IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北京航空航天大学の特許一覧

特許7267641MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法
<>
  • 特許-MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法 図1
  • 特許-MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法 図2
  • 特許-MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法 図3
  • 特許-MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法 図4
  • 特許-MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法 図5
  • 特許-MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法 図6
  • 特許-MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法 図7
  • 特許-MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法 図8
  • 特許-MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法 図9
  • 特許-MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法 図10
  • 特許-MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法 図11
  • 特許-MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20230425BHJP
   B81C 3/00 20060101ALI20230425BHJP
   B81B 7/02 20060101ALI20230425BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20230425BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20230425BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20230425BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H01F17/00 C
B81C3/00
B81B7/02
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F27/29 123
H01F41/02 Z
H01F41/04 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021523593
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 CN2019095062
(87)【国際公開番号】W WO2020087972
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】201811509400.X
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811277260.8
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519255908
【氏名又は名称】北京航空航天大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】徐 天▲トウ▼
(72)【発明者】
【氏名】陶 智
(72)【発明者】
【氏名】李 海旺
(72)【発明者】
【氏名】孫 加▲ベン▼
(72)【発明者】
【氏名】呉 瀚梟
(72)【発明者】
【氏名】朱 凱雲
(72)【発明者】
【氏名】▲タク▼ 彦欣
(72)【発明者】
【氏名】曹 暁達
(72)【発明者】
【氏名】王 文斌
(72)【発明者】
【氏名】方 衛東
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0186124(US,A1)
【文献】特表2013-527620(JP,A)
【文献】特開2011-114033(JP,A)
【文献】特開2009-135325(JP,A)
【文献】特開2018-046181(JP,A)
【文献】特開2004-006458(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0322461(US,A1)
【文献】特表2002-525846(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0011458(US,A1)
【文献】特開2007-214348(JP,A)
【文献】特開2008-066592(JP,A)
【文献】特開平10-242339(JP,A)
【文献】特開平10-208942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 1/00- 7/04
B81C 1/00-99/00
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26
H01F 27/28-27/29
H01F 27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、軟磁性鉄心と、ソレノイドとを備え、
前記軟磁性鉄心は、前記シリコン基板の内部に包まれ、前記シリコン基板には、螺旋孔路が設けられ、かつ前記軟磁性鉄心は前記螺旋孔路の中心を通過し、前記ソレノイドは、前記螺旋孔路の内に設けられており、
前記軟磁性鉄心は、環状軟磁性鉄心又は直線状軟磁性鉄心であり、
前記シリコン基板は上シリコン基板と下シリコン基板に分けられており、前記軟磁性鉄心は上鉄心と下鉄心に分けられ、かつ前記上鉄心と前記下鉄心の形状は同じであり、
