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特許7267557走路周壁面撮影装置及び走路周壁面撮影方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】走路周壁面撮影装置及び走路周壁面撮影方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 37/00 20210101AFI20230425BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20230425BHJP
   H04N 23/90 20230101ALI20230425BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20230425BHJP
【FI】
G03B37/00 A
G03B15/00 W
G03B15/00 T
G03B15/00 U
H04N23/90
H04N23/60
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019101254
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020194145
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】511238929
【氏名又は名称】金川 典代
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】原 徹
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3218047(JP,U)
【文献】国際公開第2011/033569(WO,A1)
【文献】特開2004-012152(JP,A)
【文献】特開2017-097783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 37/00
G03B 15/00
G01B 11/00-11/30
G01C 15/00
H04N 23/90
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する複数台のカメラで走路周囲の周壁面を撮影し、周壁面に形成されたクラックを検出する走路周壁面撮影装置であって、
前記走路の直交方向に配置された前記複数台のカメラの隣接する前記周壁面の撮影領域の一部が重複領域を含んで配置されたカメラ群と、
前記カメラ群を前記走路に沿って移動させるカメラ群移動手段と、
前記カメラ群の各々のカメラを連続して撮影させるカメラ連写手段と、
前記連写された画像のクラックの幅を補正する手段とを備え
前記クラックの幅を補正する手段は、
予め前記カメラ群のうちの水平位置のカメラに正対するように前記周壁面に貼付されて前記カメラ群の一つで撮影される確認マークを備え、その撮影画像から前記確認マークを抽出して被写体ブレ量を計測し、前記被写体ブレ量を使用して前記クラックの幅を補正するものであることを特徴とする走路周壁面撮影装置。
【請求項2】
前記カメラ群として、第1のカメラ群と、これら第1のカメラ群の撮影領域に一部を重複して走行方向に隣接された撮影領域を有する第2のカメラ群とを備え、
前記カメラ連写手段が、第1のカメラ群と並設された前記第2のカメラ群とを同期させて第1のカメラ群の撮影領域と第2のカメラ群の撮影領域とを合わせた撮影領域を連続して撮影させるものであることを特徴とする請求項1に記載の走路周壁面撮影装置。
【請求項3】
移動する複数台のカメラで走路周囲の周壁面を撮影し、周壁面に形成されたクラックを検出する走路周壁面撮影方法であって、
前記走路の直交方向に配置された前記複数台のカメラの隣接する前記周壁面の撮影領域の一部が重複領域を含んで配置されたカメラ群を走路に沿って移動させる工程と、
前記カメラ群の個々のカメラを同期させつつ連続して前記周壁面を連写して撮影する工程と、
前記連写された画像のクラックの幅を補正する工程とを備えたものであり、
前記周壁面を連続して撮影する前、途中、又は、後に、予め前記カメラ群のうちの水平位置のカメラに正対するように前記周壁面に貼付された確認マークを前記カメラ群の一つで撮影して被写体ブレ量を計測する工程を更に備え、
前記連写された画像のクラックの幅を補正する工程は、前記被写体ブレ量を使用して補正することを特徴とする走路周壁面撮影方法。
