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特許7267729発光素子を有するキッチン用または実験室用の設備および備付品
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  • 特許-発光素子を有するキッチン用または実験室用の設備および備付品 図1a
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  • 特許-発光素子を有するキッチン用または実験室用の設備および備付品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】発光素子を有するキッチン用または実験室用の設備および備付品
(51)【国際特許分類】
   C03C 4/02 20060101AFI20230425BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20230425BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20230425BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20230425BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20230425BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20230425BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20230425BHJP
   F24C 15/10 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
C03C4/02
C03C3/087
C03C3/085
C03C3/083
C03C3/091
C03C3/093
H05B6/12 305
F24C15/10 B
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018239696
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2019112296
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】10 2017 131 113.0
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2018 110 910.5
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エーフェリン ヴァイス
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ボックマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ビアギート デアク
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ ズィーバース
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヘン
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-500642(JP,A)
【文献】特表2015-530337(JP,A)
【文献】特表2014-523512(JP,A)
【文献】特表2013-531776(JP,A)
【文献】特表2014-519059(JP,A)
【文献】特表2012-520226(JP,A)
【文献】特開平02-055243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0260086(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0050880(US,A1)
【文献】独国実用新案第202016007247(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 -14/00
H05B 6/12
F24C 15/10
G09F 13/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子(2)および分離要素(3)を含む、キッチン用または実験室用の設備または備付品(1)であって、
前記分離要素(3)は、物品(1)の内部領域(4)を外部領域(5)から少なくとも部分的に分離し、
前記発光素子(2)は、物品(1)の内部領域(4)において、前記発光素子(2)から放出された光が、前記分離要素(3)を通過して物品(1)の外部領域(5)にいるユーザーにより知覚可能であるように配置されており、
前記分離要素(3)は、20℃~300℃の温度範囲で-6~6ppm/Kの熱膨張係数を有するガラス基板またはガラスセラミック基板を含み、
前記分離要素(3)は、前記発光素子(2)の領域において、光透過率が少なくとも0.1%かつ12%未満であり、
前記分離要素(3)は、標準光源D65の光を用いて、ブラックトラップを背景にして反射を測定した場合、座標L20~40、a-6~6およびb-6~6のCIELAB色空間における色座標を有し、
前記標準光源D65の光の色座標は、前記分離要素(3)の通過後に、色度図CIExyY-2°で以下の座標:
【表1】
により特定される白色領域W1内にあり、前記ガラス基板またはガラスセラミック基板が、20~300℃の間で-2.5~2.5×10 -6 /Kの熱膨張係数CTEを有するガラスセラミック基板であるか、20~300℃の間で3.5~6×10 -6 /Kの熱膨張係数CTEと、500~650℃のガラス転移温度T を有するガラス基板である、設備または備付品(1)。
【請求項2】
黒体補正フィルタを含まないことを特徴とする、請求項1記載の設備または備付品(1)。
【請求項3】
前記発光素子(2)の領域における前記分離要素(3)は、光透過率が少なくとも2%であり、かつ9%未満であることを特徴とする、請求項1または2記載の設備または備付品(1)。
【請求項4】
前記分離要素(3)は、1600nmの波長で、透過率が少なくとも30%であり、かつ/または900nm~1000nmの範囲にある少なくとも1つの波長で、透過率が少なくとも3%であり、かつ/または3.25μm~4.25μmの範囲にある少なくとも1つの波長で、透過率が少なくとも10%であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の設備または備付品(1)。
【請求項5】
分離要素(3)は、反射状態を測定した場合に、Lが35以下であり、かつ22以上であり、aが-4~4であり、bが-4~4であるCIELAB色空間における色座標を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の設備または備付品(1)。
【請求項6】
前記分離要素(3)は、ガラス基板またはガラスセラミック基板と、光透過率を調整するための被覆とを有し、ここで前記被覆は、以下の材料系、スピネル、サーメット、カーバイド、カーボナイトライドのうちの1種からなることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の設備または備付品(1)。
【請求項7】
前記分離要素(3)の前記ガラスセラミック基板は、着色成分としてMoOを0.003~0.25質量%含有し、かつNdを0.2質量%未満含有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の設備または備付品(1)。
【請求項8】
前記分離要素(3)を通して見た場合に、RALカラー9017のカラーカードのグレースケール測定値に相応する、パーセントにより記載されるグレースケールGと、分離要素(3)を通して見た場合に、RALカラー9003のカラーカードのグレースケール測定値に相応する、パーセントにより記載されるグレースケールGとの間において、差|G-G|が5.0%未満であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の設備または備付品(1)。
【請求項9】
前記分離要素(3)は、ヘイズが最大でも5%であり、かつ/または透明度が少なくとも90%であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の設備または備付品(1)。
