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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】センサシート
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/05 20060101AFI20230425BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
A61C19/05 110
A61B5/11 300
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018165619
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2020036770
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-08-27
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】514017965
【氏名又は名称】合同会社MOTT
(72)【発明者】
【氏名】小川 睦夫
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-136620(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043383(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102507052(CN,A)
【文献】米国特許第04592727(US,A)
【文献】韓国登録特許第1696377(KR,B1)
【文献】特開昭56-142430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/05
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯列を包含する略U字形状の咬合検出領域を有する圧電フィルムと、
前記圧電フィルムの、前記咬合検出領域の一の面を覆う複数の電極にて構成される検出電極と、
前記圧電フィルムの、前記咬合検出領域の他の面を覆う単一の電極にて構成され、前記検出電極に対する基準電位となる裏面電極と、
前記検出電極の上に塗布される絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成され、前記検出電極と電気的導通を実現する配線電極と
を具備するセンサシート。
【請求項2】
前記検出電極は、前記咬合検出領域において、歯列の並び方向に対し直角な方向に、所定の角度を有し、放射状に配置された複数の電極にて構成される、請求項1に記載のセンサシート。
【請求項3】
歯列を包含する略U字形状の咬合検出領域を有する圧電フィルムと、
前記圧電フィルムの、前記咬合検出領域の一の面の側に配置される保護フィルムと、
前記保護フィルムの、前記圧電フィルムに面する側に形成される配線電極と、
前記配線電極の、前記咬合検出領域の上に塗布される絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成され、前記圧電フィルムの、前記咬合検出領域の一の面の側に相対する複数の電極にて構成され、前記配線電極と電気的導通を実現する検出電極と、
前記圧電フィルムの、前記咬合検出領域の他の面を覆う単一の電極にて構成され、前記検出電極に対する基準電位となる裏面電極とを具備するセンサシート。


【請求項4】
前記検出電極は、前記咬合検出領域において、歯列の並び方向に対し直角な方向に、放射状に配置された複数の電極にて構成される、請求項3に記載のセンサシート。
【請求項5】
歯列を包含する略U字形状の咬合検出領域を有する第一圧電フィルムと、
前記第一圧電フィルムの、前記咬合検出領域の一の面の側に配置され、前記咬合検出領域において、歯列の並び方向に対する垂直方向において所定の傾斜角を有し、放射状に配置された複数の電極にて構成される第一検出電極と、
前記第一検出電極の上に塗布される第一絶縁層と、
前記第一絶縁層の上に形成され、前記第一検出電極と電気的導通を実現する第一配線電極と、
前記第一圧電フィルムの、前記咬合検出領域の他の面を覆う単一の電極にて構成され、前記第一検出電極に対する基準電位となる裏面電極と、
前記第一圧電フィルムの、前記咬合検出領域の他の面の側に前記裏面電極を挟んで配置され、前記咬合検出領域が前記第一圧電フィルムと同一の形状である、第二圧電フィルムと、
前記第二圧電フィルムの、前記裏面電極が配置されていない側に配置され、前記咬合検出領域において、歯列の並び方向に対する垂直方向において、前記第一検出電極と交差する所定の傾斜角を有し、放射状に配置された複数の電極にて構成される第二検出電極と、
前記第二検出電極の上に塗布される第二絶縁層と、
前記第二絶縁層の上に形成され、前記第二検出電極と電気的導通を実現する第二配線電極と
を具備するセンサシート。
【請求項6】
前記第一圧電フィルムの、前記咬合検出領域の一の面の側に配置される第一保護フィルムと、
前記第二圧電フィルムの、前記咬合検出領域の他の面の側に配置される第二保護フィルムと、を具備し、
前記第一検出電極は、前記第一絶縁層のに形成され、前記第一圧電フィルムとの間に空隙を形成すると共に、前記第一圧電フィルムの、前記咬合検出領域の一の面の側に相対する複数の電極にて構成され、前記第一配線電極と電気的導通を実現し、
前記第二検出電極は、前記第二絶縁層のに形成され、前記第二圧電フィルムとの間に空隙を形成すると共に、前記第二圧電フィルムの、前記咬合検出領域の他の面の側に相対する複数の電極にて構成され、前記第二配線電極と電気的導通を実現する、
請求項5に記載のセンサシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科技工士または歯科医師(以下、「歯科技工士等」という)が患者の歯
の咬み合わせに関する情報を取得するための情報処理装置及びこれに使用するセンサ シート関する。
【背景技術】
【0002】
健康の維持は、人のQOL(クォリティ・オブ・ライフ:生活の質)に必須である。医療分野においては、人々の健康の維持を図るために、医療行為に様々な技術革新がもたらされている。近年では、電子デバイスの性能向上が、医療行為の技術革新にも貢献している。しかし、幾つかの医療行為には、未だ改良が進んでいないものも見受けられる。本発明は、そのような早期の改良が待たれる医療行為のうちの一つである、患者の歯の咬み合わせに関する情報を得る、咬合分析に関する。
