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特許7267661バルク型レンズ、発光体及びバルク型レンズの設計方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】バルク型レンズ、発光体及びバルク型レンズの設計方法
(51)【国際特許分類】
   F21V 5/00 20180101AFI20230425BHJP
   G02B 3/04 20060101ALI20230425BHJP
   G02B 3/08 20060101ALI20230425BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230425BHJP
【FI】
F21V5/00 510
G02B3/04
G02B3/08
F21Y115:10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022510622
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2021012370
(87)【国際公開番号】W WO2021193758
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2020070640
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599104299
【氏名又は名称】ラボ・スフィア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】大塚 晃
(72)【発明者】
【氏名】玉置 智
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-037404(JP,A)
【文献】特開2005-093622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 5/00
G02B 3/04
G02B 3/08
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状発光素子の主発光部を収納するバルク型レンズであって、該バルク型レンズが、
曲率が連続して変化する湾曲面からなる出射面と、
該出射面に接する光学媒体からなる光伝送部と、
該光伝送部に接する後方外壁面と、
前記光伝送部の内部に設けられた天井部及び該天井部に接続する側壁で構成され、前記主発光部を収納する凹部と、
を備え、前記面状発光素子の発光面の中心を通る、前記発光面の法線方向を光軸とし、該光軸からの傾斜角を照射角と定義した場合において、前記面状発光素子の発光面の中心から発光する光に対して、
前記天井部の中央を通って前記出射面の中央領域の第1出射点から出射する光の照射角と、前記側壁に近い前記天井部を通って前記中央領域の第2出射点から出射する光の照射角の差を10度以内の第1照射角範囲となるように、前記第1及び第2出射点おける前記湾曲面に対する接平面の角度を設定し、
前記側壁の最上部から入射し前記後方外壁面の第1反射点で反射して前記出射面の周辺領域の第3出射点から出射する光の照射角と、前記側壁の前記天井部から離れた位置から入射した光が前記後方外壁面の第2反射点で反射して前記周辺領域の第4出射点から出射する照射角の差が10度以内の第2照射角範囲となるように、前記第3及び第4出射点おける前記湾曲面に対する接平面の角度と、前記第1及び第2反射点における前記後方外壁面の接平面の角度を設定し、
前記第1照射角範囲と前記第2照射角範囲を同一にしたことを特徴とするバルク型レンズ。
【請求項2】
前記面状発光素子の発光面の中心に位置する発光点から放出される光に関し、すべての前記照射角が0度であることを特徴とする請求項1に記載のバルク型レンズ。
【請求項3】
前記光軸の方向をZ軸とし、該Z軸に互いに直交するX軸とY軸からなる座標系において、X軸方向とY軸方向で異なる照射角とし、長方形のた照度分布で照明するように設計されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のバルク型レンズ。
【請求項4】
前記光軸の方向をZ軸とし、該Z軸に互いに直交するX軸とY軸からなる座標系において、前記発光面の中心に位置する発光点から放出される光に対し、
Y軸の+または-方向の照射角をすべて0度に設計し、
Y軸の-または+方向の照射光の強度を徐々に小さく設計したことを特徴とする請求項1又は2に記載のバルク型レンズ。
【請求項5】
前記天井部が平面であり、前記側壁が母線を直線とする2次曲面であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のバルク型レンズ。
【請求項6】
前記光伝送部の両側に、第1及び第2固定用足場が対をなして接続された構造であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のバルク型レンズ。
【請求項7】
前記第1固定用足場に第1貫通孔が設けられ、前記第2固定用足場に第2貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のバルク型レンズ。
【請求項8】
面状発光素子と該面状発光素子を収納するバルク型レンズを備える発光体であって、前記バルク型レンズが、
曲率が連続して変化する湾曲面からなる出射面と、
該出射面に接する光学媒体からなる光伝送部と、
該光伝送部に接する後方外壁面と、
前記光伝送部の内部に設けられた天井部及び該天井部に接続する側壁で構成され、前記面状発光素子の主発光部を収納する凹部と、
を有し、該凹部に前記面状発光素子が規定の位置関係で固定されて収納され、前記面状発光素子の発光面の中心を通る、前記発光面の法線方向を光軸とし、該光軸からの傾斜角を照射角と定義した場合において、前記面状発光素子の発光面の中心から発光する光に対して、
前記天井部の中央を通って前記出射面の中央領域の第1出射点から出射する光の照射角と、前記側壁に近い前記天井部を通って前記中央領域の第2出射点から出射する光の照射角の差を10度以内の第1照射角範囲となるように、前記第1及び第2出射点おける前記湾曲面に対する接平面の角度を設定し、
前記側壁の最上部から入射し前記後方外壁面の第1反射点で反射して前記出射面の周辺領域の第3出射点から出射する光の照射角と、前記側壁の前記天井部から離れた位置から入射した光が前記後方外壁面の第2反射点で反射して前記周辺領域の第4出射点から出射する照射角の差が10度以内の第2照射角範囲となるように、前記第3及び第4出射点おける前記湾曲面に対する接平面の角度と、前記第1及び第2反射点における前記後方外壁面の接平面の角度を設定し、
前記第1照射角範囲と前記第2照射角範囲を同一にしたことを特徴とする発光体。
【請求項9】
面状発光素子の主発光部を収納するバルク型レンズの設計方法であって、
曲率が連続して変化する湾曲面からなる出射面、該出射面に接する光学媒体からなる光伝送部、該光伝送部に接する後方外壁面、前記光伝送部の内部に設けられた天井部及び該天井部に接続する側壁で構成され前記主発光部を収納する凹部を有する初期設計外形線を描くステップと、
該凹部に収納される前記面状発光素子の相対位置を決めるステップと、
前記側壁の最上部から入射した光が前記後方外壁面に到達する第1反射点と、前記側壁の前記天井部から離れた位置から入射した光が前記後方外壁面に到達する第2反射点を決定するステップと、
前記第1及び第2反射点で反射した光が、前記出射面の周辺領域に到達するように、前記第1及び第2反射点における前記後方外壁面の接平面の角度を設定するステップと、
前記天井部の中央を通って前記出射面の中央領域の第1出射点から出射する光の照射角と、前記側壁に近い前記天井部を通って前記中央領域の第2出射点から出射する光の照射角の差を10度以内の第1照射角範囲となるように、前記第1及び第2出射点おける前記湾曲面に対する接平面の角度を設定するステップと、
前記第1反射点で反射して前記出射面の周辺領域の第3出射点から出射する光の照射角と、前記第2反射点で反射して前記周辺領域の第4出射点から出射する照射角の差が10度以内の第2照射角範囲となるように、前記第3及び第4出射点おける前記湾曲面に対する接平面の角度と、前記第1及び第2反射点における前記後方外壁面の接平面の角度を設定するステップと、
を含むことを特徴とするバルク型レンズの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
面発光をする発光ダイオード(LED)などの高出力面状発光素子からの出射光を効率良く集光し、比較的狭い照射角で出射することが出来るバルク型レンズ、及びこのバルク型レンズと面状発光素子を組み合わせた発光体、更にはバルク型レンズの設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平坦な発光面を有するLED光源の発光面からの放出光の強度は、発光面の法線方向からの傾きで定義される照射角の余弦関数で低下し、LED光源と照射位置の距離の2乗に反比例する。例えば道路照明において、路肩の照明器具から距離が長く離れた路面に向かって照射する場合は、照射光の光軸と路面なす角度が小さくなり、高い照度が得られない。一方、照明器具の直下ではLED光源と照射位置の距離が短く、照射光の光軸と路面なす角度が直角になるために照度が高くなる。よって、照明器具から離れた路面と照明器具の直下を、均一な照度にすることが難しい。
【0003】
一方、集光効率を高めるために、図11に示すような第1出射面33と第2出射面34の接続部での曲率が不連続となる光学的設計のバルク型レンズ1dが知られている(特許文献1参照。)。図11に示す従来のバルク型レンズ1dでは、大出力用に構成された大面積のLED光源91dの中央に位置する中心発光点から出射し、照射角の小さい光路の光は凹部の天井部42dに入射してからバルク型レンズ1dの上部の第1出射面33から出射される。一方、中心発光点から大きな発光角で放出された光は、凹部の側壁43dから入射し、バルク型レンズ1dの後方外壁面44dで反射してから、バルク型レンズ1dの上部の第2出射面34から出射する。図12に破線で示した光路65-1’は、発光角は中心発光点から放出された光路65-1と同じであるが、LED光源91dの右側端部側の端部発光点から発光しているので、中心発光点から距離dだけずれている。光路65-1’は、凹部の側壁43dを入射面として、バルク型レンズ1dに入射して、バルク型レンズ1dの第2出射面34から出射する。
【0004】
