(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】表示用フィルム及び表示用フィルムを有する表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 13/04 20060101AFI20230425BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20230425BHJP
F21V 3/00 20150101ALI20230425BHJP
F21V 3/10 20180101ALI20230425BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20230425BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230425BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230425BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20230425BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20230425BHJP
【FI】
G09F13/04 J
F21S2/00 431
F21S2/00 481
F21V3/00 530
F21V3/10 370
F21V3/00 350
F21V7/00 570
B32B7/023
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2020081449
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】514003315
【氏名又は名称】株式会社技光堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099357
【氏名又は名称】日高 一樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】関口 かおる
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雅一
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-089479(JP,A)
【文献】特開2009-064761(JP,A)
【文献】特開2009-180623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/04
F21S 2/00
F21V 3/00
F21V 3/10
F21V 7/00
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字等の所望の形状を発光表示する表示装置に用いる表示用フィルムであって、
透光性を有
するシート状の透明基材と、
前記透明基材の裏面側に設けられたハーフミラー層と、
前記ハーフミラー層の裏面側に設けられた有色のスモーク層と、
前記スモーク層の裏面側に設けられ、前記文字等の所望の形状を表現可能な表示層と
、
を備え、
前記透明基材の表面に直接、隣接する砥粒同士の離間幅が不均一であるとともに砥粒の形状が不均一に形成されている砥粒研磨機械で研磨処理が行われることにより、一方向に平行
な複数の溝から構成され
、隣接する溝同士の
間の平滑なランドのランド幅と、隣接する溝の溝幅
とが不均一
である模様面が形成されていることを特徴とする表示用フィルム。
【請求項2】
前記透明基材に形成された模様面は、所定の数で構成される溝群のパターンが並列されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示用フィルム。
【請求項3】
前記ハーフミラー層は、前記透明基材の裏面側に金属性の成膜材料が蒸着されて形成されていることを特徴とする請求項1
または2に記載の表示用フィルム。
【請求項4】
文字等の所望の形状を発光表示する表示装置であって、
前記表示用フィルムの前記表示層の裏面側に前記所望の形状を発光させる発光手段を備えることを特徴とする請求項1ないし
3のいずれかに記載の表示用フィルムを有する表示装置。
【請求項5】
前記発光手段は、光源と該光源の光を導入して面発光する導光部材とからなることを特徴とする請求項
4に記載の表示用フィルムを有する表示装置。
【請求項6】
前記光源はLEDランプであることを特徴とする請求項
