(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】アレルギー抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/42 20060101AFI20230425BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230425BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20230425BHJP
A61K 135/00 20060101ALN20230425BHJP
【FI】
A61K36/42
A61P37/08
A61K127:00
A61K135:00
(21)【出願番号】P 2018212498
(22)【出願日】2018-11-12
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】517383939
【氏名又は名称】株式会社マックビー
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】長島 孝樹
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-217306(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0031569(KR,A)
【文献】国際公開第2007/111294(WO,A1)
【文献】Anti-Allergic Effects of Kakrol (Momordica dioica Roxb.),Bioscience of Microbiota, Food and Health,2012年,31(1),1-6
【文献】HISTAMINE RELEASE IN POST-CHALLENGE COELIAC DISEASE,The Lancet, 1980, Vol.315 Issue8161, p.202
【文献】J Clin Pathol., 1982, Vol.35, p.596-598
【文献】Agents and Actions, 1986, Vol.18, p.266-268
【文献】食生活, 2012, Vol.106 No.10, p.44-48
【文献】抗ヒスタミン薬の内服により症状を抑制し得た高分子量グルテニンが原因抗原の小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの1例,第68回日本皮膚科学会西部支部学術大会講演要旨集, 2017, Vol.79, p.317
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツルレイシからの抽出物を有効成分として含有し、
前記抽出物は、前記ツルレイシの葉及び茎のみからの抽出物であ
り、
前記抽出物は、発芽から50日間、摘蕾処理しながら栽培した前記ツルレイシの葉及び茎を採取して乾燥し、乾燥した前記葉及び茎を粉砕した後、粉砕された前記葉及び茎を精製水に浸漬して撹拌しながら100℃で30分間加熱し、その後、前記浸漬液を遠心分離し、得られた上清みである
グルテンアレルギー抑制剤
の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のグルテンアレルギー抑制剤
の製造方法であって、
前記グルテンアレルギー抑制剤は、錠剤状、粉末状、顆粒状、液状、ゲル状、カプセル状又はクリーム状の形態である
グルテンアレルギー抑制剤
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツルレイシからの抽出物を有効成分として含有するアレルギー抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
日本におけるアレルギー疾患の患者数は、パン食等を中心とした食生活の欧米化や、ハウスダストなどが要因となり、高度経済成長期頃から劇的に増加している。
【0003】
アレルギー疾患の原因となるアレルギー反応としては、花粉アレルギー、薬物アレルギー、グルテンアレルギー等の食物アレルギーなどがある。
【0004】
アレルギーは、グルテン等の抗原の体内への侵入により形質細胞から産出されたIgE抗体が、肥満細胞のレセプターである高親和性IgE受容体と結合した後、この肥満細胞に結合したIgE抗体が再侵入した抗原によって架橋(抗原抗体反応)されることにより、肥満細胞からケミカルメディエーターであるヒスタミンが遊離されて発症する。
【0005】
