(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】シート成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 51/12 20060101AFI20230425BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20230425BHJP
B29C 51/42 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
B29C51/12
B29C51/10
B29C51/42
(21)【出願番号】P 2019093071
(22)【出願日】2019-05-16
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】304050369
【氏名又は名称】株式会社浅野研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 一典
(72)【発明者】
【氏名】高井 章伍
(72)【発明者】
【氏名】西尾 翼
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212050(JP,A)
【文献】特開2004-102106(JP,A)
【文献】特開平06-305021(JP,A)
【文献】特開昭64-016629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00 - 51/46
B29C 33/00 - 33/76
B29C 48/00 - 48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口した内部空間に、シートの被覆対象である基材を載置する基台を、該内部空間の開口部より低い位置に設けた金型と、
前記シートを加熱する加熱部を有すると共に、前記内部空間と近接または離間する方向に移動可能に構成された熱板と、を備え、
前記金型にセットした前記シートを、前記熱板により加熱して押し付けることで、前記シートを、前記基台上の前記基材の外表面に被覆して成形するシート成形装置において、
前記シートを、前記熱板側と前記基台側との双方から選択的に吸引可能に構成された吸引部と、
前記シートを、少なくとも前記熱板側から加圧可能に構成された加圧部と、
前記シートに対し、前記吸引部による吸引と、前記加圧部による加圧との制御を行う制御部と、を有し、
前記熱板の前記加熱部には、前記シートに転写するシボの転写型であるパターンが形成されていること、
前記パターンは、転写するシボの単体部位に対応した型要素であるパターン要素を有し、転写する前記シボに対し、基準となる形状で前記パターン要素を設けた第1パターン部と、
前記第1パターン部に設けた前記パターン要素に対し、刻まれた深さ、刻まれた大きさ、または、刻まれた配置間隔のうち、少なくとも1つ以上に変化を付けて形成された前記パターン要素を設けた第2パターン部と、に区画して形成されていること、
を特徴とするシート成形装置。
【請求項2】
請求項
1に記載するシート成形装置において、
前記制御部は、前記シートにシボを転写するときに、前記熱板の前記加熱部に対し、シボの転写に要するシボ転写温度に前記シートを加熱する制御を行うと共に、前記シボ転写温度の状態にある前記シートを、前記吸引部により前記熱板側から吸引し、
シボの転写後、前記熱板の前記加熱部に対し、前記シボ転写温度から、前記シートの成形に要するシート成形温度に調整して前記シートを前記基材に被覆するとき、前記シート成形温度の状態にある前記シートを、前記吸引部により前記基台側から吸引すると同時に、この前記シートを、前記加圧部により前記熱板側から加圧する制御を行うように構成されていること、
を特徴とするシート成形装置。
【請求項3】
架台上にセットされたシートと近接または離間する方向に移動可能に構成され、前記シートを加熱する加熱部を有する熱板を備え、前記熱板により前記シートを加熱して押し付けることで、前記架台上の前記シートを成形するシート成形装置において、
前記シートを、前記熱板側から吸引可能に構成された吸引部と、
前記吸引部を制御する制御部と、を有し、
前記熱板の前記加熱部には、前記シートに転写するシボの転写型であるパターンが形成されていること、
前記パターンは、転写するシボの単体部位に対応した型要素であるパターン要素を有し、 転写する前記シボに対し、基準となる形状で前記パターン要素を設けた第1パターン部と、
前記第1パターン部に設けた前記パターン要素に対し、刻まれた深さ、刻まれた大きさ、または、刻まれた配置間隔のうち、少なくとも1つ以上に変化を付けて形成された前記パターン要素を設けた第2パターン部と、に区画して形成されていること、
を特徴とするシート成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱板によりシートを加熱して成形するシート成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製品の中には、シボを施したシートが、基材の外表面に貼り合せて被覆されているものがある。この種のシボ付き樹脂製品は、例えば、自動車用内装品等として、広く流通している。従来、シボ付き樹脂製品の製造工程では、成形前に予め、平坦な表面をなすシボ転写前のシートに、転写によりシボを付す前工程が行われている。その後工程として、表面上にシボを一様に付したシボ転写後のシート(シボ付きシート)が、シート成形装置に供給される。シート成形装置では、シボ付きシートが、金型上方にある熱板により、加熱されながら、密閉の下で、金型内にセットした基材に押し付けられることで、基材に密着した状態に被覆して成形される。そのシート成形装置の一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の装置は、前述した後工程の実施にあたり、使用される、熱板加熱による熱成形装置である。この熱成形装置は、シートとの接触面となる熱板の加熱面に対し、その面粗度を10μm以下に粗くした微細な凹凸を設けている。この凹凸により形成されるエアの流通部が、熱板の加熱面に付着したシートに確保されている。このエアの流通部は、加熱によるシートの軟化に伴い、エア溜まりの発生を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以下の問題があった。市場では近年、シボ付き樹脂製品のニーズは、多品種少量生産の傾向にある。その一方で、従来のシート成形装置を用いたシボ付き樹脂製品の成形では、供給されるシボ付きシートは、シートメーカーによる量産体制の下で製造された既製品である。そのため、シートメーカーが、顧客の多様なニーズに応えようと、顧客の仕様に合ったシボ付きシートを、その都度、個別に作製しようとすると、量産体制から多品種少量生産への対応に困難を伴い、コスト高を招く場合がある。
