IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サーボ株式会社の特許一覧

特許7267561ステッピングモータ制御装置及びプログラム
<>
  • 特許-ステッピングモータ制御装置及びプログラム 図1
  • 特許-ステッピングモータ制御装置及びプログラム 図2
  • 特許-ステッピングモータ制御装置及びプログラム 図3
  • 特許-ステッピングモータ制御装置及びプログラム 図4
  • 特許-ステッピングモータ制御装置及びプログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】ステッピングモータ制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 8/32 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
H02P8/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019086581
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020184814
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】鷹 広昭
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-245592(JP,A)
【文献】特開2005-210786(JP,A)
【文献】特開2008-278643(JP,A)
【文献】特開昭62-64293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0116835(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロステップ駆動するステッピングモータを制御するステッピングモータ制御装置であって、
前記ステッピングモータを駆動するインバータと、
前記ステッピングモータの電流を制御するための電流制御器と、
前記ステッピングモータの回転を検出する検出部と、
位相変化が前記ステッピングモータの回転角の時間変化に同一な正弦波を基本波とし、
振幅及び位相に関する第1条件を満たすように前記基本波と前記基本波の高調波とが合成された合成波を第1合成波として、位相変化が前記第1合成波の位相変化に同一な信号であって振幅が前記ステッピングモータの回転速度に応じた第1振幅に調整された信号である角度補正信号を生成する角度指令補正部と、
を備え、
前記ステッピングモータの電流の位相の時間変化は前記角度補正信号の時間変化に同一であり、
前記ステッピングモータの回転速度に比例する値を電流指令として、前記第1振幅を前記電流指令で割り算した値は、前記電流指令が所定の値未満である場合に、前記電流指令が小さいほど大きな値である、
ステッピングモータ制御装置。
【請求項2】
位相変化が前記ステッピングモータの回転角の時間変化に同一な正弦波を基本波とし、
振幅及び位相に関する第2条件を満たすように前記基本波と前記基本波の高調波とが合成された合成波を第2合成波として、位相変化が前記第2合成波の位相変化に同一な信号であって振幅が前記ステッピングモータの回転速度に応じた第2振幅に調整された信号である振幅補正信号を生成する電流指令補正部、
をさらに備え、
前記ステッピングモータの電流の振幅の時間変化は前記振幅補正信号の時間変化に同一である、
請求項1に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項3】
前記ステッピングモータの回転速度に比例する値を電流指令として、前記第2振幅を前記電流指令で割り算した値は、前記電流指令が所定の値以上である場合に、前記電流指令が大きいほど大きい値である、
請求項2に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項4】
前記高調波の次数は、2次及び4次である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータ制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、マイクロステップ駆動するステッピングモータの振動を抑制する技術が提案されている(特許文献1を参照)。従来の技術においては、ステッピングモータに発生するコギングトルク、トルクリップ等の外乱を除去する。