(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】走行経路記録装置、走行経路記録システム、サーバ、走行経路記録方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/30 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
G01C21/30
(21)【出願番号】P 2022510343
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014087
(87)【国際公開番号】W WO2021192241
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】是永 剛志
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-147982(JP,A)
【文献】特開2004-309705(JP,A)
【文献】特開2017-191006(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0335307(US,A1)
【文献】特開2001-337150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得するマップマッチング処理部と、
正解マップマッチング情報を取得する正解情報取得部と、
前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得する偏差取得部と、
前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する調整部と、
を備え、
前記マップマッチング処理部は、前記第1マップマッチングアルゴリズムに第1時点において取得した前記マップマッチング入力情報を入力して、前記第1時点の前記マップマッチング結果を取得し、
前記正解情報取得部は、前記第1時点、及び前記第1時点よりも後の時間である第2時点のそれぞれにおいて取得した複数の前記マップマッチング入力情報に基づく前記第1時点の前記正解マップマッチング情報を取得する、
走行経路記録装置。
【請求項2】
前記正解情報取得部は、第2マップマッチングアルゴリズムに前記第1時点及び前記第2時点のそれぞれにおいて取得した複数の前記マップマッチング入力情報を入力して、前記第2マップマッチングアルゴリズムから出力される前記第1時点の前記マップマッチング結果を含む前記正解マップマッチング情報を取得する、
請求項
1に記載の走行経路記録装置。
【請求項3】
前記第2マップマッチングアルゴリズムは、前記第1マップマッチングアルゴリズムよりも高精度の地図データを用いて前記マップマッチング結果を出力する、
請求項
2に記載の走行経路記録装置。
【請求項4】
車両に搭載される車載器と、
前記車載器と通信可能に接続されるサーバと、
を備える走行経路記録システムであって、
前記車載器は、
第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得するマップマッチング処理部
を備え、
前記サーバは、
正解マップマッチング情報を取得する正解情報取得部と、
前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得する偏差取得部と、
前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する調整部と、
調整された前記重み付けパラメータを前記車載器に送信する送信部と、
を備え、
前記マップマッチング処理部は、前記第1マップマッチングアルゴリズムに第1時点において取得した前記マップマッチング入力情報を入力して、前記第1時点の前記マップマッチング結果を取得し、
前記正解情報取得部は、前記第1時点、及び前記第1時点よりも後の時間である第2時点のそれぞれにおいて取得した複数の前記マップマッチング入力情報に基づく前記第1時点の前記正解マップマッチング情報を取得する、
走行経路記録システム。
【請求項5】
車両に搭載され、第1マップマッチングアルゴリズムに
第1時点において取得したマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力される
前記第1時点のマップマッチング結果を取得する車載器から、当該マップマッチング結果を取得する結果取得部と、
正解マップマッチング情報を取得する正解情報取得部と、
前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得する偏差取得部と、
前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する調整部と、
調整された前記重み付けパラメータを前記車載器に送信する送信部と、
を備え
、
前記正解情報取得部は、前記第1時点、及び前記第1時点よりも後の時間である第2時点のそれぞれにおいて取得した複数の前記マップマッチング入力情報に基づく前記第1時点の前記正解マップマッチング情報を取得する、
サーバ。
【請求項6】
走行経路記録装置が、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得するステップと、
前記走行経路記録装置が、正解マップマッチング情報を取得するステップと、
前記走行経路記録装置が、前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得するステップと、
前記走行経路記録装置が、前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整するステップと、
を有
し、
前記マップマッチング結果を取得するステップは、前記第1マップマッチングアルゴリズムに第1時点において取得した前記マップマッチング入力情報を入力して、前記第1時点の前記マップマッチング結果を取得し、
前記正解マップマッチング情報を取得するステップは、前記第1時点、及び前記第1時点よりも後の時間である第2時点のそれぞれにおいて取得した複数の前記マップマッチング入力情報に基づく前記第1時点の前記正解マップマッチング情報を取得する、
走行経路記録方法。
【請求項7】
車載器が、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得してサーバに送信するステップと、
