(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】識別システム、識別方法およびデータキャリア
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20230425BHJP
A61J 3/06 20060101ALI20230425BHJP
B30B 11/02 20060101ALI20230425BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
G01N1/28 B
G01N1/28 D
A61J3/06 E
B30B11/02 F
B30B15/00 B
(21)【出願番号】P 2021509905
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 GB2019052338
(87)【国際公開番号】W WO2020039182
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-08-19
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518018609
【氏名又は名称】ガムレン タブレッティング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】カフマン ヘンリー デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ガムレン マイケル
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-505729(JP,A)
【文献】特開2007-333448(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0370895(US,A1)
【文献】特開平11-173965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
A61J 1/00-19/06
B30B11/00-11/34
15/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料を圧縮して圧縮粉末とする粉末圧縮プロセスから得たデータにより前記粉末材料を識別するための識別システムであって、
圧縮されるべき粉末を受け入れるためのダイを有する粉末プレスと、
前記ダイの中で前記粉末を圧縮するように移動可能にされたプレス部材と、
前記プレス部材の移動中に前記プレス部材によって前記粉末に加えられた荷重を感知して複数の荷重読み取り値を生成するための荷重センサと、
前記荷重センサから荷重読み取り値を生成して前記ダイの移動中の荷重読み取り値を所定荷重データと比較する荷重読み取り値処理を実行するようにされ、前記荷重読み取り値処理の結果に基づき、圧縮された前記粉末である前記圧縮粉末の識別信号を出力するデータプロセッサとを備え、
前記ダイ、前記粉末プレスおよび前記プレス部材は共働して前記粉末圧縮プロセスを実行する、識別システム。
【請求項2】
前記荷重読み取り値処理は、前記粉末圧縮プロセスの1つ以上の共通時点における1つ以上の荷重読み取り値と前記所定荷重データとの間の一致度に基づいて実行される、請求項1に記載の識別システム。
【請求項3】
前記複数の荷重読み取り値は、前記粉末プレスによる粉末圧縮中のある時刻について
の荷重読み取り値を含む、請求項1または2に記載の識別システム。
【請求項4】
識別されるべき共通の前記粉末材料から分取された複数の異なる試料を使用して複数組の荷重読み取り値が取得され、前記データプロセッサが前記複数組の荷重読み取り値を互いに比較する荷重読み取り値相互比較処理、および/または、前記荷重読み取り値処理を実行する、請求項1~3のいずれか1項に記載の識別システム。
【請求項5】
前記データプロセッサは前記複数組の荷重読み取り値の間の不一致度を決定し、それを前記複数組の荷重読み取り値と前記所定荷重データとの間の不一致度と比較する、請求項4に記載の識別システム。
【請求項6】
前記データプロセッサは、前記複数組の荷重読み取り値に統計モデルを適用する、請求項1~5のいずれか1項に記載の識別システム。
【請求項7】
前記所定荷重データは統計的分布を含み、前記データプロセッサは、前記複数の荷重読み取り値のうちの1つ以上の荷重読み取り値が前記統計的分布に適合するかどうかを判定する、請求項1~6のいずれか1項に記載の識別システム。
【請求項8】
前記複数の荷重読み取り値および/または前記所定荷重データは、粉末圧縮事象および/または圧縮粉末吐出事象の間に読み取られた荷重読み取り値のプロットを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の識別システム。
【請求項9】
前記データプロセッサは、前記プロットの形状属性を前記所定荷重データと比較する、請求項8に記載の識別システム。
【請求項10】
前記所定荷重データは、以前に記録された荷重センサデータを含み、前記荷重センサデータには前記粉末材料の複数の試料についての複数の異なる粉末圧縮事象に対応する複数組の前記荷重センサデータが含まれる、請求項1~9のいずれか1項に記載の識別システム。
【請求項11】
前記データプロセッサによって出力される前記識別信号は、前記粉末材料と前記所定荷重データとの一致または不一致の表示を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の識別システム。
【請求項12】
前記データプロセッサは、前記所定荷重データから粉末圧縮率および/または流動パラメータ値を決定し、それに基づいて前記荷重読み取り値処理を実行するように構成される、請求項1~
11のいずれか1項に記載の識別システム。
【請求項13】
粉末材料を圧縮して圧縮粉末とする粉末圧縮プロセスから得たデータにより前記粉末材料を識別する識別方法であって、
前記粉末圧縮プロセスとして、プレス部材によって圧縮されるべき粉末を受け入れるためのダイを有する粉末プレスを操作し、前記ダイの中の前記粉末を圧縮して荷重読取り値を生成するように前記ダイに対して前記プレス部材を作動させるステップと、
粉末圧縮中に前記プレス部材によって前記粉末に加えられる荷重を感知するステップと、
粉末圧縮中の荷重読み取り値を所定荷重データと比較する荷重読み取り値処理を実行するステップと、
前記荷重読み取り値処理によって決定された前記所定荷重データとの一致または不一致に基づいて前記圧縮粉末の識別信号を出力するステップとを含む、識別方法。
【請求項14】
前記所定荷重データは、所定圧縮荷重プロットと、前記所定
圧縮荷重プロットのうちの1つ以上の点についての閾値データとを含み、
前記閾値データは、前記所定
圧縮荷重プロットからの許容可能な逸脱範囲を定義する、請求項13に記載の識別方法。
