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特許7267526活性エネルギー線硬化性インクジェットインク、印刷物、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法
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  • 特許-活性エネルギー線硬化性インクジェットインク、印刷物、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性インクジェットインク、印刷物、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20230425BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230425BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
C09D11/30
B41J2/01 129
B41J2/01 501
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 134
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018159463
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2019044174
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2017168066
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109727
【氏名又は名称】株式会社デュプロ
(73)【特許権者】
【識別番号】391001505
【氏名又は名称】アジア原紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】山本 周平
(72)【発明者】
【氏名】田中 和弘
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 智彦
(72)【発明者】
【氏名】今井 一輝
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-506573(JP,A)
【文献】特開2008-031316(JP,A)
【文献】特開2011-184609(JP,A)
【文献】特開2011-177965(JP,A)
【文献】特開2014-125557(JP,A)
【文献】特開2017-039917(JP,A)
【文献】特開2009-096910(JP,A)
【文献】特開2012-201847(JP,A)
【文献】国際公開第2015/080155(WO,A1)
【文献】特開2006-131883(JP,A)
【文献】特開2018-024758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/30
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)~(C)成分
(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー
(B)光重合開始剤
(C)表面張力調整剤
を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクであって、
35℃における粘度が3.0~6.0mPa・s、且つ、25℃における粘度が4.5~9.0mPa・sで、有色透明性または無色透明性を有し、
下地印刷された基材に35℃の状態で塗布されることで、基材を断面から視た場合に垂直方向に盛り上がった立体的形状の画像または塗膜を前記基材の表面に形成する活性エネルギー線硬化性インクジェットインク。
【請求項2】
請求項1の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクにおいて、
前記(C)表面張力調整剤として、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク100重量部に対して、0.05~1.0重量部の範囲で含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性インクジェットインク。
【請求項3】
表面張力が、19~33mN/mである請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性インクジェットインク。
【請求項4】
25℃における粘度が、2.0~8.0mPa・sである前記(A)活性エネルギー線硬化性モノマーを少なくとも50重量%以上含有する請求項1乃至3の何れかに記載の活性エネルギー線硬化性インクジェットインク。
【請求項5】
インクを塗布する基材の表面張力「X」mN/mと、インクの表面張力「Y」mN/mとが、
「1.0mN/m<[X]-[Y]<15.0mN/m」の関係を満たす請求項1乃至4の何れかに記載の活性エネルギー線硬化性インクジェットインク
【請求項6】
材上に、請求項1~5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクにより画像または塗膜を形成した後、前記画像または前記塗膜に活性エネルギー線を照射することによって形成された印刷物。
【請求項7】
下地印刷された基材を搬送する搬送エレメントと、
前記搬送エレメントにより搬送された前記基材に対し、ノズルから、以下の(A)~(C)成分
(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー
(B)光重合開始剤
(C)表面張力調整剤
を含有す活性エネルギー線硬化性インクジェットインクであって、35℃における粘度が3.0~6.0mPa・s、且つ、25℃における粘度が4.5~9.0mPa・sで、
有色透明性または無色透明性を有し、前記基材に塗布されることで、基材を断面から視た場合に垂直方向に盛り上がった立体的形状の画像または塗膜を前記基材の表面に形成する前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを、前記基材に向けて35℃の状態で吐出して画像を形成するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドから吐出される前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの吐出時の温度を35~40℃に保って、前記インクジェットヘッドから吐出された前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布された前記基材に対して、活性エネルギー線と、を照射する活性エネルギー源を備えたインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記インクジェットヘッドは、前記搬送エレメント上に配置され、
前記搬送エレメントによって搬送される前記基材の搬送直交方向に前記ノズルが列設されている請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
下地印刷された基材を搬送エレメントにより搬送する工程と、
前記搬送エレメントにより搬送された前記基材に対向してノズルが設けられたインクジェットヘッドにより、以下の(A)~(C)成分
(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー
(B)光重合開始剤
(C)表面張力調整剤
を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクであって、35℃における粘度が3.0~6.0mPa・s、且つ、25℃における粘度が4.5~9.0mPa・sで、有色透明性または無色透明性を有し、前記基材に塗布されることで、基材を断面から視た場合に垂直方向に盛り上がった立体的形状の画像または塗膜を前記基材の表面上に形成する前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを、前記基材に向けて35℃の状態で吐出する工程と、
前記基材に前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを塗布して画像が形成される工程と、
前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布された前記基材に対して、活性エネルギー線を照射することによって、前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを硬化される工程と、を含むインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記基材上において、前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクからなる均一な塗膜を形成する工程をさらに含む請求項9に記載のインクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク、印刷物、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、インクジェット記録方式によって、形成された画像上にオーバーコート層を形成することができるエネルギー線硬化型インクジェット記録用クリアインク組成物に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-31667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたエネルギー線硬化型インクジェット記録用クリアインク組成物を用いて形成される画像は、以下に説明するように形成される画像の品質が低下するという技術的課題を有している。
【0005】
エネルギー線硬化型インクジェット記録用クリアインク組成物を用いて、インクジェット記録方式により形成される画像は、上記クリアインク組成物からなるドットが被記録物に着弾することによって形成される。一般にインクジェット記録方式により形成される画像には、画像の点抜け、画像の線抜けが発生する。
【0006】
上記クリアインク組成物からなるドットは、被記録物によっては、当該被記録物上ではじかれる場合がある。また、上記クリアインク組成物からなるドットは、被記録物上において、着弾はするが、はじかれてしまい、線、面にならず、画像が形成できない場合がある。その結果、被記録物上には、クリアインク組成物のドットの抜けが発生し、当該クリアインク組成物のドットの抜けは、被記録物上において、画像の点抜けとなる。
【0007】
さらに、上記クリアインク組成物からなるドットが当該被記録物上ではじかれることが顕著に発生すると、形成される画像の中で、ベタ部となるべき部分がドット模様となる。
【0008】
また、上記クリアインク組成物を用いて、インクジェット記録方式により形成される画像には、にじみが発生する。上記クリアインク組成物のドットは、被記録物によっては、被記録物に着弾した後に、その形態をそのまま一定に保持することができない。
【0009】
このため、上記クリアインク組成物のドットは、被記録物上において広がってしまう場合がある。被記録物上において着弾されたインクジェットインクのドットの広がりは、にじみとなる。当該にじみによって、形成されるべき画像は広がり、形成されるべき画像は不鮮明となる。特に、インクジェット方式により形成される画像が文字である場合には、当該文字が不鮮明となる結果、判読することができなくなってしまうという問題点を有する。
【0010】
さらに、インクジェット記録方式により形成される画像は、複数のラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用することによって形成される場合もある。インクジェット記録装置が備えている複数のラインヘッドの中には、インクジェットインクの目詰まり等の故障により、インクジェットインクを吐出することができないノズルが含まれている。このようなノズルの存在は、被記録物の搬送方向に線状の画像の抜け(線抜け)を発生させる。
【0011】