前記サーバが、正解マップマッチング情報を取得するステップと、
前記サーバが、前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得するステップと、
前記サーバが、前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整するステップと、
を有し、
前記マップマッチング結果を取得するステップは、前記第1マップマッチングアルゴリズムに第1時点において取得した前記マップマッチング入力情報を入力して、前記第1時点の前記マップマッチング結果を取得し、
前記正解マップマッチング情報を取得するステップは、前記第1時点、及び前記第1時点よりも後の時間である第2時点のそれぞれにおいて取得した複数の前記マップマッチング入力情報に基づく前記第1時点の前記正解マップマッチング情報を取得する、
走行経路記録方法。
【請求項8】
第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得するステップと、
正解マップマッチング情報を取得するステップと、
前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得するステップと、
前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整するステップと、
を走行経路記録装置のコンピュータに実行させるプログラム
であって、
前記マップマッチング結果を取得するステップは、前記第1マップマッチングアルゴリズムに第1時点において取得した前記マップマッチング入力情報を入力して、前記第1時点の前記マップマッチング結果を取得し、
前記正解マップマッチング情報を取得するステップは、前記第1時点、及び前記第1時点よりも後の時間である第2時点のそれぞれにおいて取得した複数の前記マップマッチング入力情報に基づく前記第1時点の前記正解マップマッチング情報を取得する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行経路記録装置、走行経路記録システム、サーバ、走行経路記録方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーションシステム等の車載器は、車両がデジタルマップ上のどの位置を走行したかを特定するマップマッチング処理をリアルタイムで行っている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、車載器がマップマッチング処理により車両が有料道路を走行したと判断した場合に、当該車両に対し通行料金を課金する技術が考えられている。このため、車両がどの道路を走行したかを精度よく特定可能となるように、リアルタイムで行うマップマッチング処理技術の更なる改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、走行経路記録装置は、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得するマップマッチング処理部と、正解マップマッチング情報を取得する正解情報取得部と、前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得する偏差取得部と、前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する調整部と、を備える。
【0006】
本開示の一態様によれば、走行経路記録システムは、車両に搭載される車載器と、前記車載器と通信可能に接続されるサーバと、を備える。前記車載器は、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得するマップマッチング処理部を備える。前記サーバは、正解マップマッチング情報を取得する正解情報取得部と、前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得する偏差取得部と、前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する調整部と、調整された前記重み付けパラメータを前記車載器に送信する送信部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様によれば、サーバは、車両に搭載され、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得する車載器から、当該マップマッチング結果を取得する結果取得部と、正解マップマッチング情報を取得する正解情報取得部と、前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得する偏差取得部と、前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する調整部と、調整された前記重み付けパラメータを前記車載器に送信する送信部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様によれば、走行経路記録方法は、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得するステップと、正解マップマッチング情報を取得するステップと、前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得するステップと、前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整するステップと、を有する。
【0009】
本開示の一態様によれば、プログラムは、走行経路記録装置のコンピュータに、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得するステップと、正解マップマッチング情報を取得するステップと、前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得するステップと、前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一つの態様によれば、リアルタイムで行うマップマッチング処理の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る走行経路記録システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態に係る走行経路記録システムの機能構成を示す図である。
