印加、及び低速高トルク印加で構成される群から選択される1つである、
パワーツール。
【請求項21】
前記モータ制御技術は、ブロック
整流、正弦波制御、及び
磁界方向制御で構成される群から選択される1つである、請求項
20に記載のパワーツール。
【請求項22】
1つ以上のセンサを更に含み、前記パワーツール動作パラメータは、前記1つ以上のセンサを用いて検出される、請求項
20に記載のパワーツール。
【請求項23】
前記1つ以上のセンサは、モータ電流、モータ電圧、及びトルク出力で構成される群から選択される1つ以上を検出するために用いられる、請求項
22に記載のパワーツール。
【請求項24】
結合回路と、
減結合回路と、を更に含み、
前記モータコントローラは、
前記結合回路を用いて、高周波注入信号を前記センサレスモータに結合し、
前記減結合回路を用いて、前記高周波注入信号に対するモータ応答を検出し、
前記インバータブリッジに対するより低いスイッチング周波数を維持しながら、モータ応答に基づいてロータ位置を決定し、且つ
前記インバータブリッジを用いて、検出されるロータ位置に基づいて前記センサレスモータを駆動させる、
ように更に構成される、
請求項
20に記載のパワーツール。
【請求項25】
パワーツールのセンサレスモータにおける高周波注入ロータ位置検出のための方法であって、
結合回路を用いて、前記センサレスモータに高周波注入信号を結合することと、
減結合回路を用いて、前記高周波注入信号に対するモータ応答を検出することと、
前記減結合回路に結合されるモータコントローラを用いて、インバータブリッジに対するより低いスイッチ周波数を維持しながら、モータ応答に基づいてロータ位置を決定することと、
前記モータコントローラ及び前記インバータブリッジを用いて、検出されるロータ位置に基づいて前記センサレスモータを駆動させることと、を含
み、
前記結合回路は、前記パワーツールの電源からの直流(DC)電力を前記インバータブリッジに提供する直流(DC)バスに前記高周波注入信号を結合する、
方法。
【請求項26】
前記高周波注入信号は、モータ端子に結合される、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
前記高周波注入信号は、前記インバータブリッジの出力信号の周波数の約3倍の第3高調波周波数信号である、請求項
25に記載の方法。
【請求項28】
前記高周波注入信号は、前記センサレスモータの注入コイルに対して注入される、請求項
25に記載の方法。
【請求項29】
前記注入コイルは、前記センサレスモータの既存の位相コイルの周りに巻回される、請求項
28に記載の方法。
【請求項30】
前記減結合回路は、前記センサレスモータのモータ位相コイルに電気的に接続される、請求項
25に記載の方法。
【請求項31】
前記モータ応答は、前記センサレスモータの非アクティブな位相コイルに対して検出される、請求項
25に記載の方法。
【請求項32】
センサレスモータと、
前記センサレスモータに動作電力を提供するように構成されるインバータブリッジと、
結合回路と、
減結合回路と、
前記センサレスモータの注入コイルと、
前記インバータブリッジと、前記結合回路と、前記減結合回路とに結合されるモータコントローラとを含み、該モータコントローラは、
前記結合回路を用いて、前記センサレスモータに高周波注入信号を結合し、
前記減結合回路を用いて、前記高周波注入信号に対するモータ応答を検出し、
前記インバータブリッジに対するより低いスイッチ周波数を維持しながら、モータ応答に基づいてロータ位置を決定し、且つ
検出されるロータ位置に基づいて前記センサレスモータを駆動させる、
ように構成され
、
前記結合回路は、前記高周波注入信号を前記注入コイルに結合する、
パワーツール。
【請求項33】
前記結合回路に結合され、前記高周波注入信号を生成するように構成される、信号生成器を更に含む、請求項
32に記載のパワーツール。
【請求項34】
当該パワーツールの電源からの直流(DC)電力を前記インバータブリッジに提供する直流(DC)バスを更に含み、前記結合回路は、前記高周波注入信号を前記DCバスに結合する、請求項
32に記載のパワーツール。
【請求項35】
前記結合回路は、前記高周波注入信号を前記DCバスに容量的に結合するように構成されるキャパシタを更に含む、請求項
34に記載のパワーツール。
【請求項36】
前記結合回路は、前記高周波注入信号を前記DCバスに結合するように構成される変圧器を更に含む、請求項
34に記載のパワーツール。
【請求項37】
前記結合回路は、前記高周波注入信号をモータ端子に結合する、請求項
32に記載のパワーツール。
【請求項38】
前記高周波注入信号は、前記インバータブリッジの出力信号の周波数の約3倍の第3高調波周波数信号である、請求項
32に記載のパワーツール。
【請求項39】
前記注入コイルは、前記センサレスモータの既存の位相コイルの周りに巻回される、請求項
32に記載のパワーツール。
【請求項40】
前記減結合回路は、前記センサレスモータのモータ位相コイルに電気的に接続される、請求項
32に記載のパワーツール。
【請求項41】
モータ応答が、前記センサレスモータの非アクティブな位相コイルに対して検出される、請求項
32に記載のパワーツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
この出願は、2019年4月15日に出願された米国仮特許出願第62/833,834号に対する優先権を主張するものであり、その全文を参照により本明細書に援用する。
【0002】
(技術分野)
本明細書に記載する実施形態は、パワーツール(動力工具)におけるセンサレス(sensorless)モータ制御に関する。
【背景技術】
【0003】
パワーツールにおけるブラシレス直流(BLDC)モータの使用は、効率及び電力出力(power output)の向上をもたらす。これらのモータは、電力スイッチング素子を含むインバータブリッジによって電力供給される。パワーツールのコントローラは、例えば、パルス幅変調(PWM)駆動信号を使用してモータを作動させて、電力スイッチング素子を制御する。PWM信号のデューティサイクルは、モータの回転速度を変化させるために異なることができる。
【発明の概要】
【0004】
ブラシ付きモータとは異なり、BLDCモータの動作を制御するために、ロータの位置が決定されることがある。例えば、BLDCモータを有するシステムは、センサ(例えば、ホールセンサ)またはエンコーダ(例えば、回転エンコーダ)を使用して、ロータ内の磁石の位置を検出し、それにより、電力スイッチング素子への駆動信号のタイミングを制御することがある。
【0005】
BLDCモータにおいて、ロータ位置センサを含めることは、コストを増加させ、パワーツールのサイズを増加させ、モータを駆動させることの非効率性を増加させる。従って、少なくともこれらの理由から、センサレスモータ、センサレスモータ内のロータ位置を検出する方法、およびセンサレスモータを作動させる技術のうちの少なくとも1つ以上が必要とされている。
