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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/16 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
H02K33/16 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019035525
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020141484
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】北原 裕士
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013086(JP,A)
【文献】実開昭57-038451(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
可動体と、
前記可動体と前記支持体とに接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、
前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路と、を有し、
前記磁気駆動回路は、前記支持体および前記可動体のうちの一方側部材に設けられたコイルと、前記支持体および前記可動体のうちの他方側部材に設けられて前記コイルに第1方向で対向する磁石と、を備え、前記可動体を前記第1方向に対して交差する第2方向に駆動し、
前記可動体は、前記コイルおよび前記磁石を挟んで前記第1方向で対向する第1板部および第2板部と、前記第1板部と前記第2板部とを接続し、前記コイルおよび前記磁石を挟んで前記第2方向で対向する一対の接続部と、を備え、
前記可動体は、前記第2方向の一方側の端部に前記一対の接続部の一方が配置され、前記第2方向の他方側の端部に前記一対の接続部の他方が配置され、
前記一対の接続部は、それぞれ、前記第2方向で前記コイルおよび前記磁石とは反対側へ向かうに従って前記第1方向の高さが減少する先細り形状であり、
前記先細り形状は、最も突出して角となる先端部を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記先端部は、前記第1板部および前記第2板部と前記接続部との接続位置を通るとともに前記第1方向において前記第1板部の外側面および前記第2板部の外側面の間の長さを直径とした半円より外側に突出した形状であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記可動体は、前記磁石を保持するヨークを備え、
前記ヨークは、前記第1板部および前記第2板部と、前記一対の接続部とを備え、
前記磁石は、前記第1板部と前記第2板部の少なくとも一方に固定されることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記一対の接続部のそれぞれは、前記第1板部と一体に形成された第1接続部分、およ
び、前記第2板部と一体に形成された第2接続部分を備え、
前記第1接続部分と前記第2接続部分は、前記第1方向に対して垂直な面を基準として対称な形状であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記一対の接続部のそれぞれは、開口部または切欠き部を備えた板部であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記一対の接続部のそれぞれは、前記第1板部と前記第2板部に接続される柱状部であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を振動させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、情報を振動によって報知するデバイスとして用いられるアクチュエータが開示される。特許文献1のアクチュエータは、永久磁石を備えた可動体と、永久磁石と対向するコイルを備えた支持体とを有する。可動体は、振動方向と直交する方向で対向する第1ヨークおよび第2ヨークを備えており、第1ヨークと第2ヨークの間にコイルが配置される。永久磁石は、第1ヨークに固定される第1磁石、および、第2ヨークに固定される第2磁石を備える。第1磁石および第2磁石は、コイルに対して振動方向と直交する方向で対向する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-13095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアクチュエータでは、永久磁石を保持する第1ヨークと第2ヨークのうち、第1ヨークは、第1磁石を保持する第1板部と、第1板部の両端からそれぞれ第2ヨークの側へ折れ曲がって延びる一対の接続部(第1連結板部および第2連結板部)を備えている。第2ヨークは、第1連結板部と第2連結板部に両端が固定される。第1連結板部および第2連結板部は、振動方向に対して垂直な壁状である。
