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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】発光素子モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20230425BHJP
【FI】
H01L33/62
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018084447
(22)【出願日】2018-04-25
(65)【公開番号】P2019192800
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】井川 祐太
(72)【発明者】
【氏名】東坂 浩由
(72)【発明者】
【氏名】小野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】澤井 敬一
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0207249(US,A1)
【文献】特開2012-094401(JP,A)
【文献】特開2004-207655(JP,A)
【文献】国際公開第2017/012763(WO,A1)
【文献】特開2015-198145(JP,A)
【文献】特開2007-073752(JP,A)
【文献】特開2006-156447(JP,A)
【文献】特開2017-168548(JP,A)
【文献】特開2013-122951(JP,A)
【文献】国際公開第2012/086517(WO,A1)
【文献】特開平02-002661(JP,A)
【文献】特開2003-152100(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0264407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路素子を備えた第1基板における少なくとも2つ以上の第1電極と、少なくとも2つ以上の発光素子とが接合された発光素子モジュールであって、
前記第1基板には該第1基板の厚み方向において前記発光素子側から順に層状に第1配線から第n配線(nは2以上の整数)が形成されており、
前記第1基板における最も前記発光素子側の層に位置する前記第1配線は、平面視において、前記第1基板における隣り合う前記第1電極間のうち少なくとも一か所の電極間領域に形成されており、
前記nは10以下であり、配線層の他、ゲートポリシリコン層及び/又は拡散層を有しており、前記第1配線から第n配線のうち、少なくとも1つの配線が、ゲートポリシリコン層及び/又は拡散層で形成された抵抗に接続されることにより、前記第1基板と前記発光素子との貼り合わせの際に生じるESD(Electro-Static Discharge:静電気放電)等の外的破壊要因に対する保護回路を形成し、
前記第1基板の前記第1配線は、前記発光素子からの光を反射する光反射機能と前記発光素子からの熱を放熱する放熱機能とを備え、
平面視において前記発光素子における第2電極間の前記第1配線が電極間領域に占める面積の割合は、25[%]以上であることを特徴とする発光素子モジュール。
【請求項2】
回路素子を備えた第1基板における少なくとも2つ以上の第1電極と、少なくとも2つ以上の発光素子とが接合された発光素子モジュールであって、
前記第1基板には該第1基板の厚み方向において前記発光素子側から順に層状に第1配線から第n配線(nは2以上の整数)が形成されており、
前記第1基板における最も前記発光素子側の層に位置する前記第1配線は、平面視において、前記第1基板における隣り合う前記第1電極間のうち少なくとも一か所の電極間領域に形成されており、
前記第1配線の前記第1電極に対応する位置には指標部がそれぞれ設けられており、
前記第1配線は、長尺状に形成されており、
前記指標部は、何れも前記第1配線の長手方向に交差する方向の側に突出する矩形状の突出部とされていることを特徴とする発光素子モジュール。
【請求項3】
回路素子を備えた第1基板における少なくとも2つ以上の第1電極と、第2基板上に配置される少なくとも2つ以上の発光素子とが接合された発光素子モジュールであって、
前記第1基板には該第1基板の厚み方向において前記発光素子側から順に層状に第1配線から第n配線(nは2以上の整数)が形成されており、
前記第1基板における最も前記発光素子側の層に位置する前記第1配線は、平面視において、前記第1基板における隣り合う前記第1電極間のうち少なくとも一か所の電極間領域に形成されており、
前記発光素子モジュールに対して異常な応力が加わったか否かを検知するダメージ検知回路が形成されており、