5に記載の表示用フィルムを有する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字、数字、図形等の所望の形状を発光表示する表示用フィルム及び表示用フィルムを有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、文字等の形状を発光表示することによって装飾効果が得られるようにした表示装置が記載されている。この表示装置は、鏡面と、透光性層を介して鏡面の上方に形成されたハーフミラー層と、鏡面とハーフミラー層との間、かつ鏡面及びハーフミラー層から離間した位置において所望の形状を発光させる発光手段とを備え、発光手段によって発光された文字等を鏡面に映し込み、映し込まれた鏡像をハーフミラー層によって反射させることにより、文字等がハーフミラー層を介して立体的に観察されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-70697号公報(段落0005,0006、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている表示装置にあっては、昼間等、発光手段を消灯させているときには、ハーフミラー層の材質を反映した単調な金属色が外部から視認されるのみであり、また発光手段を点灯させた場合でも、単調な金属色の中に文字等が発光表示されるのみであるため、表示装置の高級感や質感及び装飾効果が小さいという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、金属表面の凹凸模様を再現して表面から視認可能とすることにより、発光手段の消灯時、点灯時のいずれにおいても高級感や質感及び装飾効果を高めうるようにした表示用フィルム及び表示用フィルムを有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の表示用フィルムは、
文字等の所望の形状を発光表示する表示装置に用いる表示用フィルムであって、
透光性を有するシート状の透明基材と、
前記透明基材の裏面側に設けられたハーフミラー層と、
前記ハーフミラー層の裏面側に設けられた有色のスモーク層と、
前記スモーク層の裏面側に設けられ、前記文字等の所望の形状を表現可能な表示層と、
を備え、
前記透明基材の表面に直接、隣接する砥粒同士の離間幅が不均一であるとともに砥粒の形状が不均一に形成されている砥粒研磨機械で研磨処理が行われることにより、一方向に平行な複数の溝から構成され、隣接する溝同士の間の平滑なランドのランド幅と、隣接する溝の溝幅とが不均一である模様面が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、表示用フィルムの裏面側に配置された発光手段が消灯され、外部が明るいときには、透明基材の表面側に隣接する溝同士の溝幅と離間幅が不均一に形成された溝からなる模様面がハーフミラー層により反射されて表面に現われ、あたかも金属の表面に表面加工処理が施されたかのような金属調の凹凸模様が表示装置の表面から視認される。また、発光手段を点灯させると、表示層に表現された文字等の形状がハーフミラー層を透過して透明基材の表面に発光表示され、金属調の凹凸模様の表面に文字等が表示されたかのように視認される。従って、発光手段の消灯時、点灯時のいずれにおいても金属調の凹凸模様が表面から視認されるので、表示装置の高級感や質感及び装飾効果を高めることができる。
【0007】
前記透明基材に形成された模様面は、所定の数で構成される溝群のパターンが並列されて形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、所定の数で構成される溝群のパターンを並列させることで、大型の加工機械を用いずとも大きな模様面を形成することができる。
【0009】
前記ハーフミラー層は、前記透明基材の裏面側に金属性の成膜材料が蒸着されて形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、蒸着では、金属性の成膜材料を加熱して、蒸発または昇華させ、透明基材の裏面に蒸発または昇華した粒子を付着,堆積させて薄膜を形成させるため、粒子径が極めて小さく、ハーフミラー層を透過して発光表示される表示層の文字等の形状の輪郭をシャープに表現することができる。
【0010】
前記表示用フィルムを有する表示装置は、文字等の所望の形状を発光表示する表示装置であって、
前記表示用フィルムの前記表示層の裏面側に前記所望の形状を発光させる発光手段を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、表示用フィルムの裏面側に配置された発光手段が消灯され、外部が明るいときには、透明基材の表面側に隣接する溝同士の溝幅と離間幅が不均一に形成された溝からなる模様面がハーフミラー層により反射されて表面に現われ、あたかも金属の表面に表面加工処理が施されたかのような金属調の凹凸模様が表示装置の表面から視認される。また、発光手段を点灯させると、表示層に表現された文字等の形状がハーフミラー層を透過して透明基材の表面に発光表示され、金属調の凹凸模様の表面に文字等が表示されたかのように視認される。従って、発光手段の消灯時、点灯時のいずれにおいても金属調の凹凸模様が表面から視認されるので、表示装置の高級感や質感及び装飾効果を高めることができる。
【0011】
前記発光手段は、光源と該光源の光を導入して面発光する導光部材とからなることを特徴としている。
