(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】熱伝導率を高めたナノ多孔質複合セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/403 20210101AFI20230425BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230425BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230425BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230425BHJP
H01M 50/491 20210101ALI20230425BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20230425BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230425BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20230425BHJP
H01M 50/429 20210101ALI20230425BHJP
【FI】
H01M50/403 D
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/489
H01M50/491
H01M50/426
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/429
(21)【出願番号】P 2021036116
(22)【出願日】2021-03-08
(62)【分割の表示】P 2016511812の分割
【原出願日】2014-04-29
【審査請求日】2021-04-07
(32)【優先日】2013-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511108208
【氏名又は名称】オプトドット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】OPTODOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【氏名又は名称】名塚 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【氏名又は名称】井上 満
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィット ダブリュ. アヴィソン
(72)【発明者】
【氏名】シュレイヤンズ シンギ
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラカント シー. パテル
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ アール. コモー ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル リム
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-269358(JP,A)
【文献】特開2008-210541(JP,A)
【文献】特開2010-056036(JP,A)
【文献】特開平08-255615(JP,A)
【文献】特開2008-266593(JP,A)
【文献】特表2002-532852(JP,A)
【文献】国際公開第2012/011944(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/114727(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/044741(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0009803(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/409-50/446
H01M 50/489-50/491
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性多孔質複合電池セパレータの製造方法において、
高分子バインダーを提供する工程と、
前記高分子バインダーに無機粒子の第1グループおよび第2グループを分散させて前記可撓性多孔質複合電池セパレータを形成する工程であって、前記無機粒子の第1グループはベーマイトを含み、前記無機粒子の第2グループはベーマイトを含み、前記無機粒子の第1グループの粒子は、前記無機粒子の第2グループの粒子と、その粒径において異なり、
前記可撓性多孔質複合電池セパレータは、追加の高分子セパレータ材料を有しないものであり、ASTM E1461法を用いて測定される前記可撓性多孔質複合電池セパレータの熱伝導率が、0.6W/m-Kよりも大きい、可撓性多孔質複合電池セパレータの製造方法。
【請求項2】
前記熱伝導率は、温度が25度のときよりも50度のときの方が高い、請求項1記載の可撓性多孔質複合電池セパレータの製造方法。
【請求項3】
前記可撓性多孔質複合電池セパレータの細孔容積の90%より多くが、100nmよりも小さな孔径を持つ細孔を含む、請求項1または2に記載の可撓性多孔質複合電池セパレータの製造方法。
【請求項4】
前記無機粒子の第1グループおよび第2グループは、重量で65%から95%のベーマイトを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の可撓性多孔質複合電池セパレータの製造方法。
【請求項5】
多孔率が35%から50%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の可撓性多孔質複合電池セパレータの製造方法。
【請求項6】