このように、特許文献1に記載されたエネルギー線硬化型インクジェット記録用クリアインク組成物を用いることによって形成される画像は、画像の点抜け、画像の線抜け、および画像のにじみによる、画像の品質が低下するという技術的課題を有している。本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、以下の(A)~(C)成分(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー(B)光重合開始剤(C)表面張力調整剤を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクであって、35℃における粘度が3.0~6.0mPa・s、且つ、25℃における粘度が4.5~9.0mPa・sで、有色透明性または無色透明性を有し、下地印刷された基材に35℃の状態で塗布されることで、基材を断面から視た場合に垂直方向に盛り上がった立体的形状の画像または塗膜を前記基材の表面に形成する。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、下地印刷された基材を搬送する搬送エレメントと、前記搬送エレメントにより搬送された前記基材に対し、ノズルから、以下の(A)~(C)成分(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー(B)光重合開始剤(C)表面張力調整剤を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクであって、35℃における粘度が3.0~6.0mPa・s、且つ、25℃における粘度が4.5~9.0mPa・sで、有色透明性または無色透明性を有し、前記基材に塗布されることで、基材を断面から視た場合に垂直方向に盛り上がった立体的形状の画像または塗膜を前記基材の表面に形成する前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを、前記基材に向けて35℃の状態で吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドから吐出される前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの吐出時の温度を35~40℃に保って、前記インクジェットヘッドから吐出された前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布された前記基材に対して、活性エネルギー線を照射する活性エネルギー源を備えたインクジェット記録装置である。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、下地印刷された基材を搬送エレメントにより搬送する工程と、前記搬送エレメントにより搬送された前記基材に対向してノズルが設けられたインクジェットヘッドにより、以下の(A)~(C)成分(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー(B)光重合開始剤(C)表面張力調整剤を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクであって、35℃における粘度が3.0~6.0mPa・s、且つ、25℃における粘度が4.5~9.0mPa・sで、有色透明性または無色透明性を有し、前記基材に塗布されることで、基材を断面から視た場合に垂直方向に盛り上がった立体的形状の画像または塗膜を前記基材の表面上に形成する前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを、前記基材に向けて35℃の状態で吐出する工程と、前記基材に前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布される工程と、前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布された前記基材に対して、活性エネルギー線を照射することによって、前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを硬化される工程と、を含むインクジェット記録方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、抜け、にじみがない印刷画像が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いて製造した印刷物の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置を模式的に示す図である。
図3A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の要部の詳細を模式的に示す図である。
図3B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の要部の詳細を模式的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の電子制御部を中心とする電気的構成を示す概略図である。
図5】本発明の一実施形態に係る活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いて製造した印刷物の一例を示した図である。
図6】本発明の一実施形態に係る活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いて製造した印刷物の一例を示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照して、以下に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などはあくまで一例であり、本発明の技術範囲をそれらの記載のみに限定する趣旨のものではない。
【0018】
<活性エネルギー線硬化性インクジェットインクおよび印刷物>
図1は、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いて製造した印刷物100の斜視図である。図1に示されるように、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク103は、インクジェット記録装置等を用いて、インクジェット方式により、基材101上に形成される。基材101上に形成された活性エネルギー線硬化性インクジェットインク103は、ローマ字Dを横書きした形状を有している。図1に示されるように、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク103は、基材101に直接印刷されていてもよいし、基材にあらかじめ施されたローマ字Dを横書きした下地印刷102の上に印刷されていてもよい。
【0019】
図1において、下地印刷102に印刷された活性エネルギー線硬化性インクジェットインク103は、下地印刷102上に正確に上塗りされている。活性エネルギー線硬化性インクジェットインク103は、基材101を平面から視た場合において、下地印刷102の形状と略同一形状を備え、かつ、基材101を断面から視た場合において、下地印刷102の形状と略同一形状を基材101の垂直方向に維持した立体的形状を備えている。
【0020】
すなわち、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク103は、基材101との関係において「にじみ」がないことによって、下地印刷102の形状と略同一形状を維持しつつ、垂直方向に盛り上った立体的形状を備えている。そして、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク103が塗布されていない基材101と、下地印刷102上に活性エネルギー線硬化性インクジェットインク103が塗布されている基材101との境界は、下地印刷102に沿って明瞭に区別されて形成されている。
【0021】
その結果、図1に示された印刷物100を構成する下地印刷102が有する画像の輪郭は、シャープとなる。
【0022】
また、図1において、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク103は、下地印刷102を介することなく、基材101上に直接上塗りされている。
活性エネルギー線硬化性インクジェットインク103は、基材101を平面から視た場合において、基材101上の一定の範囲に均一な塗膜を形成し、かつ、基材101を断面から視た場合において、基材101の垂直方向に一定の厚みを有する立体的形状を備えている。
【0023】
すなわち、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク103は、基材101との関係において、基材101上の一定の範囲に形成された塗膜の形状と略同一形状を維持しつつ、垂直方向に盛り上がった立体的形状を備えている。
【0024】
すなわち、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、基材のみをオーバーコートすることができるのみならず、基材にあらかじめ施された下地印刷を介して、当該下地印刷に上塗りすることにより、下地印刷をオーバーコートすることもできる。特に、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、基材にあらかじめ施された下地印刷を上塗りして、下地印刷による画像を意匠的に際立たせることができるオーバーコート用インクジェットインクとして好適に用いることができる。
【0025】
基材101は、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク103を直接印刷できる材料であってもよい。また、基材101は、あらかじめ下地印刷を施すことができる材料であってもよい。基材101としては、普通紙、アート紙、写真紙、名刺用紙、はがき、コート紙、マットコート紙、上質紙、特殊紙等の印刷紙、ポリカーボネート、硬質塩ビニル、軟質塩ビニル、ポリスチレン、発砲スチロール、PMMA、ポリプロピレン、ポリエチレン、PETなどのプラスチック基材、これらのプラスチック基材を貼り合わせたラミネートフィルム、これらのプラスチック基材を混合または変性させた材料、ガラス、ステンレスなどの金属基材、木材を例示することができるが、これに制限されるものではない。
【0026】
下地印刷102に用いられるインクは、基材101に印刷することができ、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク103を上塗りすることができるインクであれば、特に制限されるものではなく、フルカラー印刷用インク、モノクロ印刷用インクであってもよい。また、下地印刷102の印刷方式もインクジェット記録方式、トナー記録方式等特に限定されない。
【0027】
以下、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクについて説明する。活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、以下の(A)~(C)成分、(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー(B)光重合開始剤(C)表面張力調整剤を含有し、35℃における粘度が3.0~6.0mPa・sである点に技術的特徴を有する。活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの粘度を測定する基準となっている35℃は、インクジェット記録装置のインクジェットヘッドの設定温度である。活性エネルギー線硬化性インクジェットインクがインクジェットヘッドから吐出する時点の温度が35℃である。
【0028】
なお、インクジェットヘッドの設定温度は、ヒーター等の温度保持部材を用いておおよそ35℃に保たれている。インクジェットヘッドの設定温度をおおよそ35℃に保つことによって、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを基材に対して、安定して塗布することができる。その結果、基材上に活性エネルギー線硬化性インクジェットインクからなる均一な塗膜、高品質の画像を得ることができる。
【0029】
活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの粘度は、35℃において、3.0~6.0mPa・sである。35℃におけるこの粘度範囲は、通常のインクジェットインクとして用いられているジェットインクの粘度よりも極めて低い範囲の数値となっており、通常のインクジェットインクとしては、用いられていない粘度範囲である。
【0030】
すなわち、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、その粘度範囲を低粘度に設定することによって、インクジェットヘッドからの吐出安定性に優れ、かつセルフレベリング性に優れたインクとなる。そして、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いて形成された画像は、画像の点抜け、画像の線抜け、および画像のにじみによる画像品質の低下がない。
【0031】
すなわち、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いることによって、ハジキがなく、良好で均一な塗膜、画像の点抜け、画像の線抜けがない画像が形成される。
【0032】
また、インクジェット記録装置が備えている複数のインクジェットヘッドの中で、インクを吐出することができないノズルがある場合であっても、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク自体が有するセルフレベリング性によって、画像の点抜け、画像の線抜けを防ぐことができる。
【0033】
活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度が、3.0mPa・s以上であると、当該インクの吐出の追従性の低下がなく、当該インクの吐出安定性が向上するため好ましく、6.0mPa・s以下であると、当該インクのセルフレベリング性が向上するため好ましい。
【0034】
さらに、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの粘度は、25℃において、4.5~9.0mPa・sであり、さらに、好ましくは、5.0~8.0mPa・sである。25℃におけるこの粘度範囲は、通常のインクジェットインクとして用いられているジェットインクの粘度よりも極めて低い値となっている。
【0035】
活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの粘度を測定する基準となっている25℃は、当該インク製造時の温度に相当する。本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクにおいて、その粘度を調整することが最も重要であるので、当該インクの製造時の温度である25℃において、その粘度を規定することは技術的意義を有する。
【0036】