【
図3】本開示の第1の実施形態に係るマップマッチング結果の一例を示す図である。
【
図4】本開示の第1の実施形態に係る正解マップマッチング情報の一例を示す図である。
【
図5】本開示の第1の実施形態に係る走行経路記録システムの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の第2の実施形態に係る走行経路記録システムの機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
以下、本開示の第1の実施形態に係る走行経路記録システム1について、
図1~
図5を参照しながら説明する。
【0013】
(走行経路記録システムの全体構成)
図1は、本開示の第1の実施形態に係る走行経路記録システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る走行経路記録システム1は、複数の車両Aそれぞれに搭載された車載器10と、サーバ11とを備えている。
【0014】
車載器10は、GNSS(全地球航行衛星システム:Global Navigation Satellite System)を構成する衛星から受信した信号(衛星信号)、車両Aのセンサ(加速度センサ、角速度センサ、角加速度センサ等)から受信した信号(センサ信号)等に基づいて、車両Aの走行経路を逐次特定する。なお、車両Aの走行経路は、リンク(道路)及びリンク間を接続するノード(交差点等)により構成される道路網データ上において、車両Aが走行したリンク(リンク上の位置)を時系列に並べたリストで表現される。また、車載器10は、特定した車両Aの走行経路を、通信ネットワークNWを通じてサーバ11へ送信する。
【0015】
サーバ11は、通信ネットワークNWを通じて複数の車載器10それぞれと接続される。サーバ11の詳細な機能構成については、後述する。
【0016】
(走行経路記録システムの機能構成)
図2は、本開示の第1の実施形態に係る走行経路記録システムの機能構成を示す図である。
【0017】
まず、走行経路記録システム1の車載器10の機能構成について説明する。
図2に示すように、車載器10は、CPU10Aと、記憶媒体10Bとを備えている。
【0018】
CPU10Aは、車載器10の動作全体を司るプロセッサである。CPU10Aは、所定のプログラムに従って動作することにより、マップマッチング処理部101、受信部102としての機能を発揮する。
【0019】
マップマッチング処理部101は、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得する。
【0020】
マップマッチング入力情報は、衛星信号に基づく情報、及びセンサ信号に基づく情報を含む。衛星信号に基づく情報は、車両Aの測位情報(緯度、経度、高度)、速度ベクトル、衛星信号強度、捕捉衛星数等を含む。また、センサ信号に基づく情報は、車両Aの加速度、角速度、角加速度等を含む。
【0021】
第1マップマッチングアルゴリズムは、衛星航法及び自律航法を用いて、車両Aが道路網データ上のどのリンクを走行しているかを特定し、特定した走行位置(リンク上の位置)をマップマッチング結果として逐次出力するアルゴリズムである。なお、本実施形態では、第1マップマッチングアルゴリズムとして、既知のマップマッチングアルゴリズムを用いてもよい。なお、以下の説明において、本実施形態に係るマップマッチング処理部101が第1マップマッチングアルゴリズムを用いて車両Aが走行しているリンクを特定する処理を「リアルタイムマップマッチング処理」とも記載する。
【0022】
図3は、本開示の第1の実施形態に係るマップマッチング結果の一例を示す図である。
マップマッチング処理部101は、ある時刻t1~t10それぞれにおいてマップマッチング入力情報を取得する。これらマップマッチング入力情報に含まれる車両Aの測位情報(緯度及び経度)は、
図3のP1~P10の位置であったとする。
図3の例のように、車両Aの測位情報が示す位置P1~P10は、測位誤差等により、道路網データのリンクL1、L2、L3上に存在していない場合があり、車両Aがどのリンクを走行しているかを特定することが困難である。このため、マップマッチング処理部101は、マップマッチング入力情報を取得する毎にリアルタイムマップマッチング処理を実行して、車両Aがどのリンクを走行しているかを逐次特定する。
【0023】
時刻t1においてマップマッチング入力情報を取得したとする。マップマッチング処理部101は、第1マップマッチングアルゴリズムにこのマップマッチング入力情報を入力して、時刻t1において車両Aがどのリンクを走行しているかを特定する。例えば、第1マップマッチングアルゴリズムは、マップマッチング入力情報に含まれる測位情報が示す車両Aの位置P1の近傍に存在するリンクのうち、時刻t1のマップマッチング入力情報とマッチする度合い(スコア)の高いリンクを、車両Aが走行するリンクであると特定する。ここで、第1マップマッチングアルゴリズムは、現在(時刻t1)のマップマッチング入力情報、過去(時刻t1以前)のマップマッチング結果、及び道路網データから得られるn個の説明変数を「A1、A2、A3、・・・、An」、説明変数それぞれの重み付けパラメータを「W1、W2、W3、・・・、Wn」とした場合、以下の式(1)を用いて各リンクのスコアSを算出する。
【0024】
S=W1×A1+W2×A2+W3×A3+・・・Wn×An ・・・(1)
【0025】
説明変数は、例えば、測位情報で示される位置P1からスコアSの算出対象となるリンク(以下、「対象リンク」とも記載する。)までの距離、速度ベクトル及びリンクの向きの一致度、加速度、角速度、角加速度、対象リンクの属性、リンクのつながり等である。対象リンクの属性とは、右左折禁止、Uターン禁止等の情報である。また、リンクのつながりとは、リンク同士の接続の有無である。例えば、車両Aが前回走行したリンクと対象リンクL1とが接続されていない場合、前回走行したリンクから対象リンクL1へ移動することができないので、リンクのつながりを示す説明変数は、スコアSを低くするような値となる。
【0026】
図3の例では、時刻t1ではリンクL1のスコアが最も高いため、マップマッチング処理部101は、車両AがリンクL1(位置MA1)を走行したと特定する。