図12に破線で示した光路65-2’は、発光角が中心発光点から出射する実線で示した光路65-2と同じで、LED光源91dの左側端部側を端部発光点として発光している。中心発光点から距離dだけずれて光路65-2’が開始しているので、光路65-2に対して当初設計した凹部の側壁43dとは異なる天井部42dに入射する。そして、光路65-2’の光は当初設計とは異なる第2出射面34の位置から出射する。従来のバルク型レンズ1dにおいて、LED光源91dの発光面の面積が大きい場合には、端部発光点から発光する光路の光が、当初設計と異なる出射面から、当初設計の照射角と異なる広い照射角で出射し、集光効率が低下する。この問題を避けるためには第1出射面33と第2出射面34の間隔を大きくすれば軽減できるが、バルク型レンズ1d形状が大きくなってしまうという新たな問題が発生する。
【0005】
10万人規模の大競技場や道路照明等に用いる大きな面積の発光面を有するLED光源91dの場合は、端部発光点からの光まで考慮して、バルク型レンズ1dの照射角や照射光強度を設計することが求められる。しかしながら、図11に示す従来のバルク型レンズ1dでは、第1出射面33と第2出射面34の接続部での曲率が不連続であるので、複数の分散した発光点の位置を考慮して、バルク型レンズ1dの照射角や照射光強度を設計するのは難しい。このように従来のバルク型レンズ1dには、大競技場や道路照明等の広い照射面積への照明する場合において、集光効率が低下しやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-93622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コンパクトな構造で、大面積の面状発光素子を用いても狭い照射角が実現可能で、且つ広い照射面積を均一性が優れた光強度分布で効率良く照明できるバルク型レンズ、バルク型レンズと面状発光素子を組み合わせた発光体、及びバルク型レンズの設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決すための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、面状発光素子の主発光部を収納するバルク型レンズに関する。この第1の態様に係るバルク型レンズは、(a) 曲率が連続して変化する湾曲面からなる出射面と、(b) この出射面に接する光学媒体からなる光伝送部と、(c) この光伝送部に接する後方外壁面と、(d) 光伝送部の内部に設けられた天井部及びこの天井部に接続する側壁で構成され、主発光部を収納する凹部を備える。第1の態様に係るバルク型レンズでは、面状発光素子の発光面の中心を通る、発光面の法線方向を光軸とし、この光軸からの傾斜角を照射角と定義した場合において、面状発光素子の発光面の中心から発光する光に対して、天井部の中央を通って出射面の中央領域の第1出射点から出射する光の照射角と、側壁に近い天井部を通って中央領域の第2出射点から出射する光の照射角の差を10度以内の第1照射角範囲となるように、第1及び第2出射点おける湾曲面に対する接平面の角度が設定されている。更に第1の態様に係るバルク型レンズでは、側壁の最上部から入射し後方外壁面の第1反射点で反射して出射面の周辺領域の第3出射点から出射する光の照射角と、側壁の天井部から離れた位置から入射した光が後方外壁面の第2反射点で反射して周辺領域の第4出射点から出射する照射角の差が10度以内の第2照射角範囲となるように、第3及び第4出射点おける湾曲面に対する接平面の角度と、第1及び第2反射点における後方外壁面の接平面の角度を設定されている。更に、第1の態様に係るバルク型レンズでは、第1照射角範囲と第2照射角範囲が同一にされている。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係るバルク型レンズと、この第1の態様に係るバルク型レンズの凹部に収納されるように、規定の位置関係で固定された面状発光素子とを備える発光体であることを要旨とする。よって、第1の態様に係るバルク型レンズと同様に、第2の態様に係る発光体では、面状発光素子の発光面の中心を通る、発光面の法線方向を光軸とし、この光軸からの傾斜角を照射角と定義した場合において、面状発光素子の発光面の中心から発光する光に対して、天井部の中央を通って出射面の中央領域の第1出射点から出射する光の照射角と、側壁に近い天井部を通って中央領域の第2出射点から出射する光の照射角の差を10度以内の第1照射角範囲となるように、第1及び第2出射点おける湾曲面に対する接平面の角度が設定されている。更に第2の態様に係る発光体では、側壁の最上部から入射し後方外壁面の第1反射点で反射して出射面の周辺領域の第3出射点から出射する光の照射角と、側壁の天井部から離れた位置から入射した光が後方外壁面の第2反射点で反射して周辺領域の第4出射点から出射する照射角の差が10度以内の第2照射角範囲となるように、第3及び第4出射点おける湾曲面に対する接平面の角度と、第1及び第2反射点における後方外壁面の接平面の角度を設定されている。更に、第2の態様に係る発光体では、第1照射角範囲と第2照射角範囲が同一にされている。
【0010】
本発明の第3の態様は、(p) 曲率が連続して変化する湾曲面からなる出射面、この出射面に接する光学媒体からなる光伝送部、この光伝送部に接する後方外壁面、光伝送部の内部に設けられた天井部及びこの天井部に接続する側壁で構成され主発光部を収納する凹部を有する初期設計外形線を描くステップと、(q) この凹部に収納される面状発光素子の相対位置を決めるステップと、(r) 側壁の最上部から入射した光が後方外壁面に到達する第1反射点と、側壁の天井部から離れた位置から入射した光が後方外壁面に到達する第2反射点を決定するステップと、(s) 第1及び第2反射点で反射した光が、出射面の周辺領域に到達するように、第1及び第2反射点における後方外壁面の接平面の角度を設定するステップと、(t) 天井部の中央を通って出射面の中央領域の第1出射点から出射する光の照射角と、側壁に近い天井部を通って中央領域の第2出射点から出射する光の照射角の差を10度以内の第1照射角範囲となるように、第1及び第2出射点おける湾曲面に対する接平面の角度を設定するステップと、(u) 第1反射点で反射して出射面の周辺領域の第3出射点から出射する光の照射角と、第2反射点で反射して周辺領域の第4出射点から出射する照射角の差が10度以内の第2照射角範囲となるように、第3及び第4出射点おける湾曲面に対する接平面の角度と、第1及び第2反射点における後方外壁面の接平面の角度を設定するステップを含むバルク型レンズの設計方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発光面の面積の大きい面状発光素子の発光面の大きさを効率良く使うことが可能であり、コンパクトな構造により中心発光点から離れた位置から発光する光の影響を少なくし、狭い照射角で集光効率を高くし、且つ広い照射面積を均一性が優れた光強度分布で効率良く照明できるバルク型レンズ、発光体及びバルク型レンズの設計方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の第1実施形態に係るバルク型レンズ中を透過する複数の光路の軌跡を示す模式的な断面図である。
図1B】第1実施形態に係るバルク型レンズの出射面の設計思想の概念を説明する模式的な断面図である。
図1C】第1実施形態に係るバルク型レンズに定義される出射面の区分を示す上面図(平面図)である。
図1D】第1実施形態に係るバルク型レンズの凹部に収納される半導体発光素子の構造を説明する模式的な断面図である。
図1E】第1実施形態に係るバルク型レンズの設計方法の概略を説明する、簡略化されたフローチャートである。
図2】第1実施形態に係るバルク型レンズにおいて、中心発光点から距離dだけずれた位置を発光点とする複数の出射光の光路の軌跡を示す模式的な断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るバルク型レンズ中を透過する複数の光路の軌跡を示す模式的な断面図である。
図4】第2実施形態に係るバルク型レンズにおいて、中心発光点から距離dだけずれた位置を発光点とする複数の出射光の光路の軌跡を示す模式的な断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るバルク型レンズの光軸と直交するX軸方向に沿った断面における光路の軌跡を示す模式的な断面図である。
図6】第3実施形態に係るバルク型レンズの光軸及びX軸と直交するY軸方向に沿った断面における光路の軌跡を示す模式的な断面図である。
図7】第3実施形態に係るバルク型レンズの底面から見た形状を示す模式的な底面図である。
図8】本発明の第4実施形態に係るバルク型レンズの光軸と直交するX軸方向に沿った断面における光路の軌跡を示す模式的な断面図である。
図9】第4実施形態に係るバルク型レンズの光軸及びX軸と直交するY軸方向に沿った断面における光路の軌跡を示す模式的な断面図である。
図10】第4実施形態に係るバルク型レンズの底面から見た形状を示す模式的な底面図である。
図11】従来のバルク型レンズ中を透過する複数の光路の軌跡を示す模式的な断面図である。
図12図11のバルク型レンズにおいて、中心発光点から距離dだけずれた位置を発光点とする複数の出射光の光路の軌跡を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本発明の第1~第4実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0014】
また、以下に示す第1~第4実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るバルク型レンズ1eは、図1Aに示すように、LED等の面状発光素子91eの主発光部を収納するバルク型レンズ1eである。第1実施形態に係るバルク型レンズ1eは、 曲率が連続して変化する湾曲面からなる出射面36cと、この出射面36cに接する光学媒体からなる塊状(バルク状)の光伝送部39eと、この光伝送部39eに接する後方外壁面44eと、光伝送部39eの内部に設けられた天井部42e及びこの天井部42eに接続する側壁43eで構成され、主発光部を収納する凹部(42e,43e)を備える。後方外壁面44eは、 出射面36cに光学的に対向している。「光学的に対向」とは、出射面36cと後方外壁面44eがほぼ並行に対峙する必要はなく、後方外壁面44eで反射した光が出射面36cに到達するような関係であればよいという意味である。凹部(42e,43e)は、後方外壁面44eの一部から出射面36cの方向に沿って光伝送部39eの内部に天井部42eが位置するように、この天井部42eとこの天井部42eに接続する側壁43eで構成され、LED等の面状発光素子91eの主発光部を収納する。以下の説明において、便宜上後方外壁面44eは全反射条件で設計できるように説明しているが、光出射特性や外形などの条件により全反射条件にならない場合は、後方外壁面44eに反射率の高い金属膜等の鏡面反射処理を行った構造でも構わない。
