(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】ワーク検査装置およびワーク検査方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/30 20060101AFI20230425BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20230425BHJP
G01N 21/89 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
G01B11/30 A
G01N21/84 E
G01N21/89 Z
(21)【出願番号】P 2020079578
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】有地 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】本多 正彦
(72)【発明者】
【氏名】黒河内 博幸
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 太重
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-205005(JP,A)
【文献】特開2010-281665(JP,A)
【文献】特開2018-204994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/30
G01N 21/84
G01N 21/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを検査するワーク検査装置であって、
上記ワークの被検査面に対して第1方向に相対移動しながら上記被検査面を撮影する撮影部と、
明部と暗部が上記第1方向と直交する第2方向に交互に配列されてなる明暗縞状パターンの照明光を上記被検査面に投光した状態で上記第2方向に沿ってシフトさせる照明部と、
上記撮影部による上記被検査面の撮影で得られた画像に基づいて上記被検査面の欠陥を検出する欠陥検出部と、
を備え、
上記照明部による上記照明光のシフト時に上記明暗縞状パターンの任意の明部が次の明部に置き換わるまでの期間を明暗の1周期としたとき、上記撮影部は、上記1周期の間に上記被検査面における撮像対象範囲を上記第1方向について一部ラップさせながら上記被検査面に対して上記第1方向に連続的に相対移動することによって共通の重なり領域を含む複数の画像を撮影し、
上記欠陥検出部は、上記複数の画像を上記重なり領域の画素毎の輝度の最大値と最小値の差分である輝度差について比較することにより、上記被検査面の各部位のうち上記輝度差が相対的に小さい画素に相当する部位を上記欠陥として検出する、ワーク検査装置。
【請求項2】
上記撮影部は、上記第2方向の画素数が上記第1方向の画素数を上回る帯状の撮像素子を有する、請求項1に記載のワーク検査装置。
【請求項3】
上記照明部は、上記被検査面と対向する発光面に列方向に互いに平行に延びるように設けられた複数のLED発光部を備え、上記複数のLED発光部のうち上記第2方向について1列ごとに点灯と消灯が可能であり、任意の幅の明暗縞状パターンを上記第2方向に沿ってシフトさせるように構成されている、請求項1または2に記載のワーク検査装置。
【請求項4】
ワークを検査するワーク検査方法であって、
上記ワークの被検査面に対して撮影部を第1方向に相対移動させる一方で、明部と暗部が上記第1方向と直交する第2方向に交互に配列されてなる明暗縞状パターンの照明光を照明部によって上記被検査面に投光した状態で上記第2方向に沿ってシフトさせ、
上記照明部による上記照明光のシフト時に上記明暗縞状パターンの任意の明部が次の明部に置き換わるまでの期間を明暗の1周期としたとき、上記1周期の間に上記被検査面における上記撮影部の撮像対象範囲を上記第1方向について一部ラップさせながら上記被検査面に対して上記撮影部を上記第1方向に連続的に相対移動させることによって共通の重なり領域を含む複数の画像を撮影し、
