(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】電極体製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20230424BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20230424BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20230424BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20230424BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20230424BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01G13/00 381
H01G11/84
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2022045693
(22)【出願日】2022-03-22
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2021076263
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿下 健一
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-200926(JP,A)
【文献】特開2020-024816(JP,A)
【文献】特開2019-215977(JP,A)
【文献】特開2020-047401(JP,A)
【文献】特開2017-004615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/04
H01M10/0585
H01M10/052
H01G11/84
H01G13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークを積み重ねた積層型電極体を製造する電極体製造装置であって、
回転軸を中心に回転する円筒状の回転基体と、
上記回転基体の外周縁部に設けられ、上記回転基体と共に回転移動する複数の積重ねテーブル部と、
保持している未載置ワークを、上記積重ねテーブル部のテーブル面又は上記テーブル面上の既に載置された既載置積層体の径方向外側面である被載置面上に移載するワーク移載部と、を備え、
上記積重ねテーブル部は、
上記テーブル面の径方向高さHtを変更する高さ変更部を有し、
上記高さ変更部は、
少なくとも、上記未載置ワークを上記ワーク移載部から上記積重ねテーブル部に移載するワーク移載角度位置では、
上記被載置面の径方向高さHsが、予め定めた径方向高さHsc(Hs=Hsc)になるように、上記テーブル面の上記径方向高さHtを変更し、
上記ワーク移載部は、
上記ワーク移載角度位置における上記被載置面の回転移動に同期して、上記未載置ワークを移動させつつ上記被載置面に載せる
電極体製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電極体製造装置であって、
完成した前記積層型電極体を前記積重ねテーブル部から移載する電極体移載部を備え、
上記電極体移載部は、
上記積層型電極体を受け取る電極体受取部を有しており、
上記積層型電極体を上記積重ねテーブル部から上記電極体受取部に移載する電極体移載角度位置で、かつ、上記積層型電極体を排出する排出タイミングに、
上記積重ねテーブル部から分離された上記積層型電極体を、上記積層型電極体の径方向外側頂面の回転移動と等速で上記電極体受取部を移動させつつ受け取る
電極体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のワークを積み重ねてなる積層型電極体を製造する電極体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池やキャパシタを構成する電極体として、複数の電極板が積層された積層型電極体が知られている。一例としては、複数の矩形状の正極板と複数の矩形状の負極板とが、矩形状のセパレータを介して交互に積層された積層型電極体がある。また、このような積層型電極体を形成するための電極体製造装置も知られており、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の電極体製造装置(特許文献1では「電池材料積層装置」)は、ワークを搬送する「搬送機構」と、「回転体」と、回転体の周縁部に設けられ回転体と共に回転移動する複数の「保持部」と、所定の位置に配置された「積層テーブル」とを備える(特許文献1の