【請求項10】
前記発光素子(2)は、可視スペクトル領域において少なくとも2つの強度最大値を有しており、かつ/またはLEDおよび/もしくは7セグメントディスプレイとして構成されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の設備または備付品(1)。
【請求項11】
物品(1)が、台、キッチン棚、キッチン用の装置、オーブン、マイクロ波装置、冷蔵庫、グリル、蒸し器、トースターまたは換気フードであることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の設備または備付品(1)。
【請求項12】
前記分離要素(3)が、天板、キッチン作業用天板、コンロまたはオーブンの扉、電子レンジ扉、家具本体の一部、扉もしくは引き出しの前面部の一部であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の設備または備付品(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱安定性のガラス基板またはガラスセラミック基板と発光素子とを有するキッチン用または実験室用の設備または備付品に関する。
【0002】
キッチン用および実験室用の設備および備付品では、ガラスまたはガラスセラミック製のパネルが多種多様に用いられている。このためには、例えば耐薬品性もしくは耐熱性または光学特性に対する要求に応じて、様々なガラスまたはガラスセラミックが選択される。
【0003】
例えばオーブン、冷蔵庫およびマイクロ波装置の扉における覗き窓として、調理器具およびコーヒーマシンの操作装置の遮蔽パネルとして、キッチン棚または実験室用備品の作業台として、私的領域および専門的領域の双方において、ガラスまたはガラスセラミック製のパネルが存在する。
【0004】
これらの物品はさらに、例えば稼働状態を表示するために、または装飾用の照明のために備えられた発光素子を有している頻度が高くなっている。
【0005】
ガラスまたはガラスセラミック製のパネルを有する設備および備付品において発光素子を使用する際の技術的な難点は、一方では物品のユーザーが発光素子により放出された光を良好に知覚できることが望ましいにもかかわらず、他方ではユーザーから物品の内部領域(4)が見えるのを防止することが望ましい点である。すなわち、一方ではガラスまたはガラスセラミックの透過特性ができるだけ高く、他方ではできるだけ低いことが望ましいという要求に対する相反した目的が存在する。
【0006】
これに対する従来技術から公知の単純な解決アプローチは、透明で着色されていないガラスまたは透明で着色されていないガラスセラミックに不透明な被覆を設け、光が透過すべき領域ではこの被覆に中抜き部分を設けることである。しかしながら、このような中抜き部分は、各発光素子のスイッチが切られていても目視可能であり、これは美観上の理由から妨げになる印象を受ける。
【0007】
着色された材料とは、その種類にかかわらず、その組成に基づいて光透過率が最大でも80%になるように透過光を吸収するあらゆる材料であると理解すべきである。すなわち、着色された材料は、その組成において着色性または吸収性の成分を含有する。これは例えば染料、顔料またはその他の着色性の化学化合物であってもよい。これとは異なり、それ自体が80%超の光透過率を有するものの、色を付与する被覆、例えば着色された被覆をその表面に有する材料は、着色されていると理解すべきではない。
【0008】
別の解決アプローチは、暗色に着色されたガラスまたはガラスセラミックを使用することである。例えば調理面用の着色されたガラスセラミックは基本的に着色のためにバナジウムイオンを含有する。というのも、バナジウムイオンは可視光領域で吸収し、かつ赤外線領域では高い透過率を可能にする特殊な特性を有するからである。Vを用いたこのような着色は、例えば独国特許出願公開第102008050263号明細書(DE102008050263A1)から公知である。このような着色ガラスセラミックの場合、発光素子との関連で可視スペクトル領域にある透過特性は表示装置により表示され、ガラスセラミックを透過した色の変化につながるという問題が生じる。このような不所望の色ずれは、色補正フィルタを設置することで補正することができるが、これは追加の費用を生じる。このような色補正フィルタは独国特許出願公開第102011050873号明細書(DE102011050873A1)から公知である。
【0009】
光透過性被覆を有する透明で着色されていないガラスセラミックについても同じことがいえる。英国特許第2430249号明細書(GB2430249B)には、例えばガラスセラミック製のコンロ(もしくはトッププレート)用の、スパッタリングにより設けられた下側被覆が開示されており、この被覆は青色または緑色スペクトル領域よりも、赤色スペクトル領域において高い透過率を有するため、着色されたガラスセラミックと同じように振る舞う。このような被覆の場合も同様に、さらなる色補正フィルタを設ける可能性が生じる。
【0010】
さらに光学的な用途については、ガラスを通過する光の色座標をシフトさせないように特別に最適化された被覆したガラスまたは着色ガラスも知られている。NDフィルタまたはグレーガラスとしても知られるこのような系は、耐熱性または耐薬品性が不足しているため、キッチンまたは実験室における使用には適していない。殊に反射型NDフィルタは一般的にキッチンまたは実験室での使用に不適切である。というのも、反射型NDフィルタは、軽い汚れや傷であっても著しく目立つため、クリーニングの手間がかかるからである。とりわけ、NDフィルタおよびグレーガラスは、赤外スペクトル領域で調理器具における使用に必要な透明性を示すことはない。
【0011】
本発明の課題は、発光素子を有するキッチン用または実験室用の設備または備付品であって、従来技術に存在する欠点を克服するか、少なくとも改善する設備または備付品を提供することである。
【0012】
前記課題は、請求項1に記載のキッチン用または実験室用の設備または備付品により解決される。有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0013】
このようなキッチン用または実験室用の設備または備付品は、発光素子および分離要素を含み、前記分離要素は、物品の内部領域を外部領域から少なくとも部分的に分離し、かつ20℃~300℃の温度範囲で0~6ppm/Kの熱膨張係数を有するガラス基板またはガラスセラミック基板を含む。発光素子は、発光素子から放出された光が分離要素を通過して物品の外部領域にいるユーザーにより知覚可能であるように、物品の内部領域に配置されている。分離要素は、発光素子の領域において、すなわち発光素子から放出された光が分離要素を通過すべき領域において、光透過率が少なくとも0.1%であり、かつ少なくとも12%未満である。さらに、分離要素は、標準光源D65の光を用い、ブラックトラップ(測光の際の黒色の背景)を背景にして反射を測定した場合に、座標L20~40、a-6~6およびb-6~6のCIELAB色空間における色座標を有する。最後に、分離要素は、標準光源D65の光の色座標が分離要素を通過した後に、色度図CIExyY-2°で以下の座標:
【表1】
により特定される白色領域W1内にあることを特徴とする。
【0014】
本発明の意味において、キッチン用または実験室用の設備または備付品とは、詳細な構造形態にかかわらず一般的に、キッチン用の家具もしくは実験室用の備品または好適にはキッチン用もしくは実験室用の電動装置であると理解される。ここでキッチン用の家具または実験室用の備品には、殊に上側に作業台を有する棚および机がある。キッチン用の装置、例えば調理器具、冷蔵庫、マイクロ波装置、グリル、オーブン、蒸し器、トースターまたは換気フードとは、私的領域および専門的領域のいずれのためのものでもよいと解釈できる。同様に物品とは、別個に配置された操作パネルであってもよく、ユーザーはこの操作パネルを介して、これにより制御可能な1つ以上の装置を操作することができる。本発明による装置は例えばキッチン用の家具または実験室用の備品に組み込み可能であるか、または室内に自由に設置することができる。実験室用の装置には、特にオーブン、デシケータ、冷蔵庫またはホットプレートもある。
【0015】
