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7267642参照テーブル法に基づくアクティブ磁気軸受コントローラーの構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】参照テーブル法に基づくアクティブ磁気軸受コントローラーの構築方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/02 20060101AFI20230425BHJP
   G05B 13/04 20060101ALI20230425BHJP
   F16C 32/04 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
G05B13/02 N
G05B13/04
G05B13/02 A
F16C32/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021531120
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 CN2020103958
(87)【国際公開番号】W WO2021237910
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】202010473087.X
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517405840
【氏名又は名称】江▲蘇▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫 暁東
(72)【発明者】
【氏名】金 志佳
(72)【発明者】
【氏名】陳 龍
(72)【発明者】
【氏名】楊 澤斌
(72)【発明者】
【氏名】周 衛▲チー▼
(72)【発明者】
【氏名】李 可
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106907393(CN,A)
【文献】特開2019-209399(JP,A)
【文献】特開2001-165163(JP,A)
【文献】特開平3-213716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/04
G05B 13/02,13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照テーブル法に基づくアクティブ磁気軸受コントローラーの構築方法であって、
アクティブ磁気軸受の有限要素モデルを立て、有限要素モデルにおいて、一般的なユニバーサルKrigingモデルに基づき、実際の変位偏心ベクトルx0、y0と、実際の制御電流ベクトルix、iyに関するX、Y軸方向の実際の支持力ベクトルFx、Fyの2つのユニバーサルKriging予測モデルを得るという手順1、
2つのユニバーサルKriging予測モデルに基づき、実際の変位偏心ベクトルx0、y0と、実際の制御電流ベクトルix、iyに関する実際の支持力ベクトルFx、Fyの2つのモデル状態テーブルを作成し、それぞれ内蔵モデル状態テーブルに対応する2つのルックアップテーブルモジュールを構築するという手順2、
X、Y軸方向の2つのファジィ適応PIDコントローラー、2つの増幅器モジュール、2つのルックアップテーブルモジュール、及び2つの測定モジュールによってアクティブ磁気軸受コントローラー構成され、X軸方向のファジィ適応PIDコントローラー、増幅器モジュール、及びルックアップテーブルモジュールは直列連結された状態でアクティブ磁気軸受の入力端に接続され、Y軸方向のファジィ適応PIDコントローラー、増幅器モジュール、及びルックアップテーブルモジュールは直列連結された状態でアクティブ磁気軸受の入力端に接続されており
