(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 15/128 20220101AFI20230425BHJP
F24H 15/305 20220101ALI20230425BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20230425BHJP
F16K 11/044 20060101ALN20230425BHJP
【FI】
F24H15/128
F24H15/305
F24H1/00 Z
F16K11/044 Z
(21)【出願番号】P 2019143931
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】川田 剛司
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-236980(JP,A)
【文献】特開2015-175415(JP,A)
【文献】特開昭60-003705(JP,A)
【文献】特開平04-340050(JP,A)
【文献】特開平04-080551(JP,A)
【文献】特開平06-347096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/212
F24H 15/10
F16K 11/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器に接続される給水管と出湯管との間に、前記熱交換器をバイパスするバイパス管が接続されると共に、前記給水管から供給された水を、前記熱交換器側と前記バイパス管側とに分配する水分配弁を備えた給湯器であって、
前記水分配弁は、水入口と、バイパス側出口と、熱交換器側出口とを有するバルブボディを備え、前記バルブボディ内部には、前記水入口と接続されて弁体が進退動可能に配置される分配経路部と、前記弁体の一方の移動端で閉塞される第1の弁座を介して上流側が前記分配経路部に接続され、下流側が前記バイパス側出口に接続されるバイパス経路部と、前記弁体の他方の移動端で閉塞される第2の弁座を介して上流側が前記分配経路部に接続され、下流側が前記熱交換器側出口に接続される熱交換器経路部と、が形成される一方、
前記弁体の進退動位置にかかわらず前記分配経路部と前記熱交換器経路部とを連通させる連通部が設けられていることを特徴とする給湯器。
【請求項2】
前記分配経路部は、水平方向に形成され、前記熱交換器経路部は、前記分配経路部から前記水平方向へ延長状に連設される横経路部を含んで形成されて、前記連通部は、前記分配経路部と前記横経路部との下部同士を連通させることを特徴とする請求項1に記載の給湯器。
【請求項3】
前記第2の弁座は、前記バルブボディの前記横経路部側から挿入されて前記分配経路部に位置決めされるリング状の弁座形成部材の内周に形成され、前記連通部は、位置決め状態で前記弁座形成部材の下端外周に形成される切欠きにより形成されていることを特徴とする請求項2に記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に接続される給水管と出湯管との間に、熱交換器をバイパスするバイパス管を接続すると共に、給水管から供給された水を、熱交換器側とバイパス管側とに分配する水分配弁を備えた給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器には、熱交換器に接続される給水管と出湯管との間に、熱交換器をバイパスするバイパス管を接続し、バイパス管に水分配弁を設けて、水分配弁の動作によって熱交換器側とバイパス管側(バイパス側)とに水を分配するようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
この水分配弁は、バルブボディ内部に、バイパス側の第1の弁座と、熱交換器側の第2の弁座とを設けて、両弁座の間にモータ駆動で軸方向に往復動する弁体が設けられている。この弁体の位置を、入水温度、入水量、設定温度に応じて変更することで、第1の弁座の開度と第2の弁座の開度とを調整して熱交換器側とバイパス側とに水を分配する。これにより、熱交換器での加熱量の過度による沸騰を防止すると共に、加熱量の過小によるドレンの発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような水分配弁では、より柔軟な調整を行うために、弁体を第1の弁座に当接させてバイパス側を全閉(熱交換器側を全開)とする位置と、第2の弁座に当接させてバイパス側を全開(熱交換器側を全閉)とする位置との間で移動可能とするのが望ましい。
