(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】車体塗装用ロボット
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20230424BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20230424BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20230424BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20230424BHJP
B41J 2/01 20060101ALN20230424BHJP
B41J 2/18 20060101ALN20230424BHJP
【FI】
B05C11/10
B05B12/00 A
B05C5/00 101
B25J13/00 Z
B41J2/01 401
B41J2/18
(21)【出願番号】P 2022137116
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2022052328の分割
【原出願日】2022-03-28
【審査請求日】2022-09-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 輝澄
(72)【発明者】
【氏名】多和田 孝達
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 徳夫
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/205537(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/049718(WO,A1)
【文献】特開2016-172379(JP,A)
【文献】国際公開第2021/255896(WO,A1)
【文献】特許第6948482(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05B 1/00-17/08
B05D 1/00-7/26
B41J 2/01-2/215
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に向けて塗料を吐出する塗装ヘッドと、
前記塗料を貯留する貯留部と前記塗装ヘッドとの間で前記塗料を循環させる循環路を有し、前記循環路を流れる前記塗料の圧力を制御することが可能な供給装置と、
前記塗装ヘッド及び前記供給装置を有するアームと、
を有し、
前記アームの動作により前記塗装ヘッドを主走査方向に移動させながら前記車体の塗装を行う車体塗装用ロボットであって、
前記アームの動作を制御する制御手段を有し、
前記塗装ヘッドは、前記制御手段による前記アームの制御により、前記車体の塗装を開始する塗装開始位置まで移動して一旦停止するとともに、前記塗装開始位置で一旦停止してから所定時間経過
すると、前記車体に向けた前記塗料の吐出を開始する位置で所定の移動速度に到達するように加速された後、前記塗料の吐出を開始する位置から前記塗料の吐出を終了する位置まで前記所定の移動速度で移動しながら前記車体の塗装を行い、
前記所定時間は、前記塗装ヘッドが前記塗装開始位置で停止することに起因した圧力変化が収束するまでの時間に設定され、
前記車体の塗装を行うときの前記塗装ヘッドの移動速度は、
前記塗装開始位置で停止した前記塗装ヘッドが当該塗装開始位置から前記車体に向けた前記塗料の吐出を開始する位置まで移動したときの速度変化に伴って生じる圧力変化が、前記塗装ヘッドが前記塗装開始位置で停止したときの速度変化に伴って生じる圧力変化よりも小さくなるように設定されている
ことを特徴とする車体塗装用ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の車体塗装用ロボットにおいて、
前記塗装ヘッドは、前記主走査方向に複数回往復動するとともに、前記主走査方向における往復動の切り替えの際に、前記主走査方向に直交する副走査方向に所定量移動し、
前記塗装開始位置は、前記主走査方向の往復動における往路及び復路の各々に設けられ、
前記塗装ヘッドは、前記往路及び前記復路の各々に設けられた前記塗装開始位置で一旦停止することを特徴とする車体塗装用ロボット。
【請求項3】
請求項1に記載の車体塗装用ロボットにおいて、
前記塗装ヘッドは、前記車体の塗装を行ってないときに初期位置に保持され、
前記制御手段は、前記車体への塗装開始を受けて、前記アームの動作を制御して、前記塗装ヘッドを前記初期位置から前記塗装開始位置へと移動させることを特徴とする車体塗装用ロボット。
【請求項4】
請求項1に記載の車体塗装用ロボットにおいて、
前記循環路は、前記貯留部に貯留された前記塗料を前記塗装ヘッドに供給する供給路と、前記塗装ヘッドにより使用されなかった前記塗料を前記貯留部に還流する還流路と、を有し、
前記供給装置は、
前記貯留部に貯留された前記塗料を前記供給路に送り出す送出手段と、
前記塗装ヘッドから前記塗料を前記還流路に引き込む引込み手段と、
前記供給路に送り込まれた前記塗料の圧力を検出する第1の検出手段と、
前記還流路に引き込まれた前記塗料の圧力を検出する第2の検出手段と、
前記第1の検出手段による検出結果に基づいて前記送出手段による前記塗料の送り出し量を制御するとともに、前記第2の検出手段による検出結果に基づいて前記引込み手段による前記塗料の引き込み量を制御する圧力制御手段と、
を有することを特徴とする車体塗装用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料を噴出するノズルを複数有する塗装ヘッドを備えた車体塗装用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
塗料を吐出するノズルを複数備えた塗装ヘッドを搭載した塗装ロボットを用いて、自動車の車体を塗装する技術が普及している。このような塗装ロボットは、例えば複数のアーム部材と、各アーム部材を互いに連結する可動軸部とを有する多軸アームを有し、複数のアーム部材のうち、先端となるアーム部材に塗装ヘッドや、塗装ヘッドに塗料の供給を行う供給装置などが設けられた構成となっている(例えば特許文献1参照)。塗料供給装置は、例えば、塗料を貯留するタンクと、塗装ヘッドへと塗料を供給する供給路と、塗装ヘッドにより使用されなかった塗料をタンクへと還流させる還流路を有しており、塗料は、タンクと塗装ヘッドとの間で循環されるようになっている。また、塗料供給装置は、塗料を供給路へと送り出す供給ポンプと、塗料を還流路へと引き込む引込ポンプと、を有し、これらポンプは供給路や還流路に設けられた検出手段による検出結果に基づき制御されている。その結果、塗装ロボットの動作時に、供給路や還流路を流れる塗料の圧力を適正な圧力に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗装ヘッドは、塗装ロボットの多軸アームの動作により、例えば主走査方向に複数回往復動され、また、主走査方向への移動を行うたびに副走査方向に所定量移動される。このような多軸アームの動作では、動作開始時の加速や移動停止時の減速や、多軸アーム自体の振動により、塗料供給装置を流れる塗料の圧力が変動しやすい。このような塗料の圧力変動は、塗装ヘッドへの塗料供給を不安定にし、塗装ヘッドに設けた複数のノズルから吐出される塗料の吐出量にばらつきを生じさせる。また、多軸アーム自体の振動は、塗装ヘッドに設けた複数のノズルから吐出される塗料の着弾位置が乱れてしまう。これら原因により、塗装ヘッドによる車体の塗装において、その塗装品質が劣化する。
【0005】