図1、請求項1,2等を参照)。この装置では、まずワークを搬送機構から、回転体の周縁部に設けられた保持部に移載した上で、回転体を半回転させて、この保持部を所定の位置に配置された積層テーブルの近傍まで移動させる。そして、保持部を積層テーブルに対して一時的に停止させて、ワークを保持部から積層テーブルに移載する。この動作を繰り返して、積層テーブル上に複数のワークを積み重ねて積層型電極体を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の装置では、保持部は回転体と共に回転移動するのに対し、積層テーブルは所定の位置に配置されているため、回転体と共に回転移動していた保持部を、ワークを保持部から積層テーブルに移載する際に、回転体に対して移動させて、保持部及びこれに保持されたワークを一時的に停止させている。このため、適切にワークを保持部から積層テーブルに移し、適切にワークを積み重ねて積層型電極体を形成するのが難しい。特に積層型電極体の生産性を高めるべく、回転体の回転速度を上げるほど、高速で回転移動する保持部を急に停止させることになるため、適切にワークを保持部から積層テーブルに移し、適切にワークを積み重ねて積層型電極体を形成するのが難しくなる。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、適切にワークを積み重ねて積層型電極体を製造できる電極体製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、複数のワークを積み重ねた積層型電極体を製造する電極体製造装置であって、回転軸を中心に回転する円筒状の回転基体と、上記回転基体の外周縁部に設けられ、上記回転基体と共に回転移動する複数の積重ねテーブル部と、保持している未載置ワークを、上記積重ねテーブル部のテーブル面又は上記テーブル面上の既に載置された既載置積層体の径方向外側面である被載置面上に移載するワーク移載部と、を備え、上記積重ねテーブル部は、上記テーブル面の径方向高さHtを変更する高さ変更部を有し、上記高さ変更部は、少なくとも、上記未載置ワークを上記ワーク移載部から上記積重ねテーブル部に移載するワーク移載角度位置では、上記被載置面の径方向高さHsが、予め定めた径方向高さHsc(Hs=Hsc)になるように、上記テーブル面の上記径方向高さHtを変更し、上記ワーク移載部は、上記ワーク移載角度位置における上記被載置面の回転移動に同期して、上記未載置ワークを移動させつつ上記被載置面に載せる電極体製造装置である。
【0008】
上述の電極体製造装置では、積重ねテーブル部を回転基体の外周縁部に設けている。この積重ねテーブル部は、テーブル面の径方向高さHtを変更する高さ変更部を有しており、高さ変更部は、少なくともワーク移載角度位置において、既載置積層体等の被載置面の径方向高さHsが予め定めた径方向高さHscになるように、テーブル面の径方向高さHtを変更する。これにより、回転基体が1回転する毎に、未載置ワークを1個ずつワーク移載部から積重ねテーブル部に移載できるため、回転基体を所定回転(n回転)させることで、所定数(n)の既載置ワークからなる積層型電極体を容易に形成できる。
更に、上述の電極体製造装置では、ワーク移載角度位置における既載置積層体等の被載置面の回転移動に同期して、未載置ワークを移動させつつ被載置面に載せるため、積重ねテーブル部において、適切に未載置ワークを積み重ねて積層型電極体を製造できる。
【0009】
なお、「積層型電極体」は、リチウムイオン二次電池などの二次電池や、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイスを構成する電極体である。積層型電極体としては、例えば、複数の正極板と複数の負極板とがセパレータや固体電解質層を介して交互に積層された積層型電極体や、複数の両極電極板(集電箔の一方の主面上に正極活物質層が形成され、他方の主面上に負極活物質層が形成された電極板)がセパレータや固体電解質層を介して積層された積層型電極体などが挙げられる。
【0010】
「ワーク」としては、例えば、1枚の電極板或いは1枚のセパレータや固体電解質層からなるワークや、正極板、セパレータ(又は固体電解質層)、負極板及びセパレータ(又は固体電解質層)がこの順で予め積層され一体化された、いわゆるモノセルからなるワーク、セパレータ(又は固体電解質層)、電極板及びセパレータ(又は固体電解質層)がこの順で予め積層され一体化されたセパレータ付き電極板(固体電解質層付き電極板)からなるワークなどが挙げられる。また、ワークは、相互に同一形態でなくてもよい。例えば、積層型電極体の積層方向の一端部をなすワーク或いは他端部をなすワークを、これら以外の積層方向の中間部をなすワークと異なる形態としてもよい。
