(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
B60Q1/04 E
(21)【出願番号】P 2018156322
(22)【出願日】2018-08-23
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】北澤 達磨
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016122499(DE,A1)
【文献】特開2017-162805(JP,A)
【文献】特開2015-016733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右1対で使用される右側灯具および左側灯具の一方である車両用灯具であって、
強度分布が可変であるビームを生成可能な配光可変ランプと、
雪粒に対応する遮光部分を含む配光パターンを生成する配光コントローラと、
を備え、
前記配光パターンの前記遮光部分とは無関係
に、前記右側灯具および左側灯具の他方の前に存在する遮蔽物に起因してダークスポットが発生した場合に、当該ダークスポットが低減されるように、前記配光コントローラは、前記ダークスポットの部分に対して、それ以外の部分に比べてスポット的に相対的に強い光が照射されるように、前記配光パターンを補正することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
強度分布が可変であるビームを生成可能な配光可変ランプと、
雪粒に対応する遮光部分を含む配光パターンを生成する配光コントローラと、
を備え、
前記配光パターンの前記遮光部分とは無関係にダークスポットが発生した場合に、当該ダークスポットが低減されるように、前記配光コントローラは、前記ダークスポットの部分に対して、それ以外の部分に比べてスポット的に相対的に強い光が照射されるように、前記配光パターンを補正し、
前記配光コントローラは、別の車両用灯具からの情報にもとづいて前記ダークスポットを検出することを特徴とす
る車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
夜間やトンネル内での安全な走行に車両用灯具が重要な役割を果たす。運転者による視認性を優先させて、車両前方を広範囲に明るく照射すると、自車前方に存在する先行車や対向車(以下、前方車という)の運転者や歩行者にグレアを与えてしまうという問題がある。
【0003】
近年、車両の周囲の状態にもとづいて、配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)技術が提案されている。ADB技術は、前方車や歩行者の有無を検出し、前方車あるいは歩行者に対応する領域を減光あるいは消灯するなどして、前方車の運転者や歩行者に与えるグレアを低減するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
降雪時(あるいは降雨時)にヘッドランプを点灯すると、雪粒にビームが反射して運転者にグレアを与え、かって前方が見にくくなると言う問題がある。この問題を解決するために、本発明者は、雪粒に対応する部分を遮光する雪よけ制御について検討した。雪よけ制御を行うと、雪粒に対応して遮光した部分が路面等に投影され、ダークスポットを発生させ、車両前方の視認性が低下する場合がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、車両前方の視認性の改善にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、車両用灯具システムに関する。車両用灯具システムは、右側灯具および左側灯具を備える。右側灯具および左側灯具は、それぞれが独立して制御可能な強度分布を有するビームを生成する。車両用灯具システムは、右側灯具および左側灯具の一方のビームに起因して生ずるダークスポットを、他方のビームを用いて低減可能に構成される。
【0008】
本発明の別の態様は、車両用灯具である。この車両用灯具は、強度分布が可変であるビームを生成可能な配光可変ランプと、雪粒に対応する遮光部分を含む配光パターンを生成する配光コントローラと、を備える。配光コントローラは、配光パターンの遮光部分とは無関係なダークスポットが低減されるように、配光パターンを補正する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両前方の視認性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る車両用灯具システムのブロック図である。
【
図2】
図2(a)、(b)は、ダークスポットを説明する図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、雪よけ制御を説明する図である。
【
図5】雪よけ制御におけるダークスポットの発生と、その低減を説明する図である。
【
図6】第1実施例に係る車両用灯具のブロック図である。
【
図7】第2実施例に係る車両用灯具のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態の概要)