本発明による物品は少なくとも1つの発光素子を有する。このような発光素子は、例えば光を発生させるLED、OLED、レーザーダイオード、ハロゲンランプまたは蛍光管、ならびに光を形成および放射する適切な手段、例えば鏡、レンズ、空間光変調器(SLM)、導光器などを有していることができる。適切な発光素子には殊に、例えば白色、赤色、青色、緑色もしくはRGBLED、または白色、赤色、青色、緑色もしくはRGB7セグメントディスプレイがある。発光素子は、可視スペクトル領域において少なくとも2つの強度最大値を有すること、すなわち、2つの異なる波長で放出スペクトルの極大値を有することが好ましい。これは、7セグメントディスプレイとして構成されている場合でも、例えば白色およびRGBLEDまたは白色OLEDにおいて該当する。
【0016】
また発光素子は殊に発熱体近くの高温領域に配置されていてもよい。その場合、特に感温性黒体補正フィルタを必要としないことが物品の外部領域において白色の照明効果を生じるためには有利である。
【0017】
好適には発光素子が赤色の表示素子として構成されていてもよい。これは殊に赤色のセグメントディスプレイまたは赤色のTFTディスプレイとして構成されていてもよい。赤色のTFTディスプレイは、例えば赤色の背景照明を有するLCDディスプレイまたは赤色のOLEDディスプレイとして構成されていてもよい。
【0018】
本発明による物品はさらに、物品の内部領域を外部領域から少なくとも部分的に分離し、かつガラス基板またはガラスセラミック基板を含む分離要素を含む。
【0019】
すなわち、キッチン用または実験室用の装置の場合、分離要素は少なくとものハウジングの一部または場合により扉の一部であってもよい。そのような例としては、コンロのユーザーが存在するその外部領域から、表示装置以外に例えば発熱体が存在するコンロの内部領域を分離する調理台がある。同様に、オーブンまたは電子レンジの扉における覗き窓も本発明による分離要素である。キッチン用の家具または実験室用の備品において、このような分離要素は、家具本体の少なくとも一部または扉もしくは引き出しの前面部であってもよい。分離要素は、キッチンまたは実験室の家具または備品の作業台の一部または全体であることが特に好ましい。
【0020】
キッチン用および実験室用の設備および備付品のすべての形態に関して、耐熱衝撃性および耐薬品性は特に重要なパラメーターである。殊に使用時に高温が生じる装置の部品、例えばコンロ、ホットプレート、オーブン、熱分解機能付オーブン、電子レンジまたはグリルについては特に要求度が高い。しかしながら、キッチンまたは実験室以外の実質的にすべての領域も温度安定性である必要がある。というのも、これらの領域は常に、熱いか、または非常に冷たい物品または液体と接触する恐れが存在するからである。このような接触の際に、温度は局所的に制限された領域で非常に迅速に変化し、それによって材料に応力が生じ、この応力によって、殊に脆性破壊性の材料、例えばガラスおよびガラスセラミックでは直ちに破壊が生じる。
【0021】
ガラス基板またはガラスセラミック基板が、ISO7991に準拠して20℃~300℃、好ましくは20℃~700℃の温度範囲で-2.5~最大でも2.5×10-6/K、好ましくは-1.5×10-6/K~最大でも1.5×10-6/Kの線形熱膨張係数CTEを有することで、非常に良好な熱温度耐性を極めて効果的に達成することができる。殊にガラスセラミックの場合、CTEはこの温度範囲においてマイナスの値も想定することができる。このように熱膨張係数が低い場合、温度勾配が大きくても基板において応力は生じない。この値は例えば、石英ガラスまたはリチウム-アルミニウム-シリケートガラスセラミック(LASガラスセラミック)、例えばSCHOTT AG社の商標CERAN(登録商標)により達成される。
【0022】
ガラスまたはガラスセラミックのCTEの値が高く、かつ使用時に生じ得る温度勾配が大きくなり得るほど、応力により誘発される破壊のリスクが高くなる。このリスクは、ガラスまたはガラスセラミックに熱的または化学的に予備応力をかけることで抑制することができる。このような予備応力により、熱応力に対して反対作用を及ぼす圧縮応力がガラス表面に生じる。
【0023】
その際、経済的な理由から、熱により予備応力をかけることが特に好ましい。ただしこれは技術的な理由から、少なくとも2mmの厚さおよび3.5×10-6/K超のCTEを有するガラスの場合に実施可能であるにすぎない。さらに、これらのガラスのガラス転移温度Tは、とりわけ3.5~6×10-6/Kの間のCTEを有するガラスの場合、市販の予備応力炉により約10MPa超の十分に高い予備応力値を達成できるためには、ISO7884-8またはDIN52324で測定して、その値が約650℃を上回ってはならない。
【0024】
すなわち、20~300℃で6×10-6/K超のCTEを有するガラスは予備応力がかかっていることが一般的であり、キッチンおよび実験室における使用には適していない。つまり本発明による物品について、ガラス基板またはガラスセラミック基板は、CTEが20~300℃で最大でも6×10-6/Kである必要がある。一般に、CTEがより高いガラス、例えば約9×10-6/KのCTEを有するソーダ石灰ガラスにはたしかに良好に熱による予備圧力をかけることができる。しかしながらそれでも、得られる予備応力値は、熱的負荷がかかった場合に生じる熱膨張による大きな応力を相殺できるほどではない。熱的にも化学的にも予備応力がかけられたガラス基板について、予備応力は長時間をかけて高温の負荷により低減されることに注目すべきである。この低減はガラスのTが低いほどより迅速に進行する。よって、キッチンおよび実験室において使用するためには、予備応力がかけられたガラスは、Tが少なくとも500℃、好ましくは少なくとも550℃である必要がある。すなわち、20~300℃で2.5×10-6/K未満のCTEを有するガラスセラミックを使用するか、20~300℃で3.5~6×10-6/KのCTEと、500~650℃、殊に550~650℃のTとを有するガラスを使用することが好ましい。
【0025】
耐熱性と同様に重要なのは、酸およびアルカリ液に対するガラス基板またはガラスセラミック基板の耐薬品性である。これは、実験室において薬品を取り扱うため一般的に有利であり、キッチンにおいては洗剤および食品成分に対する耐性が殊に重要である。よって、酸化物ベースで10質量パーセント超の高い割合のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を有するガラス、例えばソーダ石灰ガラスは殊に本発明による物品に適していない。
【0026】
分離要素は、発光素子の領域、すなわち発光素子から放出された光が分離要素を通過すべき領域において、光透過率が少なくとも0.1%かつ12%未満である。分離要素は、発光素子の領域において光透過率が少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも0.9%、特に好ましくは少なくとも1%、殊に少なくとも2%または少なくとも3%であることが好ましい。さらに分離要素は、光透過率が9%未満、好ましくは7%未満、特に好ましくは5%未満、殊に4%未満または3%未満であることが好ましい。また光透過率は、例えば0.1%~5.0%、0.5%~3.0%、0.9%~2.0%、1%~9%、2%~7%または3%~4%の範囲のうちの少なくとも1つであってもよい。この透過率の範囲において、発光素子の光は分離要素を十分に通過することができ、ここで同時に、物品の内部領域が見えなくなる。光透過率が約2%超である場合、合計透過率を低減するための手段を分離要素と発光素子との間にさらに配置することが有利であり得る。
【0027】
このような手段は、外部の影響、殊に機械的負荷による損傷から保護されるよう、内部領域に面した側に配置されている。このような手段は、ガラス基板またはガラスセラミック基板上の被覆であっても、フィルムであっても、自立型支持材料であってもよく、例えばガラス、プラスチック、または例えばマイカもしくは繊維物質のような層状ケイ酸塩(雲母)を含有する絶縁材料からなるパネルまたはフィルムである。所望の光透過率を達成するために、このような手段を複数組み合わせてもよい。そのために、例えば複数の被覆、または被覆されたフィルム、または支持材料を使用してもよい。
【0028】
このような手段の光透過率を分離要素の光透過率に適合させることが有利である。分離要素の光透過率が高いほど、合計透過率を低減するための手段の光透過率を低く選択することが有利である。分離要素および遮蔽材の合計透過率を2%以下の値に調整することが特に有利である。
【0029】
被覆の形で合計透過率を低減させるための手段は、例えば、エナメル、ゾル-ゲル材料または着色されたシリコーンに基づいて製造することができる。キッチン用の装置に適したエナメルに基づく被覆は、例えば独国特許出願公開第102015103461号明細書(DE102015103461A1)から公知である。そこでは特にスピネル系顔料、例えばCo(Cr、Fe)または(Mn、Fe)を添加しながらLAS材料系に基づくガラスフラックスを使用することで、L=25、a=0およびb=-0.5、またはL=27、a=2およびb=1のような色座標を得ることができることが開示されている。被覆組成物における顔料およびそれらの量は、意図された被覆の層厚で光透過率が例えば15%未満になるように選択することができる。場合によって、光透過率を複数層の被覆により低減させてもよい。