【0006】
加えて、シボ付きシートの既製品を従来のシート成形装置に供給して、シボ付き樹脂製品が成形されると、以下の問題がある。シボ付き樹脂製品が、三次元曲面形状である場合、被覆されているシボ付きシートのうち、特に曲率半径が小さい湾曲部や、R状コーナー部等の部分が、他の部分よりも、外側に引き伸ばされる。その結果、このような部分では、シボが拡がって薄くなってしまう。そのため、成形前、たとえシボが一様にシボ付きシートに付されていても、成形後には、製品全体でシボが不均一な態様となってしまう。これは、製品の品質管理上、問題になる。
【0007】
特許文献1の装置は、加熱面に微細な凹凸を設けた熱板を備えている。このような微細な凹凸を、シートに転写するシボの型として利用することも考えられる。シボの型では一般的に、シボの転写面が、数十~数百μmといったある程度の高低差を有した状態で、配置位置に規則性を持って刻み込まれていることが必要である。しかしながら、特許文献1に記載された凹凸は、必要とされる数十~数百μm程の高低差に足りていない。そのため、特許文献1に記載された凹凸では、意匠性を有したシボがシートに明瞭に転写できない。従って、特許文献1に記載された凹凸は、配置位置に規則性を持たず、シボの型に必要な寸法形状を満たさない程に浅いため、シボの転写型として機能しない。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、シボ付きのシートが基材の外表面に被覆してなる製品を製造するにあたり、製造に係る工数を低減することができるシート成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様であるシート成形装置は、上方が開口した内部空間に、シートの被覆対象である基材を載置する基台を、該内部空間の開口部より低い位置に設けた金型と、前記シートを加熱する加熱部を有すると共に、前記内部空間と近接または離間する方向に移動可能に構成された熱板と、を備え、前記金型にセットした前記シートを、前記熱板により加熱して押し付けることで、前記シートを、前記基台上の前記基材の外表面に被覆して成形するシート成形装置において、前記シートを、前記熱板側と前記基台側との双方から選択的に吸引可能に構成された吸引部と、前記シートを、少なくとも前記熱板側から加圧可能に構成された加圧部と、前記シートに対し、前記吸引部による吸引と、前記加圧部による加圧との制御を行う制御部と、を有し、前記熱板の前記加熱部には、前記シートに転写するシボの転写型であるパターンが形成されていること、を特徴とする。
【0010】
この態様によれば、シボを付したシートを基材の外表面に被覆した製品の製造にあたり、シートへのシボの転写と、シートと基材との熱成形とが、一つの装置で同時に行うことができる。そのため、シートへのシボを転写する前工程と、シボ付きシートの基材に熱成形する後工程とを、それぞれ別々の装置で個々に行っていた従来の製造工程に比べ、使用する加工装置の数と作業の工数とが削減できる。それ故に、製品の製造コストを抑制することができる。また、多様化した意匠のシボを付したシートに対し、オーダーメードにより市場から多品種少量生産で求められる場合がある。この場合であっても、本発明に係るシート成形装置は、多品種少量生産による製品の製造を容易に行うことができる。特に、オリジナルデザインや、商品化されていないデザイン等、多様なニーズに対応した意匠のシボを付したシートが、市場から求められることもある。本発明に係るシート成形装置は、このようなシートで被覆された製品を、市場の要求に柔軟に対応して、安価に製造することができるようになる。
【0011】
なお、本発明に係るシート成形装置において、「パターン」とは、シートの表面に、意匠上、特徴のある図柄や模様、文字、立体的造形等によるシボを表現するため、このようなシボをシートの表面に転写させるための転写型を意味している。このシボの転写型は、本来、シートを加熱するその熱源を設けた熱板の加熱部に、加工機によって、例えば、数十から数百μm程度の高低差を設けた凹凸を、配置位置に規則性を持って刻み込まれている。本発明に係るシート成形装置では、このような凹凸を熱板の加熱部に刻み込むことにより、シボを構成する単体要素の形状に応じた型が、単数または、複数の集合体として形成されたものを、「パターン」と定義している。
【0012】
上記の態様においては、前記パターンは、転写するシボの単体部位に対応した型要素であるパターン要素を有し、転写する前記シボに対し、基準となる形状で前記パターン要素を設けた第1パターン部と、前記第1パターン部に設けた前記パターン要素に対し、刻まれた深さ、刻まれた大きさ、または、刻まれた配置間隔のうち、少なくとも1つ以上に変化を付けて形成された前記パターン要素を設けた第2パターン部と、に区画して形成されていること、が好ましい。
【0013】
この態様によれば、シボを付したシートを基材の外表面に被覆した製品が、たとえ三次元曲面を呈した立体形状をなしていても、基材の外表面の形状によらず、製品全体の中で写し出されるシボは、濃淡や大きさに差異のない、均一で一様な様相で転写される。
【0014】