【0005】
このように、可動体が振動方向に対して垂直な壁状の接続部(第1連結板部および第2連結板部)を備えていると、可動体が振動する際に空気が動くため、音が発生するという問題がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、磁石とコイルとが対向する磁気駆動回路と、磁石とコイルの一方を備えた可動体と、他方を備えた支持体とを有するアクチュエータにおいて、可動体によって空気が押されることによる動作音を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、支持体と、可動体と、前記可動体と前記支持体とに接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路と、を有し、前記磁気駆動回路は、前記支持体および前記可動体のうちの一方側部材に設けられたコイルと、前記支持体および前記可動体のうちの他方側部材に設けられて前記コイルに第1方向で対向する磁石と、を備え、前記可動体を前記第1方向に対して交差する第2方向に駆動し、前記可動体は、前記コイルおよび前記磁石を挟んで前記第1方向で対向する第1板部および第2板部と、前記第1板部と前記第2板部とを接続し、前記コイルおよび前記磁石を挟んで前記第2方向で対向する一対の接続部と、を備え、前記可動体は、前記第2方向の一方側の端部に前記一対の接続部の一方が配置され、前記第2方向の他方側の端部に前記一対の接続部の他方が配置され、前記一対の接続部は、それぞれ、前記第2方向で前記コイルおよび前記磁石とは反対側へ向かうに従って前記第1方向の高さが減少する先細り形状であり、前記先細り形状は、最も突出して角となる先端部を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、磁気駆動回路によって振動する可動体の振動方向(第2方向)の両端部は、それぞれ、第2方向で先端側へ向かうにしたがって幅が減少する先細り形状である。従って、可動体の振動時に空気を押す面が振動方向に対して傾いた面になり、可動体の形状が流線形状に近づく。従って、空気を押す面が垂直面である場合と比較して、可動体の振動時の空気の動きによって発生する音を低減させることができる。また、このようにすると、コイルおよび磁石を囲む部材の振動方向の両端が先細り形状になる。従って、可動体の形状が流線形状に近づくため、可動体の振動時の空気の動きによって発生する音を低減させることができる。
【0010】
本発明において、前記先端部は、前記第1板部および前記第2板部と前記接続部との接続位置を通るとともに前記第1方向において前記第1板部の外側面および前記第2板部の外側面の間の長さを直径とした半円より外側に突出した形状であることが好ましい。このようにすると、可動体を流線形状により近づけることができる。従って、可動体の振動時の空気の動きによって発生する音をより低減させることができる。
【0011】
本発明において、前記可動体は、前記磁石を保持するヨークを備え、前記ヨークは、前記第1板部および前記第2板部と、前記一対の接続部とを備え、前記磁石は、前記第1板部と前記第2板部の少なくとも一方に固定されることが好ましい。このようにすると、磁石とコイルがヨークで囲まれるため、漏れ磁束を少なくすることができる。従って、漏れ磁束によるアクチュエータの出力の低減を抑制できる。
【0012】
本発明において、前記一対の接続部のそれぞれは、前記第1板部と一体に形成された第1接続部分、および、前記第2板部と一体に形成された第2接続部分を備え、前記第1接続部分と前記第2接続部分は、前記第1方向に対して垂直な面を基準として対称な形状であることが好ましい。このようにすると、磁石とコイルを第1方向の一方側から囲む部材(第1板部および第1接続部分によって構成される部材)と、磁石とコイルを第1方向の他方側から囲む部材(第2板部および第2接続部分によって構成される部材)とを同一形状にすることができる。従って、部品形状の共通化を図ることができ、部品の製造コストおよび管理コストを低減させることができる。
【0013】
本発明において、前記一対の接続部のそれぞれは、開口部または切欠き部を備えた板部であることが好ましい。接続部が開口部または切欠き部を備えていれば、可動体の振動時に空気を押す面積を少なくすることができる。従って、可動体の振動時の空気の動きによって発生する音を低減させることができる。
【0014】