この特徴によれば、表示面積が広い表示装置であっても、面発光する導光部材により表示層の文字等をむらなく均一に発光表示させることができるので、視認性が向上する。
【0012】
前記光源はLEDランプであることを特徴としている。
この特徴によれば、LEDランプは指向性を有するので、導光部材全体を明るく面発光させることができる。また、光源の発熱量が小さいので、周囲の部材に熱的影響を与えるおそれがなく、かつ光源が長寿命で消費電力も少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1に係る表示装置の発光手段点灯時の正面図である。
【
図4】本発明の表示用フィルムの拡大断面図である。
【
図5】本発明の実施例2に係る表示装置の拡大断面図である。
【
図6】本発明の実施例3に係る表示装置の拡大断面図である。
【
図7】本発明の実施例4に係る表示装置の正面図である。
【
図8】本発明の表示用フィルムの製作工程を示すもので、透明基材の表面に砥粒研磨ベルトによりヘアライン加工を行う態様を示す模式図である。
【
図9】本発明の表示用フィルムの製作工程を示すもので、(a)は、透明層の裏面の転写面にハーフミラー層を形成する工程の断面図、(b)は、ハーフミラー層の裏面にスモーク層を形成する工程の断面図、(c)は、スモーク層の裏面に表示層を形成する工程の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る表示用フィルム及び表示用フィルムを有する表示装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
まず、実施例1に係る表示装置につき、
図1から
図4を参照して説明する。なお、以下においては、文字等を視認する側(
図3の上方)を表面、その反対側を裏面として説明する。表示装置1は、文字等の所望の形状を発光表示する様々なディスプレイ(モニター)に使用されるものであって、
図1は、後述する発光手段4(
図3参照)が点灯しているときの表示装置1の正面図、
図2は、同じく発光手段4が消灯しているときの表示装置1の正面図である。
【0016】
図3の拡大断面図に示されるように、表示装置1は、表面側が開口された横長長方形のケース2内に収容された表示用フィルム3と、この表示用フィルム3の裏面側に設けられた発光手段4とを備えている。なお、表示用フィルム3は、理解を容易とするために厚さを誇張して図示してある。
【0017】
図4の拡大図に示されるように、本発明の表示用フィルム3は、表面側から順に、透明層6、ハーフミラー層7、スモーク層15、表示層8を備え、それらを積層させて形成されている。透明層6は、表面側に後述する模様面9を有する透光性を有する透明基材5により構成され、透明基材5は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂やポリカーボネート等よりなる透明フィルムであり、可撓性を有している。
【0018】
透明層6は、透明基材5の表面に砥粒研磨機械などで研磨処理を行うことにより微細な凹凸模様の表面加工処理が施されて模様面9が形成されている。この実施例の凹凸模様はヘアライン模様としてある。
【0019】
ハーフミラー層7は、透明基材5の裏面に金属性の成膜材料が蒸着されて形成されている。成膜材料としては、例えば高輝度アルミを含むものを使用するのが好ましい。このような成膜材料を使用すると、鏡に近いメタリック調のハーフミラー層7を形成することができるとともに、凹凸模様がメタリック調のハーフミラー層7により高輝度で反射される。また、蒸着では、金属性の成膜材料を加熱して、蒸発または昇華させ、透明基材の裏面に蒸発または昇華した粒子を付着,堆積させて薄膜を形成させるため、ハーフミラー効果が効果的に得られる厚さ(光の透過率が約18%)となるとともに、粒子径が極めて小さいため、ハーフミラー層7を透過して発光表示される表示層8の文字等の形状の輪郭の表現への影響が少なく、輪郭をシャープに表現することができる。
【0020】
スモーク層15は、ハーフミラー層7の裏面に例えば透明なインキに黒や茶系のインキを混ぜた透明有色インキを印刷して形成することができる。光源11により表示層8を直接照明すると、点灯した光源11や内部の部材が表面から透けて見えることがあるので、これを防止するために、表示層8の裏面にスモーク層15を設けてある。
【0021】
表示層8は、発光手段4からの照射光を受けて、文字、数字、記号、図形またはこれらの組み合わせからなる所望の形状を透明層6の表面に発光表示させるもので、本実施例では、例えばアルファベット文字10が発光表示されるように、アルファベット文字10の形成領域を残して不透光性インキをスモーク層15の裏面に印刷し、アルファベット文字10を形成する部分を透光部8aとし、他の部分は不透光部としてある。
【0022】