しかし、この場合、弁体が第2の弁座に当接して熱交換器側が全閉となっている状態で給湯栓が開栓されると、水分配弁より上流側に設けられている水量センサによって通水が検知されるため、そのままバーナの点火制御が行われて熱交換器内に通水しない状態で加熱されてしまうおそれがある。
また、熱交換器内の残水を水抜きする場合、水分配弁を介して行われるが、ここで弁体が熱交換器側を全閉とする位置にあると、熱交換器の残水を排出することができず、低温時には凍結による損傷が生じるおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は、水分配弁での調整幅を確保しつつ、熱交換器での空焚きの防止と凍結防止とを実現可能とする給湯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、熱交換器に接続される給水管と出湯管との間に、熱交換器をバイパスするバイパス管が接続されると共に、給水管から供給された水を、熱交換器側とバイパス管側とに分配する水分配弁を備えた給湯器であって、
水分配弁は、水入口と、バイパス側出口と、熱交換器側出口とを有するバルブボディを備え、バルブボディ内部には、水入口と接続されて弁体が進退動可能に配置される分配経路部と、弁体の一方の移動端で閉塞される第1の弁座を介して上流側が分配経路部に接続され、下流側がバイパス側出口に接続されるバイパス経路部と、弁体の他方の移動端で閉塞される第2の弁座を介して上流側が分配経路部に接続され、下流側が熱交換器側出口に接続される熱交換器経路部と、が形成される一方、
弁体の進退動位置にかかわらず分配経路部と熱交換器経路部とを連通させる連通部が設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、分配経路部は、水平方向に形成され、熱交換器経路部は、分配経路部から水平方向へ延長状に連設される横経路部を含んで形成されて、連通部は、分配経路部と横経路部との下部同士を連通させることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、第2の弁座は、バルブボディの横経路部側から挿入されて分配経路部に位置決めされるリング状の弁座形成部材の内周に形成され、連通部は、位置決め状態で弁座形成部材の下端外周に形成される切欠きにより形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、水分配弁に、弁体の進退動位置にかかわらず分配経路部と熱交換器経路部とを連通させる連通部が設けられているので、弁体によって第2の弁座が閉塞されていても連通部によって熱交換器への通水を確保できると共に、連通部を介して熱交換器の残水の水抜きも行える。よって、水分配弁での調整幅を確保しつつ、熱交換器での空焚きの防止と確実な凍結防止とが実現可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加えて、連通部は、分配経路部と横経路部との下部同士を連通させているので、熱交換器経路部内の残水をより確実に排出させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、上記効果に加えて、第2の弁座を、分配経路部に位置決めされるリング状の弁座形成部材の内周に形成し、連通部を、位置決め状態で弁座形成部材の下端外周に形成される切欠きにより形成しているので、弁座形成部材の組み付けと同時に第2の弁座と隙間とが簡単に形成可能となり、切欠きに誤配置や位置ズレが生じなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(風呂給湯器の概略構成)
図1は、給湯器の一例である風呂給湯器1の概略回路図である。
この風呂給湯器1は、図示しない筐体内に収容される内胴2内に、仕切部材3によって給湯燃焼室4と風呂燃焼室5とを仕切り形成し、各燃焼室4,5の下部に、複数のバーナからなる給湯バーナ6,6・・と風呂バーナ7とを備えている。また、各燃焼室4,5には、点火プラグ8とフレームロッド9とがそれぞれ設けられている。内胴2の下部には、各バーナ6,7へ燃焼用空気を供給する燃焼ファン10が設けられている。