活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの25℃における粘度が、4.5mPa・s以上であると、当該インクの吐出安定性がより向上するため好ましく、9.0mPa・s以下であると、当該インクのセルフレベリング性が向上するため好ましい。
【0037】
活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力は、基材へのぬれと、当該イ
ンクの吐出後の良好な液滴形成性、かつ、当該液滴が当該基材に着弾後、エネルギー線照射後に硬化されて形成される画像の品質を考慮して、調整される。本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力は、19~33mN/mに調整されている。この表面張力は、各基材に合わせて、成分(C)の表面張力調整剤を用いて、その種類と含有量を適宜変更することによって、所定の範囲に調整される。
【0038】
活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力は、各基材の表面張力との関係において、調整されている。
【0039】
本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力は、基材の表面張力よりも低く設定されている。活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力を基材の表面張力よりも低く設定することによって、基材の種類に応じて、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクによる良好な塗膜を得ることができる。
【0040】
ここで、基材の表面張力と活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力は、以下の関係を有することが重要である。
【0041】
基材の表面張力を[X]mN/mとし、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力を[Y]mN/mとすると、基材の表面張力[X]mN/mと、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力[Y]mN/mとの差が1.0~15.0mN/mとなるように調整されていることが必要である。さらに、基材の表面張力[X]mN/mと、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力[Y]mN/mとの差は、5.0~12.0mN/mとなるように調整されていることが好ましい。
【0042】
基材の表面張力[X]mN/mと、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力[Y]mN/mとの差が1.0mN/m以上であると、当該インクの吐出安定性、基材上の当該インクのはじきを抑制することができるため好ましい。
【0043】
また、基材の表面張力[X]mN/mと、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力[Y]mN/mとの差が15.0mN/m以であると、当該インクにより形成される画像の鮮明性、解像度の維持の観点から当該インクの広がりを制御し、結果として、画像のにじみを抑制することができるため好ましい。
【0044】
すなわち、基材の表面張力[X]mN/mと、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力[Y]との関係は以下の数式によって表わされる。
1.0 <[X]-[Y]< 15.0 mN/m
このように、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、基材または基材上の下地印刷を含めた基材とのベストマッチングを図って、上塗り印刷を実現するために、基材の表面張力を規定している。
【0045】
以下、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの各成分について、説明する。
【0046】
[(A)成分:活性エネルギー線硬化性モノマー]
本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、(A)成分を含有する。活性エネルギー線硬化性インクジェットインクに含有される(A)成分である活性エネルギー線硬化性モノマーは、基材に塗布され、活性エネルギー線が照射されると重合反応により硬化する成分である。なお、活性エネルギー線とは、紫外線(UV)、電子線(EB)等のエネルギー線をいう。
【0047】
活性エネルギー線硬化性モノマーとしては、活性エネルギー線を照射することにより重合反応を容易に起こすモノマーであれば、特に制限されるものではない。例えば、活性エネルギー線硬化性モノマーは、単官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマー、多官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマーであってもよい。
【0048】
また、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクに含有される(A)成分は、活性エネルギー線硬化性オリゴマーを含んでいてもよい。活性エネルギー線硬化性インクジェットインクに含有される(A)成分は、活性エネルギー線硬化性オリゴマーのみを含んでいてもよい。
【0049】
具体的に、単官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマーとしては、ブチルシクロヘキサノールアクリレート、イソボルニルアクリレート、2ーメチルー2ーエチルー1,3ージオキソランー4ーイルメチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレンポリプロピレングリコールアクリレート、アクリロイルモルホリン、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、β-カルボキシルエチルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート等のモノアクリレートを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0050】
さらに、これらのモノアクリレートの中でも、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度が3.0~6.0mPa・sに設定することができ、かつインクジェットインクとしての適性が高い活性エネルギー線硬化性モノマーとして、ブチルシクロヘキサノールアクリレート、イソボルニルアクリレート、2ーメチルー2ーエチルー1,3ージオキソランー4ーイルメチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート等をより好適に用いることができる。
【0051】
なお、これらの単官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマーを単独で用いても、2種類以上を組み合わせて選択して用いてもよい。
【0052】
多官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマーとしては、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ
)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジアクリレートを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
さらに、多官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化リン酸トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2-ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート等のトリアクリレート、テトラアクリレート、ヘキサアクリレート、オリゴアクリレート挙を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
さらに、ジアクリレート等の中でも、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度が3.0~6.0mPa・sに設定することができ、かつインクジェットインクとしての適性が高い活性エネルギー線硬化性モノマーとして、ジプロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレートをより好適に用いることができる。
【0055】
なお、これらの単官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマーを単独で用いても、2種類以上を組み合わせて選択して用いてもよい。また、単官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマー、および多官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマーは、必要に応じて、それぞれ単独で用いてもよいし、単官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマーと、多官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマーとを組み合わせて用いてもよい。
【0056】
活性エネルギー線硬化性モノマーの組成比率は、(A)成分の活性エネルギー線硬化性モノマー全体を100重量部とすると、単官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマーを50重量部~90重量部とし、多官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマーを50重量部~10重量部とすることが好ましい。単官能基を有する活性エネルギー線硬化性モノマーが50重量部以上であると、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの硬化時における収縮性が小さくなるため好ましく、90重量部以下であると、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの粘度を低下することができるため、好ましい。
【0057】
さらに、(A)成分の活性エネルギー線硬化性モノマーには、活性エネルギー線硬化性オリゴマーおよび/またはアクリル、ポリエステル、ポリオール等ポリマーを含有させてもよい。(A)成分の活性エネルギー線硬化性モノマーに活性エネルギー線硬化性オリゴマーおよび/またはアクリル、ポリエステル、ポリオール等ポリマーを含有させることによって、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクに硬化性、柔軟性、耐擦傷性、および基材との密着性を付与することができる。
【0058】
活性エネルギー線硬化性オリゴマーとしては、上記活性エネルギー線硬化性モノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、環状または直鎖状の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートを例示することができるが、これに限定されない。
【0059】
本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、35℃において、3.0~6.0mPa・sであることを特徴としているので、(A)成分の活性エネルギー線硬化性オリゴマーの分子量は1000前後であることが好ましい。
【0060】
[(B)成分:光重合開始剤]
本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、(B)成分を含有する。(B)成分を構成する光重合開始剤は、基材に塗布された活性エネルギー線硬化性モノマーの重合反応を開始させる成分である。
【0061】
光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を活性エネルギー線硬化性モノマーに照射させることによって、当該モノマーの重合反応を容易に開始させることができる成分であれば、特に制限されるものではない。
【0062】
本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが紫外線によって、重合反応を開始するときは、分子開裂型の光重合開始剤または水素引き抜き型の光重合開始剤を採用することができる。
【0063】
分子開裂型の光重合開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンベンジル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等を例示することができるが、これに限定されない。
【0064】
また、活性の観点から、分子開裂型の光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オンおよび2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等を併用してもよい。
【0065】
水素引き抜き型の光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチル-ジフェニルスルフィド等を例
示することができるが、これに限定されない。
【0066】