【0016】
出射面36cの形状を規定する「曲率が連続して変化する湾曲面からなる」の表現は「なだらかな湾曲面」を数学的に定義したものである。例えば、図11及び図12に示した構造では、曲率半径の小さな第1出射面33と、第1出射面33の曲率半径よりも大きな曲率半径の第2出射面34が交わっており、第1出射面33と第2出射面34の交点において曲率が不連続である。図11及び図12に示した構造は立体形状であるので、図11及び図12の断面図上における第1出射面33と第2出射面34の曲率不連続点は3次元座標における曲率不連続線になる。これに対して、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eの出射面36cは、曲率が連続して変化する湾曲面であるので、曲率不連続線は存在しない。
【0017】
例えば、図1Bに示すように、出射面36cは複数の円弧の包絡面として、曲率が連続して変化する湾曲面を構成している。図1Bでは面状発光素子91eの発光面の中心を通る発光面の法線方向を、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eの「光軸」と定義したときに、光軸上の中心点Ov1を中心とする曲率半径R0の円弧、曲率半径R11の円弧、曲率半径R12=R11の円弧、曲率半径R13の円弧、曲率半径R14=R13の円弧の包絡面として、出射面36cの中央領域36Ccが構成され

13>R11>R0 ……(1a)
14>R12>R0 ……(1b)


の関係をなしている。
【0018】
一方、光軸上の中心点Ov2を中心とする曲率半径R15の円弧、曲率半径R16=R15の円弧の包絡面が、出射面36cの中央領域36Ccの包絡面に連続することにより、出射面36cの周辺領域36Coが構成されているので、曲率が連続して変化する湾曲面になっているが、

15>R13 ……(2a)
16>R15 ……(2b)


の関係をなしている。
【0019】
又、周辺領域36Coを構成する包絡面は、凹部(42e,43e)の天井部42eの左側端部に中心点Ov3を有する曲率半径R17の円弧、凹部の天井部42eの右側端部に中心点Ov4を有する曲率半径R18=R17の円弧の包絡面と連続するように構成され、

17>R13 ……(3a)
18>R15 ……(3b)

の関係をなしている。このため、曲率半径R15の円弧と曲率半径R17の円弧は、曲率が連続して変化する周辺領域36Coの湾曲面として、更に左側の外方に広がっている。又、湾曲面半径R16の円弧と曲率半径R18の円弧は、曲率が連続して変化する周辺領域36Coの湾曲面として、更に右側の外方に広がっている。そして、出射面36cの周辺領域36Coの湾曲面は、中央領域36Ccの湾曲面と曲率が連続して変化する湾曲面として連続している。図1Bから分かるように、出射面36cの周辺領域36Coの法線ベクトルと、中央領域36Ccの法線ベクトルとは方向と、その曲率半径の中心位置が異なる。
【0020】
ただし、図1Bに示した中心点Ov1,Ov2,Ov3,Ov4の位置や、曲率半径R15,R16,R17,R18の大きさを、大小関係等は、設計概念を模式的に示す例示に過ぎず、実際の設計に際しては異なる中心点の位置や曲率半径大きさや大小関係が採用されることは勿論である。特に、後述する式(4)で示すフレネ=セレの公式が示すように、曲率半径R15,R16,R17,R18の大きさや中心点Ov1,Ov2,Ov3,Ov4の位置等は、法線ベクトルの方向に依存する。法線ベクトルの方向は、接平面の角度で決まり、接平面の角度は、スネルの法則によって、所望の照射角θillumに対して決定される。即ち、図1Bに示した中心点Ov1,Ov2,Ov3,Ov4の位置等は、スネルの法則によって決まる実際の設計に用いられる中心点の位置とは異なるものである。
【0021】
一般には、現実の設計に関しては周辺領域36Coの曲率を定義する曲率半径R15,R16,R17,R18の大きさを、光軸と法線ベクトルの方向を等しくする円弧の曲率半径R0よりも大きくすることが好ましい。図1Cのバルク型レンズ1eの上面図には、説明の便宜上、中央領域36Ccと周辺領域36Coの境界を模式的に2点鎖線(仮想線)で示している。しかし、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eの出射面36cは、曲率が連続して変化する湾曲面であるので、上面図として、実際には2点鎖線で示すような曲率不連続線は見えないことに留意が必要である。なお、設計が難しくなるので好ましくはないが、曲率が連続していれば、出射面36cの一部に変曲点が含まれていてもよい。「変曲点」とは、図1Bの断面図において現れる出射面36cのような曲線に関して定義され、二階微分可能で、二階の導関数が連続であるが、二階の導関数の符号が変化する点である。変曲点は3次元空間では接平面の角度の増減が入れ替わる点である。例えばロジスティック曲線やゴンベルツ曲線のようなS字型カーブが断面図に含まれていてもよい。
【0022】
図1Bに示すように、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eは、面状発光素子91eの発光面の中心から出射する光に対して、天井部42eの中央の入射点T0を通って出射面36cの中央領域36Ccの第1出射点E0から出射する光の照射角θillumと、側壁43eに近い天井部42eの入射点T13,T14を通って中央領域36Ccの第2出射点E13,E14から出射する光の照射角θillumの差を10度以内の第1照射角範囲となるように、第1出射点E0及び第2出射点E13,E14における湾曲面に対する接平面の角度を設定されている。なお、「照射角θillum」は、面状発光素子91eの発光面の法線方向からの傾きで定義される。面状発光素子91eの発光面の中心を通る発光面の法線方向を、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eの光軸としているので、「照射角θillum」は光軸からの傾斜角と同義である。「曲率ベクトル」は「接線ベクトル」を微分することで求められ、「曲率」は曲率ベクトルの絶対値である。又曲率ベクトルは出射点における出射面36cの法線ベクトルであり、接線ベクトルに直交する。
【0023】
簡単化のためにバルク型レンズ1eの3次元構造を、図1Bに示した断面図上の2次元構造で光路を設計するとする。図1Bに示した2次元構造の表現において、出射面36cの接線方向を指す単位ベクトルをT、出射面36cの主法線方向を指す単位ベクトルをN、出射面36cの従法線方向を指す単位ベクトルをBとすると、よく知られているように、フレネ=セレの公式は、以下の式(4)で表される。
【数1】

式(4)で、d/ds は、出射面36cの弧長についての微分を表し、κは出射面36cの曲率、τは出射面36cの捩率(れいりつ)を表す。捩率は、図1Bに単純化した出射面36cを示す平面曲線における曲率の空間版に相当する。
【0024】
なお、従法線ベクトルBは、接線ベクトルTと主法線ベクトルの外積である:

B=T×N ……(5)

フレネ=セレの公式から、天井部42eの中央の入射点T0を通って出射面36cの中央領域36Ccの第1出射点E0から出射する光の照射角θillumと、側壁43eに近い天井部42eの入射点T13,T14を通って中央領域36Ccの第2出射点E13,E14から出射する光の照射角θillumの差を10度以内の第1照射角範囲とすることは、第1出射点E0及び第2出射点E13,E14における中央領域36Ccの曲率半径を設計することになる。
【0025】
又、側壁43eの最上部側の入射点S11,S12から入射し後方外壁面44eの第1反射点B11,B12で反射して出射面36cの周辺領域36Coの第3出射点E17,E18から出射する光の照射角θillumと、側壁43eの天井部42eから離れた位置の入射点S13,S14から入射した光が後方外壁面44eの第2反射点B13,B14で反射して周辺領域36Coの第4出射点E15,E16から出射する照射角θillumの差が10度以内の第2照射角範囲となるように、第3出射点E17,E18及び第4出射点E15,E16における湾曲面に対する接平面の角度と、第1及び第2反射点B11,B12,B13,B14における後方反射面44に対する接平面の角度と、必要に応じて、側壁43eを構成する直線状の母線の傾斜角が設定されている。フレネ=セレの公式を考慮すると、このことは、第3出射点E17,E18及び第4出射点E15,E16における中央領域36Ccの曲率半径及び第1及び第2反射点B11,B12,B13,B14における後方反射面44の曲率半径を設計することになる。更に、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eでは、第1照射角範囲と第2照射角範囲を同一になるように設定される。
【0026】
図1Aに示すように、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eに収納される面状発光素子91eは素子実装基板92eの上に搭載され、素子実装基板92eは、素子実装基板92eよりも大面積のプリント基板93eの上に搭載されている。プリント基板93eは、プリント基板93eよりも大面積の金属板94eの上に搭載され、プリント基板93eと金属板94eの積層構造をなしている。第1実施形態に係るバルク型レンズ1eは、バルク型レンズ1eの左側に突出し、バルク型レンズ1eの光伝送部39eと一体化している第1固定用足場95eと、バルク型レンズ1eの右側に突出し、バルク型レンズ1eの光伝送部39eと一体化している第2固定用足場96eを有している。第1固定用足場95e及び第2固定用足場96eは、それぞれ後方外壁面44eと出射面36cの間で接続されている。
【0027】
第1固定用足場95e及び第2固定用足場96eは、それぞれ四角柱の形状をなしている。第1固定用足場95e及び第2固定用足場96eを、動物のワニの両足に例えると、ワニの胴に相当する塊状の光伝送部39eが、第1固定用足場95e及び第2固定用足場96eに支えられ浮き上がった構造に擬制できる。第1固定用足場95eの中央には、四角柱の柱軸方向に貫通する円筒状の第1貫通孔97eが開孔され、第2固定用足場96eの中央にも、第1貫通孔97eと平行に貫通する円筒状の第2貫通孔98eが開孔されている。プリント基板93eと金属板94eとの積層構造は、第1貫通孔97e及び第2貫通孔98eに対応する2つの位置に、それぞれ貫通孔が開孔されている。第1貫通孔97e及び第1貫通孔97eに連続するプリント基板93eと金属板94eの左側の貫通孔に、ビス等の固定具を貫通させ、第2貫通孔98e及び第2貫通孔98に連続するプリント基板93eと金属板94eの右側の貫通孔にも固定具を貫通させることにより、バルク型レンズ1eは、プリント基板93eを介して金属板94eにワニ型の固定がされる。