給湯燃焼室4内の上部には、給湯バーナ6の燃焼排気が通過する給湯一次熱交換器11と給湯二次熱交換器12とが設けられ、風呂燃焼室5の上部には、風呂バーナ7の燃焼排気が通過する風呂一次熱交換器13と風呂二次熱交換器14とが設けられている。各二次熱交換器12,14は、内胴2の上部に設けられた排気フード15内に収容されている。排気フード15には、各二次熱交換器12,14を通過した燃焼排気を排出する排気口16が形成されている。
【0010】
筐体の底面に設けたガス入口には、外部からのガス配管が接続されるガス管17が接続されている。各給湯バーナ6と風呂バーナ7とには、ガス管17から分岐するガス分岐管18,18・・がそれぞれ接続されると共に、各ガス分岐管18には、ガス流路を開閉するガス電磁弁19がそれぞれ設けられている。また、分岐前のガス管17には、上流側から元ガス電磁弁20、ガス比例弁21がそれぞれ設けられている。
【0011】
給湯二次熱交換器12の吸熱管の入口には、筐体底面の水入口に接続される給水管22が接続される。給水管22には、上流側から、水抜き栓を備えたストレーナ23と、給水管22を流れる水量を検出する給湯水量センサ24と、入水温度を検出する給湯入水サーミスタ25と、水量制御モータ26とが設けられている。吸熱管の出口は、給湯一次熱交換器11の伝熱管の入口に接続され、伝熱管の出口は、筐体底面の湯出口に接続される出湯管27が接続される。出湯管27には、給湯一次熱交換器11からの出口温度を検出する給湯熱交換器サーミスタ28が設けられ、その下流側で器具からの出湯温度を検出する給湯出湯サーミスタ29とが設けられる。出湯管27における給湯出湯サーミスタ29の上流側と、給水管22における水量制御モータ26の下流側との間には、給湯一次、二次熱交換器11,12をバイパスするバイパス管30が接続され、バイパス管30には、バイパス流量を制御する水分配弁31が設けられている。水分配弁31の詳細については後述する。
こうして筐体内には、給水管22からの水が給湯二次熱交換器12、給湯一次熱交換器11の順に通過して給湯バーナ6の燃焼排気と熱交換して加熱された後、出湯管27から出湯される給湯回路Aが形成される。
【0012】
一方、風呂二次熱交換器14の吸熱管の入口には、筐体底面の風呂戻り口に接続されて水抜き栓を備えた戻り管35が接続される。風呂戻り口は、外部戻り管36を介して浴槽37と接続される。また、戻り管35の下流側にはポンプ38が設けられ、ポンプ38の上流側には、風呂戻り温度を検出する風呂戻りサーミスタ39が設けられて、ポンプ38の下流側には、風呂水流スイッチ40と水位センサ41とが設けられる。
風呂二次熱交換器14の吸熱管の出口は、風呂一次熱交換器13の伝熱管の入口に接続され、伝熱管の出口は、筐体底面の風呂往き口に接続される往き管42が接続される。風呂戻り口は、外部往き管43を介して浴槽37と接続される。往き管42には、風呂往き温度を検出する風呂往きサーミスタ44が設けられている。
こうして筐体内には、ポンプ38の運転によって浴槽37の湯水が戻り管35から風呂二次熱交換器14、風呂一次熱交換器13の順に通過して風呂バーナ7の燃焼排気と熱交換して加熱された後、往き管42から浴槽37に戻る風呂回路B(循環回路)が形成される。
【0013】
また、出湯管27におけるバイパス管30より下流側と、戻り管35におけるポンプ38よりも上流側との間には、落とし込み管45が接続される。この落とし込み管45には、上流側(出湯管27側)から、落とし込み管45を開閉する落とし込み水電磁弁46と、落とし込み管45を流れる水量を検出する風呂水量センサ47とがそれぞれ設けられている。さらに、風呂水量センサ47の上流側と下流側とには、2つの逆止弁48,48がそれぞれ設けられて、上流側の逆止弁48と風呂水量センサ47との間には、縁切弁49が接続されている。この縁切弁49は、筐体底面に設けたオーバーフロー口に接続される排水管50と、給水管22におけるストレーナ23の下流側と接続された導入管51とが接続されて、戻り管35からの逆流で高まった落とし込み管45内の湯水の内圧が導入管51から加わる背圧より高くなると、落とし込み管45から逆流した湯水を排水管50を介してオーバーフロー口へ排出するものである。
【0014】