上記撮影部による上記被検査面の撮影で得られた上記複数の画像を上記重なり領域の画素毎の輝度の最大値と最小値の差分である輝度差について比較することにより、上記被検査面の各部位のうち上記輝度差が相対的に小さい画素に相当する部位を欠陥として検出する、ワーク検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、ワーク検査装置の一例である表面欠陥検査装置(以下、単に「検査装置」という。)が開示されている。この検査装置は、コンベアによって搬送ラインを搬送されている車両の被検査面を検査するためのものである。この検査装置によれば、車両の被検査面に所定の明暗縞状パターンの光を照明装置で投光した状態で、被検査面をカメラにより撮影し、その撮影で得られた画像が適宜に処理される。このとき、カメラによる被検査面の撮影によって得られた画像の輝度差に基づいて欠陥を検出しようとしている。
【0003】
下記の特許文献2には、被検物の欠点検査技術が開示されている。この欠点検査技術は、ガラス等の鏡面性または光透過性を有する物体の微小凹凸等の欠点の検査や評価に用いられるものである。この検査技術によれば、平行な回転軸の回りを回転する光源からの光が、被検物の表面で反射され、CCDエリアカメラ等の撮像素子に入力される。光源の周面は黒白のストライプ模様のフィルムで覆われており、撮像素子で撮像された各反射像は、ストライプパターンの位相が徐々にずれていく画像となる。これにより、被検物における微小凹凸等の欠点をほこり等の散乱性欠点と区別して検出しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-79988号公報
【文献】特許第4147682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の検査装置を採用する場合、ワークの静止と移動を繰り返しながらカメラで1箇所あたり1ショットの撮影が行われる。カメラのシャッタ速度を速くしてワークの被検査面を連続撮影すれば、被検査面の撮影に要する時間を短くすることも可能であるが、ワークの検査精度が低いという問題を抱えている。
一方で、特許文献2に記載の欠点検査技術は、ワークの検査精度が高いという点で優れている。しかしながら、この欠点検査技術の場合、カメラで1箇所あたり数ショットの撮影が行われるため、撮影時にワークを静止状態にしなければならない。このため、カメラによるワークの撮影に時間を要するという問題が生じ得る。とりわけ、車両のように被検査面が広いワークを検査対象とするときには、このような問題が顕著になる。かといって、カメラの設置台数を増やすと検査速度を上げることができるが、カメラ自体が高価であるため設置台数を増やし過ぎるとコスト面で不利になる。そこで、この種のワーク検査技術の設計においては、ワークの被検査面の検査精度を低下させることなく検査の高速化を図る技術が求められている。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、ワークを高速且つ高精度で検査するのに有効なワーク検査技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
ワークを検査するワーク検査装置であって、
上記ワークの被検査面に対して第1方向に相対移動しながら上記被検査面を撮影する撮影部と、
明部と暗部が上記第1方向と直交する第2方向に交互に配列されてなる明暗縞状パターンの照明光を上記被検査面に投光した状態で上記第2方向に沿ってシフトさせる照明部と、
上記撮影部による上記被検査面の撮影で得られた画像に基づいて上記被検査面の欠陥を検出する欠陥検出部と、
を備え、
上記照明部による上記照明光のシフト時に上記明暗縞状パターンの任意の明部が次の明部に置き換わるまでの期間を明暗の1周期としたとき、上記撮影部は、上記1周期の間に上記被検査面における撮像対象範囲を上記第1方向について一部ラップさせながら上記被検査面に対して上記第1方向に連続的に相対移動することによって共通の重なり領域を含む複数の画像を撮影し、
上記欠陥検出部は、上記複数の画像を上記重なり領域の画素毎の輝度の最大値と最小値の差分である輝度差について比較することにより、上記被検査面の各部位のうち上記輝度差が相対的に小さい画素に相当する部位を上記欠陥として検出する、ワーク検査装置、にある。
【0008】
本発明の他の態様は、
ワークを検査するワーク検査方法であって、