前記上シリコン基板の下面には、前記上鉄心の形状に対応する鉄心溝が設けられ、前記下シリコン基板の上面には、前記下鉄心の形状に対応する鉄心溝が設けられ、前記上鉄心と前記下鉄心はそれぞれ、対応する鉄心溝に設けられ、かつ前記上シリコン基板の下面と前記下シリコン基板の上面とが、低温でシリコン直接ボンディングを行うことにより、互いにボンディングされており、前記上鉄心の下面と前記下鉄心の上面とが互いに位置合わせされていることを特徴とする、MEMSソレノイドインダクタ。
【請求項2】
前記螺旋孔路は、複数本の第1の水平溝、複数本の第2の水平溝、及び複数の鉛直貫通孔を有しており、
前記第1の水平溝は前記シリコン基板の上面に設けられ、前記第2の水平溝は前記シリコン基板の下面に設けられ、前記鉛直貫通孔は前記シリコン基板の上面及び下面を貫通しており、
前記螺旋孔路におけるいずれか1つの前記第1の水平溝の頭と尾は、それぞれ2つの鉛直貫通孔に連通し、かつ前記2つの鉛直貫通孔は、それぞれ2つの隣接する第2の水平溝に連通することを特徴とする、請求項1に記載のMEMSソレノイドインダクタ。
【請求項3】
2つのピンと2つのピン溝をさらに備え、
前記2つのピン溝は前記シリコン基板の上面に設けられ、前記2つのピン溝はそれぞれ前記螺旋孔路の頭と尾に連通し、前記2つのピンはそれぞれ前記2つのピン溝に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のMEMSソレノイドインダクタ。
【請求項4】
記軟磁性鉄心は、鉄ニッケル合金材料または鉄コバルト合金材料で作製されていることを特徴とする、請求項1に記載のMEMSソレノイドインダクタ。
【請求項5】
前記ソレノイドは、金属銅で作製されていることを特徴とする、請求項1に記載のMEMSソレノイドインダクタ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のMEMSソレノイドインダクタの製造方法であって、
上シリコン基板と下シリコン基板をそれぞれ作製するステップ1であって、
前記軟磁性鉄心が環状軟磁性鉄心である場合、
前記上シリコン基板を作製することは、
第1のプリセット厚さの第1のシリコンウェハに対して第1回目の熱酸化を行うことと、
螺旋孔路の構造に応じて、第1回目酸化された前記第1のシリコンウェハの上面、内部及び下面のそれぞれに、複数本の第1の水平溝、複数の鉛直貫通孔の上半分、及び鉄心溝をディープシリコンエッチングすることと、
ディープシリコンエッチングにより得られた前記第1のシリコンウェハに対して第2回目の熱酸化を行って、前記上シリコン基板を得ることと、を含み、
前記下シリコン基板を作製することは、
第1のプリセット厚さの第2のシリコンウェハに対して第1回目の熱酸化を行うことと、
螺旋孔路の構造に応じて、第1回目酸化された前記第2のシリコンウェハの上面、内部及び下面のそれぞれに、鉄心溝、複数の鉛直貫通孔の下半分、及び複数本の第2の水平溝をディープシリコンエッチングすることと、
前記第2のシリコンウェハに対して第2回目の熱酸化を行って、前記下シリコン基板を得ることと、を含み、
前記軟磁性鉄心が直線状軟磁性鉄心である場合、
前記上シリコン基板を作製することは、
第1のプリセット厚さの第1のシリコンウェハに対して第1回目の熱酸化を行うことと、
螺旋孔路の構造に応じて、第1回目酸化された前記第1のシリコンウェハの上面、内部及び下面のそれぞれに、複数本の平行な第1の水平溝、複数の鉛直貫通孔の上半分、及び鉄心溝をディープシリコンエッチングすることと、
ディープシリコンエッチングにより得られた前記第1のシリコンウェハに対して第2回目の熱酸化を行って、前記上シリコン基板を得ることと、を含み、
前記下シリコン基板を作製することは、
第1のプリセット厚さの第2のシリコンウェハに対して第1回目の熱酸化を行うことと、
螺旋孔路の構造に応じて、第1回目酸化された前記第2のシリコンウェハの上面、内部及び下面のそれぞれに、鉄心溝、複数の鉛直貫通孔の下半分、及び複数本の平行な第2の水平溝をディープシリコンエッチングすることと、
前記第2のシリコンウェハに対して第2回目の熱酸化を行って、前記下シリコン基板を得ることと、を含むステップ1と、
前記上シリコン基板と前記下シリコン基板のそれぞれの鉄心溝内に、上鉄心と下鉄心をめっき形成するステップ2と、
前記上シリコン基板の上面と前記下シリコン基板の下面を互いに位置合わせし、かつ前記上鉄心の下面と前記下鉄心の上面を互いに位置合わせさせた後、前記上シリコン基板と前記下シリコン基板を低温でボンディングし、ボンディングされた前記上シリコン基板と前記下シリコン基板に前記螺旋孔路を形成するステップ3と、
前記螺旋孔路の内にソレノイドをめっき形成して、MEMSソレノイドインダクタを得るステップ4と、を含むことを特徴とする、MEMSソレノイドインダクタの製造方法。
【請求項7】
前記上シリコン基板の鉄心溝内に上鉄心をめっき形成することは、具体的に、
鉄心溝パターン付きのメタルマスクを前記上シリコン基板の下面における鉄心溝に位置合わせした後、前記メタルマスクを前記上シリコン基板の下面に密着させることと、
前記上シリコン基板の下面に、シード層として、第2のプリセット厚さの金属ニッケルまたは金属コバルトをマグネトロンスパッタリングした後、前記上シリコン基板の鉄心溝内に、第3のプリセット厚さの鉄ニッケル合金または鉄コバルト合金をめっきして、上鉄心を得ることと、を含み、
それに対応して、前記下シリコン基板の鉄心溝内に下鉄心をめっき形成することは、具体的に、
鉄心溝パターン付きのメタルマスクを前記下シリコン基板の上面における鉄心溝に位置合わせした後、前記メタルマスクを前記下シリコン基板の上面に密着させることと、
前記下シリコン基板の上面に、シード層として、第2のプリセット厚さの金属ニッケルまたは金属コバルトをマグネトロンスパッタリングした後、前記下シリコン基板の鉄心溝内に第3のプリセット厚さの鉄ニッケル合金または鉄コバルト合金をめっきして、下鉄心を得ることと、を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記螺旋孔路の内にソレノイドをめっき形成することは、具体的に、