【請求項4】
前記カメラ群として、第1のカメラ群と、これら第1のカメラ群の撮影領域に一部を重複して走行方向に隣接された撮影領域を有する第2のカメラ群とを用い、
前記第1のカメラ群と並設された前記第2のカメラ群とを同期させて第1のカメラ群の撮影領域と第2のカメラ群の撮影領域とを合わせた撮影領域を連続して撮影させる工程を更に備えたことを特徴とする請求項3に記載の走路周壁面撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する複数台のカメラで走路周囲の周壁面を撮影し、周壁面に形成されたクラックを検出する走路周壁面撮影装置及び走路周壁面撮影方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人においては、画素数を大きくして撮影した撮影面であっても、実際の建築物のどの位置にクラックが発生しているのかを容易に判別することのできる広域面撮影装置を既に提案している(例えば、特許文献1参照)。この広域面撮影装置としては、具体的には、トンネル周壁面を撮影するために、半円弧状に沿って均等に設置された複数のカメラ群によって連続したトンネル周壁面を撮影するものである。
【0003】
特に、隣接配置されたカメラ同士の個々の撮影面が、互いに重ね合わされる領域を備え、この領域にレーザポインタ光を照射することにより、隣接配置されたカメラ同士の個々の撮影面の各々には同一のレーザポインタ光が映り込まれることになり、画素数を大きくして撮影した撮影対象面であっても、実際の建築物のどの位置にクラックが発生しているのかを容易に判別することができる利点を奏する。
【0004】
この特許文献1については、具体的にトラックの荷台に搭載させて、70cm以内の一定距離で移動させる毎に撮影することを想定しており、更なる短時間でのトンネル全周壁の撮影が望まれていた。そこで、本出願人は、更なる短時間でトンネル全周壁を撮影することが可能なトンネル周壁面撮影装置を提案した(特許文献2参照)。
【0005】
この特許文献2の提案については、トンネル内周壁の縦面の全部又は一部に沿って配置された複数個のカメラの隣接された撮影領域が一部の重複領域を含んで調整されたカメラ群を車等の移動手段でトンネル内長手方向に沿って移動させ、カメラ連写手段でカメラ群の各々のカメラに連続して撮影して連写速度に応じた連続した静止画を得るものである。具体的には、時速15kmで連写した静止画でクラックを判別することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-57579号公報
【文献】実用新案登録第3218047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トンネル等の既存の建築物は、主に高速道路等を含めた公道に存在している。そのため、該当区間の全部又は一部の車線を通行止め又は車線減少させて検査が行われる。この場合、通行止め又は車線減少させる区間と時間とを周知させ、尚且つ、検査現場の遙か前と直前とで現場に向かうドライバーに注意喚起を行う必要があった。
【0008】
このため、頻繁に検査を行うことが難しいのが現状であった。少なくとも時速30km以上の移動速度であれば、夜間等に清掃作業を行う路面清掃車と同等の移動速度であるため、頻繁な検査が可能となる。このため、時速30km以上の移動速度でのクラックの判別検査を行うことが要望されていた。
【0009】
しかしながら、時速30km以上の速度での連写による静止画については、被写体ブレが生じる場合がある。特に、トンネル内や夜間での検査においては、カメラのシャッター速度を早くできない状況もあるため、この被写体ブレが顕著に生じる場合があった。そのため、カメラ群と共に周壁面への投光器の光源を高くして、シャッター速度を速くすることを考慮するが、照度を上げると投光器の光がクラック内部にまで照射されて、クラックとその周りの壁面との照度的な差違が検出されずクラック自体を確認できなくなる虞があり、投光器の位置等を細かく調整する等々の必要もあった。
【0010】
本発明は、時速30km以上の速度でも確実にクラックを検出することが可能な走路周壁面撮影装置及び走路周壁面撮影方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された発明に係る走路周壁面撮影装置は、移動する複数台のカメラで走路周囲の周壁面を撮影し、周壁面に形成されたクラックを検出する走路周壁面撮影装置であって、