【0030】
独国特許出願公開第102008031428号明細書(DE102008031428A1)には、キッチン用の装置に適したゾル-ゲル系の被覆が開示されており、その色座標は、30<L<85、-8<a<8および-8<b<8の範囲で調整可能である。そのために、テトラエトキシオルトシラン(TEOS)とトリエトキシメチルシラン(TEMS)との混合物を調製し、その際、アルコールを溶媒として添加することができる。金属酸化物水性分散液、殊にコロイド分散SiO粒子の形態にあるSiO分散液を、酸、好適には塩酸と混合する。均質性を改善するために、別々に調製された2つの混合物を撹拌してもよい。引き続き、2つの混合物を合して混合する。好ましくはこの混合物を常に撹拌しながら、例えば1時間にわたり熟成させる(reifen)ことが有利である。この混合の開始に並行して、顔料および任意でさらなるフィラー、好ましくは焼成シリカを秤量し、熟成中の混合物に添加し、分散させることができる。黒色の層を得るためには、被覆された小板形の顔料67質量%と微粉末状のグラファイト33質量%とを有する顔料混合物を使用する。
【0031】
光透過率は、DIN EN410に準拠して、標準光源D65の光を使用し、380nm~780nmの波長範囲で求められる。光透過率は、CIExyY-2°の色空間における明度Yと同じである。
【0032】
分離手段は、好ましい実施形態では630nmの波長で透過率が少なくとも2%、好ましくは少なくとも4%、特に好ましくは少なくとも10%である。
【0033】
さらに好ましい実施形態では、透過率は470nmの波長で少なくとも1%、好適には少なくとも2%、特に好ましくは少なくとも4%である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、分離要素は内部領域において、基板と発光素子との間に配置された少なくとも1つの散乱層または拡散層を、好適には基板と発光素子との間にある少なくとも1つの遮蔽層、および遮蔽層における少なくとも1つの中抜き部分とともに有している。
【0035】
散乱層および拡散層は、任意で着色して構成されていてもよい。着色された散乱層および拡散層は、拡散器および光学フィルタとして同時に機能することができる。
【0036】
このような散乱層または拡散層は、例えば厚さ1~15μmであってもよい。これらの層は、着色されていない散乱粒子、例えばTiO、SiO、Al、ZrOまたはその他の金属酸化物を含有していてもよい。このような粒子の平均径は1μm未満であってもよい。これらの散乱層または拡散層は、生じた輝度の均質性が高く、粒度が小さく、かつ明度が高いことが好ましい。これによりユーザーは、非常に均質に投光された領域をきわめて快適に知覚することができる。
【0037】
分離要素は、標準光源D65の光を用い、ブラックトラップを背景として反射状態で測定して、座標L20~40、a-6~6およびb-6~6のCIELAB色空間における色座標を有する。分離要素は、反射状態で測定して、Lが35以下、特に好ましくは30以下、極めて特に好ましくは28以下かつ22以上、好ましくは25以上であり、aが-4~+4、好ましくは-2~2、特に好ましくは-1~1であり、bが-4~+4、好ましくは-2~2、特に好ましくは-1~1であるCIELAB色空間における色座標を有することが好ましい。
【0038】
観察者は一般に、この色座標を黒色または少なくとも暗色として知覚するが、このことは設備および備付品にとって美観上の理由から好ましい。40超のLを有する色座標は黒色として知覚されるには明度が高すぎると思われる。6超の|a|および/または6超の|b|を有する色座標は明らかに有彩色であり、黒色であるとは感じられない。L、|a|および|b|の値が小さいほど、色調はより暗く、彩りが少なくなると感じられる。
【0039】
値が40未満、殊に35、30または28未満である分離要素には、L値がより高い分離要素と比較した場合に、全体として光の反射が少ないという点でさらに利点がある。それにより、外部領域にいる観察者は、本発明による物品の内部領域に設置された発光素子からの光をより良好に知覚することができる。というのも、コントラスト、すなわち、周囲光が反射された明度に対する発光素子から透過した明度の比率がより大きいからである。これは殊に、明るい周囲照明を有する設備および備付品を一般的に組み込むという状態において有利であり、例えば通常はキッチンおよび実験室における作業用照明が該当する。これにより、このような物品の操作快適性および操作安全性も改善することができる。これは殊に、スパッタリングされた金属被覆、例えばチタンまたはケイ素からなる金属被覆を有する透明な着色されていないガラスおよびガラスセラミックに比べて有利である。このような金属被覆は、70超のL値を有することが一般的である。
【0040】
これらの色度座標は、分離要素をブラックトラップ上に置き、それから市販の測色計、例えばKonica Minolta社の分光測色計CM-700dを用いて、標準光源D65を使用しながら、10°標準観察者のもとで色座標を反射状態で測定することで測定される。ブラックトラップとしては、例えばKonica Minoltaの黒色ガラスタイルCM-A511を使用することができる。この意味において、「ブラックトラップを背景にして測定」という表現は、測定すべき試料が測定装置とブラックトラップとの間に配置されていることを意味する。
【0041】
さらに、分離要素は、標準光源D65の光の色座標が分離要素を通過した後に、色度図CIExyY-2°で以下の座標:
【表2】
により特定される白色領域W1内にあることを特徴とする。
【0042】
ここで白色領域W1はCIExyY色空間における黒体曲線に沿った範囲として生じ、約2,750K~約1,000,000Kの色温度にわたり、上限においては黒体曲線に対して上方向におよそy=0.04の値でシフトし、下限においては下方向におよそy=0.07の値でシフトしている。そこから以下の効果が生じる:定義によると、標準光源D65の光は色温度が約6500Kであり、2°の観察者による直接の観察の場合、色座標がx=0.31およびy=0.33である。すなわち、本発明によれば光が分離要素を通過する際にも、光の色座標を実質的に黒体曲線に沿ってより高い色温度およびより低い色温度のどちらにもシフトさせることができ、不所望な色かぶりが生じることはない。すなわち、白色光は通過後にも依然として白色光として知覚される。
【0043】
分離要素通過後の光の色座標は、例えばKonica Minoltaの色度計CS-150で測定可能である。同様に、基板の透過スペクトルを測定することが可能であり、よってD65標準光源の公知のスペクトルおよび2°標準観察者の目の感度により、CIEの規定に相応して色座標を計算することが可能である。
【0044】
好ましい実施形態において、分離要素は標準光源D65の光の色座標が分離要素を通過した後に、色度図CIExyY-2°で以下の座標:
【表3】
により特定される白色領域W2内にあることを特徴とする。
【0045】
ここで白色領域W2は、CIExyY色空間における黒体曲線に沿った範囲として生じ、約3,500K~約20,000Kの色温度にわたり、上限においては黒体曲線に対して上方向におよそy=0.025の値でシフトし、下限においては下方向におよそy=0.04の値でシフトしている。すなわち、この範囲は、W1との比較において、黒体曲線のより短い部分に沿って広がり、黒体曲線のx座標およびy座標においてより低い偏差を有する。
【0046】
ここで3,500K~20,000Kの黒体曲線のこの部分は、天然の太陽光によりカバーされうる色座標に相応する。夕暮れ直前の夕日は、約3,500Kを有する黒体放射体に相応し、昼時の澄んだ空は、約20,000Kを有する黒体放射体に相応する。よって、黒体曲線上または黒体曲線近傍の色座標は、殊にこの範囲において白色として、かつ特に自然なものと知覚される。
【0047】
分離要素は、標準光源D65の光の色座標が分離要素のガラス基板またはガラスセラミック基板を通過した後に、白色領域W3内にあることを特徴とすることが特に好ましく、この白色領域W3は、CIExyY色空間における黒体曲線に沿って約5,000K~約20,000Kの色温度にわたって広がり、上限においては黒体曲線に対して上方向におよそy=0.025の値でシフトし、下限においては下方向におよそy=0.04の値でシフトしている。すなわち、白色領域W3は実質的に領域W2に相応し、5,000Kの色温度から初めて始まる。この色領域は日光の白色に相応し、人間の観察者によれば相応して特に純粋な白色、殊に冷たい白色であると知覚される。