アレルギー疾患に羅患した患者に対して適用されるアレルギー抑制剤としては、例えば、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーターの遊離を抑制するメディエーター遊離阻害剤、遊離したヒスタミンがH1受容体に結合することを抑えることによってヒスタミンが末梢神経へ伝達されるのを阻害するヒスタミンH1-拮抗阻害剤等がある。これらのアレルギー抑制剤の大半は、アレルギー抑制効果を有する化合物を含有する合成医薬品である。
【0006】
一方、近年では、アレルギー疾患を改善、予防するために、天然物を使用したアレルギー抑制剤の研究が行われている。例えば、特許文献1には、鮭由来のプロテオグリカンを有効成分とするアレルギー抑制剤について報告されている。また、特許文献2には、クスノキに由来するリグナン類を有効成分とするアレルギー抑制剤について報告されている。
【0007】
アレルギーの中でも、グルテンアレルギーについては、抗原がパン食等の主食に由来することや、抗原としてのグルテンを加熱処理しても抗原性を抑制できないなどの問題が指摘されている。このような問題により、グルテンアレルギーの患者は、主食の原材料自体の変更を余儀なくされ、不自由な生活を強いられている。
【0008】
これらの状況に鑑み、天然物由来であってグルテンに対するアレルギー反応を抑制可能な組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-48150号公報
【文献】特開2012-31081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、本出願人は、天然物由来であってグルテンに対するアレルギー反応を抑制可能な組成物、即ち、天然物を使用したグルテンアレルギー抑制剤については、先行技術文献を見つけることができなかった。
【0011】
よって本発明は、天然物由来であってグルテンに対するアレルギー反応を抑制可能な組成物、即ち、天然物を使用したグルテンアレルギー抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願の発明者は、ツルレイシ(momordica charantia)からの抽出物が、抗原抗体反応を利用したELISA法によるグルテンの定量において阻害剤として作用することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、第1のグルテンアレルギー抑制剤として、
ツルレイシからの抽出物を有効成分として含有する
グルテンアレルギー抑制剤を提供する。
【0014】
また、本発明は、第2のグルテンアレルギー抑制剤として、第1のグルテンアレルギー抑制剤であって、
前記抽出物は、前記ツルレイシの葉及び茎のみからの抽出物である
グルテンアレルギー抑制剤を提供する。
【0015】
また、本発明は、第3のグルテンアレルギー抑制剤として、第1又は第2のグルテンアレルギー抑制剤であって、
錠剤状、粉末状、顆粒状、液状、ゲル状、カプセル状又はクリーム状の形態である
グルテンアレルギー抑制剤を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のグルテンアレルギー抑制剤は、ツルレイシからの抽出物を有効成分として含有している。これにより、本発明のグルテンアレルギー抑制剤は、グルテンに対するアレルギー反応を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態によるグルテンアレルギー抑制剤の製造工程の一例を示すフロー図である。
【
図2】阻害試験における吸光度を示すグラフである。
【
図3】阻害試験において添加した抽出原液(実施例)の濃度と阻害率との相関を示す片対数グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施の形態のグルテンアレルギー抑制剤は、ツルレイシ(momordica charantia)からの抽出物を有効成分として含有している。より詳しくは、本実施の形態のグルテンアレルギー抑制剤は、ツルレイシの葉及び茎のみからの抽出物を有効成分として含有している。この抽出物の主成分は、モモルディシン(momordicin)、チャランチン(charantin)及びコロソリン酸であるが、他の成分が入っていてもよい。また、ツルレイシ属(即ち、ニガウリ属 Momordica)の他の植物、例えば、ナガレイシ、ナンバンカラスウリ、カックロール等を、本発明のグルテンアレルギー抑制剤の原料として用いてもよい。また、本実施の形態のグルテンアレルギー抑制剤の原料となるツルレイシの葉及び茎は、着蕾させて育成されたツルレイシから採取されたものであってもよいし、着蕾させずに育成されたツルレイシから採取されたものであってもよい。しかしながら、着蕾させずに育成されたツルレイシにおいては、有効成分を葉及び茎に集約させることができるため、本発明のグルテンアレルギー抑制剤の原料としては、着蕾させずに育成されたツルレイシから採取された葉及び茎がより好ましい。