【0028】
図1Dは、面状発光素子91eの主発光部を説明する図であり、上面から光が放出されるLEDの構成の一例を示す。図1Dに例示した面状発光素子91eは、たとえばGaAs基板918上に形成されたバッファ層917と、スペーサ層916と、n型コンタクト層915と、n型バリア層914と、活性層913と、p型バリア層912と、p型コンタクト層911とを備えている。p型コンタクト層911の上面からn型コンタクト層915の中央付近に至るまでの側部がたとえばメサエッチングなどの手段により除去されており、それにより露出させられたn型コンタクト層915の上面にn型電極922が、p型コンタクト層911の上面にp型電極921がそれぞれ設けられている。
【0029】
図1Dに示すように構成された面状発光素子91eにおいては、p型コンタクト層911の上面におけるp型電極921の開口部が面状の発光面をなし、図1A及び図1Bに示した光路66-1,66-2,66-3,66-4,……の光が、発光面上に定義される多数(無限数)の発光点から放出される。図1Dに示した例で説明すれば、p型電極921の開口部に露出した発光面が、「面状発光素子91eの主発光部」の一例となるが、図1Dに示す構造に限定されるものではない。白色LEDの場合は、図1Dのp型電極921の開口部に露出した発光面の上に、更に蛍光剤が塗布、若しくは蛍光剤の層が構成される。この蛍光剤の上面が発光面となる。このような白色LEDでは、蛍光剤とこの蛍光剤を収納する容器の上部端部であって、発光面となる蛍光剤を額縁状に囲む枠の部分が、「面状発光素子91eの主発光部」の他の一例になる。
【0030】
バルク型レンズ1eの凹部(42e,43e)の天井部42eは、凸レンズ状であると、光軸方向への集光性が高くなり、より広い発光角θradの面状発光素子91eからの光を、バルク型レンズ1eから小さい照射角θillumで出射できる。面状発光素子91eからの発光角θradの大きな光では天井部42eでの反射率が高くなる。このため、面状発光素子91eの発光面の面積が大きい場合は、中心発光点から距離dだけずれた位置を発光点とする光の影響も大きくなる。一方、従来のバルク型レンズの凹部の天井部が凹レンズ状であると、面状発光素子91eのより多くの発光角θradの光を、バルク型レンズの出射面方向に屈折させて入射することが出来る。しかし、小さい照射角θillumでバルク型レンズのから出射することが出来るのは、面状発光素子91eからの、より狭い発光角θradの光だけとなる。
【0031】
第1実施形態に係るバルク型レンズ1eのように、面状発光素子91eからの発光角θradの大きい光は凹部(42e,43e)の側壁43eから入射してバルク型レンズ1eの後方外壁面44eで反射させて、バルク型レンズ1eの出射面36cから出射する。後方外壁面44eで反射させる方式のバルク型レンズ1eでは、面状発光素子91eから出射するほぼすべての光を、狭い照射角θillumで出射させることが出来るので、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eでは、凹部の側壁43eは設計が容易な母線が直線である2次曲面が好ましい。凹部の天井部42eの外形をなす曲線上のすべての点を通り,一定直線に平行なすべての母線によってつくられる2次曲面 (線織面 )は柱面である。凹部の天井部42eの外形をなす曲線上のすべての点と,凹部の天井部42eの上にない一定点とを結んだすべての母線によってつくられる2次曲面 (線織面)は錐面である。
【0032】
主発光部を収納する凹部(42e,43e)は、後述する図7及び図10に示したように円筒形もしくは円錐台の形状を基本とする。しかし、円筒形もしくは円錐台は例示であり、円筒形もしくは円錐台に限定されるものではない。例えば、設計が複雑化することをいとわなければ、円筒の側面の母線が直線でないように設定してもよい。或いは、円筒や円錐台の上面を、曲率半径の大きな湾曲面状にする等の変形例も可能である。このように、円筒形もしくは円錐台の基本形状に種々のトポロジを加える変形も可能ではあるが、円筒形もしくは円錐台を変形する際に曲率半径の小さな湾曲面状の変形にする場合は、光路の設計が困難になることに留意が必要である。
【0033】
第1実施形態に係るバルク型レンズ1eの設計をより容易にするためには、凹部の側壁43eを3面以上の複数の平面で構成してもよい。側壁43eが、4つの平面からなるときは、凹部(42e,43e)は直方体になる。複数の平面の数が20面以上の多数の面になってくると円柱面に近づいてくる。凹部の側壁43eは、入射面での屈折角が大きい方がバルク型レンズ1eの後方外壁面44dの直径を小さく出来る。凹部の天井部42eと側壁43eとのなす角が、90度より大きくなると、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eの金型での製作が難しくなる。このため、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eでは、光軸とほぼ並行の直線状の母線の方向とし、凹部(42e,43e)を円筒状とすることが好ましい。
【0034】
凹部(42e,43e)が円筒状の場合、例えば、凹部の天井部42eの直径は6mm、側壁の高さは3mm、凹部の天井部42eから出射面36の頂部までの高さ15mm、面状発光素子91eの発光面から凹部の天井部42eまでの距離が3mm程度の値で設計できる。出射面36cと後方外壁面44eとを接続する光学媒体としては、例えば光学用アクリル樹脂が採用可能である。ただし、光学媒体は透明であれば何でも良い。例えば、ポリカーボネートは耐熱性に優れており、ガラスは耐熱性も信頼性も優れているので、ポリカーボネートやガラス等も第1実施形態に係るバルク型レンズ1eの光学媒体として好適な材料である。以上のとおり、第1実施形態に係るバルク型レンズ及び発光体によれば、発光面の面積の大きい面状発光素子の発光面の大きさを効率良く使うことが可能であり、中心発光点から離れた端部発光点等の位置から発光する光の影響を少なくし、狭い照射角で集光効率を高くし、且つ広い照射面積を均一性が優れた光強度分布で効率良く照明できるコンパクトな構造が提供できる。
【0035】
=第1実施形態に係るバルク型レンズの設計方法=
面状発光素子91eの発光面の中心から出射する光に対して、天井部42eの中央の入射点T0を通って出射面36cの中央領域36Ccの第1出射点E0から出射する光の照射角θillumと、側壁43eに近い天井部42eの入射点T13,T14を通って中央領域36Ccの第2出射点E13,E14から出射する光の照射角θillumの差を10度以内の第1照射角範囲となるようにするためには、幾何光学上の作図や、光学シミュレータを用いた自動設計等により、第1出射点E0及び第2出射点E13,E14における湾曲面に対する接平面の角度を決めればよい。例えば、幾何光学を用いた作図を試行錯誤するヒューリスティックな方法や、量子計算機による揺らぎを付与した光学シミュレータ等の種々の手法で、接平面の角度を決めることが可能である。
【0036】
又、側壁43eの最上部側の入射点S11,S12から入射し後方外壁面44eで反射して出射面36cの周辺領域36Coの第3出射点E17,E18から出射する光の照射角θillumと、側壁43eの天井部42eから離れた位置の入射点S13,S14から入射した光が後方外壁面44eで反射して周辺領域36Coの第4出射点E15,E16から出射する照射角θillumの差が10度以内の第2照射角範囲となるようにするのも、幾何光学上の作図や、光学シミュレータを用い、第3出射点E17,E18及び第4出射点E15,E16における湾曲面に対する接平面の角度と、第1及び第2反射点B11,B12,B13,B14における後方反射面44の接平面の角度とを設計すればよい。場合によっては、必要に応じて、側壁43eを構成する直線状の母線の傾斜角も設計すればよい。
【0037】
例えば、図1Eのフローチャートに示すように、まずステップS101において、出射面36cと、この出射面36cに接する光伝送部39eと、この光伝送部39eに接する後方外壁面44eと、光伝送部39eの内部に設けられた天井部42e及びこの天井部42eに接続する側壁43eで構成され、主発光部を収納する凹部(42e,43e)を備える構造の初期設計外形線を描く。図1Eのフローチャートでは、簡略化のため、凹部(42e,43e)の天井部42eと側壁43eとは直交し、側壁43eの母線が天井部42eとなす角度は固定であるとして、説明する。図1Eのフローチャートで省略した側壁43eの母線が天井部42eとなす角度を変更する工程が加わる場合は、設計の自由度が増大するが、上述したように製造工程が複雑化する。次に、ステップS102において、第1照射角範囲と第2照射角範囲の数値を入力する。第1照射角範囲と第2照射角範囲の値は、互いにほぼ同一であることが望ましいが、設計仕様に要求される条件によっては、2~5度の差があっても構わない。次に、ステップS103において、凹部(42e,43e)の内部に面状発光素子91eを挿入し、凹部(42e,43e)と面状発光素子91eとの相対位置を決定する。
【0038】
ステップS103で凹部(42e,43e)と面状発光素子91eとの相対位置が決定されると、ステップS104において、天井部42eの入射点T0,T11,T12,T13,T14や側壁43eの入射点S11,S12,S13,S14を凹部(42e,43e)への入力位置が決定される。更に、側壁43eの最上部側の入射点S11,S12から入射して後方外壁面44eに到達し、後方外壁面44eで反射する光の起点となる第1反射点B11,B12の位置を決定する。ステップS104においては、同時に、天井部42eから離れた位置の入射点S13,S14から入射した光が後方外壁面44eに到達し、後方外壁面44eで反射する光の起点となる第2反射点B13,B14の位置が決定される。その後、ステップS105において、第1反射点B11,B12で反射した光、及び第2反射点B13,B14で反射した光が、共に周辺領域36Coに到達するように、第1及び第2反射点B11,B12,B13,B14における後方反射面44の曲率を、それぞれ決定する。ステップS105で「曲率を決定する」ということは、数学的には曲率半径を決定すること、或いは第1及び第2反射点B11,B12,B13,B14における後方反射面44への接平面の角度を決定することと等価である。