前記下シリコン基板の下面に、中間層として、第4のプリセット厚さの金属チタンをマグネトロンスパッタリングし、前記中間層に、シード層として、第5のプリセット厚さの金属銅をマグネトロンスパッタリングし、さらに前記螺旋孔路の第2の溝と鉛直貫通孔の内に、金属銅が第1の溝の下平面の位置に充填されるまで金属銅をめっきすることと、
前記上シリコン基板の上面に、シード層として金属銅をマグネトロンスパッタリングした後、前記螺旋孔路が完全に金属銅で充填されて満たされるまで金属銅をめっきして、前記ソレノイドを得ることと、を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記上シリコン基板を作製することは、
2つのピンの構造と位置に応じて、第1回目酸化された前記第1のシリコンウェハの上面に2つのピン溝をディープシリコンエッチングすることをさらに含み、
それに対応して、ステップS4では、前記2つのピン溝に前記2つのピンをめっき形成することをさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2018年10月30日に提出された、出願番号が201811277260.8であり、発明の名称が「MEMS環状ソレノイドインダクタ及びその製造方法」である中国特許出願、および2018年12月11日に提出された、出願番号が201811509400.Xであり、発明の名称が「MEMS直線状ソレノイドインダクタ及びその製造方法」である中国特許出願を引用し、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本願の実施例は、微小電気機械システム(MEMS)技術分野に関し、より具体的には、MEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
微小電気機械システム(Micro-Electro-Mechanical System、MEMS)のマイクロインダクタは、磁心と巻線で構成され、従来のインダクタに比べて、磁心のサイズが大幅に縮小され、巻線の形態も変化する。マイクロインダクタは、マイクロ電子機器、情報機器において広く応用され、電圧変換、電流変換、インピーダンス変換、隔離、電圧安定化などの役割を果たすことができる。
【0004】
現在、MEMSプロセスに基づくマイクロインダクタは、主に平面螺旋型とソレノイド型という2種類に分けられている。その中、平面螺旋型インダクタの構造は、巻線の巻数が多くなるにつれて、コイル直径が大きくなり、鉄心に沿った総磁束量は線形的に増加せず、増加量が徐々に減少するため、このような構造の巻数は一般的に限られており、その結果、このようなインダクタの総電力の向上にはボトルネックがある。ソレノイド型インダクタは、巻線巻数の制限を克服し、基板内部の垂直空間を十分に利用しているため、インダクタが回路に集積される場合、同様のインダクタンス性能を得る時、占有するチップ表面空間がより小さくなり、インダクタの小型化のさらなる発展に有利である。
【0005】
然しながら、現在、MEMSプロセスに基づくマイクロインダクタは、薄膜製造プロセスを採用することが多く、薄膜製造プロセスはアディティブ製造方法であるため、得られたマイクロインダクタのほとんどの構造は基板表面の上方にある。その結果、インダクタの強度を確保することが困難であり、薄膜プロセスで作製されたインダクタの導線面積が小さく、大電流を流すことができず、電流の流動能力が制限され、大電流およびパワーデバイスでの応用が制限されてしまう。それと共に、薄膜製造プロセスを採用することで得られた垂直高さが限られたため、インダクタの巻線断面積が小さくて磁束量が小さくなり、その結果、インダクタのインダクタンス値が低くなる。
【発明の概要】
【0006】
本願の実施例は、上記の問題を克服する、或いは少なくとも部分的に解決するMEMSソレノイドインダクタおよびその製造方法を提供する。
【0007】
一態様では、本願の実施例は、MEMSソレノイドインダクタを提供し、当該MEMSソレノイドインダクタは、シリコン基板と、軟磁性鉄心と、ソレノイドとを備え、前記軟磁性鉄心は、前記シリコン基板の内部に包まれ、前記シリコン基板には、螺旋孔路が設けられ、かつ前記軟磁性鉄心は前記螺旋孔路の中心を通過し、前記ソレノイドは、前記螺旋孔路の内に設けられており、前記軟磁性鉄心は、環状軟磁性鉄心または直線状軟磁性鉄心である。
【0008】
さらに、前記シリコン基板は上シリコン基板と下シリコン基板に分けられており、前記軟磁性鉄心は上鉄心と下鉄心に分けられ、かつ前記上鉄心と前記下鉄心の形状は同じであり、前記上シリコン基板の下面には、前記上鉄心の形状に対応する鉄心溝が設けられ、前記下シリコン基板の上面には、前記下鉄心の形状に対応する鉄心溝が設けられ、前記上鉄心と前記下鉄心はそれぞれ、対応する鉄心溝に設けられ、かつ前記上シリコン基板の下面と前記下シリコン基板の上面とが互いにボンディングされており、前記上鉄心の下面と前記下鉄心の上面とが互いに位置合わせされている。
【0009】
さらに、前記螺旋孔路は、複数本の第1の水平溝、複数本の第2の水平溝、及び複数の鉛直貫通孔を有しており、前記第1の水平溝は前記シリコン基板の上面に設けられ、前記第2の水平溝は前記シリコン基板の下面に設けられ、前記鉛直貫通孔は前記シリコン基板の上面及び下面を貫通しており、前記螺旋孔路におけるいずれか1つの前記第1の水平溝の頭と尾は、それぞれ2つの鉛直貫通孔に連通し、かつ前記2つの鉛直貫通孔は、それぞれ2つの隣接する第2の水平溝に連通する。
【0010】
さらに、2つのピンと2つのピン溝をさらに備え、前記2つのピン溝は前記シリコン基板の上面に設けられ、前記2つのピン溝はそれぞれ前記螺旋孔路の頭と尾に連通し、前記2つのピンはそれぞれ前記2つのピン溝に設けられている。
【0011】
さらに、前記軟磁性鉄心は、鉄ニッケル合金材料または鉄コバルト合金材料で作製されている。
【0012】
さらに、前記ソレノイドは、金属銅で作製されている。
【0013】