【0011】
積重ねテーブル部において、テーブル面に載置した既載置積層体を保持する手法としては、例えば、既載置積層体を吸引によりテーブル面に吸着し保持する手法が挙げられる。なお、この手法を用いる場合には、既載置積層体を構成する既載置ワーク同士は、例えば接着剤で接着して一体化すると良い。即ち、新たに積み重ねる未載置ワークに、或いは、既載置積層体の径方向外側面(被載置面)に予め接着剤を塗布しておき、未載置ワークを既載置積層体に積み重ねると共に、未載置ワークを既載置積層体に接着すると良い。
また、回転基体の回転速度は、定速とすると回転エネルギーの増減を少なく出来て好ましいが、回転速度を変化させるようにしても良い。
【0012】
また、テーブル面上に載置した既載置積層体の径方向外側面を、複数の爪などの係合部材で係合して径方向内側に向けて引っ張ることにより、既載置積層体をテーブル面に保持する手法も挙げられる。
また、テーブル面上の既載置積層体を、ベルトで径方向内側のテーブル面に押し付けつつ、既載置積層体の回転移動と共にベルトを一緒に移動させることにより、既載置積層体をテーブル面に保持する手法も挙げられる。
これらの手法では、既載置積層体を構成する既載置ワーク同士を接着して一体化しなくてもよいが、接着によって既載置ワーク同士を一体化してもよい。
【0013】
更に、上記の電極体製造装置であって、完成した前記積層型電極体を前記積重ねテーブル部から移載する電極体移載部を備え、上記電極体移載部は、上記積層型電極体を受け取る電極体受取部を有しており、上記積層型電極体を上記積重ねテーブル部から上記電極体受取部に移載する電極体移載角度位置で、かつ、上記積層型電極体を排出する排出タイミングに、上記積重ねテーブル部から分離された上記積層型電極体を、上記積層型電極体の径方向外側頂面の回転移動と等速で上記電極体受取部を移動させつつ受け取る電極体製造装置とすると良い。
【0014】
上述の電極体製造装置では、電極体受取部を有する電極体移載部を更に備えており、上述の電極体移載角度位置でかつ排出タイミングに、積重ねテーブル部から分離された積層型電極体を、積層型電極体の径方向外側頂面の回転移動と等速で電極体受取部を移動させつつ受け取る。このようにすることで、積層型電極体を少ない衝撃でスムーズに電極体受取部に移載して、適切に装置外部に排出できる。
【0015】
なお、積重ねテーブル部から積層型電極体を分離する手法としては、例えば、積層型電極体を吸引によりテーブル面に吸着保持している場合には、その吸引を解除して積層型電極体を分離する手法が挙げられる。
また、積層型電極体を係合部材で係合して径方向内側のテーブル面に向けて引っ張って保持している場合には、この係合部材による係合を解除して積層型電極体を分離する手法が挙げられる。
また、積層型電極体をベルトで径方向内側のテーブル面に押し付けて保持している場合には、このベルトを移動させてベルトによる押し付けを解除することにより、積層型電極体を分離する手法が挙げられる。
「電極体受取部」としては、例えば、複数の搬送ローラに架け渡した搬送ベルトや、積層型電極体を把持可能に構成したロボットアームの先端部などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る積層型電極体の断面図である。
【
図2】実施形態に係る積層型電極体の製造方法のフローチャートである。
【
図3】実施形態に係る電極体製造装置の説明図である。
【
図4】実施形態に係り、積重ねテーブル部の説明図である。
【
図5】実施形態に係り、第5積重ねテーブル部に1段目用の未載置ワークを移載した様子を示す説明図である。
【
図6】実施形態に係り、第2積重ねテーブル部から、完成した積層型電極体を移載する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施形態に係る積層型電極体1の模式的な断面図を示す。なお、以下では、積層型電極体1の縦方向EH、横方向FH及び厚み方向(積層方向)GHを、
図1に示す方向と定めて説明する。この積層型電極体1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型で密閉型のリチウムイオン二次電池(図示しない)に用いられる。
【0018】