本発明は、上記に記載した課題を解決するために発明されたものであり、塗装ロボットの多軸アームの動作時に生じる圧力変動や多軸アームの振動を抑制することで、塗装ヘッドによる塗装品質の劣化を抑止することが可能な車体塗装用ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に記載した課題を解決するために、本発明の車体塗装用ロボットは、車体に向けて塗料を吐出する塗装ヘッドと、前記塗料を貯留する貯留部と前記塗装ヘッドとの間で前記塗料を循環させる循環路を有し、前記循環路を流れる前記塗料の圧力を制御することが可能な供給装置と、前記塗装ヘッド及び前記供給装置を有するアームと、を有し、前記アームの動作により前記塗装ヘッドを主走査方向に移動させながら前記車体の塗装を行う車体塗装用ロボットであって、前記アームの動作を制御する制御手段を有し、前記塗装ヘッドは、前記制御手段による前記アームの動作により、前記車体の塗装を開始する塗装開始位置に向けて第1の速度で移動し、前記塗装開始位置までの移動経路内に設けた特定の位置に到達すると、前記第1の速度とは異なる第2の速度で移動するものである。
【0007】
また、前記第2の速度は、前記第1の速度未満に設定される、又は、前記第1の速度は、前記第2の速度未満に設定されるものである。
【0008】
また、前記塗装ヘッドは、前記塗装開始位置に到達すると、前記第2の速度を保ったまま前記車体の塗装を開始するものである。
【0009】
また、前記塗装ヘッドは、前記主走査方向に複数回往復動するとともに、前記主走査方向における往復動の切り替えの際に、前記主走査方向に直交する副走査方向に所定量移動し、前記塗装開始位置は、前記主走査方向の往復動における往路及び復路の各々に設けられるものである。
【0010】
また、前記塗装ヘッドは、前記副走査方向に所定量移動する際に前記第2の速度よりも低速である第3の速度で移動するものである。
【0011】
また、本発明の車体塗装用ロボットは、車体に向けて塗料を吐出する塗装ヘッドと、前記塗料を貯留する貯留部と前記塗装ヘッドとの間で前記塗料を循環させる循環路を有し、前記循環路を流れる前記塗料の圧力を制御することが可能な供給装置と、前記塗装ヘッド及び前記供給装置を有するアームと、を有し、前記アームの動作により前記塗装ヘッドを主走査方向に移動させながら前記車体の塗装を行う車体塗装用ロボットであって、前記アームの動作を制御する制御手段を有し、前記塗装ヘッドは、前記制御手段による前記アームの制御により、前記車体の塗装を開始する塗装開始位置まで移動して一旦停止するとともに、前記塗装開始位置で一旦停止してから所定時間経過した後に前記塗装開始位置から前記主走査方向への移動を再開して前記車体の塗装を行い、前記車体の塗装を行うときの前記塗装ヘッドの移動速度は、前記塗装開始位置まで移動するときの前記塗装ヘッドの移動速度とは異なる移動速度に設定されているものである。
【0012】
また、前記塗装ヘッドは、前記主走査方向に複数回往復動するとともに、前記主走査方向における往復動の切り替えの際に、前記主走査方向に直交する副走査方向に所定量移動し、前記塗装開始位置は、前記主走査方向の往復動における往路及び復路の各々に設けられ、前記塗装ヘッドは、前記往路及び前記復路の各々に設けられた前記塗装開始位置で一旦停止するものである。
【0013】
また、前記塗装ヘッドは、前記車体の塗装を行ってないときに初期位置に保持され、前記制御手段は、前記車体への塗装開始を受けて、前記アームの動作を制御して、前記塗装ヘッドを前記初期位置から前記塗装開始位置へと移動させるものである。
【0014】
また、前記循環路は、前記貯留部に貯留された前記塗料を前記塗装ヘッドに供給する供給路と、前記塗装ヘッドにより使用されなかった前記塗料を前記貯留部に還流する還流路と、を有し、前記供給装置は、前記貯留部に貯留された前記塗料を前記供給路に送り出す送出手段と、前記塗装ヘッドから前記塗料を前記還流路に引き込む引込み手段と、前記供給路に送り込まれた前記塗料の圧力を検出する第1の検出手段と、前記還流路に引き込まれた前記塗料の圧力を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段による検出結果に基づいて前記送出手段による前記塗料の送り出し量を制御するとともに、前記第2の検出手段による検出結果に基づいて前記引込み手段による前記塗料の引き込み量を制御する圧力制御手段と、を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、多軸アームの動作時に生じる圧力変動や多軸アームの振動を抑制することで、塗装ヘッドによる塗装品質の劣化を抑止することが可能な車体塗装用ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は本発明を実施した車体塗装用ロボットの構成を示す上面図、(b)は(a)に示す車体塗装用ロボットの側面図である。
【
図4】(a)は塗装ヘッドのxy平面上における移動軌跡の一例を示す図、(b)は当該塗装ヘッドのxz平面上における移動軌跡の一例を示す図である。
【
図5】塗装ヘッドの移動速度の変化の一例を示す図である。
【
図6】(a)は塗装ヘッドを位置P2で減速させて車体を塗装したときの塗装ヘッドの入力側における圧力値の変位を示す図、(b)は塗装ヘッドを位置P2で減速させて車体を塗装したときの塗装ヘッドの出力側における圧力値の変位を示す図である。
【
図7】(a)は塗装ヘッドを位置P4で減速させて車体を塗装したときの塗装ヘッドの入力側における圧力値の変位を示す図、(b)は塗装ヘッドを位置P4で減速させて車体を塗装したときの塗装ヘッドの出力側における圧力値の変位を示す図である。
【
図8】位置P4から位置P5までの間における塗装ヘッドの移動速度の一例を示す図である。
【
図9】(a)は塗装ヘッドを塗装開始位置で所定時間停止させてから車体を塗装したときの塗装ヘッドの入力側における圧力値の変位を示す図、(b)は塗装ヘッドを塗装開始位置で所定時間停止させてから車体を塗装したときの塗装ヘッドの出力側における圧力値の変位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施した車体塗装用ロボット10について、図面に基づいて説明する。以下、車体塗装用ロボット10を塗装ロボット10と称して説明する。本実施の形態の塗装ロボット10は、例えば、自動車製造工場における塗装ラインの側方向に配置され、塗装ラインに沿って搬送される車体FRを塗装するものである。
【0018】
なお、本実施の形態において、塗装ロボット10が塗装を行う対象物(以下、塗装対象物と称する)として、自動車の車体FRを一例として説明するが、塗装対象物としては、例えば車体以外の自動車部品でもよく(一例としては、ドア、ボンネットや各種パネルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない)、その他、自動車以外の各種部品(一例としては飛行機や鉄道の外装部品)など、塗装を行う必要があるものであれば、自動車の車体に限定される必要はない。
【0019】
塗装は、塗膜を塗装対象物の表面に形成して、その表面の保護や美観を与えることを目的として行われるものである。したがって、塗装としては、特定色の塗料、又は特定の機能を有する塗料を用いて塗装対象物を塗装することの他に、複数色の塗料を順に用いて塗装対象物を塗装することを含む。また、塗装は、例えば模様、イラストあるいは画像などの塗装を含む。
【0020】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、塗装ロボット10は、一例として、ロボットアーム15と、塗装ヘッドユニット17を有する。ロボットアーム15は、基台21と、複数(
図1においては2本)のアーム部材22,23と、を有する多軸アームから構成される。基台21は、固定部24と、固定部24に対して回転可能な回転部25と、を有する。ここで、基台21は、請求項に記載の基部に相当する。固定部24は内部にモータM1(
図3参照)を有している。回転部25は、モータM1の駆動により、塗装ラインの床面に垂直となる方向(以下、鉛直方向と称する)を回転中心として回転する。