【0019】
本実施の形態のグルテンアレルギー抑制剤は、錠剤状、粉末状、顆粒状、液状、ゲル状、カプセル状又はクリーム状の形態を有している。これにより、本発明のグルテンアレルギー抑制剤は、経口摂取のみならず皮膚への直接塗布も可能な形態となっている。
【0020】
図1を参照して、本実施の形態のグルテンアレルギー抑制剤は、以下のように製造される。
【0021】
図1に示されるように、本実施の形態のグルテンアレルギー抑制剤は、step1(栽培工程)、step2(採取工程)、step3(抽出工程)及びstep4(分離工程)を経て製造される。換言すれば、本実施の形態のグルテンアレルギー抑制剤の製造工程は、栽培工程と、採取工程と、抽出工程と、分離工程とを備えている。
【0022】
まず、ツルレイシ(momordica charantia)を、つるに着蕾するまで常法に従って栽培し、着蕾した蕾をつるから摘み取り、栽培を継続する、栽培工程を遂行する。これにより、ツルレイシの有効成分を、葉及び茎に集約させることができる。なお、より多くの有効成分を葉及び茎に集約させるために、摘蕾処理は、出蕾した後できるだけ早く行うことが好ましく、出蕾した全ての蕾に対して行うことが好ましい。特に、出蕾した蕾の長さが1cmに達する前に摘蕾処理を行うことが好ましい。なお、本発明はこれに限定されず、植物ホルモンの投与や温度管理によって着蕾を抑制してもよい。
【0023】
栽培工程の遂行後、生育したツルレイシの葉及び茎を採取して乾燥し、本実施の形態のグルテンアレルギー抑制剤の原料とする、採取工程を遂行する。ツルレイシの葉及び茎の採取の方法としては、特に限定されないが、手摘みが好ましい。
【0024】
採取工程の遂行後、採取されたツルレイシの葉及び茎から、抽出物を回収する、抽出工程を遂行する。具体的には、ローラーや遠心分離機等で原料を潰すことにより抽出物を得る圧搾法、粉砕された原料を加熱水蒸気中に暴露して抽出物を回収する水蒸気蒸留法、及び所定の溶媒に溶出させて抽出物を得る溶媒抽出法を適宜用いることができる。ここで、抽出物の熱分解を避ける観点から、上述の圧搾法や溶媒抽出法が好ましく、また、圧搾による負荷を低減するため、溶媒抽出法がより好ましい。
【0025】
より詳しくは、本実施の形態の抽出工程は、粉砕工程と、浸漬工程とを備えている。即ち、本実施の形態の抽出工程においては、粉砕工程と、浸漬工程とをこの順に実施する。
【0026】
粉砕工程において、採取された葉及び茎は、適当な大きさに切断された後、粉砕機により粉砕される。なお、採取された葉及び茎を乾燥させてから粉砕することとしてもよい。粉砕機としては、各種ミル、乳鉢、ホモジナイザー及び超音波処理等のように物理的に粉砕する装置を用いてもよいし、セルラーゼ又はペクチナーゼ等の細胞壁を分解する酵素を使用して化学的に粉砕してもよい。また、凍結粉砕法により粉砕すれば、粉砕過程での有効成分の流出を最低限とすることができるため、より好ましい。この粉砕工程の遂行によって、原料の葉及び茎は、数μm~数百μmの粒径に調製される。
【0027】
粉砕工程の遂行後、粉砕された原料を適当な溶媒に浸漬させる、浸漬工程を遂行する。この浸漬工程において使用する溶媒は、水や各種有機溶媒を用いることができる。また、この工程で溶媒として使用される水は、塩類や残留塩素等の不純物が除去された状態のものが好ましい。例えば、蒸留水、RO水(逆浸透膜を通した水)、脱イオン水(イオン交換樹脂などにより金属イオン等を除去した水)等の純水であることが好ましい。加えて、この工程で溶媒として使用される有機溶媒の例としては、1価又は多価アルコール、エーテル、エステル、芳香族炭化水素等が挙げられる。例えば、取扱や入手の容易性を考慮すると、エタノール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、エチレングリコール(EG)、ポリエチレングリコール(PEG)、1,3-ブチレングリコール(BG)、グリセリン等が好ましい。
【0028】