従来の技術においては、例えば、ステッピングモータの振動が測定され、測定された振動に対する周波数解析が行われ、周波数解析の結果に基づいて外乱と逆位相の信号がq軸電流に印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4488749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように従来の技術においては、ステッピングモータの振動を周波数解析する必要があるため、ステッピングモータの制御に要する演算量の多さが問題であった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、外乱の影響を抑制しつつマイクロステップ駆動するステッピングモータの動作の制御における演算量を軽減する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、マイクロステップ駆動するステッピングモータを制御するステッピングモータ制御装置であって、前記ステッピングモータを駆動するインバータと、前記ステッピングモータの電流を制御するための電流制御器と、前記ステッピングモータの回転を検出する検出部と、位相変化が前記ステッピングモータの回転角の時間変化に同一な正弦波を基本波とし、振幅及び位相に関する第1条件を満たすように前記基本波と前記基本波の高調波とが合成された合成波を第1合成波として、位相変化が前記第1合成波の位相変化に同一な信号であって振幅が前記ステッピングモータの回転速度に応じた第1振幅に調整された信号である角度補正信号を生成する角度指令補正部と、を備え、前記ステッピングモータの電流の位相の時間変化は前記角度補正信号の時間変化に同一であり、前記ステッピングモータの回転速度に比例する値を電流指令として、前記第1振幅を前記電流指令で割り算した値は、前記電流指令が所定の値未満である場合に、前記電流指令が小さいほど大きな値である、ステッピングモータ制御装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上記のステッピングモータ制御装置であって、位相変化が前記ステッピングモータの回転角の時間変化に同一な正弦波を基本波とし、振幅及び位相に関する第2条件を満たすように前記基本波と前記基本波の高調波とが合成された合成波を第2合成波として、位相変化が前記第2合成波の位相変化に同一な信号であって振幅が前記ステッピングモータの回転速度に応じた第2振幅に調整された信号である振幅補正信号を生成する電流指令補正部、をさらに備え、前記ステッピングモータの電流の振幅の時間変化は前記振幅補正信号の時間変化に同一である。
【0008】
本発明の一態様は、上記のステッピングモータ制御装置であって、前記ステッピングモータの回転速度に比例する値を電流指令として、前記第1振幅を前記電流指令で割り算した値は、前記電流指令が所定の値未満である場合に、前記電流指令が小さいほど大きな値である。
【0009】
本発明の一態様は、上記のステッピングモータ制御装置であって、マイクロステップ駆動するステッピングモータを制御するステッピングモータ制御装置であって、前記ステッピングモータを駆動するインバータと、前記ステッピングモータの電流を制御するための電流制御器と、前記ステッピングモータの回転を検出する検出部と、位相変化が前記ステッピングモータの回転角の時間変化に同一な正弦波を基本波とし、振幅及び位相に関する第2条件を満たすように前記基本波と前記基本波の高調波とが合成された合成波を第2合成波として、位相変化が前記第2合成波の位相変化に同一な信号であって振幅が前記ステッピングモータの回転速度に応じた第2振幅に調整された信号である振幅補正信号を生成する電流指令補正部と、を備え、前記ステッピングモータの電流の振幅の時間変化は、前記振幅補正信号の時間変化に同一である。
【0010】
本発明の一態様は、上記のステッピングモータ制御装置であって、前記ステッピングモータの回転速度に比例する値を電流指令として、前記第2振幅を前記電流指令で割り算した値は、前記電流指令が所定の値以上である場合に、前記電流指令が大きいほど大きい値である。
【0011】
本発明の一態様は、上記のステッピングモータ制御装置であって、前記高調波の次数は、2次及び4次である。
【0012】
本発明の一態様は、上記のステッピングモータ制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、外乱の影響を抑制しつつステッピングモータを動作させる制御における演算量を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のステッピングモータ制御装置1の機能構成の一例を示す図。
図2】実施形態における第1振幅調整値d_<1>と電流指令Iとの関係の一例を示す図。
図3】実施形態における第2振幅調整値d_<2>と電流指令Iとの関係の一例を示す図。
図4】実施形態におけるステッピングモータ制御装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