【0021】
以下、複数のアーム部材22,23のうち、回転部25に連結されるアーム部材22を第1回動アーム22、第1回動アーム22に連結されるアーム部材23を第2回動アーム23と称する。
【0022】
第1回動アーム22は、当該第1回動アーム22の延伸方向における一端部において、回転部25に設けた可動軸部26に連結されている。回転部25に設けた可動軸部26には、モータM2(
図3参照)が設けられており、連結される第1回動アーム22を、塗装ラインの床面に直交する平面(例えばロボットアーム15が
図1(b)の状態にあるときには、yz平面)上で回動させる。
【0023】
第1回動アーム22の延伸方向において、回転部25の可動軸部26に連結される一端部とは反対側となる他端部には、可動軸部27を介して第2回動アーム23が連結される。可動軸部27には、後述するモータM3(
図3参照)が設けられており、連結される第2回動アーム23を、塗装ラインの床面に直交する平面(例えばロボットアーム15が
図1(b)の状態にあるときには、yz平面)上で回動させる。なお、図示は省略するが、回転部25の可動軸部26の中心軸線と、第1回動アーム22に設けた可動軸部27の中心軸線とは、平行となる。なお、詳細は後述するが、第2回動アーム23には、後述する塗料循環装置51が内部に設けられる。
【0024】
第2回動アーム23の延伸方向における他端部には、リスト部28が設けられる。リスト部28は、塗装ヘッドユニット17を保持する。リスト部28は、駆動軸の軸線方向が各々異なる複数(ここでは3個)のモータM4,M5,M6(
図3参照)を有しており、これらモータのいずれかを駆動させることで、リスト部28が有する複数の軸部のいずれかの軸部を回動中心として、保持した塗装ヘッドユニット17を回動させる。なお、軸部の個数は、2つ以上であればよい。
【0025】
塗装ヘッドユニット17は、後述する塗装ヘッド56や、当該塗装ヘッド56の動作を制御するヘッド制御部(
図3参照)等を備える。
【0026】
上述したように、第2回動アーム23の内部には、塗料循環装置51が設けられている。
図2に示すように、塗料循環装置51は、例えば、塗料タンク55に貯留される塗料を塗装ヘッド56に供給する供給路57と、塗装ヘッド56にて使用されてない塗料を塗装ヘッド56から塗料タンク55に戻す戻り流路(還流路)58と、を有する他、塗料を塗装ヘッド56へと供給せずに、供給路57から戻り流路58に流すバイパス流路59を有する。ここで、塗料タンク55は、請求項に記載の貯留部に相当する。また、塗料循環装置51は、塗料タンク55、ギヤポンプ62を塗装室の床面に載置し、また、例えば、除去フィルタ63、脱気モジュール64、切替弁67,68,70,78や比例弁71,77や圧力計69,72,76,79などの部品を第2回動アーム23の内部に収納している。ここで、塗料循環装置51は、請求項に記載の供給装置に相当する。なお、ギヤポンプ62は、たとえば第2回動アーム23の内部に収納される構成を採用しても良い。また、除去フィルタ63、脱気モジュール64、切替弁や比例弁や圧力計などの内の少なくとも1つの部品を、床面に載置する構成を採用してもよい。
【0027】
塗料循環装置51は、車体FRの塗装時に、塗料タンク55に貯留された塗料を塗装ヘッド56に供給するとともに、塗装ヘッド56にて使用されなかった塗料を塗装ヘッド56から塗料タンク55に戻すことで、塗料を塗料タンク55と塗装ヘッド56との間で循環させる。また、塗料循環装置51は、車体FRに塗装を行わないとき、塗料タンク55に貯留された塗料を、供給路57、バイパス流路59及び戻り流路58の順で流し、塗料タンク55に戻す。
【0028】
ところで、車体FRへの塗装に用いられる塗料は、例えば顔料を用いた水性塗料や溶剤系塗料である。したがって、塗料循環装置51により塗料を循環させることで、塗料に含まれる顔料の分離や、顔料の凝集化を防止している。
【0029】
以下、塗料循環装置51の供給路57の構成を説明するにあたり、塗料の供給方向において、塗料タンク55側を上流側、塗装ヘッド56側を下流側とする。また、塗料循環装置51の戻り流路58の構成を説明するにあたり、塗装ヘッド56側を上流側、塗料タンク55側を下流側とする。
【0030】
塗料タンク55は、塗装ヘッド56を用いた車体FRの塗装時に用いる塗料を貯留する。塗料タンク55は、例えば塗装ロボット10の外部(例えば塗装室の床面等)に配置される。なお、塗料タンク55には、塗装ヘッド56を用いた車体FRの塗装を行う過程で、必要に応じて、外部から塗料が供給される。また、戻り流路58から塗料タンク55に塗料が戻された場合、その塗料と共に流れ込んだ気泡は、塗料タンク55内の液面上に浮かぶが、当該塗料タンク55は、その気泡を除去する機能を有していてもよい。
【0031】
塗装ヘッド56は、複数のノズル61が二次元状に配列されたノズル形成面56aを有し、供給路57を介して供給される塗料を、複数のノズル61の各々から吐出することで、車体FRの表面に塗膜を形成する。なお、塗装ヘッド56の詳細な構成については省略する。
【0032】
供給路57は、塗料タンク55に貯留された塗料を塗装ヘッド56に向けて供給する経路である。供給路57は、後述する流路57a,57b,・・・,57h,57iを有する。また、供給路57の中途には、当該供給路57の上流側から、ギヤポンプ62、除去フィルタ63、脱気モジュール64の順で配置されている。
【0033】
ギヤポンプ62は、塗料タンク55に貯留された塗料を引き込み、引き込んだ塗料を塗装ヘッド56に向けて送り出す。したがって、ギヤポンプ62を駆動すると、当該ギヤポンプ62の上流側、すなわち、塗料タンク55とギヤポンプ62との間の流路57a,57bの内部の圧力は負圧となり、塗料タンク55に貯留される塗料が、当該流路57a,57bに引き込まれる。そして、ギヤポンプ62からギヤポンプ62の下流側に接続された流路57cに送り出される。ここで、ギヤポンプ62は、請求項に記載の送出手段に相当する。
【0034】
供給路57を構成する流路57a及び流路57bは、三方弁66にて接続される。三方弁66は、流路57aと流路57bとを連通する状態と、流路57bと排液槽83に接続された排液路とを連通する状態とのいずれかの状態に切り替えることが可能である。三方弁66は、例えば車体FRを塗装するとき、流路57aと流路57bとを連通する状態に保持される。また、三方弁66は、供給路57内を洗浄する際に、流路57bと排液槽83(詳細には排液槽83に接続した不図示の流路)とを連通する状態となる。
【0035】
供給路57において、ギヤポンプ62は、出力側において流路57cと接続されている。流路57cの下流側端部には、切替弁67が設けられている。切替弁67は、4つの弁部67a,67b,67c,67dを有する。例えば弁部67aは、流路57cに接続しており、また、弁部67bは、除去フィルタ63に向けた流路57dに接続している。また、弁部67cは、洗浄タンク82(詳細には洗浄タンク82に接続した不図示の流路)に接続している。さらに、弁部67dは、排液槽83(詳細には排液槽83に接続した不図示の流路)に接続している。これら弁部のうち、弁部67a及び弁部67bは、通常、開き状態に保持されている。一方、弁部67c、67dは、通常、閉じ状態に保持され、塗料循環装置51の洗浄時に閉じ状態から開き状態へと切り替えられる。
【0036】
切替弁67の弁部67bに接続した流路57dの下流側には、除去フィルタ63が設けられる。除去フィルタ63は、塗料に含まれている粗大異物や顔料凝集物などの異物の他、塗料に含まれる気泡のうち、所定の大きさを超える気泡を除去する。除去フィルタ63は、例えば金網や樹脂性の網等の網目状体、多孔質体や、微細な貫通孔を穿設した金属板である。網目状体としては、例えば金属メッシュフィルターや金属繊維、たとえばSUSといった金属の細線をフェルト状にしたもの、圧縮焼結させた金属焼結フィルタ、エレクトロフォーミング金属フィルタ、電子線加工金属フィルタ、レーザービーム加工金属フィルタなどを挙げることができる。