あるいは、本発明において、前記一対の接続部のそれぞれは、前記第1板部と前記第2板部に接続される柱状部であってもよい。接続部が柱状部であれば、可動体の振動時に空気を押す面積が少ない。従って、可動体の振動時の空気の動きによって発生する音を低減させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁気駆動回路によって振動する可動体の振動方向(第2方向)の両端部は、それぞれ、第2方向で先端側へ向かうにしたがって幅が減少する先細り形状である。従って、可動体の振動時に空気を押す面が振動方向に対して傾いた面になり、可動体の形状が流線形状に近づく。従って、空気を押す面が垂直面である場合と比較して、可動体の振動時の空気の動きによって発生する音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用したアクチュエータの外観斜視図である。
図2図1に示すアクチュエータの断面斜視図である。
図3図1に示すアクチュエータの分解斜視図である。
図4】第1ケース部材および第2ケース部材を取り外したアクチュエータを第1方向の他方側からみた分解斜視図である。
図5】第1ケース部材および第2ケース部材を取り外したアクチュエータを第1方向の一方側からみた分解斜視図である。
図6】可動体を第3方向の一方側から見た形状を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明の実形態を説明する。なお、以下の説明において、互いに交差する3つの方向を各々、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yとして説明する。また、第2方向Xの一方側にX1を付し、第2方向Xの他方側にX2を付し、第3方向Yの一方側にY1を付し、第3方向Yの他方側にY2を付し、第1方向Zの一方側にZ1を付し、第1方向Zの他方側にZ2を付して説明する。本形態では、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yは、互いに直交する方向である。第2方向Xは、可動体3の振動方向である。
【0018】
本発明を適用したアクチュエータ1の磁気駆動回路6では、コイル7が支持体2(一方側部材)の側に設けられ、磁石8が可動体3(他方側部材)の側に設けられた態様、および磁石8が支持体2(他方側部材)の側に設けられ、コイル7が可動体3(一方側部材)の側に設けられた態様を採用することができる。以下に説明する実施形態は、コイル7が支持体2の側に設けられ、磁石8が可動体3の側に設けられている。
【0019】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したアクチュエータ1の斜視図である。図2は、図1に示すアクチュエータ1の断面斜視図であり、図1のA-A位置で切断したである。図3は、図1に示すアクチュエータ1の分解斜視図である。図4図5は、第1ケース部材16および第2ケース部材17を取り外したアクチュエータ1の解斜視図であり、図4は第1方向Zの他方側Z2からみた分解斜視図であり、図5は第1方向Zの一方側Z1からみた分解斜視図である。
【0020】
図1図2に示すように、アクチュエータ1は、全体として、第2方向Xの寸法が第3方向Yの寸法および第1方向Zの寸法より大きい直方体形状である。アクチュエータ1は、支持体2と、支持体2に移動可能に支持された可動体3と、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動回路6とを有する。磁気駆動回路6は、コイル7および磁石8を備えており、可動体3を第2方向Xに振動させる。可動体3は、支持体2と可動体3の間に配置された接続体91、92を介して支持体2に支持される。接続体91、92は、後述するように、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える。
【0021】
アクチュエータ1は、可動体3が第2方向Xに振動することにより、アクチュエータ1や、アクチュエータ1を取り付けた機器等を利用する者の身体を通して利用者に情報を報知する。アクチュエータ1は、例えば、ゲーム機の操作部材、操作パネル、自動車のハンドルやいす等に組み込んで利用することができ、可動体3の第2方向Xの振動によって利用者に触覚を与える触覚デバイスとして使用することができる。アクチュエータ1を触覚デバイスとして使用する際、例えば、コイル7に印加する交流波形を調整して、可動体3が第2方向Xの一方側X1に移動する加速度と、可動体3が第2方向の他方側X2に移動する加速度とを相違させれば、利用者は、第2方向Xにおいて方向性を有する振動を体感することができる。
【0022】
(支持体)