前記走路の直交方向に配置された前記複数台のカメラの隣接する前記周壁面の撮影領域
の一部が重複領域を含んで配置されたカメラ群と、
前記カメラ群を前記走路に沿って移動させるカメラ群移動手段と、
前記カメラ群の各々のカメラを連続して撮影させるカメラ連写手段と、
前記連写された画像のクラックの幅を補正する手段とを備え
前記クラックの幅を補正する手段は、
予め前記カメラ群のうちの水平位置のカメラに正対するように前記周壁面に貼付されて前記カメラ群の一つで撮影される確認マークを備え、その撮影画像から前記確認マークを抽出して被写体ブレ量を計測し、前記被写体ブレ量を使用して前記クラックの幅を補正するものであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載された発明に係る走路周壁面撮影装置は、請求項1に記載のカメラ群として、第1のカメラ群と、これら第1のカメラ群の撮影領域に一部を重複して走行方向に隣接された撮影領域を有する第2のカメラ群とを備え、
前記カメラ連写手段が、第1のカメラ群と並設された前記第2のカメラ群とを同期させて第1のカメラ群の撮影領域と第2のカメラ群の撮影領域とを合わせた撮影領域を連続して撮影させるものであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載された発明に係る走路周壁面撮影方法は、移動する複数台のカメラで走路周囲の周壁面を撮影し、周壁面に形成されたクラックを検出する走路周壁面撮影方法であって、
前記走路の直交方向に配置された前記複数台のカメラの隣接する前記周壁面の撮影領域の一部が重複領域を含んで配置されたカメラ群を走路に沿って移動させる工程と、
前記カメラ群の個々のカメラを同期させつつ連続して前記周壁面を連写して撮影する工程と、
前記連写された画像のクラックの幅を補正する工程とを備えたものであり、
前記周壁面を連続して撮影する前、途中、又は、後に、予め前記カメラ群のうちの水平位置のカメラに正対するように前記周壁面に貼付された確認マークを前記カメラ群の一つで撮影して被写体ブレ量を計測する工程を更に備え、
前記連写された画像のクラックの幅を補正する工程は、前記被写体ブレ量を使用して補正することを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載された発明に係る走路周壁面撮影方法は、請求項3に記載のカメラ群として、第1のカメラ群と、これら第1のカメラ群の撮影領域に一部を重複して走行方向に隣接された撮影領域を有する第2のカメラ群とを用い、
前記第1のカメラ群と並設された前記第2のカメラ群とを同期させて第1のカメラ群の撮影領域と第2のカメラ群の撮影領域とを合わせた撮影領域を連続して撮影させる工程を更に備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、時速30km以上の速度でも確実にクラックを検出することが可能な走路周壁面撮影装置及び走路周壁面撮影方法を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の走路周壁面撮影装置の構成を示す説明図である。
図2図1の走路周壁面撮影装置の主要部の構成を示す説明図である。
図3図1の走路周壁面撮影装置の構成を示す説明図であり、a図は平面図、b図は正面図である。
図4図3に示す走路周壁面撮影装置の撮影時の説明図である。
図5図3に示した走路周壁面撮影装置による撮影画像の説明図である。
図6】確認マークの一例を示す説明図であり、a図は通常状態での静止画、b図は被写体ブレを起こした状態を示す静止画である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明においては、移動する複数台のカメラで走路周囲の周壁面を撮影し、周壁面に形成されたクラックを検出する走路周壁面撮影装置であって、走路の直交方向に配置された複数台のカメラの隣接する周壁面の撮影領域の一部が重複領域を含んで配置されたカメラ群と、カメラ群を走路に沿って移動させるカメラ群移動手段と、カメラ群の各々のカメラを連続して撮影させるカメラ連写手段と、連写された画像のクラックの幅を補正する手段とを備え、クラックの幅を補正する手段は、予め前記カメラ群のうちの水平位置のカメラに正対するように前記周壁面に貼付されて前記カメラ群の一つで撮影される確認マークを備え、その撮影画像から確認マークを抽出して被写体ブレ量を計測し、被写体ブレ量を使用してクラックの幅を補正するものである。これにより、時速30km以上の速度でも確実にクラックを検出することが可能となる。