積層型電極体1は、複数の矩形状の正極板(電極板)11と、複数の矩形状の負極板(電極板)21とが、多孔質樹脂膜からなる矩形状のセパレータ31を介して交互に積層された電極体であり、直方体形状を有する。この積層型電極体1は、後述するように、ワーク10を厚み方向GHに複数段(本実施形態では、段数n=10段)積み重ねると共に、隣り合うワーク10同士を第1接着層41を介して一体化したものである。
【0019】
段数n=10段の積層型電極体1を構成する10個のワーク10のうち、
図1中、最上段に位置する第2ワーク10Bを除く、残り9個の第1ワーク10Aは、それぞれモノセルであり、正極板11、セパレータ31、負極板21及びセパレータ31を、この順に第2接着層42を介して積層し一体化したワークである。一方、最上段の第2ワーク10Bは、セパレータ付き負極板であり、負極板21の両主面にそれぞれ第3接着層43を介してセパレータ31を積層し一体化したワークである。
【0020】
正極板11は、矩形状のアルミニウム箔からなる正極集電箔12と、この正極集電箔12の両主面上にそれぞれ形成された正極活物質層13とからなる。正極活物質層13は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極活物質粒子と、導電粒子と、結着剤とから構成されている。正極板11のうち、横方向FHの一方側(
図1中、左方)で縦方向EH(
図1中、紙面に直交する方向)に延びる端部は、厚み方向GHに正極活物質層13が存在せず、正極集電箔12が厚み方向GHに露出した正極露出部11rとなっている。
【0021】
負極板21は、矩形状の銅箔からなる負極集電箔22と、この負極集電箔22の両主面上にそれぞれ形成された負極活物質層23とからなる。負極活物質層23は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質粒子と、結着剤とから構成されている。負極板21のうち、横方向FHの他方側(
図1中、右方)で縦方向EHに延びる端部は、厚み方向GHに負極活物質層23が存在せず、負極集電箔22が厚み方向GHに露出した負極露出部21rとなっている。
【0022】
次いで、上記の積層型電極体1の製造方法について説明する(
図2~
図6参照)。まず「ワーク作製工程S1」(
図2参照)において、ワーク10を作製する。
まず正極板11及び負極板21を作製する。即ち、正極活物質粒子、導電粒子、結着剤及び分散媒を混合して得た正極活物質ペーストを、正極集電箔12の一方の主面上に塗布して未乾燥正極活物質層(不図示)を形成し、その後、これを加熱乾燥させて正極活物質層13を形成する。また、正極集電箔12の他方の主面上にも、同様にして正極活物質層13を形成する。その後、ロールプレスにより正極活物質層13を圧密化して、正極板11を作製する。また、負極活物質粒子、結着剤及び分散媒を混合して得た負極活物質ペーストを、負極集電箔22の一方の主面上に塗布して未乾燥負極活物質層(不図示)を形成し、その後、これを加熱乾燥させて負極活物質層23を形成する。また、負極集電箔22の他方の主面上にも、同様にして負極活物質層23を形成する。その後、ロールプレスにより負極活物質層23を圧密化して、負極板21を作製する。また別途、セパレータ31を用意する。
【0023】
次に、第1ワーク10A(モノセル)については、正極板11、セパレータ31、負極板21及びセパレータ31を、この順に第2接着層42を介して積層し一体化して形成する。一方、第2ワーク10B(セパレータ付き負極板)については、セパレータ31、負極板21及びセパレータ31を、この順に第3接着層43を介して積層し一体化して形成する。
【0024】
その後「ワーク移載工程S2」、「判定工程S3」及び「電極体移載工程S4」(
図2参照)を行う。このワーク移載工程S2から電極体移載工程S4までは、電極体製造装置100(
図3~
図6参照)を用いて行う。この電極体製造装置100は、円筒状の回転基体110と、回転基体110の外周縁部110sに設けられ、回転基体110と共に回転移動する複数(本実施形態では8個)の積重ねテーブル部120と、未載置ワーク10Pを積重ねテーブル部120に移載するワーク移載部140と、未載置ワーク10Pに接着剤41Zを塗布する接着剤塗布部160と、完成した積層型電極体1を積重ねテーブル部120から移載する電極体移載部170と、制御部190とを備える。なお、未載置ワークとは、後述する被載置面hsmに載置される予定のワークをいう。
【0025】
このうち回転基体110は、モータ(不図示)に接続された回転軸111を有し、この回転軸111を中心に定速(一定の角速度ω)で