これらの光重合開始剤は、吸収極大波長を長波長側に持つ光重合開始剤と、吸収極大波長を短波長側に持つ光重合開始剤からなる2種類以上の光重合開始剤を含有していることが好ましい。
【0067】
2種類以上の光重合開始剤を用いることによって、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクがインクジェット記録装置から発生される活性エネルギー線を効率よく活用することができるからである。
【0068】
その結果、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクからなるドットが基材に着弾後、短時間で硬化することができ、形成される画像が滲むことを防止することができる。(B)成分の光重合開始剤は、活性エネルギー線硬化性モノマー100重量部に対して1.0~20.0重量部、好ましくは3.0~10.0重量部の範囲で含有される。(B)成分の光重合開始剤には、保存時おける活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの安定性、および使用時におけるインクジェット記録装置のインクジェットヘッドの安定性の観点から重合禁止剤を含有させることができる。
【0069】
すなわち、(B)成分の光重合開始剤には、活性エネルギー線硬化性モノマーの加熱によって生成するポリマーによるインクジェットヘッドの詰まりを防ぐために重合禁止剤を含有させる。(B)成分の光重合開始剤に重合禁止剤を含有させることによって、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、加熱されてもインクジェットヘッドから安定して吐出する。具体的に、重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、ピロガロール、ブチルヒドロキシトルエン等を例示することができるが、これに限定されない。
【0070】
重合禁止剤は、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク100重量部に対して、0.01~5.0重量部を含有させることが好ましい。
【0071】
重合禁止剤の含有量が、0.01重量部以上であると、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの硬化を抑制することができるため好ましい。重合禁止剤の含有量が、5.0重量部以下であると、活性エネルギー線の照射時に活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの硬化が進行するため好ましい。
【0072】
また、(B)成分の光重合開始剤には、活性エネルギー線硬化性モノマーの光感度を増大させるために増感剤を含有させることができる。
【0073】
増感剤としては、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N-ジメチルベンジルアミンおよび4,4'-ビス
(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等を例示することができるが、これに限定されない。増感剤は、活性エネルギー線硬化性モノマーと付加反応を起こさないアミン類である。
【0074】
増感剤は、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク100重量部に対して、0.01~5.0重量部を含有させることが好ましい。
【0075】
増感剤の含有量が、0.01重量部以上であると、活性エネルギー線硬化性モノマーの光感度を増大させることができるため好ましい。増感剤の含有量が、5.0重量部以下であると、活性エネルギー線の照射時に活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの重合を適度に進行させることができるため好ましい。
【0076】
なお、(B)成分を構成する光重合開始剤、増感剤および重合禁止剤は、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク中の活性エネルギー線硬化性モノマーへの溶解性に優れており、かつ紫外線等の活性エネルギー線が活性エネルギー線硬化性モノマーに透過することを阻害しない物質であることが好ましい。
【0077】
[(C)成分:表面張力調整剤]
本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、(C)成分を含有する。(C)成分を構成する表面張力調整剤は、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力を所定の範囲に調整するためのアルコール類、グリコールエーテル類等の有機溶媒、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、変性シリコーンオイル等である。表面張力調整剤としては、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力を調整することができ、セルフレベリング性を向上させ、当該インクの性質を損なうことがないものであれば、特に制限されるものではない。表面張力調整剤としては、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が少量の添加によって表面張力を調整することができるため好ましい。
【0078】
イオン性界面活性剤としては、ア二オン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性活性剤が挙げられる。
【0079】
イオン性界面活性剤のうちアニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、半硬化牛脂脂肪酸ナトリウム等の脂肪酸塩類、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、オクタデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のベンゼンスルホン酸塩類、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等のナフタレンスルホン酸塩類、スルホコハク酸ジドデシルナトリウム、スルホコハク酸ジオクタデシルナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩類、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸トリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレン硫酸エステル塩類、ドデシルリン酸カリウム、オクタデシルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩類等を例示することができるが、これらに限定されない。
【0080】
イオン性界面活性剤のうちカチオン性界面活性剤としては、酢酸オクタデシルアンモニウム、ヤシ油アミン酢酸塩等のアルキルアミン塩類、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、塩化ドデシルベンジルジメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩類を例示することができるが、これらに限定されない。
【0081】
イオン性界面活性剤のうち両性イオン性活性剤としては、ドデシルベタイン、オクタデシルベタイン等のアルキルベタイン類、ドデシルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド類等を例示することができるが、これらに限定されない。
【0082】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル、ポリオキシエチレン(9-オクタデセニル)エーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンフェニルエーテル類、ポリ酸化エチレン、コ-ポリ酸化エチレン酸化プロピレン等のオキシラン重合体類、ソルビタンドデカン酸エステル、ソルビタンヘキサデカン酸エステル、ソルビタンオクタデカン酸エステル、ソルビタン(9-オクタデセン酸)エステル、ソルビタン(9-オクタデセン酸)トリエステル、ポリオキシエチレンソルビタンドデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンヘキサデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオクタデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオクタデカン酸トリエステル、ポリオキシエチレンソルビタン(9-オクタデセン酸)エステル、ポリオキシエチレンソルビタン(9-オクタデセン酸)トリエステル等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール(9-オクタデセン酸)テトラエステル等のソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリンオクタデカン酸エステル、グリセリン(9-オクタデセン酸)エステル等のグリセリン脂肪酸エステル類を例示することができるが、これらに限定されない。
【0083】
変性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチレン変性シリコーンオイル、オレフィン変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル等を例示することができるが、これらに限定されない。これらの変性シリコーンオイルの中でも、各種有機基を導入した変性シリコーンオイルが活性エネルギー線硬化性インクジェットインクに対して良好な溶解性を示すことから、より好ましい。各種有機基を導入した変性シリコーンオイルとしては、末端(メタ)アクリル変性シリコーンオイル、末端エポキシ変性シリコーンオイル等のラジカル、あるいはカチオン反応性シリコーンオイルを例示することができる。
【0084】
変性シリコーンオイルは、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクによる塗膜が基材に形成された後において、当該塗膜表面に過剰にブリードすることがなく、表面のべたつきや、表面を通してのシリコーンオイルの移行の問題が少ないため好ましい。さらに、活性エネルギー線硬化性があるシリコーンポリエーテルアクリレート、ポリエーテル変性シロキサンコポリマーなどがより好ましい。
【0085】
本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、(C)成分の表面張力調整剤として、有機溶媒を含有していてもよい。しかしながら、表面張力調整剤として、有機溶媒を使用することによって、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、揮発成分を含んでしまうことになる。
【0086】
なお、(C)成分の表面張力調整剤は、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク100重量部に対して、0.05~1.0重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0087】
なお、レベリング剤は、活性エネルギー線硬化性インクジェットインク100重量部に対して、0.05~3.0重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0088】
[その他の成分:着色剤等]
さらに、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、その他の成分として、着色剤を含有していてもよい。着色剤の添加量を調整することにより、当該着色剤を含有した活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを、有色ではあるが透明性を有するものとすることができるし、有色非透明とすることもできる。活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが着色剤を含有している場合、着色剤が含有された活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、基材上に印刷されたグラフィック、文字、写真等の下地印刷をコーティングするオーバーコートインクとして用いることができるし、基材を直接コーティングするインクとして用いることもできる。なお、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが着色剤を含有していない場合は、当該インクは無色透明性を有する。
【0089】
着色剤を含有した活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが有色透明である場合、下地となる基材に印刷されたグラフィック、文字、写真等の下地印刷の色彩と、当該インクの色彩が相俟って、画像の意匠性が向上する。有色非透明である場合、色のついた立体的な文字や模様が得られる。
【0090】
着色剤として、染料、顔料を使用することができる。特に耐候性の面から、着色剤として、顔料を用いる場合が多い。顔料としては、有機顔料、無機顔料を用いることができる。無機顔料としては、カーボンブラック(黒色)、酸化チタン(白色)、炭酸カルシウム(白色)等を例示することができるが、これに限定されない。
【0091】
