(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】金庫収納庫
(51)【国際特許分類】
E05G 1/00 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
E05G1/00 Z
(21)【出願番号】P 2022202956
(22)【出願日】2022-12-20
【審査請求日】2022-12-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-131580(JP,U)
【文献】特開2009-249144(JP,A)
【文献】特開2007-303140(JP,A)
【文献】特開平09-287350(JP,A)
【文献】特開2012-092606(JP,A)
【文献】特開2004-183295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05G 1/00
B66F 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金庫を収納できる収納筐体と、
充填する空気量が増加することで前記金庫を上昇させ、充填する空気量が減少することで前記金庫を下降させる昇降装置と、
前記昇降装置に充填する空気量を調整できる空気量調整装置と、を備え、
前記収納筐体に収容された状態の前記金庫は、前記昇降装置により上昇することで前記収納筐体に設けられた開口部から突出し、前記開口部から突出した状態の前記金庫は、前記昇降装置により下降することで前記収納筐体に収容され
、
前記空気量調整装置は、前記昇降装置に空気を充填するためのエアポンプに着脱可能に接続できるエアバルブと、前記昇降装置に充填された空気を排出するとともに排出を停止できる排出調整機構と、を有し、
前記排出調整機構は、第1位置に回動することで前記昇降装置に充填される空気を排出できて、第2位置に回動することで前記昇降装置に充填される空気の排出を停止できる開閉レバーを含み、
前記開閉レバーは、前記第1位置に回動したとき、施錠されて、前記昇降装置に充填される空気を排出できる状態を維持することを特徴とする金庫収納庫。
【請求項2】
前記収納筐体は、前記昇降装置の上昇を停止させる上昇停止部と、前記昇降装置の下降を停止させる下降停止部と、を有することを特徴とする請求項
1に記載の金庫収納庫。
【請求項3】
前記上昇停止部によって前記昇降装置の上昇が停止されたとき、前記開口部は閉鎖され、前記下降停止部によって前記昇降装置の下降が停止されたとき、前記開口部は液密に閉鎖されるとともに前記昇降装置は所定量の空気が充填される状態であることを特徴とする請求項
2に記載の金庫収納庫。
【請求項4】
前記昇降装置は、前記収納筐体に装着されたガイドレールに沿って昇降移動することを特徴とする請求項
1に記載の金庫収納庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金庫を収納することができる昇降式の金庫収納庫に関する。
【背景技術】
【0002】
金庫の盗難は、従来、「不正に開錠して中身だけを持ち去る」という手口が一般的であった。しかし近年では、バールなどで金庫をこじ開けたり、金庫そのものを持ち去ってしまうという手口が増加している。金庫の盗難は複数人で行われることも多く、大人二人で、100kg以上の金庫を車に乗せて持ち去ることも可能である。
【0003】
盗難対策として、金庫を人の目に触れにくい場所に設置することや、金庫の移動を困難にすることが挙げられる。金庫のある場所が盗難者に見つからなければ、被害に遭う可能性も低くなり、また、金庫の移動を困難にすることで、持ち去りにかかる時間を長引かせ、盗難の意思をくじくことができるためである。このような観点から、床下に収容した金庫を、床上に上昇させる装置が提案されている。
【0004】
特許文献1で開示されている昇降式金庫収納機構は、床下に設けられた竪穴状の金庫収納室と、金庫収納室の上部の金庫進退用開口を覆う蓋体と、金庫収納室の下底に設けられた油圧シリンダーによって昇降する昇降駆動機構と、昇降駆動機構の上に固定された金庫戴置用テーブルと、金庫戴置用テーブルの上に固定された金庫と、金庫収納室外に設けられ、駆動機構の油圧シリンダーに油圧を加える油圧ポンプと、金庫収納室の外に設けられた油圧ポンプを駆動するための100V商用電源で動くモータとバルブと、油圧モータおよびバルブを制御する制御装置と、制御装置と無線によってつながる無線操継器と、100V商用電源と油圧モータとをつなぐ配電系に挿入された 一つ以上の手動スイッチとを備えている。金庫戴置用テーブルを上昇させて金庫を進退用開口を経て収納室内から収納室外へ進出させ、下降させて進退用開口を経て収納室外から収納室内へ退入させるようにしたものである。