X、Y軸方向の2つの測定モジュールがそれぞれアクティブ磁気軸受のX、Y軸方向の実際の変位偏心ベクトルx0、y0を測定し、実際の変位偏心ベクトルx0、y0をそれぞれ対応の2つのルックアップテーブルモジュールに入力し、X、Y軸方向の基準変位x、y からそれぞれ対応の実際の変位偏心ベクトルx0、y0減算して得られる変位誤差e、eそれぞれ対応のファジィ適応PIDコントローラーを介して初期制御電流Ix0、Iy0、を得、初期制御電流Ix0、Iy0はそれぞれ対応の増幅器モジュールを介して実際の制御電流ベクトルix、iyを得、実際の制御電流ベクトルix、iyを対応のルックアップテーブルモジュールに入力し、2つのルックアップテーブルモジュールは対応の実際の支持力ベクトルFx、Fyをアクティブ磁気軸受に出力するという手順3を備える
ことを特徴とする前記のアクティブ磁気軸受コントローラーの構築方法。
【請求項2】
手順1で、Nレベルの制御電流とMレベルの変位偏心を選択し、有限要素シミュレーションを行い、N*Mの有限要素モデルを得、N*Mの有限要素モデルのX、Y軸方向の制御電流、変位偏心および対応の支持力を収集し、各有限要素モデルのX、Y軸方向の制御電流、変位偏心を引数データxとし、対応の支持力を従属変数データベクトルy(x)として、それぞれ一般的なユニバーサルKrigingモデル
【数49】
に取り込み、フィッティングにより前記の2つのユニバーサルKriging予測モデル
【数57】
を得、F(β,x)、
【数58】
は回帰モデル、z(x)、
【数59】
は誤差項、βは一般的なユニバーサルKrigingモデルは回帰係数、ベクトルβはユニバーサルKriging予測モデルの回帰係数であることを特徴とする請求項1記載の参照テーブル法に基づくアクティブ磁気軸受コントローラーの構築方法。
【請求項3】
実際の変位偏心ベクトルx0、y0は0から0.01mmごとにサンプリングを行い、
実際の制御電流ベクトルix、iyは0から0.1Aごとにサンプリングを行い、実際の変位偏心ベクトルx0、y0と実際の制御電流ベクトルix、iyのサンプリング値を対応のユニバーサルKriging予測モデルに取り込んで実際の支持力ベクトルFx、Fyを計算し、対応の2つのモデル状態テーブルを作成することを特徴とする請求項2記載の参照テーブル法に基づくアクティブ磁気軸受コントローラーの構築方法。
【請求項4】
2つのモデル状態テーブルにおける第1行は実際の変位偏心ベクトルx0、y0、第1列は実際の制御電流ベクトルix、iyであり、各実際の変位偏心ベクトルx0、y0および実際の制御電流ベクトルix、iyは1つの実際の支持力ベクトルFx、Fyに対応することを特徴とする請求項3記載の参照テーブル法に基づくアクティブ磁気軸受コントローラーの構築方法。
【請求項5】
実際の変位偏心、実際の制御電流がサンプリング点にないデータについては、補間法を用いて対応する実際の支持力を計算することを特徴とする請求項3記載の参照テーブル法に基づくアクティブ磁気軸受コントローラーの構築方法。
【請求項6】
手順3におけるファジィ適応PIDコントローラーはファジィ推論システム、比例部分、積分部分、及び微分部分で構成され、変位誤差e、eとその1階微分
【数60】
は対応のファジィ推論システムの入力とし、ファジィ推論システムは比例補正係数CP、積分補正係数CI、微分補正係数CDを出力し、比例補正係数CP、積分補正係数CI、微分補正係数CDをそれぞれ対応の比例係数KP、積分係数KI、微分係数KDと乗算して補正後の比例部分、積分部分、微分部分を得、変位誤差e、eはそれぞれ補正後の比例部分、積分部分、微分部分を介して補正後の比例部分、積分部分、微分部分の出力の合計演算を行って初期制御電流Ix0、Iy0を得ることを特徴とする請求項1記載の参照テーブル法に基づくアクティブ磁気軸受コントローラーの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブ磁気軸受の制御技術に関し、高速圧縮機、風力発電、分子ポンプなどの高速運転機器におけるアクティブ磁気軸受の制御に適し、磁気浮上技術分野に属し、具体的にはアクティブ磁気軸受コントローラーの構築方法である。
【背景技術】
【0002】