図3中、反時計回りに回転する。
積重ねテーブル部120(第1積重ねテーブル部120A~第8積重ねテーブル部120H)は(
図4も参照)、矩形状のテーブル面121mを含む矩形板状の吸着テーブル121と、この吸着テーブル121を回転基体110の径方向RHに移動させて、テーブル面121mの径方向高さHt(回転基体110の外周縁部110sからの径方向高さHt)を変更する高さ変更部123とを有する。このうち吸着テーブル121は、吸引機構122を有しており、吸引により既載置積層体5をテーブル面121mに吸着可能に構成されている。
【0026】
一方、高さ変更部123は、吸着テーブル121に接続されたXリンク機構124と、Xリンク機構124を径方向RHに動かすサーボモータ125と、(既載置積層体5が載置されていない)積重ねテーブル部120のテーブル面121m又はテーブル面121m上の既に載置された既載置積層体5の径方向外側面5mである被載置面hsm(以下、既載置積層体5等の被載置面hsm、或いは単に、被載置面hsmともいう)の径方向高さHs(回転基体110の外周縁部110sからの径方向高さHs)を検知する高さ検知センサ126と、高さ検知センサ126の情報に基づいてサーボモータ125を制御する制御部190とから構成されている。具体的には、高さ検知センサ126は、回転基体110の回転軸111に対し、
図3中、右方(時計の3時の角度位置)に設置されており、回転基体110と共に回転移動する積重ねテーブル部120が、3時の角度位置を通過する際に、既載置積層体5等の被載置面hsmの径方向高さHsを検知する。
【0027】
そしてその後、この積重ねテーブル部120が、回転軸111に対しワーク移載角度位置θw(本実施形態では、
図3中、最上位置(時計の12時の角度位置))に達するまでの間(本実施形態では、90度回転する間)に、制御部190は、高さ検知センサ126の情報に基づいてサーボモータ125を駆動制御し、既載置積層体5等の被載置面hsmの径方向高さHsが、予め定めた径方向高さHsc(Hs=Hsc)になるように、テーブル面121mの径方向高さHtを変更する。これにより、積重ねテーブル部120がワーク移載角度位置θwに達するまでには、既載置積層体5等の被載置面hsmの径方向高さHsが予め定めた径方向高さHscにされる。従って、いずれの積重ねテーブル部120(120A~120H)でも、また、テーブル面121mにワーク10を何段積み重ねても、ワーク移載角度位置θwにおける、(新たな未載置ワーク10P移載前の)既載置積層体5等の被載置面hsmの周速(移動速度V2)は同じにされる。
【0028】
なお、
図4では、3段目用のワーク10(未載置ワーク10P)を段数n=2段の既載置積層体5に積み重ねて、段数n=3段の既載置積層体5とした直後の積重ねテーブル部120の状態を示している。この時点での既載置積層体5の被載置面hsmの径方向高さHsは、2つ分の既載置ワーク10Qからなる段数n=2段の既載置積層体5の高さを考慮して高さ制御した径方向高さHscに、新たに積み重ねたワーク10(未載置ワーク10P)の分を加えた高さになっている。
【0029】
ワーク移載部140は、ワーク移載角度位置θwにおける、既載置積層体5等の被載置面hsmの回転移動に同期して、未載置ワーク10Pを移動させつつ被載置面hsmに載せる。
【0030】
まずワーク移載部140による未載置ワーク10Pの搬送について説明する。ワーク移載部140は、複数の搬送ローラ141と、これらの搬送ローラ141に架け渡した、多数の吸引孔を有する吸着ベルト143と、吸引機構144とを有しており、未載置ワーク10Pを吸引機構144の吸引により吸着ベルト143に吸着させつつ搬送速度V1で搬送する。
【0031】
詳細には、まず吸着ベルト143上に配置された未載置ワーク10Pを、その外側面10Pm(吸着ベルト143に吸着されていない側の主面)を上方に向けた状態で、
図3中、右方に搬送速度V1で搬送する。その後、吸着ベルト143を搬送ローラ141で折り返して、未載置ワーク10Pを、外側面10Pmを下方に向けた状態で
図3中、左方に搬送速度V1で搬送する。なお、この搬送速度V1は、ワーク移載角度位置θwにおける、既載置積層体5等の被載置面hsmの接線方向の移動速度V2(周速)と同じ速度(V1=V2)にしてある。
【0032】
また、ワーク移載部140は、搬送された未載置ワーク10Pがワーク移載角度位置θwに達すると、吸引機構144による吸引が無くなるように構成されている。このため、吸着ベルト143に下方から吸着されていた未載置ワーク10Pは、ワーク移載角度位置θwにおいて、吸着ベルト143から分離される。
【0033】