【0019】
本発明のカメラ群としては、走路の直交方向に配置された複数台のカメラの隣接する周壁面の撮影領域の一部が重複領域を含んで配置されればよい。また、本発明のカメラ群移動手段としては、カメラ群を走路に沿って移動させるものであればよい。例えば、走路が自動車やレール上を走行する列車が走行可能なトンネルであれば、カメラ群移動手段としてのトラックや列車の荷台に半円状や1/4円状のトンネル周壁面に沿った形状の基台の縁部に複数台のカメラを略均等に配置させることにより、容易に設置することが可能となる。また、自動車や列車が走行可能な橋梁の桁の内壁側面や床板面であれば、トラックの荷台後方に保持した基台に走路の直交方向にカメラ群を側壁から下方に並べて配置して撮影すればよい。
【0020】
本発明のカメラ連写手段としては、時速30km以上の速度でも連写できるものであればよい。カメラの性能として、連写機能が時速30km以上の速度で連写、保存可能であればそのような性能のカメラを用いてもよいが、複数台のカメラ群を複数段配置して、順番に撮影させることにより連写機能として機能させてもよい。
【0021】
具体的には、時速30kmとは、分速500m、秒速833.3cmである。一つのカメラでの撮影された1枚の静止画の幅が走路の周壁面の80cmを撮影できると仮定し、隣接する静止画同士の重なり合い部分を5cm×2とすると、実質的に70cmの撮影幅となる。従って、カメラ連写手段でカメラ群の各々のカメラを連続して撮影させる。
【0022】
具体的には、1秒間に12枚の連写機能を実現できるカメラであれば、これを走路方向に直交する方向、即ち、縦方向に複数台配置して、走路周壁面を撮影すればよい。例えば、1台のカメラの連写機能が100枚連写することが可能であれば、8.4秒ごとに1組のカメラ群で撮影すればよい。
【0023】
連写された100枚分の静止画像を記録手段に記録する時間が8.4秒以下であれば、2組のカメラ群を8.4秒ごとに切り換えれば、連続して時速30kmで移動しながら走路の周壁面の撮影が可能であるし、連写された100枚分の静止画像を記録手段に記録する時間が8.4×2=16.8秒以下であれば、3組のカメラ群を16.8秒ごとに順番に切り換えることにより、連続して時速30kmで移動しながら走路の周壁面の撮影が可能である。
【0024】
また、1秒間に6枚の連写機能を実現できるカメラの場合、複数組のカメラ群をペアリングさせて同期して駆動することで連写手段を構成することができる。例えば、2組のカメラ群を並設させ、第1のカメラ群の個々のカメラに対して、第2のカメラ群の個々のカメラをペアリングさせる。ペアリングされた2台のカメラは走路方向に隣接する内壁領域を撮影するように設定される。ペアリングされた2台のカメラは同期手段で同時にシャッターを切るように設定される。
【0025】
これにより、一つのカメラでの撮影された1枚の静止画の幅が走路の周壁面の80cmを撮影できると仮定すると、隣接する静止画同士の重なり合い部分を5cm×2とすると、ペアリングされた2台のカメラで撮影される静止画は実質的に140cmの撮影幅となる。この条件で、時速30kmでは、ペアリングされた2台のカメラによる静止画は0.164秒毎に撮影されればよい。
【0026】
個々のカメラ群の撮影間隔は、走路に直交する縦方向のカメラ群については、同期手段で同期させ、走路に沿った横方向のカメラ群については、連写手段によって、8.4秒ごとの連写や0.084秒毎に撮影させるようにする。尚、一つのカメラでの撮影された1枚の静止画の幅が走路の周壁面の150cmを撮影でき、隣接する静止画同士の重なり合い部分を5cm×2と仮定し、実施的に140cmの撮影幅であれば、前述の秒数等は倍とすることができる。
【0027】
このように配置されたカメラ群毎の静止画であるが、時速30km以上の速度で撮影されるため、シャッターが開放されて閉鎖される間で被写体ブレが生じる。特に、撮影時に光量が足りず、シャッタースピードが遅い場合が顕著となる。この場合、カメラ群自体が移動車両に搭載されて時速30km以上の速度で移動しているため、走路に沿った横方向の画素が大きくなる。具体的には、同じ太さの放射状の線分では、移動方向と同じ横線については太さに変化はないが、縦線や斜め方向の線分については、横方向成分のみが大きくなり、その線分の太さが大きくなるため、縦線分の太さが大きく太くなり、斜め線分の太さが横線分の太さよりも太く縦線分よりも細くなる。
【0028】