【請求項15】
荷重読み取り値と前記所定荷重データとの間の最大差が識別され得る前記粉末圧縮プロセスの1つ以上の部分を決定するステップと、
前記1つ以上の部分に基づいて前記荷重読み取り値処理を実行するステップとを含む、請求項13または14に記載の識別方法。
【請求項16】
粉末圧縮の前半(2分の1)または3分の1の間に取得された荷重読み取り値の間の比較を行う荷重読み取り値相互比較処理を実行するステップを含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の識別方法。
【請求項17】
同じ粉末材料の異なる試料について前記粉末プレスの操作を繰り返して、異なる複数組の荷重読み取り値を生成するステップと、
統計的分布を前記複数組の荷重読み取り値に適合させるステップを含む、請求項13~16のいずれか1項に記載の識別方法。
【請求項18】
前記所定荷重データは、以前に取得された粉末圧縮の荷重読み取り値の統計的分布を含む、請求項13~17のいずれか1項に記載の識別方法。
【請求項19】
前記所定荷重データを生成するために機械学習を使用するステップ、および/または、共通の前記粉末材料の異なる試料を使用して複数の粉末圧縮事象に基づいて前記荷重読み取り値処理を実行するステップを含む、請求項13~18のいずれか1項に記載の識別方法。
【請求項20】
前記所定荷重データは、多変量統計分布を含む、請求項13~19のいずれか1項に記載の識別方法。
【請求項21】
1つ以上のデータプロセッサに粉末識別を実行させるための機械可読命令を備える、データキャリアであって、
粉末プレスから、前記粉末プレス内での粉末圧縮中に粉末に加えられた荷重の複数の荷重センサ読み取り値を受信し、前記荷重センサ読み取り値は、ある粉末圧縮事象の少なくとも一部分を集合的に定義し、
粉末圧縮中の前記荷重センサ読み取り値を、1つ以上の前記粉末圧縮事象の同じ部分についての所定荷重データと比較する荷重センサ読み取り値処理を実行し、
前記荷重センサ読み取り値処理によって決定された前記所定荷重データとの一致または不一致に基づいて、圧縮された前記粉末である圧縮粉末についての識別信号を出力する、データキャリア。
【請求項22】
前記粉末識別は、受信した前記荷重センサ読み取り値のうちの1つ以上の点を前記荷重センサ読み取り値処理のために
識別する
ことを含む、請求項21に記載のデータキャリア。
【請求項23】
同じ粉末の異なる試料を使用して、異なる粉末圧縮事象について複数組の荷重センサ読み取り値を受信し、
前記所定荷重データの統計的分布を参照して前記荷重センサ読み取り値処理を実行する、請求項21または22に記載のデータキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は粉末の同定に関し、より具体的には、粉末の機械的挙動の評価による医薬/医薬粉末の同定に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤の大規模製造は、典型的にはダイ内に配置された粉末の体積を圧縮するように作動する錠剤パンチの使用を伴う。ダイ内の粉末は対向するパンチ部品の間に保持され、パンチ部品は所定の移動距離だけ一緒に移動して、既知の幾何学的形状のダイ内に制御された厚さの錠剤を生成する。これは成形された錠剤が使用される粉末のダイの幾何学的形状および体積に従って既知のまたは決定可能な密度を有するが、圧縮プロセスの間に錠剤に加えられる力の直接的な制御がないようなものである。
【0003】
錠剤の大量生産は打錠機が錠剤を一貫して再現するように設定され得るように、パンチの移動および/または適用される荷重が前もって知られていることを必要とする。このような機械は典型的には錠剤を公知の製造速度で連続的に製造することができるように、複数のパンチを周期的に荷重することを可能にする。
【0004】
特許文献1(Michael Gamlen、PCT出願番号:PCT/GB2012/050145)として公開された国際特許出願は成形される錠剤の特性を圧縮処理がどのように変化させるかを調べるために、圧縮処理のより優れた制御を提供する打錠機(tablet press)を開示している。打錠機は、圧縮プロセスのためのユーザ入力に従って、特注の小バッチの錠剤を生成するために使用され得る。
【0005】
医薬品のような医薬品の成分を検証することができることが継続的に必要とされている。原料と最終製品の両方を追跡する際にかなりの努力が費やされ、その結果、生産および輸送中に監査証跡(audit trail)が存在する。この監査証跡は、受け取った粉末製品を識別するために受取人(原語recipient)が根拠とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多くの理由から、付随する監査証跡に完全に頼らなければならないのではなく、受け取った粉末の同一性を積極的に検証できることが望ましい。化学的試験および分析技術は、粉末の組成を理解するために従来から使用されている。しかしながら、このような技術は、試験の複雑さおよび効率の点で欠点がないわけではない。さらに、化学的試験は、共通の化学的構成を有する粉末材料の異なるグレードを適切に区別することができない。
【0008】
本発明の目的は、粉末を同定するために医薬/医薬粉末を試験する代替方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、粉末材料を圧縮して圧縮粉末とする粉末圧縮プロセスから得たデータにより前記粉末材料を識別するための識別システムが提供される。該識別システムは圧縮されるべき粉末を受け入れるためのダイを有する粉末プレスと、前記粉末を前記ダイ内で圧縮するように移動可能に配置されたプレス部材と、前記プレス部材の移動中に複数の荷重読み取り値を生成するように前記プレス部材によって前記粉末に加えられた荷重を感知するための荷重センサと、前記荷重センサからの前記荷重読み取り値を受け取り、前記ダイの移動中の前記荷重読み取り値と所定荷重データとを比較する荷重読み取り値処理を実行するように配置されたデータプロセッサと、を備える。前記データプロセッサは、前記荷重読み取り値処理の結果に基づいて、圧縮された前記粉末である前記圧縮粉末の識別信号を出力する。前記ダイ、前記粉末プレスおよび前記プレス部材は共働して前記粉末圧縮プロセスを実行する。
【0010】
荷重読み取り値処理は例えば、粉末圧縮プロセスの共通点またはダイに対するプレス部材の位置/位置において、1つ以上の荷重読み取り値と所定荷重データとの間の一致度合いに基づいて実施することができる。これに加えて、またはこれに代えて、比較は例えば、プレス部材の時間または移動/位置に関する、前記荷重読み取り値の変化の大きさおよび/または前記荷重読み取り値の変化率なデータプロセッサの読み取り値の変化に基づいて実行されてもよい。
【0011】