上記ワークの被検査面に対して撮影部を第1方向に相対移動させる一方で、明部と暗部が上記第1方向と直交する第2方向に交互に配列されてなる明暗縞状パターンの照明光を照明部によって上記被検査面に投光した状態で上記第2方向に沿ってシフトさせ、
上記照明部による上記照明光のシフト時に上記明暗縞状パターンの任意の明部が次の明部に置き換わるまでの期間を明暗の1周期としたとき、上記1周期の間に上記被検査面における上記撮影部の撮像対象範囲を上記第1方向について一部ラップさせながら上記被検査面に対して上記撮影部を上記第1方向に連続的に相対移動させることによって共通の重なり領域を含む複数の画像を撮影し、
上記撮影部による上記被検査面の撮影で得られた上記複数の画像を上記重なり領域の画素毎の輝度の最大値と最小値の差分である輝度差について比較することにより、上記被検査面の各部位のうち上記輝度差が相対的に小さい画素に相当する部位を欠陥として検出する、ワーク検査方法、にある。
【発明の効果】
【0009】
上記の各態様では、ワークの被検査面に対して第1方向に連続的に相対移動する撮影部と、明暗縞状パターンの照明光をワークの被検査面に投光した状態で第1方向と直交する第2方向に沿ってシフトさせる照明部と、を組み合わせて、共通の重なり領域を含む複数の画像を撮影部で撮影する。
【0010】
このとき、撮影部をワークの被検査面に対して連続的に相対移動させて撮影するため、静止と移動を繰り返して被検査面を撮影する場合に比べて撮影に要する時間を短縮でき高速での撮影が可能になる。また、ワークの被検査面の大きさや数が増えたときでも、撮影に使用する撮影部の数を少なく抑えることができる。
【0011】
一方で、明暗縞状パターンの照明光の明暗の1周期の間に撮影部によって共通の重なり領域を含む複数の画像を撮影することによって、重なり領域へ光の当たり方が互いに異なる状態で撮影された複数の画像を得ることができる。そして、各画像について重なり領域の画素毎の輝度差を比較することによって被検査面の欠陥を検出できる。これにより、特定の光の当たり方でのみ撮影された画像からでは検出できないような欠陥も高精度で検出することが可能になる。
【0012】
以上のごとく、上記の各態様によれば、ワークを高速且つ高精度で検査するのに有効なワーク検査技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1中の撮影部の撮像素子を模式的に示す平面図。
【
図4】
図1中の撮影部で撮影される複数の画像の具体例について説明するための図。
【
図5】
図4の複数の画像と照明光の明暗縞状パターンとの関係について説明するための図。
【
図6】ワークの被検査面の欠陥有状態と欠陥無状態のそれぞれについて明暗の1周期の間の輝度の変化を模式的に示す図。
【
図7】実施形態1のワーク検査方法のフローチャートを示す図。
【
図8】実施形態2のワーク検査装置について
図2に対応した図。
【
図9】実施形態3のワーク検査装置について
図3に対応した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0015】
上記のワーク検査装置において、上記撮影部は、上記第2方向の画素数が上記第1方向の画素数を上回る帯状の撮像素子を有するのが好ましい。
【0016】
このワーク検査装置によれば、撮影部の帯状の撮像素子の全体を使用して、ワークの被検査面の複数の画像を得ることができる。
【0017】
上記のワーク検査装置において、上記照明部は、上記被検査面と対向する発光面に列方向に互いに平行に延びるように設けられた複数のLED発光部を備え、上記複数のLED発光部のうち上記第2方向について1列ごとに点灯と消灯が可能であり、任意の幅の明暗縞状パターンを上記第2方向に沿ってシフトさせるように構成されているのが好ましい。
【0018】
このワーク検査装置によれば、照明部の発光面の無駄なスペースが極力無くすように、発光面の全体にわたって複数のLED発光部を配置することによって、照明部の小型化を図ることができる。
【0019】
以下、ワーク検査技術を具現化するための実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