本明細書に開示される一実施の形態は、車両用灯具システムに関する。車両用灯具システムは、それぞれが独立して制御可能な強度分布を有するビームを生成する右側灯具および左側灯具を備える。右側灯具および左側灯具の一方のビームに起因して生ずるダークスポットを、他方のビームを用いて低減可能である。
【0013】
この車両用灯具システムによれば、左側灯具のビームと右側灯具のビームの合成により得られる配光パターンのムラやちらつきを低減でき、前方の視認性を高めることができる。
【0014】
ダークスポットは、一方のビームの遮光部分に起因して生ずるものでありうる。たとえば降雪時において、雪粒にビームが照射されると、反射光が運転者にグレアを与える。これを防止するために、左右の灯具に、雪粒に対応する部分を遮光する制御を組み込んだとする。そうすると、遮光部分を有するビームが路面などに投影されると、遮光部分がダークスポットとして現れ、照度ムラとなる。加えて雪粒は時々刻々と移動し、かつ無数に存在しうるため、ダークスポットがランダムに移動し、ちらつきを発生させる。他方の灯具のビームによってダークスポットを高い照度で照射すれば、ダークスポットを低減することができ、前方の視認性を高めることができる。
【0015】
(実施の形態)
以上が車両用灯具の概要である。以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、この用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0016】
図1は、実施の形態に係る車両用灯具システム200のブロック図である。車両用灯具システム200は、左側灯具210Lおよび右側灯具210Rを備える。左側灯具210Lは左ビームBM_Lを出射し、右側灯具210Rは右ビームBM_Rを出射する。左ビームBM_Lおよび右ビームBM_Rはそれぞれが車両前方の仮想鉛直スクリーンSCNに投影されて、パターニングされた左配光パターンPTN_Lおよび右配光パターンPTN_Rを形成する。左配光パターンPTN_Lおよび右配光パターンPTN_Rが合成されて、合成配光パターン(単に配光パターンともいう)PTNが形成される。左側灯具210Lおよび右側灯具210Rは、それぞれが独立して、左ビームBM_L、右ビームBM_Rの強度分布を制御可能となっており、したがって左配光パターンPTN_Lと右配光パターンPTN_Rも独立に制御可能である。
【0017】
右ビームBM_Rおよび左ビームBM_Lそれぞれの空間強度分布は、車両前方の状況や、走行状況に応じて時々刻々と変化する。そして、それらの空間強度分布には、輝度がゼロ、あるいは著しく低い遮光部分が含まれる場合がある。遮光部分を含むビームが、車両前方の路面や物体に投影されると、遮光部分がダークスポットとして現れる。
【0018】
図2(a)、(b)は、ダークスポットを説明する図である。
図2(a)には車両300および路面302を上から見た様子が示される。ここでは右側灯具210Rに着目する。右側灯具210Rは配光可変ランプ212Rを含む。
図2(b)には、配光可変ランプ212Rの出射光の断面プロファイル(空間強度分布)の一例が示されている。右ビームBM_Rは、配光可変ランプ212Rの出射光が図示しない光学系を通過することにより形成され、右ビームBM_Rが路面等に照射されて、右配光パターンPTN_Rが形成される。
図2(b)に示す空間強度分布320には、遮光部分322が含まれる。遮光部分322は、
図2(a)の右配光パターンPTN_Rにダークスポット324を発生させる。
【0019】
車両用灯具システム200は、右側灯具210Rの右ビームBM_Rに起因して生ずるダークスポット324を、左側灯具210Lの左ビームBM_Lを用いて低減可能に構成される。同様に車両用灯具システム200は、左側灯具210Lの左ビームBM_Lに起因して生ずるダークスポットを、右側灯具210Rの右ビームBM_Rを用いて低減可能に構成される。
【0020】
以上が車両用灯具システム200の構成である。続いて車両用灯具システム200の動作を説明する。
図3は、ダークスポットの低減を説明する図である。
図3には上から順に、右配光パターンPTN_Rの照度分布、左配光パターンPTN_Lの照度分布、それらを合成した配光パターンの照度分布PTNを示す。この強度分布は、
図2(a)の破線A-A’における水平方向の照度分布に相当する。
【0021】
左配光パターンPTN_Lは、合成パターンPTNの照度分布が均一に近づくように、右配光パターンPTN_Rのダークスポット324に対応する部分において、スポット的に照度が高くなっている。左側灯具210Lは、左配光パターンPTN_Lが得られるように、配光可変ランプ212Lの出射光の強度分布を決定する。
【0022】
降雪時に、雪粒にビームを照射すると、反射光が運転者にグレアを与える。そこで車両用灯具システム200は、雪粒に雪粒に対応する部分を遮光する制御(以下、雪よけ制御という)を行う。
図4(a)、(b)は、雪よけ制御を説明する図である。
図4(a)は、車両前方を撮影したカメラ画像IMGを、
図4(b)は
図4(a)のカメラ画像に対応する配光パターンPTNを示す。カメラ画像IMGには、雪粒6、人8、車両10が写っている。配光コントローラ140はカメラ画像IMGの中から雪粒6を検出し、配光パターンPTNの対応する部分7を遮光する。
【0023】
配光コントローラ140は、いわゆるADB制御を行ってもよく、その場合、車両10などのグレアを与えるべきでない物標を検知すると、それと対応する部分11も遮光される。