図1図2および図3に示すように、支持体2は、第1方向Zの一方側Z1から他方側Z2に順に重ねられた第1ケース部材16、ホルダ60、および第2ケース部材17を有する。第1ケース部材16と第2ケース部材17との間に可動体3および磁気駆動回路6が配置される。第1ケース部材16、ホルダ60および第2ケース部材17は各々、第1方向Zから見て第3方向Yの幅が第2方向Xの幅より小さい長方形である。第1ケース部材16の角部である第1角部160、ホルダ60の角部である第2角部600、および第2ケース部材17の角部である第3角部170は第1方向Zで重なっている。本形態では、第1ケース部材16、ホルダ60、および第2ケース部材17は各々、樹脂製である。
【0023】
支持体2を組み立てる際には、第1ケース部材16、ホルダ60および第2ケース部材17を第1方向Zに重ねた状態で、第2ケース部材17の貫通穴17e、ホルダ60の貫通穴60e、および第1ケース部材16の貫通穴16eにネジ18を止め、第1ケース部材16、ホルダ60および第2ケース部材17を第1方向Zで締結する。また、第1ケース部材16の第1角部160とホルダ60の第2角部600との間、および、ホルダ60の第2角部600と第2ケース部材17の第3角部170との間に接着剤が配置される。
【0024】
また、第1ケース部材16、ホルダ60、および第2ケース部材17を組み立てて支持体2を形成する際、第1ケース部材16の凸部161h、162hは各々、ホルダ60の穴61h、62hを貫通して第2ケース部材17の穴171h、172hに嵌まる。また、第1ケース部材16の穴16cにホルダ60の凸部60c(図5参照)が嵌まり、第2ケース部材17の凹部(図示省略)にホルダ60の凸部60dが嵌まる。従って、第1ケース部材16、ホルダ60および第2ケース部材17は互いに位置決めされた状態で連結される。
【0025】
なお、第2ケース部材17の貫通穴17f、ホルダ60の貫通穴60f、および第2ケース部材17の貫通穴17fは、アクチュエータ1を各種機器に搭載する際、機器のフレームに対してアクチュエータ1を固定するネジ(図示せず)が配置される。
【0026】
図3に示すように、第1ケース部材16は、第2方向Xの一方側X1に位置する第1壁部161と、第2方向Xの他方側X2に位置する第2壁部162と、第3方向Yの一方側Y1に位置する第3壁部163と、第3方向Yの他方側Y2に位置する第4壁部164とによって囲まれた底板部165を有している。底板部165の第1方向Zの他方側Z2の面には、第2方向Xで並ぶ2つの凹部166、167が形成されている。
【0027】
第3壁部163の外面には、第3方向Yの他方側Y2に凹んだ凹部168が設けられている。また、第3壁部163には、第1方向Zの他方側Z2に突出した複数の凸板部163aが第2方向Xに沿って所定の間隔に形成されている。
【0028】
図2図3に示すように、第2ケース部材17は、第2方向Xの一方側X1に位置する第1壁部171と、第2方向Xの他方側X2に位置する第2壁部172と、第3方向Yの一方側Y1に位置する第3壁部173と、第3方向Yの他方側Y2に位置する第4壁部(図示省略)とによって囲まれた底板部175を有している。図2に示すように、底板部175の第1方向Zの一方側Z1の面には、第2方向Xで並ぶ2つの凹部176、177が形成されている。また、第3壁部173の外面では、第3方向Yの他方側Y2に凹んだ凹部178が設けられている
【0029】
(磁気駆動回路)
図2に示すように、磁気駆動回路6は、コイル7と、コイル7に対して第1方向Zで対向する磁石8とを有する。コイル7は、第2方向Xで並列するように配置された第1コイ
ル71および第2コイル72を備える。コイル7は、支持体2のうち、ホルダ60に保持される。図4図5に示すように、コイル7は、第3方向Yに長辺701(有効辺)が延在する長円形状の空芯コイルであり、第3方向Yの一方側Y1にコイル線の端部705が引き出されている。
【0030】
磁石8は、可動体3に設けられている。磁石8は、第1コイル71および第2コイル72に対して第1方向Zの一方側Z1で対向する第1磁石81および第2磁石82と、第1コイル71および第2コイル72に対して第1方向Zの他方側Z2で対向する第1磁石83および第2磁石84とを備える。第1磁石81および第2磁石82は、第1コイル71の長辺701と第1方向Zで対向する。また、第1磁石83および第2磁石84は、第2コイル72の長辺701と第1方向Zで対向する。
【0031】
第1磁石81、83、および第2磁石82、84は各々、厚さ方向(第1方向Z)および幅方向(X方向)で分極着磁されている。図4図5に示すように、第1磁石81の第2磁石82側の磁極と第2磁石82の第1磁石81側の磁極とが異なっており、第1磁石83の第2磁石84側の磁極と第2磁石84の第1磁石83側の磁極とが異なっている。また、第1磁石81と第1磁石83は、第1コイル71に対向する面の磁極が異なっており、第2磁石82と第2磁石84は、第2コイル72に対向する面の磁極が異なっている。