前記ダメージ検知回路は、前記第1基板へ前記第2基板に配置した前記発光素子を貼り合わせる際に前記第1基板に設けられて前記回路素子を含む回路が壊れる規定以上の圧力が加わる前に自ら破断することを特徴とする発光素子モジュール。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の発光素子モジュールであって、
前記第1基板の前記第1配線は、前記発光素子からの光を反射する光反射機能と前記発光素子からの熱を放熱する放熱機能とを備えていることを特徴とする発光素子モジュール。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の発光素子モジュールであって、
前記第1基板が備える前記回路素子は、前記第1基板における前記第1電極と、前記発光素子における第2電極とが平面視において重複する重複領域に設けられていることを特徴とする発光素子モジュール。
【請求項6】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の発光素子モジュールであって、
前記第1基板の前記発光素子側の最表面には、保護層が形成されており、前記保護層には、前記発光素子における第2電極と接合される前記第1基板における前記第1電極が貫通する開口部が設けられており、該第1電極に接続される前記第1配線の次の層に位置する第2配線は、該第1配線の端部のうち少なくとも一か所の端部と平面視において重なるように配設されていることを特徴とする発光素子モジュール。
【請求項7】
請求項2から請求項4までの何れか1項に記載の発光素子モジュールであって、
前記nは10以下であり、配線層の他、ゲートポリシリコン層及び/又は拡散層を有しており、前記第1配線から第n配線のうち、少なくとも1つの配線が、ゲートポリシリコン層及び/又は拡散層で形成された抵抗に接続されることを特徴とする発光素子モジュール。
【請求項8】
請求項1又は請求項に記載の発光素子モジュールであって、
前記第1基板が備える前記回路素子は、トランジスタで構成されており、
前記抵抗は、前記第1基板における前記トランジスタのゲート電極に接続される抵抗であることを特徴とする発光素子モジュール。
【請求項9】
請求項1又は請求項に記載の発光素子モジュールであって、
前記抵抗は、前記第1基板における第1電極に接続される抵抗であることを特徴とする発光素子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路素子を備えた第1基板における第1電極と、発光素子とが接合された発光素子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
回路素子を備えた第1基板における第1電極と、第2基板上に配置された発光素子における第2電極とが接合された発光素子モジュールでは、例えば、第1基板には第1基板の厚み方向において発光素子側から順に層状に複数の配線が形成され、通常は、複数層の配線の第1基板の厚み方向における隣り合う配線間には層間絶縁膜が形成される。
【0003】
このような発光素子モジュールを製造する製造工程において、第1基板及び第2基板を貼り合わせる際には、第1基板における第1電極と第2電極とを確実に接合するために第2基板に対して所定の圧力の荷重をかける場合がある。係る荷重は第1基板側にも加わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-159950号公報
【文献】特許第4267481号公報
【文献】特開2009-124099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、発光素子の第2電極の面積が小さくなるに従い、また、第1基板における複数の第1電極と第2電極との接続点が多くなるに従い、第1基板における第1電極と第2電極との単位面積当たりの接合荷重が大きくなる。例えば、第2電極が10μm□より小さく、従来の単位面積当たりの接合荷重に対して、20倍~100倍以上の荷重が必要となる。
【0006】
その場合、接合時の荷重により、第1基板の配線の粗密状態により、配線への第1基板の厚み方向(縦方向)及び第1基板の厚み方向に直交する方向(横方向)の力が加わる。
【0007】
図16は、第1基板100へ発光素子210を貼り合わせる際に第1配線110(1)に加わる圧力の状態を示す概略断面図である。図17は、第1配線110(1)に加わる圧力を分解した圧力分解図である。図16において、符号200aは発光素子210の電極、符号100aは第1基板100における電極を示している。
【0008】