【0006】
本明細書に記載する方法は、パワーツールのセンサレスモータを駆動させるためのスイッチングの自動制御を提供する。方法は、モータコントローラを用いて、ユーザ入力に基づいて第1の負荷点を決定することと、モータコントローラを用いて、第1の負荷点に対応する第1のモータ制御技術を決定することとを含む。方法は、第1のモータ制御技術に基づいてモータを駆動させることも含む。方法は、更に、モータコントローラを用いて、第1の負荷点から第2の負荷点への変化を決定することと、モータコントローラを用いて、第2の負荷点に対応する第2のモータ制御技術を決定することとを含む。方法は、第2のモータ制御技術に基づいてモータを駆動させることを含む。
【0007】
本明細書に記載するパワーツールは、センサレスモータと、モータに動作電力を提供するように構成されるインバータブリッジと、インバータブリッジに結合されるモータコントローラとを含む。モータコントローラは、ユーザ入力に基づいて第1の負荷点を決定し、第1の負荷点に対応する第1のモータ制御技術を決定する、ように構成される。モータコントローラは、インバータブリッジを用いて、第1のモータ制御技術に基づいてモータを駆動させるようにも構成される。モータコントローラは、第1の負荷点から第2の負荷点への変化を決定して、第2の負荷点に対応する第2のモータ制御技術を決定するように更に構成される。モータコントローラは、インバータブリッジを用いて、第2のモータ制御技術に基づいてモータを駆動させるように構成される。
【0008】
本明細書に記載する方法は、パワーツールのセンサレスモータを駆動させるためのスイッチングの自動制御を提供する。方法は、モータコントローラを用いて、パワーツール動作パラメータを検出することと、モータコントローラを用いて、パワーツール動作パラメータに基づいてパワーツールの負荷点を決定することとを含む。方法は、モータコントローラを用いて、負荷点に対応するモータ制御技術を決定ことや、モータコントローラを用いて、モータ制御技術に基づいてモータを駆動させることも含む。
【0009】
本明細書に記載する方法は、センサレスモータと、モータに動作電力を提供するように構成されるインバータブリッジと、インバータブリッジに結合されるモータコントローラとを含む。モータコントローラは、パワーツール動作パラメータを検出して、パワーツール動作パラメータに基づいてパワーツールの負荷点を決定するように構成される。モータコントローラは、負荷点に対応するモータ制御技術を決定して、インバータブリッジを用いて、モータ制御技術に基づいてモータを駆動させるようにも構成される。
【0010】
本明細書に記載する方法は、パワーツールのセンサレスモータにおける高周波注入ロータ位置検出を提供する。方法は、結合回路を用いて、高周波注入信号を前記センサレスモータに結合することと、モータコントローラを用いて、高周波注入信号に対するモータ応答を検出することとを含む。方法は、モータコントローラを用いて、インバータブリッジに対するより低いスイッチ周波数を維持しながら、モータ応答に基づいてロータ位置を決定することと、モータコントローラを用いて、検出されるロータ位置に基づいてモータを駆動させることとを更に含む。
【0011】
本明細書に記載するパワーツールは、センサレスモータと、結合回路と、モータに動作電力を提供するように構成されるインバータブリッジと、インバータブリッジと結合回路とに結合されるモータコントローラとを含む。結合回路は、モータに高周波注入信号を結合するように構成される。モータコントローラは、高周波注入信号に対するモータ応答を検出して、インバータブリッジに対するより低いスイッチ周波数を維持しながら、モータ応答に基づいてロータ位置を決定するように構成される。モータコントローラは、検出されるロータ位置に基づいてモータを駆動させるように更に構成される。
【0012】
いずれかの実施形態を詳細に説明する前に、本実施形態は、その適用において、以下の記述に記載し且つ添付の図面に図示するコンポーネント(構成要素)の詳細な構成および配置に限定されないことが理解されるべきである。実施形態は、実施可能であるか、または様々な方法で実行可能である。また、本明細書で使用する表現および用語は、記述の目的のためのものであり、限定的であるとみなされるべきでないことが理解されるべきである。「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する(having)」およびそれらの変形の使用は、以下に列挙される品目およびそれらの均等物ならびに追加の品目を包含することが意図されている。特定されない限り或いは他の方法で限定されない限り、「取り付けられた(mounted)」、「接続された(connected)」、「支持された(supported)」、及び「連結された(coupled)」という用語ならびにそれらの変形は、広義に使用されており、直接的および間接的の両方の取り付け、接続、支持、および連結を包含する。
【0013】
さらに、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、および電子コンポーネントまたはモジュールを含んでよく、電子コンポーネントは、議論の目的から、コンポーネントの大部分が恰も専らハードウェアで実装されるかのように図示され且つ記載される場合があることが理解されるべきである。しかしながら、当業者は、この詳細な記述の判読に基づいて、少なくとも1つの実施形態において、電子ベースの態様が、マイクロプロセッサおよび/または特定用途向け集積回路(「ASIC」)のような1つ以上の処理ユニットによって実行可能な(例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体に格納される)ソフトウェアで実装される場合があることを認識するであろう。よって、複数のハードウェアおよびソフトウェアベースのデバイス、ならびに複数の異なる構造コンポーネントが、実施形態を実装するために利用される場合があることが留意されるべきである。例えば、本明細書に記載する「サーバ(servers)」、「コンピューティングデバイス(computing devices)」、「コントローラ(controllers)」、「プロセッサ(processors)」などは、1つ以上の処理ユニット、1つ以上のコンピュータ可読媒体モジュール、1つ以上の入出力インターフェース、およびコンポーネントを接続する様々な接続(例えば、システムバス)を含むことができる。
【0014】
量または条件に関連して使用される、例えば、「約」、「約」、「実質的に」などのような、相対的な用語は、記載された値を包含するものとして当業者によって理解され、文脈によって指示される意味を有する(例えば、用語は、少なくとも、特定の値に関連する測定精度、公差[例えば、製造、組立、使用など]に関連する誤差の程度を含む)。そのような用語は、2つのエンドポイントの絶対値によって定義される範囲を開示するものとしても考慮されるべきである。例えば、「約2~約4」という表現は、「2~4」の範囲も開示する。相対的な用語は、指示される値のプラス又はマイナスの百分率(例えば、1%、5%、10%以上)を指すことがある。