有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系有機顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系有機顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系有機顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンエローなどのキノフタロン系有機顔料、イソインドリンエローなどのイソインドリン系有機顔料、その他の顔料としては、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等を例示することができるが、これに限定されない。
【0092】
本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、その他の成分として、各種フィラー、または樹脂成分を含有していてもよい。活性エネルギー線硬化性インクジェットインクにフィラー、または樹脂成分が含有されることにより、当該インクにより形成される硬化膜に耐久性、意匠性を付与することができる。
【0093】
フィラーとしては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、球状シリカ、中空シリカなどの体質顔料や樹脂ビーズなどを例示することができるが、これに限定されない。
【0094】
樹脂成分としては、活性エネルギー線に不活性な樹脂であれば、特に限定されるものではないが、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリケトン樹脂、ポリビニル系樹脂(例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂)、セルロース系樹脂(例えば、CAB樹脂、CAP樹脂)等を例示することができるが、これに限定されない。本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー、(B)光重合開始剤、(C)表面張力調整剤、およびその他の成分と共に、ビーズミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。
【0095】
着色剤を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを製造する場合には、あらかじめ、着色剤の濃縮液を作製し、当該濃縮液を(A)成分である活性エネルギー線硬化性モノマーによって希釈してもよい。活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの各成分の分散時の変質が発生せず、液体安定性に優れた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを製造することができる。製造された活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、3.0μm以下、好ましくは1.0μm以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0096】
本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを使用するには、当該インクをインクジェット記録装置のインクジェットヘッドに供給する。インクジェットヘッドから活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを基材上に吐出し、その後紫外線または電子線等の活性エネルギー線を照射する。これにより基材上に形成された活性エネルギー線硬化性インクジェットインクからなる塗膜は、速やかに硬化する。
【0097】
活性エネルギー線の光源としては、紫外線を照射する場合には、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、および太陽光を使用することができる。また、電子線を活性エネルギー線として用いる場合、上記開始剤や増感剤を除いて配合することにより、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクとして調製可能である。
【0098】
本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、顔料が異なる複数、例えば4種、5種、6種、7種などのインクジェットインクのセットとして用いることができる。例えば、4種であれば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)、あるいは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ホワイト(W)等を例示することができるが、これらに限定されない。
【0099】
<インクジェット記録装置>
以下、図面を参照して、本実施形態のインクジェット記録装置について説明する。なお、以下の説明では便宜上、インクジェット記録装置における用紙搬送方向上流側を単に「上流側」、用紙搬送方向下流側を単に「下流側」と表現することがある。
【0100】
図2は、本実施形態のインクジェット記録装置200を模式的に示す図である。インクジェット記録装置200は、あらかじめ施された下地印刷による画像形成済みの基材に対し、その下地印刷に上塗りするように活性エネルギー線硬化性インクジェットインクからなるインク層を形成する上塗り印刷処理を実行する。また、インクジェット記録装置200は、印刷による画像形成がされていない基材に対し、上記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクからなるインク層を形成する処理を実行する。
【0101】
インクジェット記録装置200は、搬送エレメント201、画像記録装置202およびスタッカ203を備える。搬送エレメント201は、基材テーブル211および基材供給機構212を有する。基材テーブル211には、図示しない別のインクジェット記録装置にてあらかじめ施された下地印刷により画像が形成された画像形成済み基材が積載される。
【0102】
基材テーブル211は、昇降可能に構成され、積載された基材のうち最上位に位置する基材が基材供給機構212によって供給される。このように、搬送エレメント201は、基材テーブル211、基材供給機構212を備えた基材を搬送する搬送エレメントである。
【0103】
搬送エレメント201によって搬送される基材は、画像を記録することができる材料であれば、特に制限されるものではないが、紙、表面加工された紙等の用紙、プラスチック板、金属薄膜等を例示することができる。
【0104】
基材供給機構212により送り出された基材は、搬送路213に沿って搬送される。搬送路213の下流側部分に沿って画像記録装置202が設けられている。画像記録装置202には、搬送路213に沿って搬送された基材を搬送するベルト搬送機構221が設けられている。ベルト搬送機構221は、ベルトに形成された孔を通じたエアの吸引力によって基材を搬送面上に吸着しながら搬送する。ベルト搬送機構221の上方には、基材の搬送方向の上流側から画像読取装置222、インクジェットヘッドユニット223および活性エネルギー源224が設けられている。
【0105】
画像記録装置202の下流側に排出路226が接続されている。ベルト搬送機構221から搬送された基材は、排出路226に送り込まれる。排出路226に送り込まれた基材は、スタッカ203に搬出される。スタッカ203は、搬送路231および基材蓄積部232を有する。排出路226から搬出された基材は、搬送路231を経て、基材蓄積部232に排出され蓄積される。なお、変形例においては、搬送エレメント201に代えて、プリンターを画像記録装置202に直接接続してもよい。また、スタッカ203に代えて、送り出される基材を切断したり、綴じたりする後処理を行う装置を画像記録装置202に接続してもよい。
【0106】
インクジェット記録装置200は、また、電子制御部204を有する。電子制御部204は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMを有する。電子制御部204は、インクジェット記録装置200内に設けられたアクチュエータの作動などを制御することにより、基材に向けて、以下の(A)~(C)成分(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー(B)光重合開始剤(C)表面張力調整剤を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクであって、
前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度が3.0~6.0mPa・sである、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクをインクジェットヘッドユニット223から吐出して、あらかじめ施された下地印刷上への上塗り印刷処理を実行する。
【0107】
同様に、電子制御部204は、印刷による画像形成がされていない基材に向けて、上記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクをインクジェットヘッドユニット223から吐出して、当該インクからなるインク層を形成する処理を実行する。
【0108】
インクジェット記録装置200には、図示しない操作パネルが設けられており、ユーザは、この操作パネルを介した操作入力により、上塗り印刷処理の各種設定を行うことができる。なお、変形例においては、外部PCのディスプレイ、マウス、キーボードを操作パネルとして機能させてもよく、そのPCを電子制御部204として機能させてもよい。
【0109】
図3A及び図3Bは、インクジェット記録装置200の要部である画像記録装置202の詳細を模式的に示す図である。図3Aは、その側面図である。図3Bは、その平面図である。図3Aに示されるように、画像記録装置202は、ベルト搬送機構221として、基材Pを搬送する複数の搬送ローラ321を備える。この基材Pは、下地印刷が施されることにより形成された上塗り印刷の対象となる画像と、その下地印刷の画像形成位置を特定するための基準となるレジストマークとが印刷された画像形成済み基材である。
【0110】
複数の搬送ローラ321のうち、画像読取装置222の上流側に配置された一つの駆動ローラには、その回転数から基材Pの搬送量を算出するためのエンコーダ322(ロータリエンコーダ)が設置されている。また、画像読取装置222とエンコーダ322との間には、搬送エレメント201から搬送されてきた基材Pの先端を検出するための入基材センサ323が配設されている。
【0111】
電子制御部204は、入基材センサ323による基材Pの検出をトリガとして、エンコーダ322の出力パルスを取得し、基材Pの搬送位置を算出する。そして、算出された基材Pの位置に基づいて、画像読取装置222による撮像タイミング、インクジェットヘッドユニット223による活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの吐出タイミング、活性エネルギー源224による活性エネルギー線の照射タイミングを設定する。
【0112】
図3Bに示されるように、画像読取装置222は、ベルト搬送機構221の上方にて基材の幅方向に離間して配置される一対のイメージセンサ324、325を含む。インクジェット記録装置200は、これらのイメージセンサ324、325をCCD(Charge Coupled Device)センサにて構成する。また、インクジェット記録装置200は、上記CCDに代えて、CMOS(Complementary Meta Oxide Semiconductor)センサ、その他のイメージセンサにて構成してもよい。
【0113】
イメージセンサ324は、基材幅方向の一端側に固定された第1センサとして構成される。一方、イメージセンサ325は、基材の幅方向の他端側に設けられ、基材の幅方向に可動に設けられた第2センサとして構成される。すなわち、基材Pの大きさに応じてイメージセンサ325を基材の幅方向に駆動することにより、一対のイメージセンサの間隔を調整することができる。この記録装置は、この一対のイメージセンサ324と325により、基材に下地画像と同時に前もって記録されたレジストマークを読み取ることにより、読み取った基材における下地画像の印刷位置の、理論位置からのずれを認識することができる。ずれが認識できれば、実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの吐出位置をずれに応じて修正することにより、基材に前もって記録された下地の内容と、硬化性インクによる塗布画像とを正しく位置合わせすることができる。
【0114】