【0037】
除去フィルタ63の出力側に接続した流路57eの下流側には、切替弁68が設けられる。切替弁68は、切替弁67と同様に、4つの弁部68a,68b,68c,68dを有する。例えば弁部68aは、流路57eに接続しており、また、弁部68bは、脱気モジュール64に向けた流路57fに接続している。また、弁部68cは、洗浄タンク82(詳細には洗浄タンク82に接続した不図示の流路)に接続している。また、弁部68dは、排液槽83(詳細には排液槽83に接続した不図示の流路)に接続している。これら弁部のうち、弁部68a及び弁部68bは、通常、開き状態に保持されている。一方、弁部68c、68dは、通常、閉じ状態に保持され、塗料循環装置51の洗浄時に閉じ状態から開き状態へと切り替えられる。
【0038】
切替弁の弁部68bに接続した流路57fの下流側には、脱気モジュール64が設けられる。脱気モジュール64は、塗料に溶存している溶存気体や気泡を除去(脱気)する。脱気モジュール64としては、例えば複数の中空糸膜を束ねた中空糸膜束を挙げることができる。
【0039】
脱気モジュール64の出力側に接続される流路57gには、圧力計69が設けられる。圧力計69は、脱気モジュール64から送出された塗料の圧力を測定する。圧力計69による測定結果は、塗料供給制御部103(
図3参照)に出力される。ギヤポンプ62は、圧力計69により検出された圧力値が一定値となるように、塗料供給制御部103により駆動制御される。なお、圧力計69は、請求項に記載の第1の検出手段に相当する。また、供給路57においては、圧力計69以外の圧力計が、単数または複数設けられていてもよい。
【0040】
上述した流路57gの下流側端部には、切替弁70が設けられている。切替弁70は、切替弁67及び切替弁68と同様に、4つの弁部70a,70b,70c,70dを有する。例えば弁部70aは、流路57gを接続しており、また、弁部70bは、流路57hを接続している。また、弁部70cは、洗浄タンク82(詳細には洗浄タンク82に接続した不図示の流路)に接続している。また、弁部70dは、排液槽83(詳細には排液槽83に接続した不図示の流路)に接続している。これら弁部のうち、弁部70a及び弁部70bは、通常、開き状態に保持されている。一方、弁部70c、70dは、通常、閉じ状態に保持され、塗料循環装置51の洗浄時に閉じ状態から開き状態へと切り替えられる。
【0041】
切替弁の弁部70bに接続した流路57hの下流側端部には、比例弁71が接続されている。比例弁71は、比例弁71の下流側を流れる塗料の圧力値が一定となるように塗料供給制御部103により開閉制御される。
【0042】
比例弁71の下流側には、流路57iが設けられている。流路57iには、圧力計72及び一方弁73が設けられている。圧力計72は、比例弁71から塗装ヘッド56に向けて流れる塗料の圧力を測定する。一方弁73は、塗料を一方向(この場合は、比例弁71から塗装ヘッド56に向けた方向)に流し、当該一方向とは逆方向に流れることを防止する。なお、流路57hには、圧力計72と一方弁73との間で、バイパス流路59の上流側の端部が接続される。
【0043】
戻り流路58は、車体FRへの塗装時に塗装ヘッド56により使用されなかった塗料、又は、バイパス流路59を介して循環される塗料を、塗料タンク55に向けて戻す流路である。戻り流路58は、流路58a,58b,58c,58d,58eを有する。
【0044】
流路58aには、上流側端部において塗装ヘッド56が接続されている。流路58aには、一方弁75と圧力計76とが設けられている。一方弁75は、塗料を一方向(この場合は、塗装ヘッド56から圧力計76に向けた方向)に流し、当該一方向とは逆方向に流れることを防止する。なお、流路58aには、一方弁75と圧力計76との間で、バイパス流路59の下流側の端部が接続されている。圧力計76は、比例弁77の上流側(すなわち、塗装ヘッド56から比例弁77に向けて流れる塗料の圧力を測定する。
【0045】
流路58aの下流側には、比例弁77が設けられている。比例弁77は、塗料供給制御部103により開閉制御され、塗装ヘッド56から比例弁77に向けて流れる塗料の圧力値を一定に保持する。
【0046】
比例弁77の出力側に接続される流路58bの下流側には、切替弁78が設けられている。切替弁78は、供給路57に設けられた切替弁67,68,70と同様に、4つの弁部78a,78b,78c,78dを有する。例えば弁部78aは、流路58bに接続しており、また、弁部78bは、ギヤポンプ80に向けた流路58cに接続している。また、弁部78cは、洗浄タンク82(詳細には洗浄タンク82に接続した不図示の流路)に接続している。また、弁部78dは、排液槽83(詳細には排液槽83に接続した不図示の流路)に接続している。これら弁部のうち、弁部78a及び弁部78bは、通常、開き状態に保持されている。一方、弁部78c,78dは、通常、閉じ状態に保持され、塗料循環装置51の洗浄時に閉じ状態から開き状態へと切り替えられる。
【0047】
流路58cには、圧力計79が設けられている。圧力計79は、流路58cに流れ込んだ塗料の圧力を測定する。圧力計79による測定結果は、塗料供給制御部103に出力される。なお、圧力計79は、請求項に記載の第2の検出手段に相当する。
【0048】
流路58cの下流側端部には、ギヤポンプ80が設けられている。ギヤポンプ80は、流路58cに塗料を引き込み、引き込んだ塗料を塗料タンク55に向けて送り出す。したがって、ギヤポンプ80を駆動することで当該ギヤポンプ80の上流側、すなわち、流路58cの内部の圧力は負圧となり塗料が流路58cに引き込まれる。そして、塗料は、ギヤポンプ80から当該ギヤポンプ80の下流側に接続された流路58dに送り出される。このとき、ギヤポンプ80は、圧力計79により検出された圧力値が一定値となるように塗料供給制御部103により駆動制御される。ここで、ギヤポンプ80は、請求項に記載の引込み手段に相当する。
【0049】
ギヤポンプ80の出力側に接続される流路58dの下流側には、三方弁81が接続されている。三方弁81は、流路58dと、塗料タンク55に接続した流路58eとを連通する状態と、流路58dと排液槽83とを連通する状態とのいずれかの状態で切り替わる。三方弁81は、塗装ヘッド56による車体FRの塗装時、又は塗料の循環時に、流路58dと流路58eとを連通する状態に保持される。また、三方弁81は、洗浄時に、流路58dと流路58eとを連通する状態から、流路58dと排液槽83とを連通する状態に切り替わる。これにより、流路58dを流れる洗浄液や空気は、三方弁81を介して排液槽83に排出される。
【0050】
バイパス流路59は、流路57iと流路58aとに接続され、塗装ヘッド56による塗料の塗装を行わないとき、供給路57を流れる塗料の一部を、塗装ヘッド56に流すことなく、戻り流路58に流すものである。バイパス流路59には、制御弁84が設けられている。制御弁84は、塗装ヘッド56による車体FRへの塗装時には、閉じ状態に保持され、塗装ヘッド56による車体FRへの塗装を行わないときに、開き状態に切り替えられる。
【0051】
次に、上述した塗装ロボット10を制御する構成(以下、制御システムと称する)について説明する。
図3は、制御システムの構成を示す図である。
図3に示すように、制御システム100は、主制御部101、アーム制御部102、塗料供給制御部103及びヘッド制御部104を有する。図示は省略するが、主制御部101、アーム制御部102、塗料供給制御部103及びヘッド制御部104は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部位(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等)、その他の要素から構成されている。
【0052】