【0015】
特定の図面は、特定のデバイス内に配置されたハードウェアおよびソフトウェアを図示しているが、これらの図面は、単に例示目的のためのものであることが理解されるべきである。1つのコンポーネントによって実行されるものとして本明細書に記載される機能性は、分散された方法で複数のコンポーネントによって実行されることがある。同様に、複数のコンポーネントによって実行される機能性は、単一のコンポーネントによって統合されて実行されることがある。いくつかの実施形態において、図示のコンポーネントは、別々のソフトウェア、ファームウェア、および/またはハードウェアに組み合わされてよく、或いは分割されてよい。例えば、論理(ロジック)および処理は、単一の電子プロセッサ内に配置されて実行されるのではなく、複数の電子プロセッサの間で分散されてよい。それらがどのように組み合わされ或いは分割されるかにかかわらず、ハードウェア及びソフトウェアコンポーネントは、同じコンピューティングデバイスに配置されてよく、或いは1つ以上のネットワーク又は他の適切な通信リンクによって接続された異なるコンピューティングデバイスの間に分散されてよい。同様に、特定の機能性を実行するものとして記載されるコンポーネントは、本明細書に記載されていない追加の機能性を実行することもある。例えば、特定の方法で「構成」されたデバイスまたは構造は、少なくともその方法で構成されるが、明示的に列挙されていない方法で構成されてもよい。
【0016】
本発明の他の態様は、詳細な記述及び添付の図面を考慮することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】いくつかの実施形態に従ったパワーツールの側面図である。
【0018】
【
図2A】いくつかの実施形態に従った
図1のパワーツールのモータの斜視図である。
【0019】
【
図2B】いくつかの実施形態に従った
図1のパワーツールのモータの断面図である。
【0020】
【
図3】いくつかの実施形態に従った
図1のパワーツールのモータ駆動装置の簡略化されたブロック図である。
【0021】
【
図4】いくつかの実施形態に従った正弦波整流を実装する
図3のモータ駆動装置の簡略化されたブロック図である。
【0022】
【
図5】いくつかの実施形態に従ったフィールド指向制御を実装する
図3のモータ駆動装置の簡略化されたブロック図である。
【0023】
【
図6】いくつかの実施形態に従った
図2A~2Bのモータを駆動させるための自動制御スイッチングの方法についてのフローチャートである。
【0024】
【
図7】いくつかの実施形態に従った
図2A~2Bのモータを駆動させるための自動制御スイッチングの方法のフローチャートである。
【0025】
【
図8】いくつかの実施形態に従った高周波注入ロータ位置検出を実装する
図3のモータ駆動装置の簡略化されたブロック図である。
【0026】
【
図9】いくつかの実施形態に従った高周波注入ロータ位置検出を実装する
図3のモータ駆動装置の簡略化されたブロック図である。
【0027】
【
図10】いくつかの実施形態に従った高周波注入ロータ位置検出を実装する
図3のモータ駆動装置の簡略化されたブロック図である。
【0028】
【
図11】いくつかの実施形態に従った注入コイルを含む
図1のパワーツールのモータの斜視図である。
【0029】
【
図12】いくつかの実施形態に従った
図2A~2Bのモータにおける高周波注入ロータ位置検出のための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、ブラシレス直流(BLDC:brushless direct-current)モータを組み込んだパワーツール(動力工具)100の1つの例示的な実施形態を図示している。パワーツール100は、例えば、ハンドル部分108とモータハウジング部分112とを備えるハウジング104を有するブラシレスハンマードリルである。パワーツール100は、更に、(チャックとして示されている)出力ドライバ116、トルク設定ダイヤル120、前進/逆転セレクタ124、トリガ128、バッテリインターフェース132、およびライト136を含む。
図1はハンマードリルを示しているが、いくつかの実施形態において、本明細書に記載するモータおよびモータドライバは、ドリルドライバ、インパクトドライバ、インパクトレンチ、アングルグラインダ、丸鋸、レシプロソー、ストリングトリマ、リーフブロワ、真空装置、および同等物を含む、他のタイプのパワーツールに組み込まれる。
【0031】
パワーツール100は、ブラシレス直流(DC)モータ150(
図2A~
図2B)を組み込んでいる。パワーツール100のようなブラシレスモータパワーツールにおいて、スイッチング素子は、ブラシレスモータ150を駆動させるために電源(例えば、バッテリパック)からの電力を選択的に印加するために、コントローラからの制御信号によって選択的に有効にされ且つ無効にされる。
図2A~
図2Bを参照すると、モータ150は、ステータ154と、少なくとも部分的にステータ154内に位置付けられたロータ158とを含む。ステータ154は、ステータコア162(例えば、ステータスタック)を形成するために、互いに積み重ねられた複数の個々の積層体を含む。ステータ154は、内方に延びるステータ歯166と、隣接するステータ歯166の各ペアの間に画定されたスロット170とを含む。図示の例において、ステータ154は、6つのステータスロット170を画定する6つのステータ歯166を含む。ステータ154は、更に、スロット170内に少なくとも部分的に位置付けられたステータ巻線174を含む。図示の例において、ステータ巻線174は、三相並列デルタ構成(three phase, parallel delta configuration)で接続された6つのコイル174A~174Fを含む。代替的な実施形態において、コイル174A~174Fは、代替的な構成(例えば、直列デルタ(series, deltaなど)で接続されてよい。
【0032】
ロータ158は、ロータコア186を形成するために互いに積層された個々のロータ積層体を含む。ロータシャフト190が、ロータコア186の中心孔194を通じて位置付けられる。ロータ158は、永久磁石202(そのうちの1つのみが
図2Bに示されている)が収容される複数のスロット198を含む。
【0033】