前記高分子バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)およびそのコポリマーを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の可撓性多孔質複合電池セパレータの製造方法。
【請求項7】
前記高分子バインダーは、ポリビニルエーテル、ウレタン、アクリル、セルロース、スチレン-ブタジエンコポリマー、天然ゴム、キトサン、ニトリルゴム、シリコーンエラストマー、PEO、PEOコポリマーおよびポリホスファゼンから成るグループから選択されるポリマーを含む、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の可撓性多孔質複合電池セパレータの製造方法。
【請求項8】
200度の温度に少なくとも一時間さらされた場合に1%より少ない収縮率を呈する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の可撓性多孔質複合電池セパレータの製造方法。
【請求項9】
前記高分子バインダーは、コモノマーをさらに含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の可撓性多孔質複合電池セパレータの製造方法。
【請求項10】
前記可撓性多孔質複合電池セパレータの寸法安定性が、50度から250度の温度で一定である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の可撓性多孔質複合電池セパレータの製造方法。
【請求項11】
前記無機粒子の第1グループおよび第2グループは、重量で95%のベーマイトを含む、請求項4記載の可撓性多孔質複合電池セパレータの製造方法。
【請求項12】
電気化学セルの製造方法において、
アノードを提供する工程と、
カソードを提供する工程と、
リチウム塩を含む無機電解質を提供する工程と、
可撓性多孔質複合電池セパレータを提供する工程であって、前記可撓性多孔質複合電池セパレータは、
高分子バインダーおよび前記高分子バインダーに分散されて前記可撓性多孔質複合電池セパレータを形成する無機粒子の第1グループおよび第2グループを有し、前記無機粒子の第1グループはベーマイトを含み、前記無機粒子の第2グループはベーマイトを含み、前記無機粒子の第1グループの粒子は、前記無機粒子の第2グループの粒子と、その粒径において異なり、
前記可撓性多孔質複合電池セパレータは、追加の高分子セパレータ材料を有しないものであり、ASTM E1461法を用いて測定される前記可撓性多孔質複合電池セパレータの熱伝導率が、0.6W/m-Kよりも大きい、工程と、を備え、
結合して前記電気化学セルを形成する、電気化学セルの製造方法。
【請求項13】
前記熱伝導率は、温度が25度のときよりも50度のときの方が高い、請求項12記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項14】
前記可撓性多孔質複合電池セパレータの細孔容積の90%より多くが、100nmよりも小さな孔径を持つ細孔を含む、請求項12または13に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項15】
前記無機粒子の第1グループおよび第2グループは、重量で65%から95%のベーマイトを含む、請求項12乃至14のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項16】
多孔率が35%から50%である、請求項12乃至15のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項17】
前記高分子バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)およびそのコポリマーを含む、請求項12乃至16のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項18】
前記高分子バインダーは、ポリビニルエーテル、ウレタン、アクリル、セルロース、スチレン-ブタジエンコポリマー、天然ゴム、キトサン、ニトリルゴム、シリコーンエラストマー、PEO、PEOコポリマーおよびポリホスファゼンから成るグループから選択されるポリマーを含む、請求項12乃至
16のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項19】
200度の温度に少なくとも一時間さらされた場合に1%より少ない収縮率を呈する、請求項12乃至18のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項20】
前記高分子バインダーは、コモノマーをさらに含む、請求項12乃至19のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項21】
前記可撓性多孔質複合電池セパレータの寸法安定性が、50度から250度の温度で一定である、請求項12乃至20のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項22】
前記無機粒子の第1グループおよび第2グループは、重量で95%のベーマイトを含む、請求項15記載の電気化学セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2013年4月29日出願の米国仮出願No.61/817,119の利益を主張し、その内容は全体として、本明細書に参照として組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、全体として多孔膜の分野に関し、電流生成電池および電流生成電池に使用するセパレータに関する。特に、本開示は、無機酸化物または他の無機材料を備える多孔質セパレータ膜に関し、その膜は、ポリオレフィン材料から成る多孔セパレータ膜に比べて熱伝導率が向上している。また、本開示は、そのような熱伝導率が向上した多孔質セパレータを備える、リチウムイオン電池および蓄電池のような、電流生成電池に関する。