図5】実施形態のステッピングモータ制御装置1によって外乱の影響が抑制されることを示す実験結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態のステッピングモータ制御装置及びプログラムを、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態のステッピングモータ制御装置1の機能構成の一例を示す図である。
ステッピングモータ制御装置1は、ステッピングモータ9を駆動する。
ステッピングモータ9は、電力の供給を受けて回転することでトルクを発生する2相のステッピングモータである。すなわちステッピングモータ9は、電気エネルギーを運動エネルギーに変換する2相のステッピングモータである。
ステッピングモータ9は、式(1)及び(2)で表される波形(すなわち、角速度ω_<exc>(t)が時間に依存する角速度である正弦波)の電流が駆動電流(ステッピングモータの電流)として印加されることでマイクロステップ駆動する。なお、_<・・・>は、下付き文字を表す。例えば、ω_<exc>は、ωexcを表す。以下、角速度ω_<exc>(t)を励磁角度という。
【0016】
【数1】
【0017】
【数2】
【0018】
式(1)及び式(2)において、tは時刻を表す。H_<1>(t)は、ステッピングモータ9の一方の相に印加される電流の波形を表す。H_<2>(t)は、ステッピングモータ9の他方の相に印加される電流の波形を表す。以下、波形H_<1>(t)及び波形H_<2>(t)をそれぞれ区別しない場合、波形H(t)という。また、以下、波形H(t)の信号を信号H(t)という。式(1)及び式(2)において、Iは、電流指令である。電流指令Iは、電流の振幅の次元の値であって、ステッピングモータ9の回転速度に応じた値である。例えば、電流指令Iは、ステッピングモータ9の回転速度が大きいほど大きな値である。例えば、電流指令Iは、ステッピングモータ9の回転速度の上昇に比例して増加する値である。以下、説明の簡単のため、電流指令は、ステッピングモータ9の回転速度の上昇に比例して増加する値であると仮定する。式(1)及び式(2)において、gは、励磁角度ω_<exc>(t)とIとの関数である。
【0019】
ステッピングモータ制御装置1は、角度指令取得端子101、電流指令取得端子102、エンコーダ103、角度演算器104、角度指令補正部105、電流指令補正部106、第1加算器107、励磁角度生成器108、第2加算器109、電流振幅指令生成器110、電流制御器111、インバータ112及びシャント抵抗113を備える。
角度指令取得端子101は、角度指令ω_<ref>・tを示すパルス列の信号を取得する。角度指令ω_<ref>・tは、ステッピングモータ9を回転させる角度を示す。ω_<ref>は角速度の次元の値である。電流指令取得端子102は、電流指令Iを取得する。
【0020】
エンコーダ103は、ステッピングモータ9の回転を検出する。具体的には、ステッピングモータ9は回転に応じた波形の信号を取得する。エンコーダ103は、取得した信号を角度演算器104に出力する。角度演算器104は、エンコーダ103が出力する信号に基づいて、ステッピングモータ9の回転角ω_<enc>・t(以下「エンコーダ角」という。)を取得する。ω_<enc>は角速度の次元の値である。以下、ω_<enc>をエンコーダ角速度という。角度演算器104は、取得したエンコーダ角を角度指令補正部105、電流指令補正部106及び励磁角度生成器108に出力する。
【0021】
角度指令補正部105は、エンコーダ角と電流指令とを取得する。角度指令補正部105は、第1信号生成部151と第1振幅調整器152とを備える。第1信号生成部151は、エンコーダ角に基づいて、振幅及び位相に関する第1条件を満たす信号f_<0>を生成する。信号f_<0>は、具体的には、以下の式(3)で表される。以下、信号f_<0>を第1信号という。
【0022】
【数3】
【0023】
式(3)において、A1、A2及びA3は、振幅の次元の値を表す。A1、A2及びA3は、予め定められた所定の値である。式(3)において、φ1、φ2及びφ3は、予め定められた所定の初期位相を表す。φ1及びφ3は、例えば、同位相であって、φ2は、φ1よりも例えば、π/4だけ進んだ位相である。式(3)におけるA1、A2、A3、φ1、φ2及びφ3は、信号f_<0>が満たすべき第1条件の一例である。具体的には、第1条件は、基本波の振幅がA1であって、第2高調波の振幅がA2であって、第4高調波の振幅がA3であって、基本波の初期位相がφ1であって、第2高調波の初期位相がφ2であって、第4高調波の初期位相がφ3という条件である。
式(3)は、第1信号が基本波と第2高調波と第4高調波との合成波であることを表す。式(3)における合成波の基本波は、角速度がエンコーダ角速度の正弦波である。