粉末の識別の決定は、所定荷重データとの比較によってデータプロセッサによって行われてもよい。
【0012】
データプロセッサはダイ内の粉末の圧縮性および/または流動パラメータ特性/値を生成するために、プレス部材の移動中に前記荷重読み取り値を処理することができる。圧縮性および/またはフローパラメータ特性/値は、比較のために使用されてもよい。
【0013】
複数の荷重読み取り値は、粉末プレスによる単一の圧縮、例えば粉末圧縮の単一のインスタンスまたはプレス部材の単一のストロークに対する一組の荷重読み取り値を含み得る。複数の荷重読み取り値は例えば、単一の圧縮事象または圧縮時点の間に、粉末の圧縮中に逐次的に取ることができる。直列または連続した荷重の読み取り、または連続した荷重の読み取りを行うことができる。
【0014】
荷重読み取り値はプレス部材による射出ストークの間、例えば、ダイを形成する粉末成形体を除去/射出するためのプレス部材による荷重の印加の間に、追加的または代替的に取ることができる。荷重の読み取り値はプレス部材を用いた粉末成形体の変形事象中に、例えば粉末成形体の破砕/破壊中に、追加的または代替的に取ることができる。
【0015】
例えば、共通の粉末材料を使用する別々の圧縮事象/インスタンスのために、識別されるべき共通の粉末材料について、複数のセットの荷重読み取り値を取得することができる。各圧縮事例/事象は粉末材料の異なるサンプル、例えば、同じ粉末材料の異なるサンプルに適用されてもよい。
【0016】
データプロセッサは複数の組の荷重読み取り値を互いに比較し、かつ/または所定荷重データと比較することができる。データプロセッサは荷重読み取り値のセット間の不一致の程度を決定し、それを、前記セットのうちの1つまたは複数と所定荷重データとの間の不一致の程度と比較することができる。
【0017】
数学的/統計的モデルを生成して、読み取り値のセットを集合的に定義することができる。統計的分布は、複数の読み取り値のセットおよび/または所定荷重データに適用/適合されてもよい。
【0018】
荷重読み取り値のプロットまたはトレースを決定/記録することができる。プロットの形状は、データプロセッサによって所定荷重データと比較されてもよい。プロットは例えば、単一の粉末圧縮のための圧縮荷重トレース、線、経路、または曲線を定義することができる。1組のプロットは、共通の粉末材料の異なるサンプルについて生成されてもよい。
【0019】
所定荷重データは、先に記録された荷重センサのデータを含んでもよい。所定荷重データは、1つまたは複数の既知の粉末材料に関する荷重センサのデータを含んでもよい。所定荷重データは例えば、粉末材料のサンプルについての複数の異なる圧縮事象に対応する、共通のおよび/または既知の粉末材料についての複数の荷重センサのデータのセットを含むことができる。例えば、既知の粉末材料についての異なる圧縮事象に対応する、所定荷重データの組のファミリーまたはバッチを使用することができる。
【0020】
所定荷重データは、1つまたは複数の所定の荷重プロット/トレース、例えば所定の圧縮荷重トレース、線、経路または曲線を含んでもよい。
【0021】
データプロセッサによって出力される識別信号は、粉末材料と既知の粉末材料との間の一致または不一致の表示を含むことができる。
【0022】
本発明のさらなる態様によれば、粉末材料を識別する方法が提供され、この方法は、ダイ内で粉末を圧縮するようにダイに対してプレス部材を作動させることによって圧縮される粉末を受け取るためのダイを有するプレスを操作するステップと、圧縮中にプレス部材によって粉末に加えられる荷重を感知して荷重読み取り値を生成するステップと、圧縮中の前記荷重読み取り値の変化を所定荷重データと比較することによって荷重読み取り値を処理するステップと、前記比較によって決定された所定荷重データとの一致または不一致に基づいて、圧縮された粉末の識別信号を出力するステップとを含む。
【0023】
共通の粉末材料の複数のサンプルは例えば、形成された粉末コンパクトのバッチに対応する荷重読み取り値のファミリーを生成するために、(例えば、独立して)コンパクト化されてもよい。
【0024】
荷重読み取り値のファミリー、または圧縮プロットは前記荷重読み取り値または圧縮プロット間の差を決定するために、互いに比較されてもよい。前記差は、ファミリーと所定荷重データとの間の差と比較されてもよい。
【0025】
所定荷重データは、所定の圧縮プロットを含むことができる。所定荷重データは、複数のまたは一群の所定の圧縮プロットを含むことができる。
【0026】
所定荷重データは1つ以上の所定の圧縮プロットと、例えば、前記圧縮プロットからの許容可能な逸脱を定義する、前記1つ以上の所定の圧縮プロットの包絡線または閾値データとを含んでもよい。
【0027】
プレス部材の移動の1つ以上の部分(すなわち、粉末圧縮プロセスの1つ以上の部分)であって、前記荷重読み取り値と前記所定荷重データとの間の最大の差が識別されてもよい。比較は、前記1つ以上の部分に基づいてもよい。
【0028】
機械学習を使用して、本明細書で説明する技法のいずれかまたは任意の組合せを使用して比較を行うことができる。
【0029】
例えば、統計的および/またはパターン認識分析を含む数学的分析/モデルを使用して、前記比較中の差異または類似性を同定することができる。統計的分布は例えば、一致または不一致を識別するために、前記比較のための1つ以上の基準または閾値を決定するために、異なる圧縮事象および/または所定荷重データからの荷重読み取り値(またはそのセット)に適用されてもよい。
【0030】
荷重の読み取り値には、ガウス分布/正規分布が適用される場合がある。
【0031】
多変量統計分布を使用することができる。
【0032】
粉末プレスは、粉末を錠剤のような固体に圧縮するように操作されてもよい。
【0033】
プレス部材の運動を制御するために、粉末プレスのための電子制御装置が配置されてもよい。
【0034】
粉末プレスは、典型的には電気モータのような1つまたは複数のアクチュエータを備える。
【0035】
粉末プレスは、プレス部材のための位置および/または速度センサを備えることができる。
【0036】
粉末を固形体に圧縮した後、例えば粉末の固形体の変形中に荷重測定値を収集するために、粉末の固形体の変形を行うことができる。変形中に得られた荷重の読み取り値は、粉末成形中に得られた荷重の読み取り値に加えて、またはその代わりに比較のために使用されてもよい。
【0037】
このシステムは、錠剤変形手段を含むことができる。錠剤変形手段は、錠剤変形部材を含んでもよい。錠剤変形手段は、変形部材を移動させ、および/または錠剤に荷重を加えるためのアクチュエータを備えてもよい。錠剤変形手段は典型的には錠剤が変形部材と対向部材との間に配置され得るように、対向部材を含む。錠剤は、変形部材と対向部材との間で圧縮されてもよい。
【0038】