磁気軸受は、電磁力を利用してローターの重力および干渉力を克服し、機械的接触のない浮上を実現するローターサポートシステムであり、機械的接触がなく、耐用年数が長く、メンテナンスが容易などの特徴がある。同時に、剛性およびダンピングは調整可能であり、巻線内の電流を制御することにより、電磁力の出力を柔軟に調整し、磁気軸受の剛性およびダンピングの動作調整を実現することができる。現在、分子ポンプ、風力発電、フライホイールエネルギー貯蔵などの高速回転軸使用の応用が増え、従来の機械用軸受は摩擦損失のために機器の寿命を大いに短縮する。そのため、磁気軸受の使用は多くなる。
【0003】
磁気軸受は、アクティブ、パッシブ、ハイブリッドの3種類がある。アクティブ磁気軸受は、構造が簡単、支持力が調整可能などの長所により広く使用されているが、現在、その安定制御に欠陥があり、一番大きな問題は正確な制御モデル、すなわち電流剛性、変位剛性が得られないことである。現在一般的に用いられる制御方法では、決まった電流剛性係数、変位剛性係数が利用されているが、アクティブ磁気軸受は、動作点にある時のみ、その変位、電流、支持力は近似の線形関係にあり、変位、電流に大きな変化があったとき、モデルは正確ではなくなる。従来の技術では、一般にファジィ論理制御、ニューラルネットワーク制御、高度なアルゴリズムに基づくパラメーター調整・制御などを使用し、モデルに対する調整は非常に少なく、あるいは制御に対する調整はコントローラーパラメーターの調整のみである。従って、アクティブ磁気軸受ローターの変位に伴ってモデルパラメーターを変え、より正確な制御を実現することができる合理的な方法が緊急に必要である。
【0004】
現在、参照テーブル法は、各分野の制御方法においてある程度利用されている。参照テーブル法は、制御において既知の試験またはシミュレーションデータを利用し、テーブル上のデータまたは補間計算により結果を得る制御方法である。電気分野でも、スイッチトリラクタンスの制御において、センサーにより位置情報を獲得する、電流を制御するために参照テーブルにより鎖交磁束情報を獲得するなど、参照テーブル法は広く利用されている。従って、現在の参照テーブル法を参考にし、アクティブ磁気軸受の制御において参照テーブル法により正確なモデルパラメーターを獲得することは実行可能な方法となる。しかし、現在の参照テーブル法には若干の問題がある。主な問題は、利用可能なパラメーターテーブルを作成するには、多くの実験またはシミュレーション、繰り返しの検証が必要であり、このために多くの実験コスト、時間コストがかかるということである。従って、正確度の高いパラメーターテーブルを如何にして迅速に作成することは検討すべき問題となる。
【0005】
Krigingモデルは、共分散関数に基づき、確率過程の確率場の空間モデリングおよび予測のための回帰アルゴリズムである。固有定常過程などの特定の確率過程では、Krigingモデルは、統計学的に空間的最良線形不偏予測器と呼ばれる最良線形不偏予測を提供することができる。従って、Krigingモデルは、地理科学、環境科学、大気科学など多くの分野で利用されている。多くの場合、区域化の変数の不安定が発生する。このような場合には、ユニバーサルKrigingモデルを利用して処理する必要がある。ユニバーサルKrigingモデルでは、少量のデータを利用してアクティブ磁気軸受のパラメーターテーブルを得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、制御プロセスにおけるアクティブ磁気軸受のモデルの不正確という問題の解決を目的とし、ユニバーサルKrigingモデルを利用してモデル状態テーブルを作成し、参照テーブル法によりアクティブ磁気軸受の制御を実現し、運転中のアクティブ磁気軸受の変位、電流変化に応じて、電流剛性係数、変位剛性係数をリアルタイムで調整するという参照テーブル法に基づくアクティブ磁気軸受コントローラーの構築方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における参照テーブル法に基づくアクティブ磁気軸受コントローラーの構築方法に用いられる技術は以下の手順がある。
手順1:アクティブ磁気軸受の有限要素モデルを立て、有限要素モデルにおいて、一般的なユニバーサルKrigingモデルに基づき、X、Y軸方向の
【数1】