上記の態様においては、前記制御部は、前記シートにシボを転写するときに、前記熱板の前記加熱部に対し、シボの転写に要するシボ転写温度に前記シートを加熱する制御を行うと共に、前記シボ転写温度の状態にある前記シートを、前記吸引部により前記熱板側から吸引し、シボの転写後、前記熱板の前記加熱部に対し、前記シボ転写温度から、前記シートの成形に要するシート成形温度に調整して前記シートを前記基材に被覆するとき、前記シート成形温度の状態にある前記シートを、前記吸引部により前記基台側から吸引すると同時に、この前記シートを、前記加圧部により前記熱板側から加圧する制御を行うように構成されていること、が好ましい。
【0015】
この態様によれば、シボが高い精度で転写されたシートを、基材の外表面に沿い、皺や捩れを抑えた状態で張設することができる。
【0016】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の態様であるシート成形装置は、架台上にセットされたシートと近接または離間する方向に移動可能に構成され、前記シートを加熱する加熱部を有する熱板を備え、前記熱板により前記シートを加熱して押し付けることで、前記架台上の前記シートを成形するシート成形装置において、前記シートを、前記熱板側から吸引可能に構成された吸引部と、前記吸引部を制御する制御部と、を有し、前記熱板の前記加熱部には、前記シートに転写するシボの転写型であるパターンが形成されていること、前記パターンは、転写するシボの単体部位に対応した型要素であるパターン要素を有し、転写する前記シボに対し、基準となる形状で前記パターン要素を設けた第1パターン部と、前記第1パターン部に設けた前記パターン要素に対し、刻まれた深さ、刻まれた大きさ、または、刻まれた配置間隔のうち、少なくとも1つ以上に変化を付けて形成された前記パターン要素を設けた第2パターン部と、に区画して形成されていること、を特徴とする。
【0017】
この態様によれば、本発明に係るシート成形装置を用いてシートを成形するにあたり、オリジナルデザインや、商品化されていないデザイン等、所望とする意匠のシボを付したシートを、市場の要求に柔軟に対応して、安価に提供することができるようになる。特に、多様化した意匠のシボを付したシートに対し、オーダーメードにより市場から多品種少量生産で求められる場合がある。この場合であっても、本発明に係るシート成形装置は、多品種少量生産によるシートの製造を容易に行うことができる。また、本発明に係るシート成形装置で成形したシボ付きシートが、三次元曲面を呈した立体形状の製品の外表面に被覆される場合がある。このような場合に、製品全体の中で写し出されるシボは、濃淡や大きさに差異のない、均一で一様な様相を呈するようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るシート成形装置によれば、シボ付きのシートが基材の外表面に被覆してなる製品を製造するにあたり、製造に係る工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1に係るシート成形装置の構成を示す概略図であり、製品の製造工程のうち、このシート成形装置にシートと基材を金型にセットした状態を示す第1工程図である。
【
図2】
図1に示す第1工程図に続き、熱板を下降させてシートの加熱と同時に、シボを転写している状態を示す第2工程図である。
【
図3】
図2に示す第2工程図に続き、加熱により軟化したシートを基材に被覆している状態を示す第3工程図である。
【
図4】
図3に示す第3工程図に続き、熱板の上昇後、成形後のシートが基材に被覆した製品を、金型から取り出す状態を示す第3工程図である。
【
図5】平坦状のシートにシボが一様に転写された様子を模式的に示す斜視図である。
【
図6】実施形態1に係るシート成形装置に装着されている熱板のパターン全体を、模式的に示す平面図である。
【
図7】
図6に示す加熱面部に形成されたパターンのパターン要素を拡大して示した平面図である。
【
図9】実施形態1に係るシート成形装置に構成された電磁弁の構造を示す模式図である。
【
図10】実施形態2に係るシート成形装置の構成を示す概略図であり、シボの転写工程のうち、このシート成形装置にシートを架台にセットした状態を示す第1工程図である。
【
図11】
図10に示す第1工程図に続き、熱板を下降させてシートの加熱と同時に、シボを転写している状態を示す第2工程図である。
【
図12】
図11に示す第3工程図に続き、熱板の上昇後、シボ転写後のシートを、架台から取り出す状態を示す第3工程図である。
【
図13】従来技術に係るシート成形装置により、シボ付きのシートを成形して基材に被覆した製品の一例を、一部に断面図を用いて示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るシート成形装置を具体化した実施形態1,2について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るシート成形装置の構成を示す概略図である。また、この
図1は、製品の製造工程のうち、このシート成形装置にシートと基材を金型にセットした状態を示す第1工程図でもある。なお、
図1以降の各図では、説明の便宜上、装置構成を簡略化して模式的に表した概略図としている。
図13は、従来技術に係るシート成形装置により、シボ付きのシートを成形して基材に被覆した製品の一例を、一部に断面図を用いて示した説明図である。
【0022】
本実施形態1に係るシート成形装置1は、
図13に示すように、三次元曲面を呈した製品2X等に挙げられるような製品2を製造するのに用いられる。製品2は、シボ5を付した転写後のシート4(成形後シート4B)を、基材3の外表面3aに沿う形状に成形して、基材3の外表面3aに貼り合せて被覆してなる。シート4は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)等、一般的な熱可塑性の樹脂製シートである。シート成形装置1は、本実施形態1では、主として、厚さ200~500μm程度のシート4を、熱成形の対象としている。勿論、シート4の厚みが、200~500μmの範囲外であっても良い。
【0023】