主制御部101は、ロボットアーム15、塗料循環装置51及び塗装ヘッド56が協働して塗装対象物に対する塗装が実行されるように、アーム制御部102、塗料供給制御部103及びヘッド制御部104の各々に所定の制御信号を送信する。
【0053】
アーム制御部102は、自身が有するアーム用メモリ106に格納された各種データに基づいて、ロボットアーム15に設けられるモータM1、M2,M3,M4,M5,M6の各々に対する駆動制御を行う。ここで、アーム用メモリ106に記憶される各種データは、塗装ロボット10による車体FRの塗装時に必要となるものであり、例えば、塗装を行う車体FRの外形形状のデータ、当該車体FRの塗装時における塗装ヘッドユニット17の移動軌跡を示す軌跡データ、ロボットアーム15及び塗装ヘッドユニット17の姿勢を示す姿勢データなどを含む。ここで、アーム制御部102は、請求項に記載の制御手段に相当する。
【0054】
ここで、本実施の形態に示す塗装ロボット10を用いた車体FRの塗装は、第2回動アーム23の延伸方向が水平面に含まれる状態、すなわち、第2回動アーム23を水平状態に維持しながら実行される。しがって、上記姿勢データは、例えば第2回動アーム23が水平状態に維持されるときの、第1回動アーム22の姿勢(モータM1やモータM2の回転量)のデータだけでなく、第1回動アーム22に対する第2回動アーム23の姿勢(モータM3の回転量)のデータも含まれる。
【0055】
なお、上述した各種データは、塗装ロボット10により、外形形状が異なる複数の車体FRを塗装する場合には、外形形状の異なる複数の車体FRの各々に対応してアーム用メモリ106に格納される。
【0056】
塗料供給制御部103は、上述した塗料循環装置51に設けられた圧力計69,72,76,79による測定結果に基づいて、ギヤポンプ62,80の駆動制御や、比例弁71,77の開閉制御を行い、塗料循環装置51の塗料タンク55に貯留される塗料を、塗料タンク55と塗装ヘッド56との間で循環させる。ここで、塗料供給制御部103は、請求項に記載の圧力制御手段に相当する。
【0057】
ヘッド制御部104は、位置センサ107により検出される塗装ヘッド56の位置情報に基づいて、圧電基板109を作動する。ここで、ヘッド制御部104は、圧電基板109の作動を制御するだけでなく、圧電基板109に対する作動周波数の制御や、圧電基板109に印加する電圧の制御を行い、塗装ヘッド56のノズル形成面56aに設けられる複数のノズル61の各々から吐出される塗料の液滴量を制御することも可能である。
【0058】
位置センサ107は、アーム制御部102の制御により移動する塗装ヘッド56の位置を検出して、その検出信号を主制御部101に出力する。傾きセンサ108は、例えばジャイロセンサが用いられる。傾きセンサ108は、ロボットアーム15や塗装ヘッド56の傾きを検出して、その検出信号を主制御部101に出力する。
【0059】
次に、塗装ロボット10を用いた車体FRの塗装における制御について、その一例を説明する。なお、
図4(a)は、車体FRへの塗装時の、xy平面上における塗装ヘッド56の移動軌跡の一例を示す図、
図4(b)は、車体FRへの塗装時の、xz平面上における塗装ヘッド56の移動軌跡の一例を示す図である。また、
図5は、車体FRへの塗装時における塗装ヘッド56の移動速度の変化の一例を示す図である。
【0060】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、塗装ロボット10が車体FRの塗装を行っていないとき、塗装ヘッド56は、例えば待機位置(
図4(a)中、位置P1)に保持されている。塗装ロボット10による塗装が開始されると、アーム制御部102は、モータM1,M2,M3,M4,M5,M6を駆動する。これにより、ロボットアーム15の第1回動アーム22、第2回動アーム23及びリスト部28が動作して、塗装ヘッド56が位置P1から位置P2へと移動する。ここで、位置P1から位置P2への塗装ヘッド56の移動速度をV1とすると、移動速度V1は、一例としてV1=300mm/sである。
【0061】
その後、塗装ヘッド56が位置P2に到達した後、アーム制御部102は、モータM1,M2,M3,M4,M5,M6の駆動により移動する塗装ヘッド56の移動速度を減速させて、塗装ヘッド56を位置P2から位置P3へと移動させる。なお、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、位置P2に対して、位置P3は低い位置にあるので、ロボットアーム15の駆動により、塗装ヘッド56は、yz平面上で移動する。このとき、塗装ヘッド56は、
図4(a)中y方向に移動させてから、
図4(b)中-z方向に移動させる(又はその逆)、又は、
図4(a)中y方向への移動と、
図4(b)中-z方向への移動を同時に行うことも可能である。ここで、位置P2から位置P3に移動する塗装ヘッド56の移動速度V2は、例えば30mm/sから100mm/sの範囲で設定される。
【0062】
塗装ヘッド56が位置P3に到達すると、アーム制御部102は、モータM1,M2,M3,M4,M5,M6の駆動により移動する塗装ヘッド56の移動速度を変更せずに、塗装ヘッド56を位置P3から位置P4へと移動させる。
【0063】
例えば塗装ヘッド56による車体FRの塗装では、位置P4及び位置P5の間を
図4中-x方向又はx方向に往復動し、位置P4から位置P5までの移動、又は位置P5から位置P4までの移動のいずれかの移動時に、塗装ヘッド56のノズル形成面56aに設けた複数のノズル61を用いた塗装(以下、ノズル形成面56aに設けた複数のノズル61の全てを用いた塗装を1ライン分の塗装と称する)を行い、1ライン分の塗装が終了すると、塗装ヘッド56を-y方向に1ライン分移動させる動作が行われる。つまり、位置P4から位置P5までの塗装ヘッド56の移動は、主走査方向の往復動における往路の移動に相当する。また、位置P5から位置P4までの塗装ヘッド56の移動は、主走査方向の往復動における復路の移動に相当する。
【0064】
なお、塗装ヘッド56が位置P4から位置P5まで移動するときの移動速度、及び位置P5から位置P4まで移動するときの移動速度は、移動速度V2である。また、塗装ヘッド56を-y方向に1ライン分移動する際の塗装ヘッド56の移動速度は、位置P2から位置P3への移動速度V2と同一速度としてもよいし、これら移動速度V2未満の移動速度としてもよい。
【0065】
塗装ヘッド56が位置P4から位置P5の間で移動するとき、すなわち、主走査方向における塗装ヘッド56の往復動における往路を移動するとき、アーム制御部102は、アーム用メモリ106に格納された車体FRの外形形状のデータを参照してM1,M2,M3,M4,M5,M6を駆動する。したがって、塗装ヘッド56は、車体FRに対して所定の間隔を空けて、車体FRの外形形状に沿って移動する。
【0066】
塗装ヘッド56が位置P4から位置P5に向けて移動するとき、塗装ヘッドは、位置P4を通過すると、塗装開始に先立った処理が開始されて、塗装ヘッド56が車体FRの一端部(位置P6)に到達すると、塗装ヘッド56のノズル形成面56aに設けた複数のノズル61から塗料が吐出される。塗装ヘッド56が移動して、主走査方向における車体のFRの他端部(位置P7)に到達すると、塗装ヘッド56のノズル形成面56aに設けた複数のノズル61からの塗料の吐出が停止されて、塗装終了に伴う処理が開始されて、位置P5に到達したときに、塗装ヘッド56の動作が完全に終了する。
【0067】
塗装ヘッド56が位置P5まで移動すると、塗装ヘッド56による1ライン分の塗装が終了する。その後、アーム制御部102は、モータM1,M2,M3,M4,M5,M6の駆動を引き続き行って、塗装ヘッド56を1ライン分、
図4中-y方向に移動させる。
【0068】
そして、アーム制御部102は、モータM1,M2,M3,M4,M5,M6を駆動し、ロボットアーム15の姿勢を変化させて、塗装ヘッド56を位置P5から位置P4に向けて移動させる。なお、この時の塗装ヘッド56の移動速度はV2である。