錠剤変形手段および/または粉末プレスのアクチュエータは、電気アクチュエータ、例えば電気機械アクチュエータを含んでもよい。電子制御式の電動アクチュエータを使用してもよい。1つ以上の電気モータが使用されてもよい。
【0039】
粉末プレスのコントローラは例えば、アクチュエータを介して、プレス部材の動きのデジタル制御を可能にしてもよい。コントローラは固定された/所定の変位値(例えば、速度)またはプロファイルに従って、プレス部材および/または変形部材の作動を制御してもよい。更に、または代替的に、コントローラは、固定された/所定の荷重値またはプロファイルに従って、プレス部材および/または変形部材の作動を制御することができる。
【0040】
プレス部材は粉末を所定の体積に圧縮するように、および/または成形体の所定の厚さを達成するように配置されてもよい。
【0041】
プレス部材および/または変形部材の作動距離は、制御および/または感知されてもよい。1つ以上の移動/距離センサを設けることができる。プレス部材および/または錠剤変形部材の位置の感知は、キャリパまたはコンパクトな厚さセンサとして作用し得る。更に、または代替的に、別個のキャリパまたはコンパクトな厚さセンサを設けることもできる。
【0042】
コンパクト/錠剤の寸法または体積の読み取り値は、データプロセッサに伝達されてもよい。
【0043】
粉末および/または形成された成形体のための秤(バランス)またはスケールが提供されてもよい。質量/重量の感知された値は、データプロセッサに通信されてもよい。
【0044】
錠剤の引張強度は、変形下で形成された成形体の破壊荷重を感知することによって決定することができる。
【0045】
粉末プレスおよび錠剤変形手段は、データプロセッサにデータを出力するように構成された同じ機械または異なる機械を含むことができる。
【0046】
データプロセッサは、各錠剤について、錠剤化性(tabletability)、圧縮成形性(compactability)、流動特性(flow properties)および/または圧縮性(compressibility)の値を出力してもよい。データプロセッサは、圧縮圧力、固相率(solid fraction)、および/または引張強度の任意の組み合わせの値を互いに対してプロットすることができる。データプロセッサは共通の錠剤材料組成物についての錠剤化性、圧縮性、流動特性および/または圧縮性のグラフを出力することができ、これらのグラフは、対応するタイプの所定のグラフと比較するために前記比較中に使用することができる。
【0047】
本明細書中に記載される任意の圧縮性/流動試験および/または錠剤圧縮特徴付け手順は、USP(米国薬局方)1062-錠剤圧縮特徴付けに従って実施され得る。
【0048】
本発明のさらなる態様によれば、第1の態様のシステムまたは第2の態様の方法に対応する医薬/医薬粉末識別の方法、装置および/またはシステムが提供される。
【0049】
この方法は、複数の粉末試料について繰り返すことができる。ステップのいずれかまたは任意の組み合わせは、印刷機の動作および/またはデータプロセッサによる関連データの受信時に自動化されてもよい。
【0050】
本発明のさらなる態様によれば、第1の態様のシステムまたは第2の態様の方法、または前記態様によって収集されたデータを使用して粉末識別を実行するための、1つまたは複数のデータプロセッサの動作のための機械可読命令を備えるデータキャリアが提供される。
【0051】
機械可読命令は、1つまたは複数のグラフ上の圧縮圧力、固相率、および/または引張強度の任意の組合せまたはすべての複数の値のプロットを制御することができる。
【0052】
本発明のさらなる態様によれば、上記の態様のうちの1つまたは複数に従って粉末識別プロセスを制御するための粉末プレス用のコントローラが提供される。
【0053】
本発明の任意の1つの態様に関連するものとして本明細書に記載される任意の特徴のいずれも、実行可能な限り、本発明の任意のさらなる態様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明の実施例に関連して使用するための打錠機(tablet press)の正面図を示す。
【
図2】
図1に示される種類の打錠機からのグラフィカル出力の例をグラフィカルユーザインタフェースの形成で示す。
【
図3】種々の粉末材料についての粉末荷重/圧縮プロットのグラフを示す。
【
図4】
図3のプロットのための標準化され、拡大されたグラフを示す。
【
図5】
図3および
図4と同じ粉末材料に対する異なる変数間の相関マトリックスのプロットを示す。
【
図6】
図3-5で使用されるデータの近傍座標分析のためのグラフを示す。異なる点での特徴量の重み(feature weight)の表示。
【
図7】
図3または
図4の圧縮プロットの
識別された部分または点の散布図を示す。
【
図8】
図7のプロットへの境界または閾値の適合の例を示す。
【
図9】本発明の実施例に関連して使用するための錠剤/コンパクト圧縮試験装置の実施例を示す。
【
図10】
図3の錠剤圧縮試験装置の例示的な出力を示し、
【
図11】本発明のさらなる実施例において使用され得る錠剤/コンパクト圧縮試験の特徴付け(charaterization)のためのグラフィック出力の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の種々実施形態を、添付の図面(
図1~11)を参照して以下にさらに詳細に説明する(本明細書では、
図11などの「tabletability」を「錠剤化性」、「compactability」を「圧縮成形性」、「compressibility」を「圧縮性」、「tensile strength」を「引張強さ」、「compaction pressure」を「圧縮圧力」、「solid faction」を「固相率」、また「consolidation」を「圧密」、とそれぞれ訳した)。
【0056】
本発明は、打錠機(tablet press)のような粉末プレスが圧縮下の粉末の機械的特性/挙動の評価によって粉末材料の同一性を識別または検証するために使用され得るという認識に由来する。ロギングされたセンサのデータは、既知の粉末材料について以前にロギングされたデータと比較されて、一致または不一致を決定することができる。驚くべき発見は、圧縮下の粉末材料の機械的/構造的挙動を使用して、化学的試験とは全く独立した方法で粉末材料の同一性を積極的に検証することができることである。
【0057】
特定の例では、圧縮試験が粉末圧縮/圧密が成形された成形体/錠剤の1つ以上の構造特性に影響を及ぼす方法を評価することによって、例えば成形体/錠剤の1つ以上の機械的/構造特性を試験することによって促進することができる。
【0058】
本開示による粉末を識別するための識別システム10の概要において、既知の粉末圧縮読み取り値を参照して正または負の粉末判定を生成するために、粉末圧縮中に取得された読み取り値を処理するための粉末プレス12およびデータプロセッサ14が提供される。識別システム10はまた、実際の材料が既知であるかどうかにかかわらず、異なるバッチの粉末を比較して、それらが同じであるかどうかを決定するために使用されてもよい。