【背景技術】
【0003】
充電式または二次リチウムイオン電池、非充電式または一次リチウム電池、およびリチウム-硫黄電池などの他の種類を含むリチウム電池は、概して、プラスチックセパレータ、両面に被覆するカソード層を有する金属基板、別のセパレータ、および両面に被覆するアノード層を有する別の金属基板をインターリーブして作られる。これらの材料片の列を維持するため、および他の品質上の理由のために、このインターリーブは通常、自動装置で行われ、複雑で高価である。また、十分な機械的強度および健全性を達成するために、セパレータおよび金属基板は、厚さが10μm以上のように、比較的厚い。例えば、アノード被覆層の銅の金属基板の典型的な厚さは10μmであり、カソード被覆層のアルミニウムの金属基板の典型的な厚さは12μmであり、プラスチックセパレータは、概して、12μmから20μmの厚さを有する。これらの厚いセパレータおよび金属基板は、電気化学的に活性ではなく、したがって、リチウム電池の電極の電気活性材料の量が少なくなる。このことによって、リチウム電池のエネルギー密度および電力密度が制限される。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、セラミック粒子および多孔質バインダーを含む多孔質電池セパレータに関し、前記多孔質セパレータは、多孔率が35%から50%であり、平均孔径は10nmから50nmである。場合によっては、前記セラミック粒子は、無機酸化物粒子および無機窒化物粒子からなるグループから選択される。場合によっては、前記多孔質セパレータは、200度の温度に少なくとも一時間さらされた場合、1%より少ない収縮率を呈する。場合によっては、前記セラミック粒子は、アルミナ、AlO(OH)またはベーマイト、窒化アルミニウム、窒化硼素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、ジルコニア、シリカおよびそれらの組み合わせのうち少なくとも一つを含む。場合によっては、前記セラミック粒子は、65%から95%のベーマイトおよび残りの窒化硼素を含む。場合によっては、前記セラミック粒子は、65%から95%のベーマイトおよび残りの窒化アルミニウムを含む。場合によっては、前記平均孔径は10nmから90nmである。場合によっては、1%より少ない細孔が、10nmから90nm以外の孔径を有する。場合によっては、前記多孔率は、35%から50%である。場合によっては、前記多孔質バインダーは、二フッ化ポリ塩化ビニリデン(PVdF)およびそのコポリマー、ポリビニルエーテル、ウレタン、アクリル、セルロース、スチレン-ブタジエンコポリマー、天然ゴム、キトサン、ニトリルゴム、シリコーンエラストマー、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレンオキシドコポリマー、ポリホスファゼンおよびそれらの組み合わせから選択されるポリマーを含む。場合によっては、前記多孔質セパレータは、温度が25度から50度に上昇すると高まり、ASTM E1461およびASTM 1530のうち一つを用いて試験される、熱伝導率を有する。場合によっては、前記セパレータは、細孔容積を有し、前記細孔容積の90%より多くが、孔径が100nmより小さい細孔を含む。
【0005】
本開示の別の態様は、アノードと、カソードと、リチウム塩を備える無機電解質と、有機ポリマーおよびセラミック材料を含む多孔質セパレータ層と、を含む電気化学セルに関し、前記多孔質セパレータ層は、多孔率が35%から50%で平均孔径は10nmから90nmであり、200度の温度に少なくとも一時間さらされた場合、1%より少ない収縮率を呈する。場合によっては、前記無機セラミック粒子は、無機酸化物粒子および無機窒化物粒子からなるグループから選択される。場合によっては、前記無機セラミック粒子は、アルミナ、AlO(OH)またはベーマイト、窒化アルミニウム、窒化硼素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、ジルコニア、シリカ、およびそれらの組み合わせを含み、前記有機ポリマーは、二フッ化ポリ塩化ビニリデンおよびそのコポリマー、ポリビニルエーテル、ウレタン、アクリル、セルロース、スチレン-ブタジエンコポリマー、天然ゴム、キトサン、ニトリルゴム、シリコーンエラストマー、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレンオキシドコポリマー、ポリホスファゼン、およびそれらの組み合わせを含む。場合によっては、前記平均孔径は、25nmから35nmである。場合によっては、前記多孔率は、40%から45%である。
【0006】
本開示の別の態様は、可撓性多孔質複合セパレータを製造する方法に関する。前記方法は、有機高分子材料と、無機セラミック材料と、溶剤とを含む分散液を調合することと、前記分散液を基板に付与して被膜を形成することと、前記被膜を乾燥して硬化させることと、前記被膜を前記基板から取り除き、それによって可撓性多孔質複合セパレータを形成することと、を含み、前記多孔質セパレータは、多孔率が35%から50%で平均孔径は10nmから50nmであり、200度の温度に少なくとも一時間さらされた場合、1%より少ない収縮率を呈する。場合によっては、前記平均孔径は20nmから40nmであり、前記多孔質複合セパレータの多孔率は40%から45%である。場合によっては、前記無機セラミック材料は、ベーマイト、窒化硼素、窒化アルミニウムの少なくとも一つを含む。
【0007】
本開示の別の態様は、リチウムイオン電池の電極の温度を上昇させることと、多孔質セラミック粒子およびポリマーを備えるセパレータを介して熱を前記電極から第二電極に伝導することとを含む、電池を介して熱を伝導する方法に関し、前記セパレータは、多孔率が35%から50%で平均孔径は10nmから50nmである。場合によっては、前記平均孔径は20nmから40nmである。場合によっては、前記セパレータは複数の細孔を有し、前記細孔のそれぞれの直径は10nmから50nmである。場合によっては、前記セパレータは複数の細孔を有し、前記細孔のいずれも直径が100nm以下である。場合によっては、前記セパレータは、多孔率が40%から45%である。場合によっては、前記セパレータは、200度の温度に少なくとも一時間さらされた場合、1%より少ない収縮率を呈する。