【0005】
特許文献2で開示されている金庫床下格納装置は、床部材の表面部より下方に位置して上面に開口部を有した金庫収納枠体を設け、金庫収納枠体内に金庫を載置する昇降載置台を設け、且つ昇降載置台の昇降に伴って昇降載置台の上昇時は金庫が金庫収納枠体の開口部より露出し、下降時は金庫が金庫収納枠体の開口部より下部に位置するようにしたものである。昇降載置台の下面両側部に滑車取付部材を介して昇降用ロープを案内する第1滑車を設け、更に昇降用ロープを案内する第2滑車を取付けた電動油圧ジャッキを備え、また電動油圧ジャッキの上部に取付けた第2滑車の昇降に伴い第2滑車の上昇時は昇降載置
台が上昇して金庫が金庫収納枠体の開口部より露出し、第2滑車の下降時は昇降載置台が下降して金庫が金庫収納枠体の開口部より下部に位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-332266号公報
【文献】特開2004-204500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2で提案される装置は、金庫を昇降動作するために電力等の動力源が必要となる。そのため、停電により電力の供給が断たれたとき、金庫の昇降はできない。また、リンク機構、あるいは滑車を使用する必要があることから構造が複雑とならざるを得ない。さらに、第三者(盗難者)による昇降動作を回避するために暗号入力による複雑な操作が必要となる。
【0008】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、少なくとも金庫を降下するときには動力源を必要とせず、また、簡単な構成で第三者の昇降動作を回避できる金庫収容庫を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための発明は、金庫を収納できる収納筐体と、充填する空気量が増加することで金庫を上昇させ、充填する空気量が減少することで金庫を下降させる昇降装置と、昇降装置に充填する空気量を調整できる空気量調整装置とを備え、収納筐体に収容された状態の金庫は、上昇することで収納筐体に設けられた開口部から突出し、開口部から突出した状態の金庫は、下降することで収納筐体に収容されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、昇降装置に充填する空気量を調整することのみで金庫を
上昇、および下降させることができるので、構造を簡単にできる。
【0011】
好ましくは、空気量調整装置は、昇降装置に空気を充填するためのエアポンプに着脱可能に接続できるエアバルブと、昇降装置に充填された空気を排出するとともに排出を停止できる排出調整機構とを有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、空気量調整装置は、昇降装置に空気を充填するためのエアポンプに着脱可能に接続できるエアバルブを有するので、エアバルブの形状を特有のものとすることで、故意に金庫を上昇させて開錠される可能性、すなわち盗難の可能性を低減できる。また、エアポンプを手動式、あるいはバッテリー駆動とすることで停電のときも金庫の昇降が可能となる。また、排出調整機構によって、動力源に頼ることなく金庫を下降させることができる。
【0013】
好ましくは、排出調整機構は、第1位置に回動することで昇降装置に充填される空気を排出できて、第2位置に回動することで昇降装置に充填される空気の排出を停止できる開閉レバーを含み、開閉レバーは、前記第1位置に回動したとき、施錠されて、昇降装置に充填される空気を排出できる状態を維持することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、開閉レバーは、第1位置に回動したとき、施錠されて、昇降装置に充填される空気を排出できる状態を維持するので、第三者による盗難を目的とする金庫の上昇を回避できる。
【0015】
好ましくは、収納筐体は、昇降装置の上昇を停止させる上昇停止部と、昇降装置の下降を停止させる下降停止部とを有することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、収納筐体は、昇降装置の上昇を停止させる上昇停止部と、昇降装置の下降を停止させる下降停止部とを有するので、金庫の過度な上昇、および下降を抑制できる。
【0017】