【0069】
塗装ヘッド56が位置P5から位置P4に向けて移動するとき、塗装開始に先立った処理が開始されて、塗装ヘッド56が車体FRの他端部(位置P7)に到達すると、塗装ヘッド56のノズル形成面56aに設けた複数のノズル61から塗料が吐出される。そして、主走査方向における車体のFRの一端部(位置P6)に到達すると、塗装ヘッド56のノズル形成面56aに設けた複数のノズル61からの塗料の吐出が停止されて、塗装終了に伴う処理が開始されて、位置P4に到達したときに、塗装ヘッド56の動作が完全に終了する。
【0070】
つまり、塗装ヘッド56が主走査方向における往復動における往路を移動するとき、位置P4が塗装開始位置となり、位置P5が塗装終了位置となる。このとき、塗装ヘッド56が有する複数のノズル61による塗料の吐出は、位置P6から位置P7までの間で実施される。また、塗装ヘッド56が主走査方向における往復動における復路を移動するとき、位置P5が塗装開始位置となり、位置P4が塗装終了位置となる。このとき、塗装ヘッド56が有する複数のノズル61による塗料の吐出は、位置P7から位置P6までの間で実施される。
【0071】
車体FRの塗装では、塗装ヘッド56を位置P4から位置P5に向けて(又はその逆)移動させた後、1ライン分-y方向に移動させる動作を複数回行う。そして、車体FR全体の塗装が行われて、位置P5まで移動すると、アーム制御部102は、モータM1,M2,M3,M4,M5,M6を駆動して、塗装ヘッド56を位置P5から位置P1へと移動させる。
【0072】
なお、上述した塗装ヘッド56の移動時には、塗料循環装置51の供給路57に設けた圧力計69や、戻り流路58に設けた圧力計79による検出結果に基づいて、供給路57や戻り流路58を流れる塗料の圧力が制御される他、圧力計72による比例弁71の開閉制御や、圧力計76による比例弁77の開閉制御が行われる。
【0073】
以下、上述した塗装ロボット10を用いた塗装を行うに当たり、塗装ヘッド56に供給される圧力及び塗装ヘッド56から送り出される圧力について考慮する。
【0074】
図6(a)は、塗装ヘッド56を位置P2で減速させた後、車体FRを塗装したときの塗装ヘッド56の入力側の圧力の変位を示す図、
図6(b)は、塗装ヘッド56を位置P2で減速させた後、車体FRを塗装したときの塗装ヘッド56の出力側の圧力の変位を示す図である。また、
図7(a)は、塗装ヘッド56を位置P4で減速させた後、車体FRを塗装したときの塗装ヘッド56の入力側の圧力の変位を示す図、
図7(b)は、塗装ヘッド56を位置P4で減速させた後、車体FRを塗装したときの塗装ヘッド56の出力側の圧力の変位を示す図である。
【0075】
ここで、車体FRにおいては、塗装ヘッド56に向けて流れる塗料の圧力は、その目標値を例えば0.1barとし、塗装ヘッド56から送り出される塗料の圧力は、その目標値を例えば-0.1barとしている。
【0076】
図6(a)及び
図6(b)に示すように、塗装ヘッド56が位置P2で減速した後に車体FRの塗装を行ったとき、塗装ヘッド56の入力側における塗料の圧力は、0.09barから0.11barの範囲で変化している。また、塗装ヘッド56の出力側における塗料の圧力は、-0.1050barから-0.0915barの範囲で変化している。なお、これら圧力の変化は、例えばロボットアーム15の第1回動アーム22及び/又は第2回動アーム23の姿勢の変化や、塗装ヘッド56の減速による塗料の慣性等が原因であると考えられる。
【0077】
一方、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、塗装ヘッド56が位置P4で減速した後に車体FRの塗装を行ったとき、塗装ヘッド56の入力側における塗料の圧力は、0.0875barから0.1125barの間で変化している。また、塗装ヘッド56の出力側における塗料の圧力は、-0.10875barから-0.0875barの範囲で変化している。このとき、例えば塗装を開始してから3秒後に、圧力の変化が大きくなるという結果が得られた。また、この場合、圧力の変化が大きい。これは、塗装ヘッド56が位置P4にて急減速したときの塗料の慣性等が収束しない状態で、塗装が開始されたことが原因であると考えられる。
【0078】
つまり、塗装ヘッド56が位置P2で減速した場合、位置P4で減速した場合に比べて、塗装時における、塗装ヘッド56の入力側及び出力側における塗料の圧力の変化が抑制されていることが分かった。すなわち、
図5に示すように、塗装ヘッド56による塗装準備が開始される位置P4よりも手前側(位置P2)で、塗装ヘッド56の移動速度を減速して、塗装ヘッド56の移動速度を、車体FRへの塗装時の移動速度V2としている。例えば、移動する塗装ヘッド56が減速したとき、塗料の慣性やロボットアーム15の振動に伴って塗装ヘッド56に供給される塗料の圧力や、塗装ヘッド56から送り出される塗料の圧力の変化が生じることになるが、このような塗装ヘッド56の速度制御を行うことで、塗装ヘッド56の減速に伴なった塗料の圧力変化を車体FRの塗装が開始されるまでの期間内で収束させることができる。その結果、塗装ヘッド56による車体FRの塗装性能を劣化させずに、安定した車体FRの塗装を実施することができる。
【0079】
なお、本実施の形態では、塗装ヘッド56を位置P2で減速させているが、塗装ヘッド56の移動速度を減速させる位置は、位置P2に限定される必要はなく、例えば塗装ヘッド56による塗装が開始されるまでの間に、当該塗装ヘッド56の移動速度が減速されることに伴った圧力変化が収束する位置であればよい。
【0080】
また、本実施の形態では、塗装ヘッド56を位置P2で減速させ、減速した移動速度のまま、塗装ヘッド56による車体FRの塗装を行っている。例えば車体FRの塗装時における塗装ヘッド56の移動速度は、塗装ヘッド56の塗装性能によって固定の速度に決定されている。したがって、塗装ヘッド56が位置P2を通過したときに、一旦、車体FRの塗装時における塗装ヘッド56の移動速度よりも遅い速度まで減速させた後、例えば位置P3又は位置P4に到達したときに、塗装ヘッド56の移動速度が、車体FRの塗装時における塗装ヘッド56の移動速度となるように加速させることも可能である。これによれば、減速したときの塗料の圧力変動は大きいが、加速した前後における塗料の圧力変化や、ロボットアーム15の振動を極力抑えることができ、塗装性能を向上させることができる。
【0081】
また、塗装ヘッド56を位置P2(又は位置P3)で減速させるのではなく、当該位置P2又は位置P3において、車体FRの塗装時における塗装ヘッド56の移動速度となるように加速させることも可能である。この場合、塗装ヘッド56の移動速度を、段階的に早くするため、各加速時における塗料の圧力変化や、ロボットアーム15の振動を抑制することができる。
【0082】
本実施の形態では、塗装ヘッド56が位置P2で減速させているが、例えば位置P4において、所定の時間停止させることも可能である。なお、所定の時間とは、塗装ヘッド56の停止に伴う圧力変化が収束するまでの時間であり、例えば5秒に設定される。なお、所定の時間とは、塗装ヘッド56が位置P1から位置P4に移動する際の移動速度に応じて設定されてもよいし、上述した塗料循環装置51の圧力計69,72,76,79の少なくともいずれか1つにおける測定結果に基づいて設定してもよい。
【0083】
このとき、
図8に示すように、塗装ヘッド56を主走査方向の往復動における往路を移動させるとき、塗装ヘッド56は、
図4(b)に示す位置P4から位置P6に向けて移動するときに、位置P6で目的の移動速度(例えば、移動速度V2)となるように加速される。また、塗装ヘッド56は、
図4(b)に示す位置P7に到達した後、位置P5で停止するように減速される。なお、塗装ヘッド56を主走査方向の往復動における復路を移動させるときも同様であり、塗装ヘッド56が位置P5から位置P7に向けて移動するときに、位置P7で目的の移動速度となるように加速され、位置P6に到達した後、位置