このため、連写された画像の走路方向成分を補正する画像補正手段を備える。詳しくは、静止画像を構成する個々の画素について画素の横方向成分を小さくする補正を行うことにより、時速30km以上の速度でも、被写体ブレが補正され、確実にクラックを検出することが可能となる。被写体ブレの度合いは、撮影カ所の光量の相違や、カメラ群の移動速度等によって相違する。そのため、周壁面を連続して撮影する前、途中、又は、後に、確認マークを前記カメラ群の一つで撮影して被写体ブレ量を計測する工程と、連写された画像の走路方向成分を補正する際に被写体ブレ量を使用して補正する工程とを更に備える。
【0029】
本発明においては、移動する複数台のカメラで走路周囲の周壁面を撮影し、周壁面に形成されたクラックを検出する走路周壁面撮影方法であって、走路の直交方向に配置された複数台のカメラの隣接する周壁面の撮影領域の一部が重複領域を含んで配置されたカメラ群を走路に沿って移動させる工程と、カメラ群の個々のカメラを同期させつつ連続して周壁面を連写して撮影する工程と、連写された画像の走路方向成分を補正する工程とを備える。これにより、時速30km以上の速度でも確実にクラックを検出することが可能となる。
【実施例
【0030】
図1は本発明の走路周壁面撮影装置の構成を示す説明図である。図2図1の走路周壁面撮影装置の主要部の構成を示す説明図である。図3図1の走路周壁面撮影装置の構成を示す説明図であり、a図は平面図、b図は正面図である。図4図3に示す走路周壁面撮影装置の撮影時の説明図である。図5図3に示した走路周壁面撮影装置による撮影画像の説明図である。図6は確認マークの一例を示す説明図であり、a図は通常状態での静止画、b図は被写体ブレを起こした状態を示す静止画である。
【0031】
図1に示す通り、本実施例の走路周壁面撮影装置10は、複数個のカメラからなるカメラ群20と、これらカメラ群20を搭載したカメラ移動手段30と、カメラ群20の各々のカメラ20を同期するカメラ同期手段40と、同期された各々のカメラを連続して撮影するカメラ連写手段50と、カメラ連写手段50の連続撮影速度をカメラ移動手段30の速さに応じて連続撮影画像同士が一部を重複するように制御する撮影速度制御手段60とを備える。個々のカメラで連写された静止画を一時記録する一時記録手段70と、1つの撮影動作で撮影された一時記録手段70に記録された静止画を一括りとして記録する記録手段80と、個々の静止画の被写体ブレを補正する画像補正手段90とを備える。
【0032】
本実施例では、トンネル周壁面を走行しながら撮影するため、走行方向に対して直交する方向に並設された2群のカメラ群20a、20bを使用する。2群のカメラ群20a、20bは、隣接した撮影面を撮影する以外は同じ構成とする。具体的な第1のカメラ群20aとしては、図2に示す通り、1/4円弧を備えたカメラ支持台21の円弧に略均等に配されたカメラ取付け用の6つの雲台22と、5つのレーザポインタ支持板23とが表裏に交互に配されている。各雲台22及びレーザポインタ支持板23にはb図に示される6つのカメラ20aa~20af及びレーザポインタ装置25aa~25aeが支持される。他の第2のカメラ群20bについても同様の構成とする。
【0033】
本実施例では、2群のカメラ群20a、20bを構成する一つのカメラの撮影面51は、1,200×800mmの撮影範囲であり、本実施例の具体的な撮影面51については、図4及び図5に示す通り、第1のカメラ群20a内で隣接する個々のカメラは、図4の撮影方向a~f方向に向けられ、個々のカメラ同士の撮影面aa1~af1に重なる重複撮影領域52が設けられている。この重複撮影領域52の略中央部には、レーザポインタ装置25aa~25aeのレーザポインタ光53が照射されるように調整されている。第2のカメラ群20b内でも隣接する個々のカメラ同士の撮影面ba1~bf1に重なる重複撮影領域52が設けられ、レーザポインタ光53が照射されている。
【0034】
並設された第1及び第2のカメラ群20a、20bの並設されたカメラ同士の撮影面は走行方向に一部を重複して隣接された部分となる。図5に示す通り、第1のカメラ群の一つのカメラの撮影面aa1と第2のカメラ群の一つのカメラの撮影面ba1とには互いに重なる走行方向重複撮影領域54が設けられている。同様に走行方向に並設された個々のカメラについても互いに重なる走行方向重複撮影領域54が設けられている。走行方向重複撮影領域54を挟んだ隣接する撮影領域同士を一つのペアとして取り扱うことにより、時速30km以上の速さでも確実にクラックを検出することが可能となる。