この実施形態を説明するための図面において、特にことわらない限り、ワークに対する撮影部の相対移動方向である第1方向を矢印Xで示し、照明部における照明光のシフト方向である第2方向を矢印Yで示し、照明部の各LEDの列方向である第3方向を矢印Zで示すものとする。
【0021】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1のワーク検査装置(以下、単に「検査装置」という。)10は、ワーク1を検査する装置であり、駆動装置11と、撮影部20と、照明部30と、制御装置40と、を少なくとも備えている。
【0022】
ワーク1の種類や形状は特に限定されないが、照明光の反射を利用して検査を行うことから、反射光を受光し易い光沢のある被検査面を有するものを対象にするのが好ましい。本実施形態では、一例として、光沢のある塗装面を有する車両をワーク1とし、このワーク1の塗装面を被検査面2として塗装検査工程で検査する場合について説明する。
【0023】
駆動装置11は、ワーク1を搬送するためのコンベアであり、制御装置40に電気的に接続されている。この駆動装置11は、制御装置40の駆動制御部42から伝送される制御信号に応じて駆動制御されて、ワーク1を搬送方向Dに概ね一定速度で搬送するように構成されている。
【0024】
撮影部20は、略長方形の撮像素子21を有するカメラであり、制御装置40に電気的に接続されている。この撮影部20は、連結アーム23によって照明部30と連結されており、ワーク1の被検査面2を撮影するために被検査面2に向けて配置されている。
【0025】
撮影部20は、ワーク1の搬送ラインにおいて固定されておりそれ自体は静止しているが、ワーク1が駆動装置11によって搬送方向Dに移動するため、このワーク1の被検査面2に対しては、搬送方向Dの逆方向である第1方向Xに相対移動する。この撮影部20は、第1方向Xに相対移動しながら被検査面2を連続的に撮影するように構成されている。
【0026】
このとき、撮影部20は、被検査面2で反射した反射光を撮像素子21で受光することによって、この撮像素子21で被検査面2の複数の画像Iが撮像される。そして、これら複数の画像Iは、撮影部20から制御装置40に連続的に伝送される。カメラの撮像素子21として、典型的には、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーが採用される。
【0027】
照明部30は、ワーク1の被検査面2に照明光Lを投光するためのものであり、制御装置40に電気的に接続されている。この照明部30は、後述の照明制御部43から伝送される制御信号に応じて、明部Paと暗部Pbが第1方向Xと直交する第2方向Yに交互に配列されてなる明暗縞状パターンPの照明光Lを被検査面2に投光した状態で第2方向Yに沿ってシフトさせるように構成されている。ここでいう「投光」なる態様を「投影」或いは「照射」ともいう。
【0028】
このために、照明部30は、被検査面2と対向する発光面30aに第3方向Zに互いに平行に延びるように設けられた、複数列からなるLED発光部31を備えている。第3方向Zは、第1方向Xに沿った方向でもある。複数列からなるLED発光部31は、1列ごとに点灯と消灯を制御できるため、任意の幅の明部Paと暗部Pbを作ることができると共に、その位置をシフトさせることができる。このシフト制御によれば、明暗縞状パターンPの照明光Lを被検査面2に投光した状態で第2方向Yに沿ってシフトさせることができる。
【0029】
制御装置40は、中央処理部41及び記憶部46を備えている。中央処理部41は、既知のCPU(Central Processing Unit)によって構成され、記憶部46は、既知のメモリによって構成されている。
【0030】
中央処理部41には、駆動装置11を制御するための駆動制御部42と、照明部30の上述のシフト制御を含む各種の制御を実行するための照明制御部43と、撮影部20によって撮影された画像Iの画像処理を行う画像処理部44と、撮影部20によるワーク1の被検査面2の撮影で得られた画像Iに基づいて被検査面2の欠陥3を検出する欠陥検出部45と、が含まれている。
【0031】
記憶部46には、撮影部20が撮影した複数の画像Iを含むデータや、中央処理部41の処理で使用されるプログラムやデータなどが格納される。
【0032】