なお、JIS(日本工業規格)の包装用語による規格は、厚さ250μm以上の薄板状のプラスチック材をシートとし、厚さ250μm未満の膜状のプラスチック材をフィルムとして、規定している。しかしながら、本実施形態1,2では、シート成形装置1で熱成形するプラスチック材をその厚みで区別せず、フィルムの範疇にある厚さのプラスチック材であっても、シートと総称している。
【0024】
次に、シート成形装置1の構成について、説明する。シート成形装置1は、金型10にセットされるシボ転写前の成形前シート4A(シート4)を、密閉状態の下で、熱板20により加熱しながら押し付けることで、基台13上の基材3の外表面3aに被覆して成形する装置である。
図1に示すように、シート成形装置1は、金型10と、熱板20と、電気制御盤30(制御部)と、温度制御ユニット31(制御部)と、吸引部40と、加圧部50と、電磁弁64等を備えている。
【0025】
はじめに、金型10について、説明する。金型10は、金属製の部材からなる。金型10は、後述する熱板20の下側で、リニア方向のスライド機構を具備した架台上に載置されている。これにより、金型10は、シート4の供給位置と、熱板20による成形位置(
図1に示す位置)との間を移動可能に設けられている。
【0026】
金型10は、シート4の熱成形を担う役割を有する。金型10は、上方が開口した内部空間11Sを有した有底筒体状に形成されている。金型10の内部空間11Sには、基台13が、開口部11より低い位置に設けられている。基台13は、シート4の被覆対象である基材3を載置して保持する。金型10の開口部11側で、内部空間11Sの外周に位置する外周縁面12には、シール部材15が設けられている。成形前シート4A(シート4)は成形時に、本実施形態1では、
図1に示すように、金型10の外周縁面12に載置される。外周縁面12に載置したシート4は、基台13に保持した基材3上方に配置されてセットされる。金型10の内部空間11Sには、エアの流路である金型側流路61と連通するエア流通孔14が設けられている。
【0027】
次に、熱板20について、説明する。熱板20は、金型10の内部空間11Sの開口部11と近接または離間する方向に移動可能に設けられている。熱板20は、加熱によるシート4の軟化と、シート4にシボ5を転写する役割を担う。熱板20は、例えば、炭素鋼材、アルミニウム材等の金属材からなる。熱板20は、シボ転写前の状態にある平坦状の成形前シート4A(シート4)を加熱する加熱面部21を有する。
【0028】
熱板20は、加熱面部21とは反対側に、加熱面部21の熱源とするヒータ23を有している。ヒータ23により加熱面部21から加熱できる温度は、一般的な熱可塑性シートの軟化温度範囲として、80~250℃である。金型10の外周縁面12に載置したシート4は、熱板20の加熱面部21下方に配置されて加熱される。ヒータ23は、温度制御ユニット31を介して、電気制御盤30と電気的に接続されている。
【0029】
電気制御盤30は、例えば、熱板20の昇降動作、金型10のスライド動作、真空ポンプ41やコンプレッサ51の運転、電磁弁64の作動等を制御する。熱板20の加熱面部21の温度は、温度制御ユニット31により、任意の設定温度に調整可能になっている。
【0030】
図6は、実施形態1に係るシート成形装置に装着されている熱板のパターン全体を、模式的に示す平面図である。
図7は、
図6に示す加熱面部に形成されたパターンのパターン要素を拡大して示す平面図である。
【0031】
また、熱板20は、成形前シート4Aに対し、加熱によりパターン25に基づくシボ5を転写する。これと同時に、この熱板20は、基材3の外表面3aへの被覆に必要な加熱を行う機能を有する。すなわち、熱板20の加熱面部21には、
図6に示すように、パターン25が施されている。パターン25は、平坦なシボ転写前のシート4(成形前シート4A)に転写するシボ5の転写型である。製品2において、基材3に被覆した成形後シート4Bに写るシボ5が均一となるよう、パターン25は、基材3の外表面3aの形状に対応して調整された形態で形成されている。
【0032】
ここで、パターン25の態様について、
図5及び
図13を用いて、詳しく説明する。
図5は、平坦状のシートにシボが一様に転写された様子を模式的に示す斜視図である。熱成形品の中には、
図13に示すように、製品2Xのような三次元曲面形状の製品2もある。従来、このような曲面状製品を製造するにあたり、従来技術に係るシート成形装置では、
図5に示すように、前もってシボ5を一様に転写されたシート4が、金型や熱板のある成形部に供給されて、熱成形されていた。
【0033】
シボ5は元々、一様の大きさや深さ、配置間隔でシート4に写されている。他方、
図13に示すように、製品2Xでの基材3の外表面3aには、その一部をなす湾曲部位やコーナー部位が存在する。製品2Xでは、基材3の外表面3aを密着して被覆するシート4のうち、このような湾曲部位等に貼付されている部分は、外表面3aの形状に沿って外側に引き伸ばされる。そのため、外表面3aにある湾曲部位やコーナー部位に写し出されるシボ5は、その他の部分に比べ、シート4の部分的な伸長に伴って変形している。具体的には、製品2Xに写し出されるシボは、個々の単体要素の集合体である。製品2Xの湾曲部位等で写し出されるシボの単体要素は、大きさの変化(拡張したシボ)や深さに変化(薄くなったシボ)、配置間隔に変化(隣接するシボの単体要素同士がより近接)を生じたシボ変形部5X(
図6中、ドット表示の粗い部分)となる。それ故に、製品2X全体でシボ5が不均一な態様となる。従って、製品2Xは、品質管理上、問題になる。
【0034】
実施形態1に係るシート成形装置1では、熱板20の加熱面部21に、パターン25が設けられている。パターン25は、シボ変形部5Xの発生を回避する目的で形成されている。パターン25は、基材3の外表面3aのうち、その一部をなす湾曲部位、またはコーナー部位の形状に応じて、刻まれた深さ、刻まれた大きさ、または、刻まれた配置間隔のうち、少なくとも1つ以上に変化を付けて形成されている。具体的には、パターン25は、加熱面部21内で、例えば、本実施形態1では、第1パターン部25Aと第2パターン部25Bとに区画して形成されている。
【0035】
