(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】配管接続部材
(51)【国際特許分類】
F16L 55/24 20060101AFI20230425BHJP
B01D 35/02 20060101ALI20230425BHJP
B01D 35/30 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
F16L55/24 A
B01D35/02 A
B01D35/30
(21)【出願番号】P 2019113202
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】391060029
【氏名又は名称】株式会社ダンレイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095245
【氏名又は名称】坂口 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】中田 直希
(72)【発明者】
【氏名】宮田 俊一
(72)【発明者】
【氏名】松野 孝則
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-142265(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0209484(US,A1)
【文献】特表2013-510712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/24
B01D 35/02
B01D 35/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口と流出口とを有する
樹脂製のケーシングと、ケーシング内に配設されたストレーナと、ケーシングに形成されたストレーナ出し入れ用の開口部と、離脱可能にケーシングに固定されてケーシングの外側から前記開口部を覆う
樹脂製の蓋部材とを備え、
ストレーナは前記開口部に摺動可能に係合するピストンヘッドを有するピストンを形成し、ピストンヘッドとケーシングの前記開口部との摺接部を止水するシール部材を備え、ストレーナは蓋部材によってピストン移動方向に弾性支持されて
おり、ピストンは凍結時の内圧上昇によって蓋部材へ向けて移動しケーシング内の水収容空間の体積が増加することを特徴とする樹脂製の配管接続部材。
【請求項2】
蓋部材とストレーナとの間にバネが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の配管接続部材。
【請求項3】
蓋部材は面外変形可能な板部材であることを特徴とする請求項1に記載の配管接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管接続部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流入口と流出口とを有するケーシングと、ケーシング内に配設されたストレーナと、ケーシングに形成されたストレーナ出し入れ用の開口部と、離脱可能にケーシングに固定されてケーシングの外側から前記開口部を覆う蓋部材とを備える樹脂製の配管接続部材が従来から使用されている。給水源の圧力変動や水回り機器の不具合等による不測の高水圧印加による破損を防止すべく、圧力逃し弁を備えた配管接続部材も、例えば特許文献1に開示されているように、従来から使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
寒冷地においては、外部環境に近接する配管接続部材の、凍結に伴う内圧上昇による破損が問題になる。外側のケーシング側から内部のストレーナへ向けて凍結が進行するので、外側に近い圧力逃し弁は凍結進行の比較的早い段階で凍結し、凍結に伴う圧力上昇を逃がす機能を失う。従って、樹脂製の配管接続部材にあっては、圧力逃し弁を備えていても、寒冷地で使用する場合、凍結に伴う内圧上昇によって破損する可能性がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、流入口と流出口とを有するケーシングと、ケーシング内に配設されたストレーナと、ケーシングに形成されたストレーナ出し入れ用の開口部と、離脱可能にケーシングに固定されてケーシングの外側から前記開口部を覆う蓋部材とを備える樹脂製の配管接続部材であって、寒冷地で使用される場合でも、凍結に伴う内圧上昇による破損の恐れが無い、配管接続部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、流入口と流出口とを有する樹脂製のケーシングと、ケーシング内に配設されたストレーナと、ケーシングに形成されたストレーナ出し入れ用の開口部と、離脱可能にケーシングに固定されてケーシングの外側から前記開口部を覆う樹脂製の蓋部材とを備え、ストレーナは前記開口部に摺動可能に係合するピストンヘッドを有するピストンを形成し、ピストンヘッドとケーシングの前記開口部との摺接部を止水するシール部材を備え、ストレーナは蓋部材によってピストン移動方向に弾性支持されており、ピストンは凍結時の内圧上昇によって蓋部材へ向けて移動しケーシング内の水収容空間の体積が増加することを特徴とする樹脂製の配管接続部材を提供する。
ピストンを形成するストレーナが移動することにより、凍結に伴う内圧上昇を吸収し、樹脂製の配管接続部材の破損を防止する。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、蓋部材とストレーナとの間にバネが配設されている。
本発明の好ましい態様においては、蓋部材は面外変形可能な板部材である。