【0024】
第1振幅調整器152は、電流指令に基づいて第1信号の振幅を調整する。第1振幅調整器152による調整の結果出力される信号(以下、「角度補正信号」という。)は、以下の式(4)で表される信号である。
【0025】
【数4】
【0026】
式(4)は、第1振幅調整器152が、第1信号の振幅を(d_<1>・I)倍することを示す。d_<1>は、電流指令の大きさに応じた値である。d_<1>は、電流指令の大きさが小さいほど大きな値である。以下、式(4)のd_<1>を第1振幅調整値という。式(4)が表すように、角度補正信号は、振幅が電流指令の大きさに応じた振幅に調整された信号であって、位相変化が第1信号の位相変化に同一な信号である。
【0027】
図2は、実施形態における第1振幅調整値d_<1>と電流指令Iとの関係の一例を示す図である。
図2は、電流指令Iと第1振幅調整値d_<1>とが、Iが0以上I_<b>未満の場合には、線形の関係であることを示す。図2は、電流指令IがI_<b>未満の場合には、電流指令Iが小さいほど第1振幅調整値d_<1>が大きな値であることを示す。図2は、IがI_<b>以上では、第1振幅調整値d_<1>が0であることを示す。なお、電流指令Iは、ステッピングモータ9の回転速度の上昇に比例して増加する値であるため、電流指令Iが小さくなることは、ステッピングモータ9の回転速度が遅くなることを意味する。
【0028】
電流指令補正部106は、エンコーダ角と電流指令とを取得する。電流指令補正部106は、第2信号生成部161と第2振幅調整器162とを備える。第2信号生成部161は、エンコーダ角に基づいて、振幅及び位相に関する第2条件を満たす信号g_<0>を生成する。信号g_<0>は、具体的には、以下の式(5)で表される。以下、信号g_<0>を第2信号という。
【0029】
【数5】
【0030】
式(5)において、A4、A5及びA6は、振幅の次元の値を表す。A4、A5及びA6は、予め定められた所定の値である。式(5)において、φ4、φ5及びφ6は、予め定められた所定の初期位相を表す。φ4及びφ6は、例えば、同位相であって、φ5は、φ4よりも例えば、π/4だけ進んだ位相である。式(5)におけるA4、A5、A6、φ4、φ5及びφ6は、信号g_<0>が満たすべき第2条件の一例である。具体的には、第2条件は、基本波の振幅がA4であって、第2高調波の振幅がA5であって、第4高調波の振幅がA6であって、基本波の初期位相がφ4であって、第2高調波の初期位相がφ5であって、第4高調波の初期位相がφ6という条件である。
式(5)は、第2信号が基本波と第2高調波と第4高調波との合成波であることを表す。式(5)における合成波の基本波は、角速度がエンコーダ角速度の正弦波である。
【0031】
第2振幅調整器162は、電流指令に基づいて第2信号の振幅を調整する。第2振幅調整器162による調整の結果出力される信号(以下、「振幅補正信号」という。)は、以下の式(6)で表される信号である。
【0032】
【数6】
【0033】
式(6)は、第2振幅調整器162が、第2信号の振幅を(d_<2>・I)倍することを示す。d_<2>は、電流指令の大きさに応じた値である。d_<2>は、電流指令の大きさが小さいほど大きな値である。以下、式(4)のd_<2>を第2振幅調整値という。式(6)が表すように、振幅補正信号は、振幅が電流指令の大きさに応じた振幅に調整された信号であって、位相変化が第2信号の位相変化に同一な信号である。
【0034】
図3は、実施形態における第2振幅調整値d_<2>と電流指令Iとの関係の一例を示す図である。
図3は、電流指令Iと第2振幅調整値d_<2>とが、IがI_<b>以上の場合には、線形の関係であることを示す。図3は、電流指令IがI_<b>以上の場合には、電流指令Iが大きいほど第2振幅調整値d_<2>が大きな値であることを示す。図3は、IがI_<b>未満では、第2振幅調整値d_<2>が0であることを示す。なお、電流指令Iは、ステッピングモータ9の回転速度の上昇に比例して増加する値であるため、電流指令Iが大きくなることは、ステッピングモータ9の回転速度が速くなることを意味する。
【0035】
第1加算器107は、角度指令ω_<ref>・tを示すパルス列と角度補正信号とを加算する。加算後の信号は、励磁角度ω_<ext>(t)・tを示す。励磁角度ω_<ext>(t)・tは、以下の式(7)で表される。第1加算器107は、加算後の信号を励磁角度生成器108に出力する。
【0036】
【数7】
【0037】
励磁角度生成器108は、第1加算器107が出力した励磁角度ω_<ext>(t)・tを示す信号に基づいて、以下の式(8)及び式(9)で表される信号h_<1>(t)及び信号h_<2>(t)を生成する。
【0038】
【数8】
【0039】
【数9】
【0040】