図3は、モータ150の動作を制御するために使用されるモータ駆動装置220の1つの例示的な実施形態を図示している。モータ駆動装置220は、モータコントローラ224、インバータブリッジ228、およびモータ150を含む。いくつかの実施形態において、モータコントローラ224は、別個のメモリを有するマイクロプロセッサとして実装される。他の実装において、モータコントローラ224は、(同じチップ上にメモリを有する)マイクロコントローラとして実装される。他の実施形態において、モータコントローラ224は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、ハードウェアが実装された状態マシンなどとして、部分的または全体的に実装されてよく、メモリは、必要とされないことがあり、或いは相応して修正されることがある。モータコントローラ224は、インバータブリッジ228を通じてモータ150の動作を制御する。モータコントローラ224は、ユーザ入力232と電流センサ236とに通信的に連結される。ユーザ入力232は、トリガスイッチ128、トルク設定ダイヤル120、前進/逆転セレクタ124(forward/reverse selector)、モードセレクタ、及び同等物を含むことがある。トリガスイッチ128は、トリガがモータコントローラ224に引っ張られる距離を決定して提供するために、例えば、ポテンショメータ、距離センサ、又は同等物を含むことがある。電流センサ236は、モータコイル174またはインバータブリッジ228に連結されて、各コイル174を通じて流れる電流を検出する。モータコントローラ224は、ユーザ入力232から受信する入力および電流センサ236から受信するモータフィードバックのうちの1つ以上に基づいて、インバータブリッジ228を通じてモータ150の可変速度制御を行う。
【0034】
インバータブリッジ228は、パワーツール100の三相(例えば、U、V、およびW)モータ150への電力供給を制御する。インバータブリッジ228は、モータ150の各位相についてハイサイド(high-side)電界効果(FET)トランジスタ240及びローサイド(low-side)FET244を含む。ハイサイドFET240およびローサイドFET244は、例えば、モータコントローラ224に実装される対応するゲートドライバによって制御される。
【0035】
ハイサイドFET240のドレインは、正DCバス248(例えば、電源)に接続され、ハイサイドFET240のソースは、ハイサイドFET240が閉じられるときに、モータ150(すなわち、対応する位相コイル174)に電源を提供するために、モータ150(例えば、モータ150の位相コイル174)に接続される。換言すれば、ハイサイドFET240は、正DCバス248とモータ位相コイル174との間に接続される。
【0036】
ローサイドFET244のドレインは、モータ150(例えば、モータ150の位相コイル174)に接続され、ローサイドFET244のソースは、負DCバス252(例えば、接地)に接続される。換言すれば、ローサイドFET244は、モータ位相コイル174と負DCバス252との間に接続される。ローサイドFET244は、閉じられるときに、モータ位相コイル174と負DCバス252との間に電流経路を提供する。
【0037】
図示の例では、モータ駆動装置220に、モータ150はDELTA(デルタ)構成で接続されたコイル174として現れている。以下の説明は、一例としてDELTA構成が提供されるが、この説明は、他の構成(例えば、WYE構成)にも等しく適用可能であり、これらの他の構成のための制御は、単純な数学的変換を使用して得られる。3つのモータ端子は、通常、U端子、V端子、W端子と呼ばれる。インバータブリッジ228は、モータ駆動装置220が、各端子を正DCバス248に接続するか、負DCバス252に接続するか、或いは上記で説明したように端子を開放したままにすることを可能にする。モータコントローラ224は、FET240、244が、FET240、244に提供されるパルス幅変調信号を使用してコイル174をアクティブ化させることを選択的に可能にする。位相コイル174の選択的なアクティブ化は、ロータ158の永久磁石202に対する力を生成させて、ロータ158を回転させる。ロータシャフト190は、ロータ158と共に回転して、パワーツール100の出力ドライバ116を作動させる。
【0038】
従来のモータは、モータコントローラ224にロータ磁石位置情報を提供するホールセンサ(または他の回転エンコーダ)を含む。モータコントローラ224は、ロータ磁石位置情報に基づいて、各位相U、V、及びWを選択的にアクティブ化させる。ホールセンサおよび他の外部位置センサは、モータ駆動装置220にコスト、サイズ、および設計の複雑さを増す追加の部品および配線を必要とする。センサの存在は、モータ150のコストも増加させ、高温での動作の信頼性も低下させる。
【0039】
モータ150の動作中、モータ位相コイル174を通過する電流は、ロータ磁石202の力を生成して、ロータ158を回転させる。逆に、ロータ磁石202が位相コイル174を通過すると、ロータ磁石202は、位相コイル174内で電流又は逆起電力(BEMF)を生成する。このBEMFは、ロータ位置を決定し且つモータ150を相応して駆動させるために、センサレスモータにおいて検出されることができる。センサレスモータ(sensorless motor)は、ロータ158の位置を検出するためのホール効果センサまたは他の外部センサ(例えば、外部角度位置センサ)を含まないタイプのモータを指す。むしろ、センサレスモータは、ロータ位置を決定するために、非アクティブな位相コイル174において生成されるBEMFを使用する。センサレスモータ駆動装置220は、コストを低減し、モータ150と他のコンポーネントとの間のより少ない相互接続を必要とし、それにより、モータ設計を簡略化する。
【0040】
典型的なモータ制御は、2つの位相をアクティブ化させることと、モータ150の1つの位相を非アクティブ化させることとを含む。非アクティブ位相は、ロータ158によって生成されるBEMFを検出するために使用される。位相コイル175の各々の順次アクティブ化のために、非アクティブコイル内で生成されるBEMFは、例えば、BEMF信号のゼロ交差(zero-crossing)を検出するために使用される。ロータ位置は、BEMF信号で検出されるゼロ交差に基づいて検出されることができる。モータコントローラ224は、上述のようにロータ位置を使用して、モータ150の回転を制御する。
【0041】
モータ駆動装置220は、いくつかの駆動技術、例えば、(ブロック通信とも呼ばれる)6段階制御、正弦波制御、およびフィールド指向制御(FOC:field oriented control)を実装することがある。6段階制御は、ロータ158内にトルクを生成するために、各位相(又はブロック)の連続的なアクティブ化を含む。ロータ磁石202がアクティブな位相コイル174から「0」度離れているとき、モータ150は、ロータ158内でトルクを生成しない。ロータ磁石202がアクティブな位相コイル174から「90」度離れているとき、モータ150は、ロータ158内で最大トルクを生成する。6段階制御は、ロータ158の位置を検出して、「90」度離れている位相を選択的にアクティブ化させて、ロータ158内で最大トルクを生成する、モータコントローラ224を含む。上述のように、モータコントローラ224は、非アクティブな位相コイル174で検出されるBEMF信号に基づいてロータ位置を検出する。ロータコントローラ158が回転すると、モータコントローラ224がロータ位置を決定することに応答して、モータコントローラ224は、ロータ磁石202から「90」度離れている次の位相コイル174をアクティブ化して、ロータ158が回転するにつれてロータ158内に最適な量のトルクを生成し続ける。