図16に示すように、第1基板100へ発光素子210を貼り合わせる際の荷重により、図16の左側の矢印方向に力Fが加わる。これにより、図16の右側に示すように、力Fにより第1基板100における最も発光素子側の層に位置する第1配線110(1)が撓む。この力Fは、図17に示すように、第1基板100の厚み方向Y(縦方向)に直交する方向X(横方向)の第1分力Fxと、厚み方向Yの第2分力Fyとに分解される。
【0009】
図16及び図17に示すように、第1分力Fx及び第2分力Fyが加わることで、第1基板100における層間絶縁膜へのマイクロクラック及び下地回路(回路130)へのダメージが生じ、回路動作への不具合が生じ、信頼性の低下につながるという課題が発生する。例えば、回路素子(具体的にはトランジスタ)を含む回路130(具体的には大規模集積回路:LSI等の回路)が搭載された第1基板100へ、発光素子210(具体的には発光ダイオード:LED等の発光素子)を具備した第2基板200を貼り合わせる場合には、図18に示すような不具合が生じる。このことは、特に、回路素子が第1基板の電極と発光素子の第2電極の接続点の直下に配置される場合に顕著となる。
【0010】
図18は、従来の発光素子モジュール300において、第1基板100へ第2基板200を貼り合わせる様子を模式的に示す概略断面図である。第1基板100には、回路素子130aを含む回路130が搭載されている。第2基板200には、発光素子210を具備している。なお、図18において、符号100aは第1基板100における電極、符号100bは第1基板100における回路130の端子の一部、符号110(1)は第1基板100における第1配線、符号110(2)は第1基板100における第2配線、符号110(3)は第1基板100における第3配線、符号120は第1基板100における層間絶縁膜、符号140は第1基板100における保護層、また、符号200aは第2基板200(発光素子210)における電極を示している。
【0011】
図18に示すように、発光素子210の真下に回路素子130aが形成されている場合や、回路素子130aのメタル層やゲートポリシリコン層が一部にのみ形成されている場合、第1基板100へ第2基板200を貼り合わせる際の荷重により、第1配線110(1)が撓む他、発光素子210や回路130へ応力がかかり、極端な場合には発光素子210の破壊や、回路130の破壊につながることが懸念される。
【0012】
この点に関し、特許文献1には、無機材料からなる無機薄膜が、層間絶縁膜の表面の周縁部から側面に回り込み、半導体基板の表面に達する構成が記載されている。特許文献2には、最上層のパッド直下のビアを格子状にした構成が記載されている。また、特許文献3には、パッドメタルと配線メタルとの間に電位を有さないダミーパターンをバリアメタルのエッジ位置を鉛直方向に延ばした部分を含む領域に形成した構成が開示されている。
【0013】
しかしながら、特許文献1~3に記載の何れの構成においても、第1基板と第2基板とを貼り合わせる際の荷重により生じる不都合(例えば、第1基板における回路の破壊や、発光素子の破壊)について何も対策がなされていない。
【0014】
そこで、本発明は、回路素子を備えた第1基板における第1電極と、発光素子とが接合された発光素子モジュールであって、第1基板と発光素子とを貼り合わせる際の荷重により生じる不都合(例えば、第1基板における回路の破壊や、接合された発光素子の破壊)を効果的に防止することができる発光素子モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、次の第1態様から第3態様の発光素子モジュールを提供する。
(1)第1態様の発光素子モジュール
本発明に係る第1態様の発光素子モジュールは、回路素子を備えた第1基板における少なくとも2つ以上の第1電極と、少なくとも2つ以上の発光素子とが接合された発光素子モジュールであって、前記第1基板には該第1基板の厚み方向において前記発光素子側から順に層状に第1配線から第n配線(nは2以上の整数)が形成されており、前記第1基板における最も前記発光素子側の層に位置する前記第1配線は、平面視において、前記第1基板における隣り合う前記第1電極間のうち少なくとも一か所の電極間領域に形成されており、前記nは10以下であり、配線層の他、ゲートポリシリコン層及び/又は拡散層を有しており、前記第1配線から第n配線のうち、少なくとも1つの配線が、ゲートポリシリコン層及び/又は拡散層で形成された抵抗に接続されることにより、前記第1基板と前記発光素子との貼り合わせの際に生じるESD(Electro-Static Discharge:静電気放電)等の外的破壊要因に対する保護回路を形成し、前記第1基板の前記第1配線は、前記発光素子からの光を反射する光反射機能と前記発光素子からの熱を放熱する放熱機能とを備え、平面視において前記発光素子における第2電極間の前記第1配線が電極間領域に占める面積の割合は、25[%]以上であることを特徴とする。