好ましくは、上昇停止部によって昇降装置の上昇が停止されたとき、開口部は閉鎖され、下降停止部によって昇降装置の下降が停止されたとき、開口部は閉鎖されるとともに昇降装置は所定量の空気が充填される状態であることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、上昇停止部によって昇降装置の上昇が停止されたとき、開口部は閉鎖され、下降停止部によって昇降装置の下降が停止されたとき、開口部は閉鎖されるとともに昇降装置は所定量の空気が充填される状態であるので、収納筐体の内部を一定要件下、液密な密閉空間とすることができる。これにより、水害で被災したときでも、金庫を浸水しない密閉空間に収納した状態を維持し得る。
【0019】
好ましくは、昇降装置は、収納筐体に装着されたガイドレールに沿って昇降することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、昇降装置は、収納筐体に装着されたガイドレールに沿って昇降移動するので、金庫は横ブレすることなく安定して昇降できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】金庫が収納筐体に収納された状態を説明する側面断面図である。
【
図2】金庫が収納筐体から突出した状態を説明する側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1~4を参照して本発明の金庫収納庫の実施形態を詳述する。
【0023】
図1、2に示す通り、金庫収納庫1は、金庫100を収納できる収納筐体10、金庫100を上昇下降させる昇降装置20、および昇降装置20に充填する空気量を調整する空気量調整装置30を有している。
【0024】
収納筐体10は、底板14が取付けられた角筒体15の上端部に上昇停止部11、中間部に下降停止部12が設けられており、一部が床下の地下110に埋設されている。底板14は、角筒体15の下端部を閉鎖している。また、上方に向かって開口する開口部10aが設けられ、上昇停止部11と下降停止部12の間にガイドレール13が装着されている。収納筐体10は重量が重く、所定の強度を有し、水密性能に優れた材料であることが好ましい。例えば、鉄筋コンクリート製、鋼製等であることが好ましい。
【0025】
上昇停止部11は、収納筐体10の対向する壁面15aに向かって水平に延びる環状の部材である。上端部に設けられて、金庫支持台23の上昇を停止させる役割を担っている。
【0026】
下降停止部12は、収納筐体10の対向する壁面15aに向かって水平に延びる環状の部材である。中間部に設けられて、金庫支持台23の上昇を停止させる役割を担っている。
【0027】
昇降装置20は、基台22、空気充填部21、および金庫支持台23を有している。基台22は収納筐体10の底板14に載置される矩形の平板であり、側端面22aは壁面15aに接している。金庫支持台23は金庫100を支持するための矩形の平板である。空気充填部21は内部に空気が充填できる蛇腹であり、基台22と金庫支持台23に挟持されている。空気充填部21に充填される空気量を増加、減少させることで空気充填部21は上下方向に沿って膨張、収縮変位する。これにより、金庫支持台23は、
図2に双頭の矢印Hで示す縦線方向に沿って上昇し、下降する。
【0028】
空気量調整装置30は、空気充填部21に充填される空気量を増加・減少させるための装置であり、管路33、分岐管34、エアバルブ31、排出調整機構40等を有している。
【0029】
管路33は基台22を経由して、一端が空気充填部21に接続しており、他端がエアバルブ31と接続する円管である。エアバルブ31は、エアポンプ32と接続するためのバルブである。エアポンプ32をエアバルブ31に接続した後、エアポンプ32を動作して送気することで空気充填部21に空気が充填される。エアポンプ32は、手動、電動のいずれであってもよい。また、エアポンプ32をハンディタイプのバッテリー駆動のものとすることで、利便性をより一層高める効果が期待できる。
【0030】
分岐管34は、一端が管路33の中間部に接続しており、他端が排出調整機構40と接続する円管である。排出調整機構40は、空気充填部21に充填される空気を外部に排出するためのものであり、分岐管34を開閉する開閉レバー41と、空気を外部に排出する排出部42を有している。開閉レバー41を動作して分岐管34を開放することで、空気充填部21に充填される空気は排出部42から外部に排出される。これにより、空気充填部21が収縮するため、金庫支持台23が下方に移動して金庫100は下降する。
【0031】
エアバルブ31は、車両のタイヤに充填するためのバルブ構造とほぼ同様の構成である、いわゆる一般的構成であることから説明は省略する。