【0039】
そして、ステップS106において、第1出射点E0から出射する光の照射角θillumと、第2出射点E13,E14から出射する光の照射角θillumの差が10度以内の第1照射角範囲となるように、スネルの法則を用いて、第1出射点E0及び第2出射点E13,E14における中央領域36Ccの曲率を決定する。ステップS106で中央領域36Ccの「曲率を決定する」ということは、数学的には曲率半径を決定すること、中央領域36Ccの接平面の角度を決定することと等価である。なお、スネルの法則を用いて、第1出射点E0及び第2出射点E13,E14における中央領域36Ccの曲率を決定するということは、曲率は屈折率の関数であるので、光伝送部39eを構成する光学媒体に不均一に不純物を添加して、光伝送部39eの内部に屈折率の分布を形成し、この屈折率の分布の効果により、照射角θillumを制御してもよい。更にステップS107において、第3出射点E17,E18から出射する光の照射角θillumと、第4出射点E15,E16から出射する照射角θillumの差が10度以内の第2照射角範囲となるように、スネルの法則を用いて、第3出射点E17,E18及び第4出射点E15,E16における周辺領域36Coの曲率を決定する。
【0040】
なお、スネルの法則を用いて、第3出射点E17,E18及び第4出射点E15,E16における周辺領域36Coの曲率を決定するということは、光伝送部39eを構成する光学媒体に不均一に不純物を添加して、光伝送部39eの内部に屈折率の分布を形成し、この屈折率の分布の効果により、照射角θillumを制御してもよい。ステップS107で周辺領域36Coの「曲率を決定する」ということは、数学的には曲率半径を決定すること、周辺領域36Coの接平面の角度を決定することと等価である。
【0041】
その後、ステップS108において、ステップS106において決定された中央領域36Ccの曲率とステップS107において決定された周辺領域36Coの曲率が連続するか否かを、確認する。中央領域36Ccの曲率と周辺領域36Coの曲率が連続しない場合は、ステップS111を経由してステップS105に戻り、第1及び第2反射点B11,B12,B13,B14における後方反射面44の代替え案を決定し、この代替え案でステップS106の中央領域36Ccの曲率及びステップS107における周辺領域36Coの曲率の代替え案を探索する。ステップS108→ステップS111→ステップS115のループを、中央領域36Ccの曲率と周辺領域36Coの曲率が連続になるまで繰り返す。
【0042】
しかし、ステップS108→ステップS111→ステップS115のループの処理が一定回数繰り返してもステップS108において、中央領域36Ccの曲率と周辺領域36Coの曲率が連続する条件が確認されないときは、ステップS112を経由してステップS103に戻る。即ちステップS111では、ステップS108→ステップS111→ステップS105のループの処理回数が、あらかじめ設定した第1繰返最大数Nmax1に到達したかを計数し、第1繰返最大数Nmax1に到達したと判断されると、新たな分岐ループによってステップS103に戻る。そして、ステップS103で凹部(42e,43e)と面状発光素子91eとの新たな相対位置を代替え案として決定し、ステップS103→ステップS104→ステップS105→ステップS106→ステップS107→ステップS108の処理を繰り返す。
【0043】
ステップS108→ステップS111→ステップS112→ステップS103のループの処理を、一定回数繰り返してもステップS108において、中央領域36Ccの曲率と周辺領域36Coの曲率が連続する条件が確認されないときは、ステップS112を経由してステップS102に戻る。即ちステップS112では、ステップS108→ステップS111→→ステップS112→ステップS103のループの処理回数が、あらかじめ設定した第2繰返最大数Nmax2に到達したかを計数し、第2繰返最大数Nmax2に到達したと判断されると、更に新たな分岐ループによってステップS102に戻る。ステップS102では、第1照射角範囲と第2照射角範囲の数値を10度以内で再入力すればよい。ステップS102で、最初に第1照射角範囲と第2照射角範囲の数値を3度以内等厳格な値を入力した場合は、ループの処理を繰り返しても中央領域36Ccの曲率と周辺領域36Coの曲率が連続にならない場合がある。このような場合は、ステップS102で、第1照射角範囲と第2照射角範囲の数値を10度以内のより緩やかな値に再設定すればよい。
【0044】
又、第1照射角範囲と第2照射角範囲の値を完全に同一に設定した場合は、何度もループの処理を繰り返しても、ステップS108で中央領域36Ccの曲率と周辺領域36Coの曲率が連続にならない可能性が高くなる。このような場合は、ステップS102で第1照射角範囲と第2照射角範囲の値の一致の度合いが緩やかな条件、例えば2~5度の差があるように緩和すればよい。即ち、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eの設計における「第1照射角範囲と第2照射角範囲が同一」とは、第1照射角範囲と第2照射角範囲との間に、2~5度の差を含むような条件等の、「実質的な同一」若しくは「同一と均等」の場合を含む意味である。なお、均一な屈折率分布の条件下で、ステップS108で中央領域36Ccの曲率と周辺領域36Coの曲率が連続にならない場合は、伝送部39eの屈折率の分布を不均一にして調整する方法もある。即ち、スネルの法則は屈折率に依存するので、光学媒体の特定の領域に局所的に不純物を添加する等により、光伝送部39eの内部に屈折率の分布を形成して、照射角θillumを調整してもよい。ステップS108において、中央領域36Ccの曲率と周辺領域36Coの曲が連続することが確認されたら、ステップS109において、出射面36cと後方外壁面44eに囲まれた塊状光伝送部39e以外の構造を決定すれば、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eの設計が完了する。以上のとおり、第1実施形態に係るバルク型レンズの設計方法によれば、発光面の面積の大きい面状発光素子の発光面の大きさを効率良く使うことが可能であり、中心発光点から離れた端部発光点等の位置から発光する光の影響を少なくし、狭い照射角で集光効率を高くし、且つ広い照射面積を均一性が優れた光強度分布で効率良く照明できるコンパクトな構造が設計できる。
【0045】
=第1実施形態に係るバルク型レンズの光学設計の実施例=
既に説明したとおり、第1照射角範囲と第2照射角範囲は10度以内であればよいが、より好ましい例として、第1照射角範囲と第2照射角範囲を8度以内とする場合を、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eの設計の実施例として、以下に説明する。なお、既に説明したように、面状発光素子91eの発光面の中心を通る発光面の法線方向を、バルク型レンズ1eの「光軸」と定義して、実施例を説明する。上述したように、凹部の天井部42eの直径を6mm、側壁の高さを3mm、面状発光素子91eの発光面から天井部42eまでの距離を3mmとすると、光軸上に位置する面状発光素子91eの発光面の中央(中心点)に位置する発光点(以下において単に「中心発光点」と略記する。)から発光角θrad=約±45度以内の光は、図1Bに示したように、天井部42eの入射点T0,T11,T12,T13,T14から入射する。ここで「発光角θrad」は照射角θillumと同様に、面状発光素子91eの発光面の法線方向を基準にして測られるものとする。又、中心発光点からの発光角θrad=約±45度以上の光は、図1Bに示したように、側壁43eの入射点S11,S12,S13,S14から入射する。入射点T0,T11,T12,T13,T14から入射した光は出射面36cの中央領域36Ccから出射し、入射点S11,S12,S13,S14から入射した光は、後方外壁面44eで反射し、出射面36cの周辺領域36Coから出射する。
【0046】
図1A及び図1Bに光路66-1として示したように、中心発光点からの発光角θrad=約0度で放出される光は、バルク型レンズ1eの出射面36cから照射角θillum=0度で出射する。図1A及び図1Bには角度を明示していないが、図1Eに示した手順に従い、中心発光点から、45度より小さいが45度に比較的近い発光角θradで凹部の天井部42eから入射した光のバルク型レンズ1eからの照射角θillumは、約8度となるようにバルク型レンズ1eの出射面36cの形状を設計できる。一方、中心発光点から、45度より大きいが45度に比較的近い発光角θradで凹部の側壁43eから入射し、バルク型レンズ1eの後方外壁面44eで反射した光のバルク型レンズ1eからの照射角θillumを、約0度となるように、バルク型レンズ1eの出射面36cとバルク型レンズ1eの後方外壁面44eの形状を設計できる。又、中心発光点から90度よりも小さいが90度に比較的近い大きな発光角θradで凹部の側壁43eから入射してバルク型レンズ1eの後方外壁面44eで反射した光のバルク型レンズ1eからの照射角θillumを、約8度となるようにバルク型レンズ1eの出射面36cとバルク型レンズ1eの後方外壁面44eの形状を設計できる。
【0047】
天井部42eから入射する中心発光点からの発光角θrad=約0~45度で放出される光は、バルク型レンズ1eからの照射角θillumが、約0度から約8度の範囲で徐々に変化している。面状発光素子91eから発光角θrad=約45~約90度で放出される光は、天井部42eに近い入射点S11,S12からから入射した光路と、天井部42eから遠い入射点S13,S14からから入射した光路とが、周辺領域36Coにおける出射点の位置が、光軸からの距離に関して逆転している。周辺領域36Coにおいて、光軸の位置に近い第4出射点E15,E16を有するのは、発光角θradが90度より小さいが約90度に近い光である。図1Bにおいて、第4出射点E15,E16から出射する光の照射角θillum=約8度である。発光角θradが45度より大きいが、約45度に比較的近い発光角θradで側壁43eから入射した光が出射する第3出射点E17,E18の位置は、最も光軸から離れている。第3出射点E17,E18から出射する光の照射角θillum=約0度である。したがって、図1A及び図1Bにから分かるように、面状発光素子91eから発光角θrad=約45~約90度で放出される光に関しても、周辺領域36Coからの照射角θillum=約8度から0度まで範囲で徐々に変化している。
【0048】