(2)第2態様の発光素子モジュール
本発明に係る第2態様の発光素子モジュールは、回路素子を備えた第1基板における少なくとも2つ以上の第1電極と、少なくとも2つ以上の発光素子とが接合された発光素子モジュールであって、前記第1基板には該第1基板の厚み方向において前記発光素子側から順に層状に第1配線から第n配線(nは2以上の整数)が形成されており、前記第1基板における最も前記発光素子側の層に位置する前記第1配線は、平面視において、前記第1基板における隣り合う前記第1電極間のうち少なくとも一か所の電極間領域に形成されており、前記第1配線の前記第1電極に対応する位置には指標部がそれぞれ設けられており、前記第1配線は、長尺状に形成されており、前記指標部は、何れも前記第1配線の長手方向に交差する方向の両側に突出する矩形状の突出部とされていることを特徴とする。
(3)第3態様の発光素子モジュール
本発明に係る第3態様の発光素子モジュールは、回路素子を備えた第1基板における少なくとも2つ以上の第1電極と、第2基板上に配置される少なくとも2つ以上の発光素子とが接合された発光素子モジュールであって、前記第1基板には該第1基板の厚み方向において前記発光素子側から順に層状に第1配線から第n配線(nは2以上の整数)が形成されており、前記第1基板における最も前記発光素子側の層に位置する前記第1配線は、平面視において、前記第1基板における隣り合う前記第1電極間のうち少なくとも一か所の電極間領域に形成されており、前記発光素子モジュールに対して異常な応力が加わったか否かを検知するダメージ検知回路が形成されており、前記ダメージ検知回路は、前記第1基板へ前記第2基板に配置した前記発光素子を貼り合わせる際に前記第1基板に設けられて前記回路素子を含む回路が壊れる規定以上の圧力が加わる前に自ら破断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、第1基板と発光素子とを貼り合わせる際の荷重により生じる不都合(例えば、第1基板における回路の破壊や、第1基板に接合された発光素子の破壊)を効果的に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る発光素子モジュールにおいて、第1基板へ第2基板を貼り合わせる様子を模式的に示す概略断面図である。
図2】第1基板に形成された第1配線の一例を第2基板と共に示す概略平面図である。
図3】第1基板に形成された第1配線の他の例を第2基板と共に示す概略平面図である。
図4】第2電極が2個配置された発光素子及び第1配線の構成の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図5】第2電極が2個配置された発光素子及び第1配線の構成の他の例を模式的に示す概略斜視図である。
図6】第2電極が2個配置された発光素子の第2電極間の電極間領域に対する第1配線の面積を示す概略平面図である。
図7】第2電極が2個配置された発光素子の電極間領域に対する第1配線の面積比と光反射率比との関係を示すグラフである。
図8図1に示す発光素子モジュールで且つ、第2電極が2個配置された発光素子における熱の流れを模式的に示す概略断面図である。
図9】電極間領域に対する第1配線の面積比と発熱温度比との関係を示すグラフである。
図10】第1基板の平面視において第1配線の端部の少なくとも1つと重複する第2配線の一例を示す概略平面図である。
図11】第1基板の平面視において第1配線の端部の少なくとも1つと重複する第2配線の他の例を示す概略平面図である。
図12】第1基板の平面視において第1配線の端部の少なくとも1つと重複する第2配線のさらに他の例を示す概略平面図である。
図13】第1基板において面方向に複数列設された第1配線の一例に対して第2電極を2個有する発光素子が複数列設された構成を示す概略平面図である。
図14】第1電極が面方向に複数列設された第1基板において第1電極間に配置された第1配線の一例に対して一方の第2電極が複数列設されかつ他方の第2電極が単一の共通電極として配置された構成を示す概略平面図である。
図15】第1電極が面方向に複数列設された第1基板において第1電極間に配置された第1配線の他の例に対して第2電極を2個有する発光素子が複数列設された構成を示す概略平面図である。
図16】第1基板へ第2基板を貼り合わせる際に第1配線に加わる圧力の状態を示す概略断面図である。
図17】第1配線に加わる圧力を分解した圧力分解図である。
図18】従来の発光素子モジュールにおいて、第1基板へ第2基板を貼り合わせる様子を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る発光素子モジュール30において、第1基板10へ第2基板20に配置した発光素子21を貼り合わせる様子を模式的に示す概略断面図である。