この浸漬工程において、溶媒として水を使用した場合には、溶液を100℃に加熱することにより、抽出時間を短時間化することができる。また、この浸漬工程において、溶媒として有機溶媒を使用した場合には、溶媒の沸点等を考慮した上で加熱温度を決定すればよい。加えて、上記加熱中においては、溶液を撹拌することにより、より多くの成分を溶出させることができることから、抽出物の回収率を向上させることもできる。撹拌には、回転翼式のミキサーや、加熱と共に撹拌を行うことのできるヒートプレート付きマグネティックスターラー等を用いることもできるが、加熱しながら撹拌棒等で撹拌してもよい。
【0029】
なお、グルテンアレルギー抑制剤の生産量等に応じて、上記浸漬工程では、ソックスレー抽出法、高速溶媒抽出法(ASE法)、超音波抽出法、マイクロ波抽出法、高圧液体抽出法(PLE法)、超臨界流体抽出法(SFE法)等を用いてもよい。
【0030】
なお、本発明はこれに限定されず、抽出工程は、ナノ化工程を更に有していてもよい。即ち、抽出工程は、粉砕工程と、ナノ化工程と、浸漬工程とを順に遂行してもよい。より詳しくは、このナノ化工程では、粉砕工程の遂行後、原料の葉及び茎の粒径が数nm~数百nmの大きさになるまで更に微細化される。これにより、原料である葉及び茎の表面積を最大化し、抽出量を増加させることができる。また、このナノ化工程は、超高圧湿式微粒化法、超音速液滴衝突法、レーザーアブレーション法等を使用することができるが、ナノ化の方法はこれに限定されない。なお、クリーム剤や固形剤の剤型を有するグルテンアレルギー抑制剤については、このナノ化工程を省略することができる。
【0031】
抽出工程の遂行後、抽出物及び溶媒を含む液体部分(以下、「抽出原液」という。)と、葉及び茎の残渣部分とを分離し、抽出原液のみを得る、分離工程を遂行する。具体的な分離の方法としては、濾過機によって自然濾過、加圧濾過、減圧濾過を行うこととしてもよいし、遠心分離機によって分離してもよい。なお、抽出工程で使用した溶媒をそのままグルテンアレルギー抑制剤の溶剤として使用しない場合には、抽出原液から溶媒を更に分液する、溶媒分離工程を遂行してもよい。この溶媒分離工程の例としては、使用した溶媒が水の場合には緩やかに加熱して水分を蒸発させる方法や、使用した溶媒が有機溶媒の場合は当該溶媒のみが溶解することのできる別の溶媒によって分液する方法が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0032】
上記の抽出原液には、他の成分を含めることとしてもよい。例えば、ポリフェノール類、アミノ酸又はミネラル等を添加することができる。即ち、上記抽出工程は、ポリフェノール類、アミノ酸又はミネラル等を添加する添加工程を更に有していてもよい。添加されるポリフェノール類としては、皮膚の殺菌や抗菌等の観点からフラボノイド系(カテキン、アントシアニン、タンニン、ルチン、イソフラボン)が好ましく、皮脂の抗酸化作用を有するアントシアニン類が更に好ましい。なお、アントシアニン類を天然物から抽出する場合は、当該天然物に対して上記ナノ化工程を施してアントシアニンを抽出することとしてもよい。また、必要に応じて、アントシアニンを抽出する天然物(例えば草花等)と、ツルレイシの葉及び茎とを混合した後に粉砕してナノ化工程を行い、ツルレイシの成分と、アントシアニン類を同時に抽出することとしてもよい。添加されるアミノ酸は、必須アミノ酸のいずれでも構わない。添加されるミネラルとしては、ミネラルの主要元素であるナトリウム、マグネシウム、リン、硫黄、塩素、カリウム、カルシウムの他、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素等を添加してもよい。また、必要に応じて、ホホバ種子油などの植物由来エキス、海藻由来エキス、鉱物由来エキス、動物由来エキス、血行促進成分、ビタミン類等の栄養補給成分、保湿成分、香料、防腐剤等を添加してもよい。
【0033】
上記分離工程で得られた抽出原液を、適量の水及び増粘剤と混合して攪拌することにより、ゲル状又はクリーム状のグルテンアレルギー抑制剤を得る。また、上記分離工程で得られた抽出原液を、水やエタノール等の溶媒で適宜希釈、濃縮して、液状のグルテンアレルギー抑制剤を得る。
【0034】
上記分離工程を遂行後、抽出原液を乾燥して溶液中の溶媒を揮散させ、残留物を得る、乾燥工程を遂行する。
【0035】
この乾燥工程で得られた残留物に対して、乳清カルシウム、ナタネ硬化油、結晶セルロース、二酸化ケイ素及びビオチンを適量混合し、成型機で成形して、錠剤状のグルテンアレルギー抑制剤を得る。
【0036】
また、この乾燥工程で得られた残留物に対して、常法に従って、粉末状、顆粒状、カプセル状のグルテンアレルギー抑制剤を得る。
【0037】
以下、本発明の実施例及びグルテンアレルギー抑制効果の評価について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0038】