に関する2つのユニバーサルKriging予測モデルを得る。
【0008】
手順2:2つのユニバーサルKriging予測モデルに基づき、
【数2】

の2つのモデル状態テーブルを作成し、それぞれ内蔵モデル状態テーブルに対応する2つのルックアップテーブルモジュールを構築する。
【0009】
手順3:X、Y軸方向の2つのファジィ適応PIDコントローラー、2つの増幅器モジュール、2つのルックアップテーブルモジュール、2つの測定モジュールによってアクティブ磁気軸受コントローラーを構成し、X軸方向のファジィ適応PIDコントローラー、増幅器モジュール、ルックアップテーブルモジュールが直列連結後にアクティブ磁気軸受の入力端に接続し、Y軸方向のファジィ適応PIDコントローラー、増幅器モジュール、ルックアップテーブルモジュールが直列連結後にアクティブ磁気軸受の入力端に接続し、X、Y軸方向の2つの測定モジュールがそれぞれアクティブ磁気軸受のX、Y軸方向の
【数3】

をそれぞれ対応の2つのルックアップテーブルモジュールに入力し、X、Y軸方向の基準変位x*、y*はそれぞれ対応の
【数4】

と減算して得られる変位誤差ex、eyはそれぞれ対応のファジィ適応PIDコントローラーを介して初期制御電流Ix0、Iy0を得、初期制御電流Ix0、Iy0はそれぞれ対応の増幅器モジュールを介して
【数5】

を対応のルックアップテーブルモジュールに入力し、2つのルックアップテーブルモジュールは対応の
【数6】

をアクティブ磁気軸受に出力する。
【0010】
さらに、手順1で、Nレベルの制御電流とMレベルの変位偏心を選択し、有限要素シミュレーションを行い、N*Mの有限要素モデルを得、N*Mの有限要素モデルのX、Y軸方向の制御電流、変位偏心および対応の支持力を収集し、各有限要素モデルのX、Y軸方向の制御電流、変位偏心を
【数7】

として、それぞれ一般的なユニバーサルKrigingモデル
【数8】

に取り込み、フィッティングにより前記の2つのユニバーサルKriging予測モデル
【数9】

はユニバーサルKriging予測モデルの回帰係数である。
【0011】
さらに、手順3におけるファジィ適応PIDコントローラーはファジィ推論システム、比例部分、積分部分および微分部分で構成され、変位誤差ex、eyとその
【数10】

は対応のファジィ推論システムの入力とし、ファジィ推論システムは比例補正係数CP、積分補正係数CI、微分補正係数CDを出力し、比例補正係数CP、積分補正係数CI、微分補正係数CDをそれぞれ対応する比例係数KP、積分係数KI、微分係数KDと乗算して補正後の比例部分、積分部分、微分部分を得、変位誤差ex、eyはそれぞれ補正後の比例部分、積分部分、微分部分を介して補正後の比例部分、積分部分、微分部分の出力の合計演算を行って初期制御電流Ix0、Iy0を得る。
【0012】
本発明の有益な効果は次のとおりである。
1、本発明は、ユニバーサルKrigingモデル理論およびアクティブ磁気軸受の浮上制御原理に基づき、異なる変位偏心および制御電流の下でのアクティブ磁気軸受の正確な変化モデルを構築し、ローターの変位を伴うアクティブ磁気軸受に必要な実際の支持力の予測パラメーターテーブルを得、パラメーターテーブルは迅速に作成され、テーブル作成コストを節約でき、実際の状況に応じてアクティブ磁気軸受のより正確なモデルを得、制御の正確性を高めることができる。
2、本発明は、従来のアクティブ磁気軸受の制御に比べ、プロセスにおける固定の変位剛性および電流剛性を省略し、その結果、適用性は動作点付近の疑似線形領域から変位、電流の大きな非線形領域に広がり、制御の精度および範囲が向上する。
3、モデルが可変であるので、通常のコントローラーは、モデルによる調整の需要を満足することができない。本発明で構築されたファジィ適応PID制御モジュールは、PIDアルゴリズムの上、誤差、誤差変化率を入力とし、現在の制御条件によりPIDレギュレーターのパラメーターを変え、ファジィ規則を利用してファジィ推論を行い、異なる時点の誤差および誤差変化率のPIDパラメーターセルフチューニングに対する要求を満足し、より正確なアクティブ磁気軸受制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ファジィ適応PIDコントローラーのブロック構成図。
図2】一般的に使用されるPIDコントローラーのブロック構成図。
図3】本発明の方法によって構築されたアクティブ磁気軸受コントローラーのブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、まずアクティブ磁気軸受の有限要素モデルを立て、アクティブ磁気軸受の有限要素モデルの上、ユニバーサルKrigingモデルに基づき、アクティブ磁気軸受のX、Y軸方向の
【数11】