図6及び
図7に示すように、パターン25は、転写するシボ5の単体部位に対応した型要素であるパターン要素25Sを有している。第1パターン部25Aと第2パターン部25Bでは、
図7に示すように、パターン要素凸部25Saと、パターン要素凹部25Sbとからなる。パターン要素凸部25Saは、シボ5を転写した後のシート4で、その表面にシボ5の凹部を形成する機能を有する。パターン要素凹部25Sbは、シボ5を転写した後のシート4で、その表面にシボ5の凸部を形成する機能を有する。パターン要素凸部25Saとパターン要素凹部25Sbとの高低差は、シート4に写すシボ5の使用によっても異なるが、概ね0.1mmである。パターン要素凸部25Sa及びパターン要素凹部25Sbでは、その表面粗さは、0.5μm以下となっている。
【0036】
第1パターン部25Aは、
図5に示す一様のシボ5と同等、またはそれに近い状態で転写を行うシボ5向けの転写型である。換言すれば、第1パターン部25Aは、基材3の外表面3aへの被覆で、転写されるシボ5にほとんど、あるいは全く変化を生じない部分に用いる基準の転写型となっている。第1パターン部25Aでは、転写するシボ5に対し、基準となる形状でパターン要素25S群を形成してなる。
【0037】
第2パターン部25Bは、被覆するシート4全体のうち、シボ変形部5Xの範囲に相当するシボ5の転写を担うパターン要素25S群である。第2パターン部25Bの形成にあたり、製品2X全体で生じるシボ変形部5Xの範囲は、前もって特定されている。この前提条件の下で、第2パターン部25Bは、第1パターン部25Aに設けたパターン要素25Sに対し、刻まれた深さ、刻まれた大きさ、または、刻まれた配置間隔のうち、少なくとも1つ以上に変化を付けた形状でパターン要素を形成してなる。具体的には、第2パターン部25Bに設けたパターン要素25Sは、第1パターン部25Aに比べ、大きさを少し縮小した処理や、深さを少し深くした処理、隣接するパターン要素25S同士の配置間隔を少し狭めた処理等を、適宜調整して形成されたシボ5向けの転写型である。
【0038】
このようなパターン25は、コンピュータ数値制御により、予め設定入力した加工位置の座標に基づいて、パターン要素を刻む加工機で、形成されることが好ましい。その加工機の一例として、CNC(CNC:Computerized Numerical Control)マシニングセンタ、CNCレーザ彫刻加工機等の加工機が挙げられる。その理由について、立体形状の製品2Xを挙げて説明する。
【0039】
製品2Xで生じたシボ変形部5Xの領域を知得するにあたり、例えば、コンピュータ数値制御を装備した三次元測定機等の計測機器により、製品2Xのシボ変形部5Xの領域を計測する場合が考えられる。この場合、シボ変形部5Xの領域を示す各々のポイントに関し、その座標値が測定を通じて取得できる。
【0040】
前述した加工機により、第2パターン部25Bのような、基準の転写型に調整を加えるパターン部の領域が加工される。このとき、計測機器から取得したこのような座標の実測値を、加工機によりこのパターン部の領域の加工位置の座標値として、フィードバックすることが可能になる。また、本実施形態1において、基準となる第1パターン部25Aの転写型に対し、第2パターン部25Bで形成するパターン要素25Sの形状について、調整を加えたい場合もある。それ故に、このようなパターン要素25Sの形状を調整するときに、第2パターン部25Bの範囲や、パターン要素25Sの大きさや深さ等が、設定入力した加工位置の座標値を基に、微調整し易くなるからである。これにより、生じ得るシボ変形部5Xの範囲に的確に適合した第2パターン部25Bが、精度を高くして形成することができる。ひいては、製品は、高い品質を持って仕上げられる。
【0041】
次に、吸引部40及び加圧部50について、
図1と
図9を用いて説明する。
図9は、実施形態1に係るシート成形装置に構成された電磁弁の構造を示す模式図である。
【0042】
前述したように、金型10の内部空間11Sには、金型側流路61と連通するエア流通孔14が設けられている。シート成形装置1による製品2の成形後には、シート4の一部がトリミングされる。エア流通孔14は、シート4のうち、トリミング後に廃棄される部位にあることが好ましい。具体的には、成形後シート4Bのうち、内部空間11Sに配置されている部分に対し、金型10の外周縁面12と熱板20の当接面22との挟持部分の近傍部位は、熱成形の完了後にカットされる。エア流通孔14は、製品2の意正面を妨げないこのような近傍部位にあると良い。後述する製品2の第2工程で、シート4の吸引時に、エア流通孔14による痕跡を、吸着したシート4に残さないためである。
【0043】
金型側流路61は、加圧部50に接続されて連通している。加圧部50は、コンプレッサ51と加圧用タンク52とからなる。加圧用タンク52は、コンプレッサ51によって圧縮された空気を貯留する。
【0044】
また、熱板20には、
図1に示すように、エアの流路である熱板側流路62と連通する微細なエア流通孔24が設けられている。熱板側流路62は、吸引部40に接続されて連通している。吸引部40は、真空ポンプ41と真空用タンク42とからなる。真空用タンク42は、真空ポンプ41によって減圧された状態を維持できる。真空用タンク42は、減圧ロスを小さくするのに有効となる。
【0045】
金型側流路61は、接続流路63と並列に接続されて連通している。また、熱板側流路62も、接続流路63と並列に接続されて連通している。接続流路63には、電磁弁64が配管されている。電磁弁64は、電気制御盤30により電気的に制御される。電磁弁64は、
図9に示すように、流通するエアの流路を、5通りの流体制御を可能とするバルブである。具体的には、真空ポンプ41が、熱板側流路62に連通してエアを吸引する第1の流体制御である。真空ポンプ41と金型側流路61との連通によりエアの吸引と、コンプレッサ51と熱板側流路62との連通によりエアの加圧との双方を同時に行う第2の流体制御である。真空ポンプ41及びコンプレッサ51が、金型側流路61と熱板側流路62との連通を遮断する第3の流体制御である。コンプレッサ51が、金型側流路61に連通してエアを加圧する第4の流体制御である。すなわち、吸引部40は、シート4を、熱板20側と基台13側との双方から選択的に吸引可能に構成されている。加圧部50は、シート4を、少なくとも熱板20側から加圧可能に構成されている。電気制御盤30と共に電磁弁64が、吸引部40による吸引と、加圧部50による加圧との制御を行う。