(原料の採取及び乾燥)
発芽から50日間、摘蕾処理しながら栽培したツルレイシの葉及び茎を採取し、水分が6重量%になるまで乾燥させた。
【0039】
(抽出原液の作製)
乾燥した葉及び茎50gを粉砕した後、粉砕された葉及び茎を精製水(日本薬局方)500mLに浸漬し、ヒートプレート付きマグネティックスターラーで撹拌しながら加熱し、100℃にて30分間沸騰させた。その後、10000rpmで15分間遠心分離し、上清みの部分を採取して抽出原液(実施例)を得た。
【0040】
(グルテンアレルギー抑制効果の試験方法)
得られた抽出原液(実施例)のグルテンアレルギー抑制効果の評価として、グルテンの定量に用いられるELISA法の抗原抗体反応の阻害試験を実施した。阻害試験の具体的な内容は以下の通りである。
【0041】
まず、グルテンのELISA定量キットとして、バイオメダル社製のGluten,ELISA Kit,Sandwich,Glutentox(96tests)を使用した。阻害試験として、まず上記のELISA定量キットに付属の標準グルテンを所定濃度に調整した溶液を作製し、この所定濃度に調整された標準グルテン溶液に対して、0w/v%,0.0023w/v%,0.0069w/v%,0.021w/v%,0.063w/v%,0.19w/v%,0.56w/v%,1.67w/v%,5w/v%の抽出原液(実施例)を1/2量添加した検液を作製したうえで、これらの検液に対して上記のELISA定量キットで抗原抗体反応を実施し、OD450nmにおける吸光度Aを測定した。また、対照試験1として、上記のELISA定量キットに付属の標準グルテンを所定濃度に調整した溶液のみを検液として、上記のELISA定量キットで抗原抗体反応を実施し、阻害試験と同様に吸光度Astを測定した。更に、対照試験2として、上記の抽出原液(実施例)のみを検液として、上記のELISA定量キットで抗原抗体反応を実施し、阻害試験と同様に吸光度Ablを測定した。測定された吸光度A,Astから、次式により検液に対応する抗原抗体反応の阻害率IRを算出した。
阻害率IR(%)=(Ast―A)/Ast*100
【0042】
(グルテンアレルギー抑制効果の試験結果及び評価)
図2は、阻害試験における、0w/v%,0.0023w/v%,0.0069w/v%,0.021w/v%,0.063w/v%,0.19w/v%,0.56w/v%,1.67w/v%,5w/v%の抽出原液(実施例)に係る吸光度Aを示したグラフである。また、
図3は、添加した抽出原液(実施例)の濃度と阻害率IRとの相関を示す片対数グラフである。これらの結果から、抽出原液(実施例)が、抗原抗体反応を利用したELISA法によるグルテンの定量において阻害剤として作用していることが理解される。即ち、抽出原液(実施例)の添加により、グルテンの定量に用いられるELISA法の抗原抗体反応が阻害されることが分かる。また、
図3から、添加した抽出原液(実施例)の濃度の上昇に伴い、阻害率IRの増加が認められ、50%阻害濃度(IC50)は0.37w/v%と算出された。なお、対照試験2において測定された吸光度A
blを、ブランクにおける吸光度と比較したところ、有意な差は認められなかったことから、抽出原液(実施例)はグルテン様活性を有しないことが確認された。
【0043】
これらの結果から、ツルレイシからの抽出物を有効成分として含有する本実施の形態のグルテンアレルギー抑制剤は、グルテンに対するアレルギー反応を抑制可能であることが理解される。
【0044】
(クリーム状のグルテンアレルギー抑制剤の調製)
得られた抽出原液と増粘剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)とを、重量比で抽出原液:増粘剤=1:49となるように混合することにより、クリーム状のグルテンアレルギー抑制剤を調製した。
【0045】
(液状のグルテンアレルギー抑制剤の調製)
得られた抽出原液5gにエタノール20gを加えてエタノール希釈液を得た後、このエタノール希釈液を30倍濃縮し、液状のグルテンアレルギー抑制剤を調製した。
【0046】
(錠剤状のグルテンアレルギー抑制剤の調製)
得られた抽出原液を乾燥して溶液中の溶媒を揮散させ、残留物を得た。この得られた残留物に対して、乳清カルシウム、ナタネ硬化油、結晶セルロース、二酸化ケイ素及びビオチンを適量混合し、成型機で成形して、錠剤状のグルテンアレルギー抑制剤を調製した。
【0047】
本発明のグルテンアレルギー抑制剤は、小麦やライ麦を原料として含有する食品に由来するアレルギーに対して緩和効果を有するものである。