【0032】
(ホルダ)
図4図5に示すように、ホルダ60は、第2方向Xの一方側X1に位置する第1壁部61と、第2方向Xの他方側X2に位置する第2壁部62と、第3方向Yの一方側Y1に位置する第3壁部63と、第3方向Yの他方側Y2に位置する第4壁部64とによって囲まれた底板部65を有している。
【0033】
底板部65には、2つのコイル保持穴651、652が第2方向Xで並列するように形成されており、コイル保持穴651、652の各々に第1コイル71および第2コイル72が配置される。コイル保持穴651、652は貫通穴であり、第3方向Yの両端部には、第1方向Zの他方側Z2でコイル保持穴651、652の一部に重なるように張り出した受け部641、642が形成されている。従って、第1コイル71および第2コイル72を第1方向Zの一方側Z1からコイル保持穴651、652に装着すると、コイル7の短辺702(無効部分)が受け部641、642によって第1方向Zの他方側Z2で支持される。この状態で、ホルダ60には第1方向Zの一方側Z1からプレート26が重ねられ、プレート26は、接着剤によって第1コイル71および第2コイル72と固定されるとともに、ホルダ60に固定される。プレート26は、例えば、アルミニウムやステンレス等の非磁性の金属板である。
【0034】
ホルダ60には、コイル保持穴651と第1壁部61との間に第1開口部601が形成され、コイル保持穴652と第2壁部62との間に第2開口部602が形成されている。第1開口部601、および第2開口部602はホルダ60の底板部65を第1方向Zで貫通している。
【0035】
第3壁部63の外面では、第3方向Yの他方側Y2に凹んだ凹部630が設けられている。凹部630には、第1方向Zの一方側Z1に開口した切欠き状の引き出し部68が第2方向Xに沿って複数、形成されている。また、凹部630には、第3方向Yの一方側Y1に突出した係合凸部69が第2方向Xに沿って複数、形成されている。本形態において、係合凸部69は3か所に形成されている。
【0036】
(配線基板)
図1図3に示すように、配線基板15は、ホルダ60の第3壁部63の外面に固定される。図4図5に示すように、配線基板15には、ホルダ60の引き出し部68と重なる位置に切欠き158が形成されている。また、配線基板15には、ホルダ60の係合凸部69と重なる位置に係合穴159が形成されている。本形態では、3つの係合穴159のうち、中央の係合穴159は、切欠き状である。
【0037】
配線基板15は、係合凸部69と係合穴159とが係合した状態で、ホルダ60の第3壁部63の外面に接着剤により固定されている。配線基板15には、第1コイル71の端部705、および第2コイル72の端部705が電気的に接続されるランド151と、外部からの配線部材(図示せず)が電気的に接続されるランド152とが形成されている。第1コイル71の端部705および第2コイル72の端部705は、引き出し部68を介してランド151まで引き回された後、ハンダによりランド151に電気的に接続される。
【0038】
(可動体)
可動体3は、磁石8およびヨーク80を備える。図2図4図5に示すように、ヨーク80は、コイル7(第1コイル71および第2コイル72)に対して第1方向Zの一方側Z1に位置する第1板部860を備えた第1ヨーク86と、コイル7に対して第1方向Zの他方側Z2に位置する第2板部870を備えた第2ヨーク87を備える。磁石8は、第1板部860のコイル7と対向する面に接着等の方法で固定された第1磁石81および第2磁石82と、第2板部870のコイル7と対向する面に接着等の方法で固定された第1磁石83および第2磁石84を備える。
【0039】
ヨーク80は、第1板部860と第2板部870とを接続する一対の接続部88を備える。第1板部860と第2板部870は、コイル7および磁石8を挟んで第1方向Zで対向する。また、一対の接続部88は、コイル7および磁石8を挟んで第2方向Xで対向する。各接続部88は、第1板部860の第2方向Xの一方側X1および他方側X2の端部からそれぞれ第1方向Zの他方側Z2へ延びる第1接続部分881と、第2板部870の第2方向Xの一方側X1および他方側X2の端部からそれぞれ第1方向Zの一方側Z1へ延びる第2接続部分882を備える。
【0040】
このように、本形態では、第1ヨーク86が第1接続部分881を備えており、第1接続部分881は、第1板部860と一体に形成されている。また、第2ヨーク87が第2接続部分882を備えており、第2接続部分882は、第2板部870と一体に形成されている。第1接続部分881の第1方向Zの他方側Z2の端部は、溶接により、第2接続部分882の第1方向Zの一方側Z1の端部に固定される。第1接続部分881および第2接続部分882は、第1方向Zに対して傾斜する方向へ延びている。このため、各接続部88は、コイル7および磁石8とは反対側へ向かうにしたがって第1方向Zの寸法(高さ)が減少する先細り形状となっている。第1接続部分881の第1方向Zの他方側Z2の端部と、第2接続部分882の第1方向Zの一方側Z1の端部とは、接着剤等、他の方法で固定されていてもよい。