【0008】
本開示の別の態様は、ポリマーと、前記ポリマーに均一に分散した第一無機粒子材料と、前記ポリマーに均一に分散した、粒径または組成のどちらかが前記第一無機粒子材料と異なる第二無機粒子材料とを含む可撓性複合セラミックセパレータに関し、前記可撓性複合セラミックセパレータは、前記第一無機粒子材料と前記第二無機粒子材料の負荷の合計と同じ負荷重量において単一の無機粒子材料のみを含むという点のみが異なる同じ組成の比較複合セラミックセパレータの熱伝導率よりも高い熱伝導率を呈する。場合によっては、前記比較複合セラミックセパレータの前記単一の無機粒子は、前記可撓性複合セラミックセパレータの前記無機粒子材料の一つと同じである。
【0009】
本開示を図示するために、特定の実験データを図面に示す。しかしながら、本開示が、示される精細なデータに限られると解するべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態によって作製される高分子セパレータおよびベーマイト基セパレータのサーモグラム。
【
図2】本開示の実施形態によって作製される高分子セパレータおよびベーマイト基セパレータのサーモグラム。
【
図3】本開示の実施形態によって作製されるナノ多孔質複合セパレータの熱伝導率と比較した高分子セパレータの熱伝導率(W/m-Kで測定)を示すグラフ。
【
図4】高分子セパレータ材料、セラミック被覆高分子セパレータ材料、および本開示の実施形態によって作製されるナノ多孔質複合セパレータ材料の熱伝導率(W/m-Kで測定)を示すグラフ。
【
図5】本開示の実施形態によって作製されるナノ多孔質複合セパレータを含む、種々のセパレータ材料の寸法安定性を示すグラフ。
【
図6】本開示の実施形態によって作製されるナノ多孔質複合セパレータを含む、種々のセパレータ材料の寸法安定性を示すグラフ。
【
図7】本開示の実施形態によって作製されるナノ多孔質複合セパレータを含む、種々のセパレータ材料の寸法安定性を示すグラフ。
【
図8】本開示の実施形態によって作製されるナノ多孔質複合セパレータを含む、種々のセパレータ材料の寸法安定性を示すグラフ。
【
図9】高分子セパレータ材料および本開示の実施形態によって作製されるナノ多孔質複合セパレータ材料の孔径の関数としてのLog微分細孔容積を示すグラフ。
【
図10】本開示の実施形態によって作製されるナノ多孔質複合セパレータ材料を含む、二つのセパレータ材料の伸率の関数としての引張応力を示すグラフ。
【
図11】本開示の種々の実施形態による、ベーマイトと窒化硼素(BN)の種々の混合物の粒径分布を示すグラフ。
【
図12】本開示の種々の実施形態による、ベーマイトと窒化アルミニウム(AlN)の種々の混合物の粒径分布を示すグラフ。
【
図13】本開示の種々の実施形態による、ベーマイトと窒化硼素の種々の混合物の液状の粘度変化を示すグラフ。
【
図14】本開示の実施形態による、ナノ多孔質複合セパレータを作製する方法を図示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ナノ多孔質複合セパレータは、多孔質/ナノ多孔質無機材料と有機ポリマー材料との複合体を備えることを開示される。そのような複合セパレータは、例えば、電池および/または蓄電池に使われうる。無機材料は、アルミナ、AlO(OH)またはベーマイト、窒化アルミニウム、窒化硼素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、ジルコニア、シリカ、またはそれらの組み合わせを備えうる。有機ポリマー材料は、例えば、二フッ化ポリ塩化ビニリデン(PVdF)および/またはそのコポリマー、ポリビニルエーテル、ウレタン、アクリル、セルロース、スチレン-ブタジエンコポリマー、天然ゴム、キトサン、ニトリルゴム、シリコーンエラストマー、ポリエチレンオキシド(PEO)またはポリエチレンオキシドコポリマー、ポリホスファゼンまたはそれらの組み合わせを含みうる。一実施形態では、可撓性ナノ多孔質複合セパレータの多孔率は、35%から50%または40%から45%であり、平均孔径は10nmから50nmである。セパレータは、無機材料、有機材料、および溶剤を含む分散液で基板を被覆することで形成されうる。一旦乾くと、被膜は基板から取り除かれうる。このように、ナノ多孔質複合セパレータを形成する。ナノ多孔質複合セパレータは、200度より高い温度での熱伝導率と寸法安定性を提供しうる。
【0012】
[全体の概要]
多孔質セパレータは、アノードとカソードの物理的な接触の防止しながら必要に応じて電気化学エネルギー供給のためのイオン輸送を促進することをを含む、電池設計の重要な役割を担う。大型リチウムイオン電池は、平均温度20度から70度で動作しうる。しかしながら、電池充電および/または放電におけるスパイクは、そのような電池の短期温度を110度以上に押し上げる可能性がある。リチウムイオン電池に使用されるセパレータは、一般的に、そのような高温においてはとりわけ化学分解のために縮みうるおよび/または溶けうるポリプロピレンまたはポリエチレンなどの、ポリオレフィンのセパレータである。これらのプラスチックセパレータは、電池の電極を互いから絶縁するのに必要な導電性が低いが、プラスチックセパレータはまた、熱伝導率も非常に低く、したがって、電池内の熱を放熱するのが遅く、効率が悪い。リチウムイオン電池は、電気および/またはハイブリット自動車のような高容量のアプリケーションにますます利用されており、これらの電池は大型でパワーレートが高いので、安全性の向上の必要性は非常に高まっている。場合によっては、電池セパレータは、電池性能および安全性を確保するために、200度以上の温度で寸法安定性(すなわちセパレータ材料の収縮率が5.0%より少ない)を維持することが求められうる。ポリオレフィンセパレータをセラミック基材料で被覆すること、および/または高融点のポリマー基材料(ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデンなど)を選択することは、熱安定性/電池故障温度を幾分上げうるが、そのような技術はコストを上げ、セル全体への速く、効率的で、均一な熱伝導という基本的なセパレータ設計事項に取り組み損ねる。