インクジェットヘッドユニット223は、搬送エレメント201の上流側から搬送された基材Pにあらかじめ施された下地印刷に重ねるように、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを吐出する3つのインクジェットヘッド326を備える。これら3個のインクジェットヘッド326は、いわゆる「記録ヘッド」として機能する。インクジェットヘッド326から吐出される活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、以下の(A)~(C)成分、(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー(B)光重合開始剤(C)表面張力調整剤を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクであって、前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度が、3.0~6.0mPa・sである。インクジェットヘッド326から吐出された活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、活性エネルギー源224から活性エネルギー線が基材に対して照射されることによって、硬化する。インクジェットヘッド326から吐出される活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、インクジェットヘッド326から吐出される吐出時の設定温度である35℃において、その粘度が3.0~6.0mPa・sであることを特徴とする。インクジェットヘッドユニット223は、その温度を35~40℃に保つためのヒーター等の温度保持部材327を備えている。インクジェットヘッドユニット223が備えているヒーターの配置は、インクジェットヘッドユニット223の温度を35~40℃に保つことができれば、特に制限されるものではなく、ヒーターをインクジェットヘッドユニット223の外部に設置してもよく、その内部に設置してもよい。インクジェットヘッドユニット223は、その温度を35~40℃に保つことによって、インクジェットヘッド326から吐出される活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの温度を35℃に制御することができる。
ただし、ヒーターの形状や配置位置によっては、吐出時のインクの温度を正確に35℃に制御することができず、1~3℃程度で変動する場合がある。また、インクの温度は、吐出後に基板に着弾するまでの間、周囲温度に応じて1~3℃程度変動することがある。さらに、着弾後の媒体の温度によっても、インクの温度が1~3℃程度変動することがある。このような場合、インクの温度が変動しても、本発明のインクの粘度が低いため、吐出安定性やセルフレベリング性が低下することがない。
【0115】
図3Bに示されるように、インクジェットヘッドユニット223は、ベルト搬送機構221上に配置されている。インクジェットヘッドユニット223の配置は、ベルト搬送機構221によって、搬送される基材の搬送直交方向に列設されている。さらに、インクジェットヘッド326は、隣接するインクジェットヘッド326との間において、隙間が発生しないようにオーバーラップして配置されている。
【0116】
本実施形態のインクジェット記録装置の変形例においては、インクジェットヘッド326が3つ以上の複数設けられてもよい。さらに、上記インクジェット記録装置の変形例においては、インクジェットヘッド326が基材の幅方向に長い単一のインクジェットヘッドであってもよい。また、インクジェットヘッド326が有する吐出孔は、基材の幅方向と所定角度傾いて配置されていてもよい。すなわち、インクジェットヘッド326が有する吐出孔は、基材の搬送方向と非平行である所定方向に並ぶように配置されてもよい。また、インクジェットヘッド326としては、2ライン以上を有し、同時に活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを吐出するインクジェットヘッドが用いられてもよい。
【0117】
活性エネルギー源224は、「活性エネルギー照射部」として機能する。活性エネルギー源224は、上流側から搬送エレメント201により搬送された基材P上に形成された活性エネルギー線硬化性インクジェットインクに対して活性エネルギー線を照射することにより、そのインク層を硬化させる。すなわち、活性エネルギー源224は、インクジェットヘッドユニット223から吐出された活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布された基材Pに対して、活性エネルギー線を照射する部材である。活性エネルギー源224は、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することができるものであれば、特に制限されない。活性エネルギー線として紫外線を照射する場合には、活性エネルギー源224として、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、および太陽光を使用することができる。
【0118】
図4は、インクジェット記録装置200の電子制御部204を中心とする電気的構成を示す概略図である。電子制御部204については機能ブロックが示されている。これらの機能は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。
【0119】
電子制御部204は、データ取得部441、補正部442、吐出制御部443、および記憶部444を有する。電子制御部204には、図示しない操作パネルに設けられた入力装置445からの信号が入力される。この入力装置445には、上塗り印刷処理を開始させるためのスタートスイッチ、上塗り印刷処理を停止させるためのストップスイッチ等、種々のスイッチが含まれる。電子制御部204には、また、既に説明したエンコーダ322、入基材センサ323、イメージセンサ324、325等からの検出信号が入力される。電子制御部204は、それらのスイッチ・センサ入力に基づいて、給基材制御、搬送制御、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの吐出制御、活性エネルギー線の照射制御等のための所定の演算処理を実行し、搬送エレメント201、ベルト搬送機構221、インクジェットヘッドユニット223、活性エネルギー源224等に制御指令信号を出力する。
【0120】
電子制御部204の記憶部444は、基材にあらかじめ施された下地印刷の内容を記憶する。本実施形態のインクジェット記録装置は、下地印刷の内容を表す画像データを、外部より取得する。このインクジェット記録装置は、下地印刷の内容を表す画像データを、例えば、通信回線などの外部からダウンロードして、記憶部444に記憶する。
【0121】
さらに、記憶部444は、インクジェットヘッドユニット223から吐出される活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの吐出パターンを特定するための吐出データを格納する。この吐出パターンは、あらかじめ記録された下地印刷に重ねて吐出されて印刷される内容(以下、「重ね印刷」と呼ぶ)を含む吐出データを含む。
【0122】
記憶部444は、基材Pにあらかじめ下地画像と同時に印刷された複数のレジストマークの基材P上の印刷位置とその形状に関する情報を含む。基材Pをイメージセンサにより読み取ったレジストマークの読取り位置と読取り形状とを、記憶部444に記憶した印刷位置と形状とを比較することにより基材Pの下地画像の印刷ずれを検出する。
【0123】
なお、データ取得部441は、この吐出データを取得する部材である。データ取得部441によるデータ取得は、図示しないパーソナルコンピュータ等の外部端末や、USBメモリ等のストレージデバイスとの接続により取得することができる。
【0124】
電子制御部204は、インクジェットヘッド326から吐出される活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの吐出量を制御する吐出制御部443を有している。吐出制御部443は、記憶部444に記憶された吐出データを参照して、下地印刷が施された基材P上に活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを上塗りするように当該インクの吐出量を制御する。
【0125】
電子制御部204は、補正部442を備えている。補正部442は、記憶部444から吐出データを読み出し、その吐出データに含まれるレジストマークの位置情報(設計位置)と、画像読取装置222により読み取られた実際のレジストマークの位置情報(実測位置)とに基づいてその吐出データを補正する。
【0126】
基材Pに印刷されている下地画像のレジストマークの位置、すなわち、基材Pに印刷されている下地印刷が設計値からずれている場合には、記憶部444が記憶する吐出データに基づく吐出制御部443による吐出制御では、実際の下地印刷に沿った正確な活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いた上塗り印刷処理ができない。
【0127】
同様に、上流側から搬送エレメント201によって、搬送される基材Pが傾いている場合も、実際の下地印刷に沿った正確な活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの上塗りによる上塗り印刷処理ができない。
【0128】
このため、補正部442は、下地印刷の設計値と下地印刷の実測値との差分をレジストマークの位置変化に基づいて算出する。さらに、補正部442は、吐出データに対して、その差分を補填するための補正処理を実行する。このように、吐出制御部443は、補正部442を用いることによって、補正後の吐出データに基づいて、インクジェットヘッドユニット223の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの吐出量の制御を実行することができる。
【0129】
<インクジェットインク用洗浄液>
本実施形態のインクジェット記録装置には、以下のインクジェットインク用洗浄液を使用することができる。インクジェット記録装置のインクジェットヘッドは、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを基材に向けて吐出する。上塗り印刷処理を完了した後、インクジェットヘッドには、基板に吐出されなかった活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが残留する。インクジェットヘッドに残留した活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、当該インクジェットヘッドの詰まり、インク吐出量の減少、故障等の不具合の原因となる。このような、インクジェットヘッドの不具合を回避するためには、インクジェットヘッドを洗浄するためのインクジェットインク用洗浄液が必要となる。インクジェットインク用洗浄液をインクジェットヘッドに適用することによって、残留する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが洗浄される。その結果、インクジェットヘッドには、残留する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが存在しない。すなわち、インクジェットインク用洗浄液によって、インクジェットヘッドの状態を常に良好な状態に維持することができ、インクジェット記録装置の性能を維持することができる。
【0130】
インクジェット用洗浄液は、溶剤と、重合禁止剤を含有する。インクジェット用洗浄液に使用する溶剤としては、エーテル系溶剤が使用できる。具体的に、エーテル系溶剤としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジ40アセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレートを例示することができるがこれに限定されない。
【0131】
インクジェット用洗浄液に含まれる溶剤の沸点は、インクジェットヘッドを洗浄後、当該洗浄液を乾燥させる必要がある観点から、200℃以上であることが好ましい。インクジェット用洗浄液に含まれる溶剤の粘度は、25℃において、9mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは、1.5~9mPa・sであり、最も好ましくは、2.0~8mPa・sである。インクジェット用洗浄液に含まれる溶剤は、上記の溶剤を単独で用いてもよいし、2種類以上の溶剤を混合してもよい。
【0132】
また、インクジェット用洗浄液に含まれる重合禁止剤としては、以下に限定されないが、例えば、p-メトキシフェノール、クレゾール、t-ブチルカテコール、ジ-t-ブチルパラクレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α-ナフトール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブ
チルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-ブチルフェノール)、お
よび4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のフェノール化合
物、p-ベンゾキノン、アントラキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、p-キシロキノン、p-トルキノン、2,6-ジクロロキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジアセトキシ-p-ベンゾキノン、2,5-ジカプロキシ-p-ベンゾキノン、2,5-ジアシロキシ-p-ベンゾキノン、ヒドロキノン、2,5-ジーブチルヒドロキノン、モノ-t-ブチルヒドロキノン、モノメチルヒドロキノン、および2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン等のキノン化合物、フェニル-β-ナフチルアミン、p-ベンジルアミノフェノール、ジ-β-ナフチルパラフェニレンジアミン、ジベンジルヒドロキシルアミン、フェニルヒドロキシルアミン、フェノチアジン、およびジエチルヒドロキシルアミン等のアミン化合物、ジニトロベンゼン、トリニトロトルエン、およびピクリン酸などのニトロ化合物、キノンジオキシムおよびシクロヘキサノンオキシム等のオキシム化合物、フェノチアジン等の硫黄化合物等を例示することができる。
【0133】