【0046】
次に、シート成形装置1を用いた製品2の製造工程について、
図1~
図4を用いて説明する。
図2は、
図1に示す第1工程図に続き、熱板を下降させてシートの加熱と同時に、シボを転写している状態を示す第2工程図である。
図3は、
図2に示す第2工程図に続き、加熱により軟化したシートを基材に被覆している状態を示す第3工程図である。
図4は、
図3に示す第3工程図に続き、熱板の上昇後、成形後のシートが基材に被覆した製品を、金型から取り出す状態を示す第4工程図である。
【0047】
図1に示すように、製品2の第1工程では、金型10は、成形位置から離れた待避位置に配置されている。金型10の待避位置では、基材3は、その外表面3aを上向きとする姿勢で、金型10の内部空間11Sの基台13上にセットされる。その後、シート成形装置1に搬入された成形前シート4Aが、大気圧の下、金型10の外周縁面12にセットされる。これにより、金型10の内部空間11Sの開口部11は、成形前シート4Aによって塞がれる。基材3と成形前シート4Aが金型10にセットされたら、金型10を、成形位置までスライドさせる。このとき、熱板20は、金型10と離間した待避位置にある。成形位置に到達した金型10と熱板20との隙間は、例えば、距離5mm程度になっている。金型10が成形位置に到達後、熱板20を、金型10に向けて下降させる。
【0048】
次に、
図2に示すように、製品2の第2工程では、下降した熱板20の当接面22と、金型10の外周縁面12とが、シール部材15と密着した状態で、外周縁面12にセットした成形前シート4Aを挟持する。これにより、金型10の内部空間11Sは、その外部との間で気密となる。次に、熱板20のヒータ23を作動させ、加熱面部21を、一例とするシボ転写温度180℃まで昇温させる。これと同時に、真空ポンプ41を作動させ、電磁弁64では第1の流体制御とし、金型10の外周縁面12にセットされたシート4を吸引する。これにより、成形前シート4A(シート4)は、加熱により軟化した状態で、加熱面部21のパターン25に吸着される。所定の時間、この吸着状態を維持することで、シボ5が、パターン25に基づいてシート4に転写される。
【0049】
次に、
図3に示すように、製品2の第3工程では、シボ5の転写が完了した時点で、温度制御ユニット31により、加熱面部21を、シボ転写温度180℃から、一例とするシート成形温度160℃に降温させる。また、真空ポンプ41の作動を一旦停止し、シート4の吸引を止める。電磁弁64を第3の流体制御に切替える。これにより、内部空間11Sに対し、シート4を挟む上下の領域に圧力差が生じる。すると、シボ5の転写後のシート4は、熱板20の加熱面部21と剥離して解放される。
【0050】
次いで、電磁弁64を第2の流体制御に切替える。真空ポンプ41を作動させ、金型10側からシート4を吸引する。この吸引と同時に、コンプレッサ51も作動させ、熱板20からこのシート4を加圧する。これにより、シボ5を転写した軟化状態のシート4は、金型10側からのエアの吸引と、熱板20側からのエアの加圧との差圧により、基台13上の基材3の外表面3aに沿って覆い被さる。また、このシート4は、基材3の外表面3aに押し付けられる。このシート4はその後、融着した基材3の外表面3aに密着して貼り合わされる。そして、このシート4は、金型10の内部空間11Sの内壁に沿って熱変形した成形後シート4Bとなる。
【0051】
図8は、
図1中、X部の拡大図である。ここで、熱板20の加熱面部21のパターン25には、
図8に示すように、表面処理層28が積層されていても良い。表面処理層28は、接触したシート4に対する離型性、及びシート4への加熱温度に対する耐熱性を具備した材料からなる。加熱面部21への表面処理層28は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンや、その他のフッ素系樹脂等による被覆処理層である。このような表面処理層28により、製品2の第3工程で、加熱面部21のパターン25に吸着されていた軟化状態のシート4が、シボ5の転写完了後、加熱面部21からより剥離し易くなるからである。なお、表面処理層28に代えて、化学的に安定で耐熱性を有した離型剤等が、加熱面部21に塗布されていても良い。
【0052】
次に、
図4に示すように、製品2の第4工程では、基材3の外表面3aに対し、シート4の貼付後、真空ポンプ41とコンプレッサ51の双方の作動を停止する。また、電磁弁64を第3の流体制御に切替える。これにより、内部空間11Sを大気圧下に戻す。次に、熱板20を上昇させて熱板20の待避位置に移動させる。これにより、熱板20と金型10とが離間する。また、金型10を、成形位置から待避位置までスライドさせる。次に、金型10の待避位置で、製品2を金型10から取り出す。これで、製品2の製造工程に係る一連の工程は完了する。かくして、基材3の外表面3aにシート4を被覆した製品2が、シート成形装置1によって製造される。
【0053】
次に、本実施形態1に係るシート成形装置1の作用・効果について説明する。本実施形態1に係るシート成形装置1では、前述したように、熱板20の加熱面部21に、シボ転写前のシート4に転写するシボ5の転写型であるパターン25が形成されている。熱板20は、シート4に対し、パターン25に基づくシボ5を転写すると共に、基材3の外表面3aへの被覆に必要な加熱を行うこと、を特徴とする。
【0054】
この特徴により、製品2Xのほか、製品2等の製造にあたり、シート4へのシボ5の転写と、シート4と基材3との熱成形とが、一つの装置で同時に行うことができる。そのため、シートへのシボを転写する前工程と、シボ付きシートの基材に熱成形する後工程とを、それぞれ別々の装置で個々に行っていた従来の製造工程に比べ、使用する加工装置の数と作業の工数とが削減できる。それ故に、製品2等の製造コストを低減することできる。