【0003】
現在、患者の咬合分析を行う際には、朱色のカーボンシートを用いた咬合部視認方法が、殆どの歯科技工士等によって行われている。患者が朱色のカーボンシートを噛むと、歯に朱色のカーボンが付着する。付着したカーボンは歯と歯が噛み合わせによって接触したことを示す。
【0004】
朱色のカーボンシートを用いた咬合部視認方法は、歯列が咬合する部位はわかるものの、(1)歯列が咬合する順序がわからない、(2)歯列が咬合する強さがわからない、(3)歯列全体を俯瞰してどの部位が咬合しているのかを一目で把握できない、(4)自然歯、金属歯、補修歯等の種類によって、朱色カーボンが転写される量が異なるため、咬合状態の把握が不正確になりやすい、等の問題点がある。特に、一部の歯科技工士等は、(3)の、歯列全体の咬合状態を把握するために、患者の口腔内に鏡を差し込み、デジタルカメラで撮影する、等の手間をかけている。
【0005】
特許文献1に開示される、抵抗膜を使用したセンサシートを用いる咬合測定装置は、分解能が低く、センサシートが高価なために、僅かな使用にとどまっている。
特許文献2に開示される技術では、マトリックスセンサ上に1つの接触群を見つけることはできるが、マトリックス平面上に複数の接触群が存在する際には適用することができないといった問題がある。
そこで本願発明者は、特許文献3に開示される、咬合力検出装置及び咬合力検出方法を発明した。
【0006】
特許文献1は、本発明の先行技術に相当する、抵抗膜を用いた、咬合測定用接点検出器に関する先行技術文献である。
特許文献2は触覚マトリックスセンサの圧力分布を素早く検出する方法に関する技術文献である。
特許文献3は本願発明者による、咬合力検出装置及び咬合力検出方法に関する技術文献である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公平7-20478号公報
【文献】特開平7-190870号公報
【文献】特許第5782599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者は、特許文献3に示される咬合力検出装置を試用するに連れて、センサシートが咬合していない箇所を誤検出する場合があることに気付いた。咬合箇所の誤検出は、咬合分析の信頼性を著しく低下させてしまう。
【0009】
本発明はかかる課題を解決し、咬合箇所の誤検出の可能性を低減し、咬合分析を高精
度に実現するセンサシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のセンサシートは、歯列を包含する略U字形状の面を有する圧電フィルムと、圧電フィルムの、略U字形状の一の面を覆う第一保護フィルムと、圧電フィルムの、略U字形状の他の面を覆う第二保護フィルムと、圧電フィルムと第一保護フィルムとの間に、略U字形状の面に形成される複数の電極線よりなる表側電極と、圧電フィルムと第二保護フィルムとの間の、略U字形状の面に形成される複数の電極線よりなる裏側電極とを具備する。そして、表側電極を構成する複数の電極線と、裏側電極を構成する複数の電極線は、歯列に沿って略扇形に配置されており、表側電極を構成する複数の電極線と、裏側電極を構成する複数の電極線の少なくとも一方は、歯列に対して垂直方向の線に対し所定の角度で傾斜している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、咬合箇所の誤検出の可能性を低減し、咬合分析を高精度に実現するセンサシートを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。


【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る、咬合測定装置の全体構成を示す概略図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係る、センサシートを構成する電極シートの表側平面図と裏側平面図である。
図3】電極シートの第一及び第二の製造工程を示す図である。
図4】電極シートの第三及び第四の製造工程を示す図である。
図5】センサシートの一部断面図である。
図6】信号処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7】情報処理装置のハードウェア構成及びソフトウェア機能を示すブロック図である。
図8】本発明の第二の実施形態に係るセンサシート801の一部断面図である。
図9】電極シートの第一及び第二の製造工程を示す図である。
図10】電極シートの第三及び第四の製造工程を示す図である。
図11】従来技術及び本発明の第一の実施形態に係るセンサシートに咬合力が加わった際に生じる、センサシートの屈曲状態を説明する図と、本発明の第二の実施形態に係るセンサシート801に咬合力が加わった際に生じる、センサシートの屈曲状態を説明する図である。
図12】本発明の第三の実施形態に係る、センサシートを構成する電極シートの表側平面図であると共に、裏側平面図でもある。
図13】本発明の第三の実施形態の第一例及び第二例に係る、センサシートの一部断面図である。
図14】本発明の第三の実施形態の第三例に係る、センサシートの一部断面図である。
図15】情報処理装置のソフトウェア機能を示すブロック図である。
図16】座標情報テーブルのフィールド構成を示す表である。
図17】本発明の第一の実施形態の変形例に係る、センサシート501を構成する電極シート201の表側平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[咬合測定装置の全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る、咬合測定装置101の全体構成を示す概略図である。
咬合測定装置101は、センサシート102と、信号処理装置103と、情報処理装置104を有する。
センサシート102は、患者105の咬合分析に用いるため、歯列をカバーするように略U字形状に形成されている。センサシート102は専用のコネクタ106を通じて信号処理装置103に接続される。
信号処理装置103は、センサシート102が出力するアナログの電圧信号をデジタルのデータに変換し、このデータをUSBケーブル107を通じて情報処理装置104に送出する。USBケーブルをBlue Thoothなどに変えて、無線で接続してもよい。