【0032】
エアバルブ31の形状は、車両等に用いる一般的なバルブ形状と同等ではなく、本実施形態の金庫収容庫に特有のものとすることが好ましい。これにより、故意に金庫100を上昇させて盗難される可能性を低減できる。
【0033】
図3に示す通り、ガイドレール13は8本のガイドレール部材13aで構成されている。ガイドレール部材13aは、角筒体15が延びる方向に沿って延びており、それぞれの壁面15aに2本ずつ装着されている。ガイドレール部材13aには、平面視で円弧形状の凹部113aが設けられている。また、金庫支持台23は、凹部113aに対応する凸部23aが設けられており、凸部23aは凹部113aにはめ込まれている。これにより、金庫支持台23は、横ブレすることなくガイドレール部材13aが延びる方向に沿って上昇し、下降できる。
【0034】
図4に示す通り、排出調整機構40は、開閉レバー41と、排出部42を有している。開閉レバー41に取り付けられているレバー部51は第1位置P1と第2位置P2の間を回動できる構造である。レバー部51が第1位置P1に位置するとき分岐管34は気密に閉鎖され、空気充填部21に充填される空気が、外部に放出されることはない。レバー部51が第2位置P2に位置するとき、分岐管34は開放されるため、空気充填部21に充填される空気は、排出部42を経由して外部に放出される。
【0035】
排出部42は、外筒54が内管53にスライド可能に挿入される状態で内管53を覆っている。外筒54は一端が円板によって閉鎖されている。内管53は、空気排出孔53aが所定間隔で設けられており、一端は接続管56に固定されている。バネ55は外筒54を付勢した状態で、内管53の内部に装着されている。分岐管34が閉鎖されるとき、すなわちレバー部51が第1位置P1に位置するとき、外筒54は、バネ55の付勢力によって、内管53を覆う状態を維持する。これにより、外部からの異物の混入を防止できる。
【0036】
分岐管34が開放されるとき、すなわちレバー部51が第2位置P2に位置するとき外筒54は空気充填部21に充填される空気の空気圧に起因して内管53の先端部の方向にスライドする。このとき、外筒54によって閉鎖されていた空気排出孔53aは解放されて、空気充填部21に充填された空気は管路33、分岐管34、排出部42を経由して外部に放出される。
【0037】
レバー部51が回動されて第2位置P2に位置するとき、レバー部51は自動的に施錠される。この状態で、分岐管34によって空気充填部21に空気を充填することは困難である。エアポンプ32から送気される空気は空気排出孔53aを経由して外部に放出されるため、空気充填部21に充填されることはないからである。例えば、仮に、盗難目的で別のエアポンプを準備して金庫100の上昇を試みても、後述するように、その目的を達成することはできない。
【0038】
レバー部51の施錠は、鍵穴52に鍵を挿通して鍵を回動することで開放される。開閉レバー41の構造は、ドアノブの構造とほぼ同様の、いわゆる一般的構成であることから説明は省略する。
【0039】
金庫収納庫1の動作について説明する。
【0040】
図1に示す通り、金庫100が、金庫収納庫1に収納される状態では、金庫100は金庫支持台23を介して下降停止部12に支持されるとともに、上板101を介して上昇停止部11に支持されている。このとき、金庫100の上端に装着される上板101の上面と、床面120とはほぼ面一となっている。この状態で、空気充填部21は、完全な収縮状態に至っておらず、所定量の空気が充填されている。これにより、空気充填部21の耐久性を向上させることができる。
【0041】
開口部10aは上板101によって液密に閉鎖され、収納筐体10に液密な密閉空間が画定される(以後、密閉は液密、気密あるいは双方を意味することがある)。これにより、洪水や津波の水害に被災したときも、金庫100が水浸しになることを回避できる。開口部10aの密閉状態を確実にするために、収納筐体10の上端部に環状のパッキンを装着することが好ましい。
【0042】
金庫100の重量は、下降停止部12および上昇停止部11の双方に支持されるが、開口部10aの密閉が確保される範囲で、可能な限り下降停止部12に金庫重量を負担させることが好ましい。
【0043】
金庫収納庫1に収容されている金庫100の上昇移動は、以下の手順で行うことができる。
【0044】
レバー部51を第2位置P2に回動して分岐管34を閉鎖し、空気が排出部42から排出できない状態とする。エアポンプ32をエアバルブ31に接続して、エアポンプ32を動作する。これにより、エアポンプ32から送気された空気は管路33を経由して空気充填部21に充填されて、空気充填部21は膨張する。これにより金庫支持台23に支持される金庫100は、ガイドレール13が延びる方向に沿って上昇して、開口部10aから突出する。