図2に示されるように、撮影部20は、第2方向Yを横方向としたとき、横方向に細長い形状をなす帯状の撮像素子21を有する。この撮像素子21は、第2方向Yの画素数がmであり、第1方向Xの画素数がn(<m)であり、全画素がY-X座標系によって(0,0)~(m,n)として示される。
【0033】
図3に示されるように、照明部30は、ワーク1の被検査面2に対して傾斜して対向する発光面30aを有し、この発光面30aに複数のLED32が配置されるように構成されている。本実施形態では、照明部30の発光面30aに第3方向Zに延びる6つのLED32が36列で配置されている。このLED32として、典型的には、砲弾型のLEDを使用することができる。
【0034】
本実施形態では、4列分のLED32によって1つ分のLED発光部31が構成されている。このため、第2方向Yについて隣接する2つのLED発光部31,31では、一方の4列分のLED32の全てが点灯して明部Paをなすときに、他方の4列分のLED32の全てが消灯して暗部Pbをなす。そして、各LED発光部31の4列分のLED32の全てが点灯と消灯を繰り返す。
【0035】
図1において、撮影部20は、照明部30による照明光Lのシフト時に、明暗縞状パターンPのシフトによる明暗の1周期の間に、被検査面2における撮像対象範囲22を第1方向Xについて一部ラップさせながら被検査面2に対して第1方向Xに連続的に相対移動することによって共通の重なり領域Aを含む複数(本実施形態では8つ)の画像Iを撮影するように制御される。このときの画像Iの数は特に限定されるものではないが、被検査面2を精度良く検査するためには画像Iの数を増やすのが好ましい。
【0036】
明暗の1周期は、照明部30による照明光Lのシフト時に明暗縞状パターンPの任意の明部Paが次の明部Paに置き換わるまでの期間として、或いは任意の暗部Pbが次の暗部Pbに置き換わるまでの期間として定義される。つまり、明暗の1周期は、明るさの度合いである輝度(「光度」ともいう。)が任意のある時点の状態に一度循環して戻るまでの期間のことをいう。
【0037】
ここで、照明部30の明暗縞状パターンPのシフトによる明暗の1周期の間に、撮影部20によって被検査面2の8つの画像Iを撮影するときの具体例について説明する。なお、撮影部20の撮像素子21の画素数は特に限定されないが、第2方向Yの画素数mが4000[pixel]であり、第1方向Xの画素数nが32[pixel]である撮像素子21を例示するものとする。
【0038】
ワーク1の被検査面2をk回撮影しようとすると、被検査面2において撮像対象範囲22のラップ代となるシフト量Sp[pixel]を、Sp=n/kという関係式に基づいて設定することができる。例えば、被検査面2を8回撮影しようとすると、この関係式に基づいて、撮影間のシフト量Spが4[pixel]に設定される。このシフト量Spによって重なり領域Aの第1方向Xの寸法が定まる。
【0039】
また、撮影部20の撮像素子21のフレームレートをf[フレーム/s]とし分解能をRe[mm/pixel]としたとき、ワーク1の移動速度(即ち、ワーク1に対する撮影部20の相対移動速度)Vは、V=f×Sp×Reという関係式に基づいて設定される。
【0040】
このとき、
図4に示されるように、撮影部20による8回の撮影によって、撮像素子21の第1方向Xの画素数nである32[pixel]に対して4[pixel]だけ段階的にずれた8つの画像Iが連続して得られる。このとき、8つの画像Iは、重なり領域Aへの光の当たり方が互いに異なる状態で撮影された画像である。このため、共通の重なり領域Aに欠陥3が含まれている場合、後述の処理によって欠陥3の検出が可能になる。
【0041】
図4では、1回目の撮影時のNフレーム目の画像Iを画像I(N)としている。同様に、2回目の撮影時の(N+1)フレーム目の画像Iを画像I(N+1)とし、3回目の撮影時の(N+2)フレーム目の画像Iを画像I(N+2)とし、4回目の撮影時の(N+3)フレーム目の画像Iを画像I(N+3)とし、5回目の撮影時の(N+4)フレーム目の画像Iを画像I(N+4)とし、6回目の撮影時の(N+5)フレーム目の画像Iを画像I(N+5)とし、7回目の撮影時の(N+6)フレーム目の画像Iを画像I(N+6)とし、8回目の撮影時の(N+7)フレーム目の画像Iを画像I(N+7)としている。