【0027】
マップマッチング処理部101は、時刻t2以降の各時刻についても同様に、マップマッチング入力情報を取得する度にリアルタイムマップマッチング処理を行う。ここで、リアルタイムマップマッチング処理では、複数のリンクが近接する場所を走行しているときは、測位誤差等の影響により誤ったリンクにマッチングしてしまう可能性がある。例えば、
図3に示すように、時刻t5~t7のマップマッチング入力情報(測位情報)が示す位置P5~P7は、リンクL2よりもリンクL3の方に近いとする。この場合、リアルタイムマップマッチング処理では、時刻t5~t7それぞれの時点における車両Aの位置を、リンクL3(位置MA5~MA7)にマッチングしてしまう可能性がある。なお、マップマッチング処理部101は、このように一時的に誤ったマップマッチング結果(位置MA5~MA7)を取得したとしても、将来のある時点(例えば、
図3の時刻t8)において、誤ったリンクL3のスコアSよりも正しいリンクL2のスコアSの方が高くなれば、以降は正しいマップマッチング結果(位置MA8~MA10)を取得することができる。
【0028】
また、マップマッチング処理部101は、時刻別のマップマッチング入力情報及びマップマッチング結果を記憶媒体10Bに蓄積しておき、定期的にサーバ11に送信する。
【0029】
受信部102は、後述のサーバ11から第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを受信して、記憶媒体10Bに記憶する。
【0030】
記憶媒体10Bは、いわゆる補助記憶装置であって、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などである。記憶媒体10Bには、重み付けパラメータを含む第1マップマッチングアルゴリズム、道路網データ等が記憶されている。また、記憶媒体10Bには、マップマッチング処理部101により取得されたマップマッチング入力情報及びマップマッチング結果が逐次記憶、蓄積されていく。
【0031】
次に、走行経路記録システム1のサーバ11の機能構成について説明する。
図2に示すように、サーバ11は、CPU11Aと、記憶媒体11Bとを備えている。
【0032】
CPU11Aは、サーバ11の動作全体を司るプロセッサである。CPU11Aは、所定のプログラムに従って動作することにより、結果取得部111、正解情報取得部112、偏差取得部113、調整部114、送信部115としての機能を発揮する。
【0033】
結果取得部111は、複数の車載器10それぞれから、所定期間(例えば、現在から1時間過去までの期間)に蓄積された時刻別のマップマッチング入力情報及びマップマッチング結果(走行経路)を取得する。
【0034】
正解情報取得部112は、正解マップマッチング情報を取得する。正解マップマッチング情報は、結果取得部111が取得した所定期間のマップマッチング入力情報それぞれに対する車両Aのリンク上の位置(走行経路)を示す情報であり、結果取得部111が車載器10から取得したマップマッチング結果よりも確度の高い情報である。
【0035】
例えば、正解情報取得部112は、第2マップマッチングアルゴリズムに、所定期間に車載器10が収集した複数のマップマッチング入力情報を全て入力して、第2マップマッチングアルゴリズムから出力される当該所定期間の各時点におけるマップマッチング結果を、正解マップマッチング情報として取得する。そうすると、第2マップマッチングアルゴリズムには、所定期間の各時点(第1時点)におけるマップマッチング入力情報のみならず、第1時点よりも未来(第2時点)のマップマッチング入力情報が入力されるので、車両Aの各時点におけるリンク上の位置を特定する際に、車両Aの未来の状態(測位情報が示す位置、未来のマップマッチング結果等)を反映させることができる。したがって、第2マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果は、第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果よりも確度の高い情報となる。
【0036】
図4は、本開示の第1の実施形態に係る正解マップマッチング情報の一例を示す図である。
図4には、所定期間の一部(時刻t1~t10)におけるマップマッチング入力情報及び正解マップマッチング情報の一例が示されている。時刻t1~t10のマップマッチング入力情報から、車両Aの測位情報が示す位置は、
図4のP1~P10の位置であったとする。なお、この時刻t1~t10及び位置P1~P10は、
図3の時刻t1~t10及び位置P1~P10に対応している。
【0037】
車載器10(第1マップマッチングアルゴリズム)のリアルタイムマップマッチング処理では、上述のように、例えば時刻t5において、測位情報が示す位置P5の最も近いリンクL3(
図3の位置MA5)にマッチングしてしまう可能性がある。しかしながら、
図3及び
図4に示すように、時刻t5以降の車両Aの状態(例えば、時刻t6~t10の測位情報が示す位置P6~P10等)から、車両Aは、時刻t5以降にリンクL2を走行した可能性が高いことが分かる。
【0038】
これに対し、正解情報取得部112(第2マップマッチングアルゴリズム)のマップマッチング処理では、時刻t5における車両Aのリンク上の位置を特定する際に、時刻t5のマップマッチング入力情報のみならず、時刻t5よりも後(未来)の時刻のマップマッチング入力情報を利用する。これにより、正解情報取得部112は、時刻t5よりも後の時刻のマップマッチング入力情報からは車両AがリンクL2を走行した可能性が高いことが分かるので、時刻t5における車両Aの位置を、測位情報が示す位置P5に最も近いリンクL3ではなく、リンクL2(
図4の位置MB5)であると補正して特定することができる。正解情報取得部112は、他の各時点における車両Aの位置についても同様に特定する。このようにして、正解情報取得部112は、車載器10が特定するマップマッチング結果よりも、確度の高いマップマッチング結果からなる正解マップマッチング情報を取得する。
【0039】