インクジェット用洗浄液に含まれる重合禁止剤は、上記の重合禁止剤を単独で用いてもよいが、2種類以上の重合禁止剤を混合してもよい。インクジェット用洗浄液に含まれる重合禁止剤の配合量は、当該インクジェット用洗浄液の重量を基準として、0.1~7.0重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.5~5.0重量%であることが好ましく、最も好ましくは、1.0~3.0重量%である。重合禁止剤の配合量が0.1重量%以上であると、残存する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの重合反応を抑制することができるため好ましい。また、重合禁止剤の配合量が7.0重量%以下であると、インクジェット用洗浄液のコストを軽減することができるため好ましい。
【0134】
<インクジェット記録方法>
以下、本実施形態のインクジェット記録方法について説明する。インクジェット記録方法は、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクおよびインクジェット記録装置を用いて、実現される。すなわち、本実施形態のインクジェット記録方法は、搬送エレメントにより基材を搬送する工程と、
前記搬送エレメントにより搬送された前記基材に対向してノズルが設けられたインクジェットヘッドにより、以下の(A)~(C)成分(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー(B)光重合開始剤(C)表面張力調整剤を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクであって、
前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度が3.0~6.0mPa・sである活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを前記基材に向けて吐出する工程と、
前記基材に前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布される工程と、
前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布された前記基材に対して、活性エネルギー線を照射することによって、前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを硬化する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0135】
(搬送エレメントにより基材を搬送する工程)
本実施形態のインクジェット記録方法は、搬送エレメントにより基材を搬送する工程を備える。インクジェット記録装置が備えている搬送エレメントは、基材テーブル、基材供給機構等を用いて、上塗り印刷処理の対象となる基材を搬送する。
【0136】
(活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを基材に向けて吐出する工程)
次に、本実施形態のインクジェット記録方法は、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを基材に向けて吐出する工程を備える。上記説明した基材を搬送する工程により、基材供給機構により搬送された基材は、搬送路に沿って搬送される。
【0137】
さらに、搬送路に沿って搬送された基材は、搬送路の下流側部分に沿って設けられた画像記録装置に搬送される。画像記録装置に搬送された基材は、インクジェットヘッドユニットに到達する。インクジェットヘッドから、基材に向けて、以下の(A)~(C)成分、(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー(B)光重合開始剤(C)表面張力調整剤を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクであって、
前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度が3.0~6.0mPa・sである、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが吐出される。インクジェットヘッドは、搬送エレメントの上流側から搬送された基材にあらかじめ施された下地印刷に重ねるように、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを吐出する。
【0138】
(基材に活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布される工程)
また、本実施形態のインクジェット記録方法は、基材に活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布される工程を備えている。インクジェットヘッドから基材に向けて吐出された活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、基材に着弾する。基材に着弾した当該インクは、35℃における粘度が3.0~6.0mPa・sであるので、基材上において、セルフレベリング性を有する。このため、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクは、基材上において、当該インクからなる均一な塗膜を形成する。
【0139】
(活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを硬化する工程)
最後に、本実施形態のインクジェット記録方法は、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを硬化する工程を備える。基材上に形成された塗膜は、活性エネルギー源から照射される紫外線等の活性エネルギー線を受ける。
【0140】
基材上に形成された塗膜を構成する(A)成分である活性エネルギー線硬化性モノマーは、活性エネルギーを受けることによって(B)である光重合開始剤から発生する触媒活性種により、重合反応を開始する。(A)成分である活性エネルギー線硬化性モノマーが重合反応することにより、基材上に形成された塗膜は、硬化する。このように、上記工程を備えたインクジェット記録方法は、基材にあらかじめ施された下地印刷に重ねるように活性エネルギー線硬化性インクジェットインクからなる画像を形成することができる。本実施形態のインクジェット記録方法は、上記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いているので、画像の抜けがなく、画像のにじみがない高品質の画像をを提供することができる。
【0141】
<実施例>
以下、本発明を実施例によって、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0142】
[実施例1]
(活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの製造)
以下の(A)~(C)成分を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを製造した。
【0143】
(A)成分:活性エネルギー線硬化性モノマーとして、以下の4つのモノマー(A1)~(A4)を採択し、活性エネルギー線硬化性モノマー全体として、100重量部となるように混合させ、(A)成分の活性エネルギー線硬化性モノマーとした。さらに、活性エネルギー硬化性オリゴマーを(A)成分の活性エネルギー線硬化性モノマーを添加した。(A1):アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA〔商品名〕、日本触媒社製、粘度3.65mPa・s(25℃)、「VEEA」と略記した。)を20重量部、(A2):ブタンジオールジアクリレート(FA-124AS〔商品名〕、日立化成工業社製、粘度5mPa・s(25℃)、「FA124」と略記した。)を40重量部、(A3):テトラヒドロフルフリルアクリレート(V#150〔商品名〕、大阪有機化学工業社製、粘度2.8mPa・s(25℃)、「V150」と略記した。)を25重量部、(A4):2ーメチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート(MEDOL-10〔商品名〕、大阪有機化学工業社製、粘度5.1mPa・s(25℃)、「MEDOL」と略記した。)を15重量部、
さらに、上記(A)成分に活性エネルギー線硬化性オリゴマーを添加した。(活性エネルギー硬化性オリゴマー)成分:・アミン変性ポリエーテルアクリレート(EBECRYL80〔商品名〕、ダイセル・オルネクス社製粘度3000mPa・s(25℃)、「EBE80」と略記した。)を10重量部添加した。
【0144】
(B)成分:光重合開始剤として、以下の2つの光重合開始剤(B1)~(B2)を採択した。光重合開始剤全体として、8重量部となるように混合して、(B)成分の光重合開始剤とした。(B1):ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE 819〔商品名〕、BASF社製、「819」と略記した。)6重量部、(B2):2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(DAROCURE TPO〔商品名〕、BASF社製、「TPO」と略記した。)2重量部。
【0145】
(C)成分:表面張力調整剤として、以下の表面張力調整剤を採択した。ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン(BYK-UV3500〔商品名〕、BYK社製、「UV3500」と略記した。)0.01重量部。
【0146】
上記の成分を混合し、これを40℃で2時間混合撹拌して完全に溶解させた。その後、得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを含んだ溶液を1.0μmのメンブランフィルターを用いてろ過して、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを得た。
【0147】
なお、上記成分の配合割合に基づいて、実施例1で得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクに占める、粘度が8mPa・s以下の活性エネルギー線硬化性モノマーの含有率(重量%)を算出したところ、84.7%であった。
【0148】
(活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの粘度および表面張力)
実施例1で得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの粘度および表面張力を測定した。具体的には、実施例1において製造した活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの25℃、および35℃の粘度を東機産業社製粘度測定器:RE-85Lを用いて、定法に従って測定した。また、実施例1で得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの25℃の表面張力を英弘精機社製表面張力測定器:SITA t60を用いて、定法に従って、測定した。
【0149】
実施例1の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度を測定したところ、4.0mPa・sであった。
【0150】
以上、実施例1において、得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの組成、粘度および表面張力の物性を表1に示した。
【表1】
【0151】
(活性エネルギー線硬化性インクジェットインクによる基材への印刷)
実施例1で得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクをインクジェットヘッドに装着し、本実施形態のインクジェット実施形態記録装置を用いて、基材に印刷を行なった。インクジェット記録装置は、インクジェットヘッド加熱機能を有し、UV照射機能を備えたライン型ピエゾ式インクジェットプリンターである。
【0152】
基材として、黒一色で印刷された記録物Aおよび記録物Bを採用した。記録物Aおよび記録物Bは、異なる条件下において製造された。具体的には、記録物Aは、UVオフセット、またはコロナ処理されたラミネートフィルムされた記録物である。記録物Bは、乾式ナーを色材としたPOD印刷物である。
【0153】
基材への印刷は、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの塗膜の厚みが30μmとなるように当該インクを塗布し、UV照射を照射し、当該インクの塗膜を硬化させることによって行なった。基材への印刷は、黒一色で印刷された基材である記録物Aおよび記録物Bのそれぞれについて、100枚連続して行なった。
【0154】
(活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの評価)
実施例1で得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いて得られた印刷物を観察することにより、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの評価を行なった。活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの評価は、印刷物の(a)画像の抜け、(b)画像のにじみの両面から行なった。併せて、インクジェット記録装置からの吐出安定性を含めて、(c)活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの総合評価を行なった。
【0155】
(a)画像の抜け
画像の抜けの評価は、以下の基準により、行なった。