【表4】
【0048】
これは本発明によれば驚くべきことに、分離要素の透過率プロファイルを平衡させるための黒体補正フィルタを使用しなくても成功する。ここで本発明の意味において黒体補正フィルタとは、標準光源D65の光が黒体補正フィルタおよび分離要素の通過後に白色領域W1または場合によってW2内の座標の色座標を有するように、透過スペクトルを分離要素の透過スペクトルに合わせる光学フィルタと理解される。
【0049】
本発明によれば、このようなフィルタは不要である。というのも、標準光源D65の光は分離要素の通過後すでに、この領域にある色座標を有しているからである。しかしながら、このようなフィルタは例えば、分離要素の様々な領域が、標準光源D65の透過光に関してW1またはW2の領域内に様々な色座標を生み出すことが望ましい場合、任意で分離要素と表示装置との間に配置されていてもよい。
【0050】
黒体補正フィルタは、例えばプリントされた、施与された、押圧された、または相応して配置された層、フィルムまたはプレートの形で存在していてもよい。例えば白色領域W1外の照明現象(Leuchterscheinungen)を生じるためには、その他の色補正フィルタも考えられる。よって、例えば物品の内部領域で放出された白色光は、外部領域にいる観察者にとって、有彩色、例えば青色、赤色、緑色または任意のその他の色として生じうる。
【0051】
上記の要求を満たす分離要素は、例えば透明な着色LASガラスセラミックからなり、着色成分としてMoOを0.003~0.25質量%含有し、Ndを0.2質量%未満含有し、かつVを0.015質量%未満含有する新たなガラスセラミック基板を含む。
【0052】
従来技術に対して明らかに無彩色な(farbneutral)これらの新たなガラスセラミックは、その透過特性に基づいて、モジュール組立てにおいて、例えば市販のモジュール構造式のコンロにおいて、かつ同様にガラスを埋め込んだその他の装置、例えば無彩色な正面パネルを有するオーブンまたは前面にガラスを有する冷蔵庫との組み合わせにおいて、大きな利点をもたらす。
【0053】
ここで着色された透明なガラスセラミックは、可視光吸収性の1種以上の着色化合物を選択的に添加することで透過率が低下している点で、着色されていない透明なガラスセラミックとは異なる。すなわち、着色されたガラスセラミックの組成物の成分としてのこの着色化合物により、着色されていないガラスセラミックに比べて、ガラスセラミックの吸収係数が上昇する。所定の厚さに関して得られる透過曲線のスペクトルのプロファイルによりガラスセラミックの色およびその明度が条件付けられる。
【0054】
本文献では、着色されたガラスセラミックという用語と同義として、内部着色されたガラスセラミックという用語も使用する。どちらの用語も、ガラスセラミックが、ガラスセラミックの吸収係数に影響を与える着色成分をその組成中に含むことを表す。よって、これらの材料は、着色されていないガラスセラミックとは根本的に異なる。着色されていないガラスセラミックは、ガラスセラミックから製造された製品に色を付与するために有彩色の被覆を有する。このような被覆は、ガラスセラミックの吸収係数に対して何ら影響を与えない。
【0055】
このような好ましいガラスセラミックにおいて、所望の着色効果を得るためには、MoOの最小含量が0.003質量%である必要がある。より低い光透過率が望ましい場合、より高いMoO含量が必要である。同様にFe含量またはV含量が増加する場合にも、より多くのMoO含量が必要である。というのも、FeおよびVはどちらもガラスセラミックの透過特性を変化させ、ガラスセラミックの通過後に標準光源D65の光の色座標を、黒体曲線から殊に赤色の色調にシフトさせるからである。着色効果を調整するために、少なくとも0.01質量%、好ましくは少なくとも0.03質量%のMoOが含有されていることが好ましい。ガラスセラミック中には様々な価数のMo原子が存在するため、記載した組成物含量は分析的にこの化合物を基準とする。MoO含量の上限は好ましくは0.3質量%、さらに好ましくは0.25質量%、特に好ましくは0.2質量%である。
【0056】
0.003~0.25質量%のMoO含量により、厚さ2~8mmのガラスセラミック基板の光透過率を0.1%~12%未満の値に調整することが可能である。
【0057】
MoOの添加は、ガラス粘度を低下させ、かつガラスの溶融性および精製にとって都合が良いことが判明した。ただし、殊に還元された酸化モリブデン種は核形成剤としても作用し、かつ失透安定性を低下させる場合がある。よって、この含量を制限することが有利である。
【0058】
これらのガラスセラミックは、0.2質量%未満のNdを含有する。というのも、この着色酸化物において、着色効果は526nm、584nmおよび748nmの範囲にある狭い吸収帯にわたって実現されるからである。この波長範囲にある光は、ガラスセラミックを通過する際に強く吸収される。好ましいNd含量は、0.06質量%未満である。Ndを使用せず、ガラスセラミックが工業的にNd不含であることが特に好ましい。その場合、不純物については基本的には10ppm未満で含有されている。
【0059】
殊に成分Vは、標準光源D65の透過光の色座標をCIE表色系においてより高いx値、すなわち橙赤色にシフトさせる。この成分は、たしかに少量ではMoOと組み合わせた着色に適している。しかしながら、Vはより強力に着色するため、本発明による着色効果に達するためには、この含量を制限する必要がある。よって、0.015質量%より多い含量は不都合である。V含量は0.01質量%未満であることが好ましく、最大で0.005質量%であることがさらに好ましい。Vを組成物に添加せず、少量、たいていの場合1~15ppmの不純物のみがガラスセラミック中に存在することが特に好ましい。すなわち、酸化モリブデンは主要な着色剤であり、MoO/V>1、好ましくは>3、特に好ましくは>5の成分関係が成り立つ。
【0060】
上記の要求を満たすこのようなガラスセラミックの好ましい組成は、酸化物ベースでの質量%で、実質的に
【表5】
からなる。
【0061】
「実質的に~からなる」という用語は、記載した成分が、組成物全体の少なくとも96%、基本的に少なくとも98%を占めるのが望ましいことを意味する。これらのガラスセラミックは、任意で化学的な清澄剤、例えば、As、Sb、CeOおよび清澄添加剤、例えば酸化マンガン、硫酸塩化合物、ハロゲン化物の化合物(F、Cl、Br)の添加剤を2.0質量%までの総含量で含有する。
【0062】
例えばアルカリ金属Rb、Csのような元素、または例えばMn、Hfのような元素の多くの化合物は、大規模工業的に使用される混合物原料において一般的な不純物である。その他の化合物、例えば元素のW、Nb、Ta、Y、希土類、Bi、V、Cr、Niの化合物も同様に、大規模工業的に使用される混合物原料の不純物として、一般的にppm範囲で含有されていてもよい。
【0063】
環境保護および作業保護の理由から、毒性のある、または懸念のある原料の使用は可能な限り断念される。よってガラスセラミックは、好ましくは0~0.5質量パーセント未満の範囲、特に好ましくは0.1質量パーセント未満、極めて特に好ましくは0.05質量パーセント未満の不可避的不純物を除いて、環境に害をもたらす物質、例えばヒ素(As)、アンチモン(Sb)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、ハロゲン化物および硫黄(S)を含有しないことが好ましい。ここで質量パーセントでの記載は、酸化物ベースのガラス組成物を基準とする。
【0064】
一般的に、天然に産出する原料、または化学的に後処理もしくは合成によって製造された原料のいずれも製造に使用することができる。天然に産出する原料は基本的に、当量の、化学的に後処理または合成された原料よりもコスト面で有利である。ただし、通常、天然原料の使用性は多量の不純物により制限されている。天然に産出する原料の例は、珪砂、リシア輝石およびペタライトである。化学的に後処理された、または合成により製造された原料は基本的に、非常にわずかな不純物を含有するのみである。後処理または合成された一般的な原料の例は炭酸リチウムまたは二酸化チタン粉末である。
【0065】
工業的な原料を使用する際の一般的な痕跡元素による不純物は、通常、Bが200ppm、Clが30ppm、CoOが1ppm、Crが3ppm、CsOが200ppm、CuOが3ppm、Fが200ppm、HfOが400ppm、NiOが3ppm、RbOが500ppm、Vが5ppmである。