【0042】
図5に示されるように、照明部30による明暗の1周期の間に、被検査面2の重なり領域Aで互いに重なる8つの画像Iが連続撮影されることになり、このときに重なり領域Aでは投光される照明光Lは輝度が最も高い明るい状態から輝度が最も低い暗い状態までの間で1周期分変化する。このため、各画像Iのうち重なり領域Aの同一位置について各画素の輝度の状態を比較することによって、被検査面2の重なり領域Aに欠陥3が有るか否かを判定することができる。
【0043】
この判定に関して、
図6に示されるように、被検査面2が欠陥3を有する凹凸面である欠陥有状態と、被検査面2が欠陥の無い平滑面4である欠陥無状態と、について重なり領域Aの各画素の輝度の最大値と最小値との差分である輝度差ΔBが比較される。このとき、各画像Iの(0,0)~(m,n)の全画素について輝度差ΔBを算出してその中から重なり領域Aに相当する切出し画像Iaの各画素の輝度差ΔBを抽出するようにしてもよいし、或いは重なり領域Aに相当する切出し画像Iaの全画素について輝度差ΔBを算出するようにしてもよい。
【0044】
ここで、欠陥無状態の場合、照明部30の照明光Lが被検査面2の平滑面4で正反射して撮影部20で受光されるため、画素の輝度の最大値が相対的に大きくなり且つ輝度の最小値が相対的に小さくなる。即ち、明るい光ほど輝度が高く、暗い光ほど画素の輝度が低い。このため、欠陥無状態の場合には、欠陥有状態に比べて重なり領域Aの各画素の輝度差ΔBが大きくなる。
【0045】
これに対して、欠陥有状態の場合、照明部30の照明光Lが被検査面2の欠陥3で反射するときに乱反射光成分が増えるため、欠陥無状態に比べると、画素の輝度の最大値が小さくなり且つ輝度の最小値が大きくなる。このため、欠陥有状態の場合には、欠陥無状態に比べて重なり領域Aの各画素の輝度差ΔBが小さくなる。
【0046】
そこで、本実施形態では、制御装置40の欠陥検出部45は、被検査面2の重なり領域Aに欠陥3が含まれているときには、重なり領域Aの画素毎の輝度差ΔBについて比較することにより被検査面2の各部位のうち輝度差ΔBが相対的に小さい画素に相当する部位を欠陥3として検出するように構成されている。この場合、欠陥3の有無が判定されるが、必要に応じて、欠陥3があるときにその欠陥3の数や大きさを追加で導出するようにすることもできる。
【0047】
次に、
図7に示されるように、実施形態1のワーク検査方法(以下、単に「検査方法」という。)は、ワーク1を検査するためのものである。このワーク検査方法は、第1ステップS101から第11ステップS111までのステップを少なくとも有し、各ステップを制御装置40が順次実行することによって達成される。
【0048】
なお、必要に応じて、
図7において各ステップの順番を入れ替えることもできる。また、
図7中のステップに別のステップが追加されてもよいし、或いは
図7中の少なくとも1つのステップが複数のステップに分割されてもよい。
【0049】
第1ステップS101は、ワーク1の搬送を開始するステップである。この第1ステップS101において、制御装置40の駆動制御部42から駆動装置11に制御信号が伝送される(
図1を参照)。これにより、ワーク1が搬送方向Dに概ね一定速度で搬送される。このとき、ワーク1の被検査面2に対して撮影部20を第1方向Xに相対移動させることができる。
【0050】
第2ステップS102は、照明部30で明暗縞状パターンPの照明光Lをシフト制御するステップである。この第2ステップS102において、制御装置40の照明制御部43から照明部30に制御信号が伝送される(
図1を参照)。これにより、明暗縞状パターンPの照明光Lを照明部30によってワーク1の被検査面2に投光した状態で第2方向Yに沿ってシフトさせることができる。
【0051】
第3ステップS103は、撮影部20でワーク1の被検査面2を連続撮影するステップである。この第3ステップS103において、明暗の1周期の間に被検査面2における撮影部20の撮像対象範囲22を第1方向Xについて一部ラップさせながら被検査面2に対して撮影部20を第1方向Xに連続的に相対移動させる。これにより、共通の重なり領域Aを含む複数(本実施形態では8つ)の画像Iを撮影することができる(
図4及び
図5を参照)。
【0052】