【0020】
図1に示すように、発光素子モジュール30は、回路素子13a(例えばトランジスタ)を備えた第1基板10における第1電極10aと、第2基板20上に配置された発光素子21の第2電極20aとが接合される。第2基板20としては、発光素子を形成するために必要な基板(例えば、サファイヤ基板、シリコン基板)や、発光素子の貼り付け時の治具からの発光素子へのダメージを保護するためのフィルム(例えば、PET)の他、複数の発光素子を同時に貼り付ける際に発光素子を所定の位置に固定しておくフィルム・治具を例示できる。
【0021】
第1基板10の第2基板20又は発光素子21側には、第1基板10の厚み方向Yにおいて、第2基板20側から第1基板10側に向けて、保護層14、層状の第1配線11(1)から第n配線11(n)(nは2以上の整数、この例ではn=3)、回路素子13a、回路13の端子10bがこの順に形成されている。以下ではn=3として説明することがある。
【0022】
第1基板10と保護層14との間には層間絶縁膜12が設けられている。すなわち、第1配線11(1)から第3配線11(3)のそれぞれの配線間、第1配線11(1)から第3配線11(3)の厚み方向Yにおける隣り合う配線間、第3配線11(3)と第1基板10との間には層間絶縁膜12が形成されている。
【0023】
第2基板20には、発光素子21が設けられている。発光素子21の第2電極20a,20aが第1基板10側に形成されている。
【0024】
詳しくは、第1基板10には、回路素子13aを含む回路13(例えばLSI)が搭載されている。
【0025】
そして、第1基板10における最も第2基板20又は発光素子21側の層に位置する第1配線11(1)は、平面視において、隣り合う第2電極20a,20a間の少なくとも一か所の電極間領域αに形成されている。ここで、平面視とは、第2基板20の基板面から第1基板10側を視た状態をいう。
【0026】
第1配線11(1)は、平面視において第2電極20a,20a間の電極間領域αに加えて、第2電極20a,20aを含む電極領域β,βにも形成されている。
【0027】
本実施の形態によれば、第1基板10における最も発光素子21側の層に位置する第1配線11(1)が平面視において隣り合う第2電極20a,20a間の少なくとも1か所の電極間領域αに形成されているので、少なくとも1か所の隣り合う第2電極20a,20a間において第1配線11(1)が設けられていない面積を減らすことができる。すなわち、第1基板10の厚み方向Yに直交する方向X(横方向)において、第1配線11(1)の占有面積を増やすことができる。これにより、第1基板10と発光素子21とを接合させる際の荷重による第1基板10への応力を緩和させることができる。従って、第1基板10と発光素子21とを接合させる際の荷重により生じる不都合(例えば、第1基板10における回路13の破壊を効果的に防止することができる。しかも、第1基板10の厚み方向Yに直交する方向X(横方向)への力が加わることで発生するマイクロクラックを抑制することができる。ひいては、発光素子21が発光した場合の反射光量の均一性(例えば色均一性)を向上させることができる。これらのことは、発光素子21における第2電極20aの面積が小さく、第1基板10における第1電極10aとの接続点が多くなる場合(例えば、第2基板20における第2電極20aが10μm□より小さく、第2基板20に配置される発光素子21の数が複数となり、第1基板10における第1電極10aとの接続点が50,000点以上ある場合)に特に有効となる。
【0028】
第1配線11(1)及び第n配線11(n)としては、それには限定されないが、代表的には金属配線を例示できる。
【0029】
図2は、第1基板10に形成された第1配線11(1)の一例を第2基板20と共に示す概略平面図である。また、図3は、第1基板10に形成された第1配線11(1)の他の例を第2基板20と共に示す概略平面図である。
【0030】
第1配線11(1)は、単一の形状に形成されていてもよいし(図2参照)、ラインアンドスペース(L&S)形状に複数形成されていてもよい(図3参照)。ここで、L&S形状は、間隔をおいて形成されたストライプ状の形状である。この例では、L&S形状に形成された複数の第1配線11(1)は、隣り合う電極間方向に直交又は略直交する方向に沿って隣り合う電極間方向に間隔をおいて形成されている。
【0031】
第1配線11(1)から第n配線11(n)としては、金属配線に限らず、その他の層(ゲートポリシリコン層など)の配線も適用することができる。
【0032】