【0042】
図4は、モータ150の正弦波整流のためのモータ駆動装置220を図示している。モータ150を駆動するために、高、低、またはゼロの矩形ブロックにおいて電流信号をコイル174に提供する6段階制御とは異なり、正弦波整流は、滑らかな正弦波電流信号をコイル174に提供しようと試みる。
図4のモータ駆動装置220は、
図3に図示するようなモータ駆動装置220に類似するが、正弦波整流用のモータコントローラ224の論理コンポーネントが分解されて図示されている。モータ駆動装置220は、ロータ位置検出器268、正弦波基準ブロック272、及びPWM生成器276を含む。例えば、モータコントローラ224は、モータコントローラ224のメモリに格納される命令の実行を通じて、ロータ位置検出器268、正弦波基準ブロック272、およびPWM生成器276のうちの1つ以上を実施することがある。ロータ位置検出器268は、電流検出器236から電流検出信号を受信し、正弦波基準ブロック272にロータ位置信号を提供する。正弦波基準ブロック272は、ユーザ入力232およびロータ位置信号を受信し、正弦波制御信号をPWM生成器276に出力する。正弦波基準ブロック272は、例えば、ユーザ入力232(例えば、所望のトルク、所望の速度、及び同等のもの)、ロータ位置、および正弦波制御信号の間のマッピングを有する、ルックアップテーブルを含む。正弦波制御信号は、所望のトルクを出力するためにモータコイル174に提供される信号の所望の信号特性(例えば、振幅、周波数、及び同等のもの)の表示を提供することがある。PWM生成器276は、PWM信号を生成し、PWM信号をFET240、244に提供する。図示の例において、PWM生成器276は、第1のPWM信号をハイサイドFET240に提供し且つ第2のPWM信号をローサイドFET244に提供するものとして図示されている。いくつかの実施形態では、モータコイル174に提供される電流を制御するために、追加のPWM信号が他のFET240、244に提供されることがある。
【0043】
図5は、モータ150のフィールド指向制御のためのモータ駆動装置220を図示している。コイルブロックが順次式に整流される6段階制御とは異なり、フィールド指向制御は、例えば、FET240、244のPWM制御を使用して、滑らかなまたは台形の波形をモータコイル174に提供することを含む。
図5のモータ駆動装置220は、
図3に図示するようなモータ駆動装置220と類似するが、フィールド指向制御のためのモータコントローラ224の論理コンポーネントが分解されて図示されている。モータ駆動装置220は、ロータ位置検出器268、クラーク-パーク変換ブロック288(Clarke and Park transform block)、誤差比較器292、電流調整器296、逆パーク変換ブロック300(reverse Park transform block)、及び空間ベクトルPWM生成器304を含む。例えば、モータコントローラ224は、モータコントローラ224のメモリに記憶された命令の実行を通じて、ロータ位置検出器268、クラーク-パーク変換ブロック288、誤差比較器292、電流調整器296、逆パーク変換ブロック300、および空間ベクトルPWM生成器304のうちの1つ以上を実装することがある。ロータ位置検出器268は、電流検出器236から電流検出信号を受信し、クラーク-パーク変換ブロック288および逆パーク変換ブロック300にロータ位置信号を提供する。クラーク-パーク変換ブロック288は、モータ位相U、V、およびWのうちの少なくとも2つからモータ位相電流信号を受信し、クラーク変換を使用して、次に、パーク変換を使用して、モータ位相電流信号を同相ステータ電流(id)信号および直交位相ステータ電流(iq)信号に変換する。同相および直交電流信号は、誤差比較器292に提供される。誤差比較器292は、ユーザ入力232からの所望のトルクに基づいて所望の同相電流信号(idref)及び所望の直交電流信号(iqref)も受信する。誤差比較器292は、検出された電流信号と所望の電流信号との間の差を決定し、検出された電流信号と所望の電流信号との間の誤差を電流調整器296に提供する。電流調整器296は、誤差比較器292からの誤差信号に基づいて、直交領域および同相領域内の電圧制御信号(VqおよびVd)を逆パーク変換ブロック300に出力する。逆パーク変換ブロック300は、パーク変換を使用して、電圧制御信号を位相電圧制御信号に変換する。位相電圧制御信号は、空間ベクトルPWM生成器304に提供される。いくつかの実施形態では、逆クラーク変換PWM生成器が、空間ベクトルPWM生成器304の代わりに使用されてよい。空間ベクトルPWM生成器304は、インバータブリッジ228に提供されるPWM信号を生成するために空間ベクトル変調を使用する。図示の例において、空間ベクトルPWM生成器304は、インバータブリッジ228の1つのハイサイドFET240および2つのローサイドFET244にそれぞれ提供される、3つのPWM信号を生成するものとして図示されている。いくつかの実施形態では、異なる数のPWM信号およびFET240、244の異なる選択が、フィールド指向制御を実装するために使用されることがある。
【0044】
図3~
図5は、モータ150の6段階制御、正弦波整流、およびフィールド指向制御の例示的な実施形態のみを図示している。上述の制御方法は、デバイスおよびモータの仕様および設計に従って調整されてよい。さらに、モータ150を駆動させるために、上述した以外の他のモータ制御技術がモータコントローラ224によって使用されてもよい。
【0045】
上述のように、モータコントローラ224は、上述のモータ制御技術のいずれかを実装することができる。モータ制御技術の各々は、利点および不利点を含む。具体的には、モータ制御技術は、異なる負荷および速度条件で最適な駆動を生成する。例えば、6段階制御は、高速及び低トルクで使用されることがあるが、低速では比較的非効率的なことがある。6段階制御は、低速でトルクリップルを生成して、非効率的な動作を招くことがある。しかしながら、6段階制御は、正弦波またはフィールド指向制御技術よりも長い時間期間に亘ってモータからのピークトルクを達成するのに優れている。従って、適切な負荷点(load point)で適切なモータ制御技術を使用することによって、モータ効率を向上させることができる。例えば、モータコントローラ224は、複数の負荷点を異なる種類のモータ制御技術の1つに相関させるルックアップテーブルを格納することがある。次に、モータ制御装置224は、負荷点を検出し、ルックアップテーブルにアクセスして、負荷点と関連付けられる(複数のモータ制御技術から選択される)モータ制御技術を決定し、次に、モータ制御技術を適用してモータを駆動させてよい。従って、モータコントローラ224は、異なる負荷点で異なる制御技術を使用してモータを駆動させる。