のX、Y軸方向の2つのモデル状態テーブルを作成し、2つのモデル状態テーブルに基づき、それぞれモデル状態テーブルが内蔵されている2つのルックアップテーブルモジュールを構築し、そしてX、Y軸方向の2つのファジィ適応PIDコントローラーを構築し、最後に2つのファジィ適応PIDコントローラー、対応のX、Y軸方向の2つの増幅器モジュール、2つのルックアップテーブルモジュールと対応のX、Y軸方向の2つの測定モジュールを組み合わせてアクティブ磁気軸受コントローラーを構成させ、アクティブ磁気軸受に対する正確な制御を実現する。具体的な方法は次のとおりである。
【0015】
制御されるアクティブ磁気軸受のサイズを測定してサイズパラメーターを得、有限要素ソフトウェアにおいてアクティブ磁気軸受の有限要素モデルを立て、シミュレーションによりアクティブ磁気軸受の性能パラメーターを得る。磁場強度が飽和していない前提の下、Nレベルの制御電流、Mレベルの変位偏心を選択して有限要素シミュレーションを行い、N*Mの有限要素モデルを得、NおよびMは、制御電流、エアギャップ範囲および必要なモデルの精細度に基づき選択する。そしてN*Mの有限要素モデルのX、Y軸方向の制御電流、X、Y軸方向の変位偏心および対応のX、Y軸方向の支持力のデータを収集する。各モデルのX、Y軸方向の制御電流、変位偏心は測定の引数で、対応のX、Y軸方向の支持力は従属変数である。次にX軸方向を例に説明する。Y軸方向はX軸方向と同じである。
【0016】
N*Mの有限要素モデルのX軸方向の制御電流{i11、i12、…、iNM}、変位偏心{x11、x12、…、 xNM}および対応の支持力{F11、F12、…、 FNM}のデータを収集する。各有限要素モデルの制御電流{i11、i12、…、iNM}、変位偏心{x11、x12、…、 xNM}は測定の引数、支持力{F11、F12、…、 FNM}は従属変数であり、引数はXij=[iij,xij]Tとして表すことができ、従属変数はYij=Fij、として表し、そのうち、i=1,2、…、N、j=1,2,…,Mである。
【0017】
一般的なユニバーサルKrigingモデルの表現は次のとおりである。
【数12】

【数13】

β、β、…、βpは各階の回帰係数であり、fp(x)はp階の近似モデルである。
【0018】
有限要素モデルの引数X ij と従属変数Y ij をそれぞれ
【数14】

の代わりとして一般的なユニバーサルKrigingモデルの公式1に取り込み、フィッティングにより
【数15】

のX軸方向のユニバーサルKriging予測モデルを得ることができる。具体的な表現は次のとおりである。
【数16】
【0019】
そのうち、
【数17】
【0020】
同様に、得られたY軸方向のユニバーサルKriging予測モデルは次のとおりである。
【数18】
【0021】
得られたX、Y軸方向の2つのユニバーサルKriging予測モデルに基づき、それぞれ
【数19】

上記のモデル状態テーブル1およびモデル状態テーブル2は次のとおりである。
【表1】

【表2】
【0022】
テーブル1を例に説明するが、第1行はX軸方向の
【数20】

0から最大偏心xmaxまで、0.01mmごとにサンプリングを行い、同時に、
【数21】

を計算し、モデル状態テーブル1を作成することができる。従って、
【数22】

に対応する。テーブル1におけるF11~Fbaに示すとおり、xmaxはX軸方向の最大変位であり、imaxは最大制御電流である。例えば、テーブル1を例に説明すると、実際の変位偏心が0.01mm、実際の制御電流が0.1Aであるとき、実際の支持力はF 22 であり、実際の変位偏心が0.03mm、実際の制御電流が0.2Aであるとき、実際の支持力はF34である。そのうち、b、aは、実際の変位偏心と実際の制御電流のサンプリング数である。同様に、テーブル2における実際の支持力はF’11~F’baであり、ymaxはY軸方向の最大変位であり、iymaxはY軸方向の最大制御電流である。同様に、テーブル2については、第1行はY軸方向の
【数23】