【0013】
したがって、本開示の実施形態によると、電気的に分離する、熱伝導率の、200度を超える温度で寸法安定性を保つナノ多孔質無機セパレータ材料が開示される。一実施形態では、ナノ多孔質セパレータ層は、無機材料(セラミックおよび/またはセラミックフィラー材料とも呼ばれる)と、無機材料を結合して保持するバインダとして作用する有機ポリマーとを含む。このナノ多孔質複合セパレータは、機械的強度、イオン伝導性、熱伝導率、および電気絶縁のバランスを呈しており、電気化学セルのセパレータ膜として適切である。適切な無機セラミック材料は、例えばアルミナ、AlO(OH)またはベーマイト、窒化アルミニウム、窒化硼素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、ジルコニア、シリカおよび上記の組み合わせのような熱伝導率が高いセラミック粒子を含みうる。ナノ多孔質複合セパレータは、いくつかの実施形態において、これらの無機材料を一つ以上、二フッ化ポリ塩化ビニリデンおよび/またはそのコポリマー、ポリビニルエーテル、ウレタン、アクリル、セルロース、スチレン-ブタジエンコポリマー、天然ゴム、キトサン、ニトリルゴム、シリコーンエラストマー、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレンオキシドコポリマー、ポリホスファゼンおよび上記の組み合わせを含む、しかしこれらに限らない、有機または無機ポリマー材料で分散させることで形成されうる。
【0014】
表1は、本明細書で開示するナノ多孔質複合セパレータを形成するのに適した無機セラミック材料の多くの適切な例を提供する。無機材料は、それらの対応する熱特性および電気特性に沿って表示される。
【0015】
【0016】
六方晶窒化硼素(h-Bn)の熱伝導率は、いくつかの実施形態において、その配向によって600または30でありうる。表1に示す無機材料に加えて、無機材料は、ベーマイトまたはこれらの材料のいずれかの組み合わせを含みうる。ベーマイトは、アルミナの水和した形状であり、600度を超える温度まで安定しうる。ベーマイトの結晶構造は八面体であり、波型の層に配置されるので、他のアルミニウム基材料よりも吸湿しにくい。いくつかの実施形態では、ナノ多孔質複合セパレータの種々の性質は、例えば、粒径、有機ポリマー、粒径分布、無機材料の多孔率、比表面積、および/またはナノ多孔質材料の表面処理を調節することによって適合されうる。いくつかの実施形態では、複合セパレータの粒径分布は、ベーマイトと他の種々の無機材料を様々な比率で混合することでカスタマイズされうる。例えば、ナノ多孔質セパレータ材料は、純ベーマイト(不純物が1%より少ない)か、ベーマイト90%で窒化硼素または窒化アルミニウム10%か、もしくはベーマイト70%で窒化硼素または窒化アルミニウム30%でありうる。これらの無機材料の他の種々の性質および組み合わせは本開示を考慮すれば明らかになり、本開示は、無機材料の任意の特定の組み合わせまたは特性に限定されると意図されるものではない。いくつかの実施形態では、ナノ多孔質複合セパレータは、無機粒子および無機粒子を結合して均質なセパレータを形成する有機ポリマーを含む。
【0017】
具体的な例示的実施形態では、ナノ多孔質複合セパレータは、ポリフッ化ビニリデンポリマーを有するベーマイト顔料と分散剤との混合物を、N-メチルピロリドン(NMP)および2-ブタノンを備える混合有機溶剤に重量比4:1で混合し、この混合物をシリコーン剥離フィルムに被膜することで作製された。他の実施形態では、溶剤は、例えばベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドンまたは2-ブタノンなどの他の適切な溶剤またはそれらの組み合わせを備えうる。炉乾燥およびそれに続く剥離基材からのディラミネーションの際に、厚さ20μmの多孔質ベーマイト基セパレータが得られた。このセパレータの多孔率は約42%で、セパレータは220度の炉で一時間熱されると1%より少ない収縮率を示した。別の実施形態では、ナノ多孔質複合セパレータは、同様の加熱条件のもとで、0.5%より少ない収縮率を示した。
【0018】
別の例示的実施形態では、有機ポリマー材料は、Solvayソレフ(登録商標)5130PVdFのような高分子量グレードのポリフッ化ビニリデンポリマーでありうる。この特定の有機材料は、集電体への強力な接着を提供でき、具体的な一例では、ナノ多孔質複合セパレータは、重量比で、4.5のベーマイトに1のソレフ5130を含む。他の実施形態では、少量のコモノマーを組み入れると、セパレータ材料の凝集強度を高めうる。いくつかの実施形態では、有機ポリマーに対する無機酸化物の割合を下げると、セパレータ材料の多孔率および循環比率容量を下げる一方、セパレータ材料の機械的強度は上がる。
【0019】
別の例示的実施形態では、ナノ多孔質複合セパレータ、35%から50%の多孔率と、セパレータ材料全体への均一な細孔分布と、および/または20nmから40nmの平均孔径を有する。異なる組の実施形態では、セパレータの多孔率は40%から45%である。他の組の実施形態では、無機材料は、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、または40nmより大きな細孔は含まない。さらに他の組の実施形態では、1%より少ない細孔または0.1%より少ない細孔が、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、または40nmである。他の組の実施形態では、平均孔径は10nmから50nm、20nmから40nm、または25nmから35nmである。さらに他の組の実施形態では、複合セパレータの、99%より多くの細孔または99.9%の細孔が、10nmから90nm、10nmから50nm、20nmから40nm、または25nmから35nmである。ナノ多孔質複合セパレータは、もしセパレータ材料が製造中に配向されなければ、(サンプルの幅に沿った)横方向と同様の性質を、(サンプルの長さに沿った)機械方向で呈しうる。