発光手段4は、左右の1個または複数の光源11,11と、光源11,11の光を左右の端面から導入して面発光する導光部材12とからなっている。光源11としては、発熱量が小さく、かつ長寿命で消費電力も少ないことから、LEDランプを用いるのが好ましく、その発光色は、白、赤、緑、青のいずれのLEDランプであってもよい。特に、光の3原色である赤、緑、青のLEDランプを組み合わせ、それらの発光状態を制御すれば、アルファベット文字10を種々の色調で発光表示させることができる。導光部材12は、透明なアクリル、ポリカーボネート、ガラス等からなり、光源11,11の光を導入して均一に面発光することができる。
【0023】
透明基材5の表面には、複数の溝22からなる所謂ヘアライン模様である模様面9が形成されている。模様面9は
図4の吹き出し内に一例として示した隣接する溝22同士の溝幅W1,W2,W3と離間幅D1,D2,D3のように、溝22同士の溝幅と離間幅が不均一に形成されているため、規則性のあるヘアライン模様のような不自然さは無く、不規則であることから金属の表面に形成されるようなヘアライン模様と同様の意匠を有している。
【0024】
実施例1に係る表示装置1において、発光手段4の光源11が消灯し、昼間など外部が明るいときには、
図2に示されるように、スモーク層15によって表示層8のアルファベット文字10と、光源11が隠蔽され、透明層6の表側に形成された模様面9の凹凸模様、すなわちヘアライン模様13のみが透明層6を通してメタリック調のハーフミラー層7により反射されて表面に現れ、視認される。凹凸状の模様面9を有する透明層6に入射した光はハーフミラー層7により乱反射されるので、立体感のあるヘアライン模様13となり、あたかも金属の表面に表面加工処理が施されたかのような金属調の凹凸模様が視認される。
【0025】
一方、発光手段4の光源11を点灯して導光部材12を面発光させると、照射光が表示層8の透光部8a、スモーク層15、ハーフミラー層7を透過して表面側に放射されることにより、透明層6の表面にアルファベット文字10が発光表示される。このアルファベット文字10は、あたかも金属の表面に表面加工処理が施されたかのような金属調のヘアライン模様13の表面に現れる。このように、実施例1に係る表示装置1においては、発光手段4の消灯時、点灯時のいずれにおいても金属調のヘアライン模様13が表面から視認されるので、高級感や質感及び装飾効果を高めることができる。
【0026】
表示装置1の透明層6は、表側にヘアライン模様13の模様面9が形成されているため、ヘアライン等の凹凸模様の表面加工処理が施された金属表面と遜色ない視覚効果を得られる。また、手触りでも凹凸を感じるため、視覚効果と併せて、あたかも表面加工処理が施された金属の表面のように認識させることができる。
【0027】
加えて、平滑面である透明基材5の裏面に均一な厚みでハーフミラー層7が形成され、このハーフミラー層7の裏面に均一な厚みで形成されたスモーク層15の裏面に表示層8が形成されることから、表示層8の文字等の形状が凹凸による滲みや輪郭が崩れるなどの不都合がなく、文字等の輪郭をシャープに表現することができ、発光表示する文字、数字、図形等の所望の形状を明確に視認させることができる。
【0028】
なお、表示層8は、入力信号によってアルファベット文字10または他の任意の形状を表現できる、いわゆる液晶シャッターであってもよい。
【実施例2】
【0029】
実施例2に係る表示装置につき、
図5を参照して説明する。なお、前記実施例1と同じ構成部材については同一符号を付して重複する説明を省略する。この実施例の表示装置1は、発光手段に、面発光する有機EL素子14を用いたものである。実施例2の表示装置においても、実施例1の表示装置1と同様の作用効果を奏することができる。また、このような有機EL素子14を用いると、発光手段が薄型化及び軽量化するので、表示装置1の小型化と軽量化が図れる。
【0030】
なお、有機EL素子14は発光色を制御することにより、アルファベット文字10または他の任意の形状を種々の色調で発光表示することができ、有機EL素子14は発光手段とともに表示層としての機能も兼ね備える構成とすることもできる。有機EL素子14を用いた表示装置は、パソコンやタブレット、携帯電話等のディスプレイに使用することができる。
【実施例3】
【0031】
実施例3に係る表示装置につき、
図6を参照して説明する。なお、前記実施例1と同じ構成部材については同一符号を付して重複する説明を省略する。この実施例3の表示装置1は、導光部材12を省略し、表示層8の裏面側に設けた複数のLEDランプの光源11により表示層8を直接照明するようにしたものである。
【実施例4】
【0032】
実施例4に係る表示装置につき、
図7を参照して説明する。この実施例の表示装置は、時計の円形の文字盤16に適用したもので、円形に形成された前記実施例と同様の透明基材5(本実施例では図示略)の表面に、スピン模様の模様面9(本実施例では図示略)を形成し、文字盤16の表面に金属調のスピン模様17が現れるようにしてある。また、発光手段の点灯時には、表示層8(本実施例では図示略)に形成された数字18や点19が金属調のスピン模様17の表面に発光表示されるので、高級感や質感及び装飾効果の高い文字盤16とすることができる。
【0033】
次に、