情報処理装置104は周知のパソコンよりなり、信号処理装置103から受信したデータに基づき、咬合分析のための積分処理等の演算処理を行い、表示部108に表示する。
センサシート102は信号処理装置103と組み合わされて、咬合力検出装置を構成する。104はスマートフォンであってもよい。
【0014】
患者105は、図示しない歯科技工士等の指示に従い、センサシート102を噛む。すると、信号処理装置103は、患者105の咬合によってセンサシート102が発した電圧を検出して、これをデジタルデータに変換し、相対時間情報、アドレス情報を伴って情報処理装置104に送信する。情報処理装置104は、信号処理装置103から咬合力のデジタルデータを受信すると、これを一旦記憶する。そして、データと共に送られた時間情報を元に算出される時間幅を乗じることで、蓄積された同一アドレスのデータに積分処理等を施す。この積分処理等の結果、患者105の噛み合わせが生じた箇所(以下「咬合箇所」と略す。)毎に咬合力を算出する。そして、患者105の歯列のうち、大まかな咬合箇所と、当該咬合箇所毎に算出した咬合力を、表示部108に表示する。咬合箇所は時間の経過と共に表示部108に表示される。咬合箇所の順番が時系列上で把握できるので、歯科技工士等はどの歯が突出しているか等の、歯列の立体的な把握が可能になる。また、歯列全体の咬合力が把握できるので、患者105の咬合力の歯列の前後、左右のバランスを知ることもできる。
【0015】
信号処理装置103には押釦スイッチ109が設けられている。歯科技工士等は患者105の口腔内にセンサシート102を挿入し、押釦スイッチ109を押した直後に「はい、甲田さん、シートを噛んで下さい。」と指示する。患者105は歯科技工士等の指示に従い、センサシート102を強く噛む。2~5秒程度、患者105がセンサシート102を噛み続けた後、歯科技工士等は患者105に「はい、甲田さん、もういいですよ。」と、センサシート102の咬合を止めるよう指示する。歯科技工士等は、患者105がセンサシート102の咬合を止めたことを確認したら、押釦スイッチ109を再度押す。押釦スイッチ109が押された状態の情報は、情報処理装置104へデータの記録開始と終了を知らせるトリガ情報として、情報処理装置104へ送信される。情報処理装置104は、信号処理装置103から受信したトリガ情報、すなわち押釦スイッチ109が2回押された間の時間、信号処理装置103から受信するデータを記録する。
【0016】
[第一の実施形態:センサシート501の構成]
本発明の主要な技術思想は、センサシート102の改良である。そして、センサシート102の改良に伴い、信号処理装置103はシンプルな構成となり、情報処理装置104にはセンサシート102の改良に伴う変更点が生じている。
これより、センサシートの3種類の実施形態を説明する。
先ず、本発明の第一の実施形態に係る、センサシート501の構造を説明する。このセンサシート501は、患者105の咬合力を計測する目的に使用される。
図2Aは、本発明の第一の実施形態に係る、センサシート501を構成する電極シート201の表側平面図である。図2Bは、電極シート201の裏側平面図である。
図3Aは、電極シート201の第一の製造工程を示す図である。図3Bは、電極シート201の第二の製造工程を示す図である。
図4Aは、電極シート201の第三の製造工程を示す図である。図4Bは、電極シート201の第四の製造工程を示す図である。
図5は、センサシートの一部断面図である。
【0017】
図2Aから図5にかけて説明する、本発明の第一の実施形態に係るセンサシート501は、図5に示すように、電極シート201と、電極シート201を覆い、患者105の唾液等から電極シート201を保護する保護フィルム502a、502bで構成されている。
保護フィルム502a、502bはポリエチレンテレフタラート樹脂(PET樹脂)等の、可撓性及び電気絶縁性を有する樹脂で構成される。
電極シート201は、図5に示すように、圧電フィルム202を中心として、表面に検出電極203と配線電極205が、背面に裏面電極206が形成されている。検出電極203と配線電極205は、レジストパターン204を介して異なる層に形成されている。
【0018】
検出電極203は、咬合検出領域202a(図3B参照)において、歯列の並び方向に対し略直角な方向に、放射状に配置された複数の電極にて構成されている。なお、この角度は隣接歯牙同士の中心を結ぶ直線に対し90度±50度の範囲まで許容される。これに対し、裏面電極206は、咬合検出領域202aの前面を覆う単一の電極にて構成されている。裏面電極206は、信号処理装置103の接地ノード等に接続され、検出電極203に対する基準電位となる。
【0019】
以下、図3A図3B図4A及び図4Bを参照して、電極シート201の表面側に形成される検出電極203及び配線電極205の作成手順を説明する。
先ず、図3Aに示すように、ポリアミノ酸やポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride、以下「PVDF」と略)等から成る、可撓性を有する有機圧電材料よりなる圧電フィルム202を、略U字型に切り出して成形する。
次に、図3Bに示すように、圧電フィルム202の、患者105の歯列が当接する略U字形状の咬合検出領域202aに、放射状に検出電極203を形成する。検出電極203は、銀ペースト等の導電性インクを用いた印刷処理で形成される。図3Bでは電極203を説明のために粗く形成しているが、実際は密に形成されることが好ましい。好ましくは臼歯に対しては2本/mm程度前歯に対しては1本/mm程度が良い。その理由は、一般に咬合に対する寄与に臼歯が多くかかわっているからである。また、検出電極間の不感帯の幅は狭いほど良い。
なお、これ以降、圧電フィルム202を中心として、検出電極203が形成されている側の面を、センサシート501の表側と定義する。同時に、裏面電極206が形成されている側の面を、センサシート501の裏側と定義する。この定義は、この後に説明する第二の実施形態においても同様である。
【0020】
次に、図4Aに示すように、検出電極203の内周側の一部を除き、咬合検出領域202aに絶縁体のレジストインクを印刷して、検出電極203にマスキング処理を施す。この工程によって、検出電極203の上にはレジストパターン204が形成される。