【0035】
本実施例のカメラ移動手段30としては、通常の自動車を用いている。図3に示した通り、図2に示された第1のカメラ群20aと、この第1のカメラ群と同じ構成の第2のカメラ群20bとがカメラ移動手段としての荷台トラック30の荷台31の略中央に搭載されている。カメラ支持台21の前後の荷台31には、メタルハライドのバルーン投光器32が5台、配置され、個々の投光器に供給される電気を発電する発電機33が配置されている。これらの照明により、トンネルの内壁は明るく、均質な照度に照明される。
【0036】
また、図1に示されたカメラ同期手段40としては、既存のカメラに対してシャッターリモコンを用いた。より具体的には、本実施例では、赤外線のワイヤレスのシャッターリモコンを用いた。これにより、第1のカメラ群20aと第2のカメラ群20bとの個々のカメラのシャッターを同期させる。このため、図4及び図5に示した撮影面aa1、ba1~af1、bf1が撮影される。本実施例のカメラ連写手段50としては、第1のカメラ群20a及び第2のカメラ群20bの個々のカメラの連写機能を利用した。用いた個々のカメラでは、毎秒6コマで連写可能であり、連続撮影可能枚数が100枚であった。
【0037】
本実施例の撮影速度制御手段60としては、カメラの連写速度を調整して、荷台トラック30の速度を調整することにより対応した。即ち、2組のカメラ群20a、20bを構成する個々のカメラの連写機能が毎秒6コマで連写可能であり、連続撮影可能枚数が100枚である。このため、100/6=16.66秒間の連写を行うことが可能となる。また、撮影された2組のカメラ群20a、20bを同期させて撮影されるため、一つのペアの静止画の幅がトンネル周壁面の140cmを撮影できる。
【0038】
実際の100枚の写真の全撮影領域幅は140×100/100=140mとなり、この距離を16.66秒で撮影することとなるため、トラックの移動速度は140/16.66×60×60/1000=30.252km/時となる。従って、実際の撮影現場では、荷台トラック30にカメラ群を搭載した上で、理想的にはトンネルの周壁面の140mを16.66秒ごとに再度撮影すればよい。
【0039】
そのため、第1と第2とのカメラ群20a、20bと同じ構成の第3と第4のカメラ群20c、20dを更にカメラ移動手段30としての荷台31に搭載して、第1と第2とのカメラ群20a、20bの連写が終了した時点で第3と第4とのカメラ群20c、20dを同期して連写させる。この第3と第4とのカメラ群20c、20dの連写の間に第1と第2とのカメラ群20a、20bの静止画を一時記録手段70及び記録手段80に記録する。
【0040】
即ち、具体的には、図4に示す通り、バルーン投光器32(図示せず)を透光しつつ、トンネル41の左車線のセンターラインよりに荷台トラック30を時速30.252kmで定速走行させて、トンネル周壁面の計測開始点に到達した際に、第1と第2とのカメラ群20a、20bの個々のカメラを同期させて、毎秒6コマで100枚連写させ計測終了点とする。図4及び図5に示す通り、走行車線に対して反対側のトンネル周壁面について、第1と第2とのカメラ群20a、20bで、2群の撮影面aa1、ba1~af1、bf1が撮影される。
【0041】
荷台トラック30は時速30.252kmで定速走行されているため、毎秒6コマの連写による次の静止画群には走行方向に重複撮影領域55が発生する。更に、次の連写によって、同様に走行方向に重複撮影領域55を発生させながら、次の静止画が記録され、更に同様の動作によって、100枚連写された撮影面aa100、ba100~af100、bf100を撮影し、その終了後に、第3と第4とのカメラ群20c、20dの連写を行いながら、第1と第2とのカメラ群20a、20bの静止画を一時記録手段70及び記録手段80に記録する。
【0042】
本実施例では、時速30km以上(=8.333m/秒)の速度での静止画の撮影を行うが、シャッターが開放されて閉鎖される間で被写体ブレが生じる。特に、撮影時に光量が足りず、シャッター速度が遅い場合が顕著となる。この場合、走路に沿った沿った横方向の画素が大きくなる。具体的には、図6のa図の通常状態での確認マーク91が、b図のように被写体ブレを起こした状態に示す通り、同じ太さの放射状の線分については、移動方向と同じ横線については太さに変化はないが、縦線や斜め方向の線分については、横方向成分のみが大きくなり、その線分の太さが大きくなるため、縦線分の太さが大きく太くなり、斜め線分の太さが横線分の太さよりも太く縦線分よりも細くなる。