【0046】
図6は、いくつかの実施形態に従ったモータ150を駆動させるための自動制御スイッチング(control switching)のための例示的な方法350のフローチャートである。図示の例において、方法350は、(ブロック354で)モータコントローラ224を使用して、ユーザ入力232に基づいて第1の負荷点を決定することを含む。モータコントローラ224は、ユーザ入力232、例えば、トリガスイッチ128からの速度入力、トルク設定ダイヤル120からのトルク限界、前進/逆転選択器124からの方向信号、モードセレクタからの動作モード、及び同等のものを受信する。モータコントローラ224は、これらのユーザ入力232に基づいて負荷点を決定する。例えば、負荷点は、高速低トルク印加、高速高トルク印加、低速低トルク印加、低速高トルク印加、及び同等のもののうちの1つである。いくつかの実施形態において、負荷点は、速度設定、例えば、(例えば、関連する閾値と比較されるときのまたは速度セレクタダイヤルからのトリガ引張りの量によって示される)高速、中速、低速、及び同等のもの、または、トルク設定、例えば、(例えば、関連する閾値と比較されるときのまたはトルクダイヤル120からのトリガ引張りの量によって示される)高トルク、中トルク、低トルク、及び同等のものであってよい。負荷点は、パワーツール100のモードセレクタを使用して選択されるアプリケーションまたはモードに基づいて決定されてもよい。いくつかの実施形態において、モータコントローラ224は、複数のユーザ入力232と関連する負荷点(例えば、低、中、または高負荷点)との間のマッピングを含む、モータコントローラ224またはパワーツール100のメモリにルックアップテーブルを格納することがある。
【0047】
方法350は、(ブロック358で)モータコントローラ224を使用して、第1の負荷点に対応する第1のモータ制御技術を決定することも含む。上述のように、モータコントローラ224は、モータコントローラ224またはパワーツール100のメモリにルックアップテーブルを格納することがある。ルックアップテーブルは、複数の負荷点とモータ制御技術との間のマッピングを含む。モータコントローラ224は、第1の負荷点に対応する第1のモータ制御技術(例えば、6段階制御、正弦波整流、フィールド指向制御、又は同等のもの)を選択する。
【0048】
方法350は、さらに、(ブロック362で)第1のモータ制御技術に基づいてモータ150を駆動させることを含む。モータ駆動装置220は、上記でさらに記載したように、選択されたモータ制御技術を実装する。例えば、モータコントローラ224は、6段階制御、正弦波整流、フィールド指向制御、又は同等のものを使用して、モータ150を駆動させる。
【0049】
方法350は、(ブロック366で)モータコントローラ224を使用して、第1の負荷点から第2の負荷点への変化を決定することも含む。モータコントローラ224は、(例えば、ツール動作の過程中に周期的に)ユーザ入力を分析し続けて、パワーツール100の所望のまたは動作的な負荷点を決定する。モータコントローラ224は、例えば、ブロック358に関して上述したような類似の技術を使用して、ユーザ入力232の変化に基づいて、第1の負荷点から第2の負荷点への負荷点の変化を決定する。方法350は、(ブロック370で)モータコントローラ224を使用して、第2の負荷点に対応する第2のモータ制御技術を決定することも含む。上述のように、モータコントローラ224は、モータコントローラ224またはパワーツール100のメモリにルックアップテーブルを格納することがある。ルックアップテーブルは、複数の負荷点とモータ制御技術との間のマッピングを含む。モータコントローラ224は、第2の負荷点に対応する第2のモータ制御技術(例えば、6段階制御、正弦波整流、フィールド指向制御、及び同等のもの)を選択する。
【0050】
方法350は、さらに、(ブロック374で)第2のモータ制御技術に基づいてモータ150を駆動させることを含む。モータ駆動装置220は、上記で更に記載したように、選択されたモータ制御技術を実装する。例えば、モータコントローラ224は、6段階制御、正弦波整流、フィールド指向制御、又は同等のものを使用して、モータ150を駆動させる。
【0051】
図7は、いくつかの実施形態に従ったモータ150を駆動させるための自動制御スイッチングのための例示的な方法400のフローチャートである。図示の例において、方法400は、(ブロック404で)モータコントローラ224を使用して、パワーツール動作パラメータを検出することを含む。モータコントローラ224は、パワーツール100またはモータ150の動作パラメータを決定するために、パワーツール100の様々なセンサと通信する。モータコントローラ224は、センサを使用して、パワーツール100のモータ電流、モータ電圧、トルク出力、及び同等のものを決定することがある。
【0052】
方法400は、(ブロック408で)モータコントローラ224を使用して、パワーツール動作パラメータに基づいてパワーツール100の負荷点を決定することも含む。例えば、負荷点は、高速低トルク印加、高速高トルク印加、低速低トルク印加、低速高トルク印加、及び同等のもののうちの1つである。いくつかの実施形態において、負荷点は、速度設定、例えば、高速、中速、低速、及び同等のもの、または、トルク設定、例えば、高トルク、中トルク、低トルク、及び同等のものであってよい。モータコントローラ224は、モータコントローラ224によってモニタリング(監視)されるセンサ出力に基づいて負荷点を決定する。
【0053】
方法400は、さらに、(ブロック412で)モータコントローラ224を使用して、負荷点に対応するモータ制御技術を決定することを含む。上述のように、モータコントローラ224は、モータコントローラ224またはパワーツール100のメモリにルックアップテーブルを格納することがある。ルックアップテーブルは、複数の負荷点とモータ制御技術との間のマッピングを含む。モータコントローラ224は、負荷点に対応するモータ制御技術(例えば、6段階制御、正弦波整流、フィールド指向制御、及び同等のもの)を選択する。方法350は、(ブロック416で)モータ制御技術に基づいてモータ150を駆動させることを含む。モータ駆動装置220は、上記で更に記載したように、選択されたモータ制御技術を実装する。方法350で議論したのと同様に、方法400は、負荷点の変化を決定すること、及び新しい負荷点に対応するモータ制御技術に自動的に切り換えることをさらに含んでよい。
【0054】