を計算し、モデル状態テーブル2を作成することができる。
【0023】
実際の変位偏心、実際の制御電流がサンプリング点にないデータについては、補間法を用いて対応の実際の支持力を計算する。X軸方向を例に説明するが、現在の実際の変位偏心はx、実際の制御電流はiと仮定する。このとき、まずテーブル1におけるxとiの位置を確定する必要がある。{x、i}変位偏心がxと点xの間、制御電流がiとサンプリング点iの間に位置し、そのうち、xとxはx+0.01mm= xを満足し、iとiはi+0.1A= iを満足し、かつx、x、i、iの数値はすべてサンプリング点上の変位および電流の数値であると仮定する。このとき、サンプリング点{x、i}に対応する実際の支持力はFc、d、{x、i}に対応する実際の支持力はFc、d+1、{x、i}に対応する実際の支持力はFc+1、d、{x、i}に対応する実際の支持力はFc+1、d+1である。c、dはテーブル1におけるサンプリング点{x、i}の行列数である。このとき、{x、i}での実際の支持力は次のように計算することができる。
【数24】
【0024】
例を挙げて説明するが、実際の変位偏心が0.025mm、実際の制御電流が0.25Aである場合、テーブル1のデータに基づき、その点の支持力の値を次のとおり計算することができる。
【数25】
【0025】
同様に、Y軸方向の実際の変位偏心、実際の制御電流がサンプリング点にないデータについては、同じ補間法を用いて対応の実際の支持力を計算する。
モデル状態テーブル1、モデル状態テーブル2をそれぞれX軸方向のルックアップテーブルモジュール、Y軸方向のルックアップテーブルモジュールに内蔵して、2つのルックアップテーブルモジュールを構築する。
【0026】
図1に示すファジィ適応PIDコントローラーを構築する。アクティブ磁気軸受は、入力電流および現在の変位の変化によりモデルに一定の誤差が生じ、通常のコントローラーはモデルによる調整の需要を満足できないので、本発明ではファジィ適応PIDコントローラーを用いて制御を行う。図2は、現在一般的に使用されているPIDコントローラーのブロック構成図であり、主に比例部分、積分部分および微分部分で構成され、比例部分は比例係数KPで直接構成され、積分部分は積分係数KIと積分モジュール∫で直接構成され、微分部分は微分係数KDと微分モジュールd/dtで直接構成され、3つの部分は
【数26】

により最終出力を得る。図1に示すのは本発明で構築されたX軸方向のファジィ適応PIDコントローラーである。このファジィ適応PIDコントローラーは、ファジィ推論システム、比例部分、積分部分および微分部分で構成され、図2に示す一般的に使用されているPIDコントローラーを改良したものであり、図2におけるPIDコントローラーの比例部分、積分部分、微分部分を保留し、ファジィ推論システムを追加している。X軸方向のファジィ適応PIDコントローラーを例に説明するが、X軸方向の変位誤差exとその
【数27】

をファジィ推論システムの入力とし、ファジィ推論システムは変位誤差ex
【数28】

を計算し、比例補正係数CP、積分補正係数CI、微分補正係数CDを出力する。比例補正係数CP、積分補正係数CI、微分補正係数CDをそれぞれ対応の比例係数KP、積分係数KI、微分係数KDと乗算して補正後の補正比例係数、補正積分係数、補正微分係数を得る。その表現は次のとおりである。
【数29】