【0066】
Crの含量は殊に、好ましくは0.02質量%未満、特に好ましくは0.01質量%未満であり、ガラスセラミックは殊に、上記の不純物を除いてCr不含である。
【0067】
分離要素は、このような酸化モリブデンを主要な着色剤として用いて着色された透明なガラスセラミック基板の代わりに、相応する光学特性を有する被覆を有するガラスまたはガラスセラミックからなる、着色されていない透明な、温度耐性の基板を含んでいてもよい。
【0068】
ガラス基板またはガラスセラミック基板が、ISO7991に準拠して20℃~300℃、好ましくは20℃~700℃の温度範囲で最大でも±2.5×10-6/K、好適には最大でも±1.5×10-6/Kの線形熱膨張係数CTEを有していることで、非常に良好な熱温度耐性をきわめて効果的に達成することができる。殊にガラスセラミックの場合、CTEは、この温度範囲においてマイナスの値も想定することができる。このように熱膨張係数が低い場合、温度勾配が大きくても基板において応力は生じない。この値は例えば、石英ガラスまたはリチウム-アルミニウム-シリケートガラスセラミック(LASガラスセラミック)、例えばSCHOTT AG社の商標CERAN(登録商標)により達成される。20℃~300℃の間の熱膨張係数は、CTEα20/300とも称される。20℃~700℃の間の熱膨張係数は、CTEα20/700とも称される。
【0069】
本発明による物品については、反射状態で、標準光源D65の光を用いて、ブラックトラップを背景にして、ガラス基板またはガラスセラミック基板を通して見て測定して、L20~40、a-6~6およびb-6~6の色座標を有する層のみが考慮される。それにより、殊に明度のある、すなわち反射の強い、彩りのある金属のように反射する層が生じる。
【0070】
同時に、層および基板を通した透過において測定して、層の光透過率を0.1%~12%の範囲に調整可能にする必要がある。
【0071】
これにより、例えば透明な層系、例えば酸化物、窒化物および/または酸窒化物からなる多層が完成する。このような干渉光学層系により、たしかに色座標のa成分およびb成分を反射状態で選択的に適合させることができるものの、0.1~12%の低い光透過率および反射状態での低い明度、すなわち、L値20~40を同時に調整することは不可能である。このような系の場合、吸収性材料が不足しているために、低い反射率、例えば反射防止層における高い透過率、または高い反射率、例えばダイクロイックミラーにおける低い透過率の間でしか選択することができない。低い透過率および低い反射率を同時に実現することはできない。
【0072】
それを除いても、多層、殊に干渉光学層系は、すでに費用的な理由からキッチン用および実験室用の設備および備付品に適していない。
【0073】
驚くべきことに、これらの要求はスピネル、サーメット、カーバイドまたはカーボナイトライドに基づく新たな層により満たされる。
【0074】
スピネルは、鉱物学からのもの、およびセラミック中実成形体からなるものが知られている。発明者等は驚くべきことに、酸化物系スピネルが化学量論未満で酸素を添加しながら反応性スパッタリングされた金属ターゲットの合金として、35未満の非常に低いL値を有することを発見した。それにより基本的に、低い電気伝導性と同時に暗い色調がもたらされる。このような層の透過率のプロファイルも平坦に進行するため、標準光源D65の光は、このような被覆の通過後に白色領域W1内にある。
【0075】
スピネルからなる被覆は、780nm~約4,500nmの波長範囲でスペクトル透過率が30%超、または50%超から80%超までと高い。実質的に赤外スペクトル領域にあるスペクトル透過率は、スピネル被覆を有する遮蔽板において、被覆により制限されているのではなく、使用される基板により制限されている。着色されていない透明なLASガラスセラミック、例えばスピネル被覆を有するSCHOTT AGの商標CERAN CLEARTRANS(登録商標)は、約3,750nmの波長で、スペクトル透過率が40%超である。すなわち、このような被覆は殊に、分離要素の後方または下方で放射発熱体または赤外線センサを使用するのに適している。表面抵抗は、1000Vの試験電圧で1MΩ/□超である。よってこれらの層は、静電容量センサ、誘導センサおよびエネルギー伝達のための誘導コイル、例えば誘導発熱体と共に使用するためにも適している。
【0076】
適切なスピネルは、式Aによる組成を有し、ここでAおよびCは、Cr2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Al3+、Sn2+4+、Ti4+、Zr4+、またはランタニド、およびこれらの混合物からなる群より選択される。BおよびDは、Mn3+、Fe3+、Co3+、Ni3+、Cu3+、Al3+、Ga3+、Sn4+、Sc3+、Ti4+、Zn2+、またはランタニド、およびこれらの混合物からなる群より選択される。EおよびFは、S、SeおよびOの二価アニオン、ならびにこれらの混合物からなる群より選択されることが好ましい。x、u、y、v、zおよびwの値は、以下の式を満たす:
【数1】
【0077】
被覆は結晶子を有していることが好ましく、その場合、少なくとも95質量%の結晶子がスピネル型で、対称な立方晶の結晶構造を示す。
【0078】
無彩色性を改善するために、基板とスピネル被覆との間に配置された相殺層により層系を変化させることができる。反射状態におけるL値が、それにより影響を受けることはほぼない。相殺層は基板とスピネル被覆との間においてその屈折率を可視スペクトル内に示す材料であってもよく、例えばCeO、HfO、Y、Si、AlN、SiO、Al、AlTiO、TiSiO、SiO、AlSiOがある。化学量論未満の変形形態も相殺層として使用することができる。このような相殺層の層厚は好ましくは25~500nm、特に好ましくは35~250nmの範囲にある。驚くべきことに、このような相殺層は反射状態にある被覆の色座標のみを変化させ、透過特性を変化させることはない。すなわち、このような相殺層が殊に黒体補正フィルタとして作用することはない。
【0079】
好ましい実施形態において、被覆は以下の材料系、アルミニウムスピネル、クロムスピネル、鉄スピネル、チタンスピネル、コバルトスピネルのうちの1種からのスピネルよりなる。被覆は、CoFeMnCrスピネルからなり、任意でSiOxNyからの相殺層を有することが特に好ましい。
【0080】
さらなる好ましい実施形態において、被覆はSiO、Al、ZrO、TiOまたはこれらの混合酸化物からの酸化物系マトリックスと、Ti、Si、Al、Mo、Zr、Cu、Nb、Co、Cr、W、Ta、Ni、Bからの金属成分またはこれらの金属のうち少なくとも2種からの合金とを有するサーメットからなる。本発明の意味において、サーメットという名称は、金属成分がその内部に分散した酸化物系マトリックスからの複合材料と理解される。ここで、このような複合材料を含有する実施形態が特に好ましい。というのも、これらの実施形態は、金属成分の光学特性をマトリックス材料の低い電気伝導性と結びつけ、それにより本発明による遮蔽板の被覆に特に良好に適しているからである。
【0081】
これらのサーメット層系は、0.1~12%未満の調整可能な光透過率で、20MΩ/□超の非常に高い表面抵抗を有する点で優れ得る。これらの透過率範囲において、L値が低い非常に無彩色な層を形成することができる。0.1~12%未満の光透過率を有するサーメット被覆の平均スペクトル反射率は、可視スペクトル領域における最小値に対する最大値の比率が約1.5である場合、約5%である。このような層の透過率のプロファイルは非常に平坦であることが証明されたため、標準光源D65の光は被覆の通過後に白色領域W1または白色領域W2内にあり得る。780~4250nmの間の赤外スペクトル領域において、これらのサーメット層系は吸収が非常に弱いため、ここでもスペクトル透過率は幅広い領域で基板により制限されているものの、被覆により制限されるものではない。調査したサーメット層は約3,750nmの波長で透過率が40%超であってもよい。
【0082】
好ましい実施形態において、酸化物系マトリックスおよび金属成分は向上した熱安定性を有するように互いに調整される。熱安定性は、例えば試料に380℃で80時間にわたり負荷をかけ、その測定値と、負荷をかけていない試料とを比較した後に、CIELAB色座標を測定することで求めることができる。その際、金属酸化物マトリックスを形成するための酸素親和性金属と、サーメットにおける金属成分を形成するための酸素親和性の低い金属との材料の配合が特に有利である。
【0083】