また、正解情報取得部112(第2マップマッチングアルゴリズム)は、車載器10(第1マップマッチングアルゴリズム)で用いられる道路網データよりも高精度の地図データを用いてマップマッチング処理を行うようにしてもよい。この地図データは、例えばリンク及びノードからなる道路網データに加え、リンク周辺の地形、建築物等のデータを含む3D地図データである。正解情報取得部112は、マップマッチング処理において、例えば、リンク周辺の地形と測位情報(高度)とを比較してもよいし、建築物(遮蔽物)の有無と衛星信号強度とを比較してもよい。このようにすることで、正解情報取得部112は、より正確な正解マップマッチング情報を取得することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、正解情報取得部112がマップマッチング処理を行い、正解マップマッチング情報を取得する態様を例として説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、正解情報取得部112は、外部サーバ(不図示)等の他の装置において生成された正解マップマッチング情報を取得するようにしてもよい。この場合、正解情報取得部112は、結果取得部111が取得したマップマッチング入力情報を外部サーバに送信し、外部サーバから当該マップマッチング入力情報に対する正解マップマッチング情報を取得する。
【0041】
偏差取得部113は、正解情報取得部112が取得した正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、結果取得部111が取得した(車載器10の第1マップマッチングアルゴリズムから出力された)マップマッチング結果との偏差を取得する。
【0042】
例えば偏差取得部113は、正解マップマッチング情報のマップマッチング結果(
図4の位置MB1~MB10)と、結果取得部111が取得したマップマッチング結果(
図3の位置MA1~MA10)との不一致率(不一致数)を、偏差として取得する。また、偏差取得部113は、結果取得部111が取得したマップマッチング結果(
図3の位置MA1~MA10)のそれぞれが、正解マップマッチング情報のマップマッチング結果(
図4の位置MB1~MB10)のそれぞれからどのくらい離れているか(例えば、距離の差分の二乗和平方根)を偏差として取得してもよい。
【0043】
調整部114は、偏差取得部113が取得した偏差が小さくなるように(即ち、第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果が、正解マップマッチング情報のマップマッチング結果と近くなるように)、第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータ(上式(1)の重み付けパラメータW1~Wn)を調整する。
【0044】
例えば、調整部114は、遺伝的アルゴリズム等の技術を利用して、第1マップマッチングアルゴリズムから最適な(正解マップマッチング情報のマップマッチング結果に近い)マップマッチング結果が出力されるように、第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する。また、調整部114は、正解マップマッチング情報のマップマッチング結果を教師データとする機械学習(ニューラルネットワーク等)の技術を利用して、マップマッチング入力情報から最適なマップマッチング結果を得られるように重み付けパラメータを学習してもよい。このとき、調整部114は、調整後の重み付けパラメータを含む第1マップマッチングアルゴリズムを用いて再度、マップマッチング結果を取得して、このマップマッチング結果と正解マップマッチング情報のマップマッチング結果の偏差を更に小さくするように再調整をおこなってもよい。
【0045】
送信部115は、調整部114により調整された重み付けパラメータを車載器10に送信する。なお、送信部115は、調整部114により調整された重み付けパラメータを含む第1マップマッチングアルゴリズムを車載器10に送信してもよい。
【0046】
記憶媒体11Bは、いわゆる補助記憶装置であって、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などである。記憶媒体11Bには、重み付けパラメータを含む第1マップマッチングアルゴリズム、地図データ等が記憶されている。また、記憶媒体11Bには、結果取得部111が複数の車載器10それぞれから取得したマップマッチング入力情報及びマップマッチング結果、正解情報取得部112が取得した正解マップマッチング情報、調整部114が調整した重み付けパラメータ等が逐次記憶、蓄積されていく。
【0047】
(走行経路記録システムの処理フロー)
図5は、本開示の第1の実施形態に係る走行経路記録システムの処理の一例を示すフローチャートである。
以下、
図5を参照しながら、走行経路記録システム1の処理について詳細に説明する。
【0048】
図5に示すように、まず、車載器10のマップマッチング処理部101は、マップマッチング入力情報を取得する(ステップS101)。
【0049】
次に、マップマッチング処理部101は、記憶媒体10Bに記憶されている重み付けパラメータを含む第1マップマッチングアルゴリズムに、取得したマップマッチング入力情報を入力して、第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得する(ステップS102)。
【0050】
次に、マップマッチング処理部101は、前回サーバ11にマップマッチング結果(車両Aの走行経路)を送信するタイミングであるか否かを判断する(ステップS103)。マップマッチング処理部101は、例えば、前回マップマッチング結果を送信してから一定時間(例えば、1時間)が経過していない場合、送信タイミングではないと判断し(ステップS103:NO)、ステップS101に戻る。一方、マップマッチング処理部101は、一定期間を経過した場合、送信タイミングであると判断し(ステップS103:YES)、記憶媒体10Bに蓄積された未送信のマップマッチング入力情報及びマップマッチング結果をサーバ11に送信する(ステップS104)。
【0051】
サーバ11の結果取得部111は、車載器10からマップマッチング入力情報及びマップマッチング結果を取得すると(ステップS111)、これらを記憶媒体11Bに記録して蓄積する。
【0052】
次に、サーバ11の正解情報取得部112は、結果取得部111が取得したマップマッチング入力情報に対する正解マップマッチング情報を取得する(ステップS112)。具体的には、正解情報取得部112は、第2マップマッチングアルゴリズムに、所定期間(例えば、現在から1時間過去までの期間)に車載器10が収集した複数のマップマッチング入力情報を全て入力して、第2マップマッチングアルゴリズムから出力される当該所定期間の各時点におけるマップマッチング結果を取得する。