しかも、未載置ワーク10Pがワーク移載角度位置θwに達する搬送のタイミングと、この未載置ワーク10Pを移載する積重ねテーブル部120がワーク移載角度位置θwに達する回転のタイミングとが同期するように、吸着ベルト143上の未載置ワーク10Pの配置(載置位置と載置タイミング)が調整されている。
【0034】
このため前述したように、ワーク移載角度位置θwにおいて、既載置積層体5等の被載置面hsmの回転移動に同期して、未載置ワーク10Pを移動させつつ被載置面hsmに載せることができる。即ち、(分離された)未載置ワーク10Pを吸着ベルト143から既載置積層体5等の被載置面hsm上に移載し、未載置ワーク10Pの外側面10Pmを被載置面hsmに重ねることができる。
【0035】
接着剤塗布部160は、未載置ワーク10Pの外側面10Pmに接着剤41Zを塗布可能に構成されている。具体的には、接着剤塗布部160は、ワーク移載部140の近傍に設けられており、ワーク移載部140の吸着ベルト143に吸着しつつ、外側面10Pmを下方に向けて
図3中、左方に搬送されている未載置ワーク10Pのうち外側面10Pmに、接着剤41Zを塗布する。
【0036】
電極体移載部170は、10段のワーク10を積み重ねて完成した積層型電極体1を受け取る搬送ベルト(電極体受取部)173を有する。電極体移載部170は、積層型電極体1を積重ねテーブル部120から移載する電極体移載角度位置θd(本実施形態では、
図3中、時計の6時の角度位置)で、かつ、完成した積層型電極体1を排出する排出タイミングTdに、積重ねテーブル部120から分離した積層型電極体1を、積層型電極体1の径方向外側頂面1mの回転移動と等速で搬送ベルト173を移動させつつ受け取る。
【0037】
具体的には、電極体移載部170は、複数の搬送ローラ171と、これらの搬送ローラ171に架け渡された搬送ベルト173とを有しており、搬送ベルト173上に配置した積層型電極体1を、搬送速度V4で搬送可能に構成されている(
図6参照)。この搬送速度V4は、電極体移載角度位置θdにおける、積層型電極体1の径方向外側頂面1mの接線方向の移動速度V3(周速)と同じ速度にしてある。
一方、積重ねテーブル部120は、電極体移載角度位置θdに達するタイミングで、吸着テーブル121の吸引機構122による吸引を解除して、吸着テーブル121に吸着していた積層型電極体1を吸着テーブル121から分離し、(分離された)積層型電極体1を搬送ベルト173に載せるように構成されている。
【0038】
制御部190は、図示しないCPU、ROM及びRAMを含み、ROM等に記憶された所定の制御プログラムによって作動するマイクロコンピュータを有する。この制御部190には、回転基体110を回転させるモータ(不図示)と、各積重ねテーブル部120(第1積重ねテーブル部120A~第8積重ねテーブル部120H)のサーボモータ125と、ワーク移載部140の搬送ローラ141と、接着剤塗布部160と、電極体移載部170の搬送ローラ171とが接続されており、これらを制御する。
【0039】
次に、上述の電極体製造装置100を用いて行うワーク移載工程S2~電極体移載工程S4について説明する(
図3~
図6参照)。まず「ワーク移載工程S2」において、ワーク移載部140により、第1ワーク10A(モノセル)からなる1段目用の未載置ワーク10Pを、各積重ねテーブル部120(120A~120H)のテーブル面121mである被載置面hsm上に順次移載する。本実施形態では、1段目用の未載置ワーク10Pを、まず第1積重ねテーブル部120Aのテーブル面121m(被載置面hsm)に移載し、次に第2積重ねテーブル部120Bのテーブル面121m(被載置面hsm)に移載する。このように順番に第1積重ねテーブル部120Aから第8積重ねテーブル部120Hまで、1段目用の未載置ワーク10Pを移載する。なお、
図5では、第5積重ねテーブル部120Eに、1段目用の未載置ワーク10Pを移載して、段数n=1段の既載置積層体5を形成した様子を示している。
【0040】
このワーク移載工程S2において、テーブル面121mの径方向高さHt(被載置面hsmの径方向高さHs)は、前述の高さ変更部123により、予め定めた径方向高さHsc(Ht=Hs=Hsc)にされている。また、未載置ワーク10Pの搬送速度V1は、ワーク移載角度位置θwにおけるテーブル面121m(被載置面hsm)の接線方向の移動速度V2(周速)と同じ速度である。このため、適切に未載置ワーク10Pをテーブル面121m(被載置面hsm)に移載できる。
【0041】
次に、判定工程S3(