そして、筐体内には、給湯二次熱交換器12及び風呂二次熱交換器14で生じたドレンを中和するための中和器55が設けられている。この中和器55は、排気フード15の底面に設けたドレン受け56とドレン導入管57を介して接続されると共に、縁切弁49の排水管50とドレン排出管58を介して接続されている。また、中和器55には、水位を検出する水位電極59が設けられると共に、筐体底面からドレンを排出するドレン抜き口60が設けられている。
65は、各サーミスタやセンサ等の検出信号を受けて各弁等を動作させて出湯温制御や浴槽37への湯張り制御等を行うコントローラ、66は給湯リモコン、67は風呂リモコンである。
【0015】
(風呂給湯器の通常動作)
この風呂給湯器1においては、通常の給湯及び湯張りは以下の如くなされる。
まず、給湯回路Aにおいて、湯出口に接続された外部配管の給湯栓が開栓されて給水管22から器具内に通水され、その通水を給湯水量センサ24で検知すると、コントローラ65は、燃焼ファン10を所定時間回転させて、給湯燃焼室4内に貯留している燃焼排気を排出させる(プリパージ)。その後、ガス管17の元ガス電磁弁20、各ガス電磁弁19を開弁させ、ガス比例弁21を所定開度で開弁させて、給湯バーナ6へガスを供給すると共に、イグナイタを作動させて点火プラグ8で給湯バーナ6に点火する。
これにより、給湯二次熱交換器12では、給水管22から吸熱管に流れる水が給湯バーナ6の燃焼排気と接触して潜熱が回収され、給湯一次熱交換器11では、吸熱管から伝熱管に流れる湯水が給湯バーナ6の燃焼排気と接触して顕熱が回収されて、高い熱効率で加熱された湯が出湯管27及び外部配管を通って給湯栓から出湯される。
【0016】
コントローラ65は、出湯管27の給湯熱交換器サーミスタ28によって出口温度を監視し、水分配弁31を駆動させて、出口温度が、給湯一次熱交換器11でのドレンの発生や過熱を防止できる温度範囲内に維持されるようにバイパス管30への流量(バイパス率)を制御する。
また、給湯出湯サーミスタ29によって出湯温度を監視し、出湯温度が給湯リモコン66又は風呂リモコン67によって指示された設定温度となるように、各ガス電磁弁19の開閉制御と、ガス比例弁21の開度調整とを行うと共に、燃焼ファン10の回転数制御によって空気量を連続的に変化させる。
給湯栓を閉じると、給湯水量センサ24からの信号停止を確認したコントローラ65は、元ガス電磁弁20及びガス電磁弁19を閉じて給湯バーナ6を消火させ、所定時間燃焼ファン10を回転させる(ポストパージ)。
【0017】
一方、給湯リモコン66又は風呂リモコン67の自動スイッチを押すと、コントローラ65は、落とし込み管45の落とし込み水電磁弁46を開弁して給湯一次、二次熱交換器11,12に通水させて給湯バーナ6を燃焼させる。出湯管27からの湯は、落とし込み管45及び戻り管35を通って浴槽37に供給される。落とし込み管45に設けた風呂水量センサ47で検出した水量が設定水量に達すると、落とし込み水電磁弁46を閉じて通水を停止し、給湯バーナ6を消火させる。
次に、風呂回路Bでは、ポンプ38を作動させて、風呂一次、二次熱交換器13,14と浴槽37との間で湯水を循環させる。このとき、風呂戻りサーミスタ39と風呂往きサーミスタ44とで循環する湯水の温度を監視し、設定温度からの低下を確認すると、コントローラ65は風呂バーナ7を点火させて燃焼ファン10によって燃焼用空気を供給する。よって、風呂一次、二次熱交換器13,14と浴槽37との間を循環する風呂循環水は、風呂二次熱交換器14の吸熱管を流れる際に風呂バーナ7の燃焼排気と接触して潜熱が回収され、風呂一次熱交換器13の伝熱管を流れる際に燃焼排気と接触して顕熱が回収されて設定温度まで加熱される。設定温度に達すると、コントローラ65は風呂バーナ7の燃焼及びポンプ38の運転を停止させる。
【0018】
(水分配弁の説明)
そして、
図2は、水分配弁31の断面図である。この水分配弁31は、バルブボディ70に、給水管22の上流側の配管が接続される水入口71と、水入口71から水が流れ込む分配経路部72と、分配経路部72から給湯二次熱交換器12側へ分岐される熱交換器経路部73と、バイパス管30側へ分岐されるバイパス経路部74とを備えてなる。
水入口71は、バルブボディ70から下向きに突設されて、分配経路部72は、水入口71と直交する水平方向に形成されている。なお、ここでは便宜上、
図2の左右方向でバイパス経路部74側を前方、熱交換器経路部73側を後方として説明する。
【0019】