別の態様では、本願の実施例は、MEMS環状ソレノイドインダクタの製造方法を提供し、当該方法は、上シリコン基板と下シリコン基板をそれぞれ作製するステップ1であって、前記軟磁性鉄心が環状軟磁性鉄心である場合、前記上シリコン基板を作製することは、第1のプリセット厚さの第1のシリコンウェハに対して第1回目の熱酸化を行うことと、螺旋孔路の構造に応じて、第1回目酸化された前記第1のシリコンウェハの上面、内部及び下面のそれぞれに、複数本の第1の水平溝、複数の鉛直貫通孔の上半分、及び鉄心溝をディープシリコンエッチングすることと、ディープシリコンエッチングにより得られた前記第1のシリコンウェハに対して第2回目の熱酸化を行って、前記上シリコン基板を得ることと、を含み、前記下シリコン基板を作製することは、第1のプリセット厚さの第2のシリコンウェハに対して第1回目の熱酸化を行うことと、螺旋孔路の構造に応じて、第1回目酸化された前記第2のシリコンウェハの上面、内部及び下面のそれぞれに、鉄心溝、複数の鉛直貫通孔の下半分、及び複数本の第2の水平溝をディープシリコンエッチングすることと、前記第2のシリコンウェハに対して第2回目の熱酸化を行って、前記下シリコン基板を得ることと、を含み、前記軟磁性鉄心が直線状軟磁性鉄心である場合、前記上シリコン基板を作製することは、第1のプリセット厚さの第1のシリコンウェハに対して第1回目の熱酸化を行うことと、螺旋孔路の構造に応じて、第1回目酸化された前記第1のシリコンウェハの上面、内部及び下面のそれぞれに、複数本の平行な第1の水平溝、複数の鉛直貫通孔の上半分、及び鉄心溝をディープシリコンエッチングすることと、ディープシリコンエッチングにより得られた前記第1のシリコンウェハに対して第2回目の熱酸化を行って、前記上シリコン基板を得ることと、を含み、前記下シリコン基板を作製することは、第1のプリセット厚さの第2のシリコンウェハに対して第1回目の熱酸化を行うことと、螺旋孔路の構造に応じて、第1回目酸化された前記第2のシリコンウェハの上面、内部及び下面のそれぞれに、鉄心溝、複数の鉛直貫通孔の下半分、及び複数本の平行な第2の水平溝をディープシリコンエッチングすることと、前記第2のシリコンウェハに対して第2回目の熱酸化を行って、前記下シリコン基板を得ることと、を含むステップ1と、前記上シリコン基板と前記下シリコン基板のそれぞれの鉄心溝内に、上鉄心と下鉄心をめっき形成するステップ2と、前記上シリコン基板の上面と前記下シリコン基板の下面を互いに位置合わせし、かつ前記上鉄心の下面と前記下鉄心の上面を互いに位置合わせさせた後、前記上シリコン基板と前記下シリコン基板を低温でボンディングし、ボンディングされた前記上シリコン基板と前記下シリコン基板に前記螺旋孔路を形成するステップ3と、前記螺旋孔路の内にソレノイドをめっき形成して、MEMSソレノイドインダクタを得るステップ4と、を含む。
【0014】
さらに、前記上シリコン基板の鉄心溝内に上鉄心をめっき形成することは、具体的に、鉄心溝パターン付きのメタルマスクを前記上シリコン基板の下面における鉄心溝に位置合わせした後、前記メタルマスクを前記上シリコン基板の下面に密着させることと、前記上シリコン基板の下面に、シード層として、第2のプリセット厚さの金属ニッケルまたは金属コバルトをマグネトロンスパッタリングした後、前記上シリコン基板の鉄心溝内に、第3のプリセット厚さの鉄ニッケル合金または鉄コバルト合金をめっきして、上鉄心を得ることと、を含み、それに対応して、前記下シリコン基板の鉄心溝内に下鉄心をめっき形成することは、具体的に、鉄心溝パターン付きのメタルマスクを前記下シリコン基板の上面における鉄心溝に位置合わせした後、前記メタルマスクを前記下シリコン基板の上面に密着させることと、前記下シリコン基板の上面に、シード層として、第2のプリセット厚さの金属ニッケルまたは金属コバルトをマグネトロンスパッタリングした後、前記下シリコン基板の鉄心溝内に第3のプリセット厚さの鉄ニッケル合金または鉄コバルト合金をめっきして、下鉄心を得ることと、を含む。
【0015】
さらに、前記螺旋孔路の内にソレノイドをめっき形成することは、具体的に、前記下シリコン基板の下面に、中間層として、第4のプリセット厚さの金属チタンをマグネトロンスパッタリングし、前記中間層に、シード層として、第5のプリセット厚さの金属銅をマグネトロンスパッタリングし、さらに前記螺旋孔路の第2の溝と鉛直貫通孔の内に、金属銅が第1の溝の下平面の位置に充填されるまで金属銅をめっきすることと、前記上シリコン基板の上面に、シード層として金属銅をマグネトロンスパッタリングした後、前記螺旋孔路が完全に金属銅で充填されて満たされるまで金属銅をめっきして、前記ソレノイドを得ることと、を含む。
【0016】
さらに、前記上シリコン基板を作製することは、2つのピンの構造と位置に応じて、第1回目酸化された前記第1のシリコンウェハの上面に2つのピン溝をディープシリコンエッチングすることをさらに含み、それに対応して、ステップS4では、前記2つのピン溝に前記2つのピンをめっき形成することをさらに含む。
【0017】
本願の実施例によって提供されるMEMSソレノイドインダクタ及びその製造方法は、インダクタの軟磁性鉄心、ソレノイドをすべてシリコン基板の内部に設けることにより、シリコン基板の厚さを十分に利用し、得られたインダクタの巻線断面積をより大きくし、磁束量をより大きくすることで、インダクタのインダクタンス値がより高くなる。それと共に、シリコン基板は、軟磁性鉄心、ソレノイドに対する保護作用を果たし、インダクタの強度を向上させることができ、耐衝撃性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本願の実施例または従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例または従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。勿論、以下に説明する図面は、本願のいくつかの実施例であり、当業者にとって、創造的な労働を要しない前提で、更にこれらの図面に基づいてその他の図面を得ることができる。
図1】本願の実施例によって提供されるMEMS環状ソレノイドインダクタの構造の模式的斜視図である。
図2】本願の実施例における上シリコン基板の構造の一つの模式的斜視図である。
図3】本願の実施例における下シリコン基板の構造の一つの模式的斜視図である。
図4本願の実施例によって提供されるMEMS直線状ソレノイドインダクタの構造の模式的斜視図である。
図5本願の実施例における上シリコン基板の構造のもう一つの模式的斜視図である。
図6本願の実施例における下シリコン基板の構造のもう一つの模式的斜視図である。
図7】本願の実施例によって提供される例におけるMEMS環状ソレノイドインダクタの製造プロセスのステップ(1)-(6)の模式的断面図である。