【0055】
従って、本実施形態1のシート成形装置1によれば、シボ5付きのシート4が基材3の外表面3aに被覆してなる製品2等を製造するにあたり、製造に係る工数を低減することができる、という優れた効果を奏する。
【0056】
また、多様化した意匠のシボ5を付したシート4に対し、オーダーメードにより市場から多品種少量生産で求められる場合がある。この場合であっても、シート成形装置1は、多品種少量生産による製品2等の製造を容易に行うことができる。特に、オリジナルデザインや、商品化されていないデザイン等、多様なニーズに対応した意匠のシボ5を付したシート4が、市場から求められることもある。シート成形装置1は、このようなシート4で被覆された製品2を、市場の要求に柔軟に対応して、安価に製造することができるようになる。
【0057】
また、本実施形態1に係るシート成形装置1では、前述したように、パターン25は、転写するシボ5の単体部位に対応した型要素であるパターン要素25Sを有し、転写するシボ5に対し、基準となる形状でパターン要素25Sを設けた第1パターン部25Aと、第1パターン部25Aに設けたパターン要素25Sに対し、刻まれた深さ、刻まれた大きさ、または、刻まれた配置間隔のうち、少なくとも1つ以上に変化を付けて形成されたパターン要素25Sを設けた第2パターン部25Bと、に区画して形成されていること、を特徴とする。
【0058】
この特徴により、
図13に例示した製品2X等の製品2が、たとえ三次元曲面を呈した立体形状をなしていても、製品2等の基材3の外表面3aの形状によらず、製品2等全体の中で写し出されるシボ5は、濃淡や大きさに差異のない、均一で一様な様相を呈する。
【0059】
また、本実施形態1に係るシート成形装置1では、電気制御盤30は、製品2の第2工程で、シート4にシボ5を転写するときに、熱板20の加熱面部21に対し、シボ転写温度(例えば、180℃)にシート4を加熱する制御を行う。同時に、電気制御盤30は、このシボ転写温度の状態にあるシート4を、吸引部40により熱板20側から吸引する。シボ5の転写後、製品2の第3工程では、電気制御盤30は、熱板20の加熱面部21に対し、シボ転写温度からシート成形温度(例えば、160℃)に調整する制御を行って、シート4を基材3に被覆する。このとき、電気制御盤30は、シート成形温度に状態にあるシート4を、吸引部40により基台13側から吸引すると同時に、加圧部50により熱板20側から加圧する制御を行うように構成されていること、を特徴とする。この特徴により、シボ5が高い精度で転写されたシート4を、基材3の外表面3aに沿い、皺や捩れを抑えた状態で張設することができる。
【0060】
また、本実施形態1に係るシート成形装置1では、熱板20のパターン25には、接触したシート4に対する離型性、及びシート4への加熱温度に対する耐熱性を具備した表面処理層が形成されていること、を特徴とする。この特徴により、シート4にシボ5の転写後、加熱面部21のパターン25に吸着されていた軟化状態のシート4が、熱板20からより剥離し易くなる。
【0061】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係るシート成形装置101について、
図10~
図12を用いて説明する。
図10は、実施形態2に係るシート成形装置の構成を示す概略図である。またこの
図10は、シボの転写工程で、このシート成形装置にシートを架台にセットした状態を示す第1工程図でもある。
【0062】
前述した実施形態1に係るシート成形装置1は、熱板20により、軟化した転写前のシート4に、シボ5を、加熱面部21に形成されたパターン25に基づいて転写した。また、シボ5を転写したシート4を、金型10内に配置した基材3の外表面3aに被覆する成形を行った。しかしながら、本実施形態2に係るシート成形装置101は、加熱面部21に形成されたパターン25に基づき、シボ5の転写だけをシボ転写前のシート4に行うのに用いる。実施形態2は、金型10の有無の点等で、実施形態1と異なるが、それ以外の部分は、実施形態1と同様である。従って、実施形態1とは異なる部分を中心に説明し、その他について説明を簡略または省略する。
【0063】
図10~
図12に示すように、本実施形態2に係るシート成形装置101は、シボ転写前のシート4にシボ5を転写したシボ5付きのシート4を製造するのに用いられる。シボ5付きのシート4は、
図13に示すように、製品2等の表面に被覆される。シート成形装置101は、熱板20(実施形態1の熱板20に相当)によりシート4を加熱して押し付けることで、架台110上にセットされたシート4を成形する装置である。
【0064】
シート成形装置101は、熱板20のほか、吸引部40と、吸引部40を制御する電磁弁164(制御部)等を備える。吸引部40は、真空ポンプ41と真空用タンク42とからなる。電磁弁164は、流通するエアの流路を、2通りの流体制御を可能とするバルブである。具体的には、真空ポンプ41が、熱板側流路62に連通してエアを吸引する第1の流体制御である。真空ポンプ41と熱板側流路62との連通を遮断する第2の流体制御である。
【0065】
このシート成形装置101には、前述した実施形態1に係るシート成形装置1と同様、熱板20の加熱面部21に、シボ5の転写型であるパターン25が形成されている。前述したように、パターン25は、転写するシボ5の単体部位に対応した型要素であるパターン要素25Sを有する。パターン25は、第1パターン部25Aと第2パターン部25Bとに区画して形成されている。第1パターン部25Aでは、転写するシボ5に対し、基準となる形状でパターン要素25S群を形成してなる。第2パターン部25Bは、第1パターン部25Aに設けたパターン要素25Sに対し、刻まれた深さ、大きさ、または、刻まれた配置間隔のうち、少なくとも1つ以上に変化を付けた形状でパターン要素を形成してなること、を特徴とする。
【0066】