【0045】
金庫支持台23と上昇停止部11が接触することで、金庫支持台23に支持される金庫100の上昇は停止する。さらに空気充填部21に送気することで、空気充填部21の内部の気圧が上昇する。気圧を所定値に抑制するために、空気充填部21や管路33等に減圧弁を設けることが好ましい。
【0046】
レバー部51を第2位置P2に回動して分岐管34を開放し、空気が排出部42から排出できる状態とする。これにより、空気充填部21に充填される空気は、管路33、分岐管34を経由して排出部42から排出されて、金庫支持台23に支持される金庫100は、ガイドレール13が延びる方向に沿って下降移動する。金庫支持台23と下降停止部12が接触することで金庫支持台23に支持される金庫100の下降移動は停止する。
【0047】
金庫支持台23と下降停止部12が接触して、金庫100の降下が停止したとき、金庫100の上端に装着される上板101は、上昇停止部11に接触して、開口部10a近傍を液密に閉鎖する。これにより、金庫100は床下の収納筐体10に収納される。
【0048】
金庫100の降下速度は、空気充填部21の充填される空気の排出速度に比例する。管路33、分岐管34の断面を適宜に選択して、空気充填部21に充填される空気の排出部42からの排出量を調整することで、金庫100の降下速度を所定速度に調整できる。これにより、金庫支持台23が下降停止部12に接触するときの衝撃を緩和できる。また、降下は、重力の作用で実行できるので、電力等の動力源を要しない。したがって、災害の際に、停電となった状態でも、金庫100を降下させることが可能となる。
【0049】
金庫支持台23が下降停止部12に接触するとき、空気充填部21は、完全な収縮状態に至っておらず、一定量の空気が充填されている。これにより、空気充填部21の耐久性の向上を図ることができる。
【0050】
レバー部51を第2位置P2に回動したとき、レバー部51は施錠されて、分岐管34は解放状態を維持し、空気充填部21に充填される空気は排出できる状態となる。この状態では、エアポンプ32から送気された空気は、空気充填部21に充填されず、排出口から排出される。すなわち、金庫100を上昇させることはできない。したがって、盗難目的で、エアポンプ32を別途準備して送気しようとしても、送気された空気は空気排出孔53aから排出されるため、金庫100を上昇させることはできない。
【0051】
鍵穴52に鍵を差し込んで回動して、第2位置P2に位置するレバー部51の施錠を解除した後、レバー部51を第1位置P1に回動する。この状態でエアポンプ32を動作して、エアバルブ31を経由して空気充填部21に送気することで金庫100を上昇させることができる。
【0052】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、本実施形態では金庫収納庫1を床下に設置していたが、床面120に設置してもよい。この場合、金庫収納庫1を床面120に固定することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る金庫収納庫は内部に金庫を液密に密閉できるので、水害時においても金庫に保管している書類等が海水、淡水、河川水、雨水などに濡れることはない。水害などの災害に対しても有効に活用できることから産業用の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0054】
1 :金庫収納庫
10 :収納筐体
10a :開口部
11 :上昇停止部
12 :下降停止部
13 :ガイドレール
20 :昇降装置
30 :空気量調整装置
31 :エアバルブ
32 :エアポンプ
40 :排出調整機構
41 :開閉レバー
100 :金庫
P1 :第1位置
P2 :第2位置
【要約】
【課題】少なくとも金庫を降下するときには動力源を必要とせず、また、簡単な構成で第三者の昇降動作を回避できる金庫収納庫を提供する。
【解決手段】金庫収納庫1は、金庫100を収納できる収納筐体10と、充填する空気量が増加することで金庫100を上昇させ、充填する空気量が減少することで金庫100を下降させる昇降装置20と、昇降装置20に充填する空気量を調整できる空気量調整装置30とを備えている。収納筐体10に収容された状態の金庫100は、上昇することで収納筐体10に設けられた開口部10aから突出し、開口部10aから突出した状態の金庫100は、下降することで収納筐体10に収容される。
【選択図】
図1