熱交換器経路部73は、分配経路部72の後端から後方へ延長状に連設される水平方向の横経路部75と、横経路部75の後端から上向きに延びる縦経路部76とからなる。縦経路部76の上端には、バルブボディ70から前向きに突出して給水管22の下流側の配管が接続される熱交換器側出口77が形成されている。
バイパス経路部74は、分配経路部72の前端へ延長状に連設されて前方に延び、前端には、バイパス管30が接続されるバイパス側出口78が形成されている。
また、バルブボディ70内には、分配経路部72と横経路部75とに跨る弁軸79が配置されて、バルブボディ70の後端から横経路部75に挿入固定された支持筒80により、前後移動可能に支持されている。この弁軸79は、バルブボディ70の後端に連結されたモータ81の駆動で前後移動するもので、弁軸79の前部で分配経路部72内には、前後面をそれぞれ先細りテーパ状の第1弁部83、第2弁部84とした弁体82が一体に設けられている。
【0020】
そして、弁体82の前方で分配経路部72とバイパス経路部74との間には、バルブボディ70の内面に形成したリング状の段部からなる第1の弁座85が形成されている。また、弁体82の後方で分配経路部72と横経路部75との間には、内周に第2の弁座87を有するリング状の弁座形成部材86が位置決め固定されている。第1の弁座85には、前進した弁体82の第1弁部83が着座可能で、第2の弁座87には、後退した弁体82の第2弁部84が着座可能となっている。
弁座形成部材86は、
図3に示すように、外周上端に形成した凹部88に、バルブボディ70の上側内面に形成したリブ89を係合させると共に、分配経路部72と横経路部75との内面にそれぞれ形成した位置決め突起90,90の間に嵌合させることで、前後方向で水入口71及び分配経路部72と横経路部75との間を仕切る位置で位置決めされる。但し、弁座形成部材86の外周には、部分的に切欠き91が設けられており、この切欠き91が、位置決め状態で弁座形成部材86の下端に位置することで、弁座形成部材86とバルブボディ70の内面との間には、上下方向の隙間92が形成される。
【0021】
よって、弁体82の第1弁部83が第1の弁座85に着座する弁軸79の前進位置では、
図2に二点鎖線で示すように、前進した弁体82によってバイパス経路部74が全閉となるため、水入口71からの水は全て分配経路部72から熱交換器経路部73へ流れて給湯一次、二次熱交換器11,12に通水される。
一方、弁体82の第2弁部84が第2の弁座87に着座する弁軸79の後退位置では、
図2に実線で示すように、後退した弁体82によって第2の弁座87と第2弁部84との間は閉塞されるものの、弁座形成部材86の下側の隙間92を介して水入口71と横経路部75とは連通した状態となる。すなわち、第2の弁座87が全閉される弁軸79の後退位置でも、水入口71からの水は隙間92から熱交換器経路部73を介して給湯一次、二次熱交換器11,12へ流れることになる。
【0022】
以上の如く構成された風呂給湯器1において、給湯回路Aの使用時には、コントローラ65は、前述のように水分配弁31を駆動させて、出口温度が、給湯一次熱交換器11でのドレンの発生や過熱を防止できる温度範囲内に維持されるようにバイパス管30への流量(バイパス率)を制御する。すなわち、弁軸79を前進位置と後退位置との間で往復動させて、弁体82の第1弁部83と第1の弁座85との開度と、第2弁部84と第2の弁座87との開度とを変更することでバイパス率の制御を行うものである。
ここで、出湯を開始する際、弁軸79が後退位置にあって第2の弁座87が第2弁部84によって閉塞されていた場合、水入口71からの水は殆どがバイパス経路部74からバイパス管30へ流れるが、水の一部は、
図2に実線矢印で示すように、隙間92を介して熱交換器経路部73から給湯一次、二次熱交換器11,12へも流れる。よって、両熱交換器11,12での通水を確保することができ、両熱交換器11,12での過熱を防止できる。その後、バイパス率の制御によって弁体82が前進すれば過小な通水は解消される。
【0023】
一方、両熱交換器11,12及び給水管22の残水を排出する場合、弁軸79が後退位置にあって第2の弁座87が第2弁部84によって閉塞されていても、ストレーナ23に設けた水抜き栓を抜くと、水分配弁31の下流側での両熱交換器11,12及び給水管22の残水は、