方法350及び400の1つの例示的な実装は、パワーツール100を使用してファスナを固定すること(seating)および駆動させること(driving)を含むことがある。ファスナを固定することは、ファスナ操作の開始時に精密制御および低速を含むことがある。モータコントローラ224は、低速を検出し、低速がパワーツール100の第1の負荷点に対応することを決定する。典型的には、正弦波整流またはフィールド指向制御は、低速適用により適している。何故ならば、正弦波整流およびフィールド指向制御は、6段階制御と比較して低いトルクリップル出力でより良好な精度を提供するからである。従って、モータコントローラ224は、例えば、フィールド指向制御が検出された負荷点に対応することを決定する。モータコントローラ224は、フィールド指向制御に基づいてモータ150を駆動させる。ファスナがひとたび固定されると、パワーツール100は高速で作動して、ファスナをワークピース内に駆動させることがある。モータコントローラ224は、低速から高速への変化を検出する。典型的には、6段階制御は、高速動作により適している。何故ならば、6段階制御は、過熱前により長いランタイムを提供し、正弦波またはフィールド指向制御よりも高いピーク性能を達成することができるからである。従って、モータコントローラ224は、6段階制御が、例えば、予め格納されたルックアップテーブルに基づいて、高速動作に対応することを決定する。これに応答して、モータコントローラ224は、締付動作が完了するまで、6段階制御に基づいてモータ150を駆動させる。
【0055】
上述のように、モータ150は、センサレスモータであり、ホール効果センサまたは外部角度位置センサ(すなわち、モータコンポーネントに対して外部の角度位置センサ)を含まない。ロータ位置を検出してモータを制御するために外部位置センサを使用する1つの代替は、高周波注入ロータ位置感知(high-frequency injection rotor position sensing)である。典型的には、高周波注入ロータ位置感知は、インバータブリッジ変調を通じてより高次の高調波周波数を注入するための空間ベクトル変調を含む。高周波信号は、FET240、244に提供されるPWM信号に注入される。これらの周波数に対するモータ150の応答は、起動時および動作中のロータ位置を決定するために使用される。しかしながら、インバータ変調を通じた高周波注入は、より高いスイッチング速度を必要とし、それはインバータブリッジ228の損失を増加させ、モータ150の性能を低下させる。
【0056】
図8は、いくつかの実施形態に従った高周波注入ロータ位置検出のためのモータ駆動装置220を図示している。いくつかの実施形態において、高周波数とは、インバータブリッジ228の公称スイッチング周波数よりも大きい周波数を指す。いくつかの例において、インバータブリッジ228の公称スイッチング周波数は、約8kHz~20kHzの間の周波数である。
図8のモータ駆動装置220は、
図3~
図5に図示するようなモータ駆動装置220に類似するが、高周波注入のためのモータコントローラ224の論理コンポーネントが分解されて図示されている。モータ駆動装置220は、結合回路450(coupling circuit)、減結合回路454(de-coupling circuit)、応答測定ブロック458、及びロータ位置推定器ブロック462を含む。例えば、モータコントローラ224は、応答測定ブロック458およびロータ位置推定器ブロック462のうちの1つ以上を実装することがある。結合回路450は、例えば、信号生成器466から、高周波注入信号を受信し、信号生成器466は、高周波注入信号を生成する発振器(オシレータ)を含むことがある。結合回路450は、注入信号をDCバス248、252に結合する。図示の例において、結合回路450は、注入信号を正DCバス248に結合する。他の例において、結合回路450は、注入信号を負DCバス252に、或いは正DCバス248および負DCバス252の両方に結合することがある。いくつかの実施形態において、結合回路450は、信号生成器466をDCバス248、252に容量的に結合するキャパシタを含む。いくつかの実施形態において、結合回路450は、信号生成器466をDCバス248、252に結合する変圧器(例えば、巻線のコイル)を含む。DCバス248、252は、モータ150の動作のために、DC動作電圧信号と共に注入信号をインバータブリッジ228に提供する。
【0057】
減結合回路454は、モータ位相コイル174に接続される。減結合回路454は、(非駆動位相とも呼ばれる)非アクティブな位相コイル174に選択的に接続されて、高周波注入に対するモータ応答を抽出する。減結合回路454は、非アクティブな位相コイル174で検出される他の信号から応答信号を減結合する。減結合回路454は、応答信号を応答測定ブロック458に提供する。減結合回路454は、結合回路と類似の構造を有してよい。例えば、減結合回路454は、非アクティブな位相コイル174を応答測定ブロック458に容量的に結合することがあり、或いは非アクティブな位相コイル174を応答測定ブロック458に結合する変圧器を含むことがある。例えば、応答信号は、高周波注入信号に対するモータ150の応答である電流信号である。減結合回路454は、応答信号としての応答電流信号を応答測定ブロック458に提供する。図示の例では、説明を簡単にするために、単一の減結合回路454が図示されており、減結合回路454は、単一のモータ端子に接続されている。しかしながら、減結合回路454は、モータ端子の非アクティブな位相の間の各モータ端子の応答を検出するために、全てのモータ端子U、V、及びWに接続されてよい。代替的に、各モータ端子からの応答信号を応答測定ブロック458に提供するために、モータ端子の各々に1つずつ、別個の減結合回路454が設けられてよい。
【0058】
応答測定ブロック458は、減結合回路454から応答信号を受信し、高周波注入信号に対するモータの応答を測定する。例えば、応答測定ブロック458は、高周波注入に応答して、各モータコイル174のインピーダンス(例えば、リラクタンス(電気抵抗)、インダクタンス、及び同等のもの)を検出する。応答測定ブロック458は、測定信号として、ロータ位置推定器ブロック462に対する測定された応答を提供する。次に、測定された信号の特性を使用して、モータおよびロータ位置に関する情報を決定することができる。例えば、いくつかの実施形態において、注入された信号と測定された信号との間の振幅差または位相差(遅延)は、ロータ位置を示す。
【0059】
ロータ位置推定器ブロック462は、応答測定ブロック458から測定信号を受信し、測定信号に基づいて、ロータ位置、ロータ速度、またはそれらの両方を決定する。モータコントローラ224は、異なるインピーダンス測定値とロータ位置との間のマッピングを含むルックアップテーブルを格納することがある。ロータ位置推定器ブロック462は、ルックアップテーブルを参照することによってロータ位置を決定して、インピーダンス測定に対応するロータ位置を決定する。ロータ位置推定器ブロック462は、変化するロータ位置を使用して、モータ150の回転速度を決定してもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、減結合回路454、応答測定ブロック458、および/またはロータ位置推定器ブロック462は、ロータ位置検出器268内に設けられる(