次に、図4Bに示すように、検出電極203の内周側の一部から、レジストパターン204の上を跨ぐように、配線電極205を導電性インクを用いた印刷処理にて形成する。配線電極205は、咬合検出領域202aの内側においてレジストパターン204から露出した検出電極203の一部に塗布されることで、電気的導通が形成される。
以上に示す工程にて、電極シート201の表面に検出電極203と配線電極205が形成される。配線電極と検出電極の接合点及び、レジスト203を配線電極が乗り越える部分は極力配線電極の線幅を広くすることで電極の破断を防止することができる。
【0021】
特許文献3に開示される従来技術のセンサシートは、配線電極205が検出電極203と同一の層にて形成されていた。このため、検出電極203の更に外側に配線電極205を形成しなければならず、配線電極205を形成するための面方向スペースによって、センサシートの面積が大型化していた。そのために患者の口腔内に収まらない、あるいは、収まってもセンサーが折りたたまれるなどの問題があった。
本発明の第一の実施形態に係るセンサシート501は、従来技術とは異なり、配線電極205を、レジストパターン204という絶縁層を介して、検出電極203と異なる層に形成することで、配線電極205を形成するための面方向スペースを極小にすることができる。配線電極205は略馬蹄形に沿って配列された検出電極の内周側で接続される。これにより配線電極が最短の長さでの配線が可能になり、ノイズの影響を受けにくくなる。変形例としては図17のように検出電極の前歯近傍のみ、検出電極の延長に配線電極をコネクター部まで直接配線することもできる。これにより、配線電極の幅を広げるなど、配線電極の配置の自由度を上げることができる。したがって、患者105に対するセンサシート501の面積を必要最小限に留めることができる。このため、従来技術のセンサシートと比べて、患者105のセンサシート501の使用感が向上し、咬合力検出性能も向上する。
【0022】
[第一の実施形態:信号処理装置103のハードウェア構成及び機能]
図6は、信号処理装置103のハードウェア構成を示すブロック図である。
センサシート501に形成されている各々の電極線は、それぞれオペアンプよりなるプリアンプ601に接続されて、電圧及び電流の増幅が行われる。
プリアンプ601の各々の出力信号は、マルチプレクサ(図6中「MPX」と略記、以下「MPX」と略す。)602によって選択的にマイコンのA/D変換器603に接続される。
マイコンは、バス604に接続された、CPU605、ROM606、RAM607、押釦スイッチ109、情報処理装置104と接続されるUSBインターフェース(図2中「USB I/F」と表記、以下「USBI/F」と略)608を備える。
ROM606には、マイコンを信号処理装置103として動作させるためのプログラムが格納されている。
【0023】
本発明の第一の実施形態に係る咬合測定装置を構成する信号処理装置103は、特許文献3に開示される従来技術の信号処理装置とは異なり、内部のデータ処理手順はシンプルに構成されている。
(1)裏面電極206を接地ノードに接続した状態で、検出電極203の電圧をMPX602とA/D変換器603を通じて順番に取得する。
(2)順番に取得した全ての検出電極203の電圧データに、所定のヘッダ情報、フッタ情報を付加して、情報処理装置104へ送信する。
以上の(1)と(2)を繰り返し実行するだけである。
なお、裏面電極206の電位は一定の電位であれば、必ずしも接地ノードでなくてもよい。
【0024】
[第一の実施形態:情報処理装置104のハードウェア構成及びソフトウェア機能]
図7Aは、情報処理装置104のハードウェア構成を示すブロック図である。
周知のパソコン等の計算機よりなる情報処理装置104は、バス701に接続された、CPU702、ROM703、RAM704、液晶ディスプレイ等の表示部108、キーボードやマウス等のポインティングデバイスよりなる操作部705、不揮発性ストレージ706、信号処理装置103に接続されるUSBI/F707を備える。
不揮発性ストレージ706には、信号処理装置103から受信したデータに所定の演算処理を行い、表示部108に表示するためのプログラムが格納されている。
【0025】
図7Bは、情報処理装置104のソフトウェア機能を示すブロック図である。
信号処理装置103が出力するデータは、USBI/F707を通じて不揮発性ストレージ706に形成されるファイルシステム708に供給される。ファイルシステム708は、信号処理装置103から受信したデータを一旦、生データファイル709に格納する。
生データファイル709に格納されたセンサシート501のデータは、積分演算部710に供給される。
積分演算部710は、センサシート501のデータを、センサシート501上に形成されている各々の検出電極203毎に積分演算を行う。積分演算は、検出電極203の電圧データと相対時間情報との積を積算する。圧電フィルムからの信号は加圧時はプラスの波形、減圧時はマイナスの波形が検出電極に現れる。実施例の積分はプラスの信号のみを対象としたが、加圧時のみでなく、除圧時にも積分してよい。このときは信号の極性がマイナスになるので減算処理される。積分演算を容易にするために、検出電極のサンプリングは一定周期とする。これにより、電圧と時間の積を求める手順が大幅に簡略化できる。
【0026】
積分演算部710が出力するデータは、検出電極203毎の咬合力を示すデータである。この咬合力データは、色変換処理部711と、咬合力算出部712に供給される。
色変換処理部711は、検出電極203毎の咬合力データに対し、咬合力に対応する色情報を出力する。この色情報は、遠赤外線撮像装置等で周知の、疑似カラー表示機能を実現する。すなわち、ある値をカラーパレットの色に対応付け、表示部108でデータを表示する際に、カラーパレットに基づく着色を行うものである。色変換処理部711の疑似カラー表示機能により、表示部108には、検出電極203が咬合力に対応した色に着色されて表示される。
咬合力算出部712は、検出電極203毎の咬合力データを全て合算して、患者105の咬合力を算出する。表示部108には、各電極交点の積分量に応じた色表示がされる。また、操作部によってカーソルで指示された交点の咬合力の数値が表示される。
表示処理部713は、操作部705の操作に呼応して、色変換処理部711の出力データ及び咬合力算出部712の咬合力データを、表示部108に表示させる。
【0027】
[第二の実施形態:センサシート801の構成]