図8】本願の実施例によって提供される例におけるMEMS環状ソレノイドインダクタの製造プロセスのステップ(7)-(12)の模式的断面図である。
図9】本願の実施例によって提供される例におけるMEMS環状ソレノイドインダクタの製造プロセスのステップ(13)-(17)の模式的断面図である。
図10】本願の実施例によって提供される例におけるMEMS直線状ソレノイドインダクタの製造プロセスのステップ(1)-(6)の模式的断面図である。
図11】本願の実施例によって提供される例におけるMEMS直線状ソレノイドインダクタの製造プロセスのステップ(7)-(12)の模式的断面図である。
図12】本願の実施例によって提供される例におけるMEMS直線状ソレノイドインダクタの製造プロセスのステップ(13)-(17)の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、本願の実施例における図面を参照しながら、本願の実施例における技術案を明確に説明する。勿論、説明する実施例はすべての実施例ではなく、本願の実施例の一部の実施例に過ぎない。当業者が本願における実施例に基づいて創造的な労働をしない前提で得たすべての他の実施例は、本発明の保護範囲に含まれる。
【0020】
本願におけるMEMSソレノイドインダクタにおいて、軟磁性鉄心の形状には、環状軟磁性鉄心または直線状軟磁性鉄心が含まれる。以下では、環状軟磁性鉄心および直線状軟磁性鉄心として軟磁性鉄心を説明する。
【0021】
図1は、本願の実施例によって提供されるMEMS環状ソレノイドインダクタの構造の模式的斜視図であり、図1に示すように、当該MEMS環状ソレノイドインダクタは、シリコン基板1と、環状軟磁性鉄心2と、ソレノイド3とを備え、環状軟磁性鉄心2は、シリコン基板1の内部に包まれ、図2および図3に示すように、シリコン基板1には、螺旋孔路が設けられ、かつ環状軟磁性鉄心2の2つの対向する辺はそれぞれ螺旋孔路の中心を通過し、ソレノイド3は、螺旋孔路の内に設けられている。
【0022】
その中、螺旋孔路はシリコン基板1に設けられているため、螺旋孔路の内に設けられているソレノイド3もシリコン基板1の内部に設けられている。即ち、インダクタの環状軟磁性鉄心2、ソレノイド3は、いずれもシリコン基板1の内部に設けられている。
【0023】
具体的には、ソレノイド3と螺旋孔路は同じ形状であり、かつソレノイド3は、螺旋孔路に設けられている。環状軟磁性鉄心2は螺旋孔路の中心を通過しているため、環状軟磁性鉄心2もソレノイド3の中心を通過している。インダクタの動作時に、ソレノイド3はインダクタの巻線であり、ソレノイド3の頭と尾の両端はそれぞれ、インダクタの入力端と出力端を構成する。理解できるように、インダクタのインダクタンス値は、ソレノイド3の巻数によって決定される。
【0024】
本願の実施例によって提供されるMEMS環状ソレノイドインダクタは、インダクタの環状軟磁性鉄心、ソレノイドをすべてシリコン基板の内部に設けることにより、シリコン基板の厚さを十分に利用し、得られたインダクタの巻線断面積をより大きくし、磁束量をより大きくすることで、インダクタのインダクタンス値がより高くなる。それと共に、シリコン基板は、環状軟磁性鉄心、ソレノイドに対する保護作用を果たし、インダクタの強度を向上させることができ、耐衝撃性に優れる。
【0025】
上記の実施例において、図1図3に示すように、シリコン基板1は上シリコン基板11と下シリコン基板12に分けられており、環状軟磁性鉄心2は上鉄心21と下鉄心22に分けられ、かつ上鉄心21と下鉄心22の形状は同じである。上シリコン基板11の下面には、上鉄心21の形状に対応する鉄心溝が設けられ、下シリコン基板12の上面には、下鉄心22の形状に対応する鉄心溝が設けられ、上鉄心21と下鉄心22はそれぞれ、対応する鉄心溝に設けられ、かつ上シリコン基板11の下面と下シリコン基板12の上面とが互いにボンディングされており、上鉄心21の下面と下鉄心22の上面とが互いに位置合わせされている。
【0026】
その中、上鉄心21と下鉄心22は、同じ形状を有する2つの鉄心であり、環状軟磁性鉄心2が鉛直方向に二等分されて形成され、両者の形状も環状であり、厚さは環状軟磁性鉄心2の半分である。同様に、上シリコン基板11と下シリコン基板12は、シリコン基板1が鉛直方向に二等分されて形成され、両者は対称に配置されている。
【0027】
シリコン基板と環状軟磁性鉄心をそれぞれ2つの部分に二等分することにより、インダクタ全体の加工を容易にすると同時に、環状軟磁性鉄心を上鉄心と下鉄心の2つの部分に分けることにより、鉄心内の渦電流損失を低減し、インダクタの効率をさらに向上させることができる。
【0028】
上記の実施例において、図2及び図3に示すように、螺旋孔路は、複数本の第1の水平溝31’、複数本の第2の水平溝32’、及び複数の鉛直貫通孔33’を有する。第1の水平溝31’はシリコン基板1の上面に設けられ、第2の水平溝32’はシリコン基板1の下面に設けられ、鉛直貫通孔33’はシリコン基板の上面及び下面を貫通しており、螺旋孔路におけるいずれか1つの第1の水平溝31’の頭と尾はそれぞれ、2つの鉛直貫通孔33’に連通し、かつ2つの鉛直貫通孔33’はそれぞれ、2つの隣接する第2の水平溝32’に連通する。
【0029】
その中、シリコン基板1が上シリコン基板11と下シリコン基板12に分けられる場合、各鉛直貫通孔33’も上シリコン基板11と下側シリコン基板12にそれぞれ位置する2つの部分に分けられる。
【0030】
具体的に、螺旋孔路内において、複数の第1の水平溝31’と複数の第2の水平溝32’は、複数の鉛直貫通孔33’を介して連通している。理解できるように、鉛直貫通孔33’は環状または円弧状であってもよく、第1の水平溝31’および第2の水平溝32’も環状または円弧状であってもよい。
【0031】
上記の実施例において、図1に示すように、インダクタは、2つのピン4と2つのピン溝4’をさらに備え、2つのピン溝4’はシリコン基板1の上面に設けられ、2つのピン溝4’はそれぞれ螺旋孔路の頭と尾に連通し、2つのピン4はそれぞれ2つのピン溝4’に設けられている。
【0032】
具体的には、2つのピン溝4’は螺旋孔路の頭と尾に連通しているため、2つのピン4はそれぞれソレノイド3の頭と尾に接続される。インダクタの動作時に、2つのピン4はそれぞれインダクタの入力端と出力端を構成する。