図2参照)に進み、テーブル面121m上に所定数(本実施形態では10段)の既載置ワーク10Qが積み重なったか否か(段数n=10段の積層型電極体1が完成したか否か)を判定する。ここで、この時点ではまだ段数n=1段であるため、NOと判定され、ワーク移載工程S2を行う。即ち、2回目のワーク移載工程S2では、第1ワーク10A(モノセル)からなる2段目用の未載置ワーク10Pを、段数n=1段の既載置積層体5の径方向外側面5m(被載置面hsm)上に順次移載する。
【0042】
具体的には、ワーク移載部140により、未載置ワーク10Pを、外側面10Pmを下方に向けた状態で搬送する。なお、2回目以降のワーク移載工程S2では、この搬送途中において、接着剤塗布部160により、未載置ワーク10Pの外側面10Pmに接着剤41Zを塗布する。
【0043】
その後、ワーク移載角度位置θwにおいて、吸着ベルト143に下方から吸着していた未載置ワーク10Pを、吸着ベルト143から分離し、既載置積層体5の径方向外側面5m(被載置面hsm)上に載せて、接着剤41Zが塗布された未載置ワーク10Pの外側面10Pmを、既載置積層体5の径方向外側面5m(被載置面hsm)に重ねる。これにより、この未載置ワーク10Pを既載置積層体5に接着して一体化させる。
なお、2回目以降のワーク移載工程S2においても、既載置積層体5の被載置面hsmの径方向高さHsは、予め定めた径方向高さHsc(Hs=Hsc)になっている。また、未載置ワーク10Pの搬送速度V1は、ワーク移載角度位置θwにおける既載置積層体5の被載置面hsmの接線方向の移動速度V2(周速)と同じ速度である。このため、適切に未載置ワーク10Pを既載置積層体5の被載置面hsmに載置できる。
【0044】
次に、判定工程S3(
図2参照)に進み、テーブル面121m上に所定数(10段)の既載置ワーク10Qが積み重なったか否か(段数n=10段の積層型電極体1が完成したか否か)を判定する。ここで、この時点ではまだ段数n=2段であるため、NOと判定され、再びワーク移載工程S2を繰り返す。このように段数n=10段となるまで、ワーク移載工程S2を10回繰り返す。
但し、10回目のワーク移載工程S2では、第1ワーク10Aに代えて、第2ワーク10B(セパレータ付き負極板)からなる10段目用の未載置ワーク10Pを、段数n=9段の既載置積層体5の被載置面hsm上に順次移載する。
そして、既載置ワーク10Qが10段となって、段数n=10段の積層型電極体1が完成すると、判定工程S3でYESと判定され、電極体移載工程S4に進む。
【0045】
「電極体移載工程S4」では、電極体移載角度位置θdにおいて、かつ、積層型電極体1が完成した後に初めて電極体移載角度位置θdに達する排出タイミングTdに、電極体移載部170により、完成した積層型電極体1を積重ねテーブル部120から搬送ベルト173上に順次移載する。なお、
図6では、第2積重ねテーブル部120Bから搬送ベルト173上に積層型電極体1を移載する様子を示している。
【0046】
具体的には、電極体移載角度位置θdにおいて、吸着テーブル121の吸引機構122による吸引を解除して、テーブル面121mに吸着していた積層型電極体1を、テーブル面121mから分離し、搬送ベルト173上に載せる。その際、搬送ベルト173の移動速度(搬送速度V4)は、電極体移載角度位置θdにおける積層型電極体1の径方向外側頂面1mの接線方向の移動速度V3(周速)と同じ速度である。このため、積層型電極体1を少ない衝撃でスムーズに搬送ベルト173に移載できる。
【0047】
その後、搬送ベルト173に載せた積層型電極体1を、
図6中、右方に搬送して、装置外部に排出する。このような排出操作を第1積重ねテーブル部120Aから第8積重ねテーブル部120Hまで順番に行って、すべて(8個)の積層型電極体1を装置外部に排出する。かくして、
図1に示した積層型電極体1を得る。
なお、その後は、再びワーク移載工程S2に戻ることにより、間欠的に8個ずつ連続して積層型電極体1を製造できる。
【0048】
以上説明したように、電極体製造装置100では、複数の積重ねテーブル部120(120A~120H)を回転基体110の外周縁部110sに設けている。積重ねテーブル部120は、テーブル面121mの径方向高さHtを変更する高さ変更部123を有しており、高さ変更部123は、ワーク移載角度位置θwにおいて、既載置積層体5等の被載置面hsmの径方向高さHsが予め定めた径方向高さHscになるように、テーブル面121mの径方向高さHtを変更する。これにより、回転基体110が1回転する毎に、未載置ワーク10Pを1個ずつワーク移載部140から積重ねテーブル部120に移載できるため、回転基体110を所定回転(本実施形態では10回転)させることで、所定数(本実施形態では10段)の既載置ワーク10Qからなる積層型電極体1を容易に形成できる。