【0020】
ポータブルコンピュータおよび他のアプリケーション用のリチウム電池に広く使われる筒状の金属セルと対照的に、車両用のリチウム電池の多くは、平らまたは角柱設計である。場合によっては、車両または他のアプリケーション用の高エネルギーで経済的なリチウム電池を製造することは、各電池の電気活性物質量の比率または割合を増やすことと、電池を作製する自動装置の複雑さと費用を減らすことを伴いうる。いくつかの実施形態では、リチウム電池は、より細いセパレータおよび/または金属基板層を実装することで、電気活性物質の含有量を増加しうる。そのようなリチウム電池は、例えば、例えばポータブルコンピュータ電池のために利用する巻線装置よりも、複雑でなく費用の少ない自動処理装置で作製されうる。いくつかの実施形態では、自動処理装置は、平らなまたは角柱の電池を造るのに特に適しうる。
【0021】
一実施形態では、分散液は、無機材料、ポリマー材料、および溶剤を所望の比率で含んで作製されうる。分散液はそれから、一時的なキャリア基板に被覆され、基板から取り除かれる前に所望の機械的性能を得るために、乾燥および/または硬化されうる。一旦乾燥および/または硬化すると、複合材料は基板から取り除かれうる(もしくは、基板が複合材料から取り除かれうる)。このように、ナノ多孔質複合セパレータを形成する。種々の実施形態では、多孔質セパレータ層は、厚さ5μmから50μm、10μmから30μm、7μmから20μm、10μmから20μm、または2015μmから25μmのフィルムでありうる。
【0022】
[ナノ多孔質複合セパレータの例]
図1、
図2は、赤外線カメラ(FLIRモデル8300)を用いて作製された、高分子セパレータおよび本開示の実施形態によって作製されたベーマイト基セパレータのサーモグラムを示す。
図1は、加熱したステンレス鋼基板にさらした際のポリエチレンセパレータフィルムのサーモグラムである。一方、
図2は、加熱したステンレス鋼基板に同様にさらした同じ厚さのベーマイト基セパレータフィルムのサーモグラムである。
図1の明るいパッチ101は、熱集中が増加した領域に相当する。一方、暗いパッチ103は、熱集中が減少した領域に相当する。
図2のベーマイト基セパレータで観察される均一な熱分布は、プラスチックセパレータに見られるムラのある熱分布と比べて明らかである。
【0023】
図3は、本開示の実施形態によって作製されたナノ多孔質複合セパレータの熱伝導率と比較した高分子セパレータの熱伝導率(W/m-Kで測定)のグラフを示す。
図3の測定は、ASTM E1461によって、マサチューセッツ州バーリントンのNetszch(登録商標)InstrumentsのLFA-447を用いてレーザーフラッシュ(瞬間)法で為された。これらの測定は、典型的なポリオレフィンセパレータ材料と比べて、ナノ多孔質複合セパレータのより高い熱伝導率を図示する。コラム301およびコラム303は、25度と50度の温度にさらされたナノ多孔質複合セパレータの熱伝導率をそれぞれグラフで表す。一方、コラム305およびコラム307は、25度と50度の温度にさらされたポリオレフィンセパレータ材料の熱伝導率をそれぞれグラフで表す。この特定の実施形態では、用いられたポリオレフィンセパレータ材料は、厚さ18μmのTonen(登録商標)の三層であり、ナノ多孔質複合セパレータは、厚さ21μmで、ベーマイト(Disperal(登録商標)10SR)とSolvay(登録商標)のソレフ5130を4.5:1の比率で備える。
図3に見られるように、ナノ多孔質複合セパレータの熱伝導率は、同じ厚さのポリオレフィンセパレータの熱伝導率より四倍以上高い。この高まった熱伝導率は、いくつかの実施形態において、温度が25度から50度に上昇した時にさらに上昇する。この、温度が上昇した際に熱伝導率が上昇する特性は、リチウムイオン電池の安全性に特に役立つ。なぜなら、リチウムイオン電池は概して、50度前後の温度で、セル動作中に発生した熱によって動作するからである。熱を速く均一にセル全体に分配することは、あらゆる“ホットスポット”または他の不均一に加熱された領域からの熱の局所的な蓄積を最小限にするのに重要である。
【0024】
図4は、高分子セパレータ材料、セラミック被覆高分子セパレータ材料、および本開示の実施形態によって作製されたナノ多孔質複合セパレータの熱伝導率の(W/m-Kで測定)のグラフを示す。
図4のグラフに表す熱伝導率は、ASTM E1530保護熱板(定常状態)法によって、推定変動±3.0%で測定された。これらの測定は、典型的な高分子セパレータ材料およびセラミック被覆高分子セパレータ材料と比べて、ナノ多孔質複合セパレータのより高い熱伝導率を示す。この特定の例において、測定されたサンプルは、
図3で測定した二つのセパレータ材料と共に、厚さ18μmのTonen(登録商標)の三層の両面をベーマイトと高分子バインダー材料を5.5:1の比率で備えた3.5μmの層で被覆して作られた第三のサンプルも含む。コラム401およびコラム403は、25度と50度で測定されたナノ多孔質複合セパレータの熱伝導率をそれぞれグラフで表し、コラム405およびコラム407は、25度と50度で測定されたポリオロレフィンセパレータ材料の熱伝導率をそれぞれグラフで表し、コラム409およびコラム411は、25度と50度で測定されたセラミック被覆高分子セパレータ材料の熱伝導率をそれぞれグラフで表す。この特定の実施形態において、ナノ多孔質複合セパレータの熱伝導率は、同じ厚さのポリオレフィンセパレータ材料の熱伝導率の約二倍である。一方、セラミック被覆セパレータ材料は、ポリオレフィンセパレータ材料の熱伝導率を約20%超え、わずかな向上を示す。
【0025】
図5、