図8から
図9を参照して、本発明に係る表示用フィルム3を製作する工程について説明する。まず、
図8に示されるように、透明基材5の表面にヘアライン加工によって模様面9を形成する。ヘアライン加工は、輪形状の砥粒研磨ベルト24をベルト研磨機(図示略)で回転させ、透明基材5に当てることで透明基材5の表面を研磨することで行われる。詳しくは、P150~P240番の回転させた砥粒研磨ベルト24を透明基材5の表面に対して垂直に当てることで、一方向に平行な複数の溝を形成する。砥粒研磨ベルト24は、紙製などのシート基材(図示略)に複数の砥粒が無作為に点在して接着されて形成されている。隣接する砥粒同士の離間幅は不均一であるとともに、砥粒の形状も不均一である。そのため、この砥粒研磨ベルト24によって研磨された透明基材5の表面には、
図9に示されるように、一方向に平行な複数の溝22が、溝22同士の溝幅と離間幅が不均一に形成され、ヘアライン模様である模様面9が形成される。これは、金属表面にヘアライン加工を施した場合と同様の意匠となる。
【0034】
また、大判の透明基材5に対して模様面9を形成する際には、まず砥粒研磨ベルト24を透明基材5の幅方向の一方端部側に垂直に当てて複数の溝22を形成した後、形成した溝22から左右方向に砥粒研磨ベルト24をずらして再度透明基材5の表面に垂直に当てて研磨する。これにより、透明基材5の表面に形成された模様面9は、所定の数で構成される溝群のパターン(すなわち砥粒研磨ベルト24を一度垂直に当てることより形成される複数の溝22)が並列されて形成され、透明基材5の表面全面に一方向に平行な複数の溝22を有する模様面9を形成することができる。これによれば、所定の数で構成される溝群のパターンを並列させることで、大型の加工機械を用いずとも大きな模様面9を形成することができる。
【0035】
なお、透明基材5の表面に対して水平方向に回転する旋盤を用いることで、
図7のように、周方向に平行な複数の溝が、溝同士の溝幅と離間幅が不均一であるスピン模様の模様面9を形成することができる。
【0036】
次いで、
図9(a)に示されるように、透明基材5の裏面に高輝度アルミを含む成膜材料を蒸着させ、ハーフミラー層7を形成する。なお、ハーフミラー層7は、印刷工程(例えばスクリーン印刷)により塗布して形成されてもよい。
【0037】
次いで、
図9(b)に示されるように、ハーフミラー層7の裏面に有色透明インキを印刷してスモーク層15を形成する。次いで、
図9(c)に示されるように、スモーク層15の裏面に表示層8を形成する。表示層8は、文字等の形成領域が透光部8aとして残るように、不透光性インキをスモーク層15の裏面に印刷(例えばスクリーン印刷)して形成することができる。以上の工程により、本発明に係る表示用フィルム3を容易に製作することができる。
【0038】
加えて、ハーフミラー層7は平滑面である透明基材5の裏面に蒸着により薄膜に形成されるため凹凸が小さく裏面に平滑性を維持しやすく、スモーク層15はハーフミラー層7の裏面に均一な厚みで印刷形成されるため、容易に均一な厚みで形成でき、かつハーフミラー層7の極微細な凹凸に入り込み硬化されることから、一体性を高くすることができる。そして、均一な厚みで平滑面であるスモーク層15の裏面に表示層8が印刷形成されることから、視認しやすいシャープな輪郭の形状を表現できる表示層8を形成する印刷工程において、印刷対象となる面、すなわちスモーク層15の裏面の凹凸を考慮しなくてよく、簡便に表示層8を形成することができ、ひいては表示用フィルム3の製作コストを抑えることができる。
【0039】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における追加や変更があっても、本発明に含まれる。
【0040】
例えば、前記実施例では、透明基材5の表面に形成される模様面9については、ヘアラインやスピン模様の模様面9としているが、種々の研磨加工装置を選択することで、旭光模様、梨地模様、バイブレーション模様等としてもよい。
【0041】
また、前記実施例の表示用フィルム3では、ハーフミラー層7を、高輝度アルミの成膜材料により形成しているが、銀、金、銅その他の金属や酸化物を成膜材料としてもよい。
【0042】
さらに、前記実施例の表示装置1では、表示層8をスモーク層15の裏面に接触させて形成しているが、表示層8を所定厚さのシート状として、これをスモーク層15の裏面と離間させて設けてもよい。
【0043】
さらに、前記実施例の表示装置1では、発光手段の光源11にLEDランプを使用しているが、レーザー光源を用いることもある。
【符号の説明】
【0044】
1 表示装置
2 ケース
3 表示用フィルム
4 発光手段
5 透明基材
6 透明層
7 ハーフミラー層
8 表示層
8a 透光部
9 模様面
10 アルファベット文字
11 光源(LEDランプ)
12 導光部材
13 ヘアライン模様(凹凸模様)
14 有機EL素子(発光手段、表示層)
15 スモーク層
16 文字盤
17 スピン模様(凹凸模様)
18 数字
19 点
22 溝
24 砥粒研磨ベルト