金属配線、ゲートポリシリコン層(GP層)は、抵抗やコンデンサとして配設されていてもよい。例えば、ゲートポリシリコン層、拡散層を形成し、ゲートポリシリコン層の抵抗(GP抵抗)、拡散層の抵抗(拡散抵抗)が、第1基板10と発光素子21との貼り合わせの際に生じるESD(Electro-Static Discharge:静電気放電)等の外的破壊要因の保護素子として機能してもよい。
【0033】
第1電極10a及び第2電極20aの形状は、特に限定されるものではなく、平面視で矩形状(正方形状、長方形状)であってもよいし、円形状、楕円形状であってもよい。
【0034】
また、第1配線11(1)は、発光素子21からの光反射機能を備えていることが望ましい。光反射機能により、発光素子21からの第1基板10から第2基板20又は発光素子側への光取り出し効率を向上させることができる。これについて、図4から図7を参照しながら以下に説明する。
【0035】
図4は、第2電極20aが2個、発光素子21に配置された場合(例えば、LEDのアノードとカソード)の第2電極20a(a)(アノード電極),20a(b)(カソード電極)及び第1配線11(1)の構成の一例を模式的に示す概略斜視図である。2個の第2電極20a(a),20a(b)は発光素子21のアノード及びカソードに相当し、片側に電極があることで、第1基板10と発光素子21との接合時に一度に発光素子21と第1基板10との電気的な導通を得ることができる構造となる。図5は、第2電極が2個発光素子21に配置された場合の第2電極20a(a),20a(b)及び第1配線11(1)の構成の他例を模式的に示す概略斜視図である。図6は、第2電極が2個発光素子21に配置された場合の第2電極20a(a),20a(b)間の電極間領域αに対する第1配線11(1)の面積を示す概略平面図である。図6において、ハッチング部が第2電極20a(a),20a(b)間の電極間領域αを示している。また、図7は、図6に示した電極間領域αに対する第1配線11(1)の面積比と光反射率比との関係を示すグラフである。図7において、横軸は電極間領域αに対する第1配線11(1)の面積比を表している。この面積比は、電極間領域αの面積に対する電極間領域α内で第1配線11(1)が占める面積の割合をパーセントで表した値である。縦軸は、光反射率比を表している。この光反射率比は、電極間領域αに対する第1配線11(1)の面積比を100とした状態における光反射率に対する第1配線11(1)の光反射率の割合をパーセントで表した値である。
【0036】
図4及び図5に示すように、発光素子からでる光Lは、第1基板10側方向に出射されるのに加えて、第1基板10の反対方向にも出射されることがある。第1基板10側方向に出射された光は、第1基板10によって、その一部が吸収される。従って、図4に示す構成では、光取り出し効率の低下を招く。本実施の形態の図5では、第1配線11(1)が、発光素子21からの光Lを反射する光反射機能を備えている。そのため、第1基板10の第2基板20側の方向に出射された光Lが第1配線11(1)で反射され、第1基板10の第2基板20側とは反対側の方向に出射されることになり、光取り出し効率が高くなる。
【0037】
ここで、電極間領域αに対する第1配線11(1)の面積比と光反射率比とは、図7に示すように、比例関係にある。従って、第1基板10側に向かう光Lを第2基板20側へ取り出し、光取り出し効率を向上させるためには、第2電極20a(a),20a(b)間の電極間領域α(図6参照)における第1配線11(1)の面積をできるだけ大きくすることが望ましい。こうすることで、光取り出し効率を向上させることができる。
【0038】
また、第1配線11(1)は、発光素子21からの熱を伝搬する放熱機能を備えている。従って、発光素子21による発光素子モジュール30の温度上昇を抑制することができる。これについて、図8及び図9を参照しながら以下に説明する。
【0039】
図8は、図1に示す発光素子モジュール30で且つ、第2電極20aが2個配置された発光素子21における熱Hの流れを模式的に示す概略断面図である。図9は、電極間領域αに対する第1配線11(1)の面積比と発熱温度比との関係を示すグラフである。図9において、横軸は電極間領域αに対する第1配線11(1)の面積比を表している。この面積比は、図7で説明した値と同じ値である。縦軸は、発熱温度比を表している。この発熱温度比は、電極間領域αに対する第1配線11(1)の面積比を100とした状態における第1配線11(1)による発光素子21の発熱温度に対する発光素子21の発熱温度の割合をパーセントで表した値である。
【0040】