【0059】
データプロセッサ14は粉末プレス12自体の制御システム内に存在することができ、前記機械のコントローラは本明細書で以下に説明するように、粉末識別信号の生成および出力のためのコードの1つまたは複数のモジュールを備えることができる。あるいは、データプロセッサ14が有線接続50によって粉末プレス12に接続されたデータプロセッサ14によって
図1に示されるように、別個の(例えば、遠隔の)計算/データ処理装置に含まれてもよい。データプロセッサ14がローカルネットワークまたはワイドエリアネットワークなどのネットワークを介して、プレスとの有線または無線データ通信を行うことができる。データプロセッサ14は、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、モバイル電子装置、サーバまたはクラウドベースの計算プラットフォームなどの任意の適切な計算装置に常駐することができる。
【0060】
データプロセッサは、コンピュータチップなどの1つ以上のプログラマブルプロセッサと、受信した圧縮データを処理するための関連する機械可読コードの1つ以上のモジュールとを備える。データプロセッサで説明されるタイプの方法を使用して、データプロセッサによる比較プロセスの動作を制御して圧縮データを、所定のまたは以前に記録された圧縮データと比較することができる。
【0061】
いくつかの例では、データプロセッサ14が例えば、印刷機ファームウェア内に設けられていない場合、粉末プレス12の動作を制御することができるように、および/または粉末プレス12を使用してデータポイント(例えば、センサ読み取り値)が取得されるときに、印刷機と双方向通信することができる。あるいは、粉末識別に使用するためのデータ点を生成するための関連する制御命令を、粉末プレス12自体の制御論理/ファームウェアに書き込むことができる。
【0062】
図1には示されていないが、典型的には成形体および/または一旦成形された成形体を形成する前に、粉末の重量を秤量および/またはチェックするための秤が提供されてもよい。コンパクト/粉末の質量は、秤から出力され、以下に論じるように粉末評価に使用するためにデータプロセッサ14に伝達され得る。他の例では、秤機能が識別システム10のハードウェア内に含まれてもよい。
【0063】
以下の説明はダイ内で粉末を圧縮することによって固体プラグを生成するように配置された打錠機に関して進行するが、他の実施形態では粉末を圧縮して固体錠剤様プラグにする必要がない場合がある。粉末識別のための十分なデータは潜在的に、圧縮ストローク内の早期に生成され得る。さらに、この方法は医薬/医薬粉末に限定されず、他の粉末材料、例えば、金属、ポリマー/有機および/またはセラミック粉末を包含処理。
【0064】
図1には、本発明で使用することができる粉末プレス12の一例が示されている。粉末プレス12およびその関連する制御は、本出願人によって共有され、粉末プレス12の構造、機能および制御の完全な詳細が提供される、2012年1月24日に出願され、2012年8月9日に特許文献1として公開された本発明の発明者による先の特許出願(GAMLEN、Michael、PCT出願番号:PCT/GB2012/050145)の焦点である。特許文献1の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。粉末プレス12の特徴は簡潔にするためにここでは繰り返さないが、本明細書に開示される本発明の任意の特徴と組み合わせて、特許文献1に開示される任意の特徴について保護が求められることが確認される。
【0065】
図2は、特許文献1(GAMLEN、Michael)に記載されたタイプのグラフィカルインタフェース100を示す。打錠機10内のロードセルによって測定されるような、プレス部材24の位置(すなわち、粉末が配置されるダイ38に対するその変位)に対する、加えられた荷重のプロット102が提供される。
【0066】
このようにして、制御装置は粉末の圧縮中に、例えば単位kgまたはNで、プレス部材24によって達成される荷重を決定することができる。これは、プレス制御装置の他の出力と共に、データプロセッサ14に伝達することができる。
【0067】
ダイの直径は既知であり、ダイ床に対するプレス部材24の端部25の変位/位置は既知であるので、錠剤の厚さhを得ることができ、プレス制御装置および/またはデータプロセッサ14によって記録することができる。錠剤の直径/半径および厚さが与えられると、錠剤の体積V(すなわち、単純な円筒形錠剤について)は、式「V=πr2h」により決定され得る。
【0068】
他の錠剤形状については錠剤体積のための適切な処方が上記で与えられた式に置き換えられ得ることが、当業者によって理解される。
【0069】
他の動作モードでは、タブレット/コンパクトの厚さは打錠機入力パラメータとして操作者によって設定されてもよい。プレスはダイ内の粉末に加えられた荷重を記録することができ、プレス部材24の位置を監視することができる。したがって、荷重および位置は、いずれの動作モードにおいても記録され得る。
【0070】
圧縮圧は式「P=Fc/A」を介して打錠機コントローラまたは錠剤特性評価機(tablet characterizer)によって決定することができる。ここで、「Fc」は粉末に適用される圧縮/圧密荷重(consolidation load)(単位:ニュートン)であり、「A」は形成されたタブレットの表面積、すなわち、プレス端部25の表面積であり、円形のプレス部材24およびタブレットの「πr2」として計算することができる。
【0071】
本発明のいくつかの例では、圧縮時間または滞留時間も記録することができる。ゼロ以外の荷重の感知は圧縮中に荷重値の記録(recordal)をトリガし、ゼロ荷重への戻り、すなわち圧縮ストローク後のプレス部材24の収縮中に、荷重記録(load recordal)の停止を引き起こし得る。
【0072】
任意のそのような例では、時間にわたる荷重の適用も考慮されてもよい。荷重プロットの下の面積を計算し、錠剤を形成する際に粉末に加えられる、伝達される全力または衝撃の測定に類似した、全圧縮荷重の指標として使用することができる。このパラメータは、本明細書に他の他のパラメータに対する追加または代替の粉末特性パラメータとして使用することができる。
【0073】
上述の種類の電子制御式、電気作動式の打錠機を使用することのさらなる利点の1つは、必要に応じて、荷重プロファイルを他の打錠機の荷重プロファイルに適合するように調整することができることである。
【0074】