信号h_<1>(t)は、位相変化が励磁角度の時間変化と同一なsin波である。信号h_<2>(t)は、位相変化が励磁角度の時間変化と同一なcos波である。すなわち、信号h_<1>(t)及びh_<2>(t)は位相変化が励磁角度の時間変化と同一な正弦波である。
【0041】
第2加算器109は、電流指令Iと振幅補正信号とを加算し、加算後の信号を電流振幅指令生成器110に出力する。電流振幅指令生成器110は、第2加算器109が出力した信号に励磁角度生成器108が生成した信号を乗算することで、上記式(1)及び式(2)で表される信号H(t)を生成する。
【0042】
電流制御器111は、電流振幅指令生成器110が生成した信号を受信する。電流制御器111は、受信した信号と同様の波形の信号(すなわち、信号H(t))をステッピングモータ9に印加するように、インバータ112の動作を制御する。
【0043】
インバータ112は、電流制御器111の制御によって動作し、波形H_<1>(t)の電流と波形H_<2>(t)の電流とをステッピングモータ9に印加する。
インバータ112とステッピングモータ9との間にはシャント抵抗113が位置する。シャント抵抗113に流れる電流を電流制御器111は取得する。電流制御器111は、取得したシャント抵抗113を流れる電流に応じて、波形H(t)の電流がステッピングモータ9に印加されるようにインバータ112の動作を制御する。すなわち、電流制御器111は、シャント抵抗113を流れる電流に基づくフィードバック制御によって、波形H(t)の電流がステッピングモータ9に印加されるようにインバータ112の動作を制御する。
【0044】
図4は、実施形態におけるステッピングモータ制御装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
角度指令取得端子101に、角度指令が入力される(ステップS101)。電流指令取得端子102に、電流指令が入力される(ステップS102)。ステッピングモータ9が回転を開始する(ステップS103)。エンコーダ103が回転中のステッピングモータ9から回転に応じた波形の信号を取得する(ステップS104)。角度演算器104が、ステップS104において取得された信号に基づいてエンコーダ角を取得する(ステップS105)。
【0045】
第1信号生成部151が、エンコーダ角に基づいて、第1信号を生成する(ステップS106)。第1振幅調整器152が、第1信号に対して、電流指令に応じた値である第1振幅調整値と電流指令とを乗算する(ステップS107)。第2信号生成部161が、エンコーダ角に基づいて、第2信号を生成する(ステップS108)。第2振幅調整器162が、第2信号に対して、電流指令に応じた値である第2振幅調整値と電流指令とを乗算する(ステップS109)。
【0046】
第1加算器107が、角度指令ω_<ref>・tを示すパルス列と振幅調整後の第1信号(すなわち、角度補正信号)とを加算し、励磁角度を示す信号を生成する(ステップS110)。ステップS110で生成された励磁角度を示す信号に基づいて、励磁角度生成器108は、信号h_<1>(t)と信号h_<2>(t)とを生成する(ステップS111)。第2加算器109が、電流指令Iと振幅調整後の第2信号(すなわち、振幅補正信号)とを加算する(ステップS112)。電流振幅指令生成器110は、ステップS112の加算の結果の信号と信号h_<1>(t)及び信号h_<2>(t)とを積算することで、信号H(t)を生成する(ステップS113)。電流制御器111は、インバータ112の動作をフィードバック制御によって制御することで、ステッピングモータ9に、波形H(t)の電流を印加する(ステップS114)。
【0047】
なお、ステップS106及びステップS107の処理が実行されるタイミングは、ステップS105の処理の後であってステップS110の処理の前であればよく、必ずしも、ステップS105の次に実行される必要は無い。なお、ステップS108及びステップS109の処理が実行されるタイミングは、ステップS105の処理の後であってステップS112の処理の前であればよく、必ずしも、ステップS107の次に実行される必要は無い。
【0048】
(実験結果)
図5は、実施形態のステッピングモータ制御装置1によって外乱の影響が抑制されることを示す実験結果の一例を示す図である。
図5(A)は、従来のステッピングモータにおける振動レベルと回転速度との関係を示す図である。図5(A)において、横軸は回転速度を表す。図5(A)において縦軸は振動レベルを表す。
図5(B)は、ステッピングモータ制御装置1の制御によって動作するステッピングモータ9の振動レベルと回転速度との関係を示す図である。図5(B)において、横軸は回転速度を表す。図5(B)において縦軸は振動レベルを表す。
【0049】