【0024】
配光パターンPTNは、たとえば30fpsあるいはそれ以上のレートで更新され、遮光部分7を雪粒6に追従して移動させることができる。これにより、雪粒6の反射光を低減でき、前方の視認性を改善できる。
【0025】
雪よけ制御を行うと、遮光部分がダークスポットの原因となりうるが、実施の形態に係る車両用灯具システム200によれば、このダークスポットも解消することができる。
【0026】
図5は、雪よけ制御におけるダークスポットの発生と、その低減を説明する図である。右側灯具210Rに着目すると、雪粒6a,6bに対応して、右ビームBM_Rは2つの遮光部分を含んでおり、右配光パターンPTN_Rは2個のダークスポット324a,324bを含んでいる。この2個のダークスポット324a,324bを低減するために、左側灯具210Lが生成する左ビームBM_Lは、2個のホットスポット326a,326bを含む。右配光パターンPTN_Rのダークスポットは、左配光パターンPTN_Lのホットスポットと相殺される。
【0027】
左側灯具210Lに着目すると、雪粒6c,6dに対応して、左ビームBM_Lは2つの遮光部分を含んでおり、左配光パターンPTN_Lは2個のダークスポット324c,324dを含んでいる。この2個のダークスポット324c,324dを低減するために、右側灯具210Rが生成する右ビームBM_Rは、2個のホットスポット326c,326dを含む。左配光パターンPTN_Lのダークスポットは、右配光パターンPTN_Rのホットスポットと相殺される。
【0028】
このように実施の形態に係る車両用灯具システム200によれば、雪よけ制御に起因するダークスポット(照度ムラ)を解消できる。さらに、無数の雪粒6が同時に移動すると、ダークスポットの位置がランダムに移動し、ちらつきとなりうるが、車両用灯具システム200によれば、ダークスポットの移動に追従してホットスポットを移動させることによりちらつきを低減でき、前方の視認性を高めることができる。
【0029】
続いて左側灯具210L、右側灯具210Rとして用いることが可能な車両用灯具100について説明する。
【0030】
図6は、第1実施例に係る車両用灯具100Aのブロック図である。車両用灯具100Aは、配光可変ランプ110、赤外照明120、赤外線カメラ130、配光コントローラ140、可視光カメラ150を備える。これらはすべて同じ筐体に内蔵されていてもよいし、いくつかの部材は、筐体の外部、言い換えれば車両側に設けられてもよい。
【0031】
配光可変ランプ110は、白色光源を含み、配光コントローラ140から配光パターンPTNを指示するデータを受け、配光パターンPTNに応じた強度分布を有する白色のビームL3を出射し、車両前方に配光パターンPTNに応じた照度分布を有する照射パターン902を形成する。配光可変ランプ110の構成は特に限定されず、たとえば、LD(レーザダイオード)やLED(発光ダイオード)などの半導体光源と、半導体光源を駆動して点灯させる点灯回路と、を含みうる。配光可変ランプ110は、個別にオンオフ可能な複数の発光素子のアレイであってもよい。あるいは配光可変ランプ110は、配光パターンPTNに応じた照度分布の形成のために、DMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイスなどの、マトリクス型のパターン形成デバイスを含んでもよい。配光可変ランプ110は、雪粒の部分のみを遮光できる程度の分解能を有する。
【0032】
赤外照明120は、車両前方に赤外のプローブ光L1を照射するプローブ光源である。プローブ光L1は、近赤外であってもよいし、より長波長の光であってもよい。赤外線カメラ130は、車両前方の物体2によるプローブ光L1の反射光L2を撮像する。赤外線カメラ130は、少なくともプローブ光L1の波長域に感度を有していればよく、可視光に対して不感であることが好ましい。
【0033】
配光コントローラ140は、赤外線カメラ130が撮影した画像(以下、カメラ画像IMGという)にもとづいて、配光可変ランプ110に供給する配光パターンPTNを動的、適応的に制御する。配光パターンPTNは、配光可変ランプ110が自車前方の仮想鉛直スクリーン900上に形成する白色光の照射パターン902の2次元の照度分布と把握される。配光コントローラ140はデジタルプロセッサで構成することができ、たとえばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。
【0034】
配光コントローラ140は、赤外線カメラ130により得られたカメラ画像IMG1にもとづいて、画像処理によって雪粒を検出する。雪粒の検出アルゴリズムは特に限定されない。配光コントローラ140は、カメラ画像IMGの連続する複数のフレームにもとづいて、雪粒を検知してもよい。
【0035】
配光コントローラ140は、雪粒に対応する部分が遮光された配光パターンPTNを生成する。「ある部分を遮光する」とはその部分の輝度(照度)を完全にゼロとする場合のほか、その部分の輝度(照度)を低下させる場合も含む。
【0036】