第4ステップS104は、第3ステップS103で得られた複数の画像Iを記憶するステップである。この第4ステップS104によれば、複数の画像Iが記憶部46に読み出し可能に記憶される。
【0053】
第5ステップS105は、切出し画像を生成するステップである。この第5ステップS105によれば、複数の画像Iが記憶部46から読み出され、制御装置40の画像処理部44によって切出し処理される。これにより、各画像Iの一部である重なり領域Aが切出されてなる複数(本実施形態では8つ)の切出し画像Iaが生成される(
図5を参照)。ここで、複数の画像Iはいずれも照明光Lのシフト制御時に撮影されたものであり、複数の切出し画像Iaは各画素の輝度が互いに異なる。
【0054】
第6ステップS106は、輝度の最大値及び最小値を算出するステップである。この第6ステップS106によれば、制御装置40の画像処理部44によって、重なり領域Aに相当する切出し画像Iaの全画素について輝度の最大値と最小値が算出される。
【0055】
第7ステップS107は、輝度差を算出するステップである。この第7ステップS107によれば、制御装置40の画像処理部44によって、ステップS106でいずれも算出した輝度の最大値と最小値の差分値が輝度差ΔBとして算出される。
【0056】
第8ステップS108は、第7ステップS107で算出した輝度差ΔBが相対的に小さい画素が有るか否かを判定するステップである。この第8ステップS108によれば、制御装置40の欠陥検出部45によって、輝度差ΔBが相対的に小さい画素が検出される。
【0057】
第8ステップS108で輝度差ΔBが相対的に小さい画素が有ると判定されると、第9ステップS109へすすみ、この第9ステップS109で欠陥有りとなる。このとき、被検査面2の各部位のうち輝度差ΔBが相対的に小さい画素に相当する部位を欠陥3として検出する。一方で、第8ステップS108で輝度差ΔBが相対的に小さい画素が無いと判定されると、第10ステップS110へすすみ、この第10ステップS110で欠陥無しとなるため欠陥3が検出されない。
【0058】
なお、被検査面2の欠陥3を検出するためのより具体的な処理については、例えば特開2000-18932号公報に開示の、被検物の欠点検査方法を参照することができる。
【0059】
次に、上述の実施形態1の作用効果について説明する。
【0060】
実施形態1では、ワーク1の被検査面2に対して第1方向Xに連続的に相対移動する撮影部20と、明暗縞状パターンPの照明光Lをワーク1の被検査面2に投光した状態で第1方向Xと直交する第2方向Yに沿ってシフトさせる照明部30と、を組み合わせて、共通の重なり領域Aを含む複数の画像Iを撮影部20で撮影する。
【0061】
このとき、撮影部20をワーク1の被検査面2に対して連続的に相対移動させて撮影するため、静止と移動を繰り返して被検査面2を撮影する場合に比べて撮影に要する時間を短縮でき高速での撮影が可能になる。また、ワーク1の被検査面2の大きさや数が増えたときでも、撮影に使用する撮影部20の数を少なく抑えることができる。
【0062】
一方で、明暗縞状パターンPの照明光Lの明暗の1周期の間に撮影部20によって共通の重なり領域Aを含む複数の画像Iを撮影することによって、重なり領域Aへの光の当たり方が互いに異なる状態で撮影された複数の画像Iを得ることができる。そして、各画像Iについて重なり領域Aの画素毎の輝度差ΔBを比較することによって被検査面2の欠陥3を検出できる。これにより、特定の光の当たり方でのみ撮影された画像からでは検出できないような欠陥3も高精度で検出することが可能になる。
【0063】
従って、上述の実施態様1によれば、ワーク1を高速且つ高精度で検査するのに有効なワーク検査技術を提供することができる。
【0064】
実施形態1によれば、撮影部20の帯状の撮像素子21の全体を使用して、ワーク1の被検査面2の複数の画像Iを得ることができる。
【0065】
実施形態1によれば、照明部30の発光面30aの無駄なスペースが極力無くすように、発光面30aの全体にわたって複数のLED発光部31を配置することによって、照明部30の小型化を図ることができる。
【0066】
なお、上述の実施形態1に特に関連する変更例として、3列以下の複数列分のLED32によって、或いは5列以上の複数列分のLED32によって、1つ分のLED発光部31を構成するようにしてもよい。