次に、本発明の第二の実施形態に係る、センサシート801の構造を説明する。このセンサシート801は、第一の実施形態に係るセンサシート501と同様、患者105の咬合力を計測する目的に使用される。
図8は、本発明の第二の実施形態に係るセンサシート801の一部断面図である。
図9Aは、表面電極シート808の第一の製造工程を示す図である。
図9Bは、表面電極シート808の第二の製造工程を示す図である。
図10Aは、表面電極シート808の第三の製造工程を示す図である。
図10Bは、表面電極シート808の第四の製造工程を示す図である。
【0028】
図8から図10Bにかけて説明する、本発明の第二の実施形態に係るセンサシート801は、第一の実施形態に係るセンサシート501と比較して、以下の点が異なる。
(1)圧電フィルム802には裏面電極803のみが形成されており、検出電極804は圧電フィルム802に貼付されておらず、検出電極804と圧電フィルム802との間には空隙D805が形成されていること。
(2)検出電極804と配線電極806は、基板フィルムを兼用する第一保護フィルム807に形成されていること。
このため、図8に示すように、センサシート801は、第一保護フィルム807を構成要素の一部とする表面電極シート808と、裏面電極シート809と、裏面保護フィルム810にて構成される。第一保護フィルム807は検出電極804と配線電極806が形成されており、保護フィルムを兼用する表面電極シート808を構成する。そして同様に圧電フィルム802には片面に裏面電極803のみ形成され、裏面電極シート809を構成する。
【0029】
以下、図9A図9B図10A及び図10Bを参照して、表面電極シート808の作成手順を説明する。
先ず、図9Aに示すように、第一保護フィルム807を、略U字型に切り出して成形する。
次に、図9Bに示すように、第一保護フィルム807の、患者105の歯列が当接する略U字形状の咬合検出領域807aに、配線電極806を形成する。配線電極806は、第一の実施形態と同様、銀ペースト等の導電性インクを用いた印刷処理で形成される。
【0030】
次に、図10Aに示すように、配線電極806の内周側の一部を除き、咬合検出領域807aにレジストインクを印刷して、配線電極806にマスキング処理を施す。この工程によって、配線電極806の上にはレジストパターン811が形成される。
次に、図10Bに示すように、配線電極806の内周側の一部から、レジストパターン811の上を跨ぐように、検出電極804を導電性インクを用いた印刷処理にて形成する。検出電極804は、咬合検出領域807aの内側においてレジストパターン811から露出した配線電極806の一部に塗布されることで、電気的導通が形成される。なお、検出電極804の外周側は、配線電極806に接触しないように、レジストパターン811からはみ出さない範囲まで塗布される。
以上に示す工程にて、表面電極シート808の裏面に配線電極806と検出電極804が形成される。
【0031】
図9A図9B図10A及び図10Bに示した、表面電極シート808の製造工程は、第一の実施形態に係る電極シート201の製造工程とは逆の手順である。圧電フィルム802に検出電極804を形成せず、別体で構成することで空隙D805を形成するために、第一保護フィルム807を基板フィルムとして、第一の実施形態に係る電極シート201の製造工程とは逆の手順で、表面電極シート808を構成する。なお、圧電シート802上に検出電極と配線電極を形成し、背面電極を表面電極シート808に構成するようにしてもよい。
【0032】
図11Aは、従来技術及び本発明の第一の実施形態に係るセンサシート501に咬合力が加わった際に生じる、センサシート501の屈曲状態を説明する図である。図11Aではセンサシート501を例示し、配線電極205の図示を省略している。
患者105がセンサシート501を咬合すると、歯が噛み合わさった箇所P1101の周囲にも歯の咬合力によって引っ張られる。すると、歯が噛み合わさった箇所の周囲(箇所P1102、箇所P1103)の、圧電フィルム202と検出電極203に歪みが生じる。この歪みが、圧電フィルム202の箇所P1102及び箇所P1103に電圧を生じさせることとなり、結果として誤検出の原因となる。
【0033】
図11Bは、本発明の第二の実施形態に係るセンサシート801に咬合力が加わった際に生じる、センサシートの屈曲状態を説明する図である。
前述のように、歯が噛み合わさった箇所の周囲に生じる歪みが、誤検出の原因であった。そこで、圧電フィルム802と検出電極804を別体にすると、歯が噛み合わさった箇所P1104の周囲が歯の咬合力によって引っ張られても、圧電フィルム802と検出電極804が離間し、空隙D805が形成される。すると、検出電極804は咬合箇所である箇所P1104でしか電圧を検出しないので、圧電フィルム802に生じた咬合箇所周囲の電圧が、検出電極804に誤検出されずに済む。
【0034】
[第三の実施形態:センサシートの構成]
次に、本発明の第三の実施形態に係る、センサシートの構造を説明する。このセンサシートは、患者105の咬合箇所を特定すると共に、患者105の咬合力を計測する目的に使用される。
図12は、本発明の第三の実施形態に係る、センサシートを構成する電極シート1201の表側平面図であると共に、裏側平面図でもある。なお、図12では検出電極1202のみ図示し、配線電極は図示を省略する。
【0035】
特許文献3に開示されていた従来技術のセンサシートと比べると、本発明の実施形態に係るセンサシートは、検出電極1202の配置及び形状が大きく異なる。電極シート1201の咬合検出領域1201aに形成されている検出電極1202は、人の歯列に沿って傾斜した略扇形に配置されている。
前述のように、発明者は、特許文献3に開示されていた従来技術のセンサシートを試用するに連れて、センサシートが咬合していない箇所を誤検出する場合があることに気付いた。これ以降、センサシート上における咬合箇所以外の場所で信号が誤検出される現象を「ゴースト」と呼ぶ。
発明者は、このゴーストの発生原因が、圧電フィルムが形成する容量結合によるものであるが、検出電極の形状によってその発生を大幅に低減することが可能であることを突き止めた。そこで、検出電極を構成する表側電極と裏側電極の、歯列に対する角度を見直し、歯列の並び方向に対して互いに45度に近い鋭角で交差する形状を発明した。つまり、歯列に対しては45度近傍、表裏の検出電極同士では90度程度で交差する形状が適している。具体的には少なくとも表ないしは裏の検出電極の一方が歯列に対しては40度乃至90度の範囲であって、表裏の検出電極相互間の角度は40度乃至100度の範囲であることが良い。