ダイ内で形成された粉末成形体は、典型的には放出される必要がある。いくつかの例では、放出ストロークが粉末の識別に使用することができる粉末材料のための追加/代替の荷重データを提供するために使用することができる(すなわち、所定のデータとの一致/不一致を決定するために、比較によって所定の放出荷重データとの比較への入力として使用することができる)ことが分かっている。吐出荷重データは、必要に応じて、例えば
図2の圧縮プロットの拡張として、または別個のプロットとして、
図2と同様にプロットすることができる。いくつかの例では、同じプレス部材24を用いて、粉末を成形し、続いて射出ストロークのために用いることができる。
【0075】
次に
図3を参照すると、異なる材料のサンプルについての一連の異なる荷重プロット102が示されている。この例では異なる粉末材料の各々について5つの異なる圧縮事象、すなわち、各材料の5つの異なるサンプルを圧縮したが、より多くのサンプルを使用してもよいことは理解されるのであろう。プロットは例えば、プレス部材24に対する共通の作動速度が使用される場合、時間に対する荷重のプロットを使用することも可能であろうが、プレス部材24の変位/位置に対する荷重のプロットとして示される。
【0076】
荷重は、加えられた力または圧力、またはそれから導出される他の尺度の値として捕捉されてもよい。
【0077】
以下の説明は、粉末材料比較/識別プロセスの一部として、これらのプロットの形状をどのようにして問い合わせ、処理することができるかの例を提供する。
【0078】
図3は例えば、粉末プレス12が粉末をプレス部材24の固定位置(すなわち、固定/共通錠剤厚さに対応する)に圧縮するように設定される場合、ピーク適用荷重の差が見られ得ることを示す。ピークの近傍でプロットのいくつかの分割が見られるが、全ての材料が分離されるわけではなく、例えば、いくつかのプロットはピークの近傍でオーバーラップする。また、他の動作モードでは、プレス制御パラメータとして固定のピーク圧縮荷重/圧力を使用することが望ましい場合がある。したがって、プロット間を区別するための異なる尺度が望ましい場合がある。
【0079】
プロットを密に検査することによって、圧縮の初期段階(例えば、
図3のグラフの左下部分に対応する)が、異なるプロット間の区別情報/分離を提供し得ることが分かっている。
【0080】
等しい基礎上の曲線/プロットの部分を比較するために、
図4に示すように、各点での読み取り値を標準化し、再プロットすることができる。これはプロット間の変動の大部分が低荷重、圧縮過程の初期に見られ、あるレベルの荷重、例えば座標点10、または少なくとも点10と点20の間では比較的ほとんど変化がないことを示している。したがって、本発明の態様は、低圧での粉末の圧縮性および/または流動パラメータの比較に関するものであってもよい。
【0081】
これは異なるプロット間を区別するための関心領域を決定する唯一の方法ではなく、
図5および6はプロット間の最大の発散の領域がどのように識別され得るかの他の例を示すことに留意することが重要である。
図5では、異なる変数間の相関行列がプロットされている。
図5のエッジに向かうより暗い(青)色の領域は最大の相対的変化を示すが、明るい(黄)領域は最小の相対的変化を示す。これは、
図4の発見と一致し、座標10の前にプロットの最大の相対変化が生じ、後の値がはるかに密接に相関していることを示す。
【0082】
図6では、近傍座標分析と呼ばれる技法を使用して、圧縮データ/プロット内の最も重要な特徴を見つける。この分析は、点2~6および9が異なる粉末材料の分類/同定を実施するために主に有用な情報を含むことを示唆する。
【0083】
本発明の様々な態様において、プロセスは荷重プロファイルの前半、3分の1、または4分の1内の荷重プロファイル(例えば、圧縮性および/または流動特性)間の変動、例えば、開始荷重とピーク荷重との間、粉末プレスの停止、または荷重がゼロに戻る点の評価によって特徴付けられ得る。
【0084】
上記の情報を用いて、
図7に示すように、異なる粉末材料についての対応する関心点における荷重データの散布図を作成することができる。この例題では、第3および第4座標点のみの散布図を作成する。散布図は一般に、利用可能な領域の異なる領域を占有し、異なる材料の点データは、共通の領域を占有するグループに広く分離することができることが分かる。
【0085】
このデータは、1つ以上の圧縮処理に関連する関連データを記録することによって、粉末材料を識別/比較する処理を「訓練」するために使用され得る。
【0086】
統計モデルは例えば、モデル/分布を利用可能なポイントクラウドデータにマッチングすることに類似して、利用可能なポイントデータにフィッティングされる。線形判別モデルが例えば、各群がガウス型モデルによって記述され得ることを仮定するなど、各点群に対してこの例で使用されてきた。
【0087】
多変量統計モデル、例えば、多変量ガウス分布または他の統計分布が使用されることが提案される。示された例では2つの変数のみを使用する適合が使用され、その結果、可視化することが簡単であるが、所望であれば、より多くの変数を使用することができる。
【0088】
各粉末材料について記録されたプロットに統計的分布を適用することによって、点の異なる群について(すなわち、異なる材料について)平均/平均値を決定することができる。さらに、各群の最大値閾値および最小値閾値は所望の確率レベル、例えば、点が関連するグループに属すると認められることを可能にするために許容される手段からの偏差の量に基づいて設定され得る。
【0089】
閾値は、最新技術および特定のデータ母集団の特定の特性に基づいて有効であると決定された統計的プロセスを使用して決定されてもよい。しきい値はしきい値の外側にある分布の点が所望の/低い確率レベルにある(例えば、ゼロに近づく)可能性に基づいて選択されてもよい。
【0090】
点の2次元散布図の例ではグループの各統計モデル/分布の平均値、および最大/分間しきい値は例えば
図8のチャートの円または楕円として、環として示される。したがって、チャート内の2次元空間内のグループの境界が定義される。この例では単純化のために各群について5つの点が示されているが、典型的にはより多くの点が確実性を高めることが提案され、したがって、操作者は適切なトレーニングバッチサイズ、すなわち、その特定の粉末の適切に正確なモデルを生成するために使用される粉末材料サンプルの数を選択することができる。
【0091】
プロセスがこのように「訓練」されると、圧縮されたさらなる粉末を既存のモデルに対して試験して、新しい粉末の対応する点/データが既存のグループの閾値内にあるか否かを確認することができる。
【0092】
単一の圧縮試験は新しい粉末が既存のグループ内に入るか否かを決定するのに十分な情報を提供することができるが、圧縮試験のバッチが実行されることが典型的であると考えられる。このようにして、圧縮データ点のバッチを既存の統計モデルと比較して、バッチが全体として既存のモデルと一致するか、または異なる材料を定義するかどうかを決定することができる。「トレーニング」バッチサイズに関して上述したように、比較プロセスの一部として圧縮されるサンプルの数は、望ましいレベルの確実性を達成するために増加/減少させることができる。