金属成分としてのMoと組み合わせた、金属酸化物マトリックスとしてのSiOまたはAlが特に好ましい。SiまたはAlはMoよりも酸素親和性が高く、従ってMo酸化物よりもSiOまたはAlの形成の方が好ましい。同時に、層が非常に稠密である場合、酸化物系マトリックスは酸化バリアとして作用し、Moを酸化から保護する。混合酸化物、殊にSiOおよびAlからの混合酸化物も、金属酸化物マトリックスとしての使用に適している。
【0084】
好ましい実施形態では、酸化物系マトリックスのためにSiOを使用する。その場合、被覆におけるMo:Siの比は、質量%で記載して少なくとも5:95、好ましくは少なくとも10:90、特に好ましくは15:85、殊に20:80であってもよい。ここで前記の比は、質量%で記載して好適には最大でも50:50、好ましくは最大でも45:55、特に好ましくは最大でも40:60、殊に最大でも35:65であってもよい。すなわち被覆におけるMo:Siの比は、例えば5:95~50:50質量%、10:90~45:55質量%、15:85~40:60質量%または20:80~35:65質量%の範囲にあってもよい。これらの比を求めるために、被覆におけるMoおよびSiの質量割合を使用する。ここで、被覆の酸素またはその他の成分の質量割合は考慮されない。当業者であれば、被覆が各要求を満たすように、酸素の割合を調整するであろう。
【0085】
特に好ましい実施形態において、被覆はMo、Si、酸素および不可避の不純物以外には、その他の成分を含有しない。
【0086】
このようなMoSiOサーメットの使用が特に有利であることが判明した。というのも、このMoSiOサーメットは、特に平坦な透過率プロファイルおよび特に平坦なスペクトル反射率プロファイルを有しており、かつ同時に高い電気抵抗および高い耐熱性を有するからである。
【0087】
熱的に安定させるために、サーメット、例えばスピネルがさらに酸化バリアを備えていてもよい。これは例えば以下の材料Si、Al、Ti、Zr、Sn、Cr、Zn、Nb、Y、Ta、Mo、Bのうちの少なくとも1種からの酸化物または窒化物または酸窒化物であってもよい。サーメットについては殊に窒化ケイ素が、スピネルについては殊に酸化ケイ素が好ましい酸化バリアであることが判明した。また、酸化バリア層は赤外における透過に対して有利に作用することができる。
【0088】
発明者等は、驚くべきことに、カーバイドおよびカーボナイトライドからの被覆がガラスまたはガラスセラミック上にあることで、反射状態において-3<a<3、-3<b<3の色座標で、30の範囲にある低いL値を生じることが可能であることを発見した。さらにこれらの層は、平均反射率が約4%~8%であり、可視スペクトル領域における最小反射率に対する最大反射率の比率が約1.5である。これらの層は、赤外スペクトル領域において、すでに950nmで50%超を透過させ、約1,250nm~少なくとも4,000nmの範囲で特筆すべき吸収を示さないため、遮蔽板のスペクトル透過はこの範囲において基板により制限される。
【0089】
これらの層系は、個別層として生成しても、またはすでにスピネルに関して記載した基板と被覆との間の相殺層および/またはさらなる酸化バリアを有する層系として生成してもよい。その際、当業者であれば、上記の材料から基板の屈折率と被覆の屈折率との間の適切な屈折率と適切な層厚とを有する組み合わせを選択するであろう。カーバイドまたはカーボナイトライドに基づく層を使用する場合、好ましくは被覆には以下の材料のうち少なくとも1種が含有されている:Si、Zr、W、Ti、Mo、Cr、B、DLC。
【0090】
記載した層系はすべて、好適にはマグネトロンスパッタリング、殊に反応性中周波スパッタリングまたは高周波スパッタリングにより生成される。反応性中周波スパッタリングの場合、金属ターゲット、例えば純金属または合金からの金属ターゲットを使用してもよく、反応性プロセスガスとしては、例えば酸素または窒素を供給してもよい。非反応性プロセスガスとしてはアルゴンを使用する。
【0091】
スピネル被覆は、金属カチオンの合金からなるターゲット、殊にCoFeMnCr合金からなるターゲットを使用し、かつ酸素を反応性ガスとして使用して、例えば反応性中周波スパッタリングにより生成することができる。ここで、添加される酸素の量により被覆の化学量論を変化させることができ、殊に化学量論未満、すなわち酸素を不足させることでも調整することができる。ターゲット合金については、
Co 15~25、殊に19~21、
Fe 30~40、殊に34~36、
Mn 14~24、殊に18~20および
Cr 21~31、殊に25~27
の組成範囲を質量%で使用することが特に好ましい。
【0092】
ターゲットの組成のモル比は、被覆におけるCo、Fe、MnおよびCrのモル割合にも相応する。
【0093】
分離要素は、好ましい実施形態において、ガラス基板またはガラスセラミック基板と、光透過率を調整するための被覆とを有し、ここで被覆は以下の材料系、スピネル、サーメット、カーバイドまたはカーボナイトライドのうちの1種からなる。
【0094】
分離要素は好ましい実施形態において、赤外スペクトル領域で高い透過率を有する。これにより、本発明による物品の内部領域における赤外線検出センサの配置が可能になるか、または放射発熱体、例えば赤外線放射体の使用が可能になる。ここでセンサまたは発熱体に応じて、特別なスペクトル領域における透過が重要となる。
【0095】
記載されている透過率の値は、ウルブリヒト球(Ulbrichtkugel)を使用して測定した、試料または分離要素の合計透過率に関連する。この測定のために、適切な光源とウルブリヒト球との間において、ウルブリヒト球の入口に試料を配置する。側面において光路に対して90°に配置されたウルブリヒト球の出口に、透過した光の割合を検出するための適切なセンサを取り付ける。この測定構成により、直接透過した光の割合および散乱により透過した光の割合の双方が検出される。
【0096】
ケイ素系の赤外線センサの場合、例えば、ジェスチャー制御または接近認識のための非接触式入力装置用のいわゆるTOFセンサにおいて、例えばST MicroelectronicsのVL6180Xにおいて使用されているように、850~1000nmの間のスペクトル領域が特に重要である。このようなセンサの使用を可能にするために、分離要素はこの領域において、好ましくは少なくとも1つの波長で、透過率が少なくとも3%、好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも30%である。特にジェスチャー制御の場合、高い透過率が有利である。なぜなら、そのようにすることでジェスチャーを比較的遠く離れて分離要素の外側から検出することができるからである。ケイ素系の赤外線センサについてのその他の用途は、例えばリモートコントローラまたは光データ伝送用通信インターフェース用のシグナル受信機である。
【0097】
InGaAs系赤外線検出器は、殊に1~2μmの範囲において感度を有する。このような検出器を使用する場合、分離要素は少なくとも1つの波長、好ましくは1600nmの波長で、透過率が少なくとも30%、好適には少なくとも45%、特に好ましくは少なくとも60%であると適している。
【0098】
放射発熱体の放出最大値は、ウィーンの変位則から求められ、100℃~1000℃の温度の場合、7.8μm~2.3μmである。エネルギー効率の理由から、かつ放射発熱体による分離要素の過熱を防止するために、分離要素は、3.25μm~4.25μmの範囲において、少なくとも1つの波長で、透過率が少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも30%である。分離要素の透過率が上記の最低限の要求を満たす場合、このスペクトル領域において、物品の内部空間に配置されたボロメータまたはサーモパイルによっても、外部領域で、例えば熱い調理容器内で、熱い物体の温度を測定することができる。
【0099】
好ましい実施形態において、ガラス基板またはガラスセラミック基板の厚さは2mm~12mm、好ましくは3~8mm、特に好ましくは3~6mmである。ここで基板の厚さは実質的に、機械的耐久性および質量に対する要求により制限される。技術的な理由から、2mmよりも薄いガラスには実際には熱で予備応力をかけることができない。というのも、そのために必要な冷却速度を経済的に実施可能な費用で達成できないからである。さらに、基板の厚さがその光学特性に影響を与え得ることを考慮する必要がある。いずれの場合にも、上記の透過率の極限値が維持されるように厚さを選択すべきである。
【0100】