面発光LEDを収納した従来のバルク型レンズから照射される光は、従来のバルク型レンズからの照射角θillumが大きくなると、ほぼ照射角θillumの余弦関数で照射光強度が低下する。更に、面発光LEDを収納した従来のバルク型レンズと照射位置の距離の2乗に反比例する。このため、従来のバルク型レンズから照射される光が均一な照度分布を持つようにするためには、照射光の強度分布の補正が必要になる。例えば、面発光LEDの発光面からの発光角θradに対する、従来のバルク型レンズの照射角θillumの変化の割合を、発光面からの発光角θradの余弦関数にほぼ比例させて小さくすると、従来のバルク型レンズからの照度分布がより均一になる。
【0049】
照射角θillum=±10度の従来のバルク型レンズで、発光面からの発光角θrad=0度、5度、10度、15度、20度、25度、30度、35度、40度、45度と変化した場合、対応する従来のバルク型レンズからの光の照射角θillumの変化を、発光面からの発光角θradの余弦関数にほぼ比例させることができる。発光角θradの余弦関数にほぼ比例させた場合、従来のバルク型レンズからの照射角θillum=0度、1.3度、2.5度、3.7度、4.9度、6.0度、7.1度、8.2度、9.1度、10度と、それぞれなる。第1実施形態に係るバルク型レンズ1eによれば、この従来のバルク型レンズに対する補正例と同じような手法で、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eからの照射角θillumが補正されている。
【0050】
この様に側壁43e近くの天井部42eから入射した光が中央領域36Ccから出射する照射角θillum1と、天井部42eから離れた位置の側壁43eから入射した光が後方外壁面44eで反射して周辺領域36Coから出射する照射角θillum2をほぼ同じ角度とすると、天井部42eから入射した光の通る中央領域36Ccの部分と側壁43eから入射した光の通る周辺領域36Coの部分が滑らかに繋がった形状にすることが出来る。また、発光角θrad=約0~45度の光が、第1照射角範囲内の照射角θillum=0~8度、発光角θrad=約45~約90度の光が第2照射角範囲内の照射角θillum=0~8度で出射し、第1照射角範囲と第2照射角範囲が重なっているので、バルク型レンズ1eの照射角θillumと光強度分布の設計が容易である。
【0051】
第1実施形態に係るバルク型レンズ1eによれば、発光面からの発光角θrad=0度、10度、20度、30度、40度、50度、60度、70度、80度の場合において、それぞれの照射角θillum=約0度、2度、4度、5.5度、7度、2度、4.5度、7度、8度に設計できる。第1実施形態に係るバルク型レンズ1eによれば、後方外壁面44eの反射はすべて全反射条件となったが、全反射条件にならない場合は、鏡面反射処理が必要になる。また、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eのような後方外壁面44dの反射を利用するバルク型レンズでは、面状発光素子91eとバルク型レンズ1eの光軸及び高さの位置を合わせて固定するのが難しい。しかし、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eには、光伝送部39eと一体化している第1固定用足場95e及び第2固定用足場96eが設けられている。第1固定用足場95eには第1貫通孔97eが開孔され、第2固定用足場96eには第2貫通孔98eが開孔されているので、固定用ネジを用いて、設計条件の位置に容易にバルク型レンズ1eを固定できる。
【0052】
=中心発光点からずれた位置での発光=
第1実施形態に係るバルク型レンズ1eにおいて、面状発光素子91eの中心発光点から距離dだけずれた位置を発光点とする場合の光路の軌跡を図2に示す。一般的な3Wクラスの照明用面状LEDを、面状発光素子91eとすると、中心発光点から距離dだけずれた位置を発光点とする光は、最大ずれ距離dmax=±0.8mmとした場合には、照射角θillumは片側で約3度広くなる。第1実施形態に係るバルク型レンズ1eの光軸上面状発光素子91eの場合の片側照射角範囲Δθillum=±8度に設計できるので、3Wクラスの照明用面状LEDを、面状発光素子91eとして実装した場合の片側照射角範囲Δillum=約±11度とすると、照射角の両側拡がり幅は約22度になると予想される。
【0053】
図2を用いて、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eにおいて、面状発光素子91eの中心発光点から距離dだけずれた位置を発光点とする場合の光路を検討する。第1実施形態に係るバルク型レンズ1eにおいて、中心発光点から距離d=-0.8mmだけずれた左側端部の位置の発光点から放出された光は、上記の実施例で採用した、天井部42eの直径=6mm、側壁の高さ=3mm、発光面から天井部42eまでの距離=3mmの境界条件においては、面状発光素子91eの左側端部から発光角θrad=-35~+50度で放出された光は、図2に示すように、天井部42eからバルク型レンズ1eに入射する。
【0054】
一方、面状発光素子91eの左側端部の発光点から発光角θrad=+50以上の大きな発光角θradで放出された光は、図2に示すように、右側の側壁43eからバルク型レンズ1eに入射する。面状発光素子91eの左側端部の発光点から発光角θrad=-35以上の大きな発光角θradで放出された光は、左側の側壁43eからバルク型レンズ1eに入射する。左側端部の発光点から発光角θrad=-80度、-70度、-60度、-50度、-40度、-30度、-20度、-10度、0度、+10度、+20度、+30度、+40度、+50度、+60度、+70度、+80度で放出された光の照射角θillum=約-12.5度、-12度、-12度、-8.5度、-4度、-2度、-0.5度、1度、3度、5度、7度、9度、10.5度、12度、-1度、+0.5度、+3.5度となる。
【0055】
図2に示すように、中心発光点から距離dだけずれた位置を発光点とする光は、ずれd=±0.8mmの影響で照射角θillumが両側にそれぞれ約±4度広がる。よって、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eにおいて、中心発光点から距離dだけずれた位置を発光点とする光は、片側照射角範囲Δθillum=約±12度となり、全体として、照射角の両側拡がり幅は約24度となる。中心発光点から距離dだけずれた位置を発光点とする光による照射角範囲Δθillumは、面状発光素子91eからの発光角θradの大きな光では大きくなっている。しかしながら、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eによれば、後方外壁面44d、中央領域36Cc及び周辺領域36Coの曲率の最適化設計により、中心発光点から距離dだけずれた位置を発光点とする光による照射光は、片側照射角範囲Δθillum=±3度程度まで近づけられると推定できる。
【0056】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係るバルク型レンズ1fは、図3に示すように、LED等の面状発光素子91fの主発光部を収納するバルク型レンズ1fである。第2実施形態に係るバルク型レンズ1fは、 第1実施形態に係るバルク型レンズ1eと同様に、曲率が連続して変化する湾曲面からなる出射面36fと、この出射面36fに接する光学媒体からなるバルク状の光伝送部39fと、この光伝送部39fに接する後方外壁面44fと、光伝送部39fの内部に設けられた天井部42f及びこの天井部42fに接続する側壁43fで構成され、主発光部を収納する凹部(42f,43f)を備える。出射面36fの形状は面状発光素子91fの光軸上の発光点から出射する光を、すべて照射角θillum=0度、即ち、すべての光を光軸方向に集光するように設計されている。第2実施形態に係るバルク型レンズ1fに用いる光学媒体としては、第1形態に係るバルク型レンズ1eで説明したような、光学用アクリル樹脂、ポリカーボネート、ガラス等の種々の透明材料が使用可能である。
【0057】
図3に示すように、面状発光素子91fは素子実装基板92fの上に搭載され、素子実装基板92fはプリント基板93fの上に搭載され、プリント基板93fは金属板94fの上に搭載されている。第2実施形態に係るバルク型レンズ1fは、左側に突出し、バルク型レンズ1fの光伝送部39fと一体化している第1固定用足場95fと、右側に突出し、バルク型レンズ1fの光伝送部39fと一体化している第2固定用足場96fを有している。第1固定用足場95fには第1貫通孔97fが開孔され、第2固定用足場96fには第2貫通孔98fが開孔されている。第1貫通孔97f及び第1貫通孔97fに固定具を貫通させることにより、バルク型レンズ1fはプリント基板93fを介して金属板94fに固定される。
【0058】
なお、第2実施形態に係るバルク型レンズ1fにおいても、面状発光素子91fの発光面の中心を通る発光面の法線方向を、第2実施形態に係るバルク型レンズ1fの「光軸」と定義している。例えば、バルク型レンズ1fの凹部(42f,43f)の天井部42fは直径6mmで平面、側壁43fは高さ3mmで、光軸方向に直線状の母線の方向を揃えた柱面等の構造が採用可能である。面状発光素子91fの発光面から天井部42fまでの距離は、例えば3mmとして、第1実施形態に係るバルク型レンズ1eと同様な寸法が採用可能である。
【0059】
面状発光素子91fの発光面の中心に定義される中心発光点からの発光角θrad=約±45度以内の光は、天井部42fからバルク型レンズ1fの光伝送部39fに入射し、出射面36fの中央領域から出射する。一方、発光角θrad=約±45度以上の光は、側壁43fから光伝送部39fに入射して、後方外壁面44fで反射し、出射面36fの周辺領域から出射する。なお、第2実施形態に係るバルク型レンズ1fの説明において、便宜上後方外壁面44fは全反射条件で設計できる場合について説明するが、全反射条件に限定されるものではない。面状発光素子91fの発光面の光の放出特性や光伝送部39fの外形などの条件により全反射条件にならない場合は、後方外壁面44fに反射率の高い金属膜等の鏡面反射処理を行った構造でも構わない。図3では、中心発光点からの発光角θrad=約0度で放出された光が、光路68-1を経由して、出射面36fから照射角θillum=0度で出射する様子を示している。
【0060】