【0033】
上記実施例において、環状軟磁性鉄心2は、鉄ニッケル合金材料または鉄コバルト合金材料で作製されている。
【0034】
上記実施例において、ソレノイド3は、金属銅で作製されている。
【0035】
図4は、本願の実施例によって提供されるMEMS直線状ソレノイドインダクタの構造の模式的斜視図であり、図4に示すように、当該MEMS直線状ソレノイドインダクタは、シリコン基板1と、直線状軟磁性鉄心2’と、ソレノイド3とを備え、直線状軟磁性鉄心2’は、シリコン基板1の内部に包まれ、図5および図6に示すように、シリコン基板1には、螺旋孔路が設けられ、かつ直線状軟磁性鉄心2’の2つの対向する辺はそれぞれ螺旋孔路の中心を通過し、ソレノイド3は、螺旋孔路の内に設けられている。
【0036】
その中、螺旋孔路はシリコン基板1に設けられているため、螺旋孔路の内に設けられているソレノイド3もシリコン基板1の内部に設けられている。即ち、インダクタの直線状軟磁性鉄心2’、ソレノイド3は、いずれもシリコン基板1の内部に設けられている。
【0037】
具体的には、ソレノイド3と螺旋孔路は同じ形状であり、かつソレノイド3は、螺旋孔路に設けられている。直線状軟磁性鉄心2’は螺旋孔路の中心を通過しているため、直線状軟磁性鉄心2’もソレノイド3の中心を通過している。インダクタの動作時に、ソレノイド3はインダクタの巻線であり、ソレノイド3の頭と尾の両端はそれぞれ、インダクタの入力端と出力端を構成する。理解できるように、インダクタの変圧比は、ソレノイド3の巻数によって決定される。
【0038】
本願の実施例によって提供されるMEMS直線状ソレノイドインダクタは、インダクタの直線状軟磁性鉄心、ソレノイドをすべてシリコン基板の内部に設けることにより、シリコン基板の厚さを十分に利用し、得られたインダクタの巻線断面積をより大きくすることで、インダクタのインダクタンス値がより高く磁束量がより大きくなる。それと共に、シリコン基板は、直線状軟磁性鉄心、ソレノイドに対する保護作用を果たし、インダクタの強度を向上させることができ、耐衝撃性に優れる。
【0039】
上記の実施例において、図5図6に示すように、シリコン基板1は上シリコン基板11と下シリコン基板12に分けられており、直線状軟磁性鉄心2’は上鉄心21と下鉄心22に分けられ、かつ上鉄心21と下鉄心22の形状は同じである。上シリコン基板11の下面には、上鉄心21の形状に対応する鉄心溝が設けられ、下シリコン基板12の上面には、下鉄心22の形状に対応する鉄心溝が設けられ、上鉄心21と下鉄心22はそれぞれ、対応する鉄心溝に設けられ、かつ上シリコン基板11の下面と下シリコン基板12の上面とが互いにボンディングされており、上鉄心21の下面と下鉄心22の上面とが互いに位置合わせされている。
【0040】
その中、上鉄心21と下鉄心22は、同じ形状を有する2つの鉄心であり、直線状軟磁性鉄心2’が鉛直方向に二等分されて形成され、両者の形状も直線状であり、厚さは直線状軟磁性鉄心2’の半分である。同様に、上シリコン基板11と下シリコン基板12は、シリコン基板1が鉛直方向に二等分されて形成され、両者は対称に配置されている。
【0041】
シリコン基板と直線状軟磁性鉄心をそれぞれ2つの部分に二等分することにより、インダクタ全体の加工を容易にすると同時に、直線状軟磁性鉄心を上鉄心と下鉄心の2つの部分に分けることにより、鉄心内の渦電流損失を低減し、インダクタの効率をさらに向上させることができる。
【0042】
上記の実施例において、図5及び図6に示すように、螺旋孔路は、複数本の第1の水平溝31’、複数本の第2の水平溝32’、及び複数の鉛直貫通孔33’を有しており、第1の水平溝31’はシリコン基板1の上面に設けられ、第2の水平溝32’はシリコン基板1の下面に設けられ、鉛直貫通孔33’はシリコン基板の上面及び下面を貫通しており、螺旋孔路におけるいずれか1つの第1の水平溝31’の頭と尾はそれぞれ、2つの鉛直貫通孔33’に連通し、かつ2つの鉛直貫通孔33’はそれぞれ、2つの隣接する第2の水平溝32’に連通する。
【0043】
その中、シリコン基板1が上シリコン基板11と下シリコン基板12に分けられると、各鉛直貫通孔33’も上シリコン基板11と下側シリコン基板12にそれぞれ位置する2つの部分に分けられる。
【0044】
具体的に、螺旋孔路内において、複数の第1の水平溝31’は互いに平行に設けられており、複数の第2の水平溝32’も互いに平行に設けられており、かつ複数の鉛直貫通孔33’を介して連通している。理解できるように、鉛直貫通孔33’は直線状または円弧状であってもよく、第1の水平溝31’および第2の水平溝32’も直線状または円弧状であってもよい。
【0045】
上記の実施例において、図4に示すように、インダクタは、2つのピン4と2つのピン溝4’をさらに備え、2つのピン溝4’はシリコン基板1の上面に設けられ、2つのピン溝4’はそれぞれ螺旋孔路の頭と尾に連通し、2つのピン4はそれぞれ2つのピン溝4’に設けられている。
【0046】
具体的には、2つのピン溝4’は螺旋孔路の頭と尾に連通しているため、2つのピン4はそれぞれソレノイド3の頭と尾に接続される。インダクタの動作時に、2つのピン4はそれぞれインダクタの入力端と出力端を構成する。
【0047】
上記実施例において、直線状軟磁性鉄心2’は、鉄ニッケル合金材料または鉄コバルト合金材料で作製されている。
【0048】
上記実施例において、ソレノイド3は、金属銅で作製されている。
【0049】