この特徴により、シート成形装置101を用いてシート4を成形するにあたり、オリジナルデザインや、商品化されていないデザイン等、多様なニーズに対応した意匠のシボ5を付したシート4を、市場の要求に柔軟に対応して、安価に提供することができるようになる。特に、多様化した意匠のシボ5を付したシート4に対し、オーダーメードにより市場から多品種少量生産で求められる場合がある。このような場合であっても、シート成形装置101は、多品種少量生産によるシート4の製造を容易に行うことができる。また、シート成形装置101で成形したシボ5を付したシート4が、三次元曲面を呈した立体形状の製品2の外表面に被覆される場合がある。このような場合に、製品2全体の中で写し出されるシボ5は、濃淡や大きさに差異のない、均一で一様な様相を呈するようになる。
【0067】
以上において、本発明を実施形態1,2に即して説明したが、本発明は上記実施形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0068】
例えば、実施形態1では、成形前シート4Aに対し、熱板20により、加熱面部21に形成したパターン25に基づくシボ5を転写すると共に、基材3の外表面3aへの被覆に必要な加熱を行って製品を製造するシート成形装置1を挙げた。また、実施形態2では、成形前シート4Aに対し、熱板20により、加熱面部21に形成したパターン25に基づくシボ5を転写してシボ付きのシート4を製造するシート成形装置101を挙げた。
【0069】
しかしながら、製品の製造にあたり、被覆成形に限らず、シート成形装置101により製造されたシボ付きのシート4を用いて、例えば、金型形状に成形する真空成形や圧空形成等によって、製品が製造されても良い。すなわち、シボ付きのシート4を用いた製品の成形方法では、熱成形全般の工法が適用対象となる。
【0070】
また、実施形態1の熱板20では、第1パターン部25Aを基準の転写型とした上で、第1パターン部25Aに対し、パターン要素25Sの形状に調整を図った第2パターン部25Bを1つ、パターン25内に組み込んだ。しかしながら、基準の転写型となるパターン部に対し、パターン要素の形状に調整を図る別のパターン部は、数量、基準の転写型となるパターン部と位置関係などについて、本実施形態1に限定されるものでない。パターン要素の形状に調整を加えるパターン部は、成形する製品の基材の外表面の形状に応じて、その都度、適宜変更されるものであれば良い。
【0071】
また、第2パターン部25Bを構成するにあたり、第1パターン部25Aのパターン要素25Sとの対比で、パターン要素25Sの態様は、以下の6通りの場合である。すなわち、第1の態様として、第2パターン部25Bが、刻まれた深さに変化を付けたパターン要素25Sで形成される場合。第2の態様として、第2パターン部25Bが、刻まれた大きさに変化を付けたパターン要素25Sで形成される場合。第3の態様として、第2パターン部25Bが、刻まれた配置間隔に変化を付けたパターン要素25Sで形成される場合。第4の態様として、第2パターン部25Bが、刻まれた深さと大きさの双方に変化を付けたパターン要素25Sで形成される場合。第5の態様として、第2パターン部25Bが、刻まれた大きさと配置間隔の双方に変化を付けたパターン要素25Sで形成される場合。第6の態様として、第2パターン部25Bが、刻まれた深さ、大きさ、及び配置間隔の全てに変化を付けたパターン要素25Sで形成される場合。このような6通りの態様の下で、パターン要素の形状に調整を加えるパターン部が、成形する製品の基材の外表面の形状に応じて、その都度、適宜変更されるものであれば良い。
【0072】
また、実施形態1では、製品2の第2工程では、金型10の内部空間11Sを大気圧の下、真空ポンプ41を作動させて、シート4を、熱板20の加熱面部21のパターン25に吸着した。しかしながら、真空ポンプ41でシート4を、加熱面部21のパターン25に吸着すると同時に、コンプレッサ51により金型側流路61及びエア流通孔14を通じて、シート4を、基台13側から加圧しても良い。
【0073】
また、実施形態1では、吸引部40と加圧部50とを、接続流路63で接続し、接続流路63に電磁弁64を設けた。そして、電磁弁64により、金型10側の吸引と熱板20側の吸引とを選択的に制御した。しかしながら、吸引部は、シートを、熱板側と基台側との双方から選択的に吸引可能に構成されている。加圧部は、シートを、少なくとも熱板側から加圧可能に構成されている。そして、制御部が、シートに対し、吸引部による吸引と、加圧部による加圧との制御を行うものであれば、吸引部と加圧部との配管系統は、実施形態1に限定されるものではなく、何でも良い。
【0074】
また、本実施形態1の熱板20に形成したパターン25では、そのパターン要素25Sを、説明上の都合上、
図7で「A」と図示した。しかしながら、パターン要素は、あくまでも本実施形態1での例示に過ぎず、何ら限定されるものではない。
【0075】
実施形態1では、シート成形装置1を用いた製品2の製造工程において、第1工程~第4工程に記載された成形要領・成形手順等の工程内容は、あくまでも一例として記載したものに過ぎず、実施形態に限定されることなく適宜変更可能である。例えば、実施形態1に係る製品2の第2工程では、熱板20の加熱面部21を昇温して、成形前シート4A(シート4)を、一例とするシボ転写温度180℃まで加熱すると同時に、金型10の外周縁面12にセットされたこのシート4を吸引した。しかしながら、製品2の第2工程では、一例とするシボ成形温度160℃に加熱された成形前シート4A(シート4)を、金型10の外周縁面12にセットされた状態で吸引すると同時に、熱板20の加熱面部21を昇温して、このシート4を、一例とするシボ転写温度180℃まで加熱しても良い。
【符号の説明】
【0076】
1,101 シート成形装置
2,2X 製品
3 基材
3a 基材の外表面
4 シート
4A 成形前シート(シート)
4B 成形後シート(シート)
5 シボ
10 金型
11 開口部
11S 内部空間
13 基台
20 熱板
21 加熱面部
25 パターン
25A 第1パターン部
25B 第2パターン部
25S パターン要素
30 電気制御盤(制御部)
31 温度制御ユニット
40 吸引部
50 加圧部
64 電磁弁
110 架台