可視光カメラ150は、車両前方を撮影する。可視光カメラ150が生成するカメラ画像IMG2は、車両用灯具100A自身が生成する照射パターン902に加えて、車両用灯具100Aとは別のもう一方の車両用灯具が生成する照射パターンを含んでいることに留意されたい。配光コントローラ140は、カメラ画像IMG2にもとづいて、ダークスポットを検出する。そしてダークスポットが相殺できるように、ホットスポットを配置し、配光パターンPTNを修正する。なお、検出したダークスポットとホットスポットの位置が一致する場合、そのダークスポットは、車両用灯具100A自身の雪よけによるものであるから、ホットスポットは追加しない。
【0037】
以上が車両用灯具100Aの構成例である。この車両用灯具100Aによれば、雪粒6の部分を遮光できるとともに、反対側の車両用灯具が発生させるダークスポットを検出し、その部分を明るく照射することができる。これにより、雪粒の反射によるグレアを低減できるとともに、遮光による照度のムラを抑制できる。
【0038】
第1実施例は、左右の車両用灯具それぞれが独立して動作するものであり、各車両用灯具は、自分自身でホットスポットを検出するものであった。これに対して、第2実施例では、左右の車両用灯具が協調動作し、情報を授受しあう。
【0039】
図7は、第2実施例に係る車両用灯具100Bのブロック図である。車両用灯具100Bは、
図6の可視光カメラ150に代えて、あるいはそれに加えて、インタフェース回路160を備える。インタフェース回路160は、バス220を介して、外部と情報の送受信が可能となっている。インタフェース回路160は、バス220を介して、反対側の車両用灯具100Bと直接接続され、情報を送受信可能であってもよい。あるいはインタフェース回路160は、車両側ECU(Electronic Control Unit)222を経由して、反対側の車両用灯具100Bと接続されてもよい。
【0040】
車両用灯具100Bは、自身が生成するビームL3の遮光部分の位置情報を、インタフェース回路160を介して反対側の車両用灯具100Bに通知可能である。遮光部分の位置情報は、遮光部分の座標データを含んでもよいし、配光可変ランプ110に与える配光パターンPTNそのものであってもよい。裏を返すと、車両用灯具100Bは、反対側の車両用灯具Bが生成するビームL3の遮光部分の位置情報を受信可能となっている。
【0041】
配光コントローラ140は、インタフェース回路160が受信した遮光部分の位置情報にもとづいて、ダークスポットの位置を推定し、ダークスポットを相殺できるようにホットスポットを配置する。当然ながら右側灯具と左側灯具とでは視差があるため、配光コントローラ140によるホットスポットの位置決め処理は、視差補正を含みうる。
【0042】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0043】
(変形例1)
実施の形態では、雪粒についての遮光制御を説明したが、雨粒についても遮光制御の対象としてもよい。
【0044】
(変形例2)
実施の形態では、プローブ光として赤外線を用いたがその限りでない。配光可変ランプ110が出射するビームL3をプローブ光として用いて、雪粒を検知することも可能である。この場合、プローブ光の照射時間が長いと、運転者に対するグレアとなるため、プローブ光の発光時間を、反射光L2を運転者が検知できない程度に短くすればよい。ビームL3をプローブ光として用いる場合であっても、有効領域と無効領域に分割する制御は有効であり、それに対応する効果を享受できる。
【0045】
(変形例3)
実施の形態では、雪粒に対応する遮光部分に起因するダークスポットを補正する場合を説明したが、本発明の適用はそれに限定されない。たとえば、歩行者に与えるグレアを防止するために、歩行者の頭部を遮光する制御を行ったとすると、その遮光部分に対応してえダークスポットが発生しうるが、本発明によれば、そのようなダークスポットにも対応することができる。
【0046】
(変形例4)
第1実施例(
図6)に係る車両用灯具100Aによって検出されるダークスポットは、必ずしも反対側の車両用灯具の遮光部分に起因するものであるとは限らない。たとえば右側灯具が、均一
な強度分布のビームを出射している場合であっても、そのすぐ前に遮蔽物となる物体(たとえば歩行者)が存在した場合、歩行者の影が投影され、左側灯具からはダークスポットとして観測されうる。このようなケースにおいて、左側灯具は遮蔽物に起因するダークスポットについても、強く照射することで、均一な合成配光パターンを形成するようにしてもよい。これにより、発生原因を問わずに、ダークスポットを解消して前方の視認性を高めることができる。
【0047】
あるいは遮蔽物に起因するダークスポットについては、存在を許容するようにしてもよい。雪よけ制御などの遮光制御に起因するダークスポットと、遮蔽物に起因するダークスポットは、大きさや形状から区別可能である。したがって、遮光制御に起因するダークスポットのみを強く照射しするようにしてもよい。
【0048】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0049】
200 車両用灯具システム
210L 左側灯具
210R 右側灯具
212 配光可変ランプ
220 バス
BM_L 左ビーム
BM_R 右ビーム
PTN_L 左配光パターン
PTN_R 右配光パターン
6 雪粒
7 遮光部分
100 車両用灯具
110 配光可変ランプ
120 赤外照明
130 赤外線カメラ
140 配光コントローラ
150 可視光カメラ
160 インタフェース回路
L1 プローブ光
L2 反射光
L3 ビーム
900 仮想鉛直スクリーン
902 照射パターン