図4および
図5を参照)。次に、モータ150は、別個のロータ位置センサ(例えば、ホールセンサまたは外部位置センサ)を必要とせずに、上記のモータ制御技術のいずれかに従って、ロータ位置検出器268によって提供されるロータ位置および/またはロータ速度に基づいて、モータ駆動装置220によって駆動させられる。
【0061】
図9は、いくつかの実施形態に従った高周波注入ロータ位置検出のためのモータ駆動装置220を図示している。
図9のモータ駆動装置220は、
図8のモータ駆動装置220に類似している。しかしながら、
図9に図示する例において、高周波注入信号は、DCバス248、252ではなく、モータ端子U、V、及びWに直接的に結合されている。結合回路450は、ハイサイドFET240とローサイドFET244との接合部で高周波注入信号を結合する。いくつかの実施形態において、結合回路450は、モータ150の端子U、V、およびWに対して直接的に高周波注入信号を結合する。
【0062】
図9に図示する例では、単一の結合回路450が図示されており、結合回路450は、単一のモータ端子に接続されている。しかしながら、結合回路450は、各モータ端子に高周波注入信号を提供するために、全てのモータ端子U、V、及びWに接続されてよい。代替的に、信号生成器466から各モータ端子への注入信号を提供するために、モータ端子の各々に1つずつ、別個の結合回路450が設けられてよい。例えば、モータコントローラ224は、モータ端子の対応するハイサイドFET240が閉じられており、モータ端子の対応するローサイドFET244が開いているときに、高周波信号をモータ端子U、V、及びWに注入するように、結合回路450を制御することがある。
【0063】
いくつかの実施形態において、モータコントローラ224は、空間ベクトル変調を使用して、第3高調波周波数信号をDCバス248、252またはモータ端子U、V、およびWに注入する。この例において、第3高調波周波数とは、インバータブリッジ228の出力信号の周波数の約3倍の周波数を指す(例えば、インバータブリッジ228の出力信号が200Hzであるとき、注入される信号は約600Hzである)。ロータ位置検出器268は、第3高調波注入に対するモータ応答を決定して、ロータ位置及び速度を推定する。第三高調波注入は、非アクティブな位相端子において正弦波BEMF応答を生成する。従って、第三高調波注入は、より正確なロータ位置及びロータ速度推定を提供する。
【0064】
図10は、いくつかの実施形態に従った高周波注入ロータ位置検出のためのモータ駆動装置220を図示している。
図9のモータ駆動装置220は、
図8および
図9のモータ駆動装置220と類似している。しかしながら、
図9に図示する例において、高周波信号は、注入コイル470に注入される。注入コイル470は、高周波注入信号を受信し、モータ150に電力供給するために使用されない。具体的には、結合回路450は、信号生成器466からの高周波注入信号を注入コイル470に提供する。これらの実施形態において、非アクティブなコイル174の応答は、
図8および
図9に関して上述したのと同様に検出される。ロータの位置及び/又は速度は、注入コイル470への高周波注入に対するモータの応答に基づいて検出される。上述のように、注入コイル470における第3高調波注入を伴う空間ベクトル変調を使用して、モータ150の応答を検出して、ロータ位置推定の精度を高めてよい。いくつかの実施形態において、注入コイル470は、既存の位相コイル174の周囲に設けられてよい。
図11は、注入コイル470の1つの例示的な配置を図示している。図示の例において、注入コイル470は、モータ150の既存の位相コイル174の周囲に巻かれる。注入コイル470は、例えば、ステータ154の頂部または底部で他の場所に配置されてよい。
【0065】
図12は、高周波注入ロータ位置検出のための例示的な方法500のフローチャートである。図示の例において、方法500は、(ブロック504で)結合回路450を使用して、高周波注入信号をモータ150に結合することを含む。上述のように、結合回路450は、高周波注入信号を、DCバス248、252、モータ端子U、V、及びW、ならびに注入コイル470のうちの1つに結合する。高周波注入信号は、一般に、インバータブリッジ228のスイッチング周波数よりも高い周波数を有する。高周波注入信号をDCバスまたはモータコイル174、470に結合することは、インバータブリッジ228のより低いスイッチ周波数を維持して性能を向上させるのを助ける。
【0066】
方法500は、(ブロック508で)モータコントローラ224を使用して、高周波注入信号に対するモータ応答を検出することを含む。モータ応答は、モータ150の非アクティブな位相コイル174で検出される。減結合回路454は、モータ応答を検出し、応答信号を応答測定ブロック458に提供する。応答測定ブロック458は、上記で更に議論したように、応答信号に基づいてモータ応答を測定し、測定信号をロータ位置推定器ブロック462に提供する。
【0067】
本方法500は、(ブロック512で)モータコントローラ224を使用して、インバータブリッジ228でより低いスイッチ周波数を維持しながら、モータ応答に基づいてロータ位置を決定することを含む。ロータ位置推定器ブロック462は、モータ応答を受信し、モータ応答に基づいてロータ位置を推定する。具体的には、ロータ位置推定器ブロック462は、測定信号を受信し、更に上述したように、測定信号に基づいてロータ位置を推定する。上述のように、高周波注入信号は、DCバス248、252またはモータ端子で提供されるので、モータ150を作動させるために使用されるインバータブリッジ228のFET240、244の通常のスイッチング周波数は影響を受けない。
【0068】
方法500は、(ブロック516で)検出されたロータ位置に基づいてモータ150を駆動させることを含む。ロータ位置検出器268によって検出されるロータ位置および/または速度は、モータ150を駆動させるために使用される。例えば、6段階制御において、ロータ位置は、モータ150の次のコイル174またはブロックを作動させるために使用される。正弦波整流において、ロータ位置は、正弦波基準ブロック272に提供されて、インバータブリッジ228のためのPWM制御信号を決定する。フィールド指向制御において、ロータ位置は、クラーク-パーク変換ブロック288のパーク変換ブロックおよび逆パーク変換ブロックに提供されて、インバータブリッジ228のためのPWM制御信号を決定する。次に、方法500は、ブロック504に戻ってよい。
【0069】
従って、本明細書に記載する様々な実施形態は、パワーツールのためのセンサレスモータおよびセンサレスモータの制御を提供する。様々な構成および利点は、以下の特許請求の範囲に記載されている。