P4で停止するように減速される。
【0084】
この場合、塗装ヘッド56が主走査方向における往復動における往路を移動するとき、位置P4が塗装開始位置、位置P5が塗装終了位置となる。そして、位置P6から位置P7の間で、塗装ヘッド56が有する複数のノズル61による塗料の吐出が実施される。また、塗装ヘッド56が主走査方向における往復動における復路を移動するとき、位置P5が塗装開始位置、位置P4が塗装終了位置となる。そして、位置P7から位置P6の間で、塗装ヘッド56が有する複数のノズル61による塗料の吐出が実施される。
【0085】
図9(a)は、塗装ヘッド56を位置P4において5秒間停止させた後、車体FRを塗装したときの塗装ヘッド56の入力側の圧力の変化を示す図である。また、
図9(b)は、塗装ヘッド56を位置P4において5秒間停止させた後、車体FRを塗装したときの塗装ヘッド56の出力側の圧力の変化を示す図である。なお、この場合も、塗装ヘッド56の入力側の圧力の目標値は0.1bar、当該塗装ヘッド56の出力側の圧力の目標値は、-0.1barとしている。
【0086】
図9(a)に示すように、塗装ヘッド56の入力側における塗料の圧力は、0.0875barから0.1125barの範囲で変化している。また、
図9(b)に示すように、塗装ヘッド56の出力側における塗料の圧力は、-0.11barから-0.0875barの範囲で変化している。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、塗装ヘッド56が位置P1から位置P4に到達したときに減速して車体FRの塗装を行う場合、塗装ヘッド56の入力側における塗料の圧力は、0.0875barから0.1125barの間で変化している。また、塗装ヘッド56の出力側における塗料の圧力は、-0.10875barから-0.0875barの範囲で変化している。
【0087】
塗装ヘッド56を位置P4において5秒間停止した後、車体FRの塗装を行った場合、塗装ヘッド56を移動させるために、ロボットアーム15の姿勢を変化させることから、塗装ヘッド56による塗装が開始されると、ロボットアーム15の姿勢の変化に伴う塗料の圧力は変化するが、位置P4において減速して車体FRの塗装を行った場合に比べて、塗装ヘッド56の入力側及び出力側における塗料の圧力の変化が抑制されていることが分かった。したがって、塗装ヘッド56が位置P4まで移動して、当該位置P4にて所定の時間停止させた後、塗装ヘッド56を位置P4まで移動する際の移動速度よりも低い速度で移動させながら車体FRの塗装を行うことで、塗装ヘッド56の移動に伴なった塗料循環装置51の内部の圧力変動を抑えることも有効であることが分かる。
【0088】
なお、塗装ヘッド56を位置P4にて所定時間停止させてから、主走査方向における往路を移動させる場合について説明したが、主走査方向における復路を移動させる場合も同様にして、位置P5にて塗装ヘッド56を所定時間停止させることも可能である。このとき、主走査方向における往路の移動から、主走査方向における復路の移動へと切り替える際に、塗装ヘッド56を、副走査方向に所定の距離移動させることになるが、塗装ヘッド56を副走査方向に移動させるときの速度は、車体FRの塗装時の移動速度よりも低速としてもよいし、車体FRの塗装時の移動速度よりも高速としてもよい。また、複数の塗装ロボット10を用いて、複数の車体FRを同時に塗装する場合や、複数の塗装ロボット10により1台の車体FRを塗装する場合、各ロボットアーム15が駆動したときに、各ロボットアーム15に設けた塗装ヘッド56が衝突する虞がある。例えば各ロボットアーム15に設けた塗装ヘッド56が衝突することを防止するために、主走査方向における往路の移動が終了してから、主走査方向における復路の移動を開始するまで(又は、その逆)の塗装ヘッド56の移動軌跡内に、衝突を防止するための退避位置がある場合には、退避位置の前後で、塗装ヘッド56の移動速度を変えるようにしてもよい。
【0089】
本実施の形態では、ロボットアーム15による塗装ヘッド56の移動に伴って発生する圧力変化を、塗装ヘッド56による車体FRの塗装に影響しないように、塗装ヘッド56の移動速度を位置P4に到達するよりも前に減速する、又は位置P4で一旦停止させている。しかしながら、塗装ロボット10を用いた車体FRの塗装では、ロボットアーム15の駆動により、第1回動アーム22や第2回動アーム23が回動することに起因して、塗装ヘッド56が振動して、塗装ヘッド56のノズル形成面56aに設けた複数のノズル61から吐出される塗料の着弾位置がずれる場合もある。このような事象を防止するために、第2回動アーム内に、振動を検出する手段と、当該手段により検出される振動を打ち消す、又は検出された振動の位相とは逆位相となる振動を第2回動アームに付与する振動付与手段とを設けることも可能である。
【0090】
(効果について)
本発明の車体塗装用ロボット10は、車体FRに向けて塗料を吐出する塗装ヘッド56と、塗料を貯留する塗料タンク55と塗装ヘッド56との間で塗料を循環させる供給路57及び戻り流路58を有し、前記供給路57及び戻り流路58からなる循環路を流れる前記塗料の圧力を制御することが可能な塗料循環装置51と、塗装ヘッド56及び塗料循環装置51を有するロボットアーム15と、を有し、ロボットアーム15の動作により塗装ヘッド56を主走査方向に移動させながら車体FRの塗装を行うものであり、ロボットアーム15の動作を制御するアーム制御部102を有し、塗装ヘッド56は、アーム制御部によるロボットアーム15の動作により、車体FRの塗装を開始する塗装開始位置(位置P4)に向けて第1の速度で移動し、塗装開始位置までの移動経路内に設けた特定の位置(位置P2)に到達すると、第1の速度とは異なる第2の速度で移動するものである。
【0091】
例えば、塗装ヘッド56は、車体FRの塗装を行っていないときには、予め設定された初期位置(位置P1)に保持され、新たに車体FRの塗装を行うときに、ロボットアーム15の動作により初期位置から塗装開始位置に向けて移動する。なお、ロボットアーム15の動作が開始されると、ロボットアーム15に設けた塗料循環装置51や塗装ヘッド56は、ロボットアーム15の動作開始時の加速度の影響を受け、塗料循環装置51の供給路57や戻り流路58を流れる塗料の圧力が変動する。また、同時に、ロボットアーム15自体も振動する。その結果、塗装ヘッド56への塗料の供給が不安定になり、塗装ヘッド56に設けた複数のノズル61から吐出される塗料の吐出量にばらつきが生じる。また、塗装ヘッド56に設けた複数のノズルか61ら吐出される塗料の着弾位置が乱れてしまう原因となる。
【0092】
本発明では、例えば初期位置から塗装開始位置までの塗装ヘッド56の移動経路内に設けた特定の位置(位置P2)まで塗装ヘッド56が移動すると、当該塗装ヘッド56の移動速度を異なる移動速度に変更して塗装開始位置まで移動させる。このような制御により、塗料循環装置51を流れる塗料の圧力変動や、ロボットアーム15自体の振動を、塗装ヘッド56が塗装開始位置まで移動する間に収束させることができる。これにより、塗装ヘッド56への塗料供給を安定にし、また塗装ヘッド56に設けた複数のノズル61から吐出される塗料の吐出量のばらつきを抑止できるだけでなく、塗装ヘッド56に設けた複数のノズル61から吐出される塗料の着弾位置の乱れを抑止する。その結果、塗装ヘッド56による車体FRの塗装において、その塗装品質の劣化を抑止することができる。
【0093】
なお、第2の速度を第1の速度未満に設定する、或いは、第1の速度を第2の速度未満に設定することで、移動速度の変化に伴う塗料の圧力変化が塗装ヘッド56における塗装時に影響することを防止することができる。
【0094】
また、塗装ヘッド56は、塗装開始位置に到達すると、第2の速度を保ったまま車体FRの塗装を開始するものである。
【0095】