図8に示すように、発光素子21は、光Lを出射し、かつ、自己発熱する。そして、第1配線11(1)は、発光素子21からの熱を外部に伝搬する放熱機能を備えている。なお、放熱機能は、積極的に外部に伝搬させる構成(放熱路)を有しなくとも、発光素子21からの熱を吸収する(発光素子21の熱を放熱させる)放熱機能を備えればよいことは言うまでもない。従って、例えば、平面視において第1配線11(1)が第2電極20a,20a間の電極間領域αに形成されていない場合には、発光素子モジュール30の温度が上昇し易く、それだけ発光素子モジュール30の信頼性の低下を招く。
【0041】
ここで、電極間領域αに対する第1配線11(1)の面積比と発熱温度比とは、図9に示すように、反比例の関係にある。従って、発光素子21の自己発熱による発光素子モジュール30の温度上昇、発光素子モジュール30の信頼性の低下を抑えるためのヒートシンクの役割として、第2電極20a,20a間の電極間領域α(図6参照)における第1配線11(1)の面積をできるだけ大きくすることが望ましい。こうすることで、発光素子モジュール30の温度上昇を抑制することができ、それだけ高い信頼性の発光素子モジュール30にすることができる。
【0042】
平面視において第2電極20a,20a間の第1配線11(1)が電極間領域αに占める面積の割合としては、25[%]以上、より好ましくは50[%]以上、さらに好ましくは75[%]以上を例示できる。
【0043】
さらに、第1配線11(1)は、第1基板10に設けられた回路13の端子10bにつなぐことができる。こうすることで、熱Hの経路を第1基板10まで確保することができる。これにより、熱Hを第1基板10から効果的に逃すことができ、発光素子モジュール30の温度上昇をさらに抑制することができる。
【0044】
(第1実施形態)
本実施の形態では、第1基板10が備える回路素子13aは、第1基板10における第1電極10aと、発光素子21における第2電極20aとが重複する重複領域に設けられている。
【0045】
本実施の形態では、第1基板10の発光素子21側の最表面には、保護層14(図1参照)が形成されている。保護層14には開口部14aが設けられている。開口部14aは、発光素子21における第2電極20aと接合される第1基板10における第1電極10aが貫通する。第1電極10aに接続される第1配線11(1)の次の層に位置する第2配線11(2)は、該第1配線11(1)の端部のうち少なくとも一つの端部と平面視において重複するように配設されている。すなわち、第2配線11(2)は、該第1配線11(1)の両端部11a,11b、一端部11a或いは他端部11bと平面視において重複するように配設されている。さらに、第2配線11(2)は、該第1配線11(1)に隣接する他の第1配線11(1)の端部11cまで形成されていてもよい。
【0046】
こうすることで、第1基板10における回路13の破壊耐性を向上させることができる。しかも、第1基板10の厚み方向Y(縦方向)への力により生じるマイクロクラックを抑制することができる。
【0047】
図10は、第1基板10において第1配線11(1)と重複する第2配線11(2)の一例を示す概略平面図である。図11は、第1基板10において第1配線11(1)と重複する第2配線11(2)の他の例を示す概略平面図である。図12は、第1基板10において第1配線11(1)と重複する第2配線11(2)のさらに他の例を示す概略平面図である。
【0048】
図10から図12に示すように、第2配線11(2)は、第1配線11(1)と交差(直交又は略直交)するように形成されている。第2配線11(2)は、平面視において第1配線11(1)と同じ又は略同じ幅の配線であることが望ましい。また、第2配線11(2)は、単一の形状に形成されていてもよい図10参照)。また、一部が切り欠かれていてもよいし(図11参照)、ラインアンドスペース(L&S)形状に形成れていてもよい(図12参照)。
【0049】
(第2実施形態)
本実施の形態では、nは10以下(この例ではn=3)であり、配線層の他、ゲートポリシリコン層及び/又は拡散層を有している。第1配線11(1)から第n配線のうち、少なくとも1つの配線が、ゲートポリシリコン層及び/又は拡散層で形成された抵抗16に接続されている。
【0050】
本実施の形態では、抵抗16は、第1基板10におけるゲート電極に接続される抵抗である。また、抵抗16は第1基板10における第1電極10aに接続されてもよい。
【0051】
こうすることで、第1基板10と発光素子21との貼り合わせの際に生じるESD等の外的破壊要因に対する保護回路を形成することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、ゲート電極に接続される層は、ゲートポリシリコン層及び/又は拡散層である。
【0053】
こうすることで、ゲートポリシリコン層及び/又は拡散層を用いるといった簡単な構成でESD等の外的破壊要因に対する保護回路を容易に実現させることができる。
【0054】
(第3実施形態)