中心発光点から、45度より小さいが45度に比較的近い発光角θradで天井部42fから入射した光は、バルク型レンズ1fからの照射角θillum=約0度となるように出射面36fの形状が設計されている。面状発光素子91fの発光面から45度よりも大きいが、発光角θrad=約45度となる光は、側壁43fから入射し、後方外壁面44fで反射した光が、出射面36fから照射角θillum=約0度で出射するように、出射面36fの形状が設計されている。発光面から90度よりも小さいが、90度に比較的近い大きな発光角θradで、側壁43fから入射して後方外壁面44fで反射した光りが、出射面36fから照射角θillum=約0度で出射するように、出射面36fの形状が設計されている。
【0061】
第2実施形態に係るバルク型レンズ1fでは、側壁43fの近くの天井部42fから入射した光が出射面36fの中央領域から出射する照射角θillumと、天井部42fから離れた位置の側壁43fから入射した光が、後方外壁面44fで反射して出射面36fの周辺領域から出射する照射角θillumが同じ角度である。このため、第2実施形態に係るバルク型レンズ1fによれば、天井部42fから入射した光の通る出射面36fの中央領域と、側壁43fから入射した光の通る出射面36fの周辺領域が、滑らかに繋がった形状にすることが出来る。
【0062】
第2実施形態に係るバルク型レンズ1fで面状発光素子91fの中心発光点から距離dだけずれた端部の位置を発光点(以下において「端部発光点」という。)とする場合の光路の軌跡を、図4に示す。一般的な3Wクラスの照明用面状LEDの等価的な発光面の直径=約1.6mmである。この3Wクラスの照明用面状LEDの中心発光点から距離d=-0.8mmだけシフトした端部発光点から放出された光は、光路69-1で示したように、照射角θillum=約+3.5度で、出射面36fの中央領域から出射する。即ち、端部発光点から放出される光は、ずれd=±0.8mmを有することにより、照射角θillum=約±3.5度広がることになる。
【0063】
第2実施形態に係るバルク型レンズ1fにおいて、光軸上に発光点がある場は、照射角θillum=0度に設計できる。しかし、光軸上以外に位置する発光点からの放射が寄与する3Wクラス面状LEDを実装した場合の照射角θillum=約±3.5度、出射光の幅は=約7度と予想される。第2実施形態に係るバルク型レンズ1fにおいて、d=0.8mmの端部発光点から放出された光の場合、発光角θrad=-35~+50度以内で放出される光は天井部42fからバルク型レンズ1fに入射する。発光角θrad=-35~+50度以上の大きな発光角θrad=-35~+50度の光は、側壁43fからバルク型レンズ1fに入射する。
【0064】
発光角θrad=-80度、-70度、-60度、-50度、-40度、-30度、-20度、-10度、0度、+10度、+20度、+30度、+40度、+50度、+60度、+70度、+80度で放出された光は、それぞれ照射角θillum=約-5.5度、-8度、-8度、-6度、-4.5度、5度、4.5度、3.5度、3.5度、3.5度、3.5度、4度、5度、5.5度、-6度、-8度、-13度となる。距離dだけずれた端部発光点から放出される光は、ずれd=±0.8mmの影響で発光角θradが小さい光で=約±5度、発光角θradが大きい光では、最大約±8度程度、照射角θillumが広くなった。距離dだけずれた端部発光点から放出される光による照射角θillumの広がりは面状発光素子91fからの発光角θradの大きな光で大きくなる。しかし、後方外壁面44dと出射面36fの形状の最適化設計により、距離dだけずれた端部発光点から放出される光による照射角θillumの広がりを、±3.5度に近づけることが可能である。
【0065】
重複する説明を省略するが、第2実施形態に係るバルク型レンズは、図1Eに示したフローチャートと同様な手順で設計できる。第2実施形態に係るバルク型レンズ、発光体及びバルク型レンズの設計方法によれば、発光面の面積の大きい面状発光素子の発光面の大きさを効率良く使うことが可能であり、コンパクトな構造により中心発光点から離れた端部発光点等の位置から発光する光の影響を少なくし、狭い照射角で集光効率を高くし、且つ広い照射面積を均一性が優れた光強度分布で効率良く照明できる。
【0066】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係るバルク型レンズ1gは、図5及び図6に示すように、LFD等の面状発光素子91gの主発光部を収納するバルク型レンズ1gである。第3実施形態に係るバルク型レンズ1gは、 第1及び第2実施形態に係るバルク型レンズ1fと同様に、曲率が連続して変化する湾曲面からなる出射面36gと、この出射面36gに接する光学媒体からなる非対称バルク状の光伝送部39gと、この光伝送部39gに接する後方外壁面44gと、光伝送部39gの内部に設けられた天井部42g及びこの天井部42gに接続する側壁43gで構成され、主発光部を収納する凹部(42g,43g)を備える。「非対称バルク状」とは図5図6の比較から分かるように、光軸に関して非対称のトポロジを有している。ここで、「光軸」とは、第1及び第2実施形態に係るバルク型レンズ1fの定義と同様に、凹部(42g,43g)の内部に収納される面状発光素子91gの発光面の中心を通り、且つ発光面の法線方向となる光伝送部39gの中心線である。第3実施形態に係るバルク型レンズ1gに用いる光学媒体としては、第1形態に係るバルク型レンズ1eで説明したような、光学用アクリル樹脂等を代表とする種々の透明材料が使用可能である。
【0067】
上記のように定義した光軸をZ軸とし、Z軸に直交するX軸及びY軸からなるX-Y-Z座標系で第3実施形態に係るバルク型レンズ1gの光学的な構造を説明する。即ち、Y=0のX軸方向のバルク型レンズ1g断面における光路の軌跡が図5、X=0のY軸方向のバルク型レンズ1g断面における光路の軌跡が図6に示される。第3実施形態に係るバルク型レンズ1gは、例えば、光軸上の長さ15mmとすると、以下のような寸法が例示できる。ただし、天井部42gは平面とし、図5及び図6の断面図上では、天井部42gに直交する直線状の母線の方向を有する側壁は円柱面とする。このような仮定の下で、天井部42gは直径6mm、側壁43gの高さは3mm等の寸法で、バルク型レンズ1gを設計できる。
【0068】
図5に示すように、面状発光素子91gは素子実装基板92gの上に搭載され、素子実装基板92gはプリント基板93gの上に搭載されている。プリント基板93gは金属板94gの上に搭載されている。第3実施形態に係るバルク型レンズ1gは、図7に示すように、左側に突出し、バルク型レンズ1gの光伝送部39gと一体化している第1固定用足場95gと、右側に突出し、バルク型レンズ1gの光伝送部39gと一体化している第2固定用足場96gを有している。第1固定用足場95gには第1貫通孔97gが開孔され、第2固定用足場96gには第2貫通孔98gが開孔されている。第1貫通孔97g及び第1貫通孔97gに固定具を貫通させることにより、バルク型レンズ1gはプリント基板93gを介して金属板94gに固定される。
【0069】
第3実施形態に係るバルク型レンズ1gからの光を長方形の形状に照射する場合は、長方形の形状に均一な照度分布を要求されることが多い。例えば、上記の光軸上の長さ=15mm、天井部42gの直径=6mm、側壁43gの高さ=3mmとすると、中心発光点から出た光のX軸方向の照射角θillum=±8度、中心発光点から出た光のY軸方向の照射角θillum=0度に設計できる。発光面が、直径1.8mmの円形(円盤形)の面状発光素子91gでは、第3実施形態に係るバルク型レンズ1gによれば、X方向の照射光拡がり幅=22度、Y方向の照射光拡がり幅=7度となる。なお、発光面の形状は円形に限定される必要はない。ただしピタゴラスの定理から矩形の場合は、対角線長が円の直径に相当する。よって、直径1.8mmの円形の凹部(42g,43g)には、一辺が1.8/1.4=1.3mmの矩形の面状発光素子91gが収納されることになる。1.3mm×1.3mmの矩形の面状発光素子91gの場合は、凹部(42g,43g)の容積効率が悪い他に、光学的特性の均一性の面でも不利になる。X-Y平面上のX軸とY軸の中間方向では、X軸に近づくにつれてY方向の照射角θillumが大きくなる。したがって、長方形の形状に均一な照度分布を実現するためには、X軸に近づくにつれてY方向の出射面36gの曲率が小さくなるように補正する必要がある。
【0070】
図11及び図12に例示したような従来の従来のバルク型レンズでは、面状LED91dからの発光角の小さい光は、天井部42dから入射しての第1出射面33から出射し、発光角の大きい光は天井部42gから入射して後方外壁面44dで反射させてから第2出射面34から出射する。このような、従来のバルク型レンズでは、照射角及び照射光の強度分布の設計が難しい。これに対し、第3実施形態に係るバルク型レンズ1gにおいては、面状発光素子91gの発光中心点から発光する光に対して、天井部42gの中央の入射点を通って出射面36gの中央領域の第1出射点から出射する光の照射角θillumと、側壁43gに近い天井部42gの入射点を通って中央領域の第2出射点から出射する光の照射角θillumの差を10度以内の第1照射角範囲となるように、第1及び第2出射点における湾曲面に対する接平面の角度を設定されている。
【0071】
更に、第3実施形態に係るバルク型レンズ1gにおいては、発光中心点から発光する光に対して、側壁43gの最上部側の入射点から入射し後方外壁面44gで反射して出射面36gの周辺領域の第3出射点から出射する光の照射角θillumと、側壁43gの天井部42gから離れた位置の入射点から入射した光が後方外壁面44gで反射して周辺領域の第4出射点から出射する照射角θillumの差が10度以内の第2照射角範囲となるように、第3及び第4出射点における湾曲面に対する接平面の角度と、第1及び第2反射点における後方外壁面44gの接平面の角度が設定されている。
【0072】
そして、第1照射角範囲と第2照射角範囲が同一にされている。即ち、第3実施形態に係るバルク型レンズ1gにおいては、凹部(42g,43g)の天井部42gを平面にし、側壁43gを天井部42gに垂直な直線状の母線からなる2次曲面にし、天井部42gから入射する光とバルク型レンズ1gの側壁43gから入射した光が出射する際の、照射角θillumがほぼ同じになるように設計されている。したがって、第3実施形態に係るバルク型レンズ1gによれば、距離dだけずれた端部発光点から放出される光の光を含めて光強度設計が容易となり、照明範囲の照度均一性を高くできる。なお、第3実施形態に係るバルク型レンズ1gの説明において、便宜上後方外壁面44gは全反射条件で設計できる場合について説明するが、全反射条件に限定されるものではない。面状発光素子91gの発光面の光の放出特性や光伝送部39gの外形などの条件により全反射条件にならない場合は、後方外壁面44gに反射率の高い金属膜等の鏡面反射処理を行った構造でも構わない。