【0053】
次に、サーバ11の偏差取得部113は、正解マップマッチング情報のマップマッチング結果と、結果取得部111が車載器10から取得したマップマッチング結果との偏差を取得する(ステップS113)。
【0054】
次に、サーバ11の調整部114は、偏差取得部113が取得した偏差が小さくなるように、第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する(ステップS114)。このとき、調整部114は、複数の車載器10それぞれから収集したマップマッチング結果と正解マップマッチング情報のマップマッチング結果との偏差それぞれが小さくなるような重み付けパラメータの調整を行う。これにより、調整部114は、複数の車載器10で共通して生じるマップマッチング誤差を低減させることができるとともに、限定的なマップマッチング誤差(一時的な障害等に起因する誤差、運転操作に起因する誤差等)が第1マップマッチングアルゴリズムに反映されてしまうことを抑制することができる。
【0055】
次に、サーバ11の送信部115は、調整部114により調整された重み付けパラメータを、複数の車載器10それぞれに送信する(ステップS115)。そうすると、車載器10の受信部102は、受信した重み付けパラメータを記憶媒体10Bに記憶する(ステップS105)。このとき、受信部102は、記憶媒体10Bに記憶されている第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを、調整後の重み付けパラメータに変更して上書きするようにしてもよい。これにより、車載器10のマップマッチング処理部101は、以降のマップマッチング処理において、調整後の重み付けパラメータを用いたマップマッチング結果を得ることができる。
【0056】
車載器10及びサーバ11は、上述の各処理を繰り返し実行することにより、第1マップマッチングアルゴリズムを改善しながら、車両Aの走行経路を記録、蓄積する。
【0057】
(作用、効果)
以上のように、本実施形態に係る走行経路記録システム1は、車載器10において第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果をリアルタイムで取得し、サーバ11において正解マップマッチング情報のマップマッチング結果と、第1マップマッチングアルゴリズムによるマップマッチング結果との偏差を小さくするように、第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する。このようにすることで、走行経路記録システム1は、車載器10において行うリアルタイムマップマッチング処理の精度を向上させることができる。
【0058】
また、走行経路記録システム1は、車載器10においてある時点(第1時点)のマップマッチング入力情報に基づくマップマッチング結果を取得する一方で、サーバ11において第1時点のマップマッチング入力情報、及び第1時点よりも後の時間である第2時点のマップマッチング入力情報に基づく正解マップマッチング情報を取得する。このようにすることで、走行経路記録システム1は、サーバ11において正解マップマッチング情報を取得する際に、第1時点よりも未来の第2時点における車両Aの走行状態に基づいて補正された、より確度の高い第1時点のマップマッチング結果を取得することができる。これにより、走行経路記録システム1は、車載器10におけるリアルタイムマップマッチング処理の誤差(正解マップマッチング情報との偏差)を正確に取得して、重み付けパラメータを精度よく調整することができる。
【0059】
また、走行経路記録システム1は、サーバ11において、第2マップマッチングアルゴリズムに複数時点において取得した複数のマップマッチング入力情報を入力して、第2マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を含む正解マップマッチング情報を取得する。このようにすることで、走行経路記録システム1は、サーバ11において正解マップマッチング情報を作成して、車載器10のリアルタイムマップマッチング処理によるマップマッチング結果と比較することができる。
【0060】
また、走行経路記録システム1は、サーバ11の第2マップマッチングアルゴリズムにおいて、車載器10の第1マップマッチングアルゴリズムよりも高精度の地図データを用いて、マップマッチング結果を出力する。車載器10(第1マップマッチングアルゴリズム)のリアルタイムマップマッチング処理では、リアルタイム性が要求されるため、時間がかかるような演算処理(例えば、3D地図データ等の高精度な地図データを用いたマップマッチング処理)を行うことが困難な場合がある。このため、車載器10では、サーバ11よりも情報量の少ない道路網データのみを用いてリアルタイムマップマッチング処理を行っている。しかしながら、サーバ11(第2マップマッチングアルゴリズム)のマップマッチング処理は、リアルタイム性が要求されないため、高精度な地図を利用した演算処理を実行することができる。この結果、走行経路記録システム1は、サーバ11のマップマッチング処理において、より精度の高いマップマッチング結果を取得することができる。
【0061】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態に係る走行経路記録システム1について、
図6を参照しながら説明する。第1の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0062】
(走行経路記録システムの機能構成)
図6は、本開示の第2の実施形態に係る走行経路記録システムの機能構成を示す図である。
図6に示すように、本実施形態に係る走行経路記録システム1において、車載器10は、走行経路記録装置12を備えている。
【0063】
走行経路記録装置12は、車載器10に内蔵され、車載器10が搭載された車両Aの走行経路を特定及び記録するとともに、走行経路(マップマッチング結果)を特定するための第1マップマッチングアルゴリズムの重み付けパラメータの調整を行う。即ち、本実施形態に係る走行経路記録装置12は、第1の実施形態に係る車載器10及びサーバ11の双方の機能を有する装置である。
【0064】
走行経路記録装置12は、CPU12Aと、記憶媒体12Bとを備えている。
【0065】