本願の実施例は、MEMSソレノイドインダクタの製造方法を提供し、当該方法は、上記環状ソレノイドインダクタまたは直線状ソレノイドインダクタの製造に用いるものであり、上シリコン基板と下シリコン基板をそれぞれ作製するステップ1であって、上記軟磁性鉄心は環状軟磁性鉄心である場合、上記上シリコン基板を作製することは、第1のプリセット厚さの第1のシリコンウェハに対して第1回目の熱酸化を行うことと、螺旋孔路の構造に応じて、第1回目酸化された上記第1のシリコンウェハの上面、内部及び下面のそれぞれに、複数本の第1の水平溝、複数の鉛直貫通孔の上半分、及び鉄心溝をディープシリコンエッチングすることと、ディープシリコンエッチングにより得られた上記第1のシリコンウェハに対して第2回目の熱酸化を行って、上記上シリコン基板を得ることと、を含み、上記下シリコン基板を作製することは、第1のプリセット厚さの第2のシリコンウェハに対して第1回目の熱酸化を行うことと、螺旋孔路の構造に応じて、第1回目酸化された上記第2のシリコンウェハの上面、内部及び下面のそれぞれに、鉄心溝、複数の鉛直貫通孔の下半分、及び複数本の第2の水平溝をディープシリコンエッチングすることと、上記第2のシリコンウェハに対して第2回目の熱酸化を行って、上記下シリコン基板を得ることと、を含み、上記軟磁性鉄心が直線状軟磁性鉄心である場合、上記上シリコン基板を作製することは、第1のプリセット厚さの第1のシリコンウェハに対して第1回目の熱酸化を行うことと、螺旋孔路の構造に応じて、第1回目酸化された上記第1のシリコンウェハの上面、内部及び下面のそれぞれに、複数本の平行な第1の水平溝、複数の鉛直貫通孔の上半分、及び鉄心溝をディープシリコンエッチングすることと、ディープシリコンエッチングにより得られた上記第1のシリコンウェハに対して第2回目の熱酸化を行って、上記上シリコン基板を得ることと、を含み、上記下シリコン基板を作製することは、第1のプリセット厚さの第2のシリコンウェハに対して第1回目の熱酸化を行うことと、螺旋孔路の構造に応じて、第1回目酸化された上記第2のシリコンウェハの上面、内部及び下面のそれぞれに、鉄心溝、複数の鉛直貫通孔の下半分、及び複数本の平行な第2の水平溝をディープシリコンエッチングすることと、上記第2のシリコンウェハに対して第2回目の熱酸化を行って、上記下シリコン基板を得ることと、を含むステップ1と、上記上シリコン基板と上記下シリコン基板のそれぞれの鉄心溝内に、上鉄心と下鉄心をめっき形成するステップ2と、上記上シリコン基板の上面と上記下シリコン基板の下面を互いに位置合わせし、かつ上記上鉄心の下面と上記下鉄心の上面を互いに位置合わせさせた後、上記上シリコン基板と上記下シリコン基板を低温でボンディングし、ボンディングされた上記上シリコン基板と上記下シリコン基板に上記螺旋孔路を形成するステップ3と、螺旋孔路の内にソレノイドをめっき形成して、MEMSソレノイドインダクタを得るステップ4と、を含む。
【0050】
その中、ステップS1において、上シリコン基板11と下シリコン基板12との構造上の差異は、実質的に、上シリコン基板11の上面に第1の水平溝31’が設けられており、下シリコン基板12の下面に第2の水平溝32’が設けられていることのみであり、他の部分の構造はすべて同じであり、かつ上シリコン基板11と下シリコン基板12は対称的に設けられており、両者がボンディングされる前のプロセスはほぼ同じである。
【0051】
ステップS2において、上シリコン基板11および下シリコン基板12に、それぞれ上鉄心21および下鉄心22をめっき形成する。鉄心をシリコン基板内に完全に包まれる必要があるため、鉄心のめっきというステップは、上シリコン基板11と下シリコン基板12をボンディングする前に完了する。
【0052】
ステップS3において、上シリコン基板11と下シリコン基板12をボンディングする際に、上鉄心21と下鉄心22の磁界が互いに協調していることを確保するために、上鉄心21の下面と下鉄心22の上面とが互いに位置合わせされていることを確保する必要がある。それと共に、上シリコン基板11と下シリコン基板12がボンディングされた後、この前に上シリコン基板11と下シリコン基板12にそれぞれ設けられた水平溝と鉛直貫通孔を組み合わせることで螺旋孔路を形成する。
【0053】
ステップS4において、螺旋孔路を形成した後、その内に関連金属をめっきするだけで、ソレノイド3を形成することができる。
【0054】
具体的には、第1のシリコンウェハおよび第2のシリコンウェハは、厚さ1000μmの両面研磨シリコンウェハを採用し、インダクタ全体の絶縁性を高め、高周波での渦電流損失を低減するために、高抵抗率のシリコンウェハを採用することができる。第1のシリコンウェハと第2のシリコンウェハに対して熱酸化を行う場合、一般的に厚さ2μmの熱酸化層を形成すればよい。環状軟磁性鉄心2又は直線状軟磁性鉄心2’、螺旋孔路の構造に応じて、第1のシリコンウェハと第2のシリコンウェハに対してディープシリコンエッチングを行って上シリコン基板11と下シリコン基板12を得て、ここで熱酸化処理を行うことで、上シリコン基板11と下シリコン基板12をベースとしてインダクタの他の構造の製作に用いることができる。次に、上シリコン基板11および下シリコン基板12の対応する位置において、めっきにより上鉄心21および下鉄心22を形成する。ボンディングにより上鉄心21と下鉄心22をシリコン基板1の内部に包み、完全な螺旋孔路を形成する。螺旋孔路の内にソレノイド3をめっき形成することで、MEMSソレノイドインダクタの製造を完了する。
【0055】
本願の実施例によって提供されるMEMS環状ソレノイドインダクタの製造方法は、シリコン基板を2つの対称な部分に分けて個別に作製し、ボンディングを行う前に鉄心のめっきを完成させ、ボンディングを行った後にソレノイドをめっき形成する。これにより、インダクタが鉄心に高効率且つ高品質で挿入されることができることを確保する。他の方式を採用する場合、コイルの中間部分に鉄心溝を形成し、かつ鉄心を挿入することが困難であるため、上記目的を達成するのは困難である。製造プロセス全体は、多層のディープシリコンエッチングを採用する必要がなく、加工のフォールトトレランス率を向上させ、良好な再現性を有し、得られたインダクタは、構造の精度が高く、かつIC半導体プロセスと互換性があり、大量生産に適用できる。この技術案により製造されたインダクタは、シリコン基板の厚さを十分に利用し、得られたインダクタの巻線断面積をより大きくし、磁束量をより大きくすることで、インダクタのインダクタンス値が高くなる。それと共に、シリコン基板は、軟磁性鉄心およびソレノイドに対する保護作用を果たし、インダクタの強度を向上させることができ、耐衝撃性に優れる。
【0056】
上記の実施例において、上シリコン基板11の鉄心溝内に上鉄心21をめっき形成することは、具体的に、鉄心溝パターン付きのメタルマスクを上シリコン基板11の下面における鉄心溝に位置合わせした後、メタルマスクを上シリコン基板11の下面に密着させることと、上シリコン基板11の下面に、シード層として、第2のプリセット厚さの金属ニッケルまたは金属コバルトをマグネトロンスパッタリングした後、上シリコン基板11の鉄心溝内に、第3のプリセット厚さの鉄ニッケル合金または鉄コバルト合金をめっきして、上鉄心21を得ることと、を含み、それに対応して、下シリコン基板12の鉄心溝内に下鉄心22をめっき形成することは、具体的に、鉄心溝パターン付きのメタルマスクを下シリコン基板12の上面における鉄心溝に位置合わせした後、メタルマスクを下シリコン基板12の上面に密着させることと、下シリコン基板12の上面に、シード層として、第2のプリセット厚さの金属ニッケルまたは金属コバルトをマグネトロンスパッタリングした後、下シリコン基板12の鉄心溝内に第3のプリセット厚さの鉄ニッケル合金または鉄コバルト合金をめっきして、下鉄心22を得ることと、を含む。