図6は、本開示の実施形態によって作製されたナノ多孔質複合セパレータを含む種々のセパレータ材料の寸法安定性を示すグラフである。
図5は、サンプルの長さに沿って測定された種々のセパレータ材料の温度の関数としての寸法変化(μmで測定)をグラフに表す。一方、
図6は、サンプルの幅に沿って測定された寸法変化をグラフに表す。
図5、
図6に示す例示的実施形態において、501は高分子セパレータ材料の寸法変化を、503は片面をセラミック被覆した高分子セパレータ材料の寸法変化を、505は両面をセラミック被覆した高分子セパレータ材料の寸法変化を、507は本開示の実施形態によって作製されたナノ多孔質複合セパレータの寸法変化を、グラフに表す。この特定の例において、グラフ501に対応する高分子セパレータは、厚さ18μmでガーレー通気度が300sec/100ccのTonen(登録商標)の三層ポリオレフィンである。グラフ503に対応するセパレータは、ベーマイト(Disperal(登録商標)10SR)とArkemaKynar(登録商標)761を5.5:1の比率で備える3.5μmの層で片面を被覆され、ガーレー通気度は470sec/100ccである。グラフ505に対応するセパレータは、ベーマイト(Disperal(登録商標)10SR)とArkemaKynar(登録商標)761を5.5:1の比率で備える3.5μmの層で両面を被覆され、ガーレー通気度は600sec/100ccである。グラフ507に対応するナノ多孔質複合セパレータは、ベーマイト(Disperal(登録商標)10SR)とSolvay(登録商標)のソレフ5130を4.5:1の比率で備え、厚さは21μmで、ガーレー通気度は900sec/100cc、多孔率は40%である。
図5、
図6に見られるように、高分子セパレータ501およびセラミック被覆した高分子セパレータ503、505の寸法安定性は、100度から170度で大きく変化するが、ナノ多孔質複合セパレータ507は、200度を超えても高い寸法安定性をしっかりと維持する。
【0026】
図7、
図8は、本開示の実施形態によって作製されたナノ多孔質複合セパレータを含む、種々のセパレータ材料の寸法安定性(収縮率として測定)のグラフである。
図7は、サンプルの長さに沿って測定した種々のセパレータ材料の温度の関数としての収縮率をグラフに表す。一方、
図8は、種々の材料のサンプルの幅に沿って測定した収縮率をグラフに表す。
図7、
図8でグラフに表した収縮率は、線状寸法変化を測定するためのASTM1204基準試験方法によって一時間にわたって無制限で測定された。示した例示的実施形態において、701は高分子セパレータ材料の収縮率、703は片面をセラミック被覆した高分子セパレータ材料の収縮率、705は両面をセラミック被覆した高分子セパレータ材料の収縮率、707は本開示の実施形態によって作製されたナノ多孔質複合セパレータの収縮率をグラフで表す。この特定の実施形態では、グラフ701、703、705、707に対応する種々のセパレータは、グラフ501、503、505、507を参照した上記のものと、それぞれ同じセパレータであった。
図7、
図8に見られるように、高分子セパレータ材料701および第一のセラミック被覆した高分子セパレータ材料703の収縮率は、100度を超える温度で激しく上昇する。第二のセラミック被覆した高分子セパレータ材料705は、収縮率が少し緩やかに上昇する。一方、ナノ多孔質複合セパレータ材料707は、160度の温度を超えても0.5%以下の低い収縮率を維持する。
【0027】
図9は、高分子セパレータ材料および本開示の実施形態によって作製されたナノ多孔質可撓性複合セパレータの孔径(μmで測定)の関数としてのLog微分細孔容積(mL/gで測定)を示すグラフである。この特定の実施形態において、901は、厚さ20μm、多孔率約40%で、ベーマイト(Disperal(登録商標)10SR)とSolvay(登録商標)のソレフ5130を4.5:1の比率で備えるナノ多孔質複合セパレータの微分細孔容積をグラフに表し、903は、厚さ18μmの、Tonen(登録商標)の三層高分子セパレータ材料の微分細孔容積をグラフに表す。この実施形態に見られるように、ナノ多孔質複合セパレータに相当する孔径分布901は、30nm前後に集中しており、高分子セパレータに相当する分布903と比較して平均径が小さい。いくつかの実施形態では、そのような狭い孔径分布および小さな平均径は、局所的な漏電を起こしうるセパレータの樹状浸透のリスクを最小限にしうる。他の実施形態では、ナノ多孔質複合セパレータの孔径分布は、10nmから90nm、10nmから50nm、20nmから40nm、または25nmから35nmに集中しうる。孔径は、いくつかの実施形態において、ナノ多孔質複合セパレータの定式パラメータを通して適合されうる。上記のように、有機ポリマーに対する無機酸化物の割合を減らすと、材料の機械的強度を上昇させても、多孔率および循環比率容量が下がる。
【0028】
図10は、本開示の実施形態によって作製されたナノ多孔質複合セパレータを含む、二つのセパレータ材料の伸率の関数としての引張応力(psiで測定)を示すグラフである。この例示的実施形態では、1001は、厚さ18μmの、Tonen(登録商標)の三層高分子セパレータ材料の引張応力をグラフに表す。一方、1003は、厚さ20μm、多孔率約40%で、ベーマイト(Disperal(登録商標)10SR)とSolvay(登録商標)のソレフ5130を4.5:1の比率で備えるナノ多孔質複合セパレータの引張応力をグラフに表す。この特定の実施形態では、グラフ1001および1003に対応するセパレータは、グラフ501、503、505、507を参照した上記のものと、それぞれ同じセパレータであった。U.S. Advanced Battery Consortium(USABC)の目標引張応力は1000psiであり、線1005で示される。
図10でグラフに表した引張応力は、薄いプラスチックシートの引張性能を測定するためのASTM D882-00基準方法を用いて、材料サンプルの長さに沿って測定された。別の実施形態では、ナノ多孔質複合セパレータ1003は、高分子セパレータ材料1001の2倍以上の圧縮強度を有する。