CPU12Aは、走行経路記録装置12の動作全体を司るプロセッサである。CPU12Aは、所定のプログラムに従って動作することにより、マップマッチング処理部121、正解情報取得部122、偏差取得部123、調整部124としての機能を発揮する。
【0066】
マップマッチング処理部121は、第1の実施形態に係る車載器10のマップマッチング処理部101と同様の機能を有している。即ち、マップマッチング処理部121は、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得する、リアルタイムマップマッチング処理を行う。マップマッチング処理部121が取得したマップマッチング入力情報及びマップマッチング結果は、記憶媒体12Bに逐次記憶、蓄積されていく。また、マップマッチング処理部121が取得したマップマッチング結果は、サーバ11に送信され、サーバ11における課金処理等に用いられてもよい。
【0067】
正解情報取得部122は、第1の実施形態に係るサーバ11の正解情報取得部112と同様の機能を有している。即ち、正解情報取得部122は、正解マップマッチング情報を取得する。なお、正解情報取得部122は、第2マップマッチングアルゴリズムに、所定期間に記憶媒体12Bに蓄積された複数のマップマッチング入力情報を全て入力して、第2マップマッチングアルゴリズムから出力される当該所定期間の各時点におけるマップマッチング結果を取得する。また、正解情報取得部122は、サーバ11から正解マップマッチング情報を取得するようにしてもよい。
【0068】
偏差取得部123は、第1の実施形態に係るサーバ11の偏差取得部113と同様の機能を有している。即ち、偏差取得部123は、正解情報取得部122が取得した正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、マップマッチング処理部121が取得したマップマッチング結果との偏差を取得する。
【0069】
調整部124は、第1の実施形態に係るサーバ11の調整部114と同様の機能を有している。即ち、調整部124は、偏差取得部113が取得した偏差が小さくなるように、第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する処理を定期的(例えば、1時間毎)に行う。また、調整部124により調整された重み付けパラメータは、記憶媒体12Bに記憶される。これにより、マップマッチング処理部121が次にリアルタイムマップマッチング処理を行う際に、調整後の重み付けパラメータを含む第1マップマッチングアルゴリズムを利用することができる。
【0070】
記憶媒体12Bは、いわゆる補助記憶装置であって、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などである。記憶媒体12Bには、重み付けパラメータを含む第1マップマッチングアルゴリズム、道路網データ、地図データ等が記憶されている。また、記憶媒体12Bには、マップマッチング処理部121が取得したマップマッチング入力情報及びマップマッチング結果、正解情報取得部122が取得した正解マップマッチング情報、調整部124が調整した重み付けパラメータ等が逐次記憶、蓄積されていく。
【0071】
(作用、効果)
以上のように、本実施形態に係る走行経路記録装置12は、第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果をリアルタイムで取得して記録するとともに、正解マップマッチング情報のマップマッチング結果と、第1マップマッチングアルゴリズムによるマップマッチング結果との偏差を小さくするように、第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する。このようにすることで、走行経路記録装置12は、マップマッチング処理部121におけるリアルタイムマップマッチング処理の精度を向上させることができる。
【0072】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
【0073】
例えば、第1の実施形態では、サーバ11が複数の車載器10それぞれに共通の重み付けパラメータを配信する態様について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、サーバ11の調整部114は、車載器10が搭載された車両Aの車種別に、重み付けパラメータの調整を行うようにしてもよい。例えば、自動二輪車と自動四輪車とでは、マップマッチング入力情報に含まれる測位情報、角速度等から推測される車両の挙動(車線における走行位置、右左折の挙動等)が異なる場合がある。このため、調整部114が車種別に重み付けパラメータの調整を行うことにより、車種に依存するマップマッチング入力情報の傾向を第1マップマッチングアルゴリズムに反映させることができる。なお、このような態様において、サーバ11の結果取得部111は、車載器10から車両Aの車種を示す情報を更に取得して、記憶媒体11Bにどの車載器10がどの車種の車両Aに搭載されているかを関連付けて記録しておく。また、サーバ11の送信部115は、車載器10に対し、当該車載器10に関連付けられた車種と同一の車種向けに調整された重み付けパラメータを送信する。
【0074】
<付記>
上述の各実施形態に記載の走行経路記録装置、走行経路記録システム、サーバ、走行経路記録方法、及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0075】
本開示の第1の態様によれば、走行経路記録装置(12)は、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得するマップマッチング処理部(121)と、正解マップマッチング情報を取得する正解情報取得部(122)と、前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得する偏差取得部(123)と、前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する調整部(124)と、を備える。
【0076】
このようにすることで、走行経路記録装置は、リアルタイムで行うマップマッチング処理の精度を向上させることができる。