【0057】
その中、鉄心は鉄ニッケル合金を採用する場合、対応するシード層は金属ニッケルを採用する。鉄心は鉄コバルト合金を採用する場合、対応するシード層は金属コバルトを採用する。シード層の厚さ、即ち第2のプリセット厚さは、実際のプロセスの要求に応じて決定されることができる。上鉄心21と下鉄心22の厚さ、即ち第3のプリセット厚さは、鉄心溝の深さに応じて決定される。
【0058】
具体的には、上鉄心21と下鉄心22の製作プロセスに用いられるプロセスは全く同じであり、ただし、両者の形成される位置が異なるため、両者を同時に個別に加工して製作することができる。
【0059】
上記の実施例において、上記螺旋孔路の内にソレノイド3をめっき形成することは、具体的に、上記下シリコン基板の下面に、中間層として、第4のプリセット厚さの金属チタンをマグネトロンスパッタリングし、上記中間層に、シード層として、第5のプリセット厚さの金属銅をマグネトロンスパッタリングし、さらに上記螺旋孔路の第2の溝と鉛直貫通孔の内に、金属銅が第1の溝の下平面の位置に充填されるまで金属銅をめっきすることと、上記上シリコン基板の上面に、シード層として、金属銅をマグネトロンスパッタリングした後、上記螺旋孔路が完全に金属銅で充填されて満たされるまで金属銅をめっきして、上記ソレノイドを得ることと、を含む。
【0060】
上記の実施例において、上記上シリコン基板を作製することは、2つのピンの構造と位置に応じて、第1回目酸化された上記第1のシリコンウェハの上面に2つのピン溝をディープシリコンエッチングすることをさらに含み、それに対応して、ステップS4では、上記2つのピン溝に上記2つのピンをめっき形成することをさらに含む。
【0061】
以下、MEMSソレノイドインダクタの製造方法について一例を挙げてさらに説明する。なお、以下の説明は、本願の実施例の一例に過ぎず、本願の実施例を限定するものではない。
【0062】
-図は、本願の実施例によって提供される例におけるMEMS環状ソレノイドインダクタの製造プロセスのステップ(1)-(17)の模式的断面図であり、図10図12は、本願の実施例によって提供される例におけるMEMS直線状ソレノイドインダクタの製造プロセスのステップ(1)-(17)の模式的断面図であり、具体的には、
(1)厚さ1000μmの両面研磨シリコンウェハを採用する。全体構造の絶縁性を高め、高周波での渦電流損失を低減するために、高抵抗率のシリコンウェハを採用する。シリコンウェハに対して熱酸化を行って、両面に厚さ2μmの熱酸化層を生成する。
(2)フォトレジストを塗布し、上シリコン基板の上面に、第1の水平溝(鉛直貫通孔を覆う箇所)、接点パターンを露光し、下シリコン基板の上面に、鉛直貫通孔と第2の水平溝を露光し、上シリコン基板と下シリコン基板の下面に、それぞれ、鉄心溝パターンを露光し、第1の水平溝、第2の水平溝、及び鉛直貫通孔は、螺旋孔路を構成する。
(3)BOE(Buffered Oxide Etch、緩衝酸化物エッチング)溶液を用いて露出部位のシリカを除去し、シリカをパターン化する。
(4)第2回目のフォトレジストの塗布を行い、上シリコン基板と下シリコン基板の上面と下面に鉛直貫通孔パターンを露光する。
(5)上面と下面をディープシリコンエッチングし、一定の深さまでシリコン貫通孔パターンをエッチングする。
(6)piranha溶液を用いてフォトレジストを除去する。
(7)酸化層をマスキング層として上面のエッチングを行い、鉛直貫通孔と上面の水平溝をエッチングする。酸化層をマスキング層として下面のエッチングを行い、鉄心のパターンをエッチングする。
(8)熱酸化を行って、厚さ2μmの酸化層を形成する。
(9)鉄心溝パターン付きのメタルマスクを取り、その鉄心溝パターンを1、2号のシリコンウェハの下面における鉄心溝パターンと位置合わせして、シリコンウェハの下面に密着させる。
(10)下面に、シード層として、100nmの金属ニッケルをマグネトロンスパッタリングする。
(11)鉄ニッケル合金を底部から、シリコンウェハ表面からの100umまで充填するように、鉄ニッケル合金をメッキする。
(12)上シリコン基板と下シリコン基板の下面を対向させて、低温でシリコン直接ボンディングを行う。
(13)ボンディングされた2層のシリコンウェハの下面に、中間層として、100nmの金属チタンをマグネトロンスパッタリングしてから、シード層として、500nmの金属銅をスパッタリングする。
(14)メッキ銅を底部から頂部の水平導線の下平面の位置まで充填するように、金属銅をメッキする。
(15)上面に、500nmの金属銅をマグネトロンスパッタリングする。
(16)上面のすべての構造がメッキ銅で完全に覆われるように、金属銅をメッキする。
(17)金属銅がシリコンウェハの熱酸化層の表面と同じ高さに達するまで、CMP(化学機械研磨機)を用いて上面と下面の金属銅の薄化を行い、その後、表面をCMPで研磨して、MEMSマイクロインダクタの製造を完了する。
【0063】
上記の実施例は、本願の技術案を説明するためのものに過ぎず、限定するものではない。前述の実施例を参照して本願を詳細に説明したが、当業者であれば、前述の各実施例に記載された技術案を修正し、またはその一部の技術特徴を等価的に置き換えることができ、これらの修正または置き換えは、対応する技術案の本質を本願の各実施例の技術案の精神及び範囲から逸脱させるものではないと理解できるはずである。
【符号の説明】
【0064】
1 シリコン基板
2 環状軟磁性鉄心
2’ 直線状軟磁性鉄心
3 ソレノイド
4 4 ピン
4’ ピン溝
11 上シリコン基板
12 下シリコン基板
21 上鉄心
22 下鉄心
31’ 第1の水平溝
32’ 第2の水平溝
33’ 鉛直貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12