補正後の比例部分、積分部分、微分部分は、合計演算Σにより最終出力を得る。すなわち変位誤差exは、補正後の比例部分、積分部分、微分部分を介して、その出力するX軸方向の初期制御電流Ix0を正確に制御することができる。
【0027】
システム出力性能に対する調整パラメーターの影響に基づき、補正係数CP、CI、CDの調整原則を次のとおり制定する。exが大きい場合、補正係数により
【数30】

を適度にすることでシステムの応答速度を向上させ、同時に過度のオーバーシュートを防ぐ。exが中程度である場合、補正係数により
【数31】

を適度にすることでオーバーシュートを減らし、同時にシステムを速い応答速度にする。exが小さい場合、補正係数により

【数32】

を適度にすることでシステムの良好な安定性を確保し、同時にシステムの振動を避け、システムの耐干渉性を強化する。
【0028】
同様に、Y軸方向のファジィ適応PIDコントローラーの構築方法は、X軸方向のファジィ適応PIDコントローラーの構築方法と同じである。Y軸方向の変位誤差eyとその
【数33】

を対応のY軸方向のファジィ推論システムの入力とし、ファジィ推論システムは比例補正係数CP、積分補正係数CI、微分補正係数CDを出力し、比例補正係数CP、積分補正係数CI、微分補正係数CDをそれぞれ対応の比例係数KP、積分係数KI、微分係数KDと乗算して補正後の比例部分、積分部分、微分部分を得、変位誤差eyはそれぞれ補正後の比例部分、積分部分、微分部分を介して補正後の比例部分、積分部分、微分部分の出力の合計演算を行ってY軸方向の初期制御電流Iy0を得る。
【0029】
図3に示すアクティブ磁気軸受コントローラーを構築する。このアクティブ磁気軸受コントローラーは、X軸、Y軸方向の2つのファジィ適応PIDコントローラー、2つの増幅器モジュール、2つのルックアップテーブルモジュール、2つの測定モジュールで構成され、アクティブ磁気軸受の入力端に接続され、アクティブ磁気軸受に対する制御を実現する。そのうち、X軸方向のファジィ適応PIDコントローラー、増幅器モジュール、ルックアップテーブルモジュールは直列連結後にアクティブ磁気軸受の入力端に接続し、Y軸方向のファジィ適応PIDコントローラー、増幅器モジュール、ルックアップテーブルモジュールは直列連結後にアクティブ磁気軸受の入力端に接続し、X、Y軸方向の2つの測定モジュールは変位センサーによりそれぞれアクティブ磁気軸受のX軸、Y軸方向の

【数34】

はY軸方向のルックアップテーブルモジュールに入力する。X軸方向の基準変位x*は実際の変位偏心
【数35】

と減算して変位誤差exを得、変位誤差exはX軸方向のファジィ適応PIDコントローラーを介して初期制御電流Ix0を得、またX軸方向の増幅器モジュールを介して
【数36】

はX軸方向のルックアップテーブルモジュールに入力し、X軸方向のルックアップテーブルモジュールはモデル状態テーブル1のデータに基づきこのときの
【数37】

を獲得する。同様に、Y軸方向の基準変位y*
【数38】

と減算して変位誤差eyを得、変位誤差eyはY軸方向のファジィ適応PIDコントローラーを介して初期制御電流Iy0を得、またY軸方向の増幅器モジュールを介して
【数39】

はY軸方向のルックアップテーブルモジュールに入力し、Y軸方向のルックアップテーブルモジュールはモデル状態テーブル2のデータに基づきこのときの
【数40】

を獲得し、アクティブ磁気軸受に出力する。すなわちX軸、Y軸方向のルックアップテーブルモジュールはそれぞれ対応の
【数41】

をアクティブ磁気軸受に出力すれば、アクティブ磁気軸受のX、Y軸方向に対する制御を実現できる。
図1
図2
図3
図4
図5