図2に点線矢印で示すように、水分配弁31の熱交換器経路部73から隙間92を通って分配経路部72に至り、水入口71から給水管22の上流側に流れて排出される。よって、水抜きが確実に行える。特に隙間92は分配経路部72と熱交換器経路部73との下部に位置するので、バルブボディ70内に水が滞留しにくくなり、水分配弁31内の残水を確実に排出可能となる。
【0024】
このように、上記形態の風呂給湯器1では、水分配弁31は、水入口71と、バイパス側出口78と、熱交換器側出口77とを有するバルブボディ70を備え、バルブボディ70内部には、水入口71と接続されて弁体82が進退動可能に配置される分配経路部72と、弁体82の一方の移動端で閉塞される第1の弁座85を介して分配経路部72と接続されるバイパス経路部74と、弁体82の他方の移動端で閉塞される第2の弁座87を介して分配経路部72と接続される熱交換器経路部73と、が形成される一方、弁体82の進退動位置にかかわらず分配経路部72と熱交換器経路部73とを連通させる隙間92(連通部)が設けられている。
これにより、弁体82によって第2の弁座87が閉塞されていても隙間92によって両熱交換器11,12への通水を確保できる。また、第2の弁座87が閉塞されていても隙間92を介して両熱交換器11,12の残水の水抜きも行える。よって、弁体82で第1の弁座85と第2の弁座87とをそれぞれ全閉可能として水分配弁31での調整幅を確保しつつ、両熱交換器11,12での空焚きの防止と確実な凍結防止とが実現可能となる。
【0025】
特にここでは、分配経路部72は、水平方向に形成され、熱交換器経路部73は、分配経路部72から水平方向へ延長状に連設される横経路部75を含んで形成されて、隙間92は、分配経路部72と横経路部75との下部同士を連通させているので、熱交換器経路部73内の残水をより確実に排出させることができる。
また、第2の弁座87を、バルブボディ70の横経路部75側から挿入されて分配経路部72に位置決めされるリング状の弁座形成部材86の内周に形成し、隙間92を、位置決め状態で弁座形成部材86の下端外周に形成される切欠き91によって形成しているので、弁座形成部材86の組み付けと同時に第2の弁座87と隙間92とが簡単に形成可能となる。特に、切欠き91に誤配置や位置ズレが生じなくなる。
【0026】
なお、弁座形成部材に設ける切欠きの形状は上記形態に限らず、複数箇所へ溝状に設ける等、数や形状を適宜変更して差し支えない。残水の問題がなければ弁座形成部材の下端でなく側端や上端に設けることもできる。
また、連通部は弁座形成部材を利用する場合に限らず、例えば弁座形成部材に切欠きを設けずにその外周に当接するバルブボディの内面に溝等の凹部を設けて分配経路部と熱交換器経路部とを連通させたり、弁体に、第2の弁座の閉塞状態で分配経路部と熱交換器経路部とを連通させる切欠きや貫通孔を形成したりすることも可能である。
さらに、水分配弁における水入口、熱交換器側出口、バイパス側出口、各経路部の位置や構造も上記形態に限らない。熱交換器経路部では横経路部と縦経路部との一方を省略してもよい。弁軸も、水平方向に限らず垂直方向に配置して弁体を上下動させて上下に配置した弁座を開閉させることも可能である。
【0027】
一方、潜熱回収型に限らず、給湯回路や風呂回路では二次熱交換器がないものであっても差し支えない。
また、風呂回路に代えて暖房回路等を給湯回路に並設したものであってもよいし、このような循環加熱回路がない給湯回路のみの給湯器であってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1・・風呂給湯器、2・・内胴、4・・給湯燃焼室、5・・風呂燃焼室、6・・給湯バーナ、7・・風呂バーナ、11・・給湯一次熱交換器、12・・給湯二次熱交換器、13・・風呂一次熱交換器、14・・風呂二次熱交換器、15・・排気フード、17・・ガス管、22・・給水管、27・・出湯管、30・・バイパス管、35・・戻り管、37・・浴槽、42・・往き管、45・・落とし込み管、65・・コントローラ、70・・バルブボディ、71・・水入口、72・・分配経路部、73・・熱交換器経路部、74・・バイパス経路部、75・・横経路部、76・・縦経路部、77・・熱交換器側出口、78・・バイパス側出口、79・・弁軸、81・・モータ、82・・弁体、83・・第1弁部、84・・第2弁部、85・・第1の弁座、86・・弁座形成部材、87・・第2の弁座、91・・切欠き、92・・隙間、A・・給湯回路、B・・風呂回路。