○:印刷物全面にわたって、画像の点抜けおよび画像の線抜けが全くなく、インクによる均一な塗膜が形成されている。△:印刷物の50mm×50mmのベタ部において、画像の点抜けが1~10箇所、または、画像の線抜け1~2本が発生している。×:印刷物の50mm×50mmのベタ部において、画像の点抜けが10箇所以上、または、画像の線抜け3本以上が発生している。
【0156】
(b)画像のにじみ
画像のにじみの評価は、以下の基準により、行なった。記録物A、および記録物Bに4ポイント(1.41mm)の線(塗膜厚み30μm)を印刷し、印刷後の線の太り割合を
評価した。
【0157】
○:線の太りが10%未満である。△1:線の太りが10%以上、20%未満である。△2:線が僅かにきれる。×1:線の太りが20%以上である。×2:点の連なりで、線を形成することができない。
【0158】
(c)総合評価
○:活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの吐出安定性が良好であり、印刷物の品質が満足できる記録物である。×:活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの吐出安定性が良好ではなく、印刷物の品質が満足できない記録物である。
【0159】
以上、実施例1において、得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの評価1(画像抜け)および評価2(にじみ)の結果を表2に示した。
【表2】
【0160】
[実施例2~8]
実施例1において製造された活性エネルギー線硬化性インクジェットインクに含有される(A)~(C)成分の種類、配合割合を変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2~8の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを製造した。また、実施例2~8で得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの粘度および表面張力を実施例1と同様にして測定した。
【0161】
実施例2~8において、新たに使用した活性エネルギー線硬化性モノマーは、以下のとおりである。(A)成分:ジプロピレングリコールジアクリレート(APG-100〔商品名〕、新中村化学社製 、粘度8mPa・s(25℃)、「APG100」と略記した
。)、ブチルシクロヘキサノールアクリレート(SR217 NS〔商品名〕、SARTOMER
社製、粘度9mPa・s(25℃)、「SR217」と略記した。)、イソボルニルアク
リレート(IBXA〔商品名〕、大阪有機化学工業社製、粘度7.7mPa・s(25℃)、「IBXA」と略記した。)実施例4、6~8においては、以下のポリマー成分を配合した。
【0162】
(ポリマー成分)ジアリルフタレートプレポリマー(ダップK〔商品名〕、ダイソー社製、「ダップK」と略記した。)
実施例2~8において、得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの組成、粘度および表面張力の物性を表1に示した。なお、実施例2~8において、得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度は、4.2~6.0mPa・sであった。
【0163】
[比較例1~3]
比較例1~3において製造された活性エネルギー線硬化性インクジェットインクに含有される(A)~(C)成分の種類、配合割合を変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1~3の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを製造した。また、比較例1~3で得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの粘度および表面張力を実施例1と同様にして測定した。
【0164】
比較例1~3において、新たに使用した活性エネルギー線硬化性モノマーは、以下のとおりである。
【0165】
(A)成分:トリジプロピレングリコールジアクリレート(APG-200〔商品名〕、新中村化学社製、粘度12mPa・s(25℃)、「APG200」と略記した。)
比較例1~3において、得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの組成、粘度および表面張力の物性を表1に示した。なお、比較例1~3において、得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度は、3.0~6.0mPa・sの範囲に含まれないものであった。具体的には、比較例1(2.9mPa・s)、比較例2(6.2mPa・s)、比較例3(7.1mPa・s)であった。
【0166】
表1によれば、実施例1~8で得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度は、3.0~6.0mPa・sの範囲に含まれていることが明らかになった。一方、比較例1~3で得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度は、3.0~6.0mPa・sの範囲に含まれていないことが明らかとなった。
【0167】
さらに、表2によれば、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度が6.0mPa・s以下であると、当該インクは、セルフレベリング性に優れ、均一な塗膜を得ることができることが明らかとなった。
【0168】
すなわち、35℃における粘度が6.0mPa・s以下の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いて、画像を形成すると、画像の線抜けがなく、かつ、画像のにじみがない、良好な画像を得ることができることが明らかとなった。
【0169】
また、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度が3.0mPa・s以上であると、インクジェット記録装置を使用して、当該インクを吐出した場合、吐出安定性にきわめて優れることが判明した。
【0170】
各種記録物の表面張力[X]mN/mと、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力[Y]との関係を勘案し、これらの差である[X]mN/m-[Y]mN/mの値を一定範囲に調整することによって、画像の線抜けがなく、かつ、画像のにじみがない、良好な画像を得ることができることが判明した。すなわち、記録物の種類により、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの表面張力を最低限適正な範囲に調整することにより、画像の抜けがなく、かつ画像のにじみがない、きわめて良好な画像を得ることができることが明らかとなった。
【0171】
図5は、実施例1で得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いて形成された印刷物の一例を示した図である。図6は、図5の一部を拡大した拡大図である。図5に実施例1で得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いて形成された印刷物を示した。図6に実施例1で得られた活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いて形成された拡大印刷物を示した。
【0172】
図5に示されるように、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いて形成された印刷物は、画像の線抜けがなく、かつ、画像のにじみがない、良好な画像であり、きわめて高品質な画像であることが明瞭に理解される。
【0173】
さらに、図6に示されるように、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを用いて形成された印刷物は、下地印刷された基材との関係において「にじみ」がない。しかも、この印刷物は、下地印刷された文字、図形等と略同一形状を維持しつつ、垂直方向に盛り上がった立体的形状を備えている。
【0174】
そして、活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布されていない基材と、文字、図形等の下地印刷の上に活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布されている基材との境界は、文字、図形等の下地印刷に沿って明瞭に区別されて形成されている。
【0175】
そして、図6に示された印刷物を構成する文字、図形等の下地印刷が有する画像の輪郭は、シャープとなっている。
【0176】
図6に示された印刷物は、本実施形態の活性エネルギー線硬化性インクジェットインクによりオーバーコートされた基材であるので、基材から立体的に盛り上がった形状を有し、基材自体または下地印刷の画像の色彩と相俟って、意匠的にきわめて優れたものとなっている。
[態様1]
以下の(A)~(C)成分
(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー
(B)光重合開始剤
(C)表面張力調整剤
を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクであって、
前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度が3.0~6.0mPa・sである活性エネルギー線硬化性インクジェットインクである。
[態様2]
25℃における粘度が、4.5~9.0mPa・sである態様1に係る活性エネルギー線硬化性インクジェットインクである。
[態様3]
表面張力が、19~33mN/mである態様1に係る活性エネルギー線硬化性インクジェットインクである。
[態様4]
25℃における粘度が、2.0~8.0mPa・sである前記(A)活性エネルギー線硬化性モノマーを少なくとも50重量%以上含有する態様1に係る活性エネルギー線硬化性インクジェットインクである。
[態様5]
さらに、着色剤を含有し、有色透明性または無色透明性を有する態様1に係る活性エネルギー線硬化性インクジェットインクである。
[態様6]
基材上に、態様1~5のいずれか1つの態様に係る活性エネルギー線硬化性インクジェットインクにより画像または塗膜を形成した後、前記画像または前記塗膜に活性エネルギー線を照射することによって形成された印刷物である。
[態様7]
基材を搬送する搬送エレメントと、
前記搬送エレメントにより搬送された前記基材に対し、ノズルから、以下の(A)~(C)成分
(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー
(B)光重合開始剤
(C)表面張力調整剤
を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクであって、
前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度が3.0~6.0mPa・sである活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを前記基材に向けて吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドから吐出される前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの吐出時の温度を35~40℃に保って、前記インクジェットヘッドから吐出された前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布された前記基材に対して、活性エネルギー線と、
を照射する活性エネルギー源を備えたインクジェット記録装置である。
[態様8]
前記インクジェットヘッドは、前記搬送エレメント上に配置され、
前記搬送エレメントによって搬送される前記基材の搬送直交方向に前記ノズルが列設されている態様7に係るインクジェット記録装置である。
[態様9]
搬送エレメントにより基材を搬送する工程と、
前記搬送エレメントにより搬送された前記基材に対向してノズルが設けられたインクジェットヘッドにより、以下の(A)~(C)成分
(A)活性エネルギー線硬化性モノマーおよび/または活性エネルギー線硬化性オリゴマー
(B)光重合開始剤
(C)表面張力調整剤
を含有する活性エネルギー線硬化性インクジェットインクであって、前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクの35℃における粘度が3.0~6.0mPa・sである活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを前記基材に向けて吐出する工程と、
前記基材に前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布される工程と、
前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクが塗布された前記基材に対して、活性エネルギー線を照射することによって、前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクを硬化される工程と、
を含むインクジェット記録方法である。
[態様10]
前記基材上において、前記活性エネルギー線硬化性インクジェットインクからなる均一な塗膜を形成する工程をさらに含む態様9に係るインクジェット記録方法である。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6