検出電極1202の表裏の少なくとも一方ないしは両方の検出電極を斜めに配置することで、従来技術と比較して、ゴーストの発生確率を著しく低減することができる。
【0036】
検出電極1202の傾斜角は、検出電極1202が跨る歯の数が2本を超えないように配置される。すなわち、検出電極1202はある歯の隣の歯に跨ってもよいが、ある歯の先隣(隣の隣)の歯に跨ってはいけない。何故なら、咬合箇所の誤検出の可能性を引き起こすからである。
本発明の第三の実施形態に係るセンサシートの場合、表側電極と裏側電極はそれぞれ独立した回路を構成しており、表側電極と裏側電極との相対的な電位差を検出することはできない。このため、表側電極と裏側電極はそれぞれできる限り歯列の並び方向つまり、隣接する歯牙の中心を結ぶ線分に対して直角乃至50度の範囲に傾斜角を形成して、できる限り単一の電極について咬合箇所が離間した複数の歯牙に生じないよう構成されることが望ましい。そうしないと、表側電極と裏側電極の双方に咬合箇所が複数箇所存在した場合に、咬合箇所(歯牙)を特定することができないからである。表裏の検出電極が交差する角度は30度から100度である。30度以下だと面分解能が低下する。また。100度以上だとゴーストの影響を受けやすい。好ましくは50度乃至90度の交差角が良い。
図12の検出電極パターンから咬合箇所を特定する手順については図15の説明にて後述するが、図15の積分演算は検出電極の表裏の検出電極ごとに積分される。この動作は、図7Bの動作とは異なるがその点については省略されている。重心は、表裏の電極それぞれで求め、表裏の電極の重心の交点が重心となるがこの点も省略されている。因みに、歯列全体の咬合力は表側検出電極乃至は裏側検出電極の何れか一方の積分値で求めればよい。
【0037】
次に、本発明の第三の実施形態に係るセンサシートを具体的に実現する、3種類のセンサ構造について説明する。
図13Aは、本発明の第三の実施形態の第一例に係る、センサシート1301の一部断面図である。
図13Bは、本発明の第三の実施形態の第二例に係る、センサシートの一部断面図である。
図14は、本発明の第三の実施形態の第三例に係る、センサシートの一部断面図である。
なお、図13A図13B及び図14において、図面の上側の面をセンサシートの表側と定義すると共に、図面の下側の面をセンサシートの裏側と定義する。第三の実施形態に係るセンサシートはその両面に検出電極が存在するため、第一及び第二の実施形態における表面と裏面の定義ができない。よって、このように定義し直す。
【0038】
先ず、図13Aに示すセンサシート1301は、特許文献3に開示される従来技術に係るセンサシートにおいて、検出電極の形状を図12に示す形状にした場合の、センサシート1301の断面図である。
第一圧電フィルム1303の裏側には中心電極1302aが形成されている。この中心電極1302aは、第一の実施形態における裏面電極206及び第二の実施形態における裏面電極803と、等しい構造である。そして、第一圧電フィルム1303の表側に、第一検出電極1304が形成されている。なお、第一検出電極1304が形成されている層には、図示しない配線パターンも形成されている。
中心電極1302の裏側に、第二圧電フィルム1305の表側には中心電極1302bが形成されている。そして、第二圧電フィルム1305bの裏側に、第二検出電極1306が形成されている。なお、第一検出電極1304と同様、第二検出電極1306が形成されている層にも、図示しない配線パターンも形成されている。
以上の構成要素にて構成された電極シート1307は、第一保護フィルム1308aと第二保護フィルム1308bで覆われて、センサシート1301を構成する。容易に理解されるようにセンサシート201bは201aを、表裏反対に貼り付けて形成することもできる。これにより共通のシートが使え、製造工程を大幅に簡略できる。
【0039】
特許文献3に開示される従来技術による、配線電極806を検出電極1202の外側に配置することで単一の電極層を構成するセンサシートに対して、図12に示す傾斜した配置形状の検出電極1202を構成することが可能である。そして中心電極1302は、表側の電極である第一検出電極1304と裏側の電極である第二検出電極1306に対し、共通の基準電位とすることが可能である。
【0040】
次に、図13Bに示すセンサシート1311は、図5にて示した第一の実施形態に係るセンサシート501において、検出電極の形状を図12に示す形状にした場合の、センサシート1311の断面図である。
第一圧電フィルム1313の裏側に中心電極1302aが形成されている。この中心電極1312aは、第一の実施形態における裏面電極206及び第二の実施形態における裏面電極803と、等しい構造である。
第一圧電フィルム1313の表側に、第一検出電極1314が形成されている。第一検出電極1314の表側に、レジストインクで形成されたレジストパターン1315が形成されている。そして、レジストパターン1315の表側には、第一配線電極1316が形成され、第一検出電極1314と接続されている。
【0041】
第二圧電フィルム1317の表側に中心電極1312bが形成されている。そして、第二圧電フィルム1317の裏側に、第二検出電極1318が形成されている。第二検出電極1318の裏側に、レジストインクで形成されたレジストパターン1319が形成されている。そして、レジストパターン1319の裏側には、第二配線電極1320が形成され、第二検出電極1318と接続されている。
以上の構成要素にて構成された電極シート1321は、第一保護フィルム1322aと第二保護フィルム1322bで覆われて、センサシート1311を構成する。
【0042】
図13Bに示すセンサシート1311は、図5に示した第一の実施形態に係るセンサシート501の電極シート201を、表側と裏側とで二重化した構造である。
このように、本発明の第一の実施形態に係るセンサシート501に対して、図12に示す傾斜した配置形状の検出電極1202を構成することが可能である。そして前述の図13Aと同様に、中心電極1312は、表側の電極である第一検出電極1314と裏側の電極である第二検出電極1318に対し、共通の基準電位とすることが可能である。
【0043】
次に、図14に示すセンサシート1401は、図8にて示した第二の実施形態に係るセンサシート801において、検出電極の形状を図12に示す形状にした場合の、センサシート1401の断面図である。