【0093】
図8の例では「トレーニング」データ/点は円形ノードとして示されているが、システムを検証するために使用される新しい材料データ/点は×印として示されている。
【0094】
未知の粉末材料を試験する場合、新しいバッチ間の点の類似性を既存の定義済みグループと比較して、新しいグループが既存のグループ内に特定の確実性レベルで集合的に含まれているかどうか、または新しいグループが異なるグループ、すなわち異なる統計分布を定義する可能性がより高いかどうかを判定することができる。
【0095】
したがって、上記の方法論を使用することによって、成形体のバッチは新しい/未同定の粉末材料を既存の公知の粉末と一致させるために、または2つの材料が同じであることを単に検証するために、製造され得る。
【0096】
実際の用途では、これは粉末材料が比較的高い精度で別の材料と同じであることを検証するために、粉末材料の受取人(原語recipient)が使用することができる。
【0097】
上記の数学的技法、すなわち機械学習またはAI技法を用いて、訓練および比較段階を実行することができるが、これらのタイプのデータプロット/トレース間の類似性/相違を一致させるための他の方法およびモデルを使用することができることに留意されたい。
【0098】
他の例では、サポートベクトルマシン(SVM)アルゴリズム/モデルを使用することができる。線形SVMモデルを使用して、材料間の直線境界を描き、それらを使用して新しい材料のカテゴリー(すなわち、新しいデータ/点群)を定義する。これは、多くの単純なモデルを使用することを含み、視覚化することがより困難である。この方法についても、
図3のプロットを形成するより多くの座標が使用された。この例では座標2~6であり、このため、これはモデルおよびそれぞれの閾値に追加された次元である。
【0099】
しかし、基礎となるステップは上述したものと同じであった、すなわち、分散が最大であるプロットの重要な部分(すなわち、プロット間の差を強調するための最も有望な位置)を識別し、次いで、群を識別するために、異なる圧縮事象を表す複数時点またはデータセットに統計的モデリングを適用するステップであった。
【0100】
種々異なる例では、さらなる統計的グループ化またはクラスタリング技法を使用することができることが想定される。
【0101】
現在の開発では、異なる粉末プレス、異なる圧縮速度、および/または異なるサンプル体積/粉末質量で実施される試験間の知見の再現性を評価するための研究が進行中である。研究は、これらの目的のうちの1つ以上に対する異なるデータ正規化技術を検討している。
【0102】
次に
図9を参照すると、錠剤硬度および/または圧縮応答を測定するための錠剤機械強度試験機108が示されている。
【0103】
錠剤機械強度試験機108は、圧縮試験のために錠剤を挿入することができる凹部の形態の開口部を有する主ハウジングを備える。凹部は、錠剤荷重領域および試験ゾーンを含む。圧縮試験機構は、使用中のプラテン112に向かって軸方向に移動可能なプランジャ110を備える。プランジャ110は、アクチュエータ114によって駆動される方法で、静止プラテン112に対して前進および後退させることができる。
【0104】
アクチュエータ114は、打錠機用の、特許文献1(GAMLEN、Michael)に記載されている種類の電子制御装置の制御下にある電気モータDCモータを含むことができる。アクチュエータ114は、典型的にはリニアプランジャ作動に変換される比較的高分解能の角度調整を提供する、ブラシレスモータのようなステッパモータを備えることができる。
【0105】
使用時には、錠剤がプランジャ110とプラテン112との間の、プランジャ110の移動経路内に配置される。プランジャ110は錠剤に接触し、プラテン112と前進するプランジャ110との間で錠剤に圧縮荷重を加えるように、アクチュエータ114によって駆動されるように前進させられる。錠剤に加えられた荷重は、錠剤機械強度試験機108内の荷重センサ116、すなわちロードセルによって感知される。荷重センサ116はアクチュエータ114とプランジャ110の自由端との間の力経路に配置されてもよく、すなわち、プランジャ110を介して加えられる荷重を測定し、かつ/またはプラテン112に配置されてもよく、すなわち、錠剤がそれに押し付けられたときのプラテン112の反力を測定する。
【0106】
電気機械的作動システムが好ましいが、流体圧力圧縮システムのような他の作動メカニズムを使用することが可能である。ただし、それらが十分に微細な作動制御および荷重増分感知を可能にすることを条件とする。
【0107】
プランジャ110の前進の速度は、調節可能であってもよい。各試験について、プランジャ110は圧縮中に、例えば1~50mm/分の範囲で実質的に一定の速度で前進させることができる。最小前進速度は、1~5mm/分の範囲であってもよい。プランジャ110は錠剤と接触していないとき(すなわち、荷重がロードセルによって感知されないとき、および/またはプランジャ110とプラテン112との間の間隔が所定の錠剤寸法よりも大きいとき)、より速い速度で前進し得る。
【0108】
プランジャ作動制御は、1つまたは複数の所定の条件が達成されるまで、プランジャ110を所定の試験速度で継続的に前進させる。この例では、所定の条件が錠剤の構造的破壊または破砕を含む。これは、錠剤内の内部応力によって引き起こされ、成形体に局所的な破壊または不連続性を生じ、成長し、それによって不可逆的に剪断/破裂する。
【0109】
破壊検出点は、錠剤上の最大感知荷重があらかじめ設定されたパーセンテージだけ低下する点として、コントローラによって測定される。荷重減少率は、典型的には30%~90%である。通常/デフォルトの荷重低下パーセンテージは約70%などの60%~80%の範囲に設定することができるが、これは例えば、より塑性的な、またはより脆い錠剤変形挙動を説明するために、特定の錠剤製剤に必要に応じてエンドユーザによって変更することができる。
【0110】
単純な実施態様ではコントローラが錠剤破砕時または錠剤破砕直前に加えられた荷重、例えば、錠剤上の最大感知圧縮荷重を、単位kgまたはNで決定し、記録し、他の例ではコントローラが打錠機に関して、上記および特許文献1(GAMLEN、Michael)に記載の荷重パラメータのいずれかを記録することができる。すなわち、コントローラは、錠剤の降伏/破壊まで、加えられた圧力/荷重に関する連続的または複数の読み取り値を記録することができる。
【0111】