【0041】
可動体3と支持体2とを組み立てると、図2図3に示すように、一対の接続部88(第1接続部分881および第2接続部分882)のうちの一方は、コイル7および磁石8に対して第2方向Xの一方側X1でホルダ60の第1開口部601に配置される。また、一対の接続部88のうちの他方は、コイル7および磁石8に対して第2方向Xの他方側Z2でホルダ60の第2開口部602に配置される。一対の接続部88は、第1開口部601および第2開口部602において、第2方向Xに移動可能である。可動体3が第2方向Xに振動する際の可動範囲は、第1開口部601の第2方向Xの一方側X1に配置される第1壁部61、および、第2開口部602の第2方向Xの他方側X2に配置される第2壁
部62によって規制される。
【0042】
図2に示すように、可動体3は、第2方向Xの一方側X1および他方側X2の端部が、第2方向Xの先端側へ向かうにしたがって第1方向Zの寸法(高さ)が減少する先細り形状である。本形態では、可動体3の第2方向Xの一方側X1の端部に一対の接続部88の一方が配置され、可動体3の第2方向Xの他方側X2の端部に一対の接続部88の他方が配置される。上記のように、各接続部88は、第2方向Xで先端側へ向かうにしたがって第1方向Zの高さが減少する先細り形状である。このように、可動体3の第2方向Xの一方側X1および他方側X2の端部を先細り形状にしたことにより、可動体3の形状が流線形状に近づく。従って、可動体3が振動する際の空気の動きによって発生する音を低減させることができる。
【0043】
図6は、可動体3を第3方向Yの一方側Y1から見た形状を模式的に示す説明図である。本形態では、可動体3の振動方向(第2方向X)の両端に設けられている接続部88は、コイル7および磁石8とは反対側へ突出した凸形状である。接続部88は、最も第2方向Xに突出した先端部Pが、第1板部860および第2板部870と接続部88との接続位置P1、P2を通る半円Rの第2方向Xの先端より突出した形状である。
【0044】
本形態では、第1接続部分881および第2接続部分882は、第1方向Zに対して垂直な仮想面Sを基準として対称な形状である。従って、第1ヨーク86と第2ヨーク87は、同一形状の部材である。
【0045】
図4に示すように、第1ヨーク86は、第1板部860から突出して第1磁石81および第2磁石82の位置決めを行うための位置決め凸部865を備える。位置決め凸部865は、第1磁石81と第2磁石82との間で第3方向Yで離間する2箇所、第1磁石81の第3方向Yの両側2箇所、および、第2磁石82の第3方向Yの両側2箇所に設けられている。
【0046】
図5に示すように、第2ヨーク87は、第2板部870から突出して第1磁石83および第2磁石84の位置決めを行うための位置決め凸部875を備える。位置決め凸部875は、第1磁石83と第2磁石84との間で第3方向Yで離間する2箇所、第1磁石83の第3方向Yの両側2箇所、および、第2磁石84の第3方向Yの両側2箇所に設けられている。
【0047】
(接続体)
図2に示すように、アクチュエータ1は、支持体2と可動体3との間に配置される接続体91、92を備える。可動体3は、接続体91、92によって第2方向Xに移動可能に支持される。接続体91、92は、支持体2と可動体3とが第1方向Zで対向する個所に配置される。接続体91は、第1ヨーク86と第1ケース部材16とが第1方向Zで対向する個所に配置される。また、接続体92は、第2ヨーク87と第2ケース部材17とが第1方向Zで対向する個所に配置される。接続体91は、第1ヨーク86の第1板部860と第1ケース部材16の凹部166、167との間で第1方向Zに圧縮された状態で配置される。また、接続体92は、第2ヨーク87の第2板部870と第2ケース部材17の凹部176、177との間で第1方向Zに圧縮された状態で配置される。
【0048】
接続体91、92は、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える。本形態では、接続体91、92は粘弾性部材である。例えば、接続体91、92(粘弾性部材)は、針入度が10度から110度であるシリコーン系ゲルである。針入度とは、JIS-K-2207やJIS-K-2220で規定されており、この値が小さい程、硬いことを意味する。また、粘弾性を備えた接続体91、92として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチ
レン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム)、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。
【0049】
接続体91、92は、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。例えば、接続体91、92は、その厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分(バネ係数)よりも非線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。これに対して、厚さ方向(軸方向)に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。また、接続体91、92は、厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、いずれの方向に動いても、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を持つ。
【0050】
本形態において、可動体3が第2方向Xに振動した際、接続体91、92は、せん断方向に変形する。従って、接続体91、92では、可動体3が第2方向Xに振動した際、せん断方向のバネ要素を用いることにより、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスをもった振動を実現することができる。
【0051】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のアクチュエータ1は、支持体2と、可動体3と、可動体3と支持体2とに接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体91、92と、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動回路6と、を有し、磁気駆動回路6は、支持体2および可動体3のうちの一方側部材(本形態では、支持体2)に設けられたコイル7と、支持体2および可動体3のうちの他方側部材(本形態では、可動体3)に設けられてコイル7に第1方向Zで対向する磁石8と、を備える。磁気駆動回路6は、可動体3を第1方向Zに対して交差する第2方向Xに駆動する。また、可動体3の第2方向Xの一方側および他方側の端部は、それぞれ、第2方向Xで先端側へ向かうに従って第1方向Zの高さが減少する先細り形状である。
【0052】
このように、本形態では、磁気駆動回路6によって振動する可動体3の振動方向(第2方向X)の両端部を、それぞれ、第2方向Xの先端側へ向かうに従って第1方向Zの高さが減少する先細り形状にしている。従って、可動体3の振動時に空気を押す部分が振動方向に対して垂直になっている場合と比較して、可動体3の振動時の空気の動きによって発生する音を低減させることができる。よって、アクチュエータ1の動作音を低減させることができる。
【0053】
本形態では、可動体3は、コイル7および磁石8を挟んで第1方向Zで対向する第1板部860および第2板部870と、第1板部860と第2板部870とを接続し、コイル7および磁石8を挟んで第2方向Xで対向する一対の接続部88と、を備えており、一対の接続部88は、それぞれ、第2方向Xでコイル7および磁石8とは反対側へ向かうに従って第1方向Zの高さが減少する先細り形状である。従って、コイル7および磁石8を囲む部材(ヨーク80)の振動方向の両端が先細り形状になっているので、可動体3の振動時の空気の動きによって発生する音を低減させることができる。
【0054】
本形態では、可動体3の振動方向(第2方向X)の両端に設けられた先細り形状は、最も第2方向Xに突出した先端部Pが、第1板部860および第2板部870と接続部88との接続位置を通る半円Rの第2方向Xの先端より突出した形状である。従って、可動体3が流線形状により近い形状となっているため、可動体3の振動時の空気の動きによって
発生する音をより低減させることができる。
【0055】
本形態では、可動体3は、磁石8を保持するヨーク80を備え、ヨーク80は、第1板部860を備えた第1ヨーク86と、第2板部870を備えた第2ヨーク87と、一対の接続部88と、を備え、磁石8は、第1板部860と第2板部870の少なくとも一方に固定されている。従って、磁石8とコイル7がヨーク80で囲まれているため、漏れ磁束を少なくすることができる。従って、漏れ磁束によるアクチュエータの出力の低減を抑制できる。
【0056】