【0029】
図11は、本開示の種々の実施形態による、ベーマイトと窒化硼素(BN)の種々の混合物の粒径分布(μmで示す粒径の関数としての体積%)を示すグラフである。具体的な例示的一実施形態では、用いられた窒化硼素はSaint-Gobain(登録商標)のCarbotherm PCTP05である。この例に見られるように、1101は、100%ベーマイト材料の粒径分布、1103は、ベーマイト90%窒化硼素10%を含む組成物の粒径分布、1105は、本開示の三つの実施形態による、ベーマイト70%窒化硼素30%を含む組成物の粒径分布を描く。ベーマイト材料分布1101の最頻値は約0.1μmで得られる。この特定の例示において、ベーマイト材料分布1101は単一の最頻値を含む一方、90%ベーマイトの組成物1103および70%ベーマイトの組成物1105はどちらも、約0.15μmから0.19μmおよび約2μmから3μmでの最頻値を有する双峰性の分布を呈する。
【0030】
図12は、本開示の種々の実施形態による、ベーマイトと窒化アルミニウム(AlN)の種々の混合物の粒径分布(μmで示す粒径の関数としての体積%)を示すグラフである。この例に見られるように、1201は、100%ベーマイトを備えるセパレータ材料の粒径分布、1203は、ベーマイト90%窒化アルミニウム10%を備えるセパレータ材料の粒径分布、1205は、本開示の三つの実施形態による、ベーマイト70%窒化アルミニウム30%を備えるセパレータ材料の粒径分布を描く。一実施形態では、ベーマイト材料分布1201の最頻値は約0.1μmで得られ、
図11でグラフに表したベーマイト材料分布1101の最頻値と同様である。この特定の例示において、ベーマイト材料分布1201は単一の最頻値を含む一方、90%ベーマイト材料1203および70%ベーマイト材料1205はどちらも、双峰性の分布を呈する。90%ベーマイト材料分布1203の最頻値は約0.15μmから約0.19μmおよび約8μmから約11μmで得られる一方、70%ベーマイト材料分布1205の最頻値は、約0.12μmから約0.18μmおよび約7μmから約10μmで得られる。
【0031】
いくつかの実施形態において、無機粒子は、二、三、またはそれ以上の最頻値に集まる異なる粒径でありうる。異なる粒径の粒子の多峰性分布を用いることによって、高まった熱伝導およびより好適な圧縮強度を提供しつつセパレータの多孔率を維持しさらに向上させるセパレータの構成に、粒子が充填されうるとされる。異なる最頻値に集まる粒子は、同じまたは異なる組成物の粒子でありうる。例えば、約100nmを中心とする峰分布を有するベーマイト粒子は、約2nmを中心とする峰分布を有する追加のベーマイト粒子と結合されうる。他の実施形態では、約100nmを中心とする峰分布を有するベーマイト粒子は、約2nmを中心とする峰分布を有する窒化アルミニウムまたは窒化硼素と結合されうる。第一最頻値での粒径と第二最頻値での粒径の比率は、例えば、1:2、1:3、1:5、または1:10よりも大きくできる。他の実施形態では、二つの最頻値の粒径の比率は、例えば、1:100、1:50、1:20、1:10、1:5、または1:3よりも小さくできる。セパレータに使われる二つの異なる粒径の粒子の量の比率(wt/wt)は、1:1、2:1、5:1、または10:1よりも大きくできる。
【0032】
図13は、本開示の種々の実施形態による、ベーマイトと窒化硼素の種々の混合物の、液状での粘度変化(rpmで表すスピンドル速度の関数としての粘度として測定し、cPsで表す)を示すグラフである。この例に見られるように、1301は100%ベーマイト材料の粘度変化、1303はベーマイト90%窒化硼素10%を含む組成物の粘度変化、1305は本開示の三つの実施形態によるベーマイト70%窒化硼素30%を含む組成物の粘度変化を描く。
【0033】
いくつかの実施形態において、窒化硼素で修正した組成物1103-1105および1303-1305は、二峰性の粒径分布によって可能になる混合フィラーの高密度充填のために、純ベーマイト組成物よりも高い熱伝導率を有しうる。同様に、他の実施形態において、窒化アルミニウムで修正した組成物1203-1205は、窒化アルミニウムで修正した組成物の二峰性の粒径分布のために、純ベーマイト組成物よりも高い熱伝導率を有しうる。
【0034】
図14は、本発明の実施形態による、ナノ多孔質複合セパレータを作製する方法を図示したフローチャートである。この方法は、無機粒子と溶剤との混合1401で始まりうる。いくつかの実施形態では、無機粒子は、アルミナ、AlO(OH)またはベーマイト、窒化アルミニウム、窒化硼素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、ジルコニア、シリカおよびそれらの組み合わせを含みうる。そして溶剤は、例えばトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドン、2-ブタノンまたは任意の他の適切な溶剤またはそれらの混合物を含みうる。この方法は、分散液を形成するために、高分子バインダー材料の追加1402で継続しうる。いくつかの実施形態では、高分子バインダー材料は、二フッ化ポリ塩化ビニリデン(PVdF)およびそのコポリマー、ポリビニルエーテル、ウレタン、アクリル、セルロース、スチレン-ブタジエンコポリマー、天然ゴム、キトサン、ニトリルゴム、シリコーンエラストマー、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレンオキシドコポリマー、ポリホスファゼンまたはそれらの組み合わせを含みうる。この方法は、基板への分散液の被覆1403および分散液の乾燥/硬化1404で継続しうる。このように、ナノ多孔質複合セパレータが形成される。一旦乾くと、この方法は、ナノ多孔質複合セパレータの基板からの剥離1405で継続しうる。
【0035】
本開示は、その具体的で一般的な実施形態を参照して詳細に説明されたが、当業者には、本開示の精神および範囲を逸脱することなく、本開示の種々の変更および修正が為せることは明らかである。