第一圧電フィルム1403の裏側に中心電極1402bが形成されている。この中心電極1402aは、第一の実施形態における裏面電極206及び第二の実施形態における裏面電極803と、等しい構造である。そして、第二圧電フィルム1404の表側に中心電極1402bが形成されている。
中心電極1402、第一圧電フィルム1403及び第二圧電フィルム1404は、中心電極シート1405を構成する。
【0044】
第一保護フィルム1406の裏側に、第一配線電極1407が形成されている。第一配線電極1407の裏側に、レジストインクで形成された第一絶縁層であるレジストパターン1408が形成されている。そして、レジストパターン1408の裏側には、第一検出電極1409が形成され、第一配線電極1407と接続されている。
第一保護フィルム1406、第一配線電極1407、レジストパターン1408及び第一検出電極1409は、表側電極シート1410を構成する。そして、表側電極シート1410と中心電極シート1405との間には、空隙D1411が形成されている。すなわち、第一検出電極1409は第一圧電フィルム1403とは接着されていない。
【0045】
第二保護フィルム1412の表側に、第二配線電極1413が形成されている。第二配線電極1413の裏側に、レジストインクで形成された第二絶縁層であるレジストパターン1414が形成されている。そして、レジストパターン1414の表側には、第二検出電極1415が形成され、第二配線電極1413と接続されている。
第二保護フィルム1412、第二配線電極1413、レジストパターン1414及び第二検出電極1415は、裏側電極シート1416を構成する。そして、裏側電極シート1416と中心電極シート1405との間には、空隙D1417が形成されている。すなわち、第二検出電極1415は第二圧電フィルム1404とは接着されていない。
【0046】
図14に示すセンサシート1401の表側電極シート1410と裏側電極シート1416は、図8に示した第二の実施形態に係るセンサシート801の表面電極シート808と検出電極の角度以外は全く同一の構成である。また、中心電極シート1405は、センサシート801の裏面電極シート809を、表側と裏側とで二重化した構造である。
このように、本発明の第二の実施形態に係るセンサシート801に対して、図12に示す傾斜した配置形状の検出電極1202を構成することが可能である。そして前述の図13A及び図13Bと同様に、中心電極1402は、表側の電極である第一検出電極1409と裏側の電極である第二検出電極1415に対し、共通の基準電位とすることが可能である。
【0047】
[第三の実施形態:情報処理装置1501のソフトウェア機能]
図15は、情報処理装置1501のソフトウェア機能を示すブロック図である。
図15に示す情報処理装置1501の、図7Bで説明した第一の実施形態に係る情報処理装置104との相違点は、
(1)咬合順検出部1502が存在すること
(2)重心算出部1503が存在すること
(3)座標情報テーブル1504が存在すること
(4)表示処理部1505は咬合箇所と咬合順を表示部108に表示すること
である。
【0048】
USBI/F707、ファイルシステム708、生データファイル709の内容は図7Bと同様であるので、詳細な説明を割愛する。
生データファイル709に格納されたセンサシートのデータは、積分演算部710に供給されると共に、咬合順検出部1502にも供給される。
咬合順検出部1502は、センサシートのデータから、表側電極及び裏側電極との交点における電圧が発生した時点を検出する。そして、表側電極及び裏側電極の、同時に電圧が発生した電極同士の交点を特定する。そして、予め交点に付与されている交点アドレス情報と、電圧発生時点の日時情報を出力する。そして、その交点の表裏電極の電圧の小さい方の値が交点の電圧として記憶される。そのわけは、検出電極の交点において、表裏何れかの電極の値が他の一方の値よりも大きい場合、当該検出電極には前記交点以外からの咬合が当該電極に加わっているためである。従って、交点の咬合力には小さな値の方を採用する。
積分演算部710は、図7Bと同様の機能であるので、詳細な説明を割愛する。
【0049】
積分演算部710が出力するデータは、検出電極毎の咬合力を示すデータである。この咬合力データは、重心算出部1503と、色変換処理部711と、咬合力算出部712に供給される。
重心算出部1503は、咬合箇所を示す交点アドレス情報毎の咬合力データを基に、咬合力の重心を算出する。簡略な重心の求め方は、表側電極の重心と裏側電極の重心を別々に求め、表側重心と裏側重心の交点を歯列の重心とすることができる。このとき、表側電極の積分データ、裏側電極の積分データがそれぞれ用いられる。重心の座標情報は、後述する表示処理部1505を通じて表示部108に表示される。この時、重心算出部1503は座標情報テーブル1504を参照して、交点アドレス情報を実際の患者105の口腔内座標情報に変換する。
色変換処理部711及び咬合力算出部712は、図7Bと同様の機能であるので、詳細な説明を割愛する。
【0050】
表示処理部1505は、操作部705の操作に呼応して、積分演算部710の出力データ、重心算出部1503の重心座標、咬合力算出部712の咬合力データを、表示部108に表示させる。この時、表示処理部1505は座標情報テーブル1504を参照して、交点アドレス情報を実際の患者105の口腔内座標情報に変換する。積分演算、重心算出色変換処理、咬合力算出は時系列に処理される。操作部はキーボードやマウスなどからなり、一連の計測におけるどの時点の表示を行うかをカーソルで指示することができる。カーソルで指示された時点の、ポインターで指示された咬合位置の咬合力が表示できるよう構成される。このことの図面表示は省略する。
【0051】
図16は、座標情報テーブル1504のフィールド構成を示す表である。
座標情報テーブル1504は、表側電極番号フィールドと、裏側電極番号フィールドと、交点X軸座標フィールドと、交点Y軸座標フィールドを有する。
表側電極番号フィールドには、表側電極の電極番号(アドレス情報)が格納される。座標情報テーブル1504を具備することで表裏の検出電極の必要な交点のみを効率よく走査することができる。
【0052】
裏側電極番号フィールドには、裏側電極の電極番号が格納される。
交点X軸座標フィールドには、表側電極番号フィールドに格納された電極番号の表側電極線と、裏側電極番号フィールドに格納された電極番号の裏側電極線との交点の、X軸座標上における位置情報が格納される。