本形態では、一対の接続部88のそれぞれは、第1板部860と一体に形成された第1接続部分881、および、第2板部870と一体に形成された第2接続部分882を備え、第1接続部分881と第2接続部分882は、第1方向Zに対して垂直な仮想面Sを基準として対称な形状である。従って、第1板部860および第1接続部分881を備えた部材(第1ヨーク86)と、第2板部870および第2接続部分882を備えた部材(第2ヨーク87)とが同一形状になっているので、部品形状の共通化を図ることができる。よって、部品の製造コストおよび管理コストを低減させることができる。
【0057】
本形態では、第1接続部分881は、第1方向Zで第1板部860から離れるに従って第2方向Xでコイル7および磁石8とは反対側へ向かう方向に傾斜し、第2接続部分882は、第1方向Zで第2板部870から離れるに従って第2方向Xでコイル7および磁石8とは反対側へ向かう方向に傾斜する形状である。従って、第1接続部分881の先端に対して第2接続部分882の先端を固定することにより、先細り形状の接続部88を形成することができる。また、第1接続部分881と第2接続部分882が異なる方向へ傾斜する平板状の形態であるため、先端が尖った形状の接続部88を形成できる。接続部88の先端が尖っていることにより、可動体3の形状がより流線型に近づくので、可動体3の振動時の空気の動きによって発生する音をより低減させることができる。
【0058】
[他の実施形態]
(1)上記形態では、一対の接続部88が板状であったが、一対の接続部88の少なくとも一方に開口部または切欠き部を設けることができる。開口部または切欠き部を設けることにより、可動体3の振動時に空気が当たる面積を小さくすることができる。従って、可動体3の振動時の空気の動きによって発生する音を低減させることができる。
【0059】
(2)上記形態では、一対の接続部88が板状であったが、一対の接続部88の少なくとも一方を柱状にすることができる。柱状であれば、可動体3の振動時に空気が当たる面積が小さい。従って、可動体3の振動時の空気の動きによって発生する音を低減させることができる。
【0060】
(3)上記形態では、接続部88は、先端が尖った先細り形状であったが、先端が湾曲した先細り形状であってもよい。
【0061】
(4)上記形態では、可動体3は、振動方向(第2方向X)の両側へ向かうに従ってコイル7と磁石8が対向する方向(第1方向Z)の幅が減少する先細り形状であったが、振動方向(第2方向X)の両側へ向かうに従って第3方向Yの幅が減少する先細り形状であってもよい。
【0062】
(5)上記形態では、コイル7およびホルダ60が支持体2に設けられ、磁石8およびヨーク80が可動体3に設けられていたが、コイルおよびホルダが可動体3に設けられ、磁石およびヨークが支持体2に設けられているアクチュエータに本発明を適用してもよい。
【0063】
(6)上記形態では、接続体91、92としてゲル状部材(粘弾性部材)を用いたが、ゴムやバネ等を用いてもよい。
【0064】
(7)上記形態は、コイル7に対する第1方向Zの両側に磁石8を配置しているが、コイル5に対する第1方向Zの一方側Z1または他方側Z2のみに磁石8を配置したアクチュエータに本発明を適用してもよい。また、上記形態は、第1方向Zで対向するコイル7と磁石8の組を2組備えているが、第1方向Zで対向するコイル7と磁石8の組を1組または3組以上備えたアクチュエータに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…アクチュエータ、2…支持体、3…可動体、6…磁気駆動回路、7…コイル、8…磁石、15…配線基板、16…第1ケース部材、16c…穴、16e…貫通穴、17…第2ケース部材、17e、17f…貫通穴、18…ネジ、26…プレート、60…ホルダ、60e、60f…貫通穴、60c、60d…凸部、61h、62h…穴、61…第1壁部、62…第2壁部、63…第3壁部、64…第4壁部、65…底板部、68…引き出し部、69…係合凸部、71…第1コイル、72…第2コイル、80…ヨーク、81、83…第1磁石、82、84…第2磁石、86…第1ヨーク、87…第2ヨーク、88…接続部、91、92…接続体、151、152…ランド、158…切欠き、159…係合穴、160…角部、161h、162h…凸部、161…第1壁部、162…第2壁部、163…第3壁部、163a…凸板部、164…第4壁部、165…底板部、166、167、168…凹部、170…角部、171…第1壁部、171h、172h…穴、172…第2壁部、173…第3壁部、175…底板部、176、177、178…第1凹部、600…角部、601…第1開口部、602…第2開口部、630…凹部、641、642…受け部、651、652…コイル保持穴、701…長辺、702…短辺、705…端部、860…第1板部、865…位置決め凸部、870…第2板部、875…位置決め凸部、881…第1接続部分、882…第2接続部分、P…先端部、P1、P2…接続位置、X…第2方向、Y…第3方向、Z…第1方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6