【0077】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る走行経路記録装置(12)において、前記マップマッチング処理部(121)は、前記第1マップマッチングアルゴリズムに第1時点において取得した前記マップマッチング入力情報を入力して、前記第1時点の前記マップマッチング結果を取得し、前記正解情報取得部(122)は、前記第1時点、及び前記第1時点よりも後の時間である第2時点のそれぞれにおいて取得した複数の前記マップマッチング入力情報に基づく前記第1時点の前記正解マップマッチング情報を取得する。
【0078】
このようにすることで、走行経路記録装置は、正解マップマッチング情報を取得する際に、第1時点よりも未来の第2時点における車両Aの走行状態に基づいて補正された、より確度の高い第1時点のマップマッチング結果を取得することができる。これにより、走行経路記録装置は、マップマッチング処理部におけるリアルタイムマップマッチング処理の誤差(正解マップマッチング情報との偏差)を正確に取得して、重み付けパラメータを精度よく調整することができる。
【0079】
本開示の第3の態様によれば、第2の態様に係る走行経路記録装置(12)において、前記正解情報取得部(122)は、第2マップマッチングアルゴリズムに前記第1時点及び前記第2時点のそれぞれにおいて取得した複数の前記マップマッチング入力情報を入力して、前記第2マップマッチングアルゴリズムから出力される前記第1時点の前記マップマッチング結果を含む前記正解マップマッチング情報を取得する。
【0080】
このようにすることで、走行経路記録装置は、正解マップマッチング情報を自ら作成して、リアルタイムマップマッチング処理によるマップマッチング結果と比較することができる。
【0081】
本開示の第4の態様によれば、第3の態様に係る走行経路記録装置(12)において、前記第2マップマッチングアルゴリズムは、前記第1マップマッチングアルゴリズムよりも高精度の地図データを用いて前記マップマッチング結果を出力する。
【0082】
第1マップマッチングアルゴリズムのリアルタイムマップマッチング処理では、リアルタイム性が要求されるため、時間がかかるような演算処理(例えば、3D地図データ等の高精度な地図データを用いたマップマッチング処理)を行うことが困難な場合がある。しかしながら、第2マップマッチングアルゴリズムのマップマッチング処理は、リアルタイム性が要求されないため、高精度な地図を利用した演算処理を実行することができる。この結果、走行経路記録装置は、第2マップマッチングのマップマッチング処理において、より精度の高いマップマッチング結果を取得することができる。
【0083】
本開示の第5の態様によれば、走行経路記録システム(1)は、車両に搭載される車載器(10)と、前記車載器(10)と通信可能に接続されるサーバ(11)と、を備える。前記車載器(10)は、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得するマップマッチング処理部(101)を備える。前記サーバ(11)は、正解マップマッチング情報を取得する正解情報取得部(112)と、前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得する偏差取得部(113)と、前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する調整部(114)と、調整された前記重み付けパラメータを前記車載器に送信する送信部(115)と、を備える。
【0084】
このようにすることで、走行経路記録システムは、車載器において行うリアルタイムマップマッチング処理の精度を向上させることができる。
【0085】
本開示の第6の態様によれば、サーバ(11)は、車両に搭載され、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得する車載器(10)から、当該マップマッチング結果を取得する結果取得部(111)と、正解マップマッチング情報を取得する正解情報取得部(112)と、前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得する偏差取得部(113)と、前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整する調整部(114)と、調整された前記重み付けパラメータを前記車載器に送信する送信部(115)と、を備える。
【0086】
本開示の第7の態様によれば、走行経路記録方法は、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得するステップと、正解マップマッチング情報を取得するステップと、前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得するステップと、前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整するステップと、を有する。
【0087】
本開示の第8の態様によれば、プログラムは、走行経路記録装置のコンピュータに、第1マップマッチングアルゴリズムにマップマッチング入力情報を入力して、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されるマップマッチング結果を取得するステップと、正解マップマッチング情報を取得するステップと、前記正解マップマッチング情報で示されるマップマッチング結果と、前記第1マップマッチングアルゴリズムから出力されたマップマッチング結果との偏差を取得するステップと、前記偏差が小さくなるように前記第1マップマッチングアルゴリズムに含まれる重み付けパラメータを調整するステップと、を実行させる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示の少なくとも一つの態様によれば、リアルタイムで行うマップマッチング処理の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 走行経路記録システム
10 車載器
10A CPU
101 マップマッチング処理部
102 受信部
10B 記憶媒体
11 サーバ
11A CPU
111 結果取得部
112 正解情報取得部
113 偏差取得部
114 調整部
115 送信部
11B 記憶媒体
12 走行経路記録装置
12A CPU
121 マップマッチング処理部
122 正解情報取得部
123 偏差取得部
124 調整部
12B 記憶媒体