交点Y軸座標フィールドには、表側電極番号フィールドに格納された電極番号の表側電極線と、裏側電極番号フィールドに格納された電極番号の裏側電極線との交点の、Y軸座標上における位置情報が格納される。
すなわち、座標情報テーブル1504は、表側電極及び裏側電極の交点(論理的位置)を、実際の歯列における座標位置(物理的位置)に変換するテーブルである。
【0053】
従来技術のセンサシートの場合、表側電極と裏側電極を構成する個々の電極線が直交する角度関係にあり、また電極線がほぼ等間隔で並んでいたので、図16に示すような座標情報テーブル1504がなくても、論理的位置である電極線の交点と、物理的位置である患者105の歯列における座標位置の対応関係を導き出すことは容易であった。しかし、図12以降で説明した、本発明の第三の実施形態に係るセンサシート102の場合、表側電極と裏側電極の角度位置は、全てがばらばらで、また電極線の間隔もまちまちである。このため、論理的位置である電極線の交点と、物理的位置である患者105の歯列における座標位置の対応関係を座標情報テーブル1504に記憶しておき、座標情報テーブル1504を参照して論理的位置から物理的位置への変換処理を行う必要がある。
【0054】
本実施形態では、咬合測定装置101と、これを構成するセンサシートと信号処理装置103よりなる咬合力検出装置、そして情報処理装置104を開示した。以上に開示した本発明の実施形態には、以下の(1)~(5)に示す作用効果が認められる。
(1)第一、第二及び第三の実施形態に係るセンサシートは、従来技術とは異なり、検出電極を歯列に対して放射状に配置した。この配置形状を採用することで、検出電極が離れた歯の咬合を検出する可能性を低減し、ゴーストの発生確率を低減することで、誤検出の可能性が減少する。したがって、従来技術より咬合力を高精度に計測することができる。
(2)第一の実施形態に係るセンサシートは、配線電極のスペースを検出電極の外側に配置していた従来技術とは異なり、検出電極と配線電極を多層化することで、センサシートの省スペース化を実現した。この配線形態を採用することで、患者105の咬合力検出精度が向上する。
(3)第二の実施形態に係るセンサシート801は、従来技術とは異なり、検出電極を形成したシートと、圧電フィルム802を別体で構成し、圧電フィルム802と検出電極との間に空隙D805が形成される構造にした。この構造を採用することで、歯が噛み合わさった箇所の周囲が歯の咬合力によって引っ張られて皺が発生しても、圧電フィルム802と検出電極が離間する乃至は大きな接触抵抗により皺による電荷の伝達が阻止される。よって、検出電極は咬合箇所しか電圧を検出しないので、圧電フィルム802に生じた咬合箇所周囲が誤検出されずに済み、正確な咬合力を計測することができる。
(4)第三の実施形態に係るセンサシートは、検出電極が歯列に沿って略扇形に配置されている。更に、検出電極は歯列の並び方向に対する垂直方向において所定の傾斜角を有する状態で配置されている。これら検出電極の傾斜角は、検出電極が跨る歯の数が2本を超えないように配置される。このように検出電極を配置することで、従来技術のセンサシートと比べてゴーストの発生確率を大幅に低減することができる。
(5)第三の実施形態に係る情報処理装置104は、座標情報テーブル1504を用いて、検出電極の交点(論理的位置)を、実際の歯列における座標位置(物理的位置)に変換することで、正しい咬合箇所を把握することが可能になる。更に、表裏の検出電極の交点の電圧の小さい方の値を採用することで正確な咬合力を把握できる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。説明に於いて、歯牙の配列は標準的な歯並びを例に記述したが、被測定者の歯並びには個性がある。そうした個性的な歯列に対しては本発明から逸脱すること無く、対応したセンサー形状が取れること明らかである。
【符号の説明】
【0056】
101…咬合測定装置、102…センサシート、103…信号処理装置、104…情報処理装置、105…患者、106…コネクタ、107…USBケーブル、108…表示部、109…押釦スイッチ、201…電極シート、202…圧電フィルム、202a…咬合検出領域、203…検出電極、204…レジストパターン、205…配線電極、206…裏面電極、501…センサシート、502a…保護フィルム、601…プリアンプ、602…MPX、603…A/D変換器、604…バス、605…CPU、606…ROM、607…RAM、608…USBI/F、701…バス、702…CPU、703…ROM、704…RAM、705…操作部、706…不揮発性ストレージ、707…USBI/F、708…ファイルシステム、709…生データファイル、710…積分演算部、711…色変換処理部、712…咬合力算出部、713…表示処理部、801…センサシート、802…圧電フィルム、803…裏面電極、804…検出電極、806…配線電極、807…第一保護フィルム、807a…咬合検出領域、808…表面電極シート、809…裏面電極シート、810…裏面保護フィルム、811…レジストパターン、1201…電極シート、1201a…咬合検出領域、1202…検出電極、1301…センサシート、1302…中心電極、1303…第一圧電フィルム、1304…第一検出電極、1305…第二圧電フィルム、1306…第二検出電極、1307…電極シート、1308a…第一保護フィルム、1308b…第二保護フィルム、1311…センサシート、1312…中心電極、1313…第一圧電フィルム、1314…第一検出電極、1315…レジストパターン、1316…第一配線電極、1317…第二圧電フィルム、1318…第二検出電極、1319…レジストパターン、1320…第二配線電極、1321…電極シート、1322a…第一保護フィルム、1322b…第二保護フィルム、1401…センサシート、1402…中心電極、1403…第一圧電フィルム、1404…第二圧電フィルム、1405…中心電極シート、1406…第一保護フィルム、1407…第一配線電極、1408…レジストパターン、1409…第一検出電極、1410…表側電極シート、1412…第二保護フィルム、1413…第二配線電極、1414…レジストパターン、1415…第二検出電極、1416…裏側電極シート、1501…情報処理装置、1502…咬合順検出部、1503…重心算出部、1504…座標情報テーブル、1505…表示処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17