更に、電極体製造装置100では、ワーク移載角度位置θwにおける既載置積層体5等の被載置面hsmの回転移動に同期して、未載置ワーク10Pを移動させつつ被載置面hsmに載せるため、積重ねテーブル部120において、適切に未載置ワーク10Pを積み重ねて積層型電極体1を製造できる。
【0049】
また、電極体製造装置100では、搬送ベルト173を有する電極体移載部170を更に備えており、電極体移載角度位置θdでかつ排出タイミングTdに、積重ねテーブル部120から分離された積層型電極体1を、積層型電極体1の径方向外側頂面1mの回転移動と等速で搬送ベルト173を移動させつつ受け取る。このようにすることで、積層型電極体1を少ない衝撃でスムーズに搬送ベルト173に移載して、適切に装置外部に排出できる。
【0050】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態に係る積重ねテーブル部120の高さ変更部123では、高さ検知センサ126で既載置積層体5等の被載置面hsmの径方向高さHsを実際に検知して、この高さ情報に基づいて被載置面hsmの径方向高さHsを変更しているが、これに限られない。被載置面hsmの径方向高さHsは、回転基体110が1回転する毎に、新たに積み重なった既載置ワーク10Qの分だけ高くなるため、予め定めたプログラムにより径方向高さHsを変更してもよい。
【0051】
また、実施形態に係るワーク移載部140では、搬送ローラ141に架け渡した吸着ベルト143により、未載置ワーク10Pを積重ねテーブル部120に移載するワーク移載角度位置θwまで搬送しているが、これに限られない。例えば、搬送ローラ141及び吸着ベルト143に代えて、ローラ(不図示)を用い、このローラのロール表面に未載置ワーク10Pを吸着させ、このローラを回転させることにより、未載置ワーク10Pをワーク移載角度位置θwまで搬送するようにしてもよい。
【0052】
また実施形態では、回転軸111を中心にして回転基体110を定速(一定の角速度)で回転させた例を示した。これにより、回転基体110の回転エネルギーの増減を少なく出来る。
しかし、回転基体110の回転速度を適宜変化させるようにしても良い。例えば、未載置ワーク10Pを積重ねテーブル120に載置する段階での回転速度と、完成した積層型電極体1を積重ねテーブル120から電極体移載部170に移載する(排出する)時点の回転速度とを異ならせても良い。具体的には、未載置ワーク10Pを積重ねテーブル120に載置する時点での回転基体110の回転速度に比して、積層型電極体1を積重ねテーブル120から排出する時点での回転速度を相対的に遅くすることが考えられる。これにより、積重ねテーブル120から電極体移載部170に積層型電極体1を確実に移載(排出)するのが好ましい。
【0053】
その他、未載置ワーク10Pのうち、未載置ワークの無い積重ねテーブル120に第1段目の未載置ワーク10Pを載置する際には、この未載置ワーク10Pを積層テーブル120に吸着させるだけであるため、比較的に回転速度を早くしておく。一方、2段目以降の未載置ワーク10Pを既載置積層体5上に積み重ねる際には、既に積重ねテーブル120上に積み重ねられた既載置積層体5上に未載置ワーク10Pを載せるだけではなく接着させる必要がある。そこで、回転基体110の回転速度を相対的に遅くすることも考えられる。
さらには、積層テーブル120に積み重ねた既載置積層体5の段数が増えるほど、積層に慎重を期すため、回転基体10の回転速度を相対的に遅くすることも考えられる。
【符号の説明】
【0054】
1 積層型電極体
1m (積層型電極体の)径方向外側頂面
5 既載置積層体
5m (既載置積層体の)径方向外側面
hsm 被載置面
10 ワーク
10P 未載置ワーク
10A 第1ワーク(モノセル)
10B 第2ワーク(セパレータ付き負極板)
11 正極板(電極板)
21 負極板(電極板)
31 セパレータ
100 電極体製造装置
110 回転基体
110s 外周縁部
111 回転軸
120 積重ねテーブル部
120A~120H 第1積重ねテーブル部~第8積重ねテーブル部
121 吸着テーブル
121m テーブル面
123 高さ変更部
140 ワーク移載部
170 電極体移載部
173 搬送ベルト(電極体受取部)
190 制御部
Ht (テーブル面の)径方向高さ
Hs (被載置面の)径方向高さ
Hsc (予め定めた)径方向高さ
θw ワーク移載角度位置
θd 電極体移載角度位置
Td 排出タイミング