【0067】
また、上述の実施形態1に特に関連する変更例として、
図7中のステップS109~S111において、輝度差ΔBと予め設定した閾値との比較によって、欠陥3の有無を判定するようにしてもよい。
【0068】
以下、上記の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0069】
(実施形態2)
図8に示されるように、実施形態2のワーク検査装置110は、撮影部120の撮像素子121の構造について、実施形態1のものと相違している。この撮像素子121は、実施形態1の撮像素子21よりも大きく、第2方向Yの画素数が同じである一方で、第1方向Xの画素数が実施形態1のものを上回るように構成されている。このとき、撮像素子121は、第2方向Yの画素数がmであり、第1方向Xの画素数が(n+α)である汎用の大サイズの撮像素子である。実施形態2では、この撮像素子121の一部である素子部121a(実施形態1の専用の撮像素子21に相当する部位)を利用して被検査面2を撮影する。
【0070】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0071】
上述の実施形態2によれば、汎用の大サイズの撮像素子121を使用することによって、撮影部120に要するコストを低く抑えることができる。
【0072】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0073】
(実施形態3)
図9に示されるように、実施形態3のワーク検査装置210は、照明部230の構造について、実施形態1のものと相違している。この照明部230は、発光面30aに第3方向Zに互いに平行に延びる複数のLED発光部231を備えている。そして、各LED発光部231を構成するLED232は、第2方向Yと直交する方向に延びる長管型のLEDである点で、実施形態1の砲弾型のLED32と相違している。
【0074】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0075】
上述の実施形態3によれば、長管型のLED232を使用することによって、第3方向Zについて均一な輝度の照明光Lを形成させることができる。
【0076】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0077】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、各実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0078】
上述の実施形態では、ワーク1を駆動装置11によって駆動することで静止状態の撮影部20,120をワーク1の被検査面2に対して第1方向Xに相対移動させる場合について例示したが、これに代えて、撮影部20,120自体を第1方向Xに移動させるようにしてもよい。この場合、ワーク1は、静止状態と移動状態のいずれであってもよい。
【0079】
上述の実施形態では、LED発光部31,231を備える照明部30,230について例示したが、これに代えて、照明の代わりにモニターに明暗縞状パターンPを表示してこの明暗縞状パターンPを第2方向Yに移動させる制御を採用することもできる。
【0080】
上述の実施形態では、照明部30,230を静止状態とする場合について例示したが、これに代えて、明暗縞状パターンPの照明光Lを投光した状態で照明部30,230自体を駆動装置(図示省略)によって第2方向Yへスライドさせる構造を採用することもできる。
【符号の説明】
【0081】
1 ワーク
2 被検査面
3 欠陥
10,110,210 ワーク検査装置
20,120 撮影部
21,121 撮像素子
22 撮像対象範囲
30,230 照明部
30a 発光面
31,231 LED発光部
45 欠陥検出部
A 重なり領域
ΔB 輝度差
I,I(N+1),I(N+2),I(N+3),I(N+4),I(N+5),I(N+6),I(N+6) 画像
L 照明光
P 明暗縞状パターン
Pa 明部
Pb 暗部
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向(列方向)