蓋部材とストレーナとの間にバネを配設し、或いは蓋部材を面外変形可能な板部材で構成することにより、ピストンを形成するストレーナの長手軸線方向への移動が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例に係る配管接続部材の断面図である。(a)は通常作動時を示し、(b)は凍結時を示す。
【
図2】本発明の他の実施例に係る配管接続部材の構造図である。(a)は通常作動時の断面図であり、(b)は一部を断面で示した(a)のb-b矢視図であり、(c)は蓋部材の上面図であり、(d)、(e)は蓋部材の変形例の上面図である。
【
図3】
図2の配管接続部材の凍結時の構造図である。(a)は断面図であり、(b)は一部を断面で示した(a)のb-b矢視図である。
【
図4】本発明の他の実施例に係る配管接続部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1(a)に示すように、配管接続部材1は、流入口2と流出口3とを有する樹脂製のケーシング4と、ケーシング4内に配設されたストレーナ5と、ケーシング4に形成されたストレーナ出し入れ用の開口部6と、離脱可能に開口部6の大径部6aに螺入してケーシング4に固定され、ケーシング4の外側から開口部6を覆う樹脂製の厚肉の蓋部材7とを備えている。
ストレーナ5はピストンヘッド5aと、周方向に離散してピストンヘッド5a周縁部に立設された複数の脚部5bと、複数の脚部5bにより挟持された筒状のワイヤメッシ5cと、ピストンヘッド5aの周溝に嵌合したOリング5dとから構成されたピストンを形成する組立体である。
ピストンヘッド5aは開口部6の小径部6bと蓋部材7の中央開口7aとに摺動可能に係合している。ピストンヘッド5aと開口部6の小径部6bとの摺接部はOリング5dにより止水されている。ピストンヘッド5aと蓋部材7との間の隙間Sにバネ8が配設されている。ピストンヘッド5aに螺着した螺子9の頭部が蓋部材の中央開口7aの周囲に形成された段部7bに係合して、ストレーナ5の蓋部材7からの離脱を防止している。バネ8を介して間接的にピストンヘッド5aに当接する蓋部材7と、脚部5bの端部に当接する開口部6の奥段部6cとにより、ストレーナ5はピストン移動方向に弾性支持されている。
配管接続部材1は、ストレーナ5のメンテナンス時に作動させる止水栓10を備えている。配管接続部材1は更に、流入口2に接続される給水源の圧力変動や、流出口3に接続される水回り機器の不具合等による不測の高水圧印加による破損を防止するための、公知の圧力逃し弁圧11を備えている。
【0009】
配管接続部材1の作動を説明する。
流入口2から流入した水は、ケーシング4内に形成された流路を流れ、ストレーナ5を通過して鉄錆等の異物が除去され、流出口3から流出し、減圧弁、電磁弁等を経由して水回り機器に供給される。
ストレーナ5をメンテナンスする際には、止水栓10をねじ込み、流入口2から延びる通路を閉鎖する。次いで蓋部材7をケーシグ4から取り外し、蓋部材7からの離脱が防止されたストレーナ5をケーシング4から取り出す。ストレーナ5を洗浄した後、相互に離脱が防止された蓋部材7とストレーナ5とをケーシング4に取付け、止水栓10を逆にねじって流入口2から延びる通路を開放する。
流入口2に接続される給水源の圧力変動や、流出口3に接続される水回り機器の不具合等による不測の高水圧が発生した時は、圧力逃し弁圧11が作動してケーシング4内の水を外部に放出してケーシング内圧を低下させて、樹脂製のケーシング4、蓋部材7の破損を防止する。
配管接続部材1が寒冷地で使用される場合、外部環境に近接する配管接続部材1が凍結する場合を生ずる。この場合、外側のケーシング4側から内部のストレーナ5へ向けて凍結が進行するので、外側に近い圧力逃し弁11は凍結進行の比較的早い段階で凍結し、凍結に伴う内圧上昇を逃がす機能を失う可能性がある。この場合でも、
図1(b)に示すように、ピストンを形成するストレーナ5がバネ8を押し縮めながら移動することにより、ケーシング4内の水収容空間の体積が増加し、凍結に伴う内圧上昇が吸収されて、樹脂製のケーシング4と蓋部材7の破損が防止される。
【0010】
図2(a)~(c)に示すように、厚肉の樹脂製蓋部材7とバネ8とに代えて、両端部がケーシング4に螺子固定された金属製の薄板材で形成された蓋部材7’で、ケーシング4の開口部6を覆っても良い。この場合、蓋部材7’はバネ材を介することなく直接ピストンヘッド5aに当接する。ピストンヘッド5aに直接当接する蓋部材7’と、脚部5bの端部に当接する開口部6の奥段部6cとにより、ストレーナ5はピストン移動方向に弾性支持される。凍結に伴い内圧が上昇すると、
図3に示すようにピストンを形成するストレーナ5が蓋部材7’を面外変形させつつ移動して、ケーシング4内の水収容空間の体積を増加させ、凍結に伴う内圧上昇を吸収し、樹脂製のケーシング4の破損を防止する。
蓋部材7’の面外変形を容易にするために、
図2(d)に示すように、蓋部材7’に切欠き7a’を形成し、或いは
図2(e)に示すよう蓋部材7’に開口7b’を形成しても良い。
図4に示すように、本発明は、圧力逃し弁を備えない配管接続部材1’にも適用可能である。尚
図4において、参照番号12を付した部材は、逆止弁である。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明は、寒冷条件下で使用される配管接続部材に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0012】
1、1’ 配管接続部材
2 流入口
3 流出口
4 ケーシング
5 ストレーナ
5a ピストンヘッド
5b 脚部
5c ワイヤメッシュ
5d Oリング
6 ストレーナ出し入れ用の開口部
6a 大径部
6b 小径部
6c 奥段部
7、7’ 蓋部材
7a 中央開口
7b 段部
7a’ 切欠き
7b’ 開口
8 バネ
9 螺子
10 止水栓
11 圧力逃し弁
12 逆止弁
S 隙間