この構成によれば、特定の位置を通過した後の塗装ヘッド56の移動速度は一定で維持される。すなわち、特定の位置での減速に起因した圧力変動の影響は、塗装開始位置では抑制されており、その状態を保ったまま車体FRの塗装を行うことができる。その結果、塗装ヘッド56による車体FRの塗装において、その塗装品質の劣化を抑止することができる。
【0096】
また、塗装ヘッド56は、主走査方向に複数回往復動するとともに、主走査方向における往復動の切り替えの際に、主走査方向に直交する副走査方向に所定量移動し、塗装開始位置は、主走査方向の往復動における往路及び復路の各々に設けられるものである。
【0097】
これによれば、主走査方向における往復動の切り替えの際に、主走査方向に直交する副走査方向に所定量移動する際の圧力の変化や、ロボットアーム15の姿勢の変化に伴って生じる振動が、塗装ヘッド56を用いた塗装時に影響することを防止することができる。
【0098】
このとき、塗装ヘッド56は、副走査方向に所定量移動する際に第2の速度よりも低速である第3の速度で移動するものである。
【0099】
これによれば、主走査方向に直交する副走査方向に所定量移動する際の圧力の変化を低減できるので、塗装ヘッド56を用いた塗装を安定して行うことができる。
【0100】
また、本発明による車体塗装用ロボット10は、車体FRに向けて塗料を吐出する塗装ヘッド56と、塗料を貯留する塗料タンク55と塗装ヘッド56との間で塗料を循環させる供給路57及び戻り流路58を有し、供給路57及び戻り流路58を流れる塗料の圧力を制御することが可能な塗料循環装置51と、塗装ヘッド56及び塗料循環装置51を有するロボットアーム15と、を有し、ロボットアーム15の動作により塗装ヘッド56を主走査方向に移動させながら車体FRの塗装を行うものであり、ロボットアーム15の動作を制御するアーム制御部102を有し、塗装ヘッド56は、アーム制御部102によるロボットアーム15の制御により、車体FRの塗装を開始する塗装開始位置(位置P6)まで移動して一旦停止するとともに、塗装開始位置で一旦停止してから所定時間経過した後に塗装開始位置から主走査方向への移動を再開して車体FRの塗装を行い、車体FRの塗装を行うときの塗装ヘッド56の移動速度は、塗装開始位置まで移動するときの塗装ヘッド56の移動速度と異なる移動速度に設定されているものである。
【0101】
例えばロボットアーム15の動作が開始されると、ロボットアーム15に設けた塗料循環装置51や塗装ヘッド56は、ロボットアーム15の動作開始時の加速度の影響を受け、塗料循環装置51の供給路57及び戻り流路58を流れる塗料の圧力が変動する。また、同時に、ロボットアーム15自体も振動する。その結果、塗装ヘッド56への塗料の供給が不安定になり、塗装ヘッド56に設けた複数のノズル61から吐出される塗料の吐出量にばらつきが生じる。また、塗装ヘッド56に設けた複数のノズル61から吐出される塗料の着弾位置を乱れてしまう。
【0102】
本発明では、初期位置から塗装開始位置まで移動した塗装ヘッド56を塗装開始位置で一旦停止させることで、塗料循環装置51を流れる塗料の圧力変動や、ロボットアーム15自体の振動を収束させる。塗装開始位置で一旦停止した塗装ヘッド56は、一定時間経過後、塗装を開始する。このとき、塗装ヘッド56は、塗装開始位置から主走査方向に沿って移動することになるが、その移動速度は、前記初期位置から前記塗装開始位置までの塗装ヘッド56の移動速度よりも低速に設定されている。したがって、塗料循環装置51を流れる塗料の圧力変動は、塗装ヘッド56が初期位置から塗装開始位置に向けて移動するときの圧力変動よりも小さい。これにより、塗装ヘッド56への塗料供給を安定にし、また塗装ヘッド56に設けた複数のノズル61から吐出される塗料の吐出量のばらつきを抑制できるだけでなく、塗装ヘッド56に設けた複数のノズル61から吐出される塗料の着弾位置の乱れを抑制することができる。その結果、塗装ヘッド56による車体FRの塗装において、その塗装品質の劣化を抑制することができる。
【0103】
また、塗装ヘッド56は、主走査方向に複数回往復動するとともに、主走査方向における往復動の切り替えの際に、主走査方向に直交する副走査方向に所定量移動し、塗装開始位置は、主走査方向の往復動における往路及び復路の各々に設けられ、塗装ヘッドは、前記往路及び前記復路の各々に設けられた前記塗装開始位置で一旦停止するものである。
【0104】
これによれば、塗装ヘッド56への塗料供給を安定にし、また塗装ヘッド56に設けた複数のノズル61から吐出される塗料の吐出量のばらつきを抑制できるだけでなく、塗装ヘッド56に設けた複数のノズル61から吐出される塗料の着弾位置の乱れを抑制することができる。その結果、塗装ヘッド56による車体FRの塗装において、その塗装品質の劣化を抑制することができる。
【0105】
また、塗装ヘッド56は、車体FRの塗装を行ってないときに初期位置に保持され、アーム制御部102は、車体FRへの塗装開始を受けて、ロボットアーム15の動作を制御して、塗装ヘッド56を初期位置から塗装開始位置へと移動させるものである。
【0106】
この構成によれば、車体FRの塗装を行っていないときには、塗装ヘッド56は、車体FRから離れた初期位置に保持されるので、塗装済みの車体や、未塗装の車体FRに塗装ヘッド56が接触するなどの事象の発生を抑止することができる。
【0107】
また、塗料タンク55に貯留された塗料を塗装ヘッド56に供給する供給路57と、塗装ヘッド56により使用されなかった塗料を塗料タンク55に還流する戻り流路58と、を有しており、塗料循環装置51は、塗料タンク55に貯留された塗料を供給路57に送り出すギヤポンプ62と、塗装ヘッド56から塗料を戻り流路58に引き込むギヤポンプ80と、供給路57に送り込まれた塗料の圧力を検出する圧力計69と、戻り流路58に引き込まれた塗料の圧力を検出する圧力計79と、圧力計69による検出結果に基づいてギヤポンプ62による塗料の送り出し量を制御するとともに、圧力計79による検出結果に基づいてギヤポンプ80による塗料の引き込み量を制御する塗料供給制御部103と、を有するものである。
【0108】
これによれば、ロボットアーム15の動作時に、塗料循環装置51の供給路57に送り込まれた塗料の圧力と戻り流路58に引き込まれた塗料の圧力とに基づき、ギヤポンプ62,80を制御することができるので、各流路における塗料の圧力を適正な圧力に保つことができる。すなわち、塗料循環装置51による塗装ヘッド56への塗料の供給を安定して行うことができる。
【符号の説明】
【0109】
10…塗装ロボット(車体塗装用ロボット)
15…ロボットアーム
21…基台(基部)
22…第1回動アーム
23…第2回動アーム
51…塗料循環装置(供給装置)
55…塗料タンク(貯留部)
56…塗装ヘッド
57…供給路
58…戻り流路(還流路)
62…ギヤポンプ(送出手段)
69…圧力計(第1の検出手段)
79…圧力計(第2の検出手段)
80…ギヤポンプ(引込み手段)
102…アーム制御部(制御手段)
103…塗料供給制御部(圧力制御手段)
【要約】 (修正有)
【課題】多軸アームの動作時に生じる圧力変動や多軸アームの振動を抑制して、塗装ヘッドによる塗装品質の劣化を抑止する。
【解決手段】車体塗装用ロボット10は、車体FRに向けて塗料を吐出する塗装ヘッド17と、塗料を貯留する貯留部と塗装ヘッドとの間で塗料を循環させる循環路と、循環路を流れる塗料の圧力を制御することが可能な供給装置と、塗装ヘッド及び供給装置を有するアーム22、23と、を有し、アームの動作により塗装ヘッドを主走査方向に移動させながら車体の塗装を行うものであって、アームの動作を制御する制御手段を有し、塗装ヘッドは、制御手段によるアームの制御により、車体の塗装を開始する塗装開始位置まで移動して一旦停止してから所定時間経過した後に主走査方向に移動して車体の塗装を行い、車体の塗装を行うときの塗装ヘッドの移動速度は、塗装開始位置まで移動するときの塗装ヘッドの移動速度とは異なる移動速度に設定される。
【選択図】
図1