【0073】
第3実施形態に係るバルク型レンズは、図1Eに示したフローチャートと同様な手順で設計できる。第3実施形態に係るバルク型レンズ、発光体及びバルク型レンズの設計方法によれば、発光面の面積の大きい面状発光素子の発光面の大きさを効率良く使うことが可能であり、コンパクトな構造により中心発光点から離れた端部発光点等の位置から発光する光の影響を少なくし、狭い照射角で集光効率を高くし、且つ広い照射面積を均一性が優れた光強度分布で効率良く照明できる。
【0074】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係るバルク型レンズ1hでは、道路を路肩から照明する場合に好適なレンズについて説明する。第4実施形態に係るバルク型レンズ1hは、図8及び図9に示すように、LFD等の面状発光素子91hの主発光部を収納するバルク型レンズ1hである。第4実施形態に係るバルク型レンズ1hは、 第1及び第2実施形態に係るバルク型レンズ1fと同様に、曲率が連続して変化する湾曲面からなる出射面36hと、この出射面36hに接する光学媒体からなる非対称バルク状の光伝送部39hと、この光伝送部39hに接する後方外壁面44hと、光伝送部39hの内部に設けられた天井部42h及びこの天井部42hに接続する側壁43hで構成され、主発光部を収納する凹部(42h,43h)を備える。第4実施形態に係るバルク型レンズ1hの光学媒体には、第1形態に係るバルク型レンズ1eで説明したような種々の透明材料が使用可能である。
【0075】
第4実施形態に係るバルク型レンズ1gにおいては、面状発光素子91hの発光中心点から発光する光に対して、天井部42hの中央の入射点を通って出射面36hの中央領域の第1出射点から出射する光の照射角θillumと、側壁43hに近い天井部42hの入射点を通って中央領域の第2出射点から出射する光の照射角θillumの差を10度以内の第1照射角範囲となるように、第1及び第2出射点における湾曲面に対する接平面の角度を設定されている。更に、面状発光素子91hの発光中心点から発光する光に対して、側壁43hの最上部側の入射点から入射し後方外壁面44hで反射して出射面36hの周辺領域の第3出射点から出射する光の照射角θillumと、側壁43hの天井部42hから離れた位置の入射点から入射した光が後方外壁面44hで反射して周辺領域の第4出射点から出射する照射角θillumの差が10度以内の第2照射角範囲となるように、第3及び第4出射点における湾曲面に対する接平面の角度と、第1及び第2反射点における後方外壁面44hの接平面の角度が設定されている。そして、第1照射角範囲と第2照射角範囲が同一にされている。
【0076】
図8に示すように、面状発光素子91hは素子実装基板92hの上に搭載され、素子実装基板92hはプリント基板93hの上に搭載されている。プリント基板93hは金属板94hの上に搭載されている。図10に示すように、第4実施形態に係るバルク型レンズ1hは、図10に示すように、左側に突出し、バルク型レンズ1hの光伝送部39hと一体化している第1固定用足場95hと、右側に突出し、バルク型レンズ1hの光伝送部39hと一体化している第2固定用足場96hを有している。第1固定用足場95hには第1貫通孔97hが開孔され、第2固定用足場96hには第2貫通孔98hが開孔されている。第1貫通孔97h及び第1貫通孔97hに固定具を貫通させることにより、バルク型レンズ1hはプリント基板93hを介して金属板94hに固定される。
【0077】
以下に説明するとおり、第4実施形態に係るバルク型レンズ1hの特性を生かすためには、面状発光素子91hに対して光伝送部39hの位置を正確に設置する必要がある。第4実施形態に係るバルク型レンズ1hの光伝送部39hの形状は固定が難しいため、後方外壁面44d(反射面)と出射面36hとの間で、ねじ止め用の第1貫通孔97h及び第2貫通孔98hのある第1固定用足場95h及び第2固定用足場96hの一対を、光伝送部39hに接続した構造となっている。
【0078】
路面照度は、照明器具からの距離の2乗に逆比例し、照明光と路面との角度の正弦関数に比例する。例えば、対向する往路と復路の間に中央分離帯(道路の中央部)がある道路を考える。この道路の路肩から歩道幅1.5m離れた位置に車道(往路)があり、中央分離帯若しくは道路中央線を経て対向する側に車道(復路)があるとの前提で、その車道(往路)の幅=3.5mとする。この場合、路肩から中央分離帯若しくは道路中央線まで1.5+3.5=5mになる。高さ1.1mの照明器具を路肩に設置し、この路肩の照明器具で、中央分離帯若しくは道路中央線までの車道(往路)の路面を照明する場合について説明する。
【0079】
照明器具の道路幅方向の照射光拡がり幅=約24度とし、照明器具の中心(光軸)が、中央分離帯若しくは道路中央線に向かって照明しているとする。この条件では、路肩から1.5m、2m、2.5m、3m、3.5m、4m、4.5m、5mの位置に向かう方向に対する照射角θillumと、その相対光強度は、表1に示すような関係になるので、照射角θillumと照射光の強度分布の設計が難しい。
【表1】

表1において、「相対光強度」とは、路肩から5mの位置にある中央分離帯若しくは道路中央線の位置に向かった方向の光強度を1とし、この1を基準としたときの比率で表した相対的な光強度である。
【0080】
第3実施形態に係るバルク型レンズ1gと同様に、第4実施形態に係るバルク型レンズ1hの「光軸」を、凹部(42h,43h)の内部に収納される面状発光素子91hの発光面の中心を通り、且つ発光面の法線方向となる光伝送部39hの中心線と定義する。そして、この光軸をZ軸とし、Z軸に直交するX軸及びY軸からなるX-Y-Z座標系で第4実施形態に係るバルク型レンズ1hの光学的な構造を説明する。即ち、Y=0のX軸方向のバルク型レンズ1h断面における光路の軌跡が図8、X=0のY軸方向のバルク型レンズ1h断面における光路の軌跡が図9に示される。第4実施形態に係るバルク型レンズ1hは、例えば、光軸上の長さ15mmとすると、以下のような寸法が例示できる。ただし、天井部42hは平面とし、図8及び図9の断面図上では、天井部42hに直交する直線状の母線の方向を有する側壁は円柱面とする。このような仮定の下で、天井部42hは直径6mm、側壁43hの高さは3mm等の寸法で、バルク型レンズ1hを設計できる。
【0081】
まず、光軸上に位置する面状発光素子91hの中央発光点から放出される光のX軸方向の照射光拡がり幅=±20度に設計する。そして、Y軸方向は、+Y方向の照射角θillum=0度、-Y方向の設計照射角θillum=0から-20度まで表1に示したような記光強度分布となるように照射角θillumを設計すると仮定する。+Y方向で照射角θillum=0度に設計できる出射面36hでは、X-Y平面上のX軸方向に近づくほどY軸方向の照射角θillumが広がる。このため、第4実施形態に係るバルク型レンズ1hでは、Y軸方向の出射面36hの曲率が小さくなるように非対称な形状に補正している。
【0082】
発光面が、直径1.8mmの円形(円盤形)の面状発光素子91hの場合では、X軸方向の照射光拡がり幅は、距離dだけずれた端部発光点から放出される光の影響を含めると=約45度になる。Y軸方向の照射光拡がり幅は、発光面が、直径1.8mmの円形の面状発光素子91hにおいて、距離dだけずれた端部発光点から放出される光に起因する光軸付近の照射光拡がり幅=約±3.5度の高輝度領域が存在する他に、Y軸方向に-22.5度まで徐々に光強度が小さくなる光強度漸減領域の加わった光強度分布となる。なお、面状発光素子91hの発光面の形状は、円形に限定される必要はない。ただし、例えば矩形の面状発光素子91hとする場合は、ピタゴラスの定理から、凹部(42h,43h)に隙間が発生し、容積効率が悪くなる他に、光学的特性の均一性の面でも不利になる。
【0083】
第4実施形態に係るバルク型レンズ1hによれば、路肩の高さ1.1mの位置にバルク型レンズ1hを配置し、照射角拡がり幅=7度で照射された高輝度領域が、3.5m車線の遠方となる中央分離帯若しくは道路中央線側に生成されるように光軸を合わせると、かなり均一な路面照度分布が実現できる。更に路面照度分布を均一にするためには、バルク型レンズ1hの高さを高くし、更に直径の大きいバルク型レンズ1hを用いればよい。直径の大きいバルク型レンズ1hを用いることにより、面状発光素子91hの発光面上の距離dだけずれた端部発光点から放出される光による照射角θillumを小さくし、ピーク光強度が更に高くなる設計にすれば良い。
【0084】
路面照度分布を指定値に合わせる場合は、天井部42hを平面にし、側壁43hを直線状の母線が平行な2次曲面にすると設計が容易になる。そして、天井部42hから入射する光と、側壁43hから入射する光の照射角θillumがほぼ同じになるように設計すると、距離dだけずれた端部発光点から放出される光を含めて、光強度設計が容易となる。なお、第4周辺実施形態に係るバルク型レンズ1hの説明において、便宜上後方外壁面44hは全反射条件で設計できる場合について説明したが、全反射条件に限定されるものではない。面状発光素子91hの発光面の光の放出特性や光伝送部39hの外形などの条件により全反射条件にならない場合は、後方外壁面44hに反射率の高い金属膜等の鏡面反射処理を行った構造でも構わない。
【0085】
第4実施形態に係るバルク型レンズは、図1Eに示したフローチャートと同様な手順で設計できる。第4実施形態に係るバルク型レンズ、発光体及びバルク型レンズの設計方法によれば、発光面の面積の大きい面状発光素子の発光面の大きさを効率良く使うことが可能であり、コンパクトな構造により中心発光点から離れた端部発光点等の位置から発光する光の影響を少なくし、狭い照射角で集光効率を高くし、且つ道路照明等の広い照射面積を均一性が優れた光強度分布で効率良く照明できる。
【0086】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1~第4実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、スポーツの屋外競技場、ドーム型競技場を含む室内照明、街路/道路照明などの特に広い面積の照明を必要とする産業の分野で利用できる。
【符号の説明】
【0088】
1e~1h…バルク型レンズ、36c,36f~36h…出射面、36Cc…中央領域、36Co…周辺領域、42e~42h…天井部、43e~43h…側壁、44e~44h…後方外壁面、95e~95h…第1固定用足場、96e~96h…第2固定用足場、97e~97h…第1貫通孔、98e~98h…第2貫通孔

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12