いくつかの例では、プランジャ110の作動が例えば、プラテン112に対する錠剤がさらなる前進に抵抗する点までプランジャ110を前進させることによって、1つ以上の錠剤寸法を決定するために使用されてもよい。錠剤の直径または厚さは、このようにして測定することができる。あるいは、例えば、1つ以上の錠剤寸法を測定し、記録することができるように、機械コントローラと通信するために、キャリパを粉末プレス12に取り付けてもよい。
【0112】
錠剤の寸法は、錠剤機械強度試験機108による自動寸法取り手順で感知することができる。錠剤寸法(例えば、厚さ)はバッチ錠剤寸法の統計的分析を行うことができるように、バッチ中の各錠剤について記録することができる。
【0113】
秤が識別システム10と関連して使用されない場合には、例えば、圧縮試験の前にタブレットの質量/重量を機械コントローラと通信するために秤を錠剤機械強度試験機108に接続することによって、秤を錠剤機械強度試験機108と関連して使用することができる。必要に応じて、錠剤重量についてバッチ統計解析を行うことができる。
【0114】
記録された破壊荷重の保存、想起、および統計的分析は、コントローラによって実行されてもよい。破壊荷重は、錠剤硬度の指標を提供する。錠剤のバッチについての最大、最小、平均および/または標準偏差値を生成することができる。
【0115】
錠剤機械強度試験機108からの出力は、識別システム10と錠剤機械強度試験機108の両方に共通のデータプロセッサ14に伝達することができる。錠剤機械強度試験機108によって記録されたバッチ結果の例を
図10に示す。
【0116】
粉末プレス12制御装置によって出力される破断力(すなわち、破断力)は、式「σ=2FB/πdh」を用いて、使用する錠剤についての引張強度σに変換することができる。
【0117】
ここで、「FB」は直径圧縮時のタブレットの切断力、「d」はタブレットの直径、「h」はタブレットの厚さである。錠剤寸法値は、上記の技術のいずれかを使用して決定され得る。当業者は、上記の式が円筒形錠剤形成とは異なる錠剤について変化し得ることを理解する。
【0118】
データプロセッサ14は、式「SF=Wt/ρ.ν」を用いて各錠剤の固相率(SF)を決定することができる。
【0119】
ここで、「Wt」は錠剤重量であり、「ρ」は錠剤形成に使用される粉末材料の真密度であり、「ν」は上記の機械コントローラの1つまたはデータプロセッサ14によって決定される錠剤体積である。錠剤材料の真の密度、すなわち賦形剤を含む製剤の密度は、利用可能な材料特性に基づいてユーザによって入力されてもよい。
【0120】
錠剤の多孔度「ε」は、必要に応じて、式「ε=1-SF」として錠剤特性評価機によって決定することができる。
【0121】
ここで
図11を参照すると、特定の錠剤組成物/製剤について、以下のように3つのグラフを構築することができる。
・錠剤化性(tabletability):圧縮圧力(MPa)に対する引張強さ(MPa)
・圧縮成形性(compactability):固相率(solid fraction)(無次元)に対する引張強さ(MPa)
・圧縮性(compressibility):圧縮圧力(MPa)に対する固相率
【0122】
これらのグラフは引張強度、圧縮圧力、および固相率のそれぞれについて、3つの直交軸の任意のまたは任意の組み合わせを規定するように、
図11に示されるような様式でプロットされ得る。したがって、各測定されたタブレットは3次元空間内の点を表すことができ、3つの直交座標値のそれぞれは、上述の2Dグラフのそれぞれ上の2次元空間内の点を表す。すなわち、各錠剤は、引張強度、圧縮圧力および固相率の3つの値を特徴とすることができる。
【0123】
このようなシステムの1つの利点は同じタブレット組成物を用いて形成されるが、異なる圧縮パラメータ、すなわち異なる圧縮圧力を用いて形成されるタブレットのバッチに対して、得られた固相率および引張強さの値は
図11に三角形の点データとして示される3次元空間におけるプロットを生じさせることである。
図11に示される軸を含む2次元空間における対応する錠剤化性、圧縮性および圧縮性プロットは3次元プロットから、またはその代わりに、錠剤特性評価機によって決定され得る。
【0124】
このようにして、構造特性は、標準化されたシステムおよび手順を使用して、簡単に、かつ一貫して調査し、取得することができる。これにより、識別システム10を用いて製造された成形体の機械的/構造的コンパクト挙動の他の原因が錠剤識別に寄与することが可能になる。また、本発明は、粉末材料の選択が錠剤構造および関連する特性の単独の変化を引き起こすことができる有用な骨格および関連する装置を提供するので、結晶構造、多形性、顆粒化、湿式造粒における溶媒使用などの他の関連する考慮事項のさらなる調査を可能にすることができる。
【0125】
また、本明細書に記載の装置を使用して、粉末の1つまたは複数の流動パラメータ特性を生成することができることも分かった。例えば、粉末の圧縮性または圧縮特性に加えて、またはその代わりに、1つまたは複数のフローパラメータを使用して、既存のデータと比較して、粉末を識別することができる。
【0126】
したがって、得られた測定値のいずれかまたは任意の組み合わせ、または錠剤構造特性についてそれから導出された計算を、錠剤圧縮中に記録された圧縮データ(すなわち、粉末流動)と同じ方法で処理して、粉末間の比較を可能にして、粉末間の一致または不一致を決定することができる。これらの追加測定は、圧縮中に記録されたデータと組み合わせて、精度をさらに改善するために使用されることが提案される。しかしながら、他の例では、このようなデータを使用して、圧縮プロセスとは別に、あらかじめ圧縮された固形の粉末含有量を識別/分類することが可能である。
【0127】
上記の例は共通のデータプロセッサ14と通信する2つの別個の機械として識別システム10および錠剤機械強度試験機108を示しているが、特定のデータが前記機械間で共有されてもよいことが理解されるのであろう。本発明のさらなる例では、例えば共通の作動および/または感知システムを使用して、プレスおよび圧縮/破壊試験機能の両方を実施することができる共通の機械が考案されてもよい。いくつかの例では、プレス部材24が破壊試験プランジャとして使用されてもよく、またはその逆であってもよい。粉末ダイは一旦形成された錠剤を試験するために、取り外し可能および/またはプラテンと交換可能であってもよい。
【0128】
さらに、上記の実施例は主に錠剤製造および医薬使用のための粉末に焦点を当てているが、本発明はこれに限定されない。本発明は、多くの潜在的な用途を有することが見出されている。一例は、3D印刷のための粉末の使用を含む。例えば、3Dプリンタに荷重された粉末の一部のみが最終的な印刷体に存在するため、3D印刷プロセスは無駄が多い。したがって、廃棄粉末の再使用は、効率の著しい改善を提供する。しかしながら、どの程度の粉末を再使用することができるか、およびどのような体積の未使用/新鮮な粉末が必要とされるかは不明である。本発明は、さらなる使用例のような用途のための粉末構成の試験/識別を可能にすることができる。