【0043】
そのため、画像補正手段90によって、連写された画像の走路方向成分を補正する。詳しくは、静止画像を構成する個々の画素について走行方向の横方向成分を小さくする補正を行うことにより、時速30km以上の速度でも確実にクラックを検出することが可能となる。被写体ブレの度合いは、撮影カ所の光量の相違や、カメラ群の移動速度等の相違によって相違する。
【0044】
そのため、予めクラック検査をする周壁面について、予備調査の段階でクラックが形成されていない箇所に確認マーク91を貼着しておき、周壁面を連続して撮影する前、途中、又は、後に確認マーク91をカメラ群の一つで撮影して被写体ブレ量を計測して、連写された画像の走路方向成分を補正する際に前記被写体ブレ量を使用して補正すればよい。
【0045】
より好ましくは、次の工程を行ってトンネル内面のクラックを補正すればよい。
(1) 正確な幅の線でプリントした基準テストパターンを2種類作成する。例えば、図6のa図に示す通り、同じパターンで0.2mm幅と0.4mm幅との2種類とする。
(2) これら2種類の基準テストパターンを、トンネル壁面に添付する。この時、貼付位置は水平位置のカメラに正対するようにする。
(3) 連写でトンネル内面を撮影する。
(4) 撮影画像から基準テストパターンを抽出する。
【0046】
(5) 2種類のパターンの抽出結果のうち、垂直の線のブレの量を算出する。(例:0.2mm幅→0.8mm幅、0.4mm幅→1.2mm幅となったと仮定する)
(6) ブレの平均値を計算し、撮影された垂直方向の全てのクラックの幅から減算する。(例:(0.8-0.2)/2+(1.2-0.4)/2=(0.3+0.8)/2=0.55となる)
(7) 尚、斜めのクラックについては、角度で分類し、補正すればよい。(例:水平を0度とした場合、0‐22.5度は補正無しとし、22.5-67.5度は基準テストパターンの45度の線のブレの平均値を減算する。67.5‐90度は垂直と同じ0.55mmを減算すればよい。)
(8) 水平クラックについては、長さから0.55mmを減算すればよい。
【0047】
尚、図6のb図の走行方向の線分(水平)の細いパターンの線分の太さよりも小さい影をノイズとしてカットする補正を先ず行うことにより、ノイズをカットすることが可能となる。即ち、静止画像を構成する個々の画素について走行方向の横方向成分を小さくする補正を行うことにより、静止画上のノイズが良好にカットされ、時速30km以上の速度でも確実にクラックを検出することが可能となる。
【0048】
また、図3に示す通り、荷台31に2つの支持体21の各々に配置されたカメラ群20については、図示しないカメラ連写制御手段を用いて、最初に第1のカメラ群20を同期して連写させた後に、第1の複数のカメラの連写の終了時を認識した後に、第2のカメラ群の連写を開始させることにより、より短い時間でトンネル全周壁を撮影することが可能となる。尚、図4の左車線を終了させた後に、対向車線を折り返してトンネルの反対側の周壁面を同様に連写する。
【0049】
尚、本実施例では、第1と第2とのカメラ群20a、20bと、第3と第4とのカメラ群20c、20dとの2群のカメラ群で連続して撮影を行う例を示したが、静止画の記録に時間が掛かる場合には、更に、第5と第6とのカメラ群を追加して、連続して撮影を行ってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 …トンネル周壁面撮影装置、
20a…第1のカメラ群、
20b…第2のカメラ群、
20c…第3のカメラ群、
20d…第4のカメラ群、
20aa~20af…カメラ、
21 …カメラ支持台、
22 …雲台、
23 …レーザポインタ支持板、
24 …設置台、
25 …レーザポインタ装置(25aa~25ae)、
30 …カメラ移動手段(荷台トラック)、
31 …荷台、
32 …バルーン投光器、
33 …発電機、
40 …カメラ同期手段、
41 …トンネル、
50 …カメラ連写手段、
51 …撮影面、
52 …重複撮影領域、
53 …レーザポインタ光、
54 …走行方向重複撮影領域、
aa1~af1…撮影面、
ba1~bf1…撮影面、
aa2~af2…撮影面、
ba2~bf2…撮影面、
aa100~af100…撮影面、
ba100~bf100…撮影面、
60 …撮影速度制御手段、
70 …一時記録手段、
80 …記録手段、
90 …画像補正手段、
91 …確認マーク、
図1
図2
図3
図4
図5
図6