図5(A)は、基本波の振動レベルが略(-35)~略(-26)であることを示す。図5(A)は、第2高調波の振動レベルが略(-50)~略(-5)であることを示す。図5(A)は、第4高調波の振動レベルが略(-50)~略(-5)であることを示す。
図5(B)は、基本波の振動レベルが略(-50)~略(-30)であることを示す。図5(B)は、第2高調波の振動レベルが略(-50)~略(-25)であることを示す。図5(B)は、第4高調波の振動レベルが略(-50)~略(-20)であることを示す。
【0050】
このように、図5(A)が示す振動レベルは、図5(B)が示す振動レベルよりも低い。そのため、図5の実験結果は、実施形態のステッピングモータ制御装置1によって外乱の影響が抑制されたことを示す。
【0051】
従来は、ステップS104又はステップS105の次に周波数解析が必要であった。しかしながら、このように構成された実施形態におけるステッピングモータ制御装置1は、角度指令と電流指令とエンコーダ角度とに応じ、式(1)及び式(2)で表される波形の電流をステッピングモータ9に印加する。式(1)及び式(2)で表される波形の電流をステッピングモータ9に印加することで、コギングトルク及びトルクリップルの発生が抑制される。そのため、このように構成された実施形態におけるステッピングモータ制御装置1は周波数解析する必要が無いため、振動を抑制しつつステッピングモータ9を動作させる制御に要する演算量を軽減することができる。
【0052】
このように構成された実施形態におけるステッピングモータ制御装置1は、角度指令と電流指令とエンコーダ角度とに応じ、波形H(t)の電流によってステッピングモータ9を駆動する。波形H(t)は、基本波と第2高調波と第4高調波とが合成された合成波の波形に基づいた波形である。基本波は、位相の時間変化がエンコーダ角の時間変化に同一である正弦波である。ステッピングモータ制御装置1は、電流指令に応じた振幅調整値d_<1>及びd_<2>のによって振幅が調整された波形H(t)の電流をステッピングモータ9に印加する。そのため、ステッピングモータ制御装置1は、ステッピングモータ9の回転の速度によらず、コギングトルク及びトルクリップルの発生を抑制することができる。
【0053】
(変形例)
なお、ステッピングモータ9は必ずしも2相でなくてもよい。ステッピングモータ9は、2相以上の複数相であってもよい。
なお、励磁角度は、次数が4以上の偶数次の高調波に基づいてもよい。すなわち、式(3)及び式(5)において、合成波は、基本波と第2高調波と第4高調波とにくわえて、さらに、Q×ωenc(Qは6以上の偶数)を角速度とする正弦波の和であってもよい。
なお、励磁角度は、基本波と第2高調波と第4高調波とに代えて、基本波と、第3高調波と、次数が3の倍数の高調波とに基づいてもよい。次数が3の倍数の高調波は、例えば、第6高調波である。
【0054】
なお、電流指令は、所定の値であってもよいし、角度演算器104が取得したエンコーダ角に応じて生成された値であってもよい。
【0055】
なお、ステッピングモータ制御装置1は、ステッピングモータ9に流れる電流を検出可能なものを備えていれば必ずしもシャント抵抗113を備えなくてもよい。
【0056】
なお、上述した実施形態のステッピングモータ制御装置1の一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。ステッピングモータ制御装置1の一部とは、例えば、角度演算器104、角度指令補正部105及び電流指令補正部106である。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0057】
なお、角度指令取得端子101は、指令角度取得部の一例である。なお、電流指令取得端子102は、電流指令取得部の一例である。なお、式(4)における(d_<1>・I)は、第1振幅の一例である。なお、d_<1>は、第1振幅を電流指令で割り算した値の一例である。なお、式(6)における(d_<2>・I)は、第2振幅の一例である。なお、d_<2>は、第2振幅を電流指令で割り算した値の一例である。なお、第1合成波は第1信号の一例である。なお、第2合成波は、第2信号の一例である。なお、エンコーダ103は検出部の一例である。なお、エンコーダ103は、ステッピングモータ9の回転を検出可能であれば、必ずしもエンコーダでなくてもよい。
【0058】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…ステッピングモータ制御装置、 101…角度指令取得端子、 102…電流指令取得端子、 103…エンコーダ、 104…角度演算器、 105…角度指令補正部、 106…電流指令補正部、 107…第1加算器、 108…励磁角度生成器、 109…第2加算器、 110…電流振幅指令生成器、 111…電流制御器、 112…インバータ、 113…シャント抵抗
図1
図2
図3
図4
図5