ところで、第2基板20が可視光を透過する材料で形成されている場合、第1基板10において面方向に複数列設された第1配線11(1)をそれらに対応する第2基板20を介して平面から観察することができる。
【0055】
図13は、第1基板10において面方向に複数列設された第1配線11(1)の一例に対して第2電極20aを2個有する発光素子21が複数列設された構成を示す概略平面図である。
【0056】
本実施の形態では、図13に示すように、第1配線11(1)の所定位置には指標部γが設けられている。この例では、指標部γは、第1配線11(1)の本体部11dから本体部11dが延びる方向に交差(直交又は略直交)する方向の少なくとも一方側(具体的には両側)に突出する突出部11e,11eとされている。
【0057】
こうすることで、指標部γを目印(Mark)として使用することができる。この目印は、第2基板20を第1基板10に貼り合わせるときに第1基板10(第1電極10a)と第2基板20(第2電極20a)とを位置合わせするためのものとすることができる。こうすることで、第2基板20への第1基板10への位置合わせをより精度良く行うことができる。
【0058】
(第4実施形態)
図14は、第1電極10aが面方向に複数列設された第1基板10において第1電極10a,10a間に配置された第1配線11(1)の一例に対して一方の第2電極20a(a)が複数列設されかつ他方の第2電極20a(b)が単一の共通電極として配置された構成を示す概略平面図である。また、図15は、第1電極10aが面方向に複数列設された第1基板10において第1電極10a,10a間に配置された第1配線11(1)の他の例に対して第2電極20aを2個有する発光素子21が複数列設された構成を示す概略平面図である。
【0059】
図14に示す構成では、発光素子21~21の共通電極構造は、4行×6列のマトリクス状に列設された一方の第2電極20a(a)~20a(a)と、そのマトリクス領域から孤立している他方の第2電極20a(b)とで構成されている。図14に示す構成では、第1配線11(1)は、第1電極10a,10a間に横方向(長手方向)に沿って延びている。また、図15に示す構成では、第1配線11(1)は、発光素子21,21間に相当する位置に縦方向(短手方向)に沿って延びている。
【0060】
本実施の形態では、図14及び図15に示すように、複数の発光素子21~21が接合される第1基板10の第1電極10a,10a間に第1配線11(1)があれば、発光素子21のレイアウト及び/又は電極構造に特に限定されるものではない。
【0061】
例えば、図14に示す構成では、第1配線11(1)は、横方向(長手方向)に沿って延びているが、図15に示すように、縦方向(短手方向)に沿って延びていてもよいことは言うまでもない。また、図14に示す構成において、孤立している他方の第2電極20a(b)に代えて、一方の電極20a(a)~20a(a)の裏側(表示面側)に他方の第2電極20a(b)~20a(b)を各々形成してもよいことは言うまでもない。
【0062】
(その他の実施の形態)
以上説明した本実施の形態に係る発光素子モジュール30において、ダメージ検出回路が形成されてもよい。ダメージ検出回路は、通常、発光素子モジュール30において圧力が加わる領域に設置され、発光素子モジュール30に対して異常な応力が加わったか否かを検知することができる。ダメージ検出回路としては、例えば、規定以上の圧力(例えば回路13が壊れる程度の圧力)が加わる前に自ら破断する構成のものを例示できる。他に、発光素子21は複数の発光色を有しておいてもよく、発光色毎に第2基板20に発光素子21を配置し、第1基板10と接続を繰り返すことも可能となる。第2基板20は、第1電極10aと第2電極20aとの接合後に取り外すことも可能である。
【0063】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、係る実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0064】
10 第1基板
10a 第1電極
10b 回路の端子
11(1) 第1配線
11(2) 第2配線
11(3) 第3配線
11(n) 第n配線
11a 一端部
11b 他端部
11c 端部
11d 本体部
11e 突出部
12 層間絶縁膜
13 回路
13a 回路素子
14 保護層
14a 開口部
16 抵抗
20 第2基板
20a 第2電極
21 発光素子
30 発光素子モジュール
F 力
Fx 第1分力
Fy 第2分力
H 熱
L 光
X 厚み方向に直交する方向
Y 厚み方向
α 電極間領域
β 電極領域
γ 指標部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18