発明者等は、標準光源D65の光の色座標が分離要素を通過した後、すなわちガラス基板またはガラスセラミック基板を通過した後でも、先に挙げた白色領域W1内にあるように分離要素を選択すると、さらに有利な効果が生じることを確認した。驚くべきことに、このような分離要素により、改善されたデッドフロント効果を得ることができる。これは、分離要素の透過が相応する着色成分の添加により調整されるか否か、または被覆により調整されるか否かにかかわらず上手くいく。
【0101】
デッドフロント効果とは、本発明による物品の内部に配置された電子部品が、スイッチが切られた状態では外部領域から目視できないものの、スイッチが入った状態では部材、例えば発光素子または場合によって発熱体から放出された光が、十分な明度を伴って分離要素を通過し、それにより外部領域で知覚可能となる効果であると理解される。そのため、分離要素は、一方では部材が見えるのを防止するためにできるだけ低い透過率を有する必要があり、他方では部材から放出された光をできるだけ減少させないためにできるだけ高い透過率を有する必要がある。
【0102】
これは、例えば従来技術において公知の着色されたコンロもしくは調理面(Kochfelder)用ガラスセラミックの場合、特に達成が難しい。というのも、このセラミックは、主に着色のために使用されるVに基づいて組成が最適化されている場合でさえも赤色スペクトル領域において青色スペクトル領域よりもはるかに高い透過率を示す、非常に不均一な透過率プロファイルを有しているからである。しかしながら、例えばコンロ内部の発光素子の青色光を顕著に減少させないためには、それに応じて合計透過率を比較的高く選択する必要があり、またこれにより非常に高い透過率、ひいては赤色スペクトル領域において不良なデッドフロント効果がもたらされる。よって、5.6%の光透過率を有する従来技術から公知の着色された一般的なガラスセラミックの場合、青色スペクトル領域におけるスペクトル透過率は450~500nmで約2.5~3%であり、それに対して、赤色スペクトル領域におけるスペクトル透過率は630~680nmで約15~30%である。これにより、青色光および赤色光のどちらも十分な程度でガラスセラミックを通過することができるものの、赤色スペクトル領域においては十分なデッドフロント効果が存在しないという結果につながる。というのも、スイッチが切られた状態の部材は、15~30%のスペクトル透過率の場合、赤色のみではあるが、明らかに外部領域で知覚可能であるからである。
【0103】
それに対して、2.6%の光透過率を有する本発明による分離要素は、例えばスペクトル透過率が470nmで2.7%、630nmで3.9%であり得る。このスペクトルのプロファイルにより、透過した後の標準光源D65の光が白色領域W1内にあるのみならず、さらには、全波長の光が十分に分離要素を通過可能にもなるが、どのスペクトル領域にも、デッドフロント効果が不利な影響を受けるほどに高い透過率は生じない。
【0104】
言い換えれば、従来技術に比べて、例えば以下の利点を得ることができる。青色スペクトル領域において透過率が同じである場合、分離要素のより低い光透過率を選択することができ、したがって、全体としてより良好なデッドフロント効果を得ることができる。あるいは、光透過率が同じである場合に、青色スペクトル領域においてより高い透過率を得ることができ、したがって、例えば青色の発光素子におけるより良好な可視性、および同時に、より良好なデッドフロント効果を得ることができる。さらなる代替としては、デッドフロント効果が同等である場合に、より高い光透過率を得ることができ、このことは、例えば本発明による物品のエネルギー効率にとって有利であり得る。
【0105】
デッドフロント効果は、グレースケールの相違(Grauwertunterschied)を以下に記載の測定法で測定することで求めることができる。
【0106】
グレースケール測定装置は、パーセントで記載されるグレースケール値を求める役割を果たし、殊に様々な領域間でのグレースケール(Graustufen)の違いを求めることができる。測定構造体は、外部光を排除できるよう暗室に存在する。
【0107】
暗室には、4枚のRALカードが配置されている。第一のRALカードはRALカラー9017(トラフィックブラック(verkehrsschwarz))を有し、第二のRALカードはRALカラー7012(バサルトグレー(basaltgrau))を有する。これらのRALカードはどちらも、試料によって覆われず、較正の役割を果たす。同様に、第三のRALカードは、RALカラー9017(トラフィックブラック)を有し、第四のRALカードは、RALカラー9003(シグナルホワイト)を有する。これらのカードはどちらも、試料によって完全に覆われ、測定値を確認する役割を果たす。
【0108】
例えば606ミリメートルの距離dを空けて、対物レンズ付のカメラが配置されている。対物レンズの前に、フィルタ、例えばロングパスフィルタまたは三刺激フィルタが任意で取り付けられていてもよい。
【0109】
使用される測定装置では、以下の要素が使用される:
・カメラは、acA1920~40μm/Basler AGのグレースケールカメラとして構成されており、対物レンズは、Kowa GmbHのLM35HC Megapixelとして構成されている。
・対物レンズの前に任意のフィルタは使用されない。
【0110】
殊に、上記のグレースケールカメラに携わる当業者により当該記録データから得られる以下のカメラの調整項目を用いる:
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0111】
さらに暗室内には、4000Kの色温度を有するOSRAM Licht AGのLEDスポット、EAN:4052899944282が存在する。LEDスポットは、ガラス基板またはガラスセラミック基板において1200ルクスの明度になるように調整されている。一般に、この照明器具が約1200ルクスの明度を生み出し、家庭において一般的な色温度および/またはスペクトル強度分布を有する限り、その都度の照明器具からは独立して、その他の光源、例えば黒体放射体、殊に市販のハロゲン光源を使用することもできる。これにより、キッチンおよび実験室に一般的な照明状態が達成される。グレースケール測定装置により求めた測定値は明度から実質的に独立しているため、その他の照明が備えられていてもよいことに言及したい。
【0112】
測定のために、照明システムのスイッチを切り、暗室を閉じる。この状態のグレースケール画像をカメラで撮影する。言い換えれば、グレースケール測定装置により、少なくとも以下のものを映すグレースケール画像が生成される:試料を通して観察したRALカラー9017および9003を有する2枚のRALカード、RALカラー9017を有する、覆われていないRALカード、ならびにRALカラー7012を有する、覆われていないRALカード。
【0113】
生成されたグレースケール画像に基づき、グレースケール測定装置により測定値Mが算出され、この測定値Mは、ガラス基板またはガラスセラミック基板を通して観察したRALカラー9017を有するRALカードに相応する。
【0114】
さらに、グレースケール測定装置により測定値Mが算出され、この測定値Mは、ガラス基板またはガラスセラミック基板を通して観察したRALカラー9003を有するRALカードに相応する。
【0115】
さらに、グレースケール測定装置により2つのさらなる測定値が算出され、これらの測定値は、較正用の覆われていない2枚のRALカードに相応する。
【0116】
グレースケール測定装置を使用する場合、MVTec Software GmbHの画像評価ソフトウェアHalcon SDK Industry 12によりグレースケール画像を評価する。画像が露出アンダーまたは露出オーバーでないことを条件に、この測定が露出条件および明度から独立していることが示された。ソフトウェアにおける評価ルーチンについて、画像上に分散した状態で、様々な測定範囲をそれらのグレースケールに対して評価することができる。各測定範囲において、測定面にわたる全画素のグレースケールの平均値を、標準偏差を含めて測定および記録することができる。言い換えれば、測定値M、MおよびRALカードの測定値は、測定範囲にわたる平均値を成していてもよく、ここで測定範囲は、面積がそれぞれ少なくとも0.2cm、好適には0.9cmである。
【0117】
測定された測定値M、Mおよびそれぞれ絶対値を表す双方のRALカードの測定値に基づいて、パーセントにより記載されるグレースケールGおよびGを計算する。言い換えれば、相対コントラストを百分率で計算して、測定を比較可能なものにする。
【0118】
そのために、線形関数Gは、RALカラー9017を有するRALカードに相応する測定値に20%のパーセントにより記載されるグレースケールを割り当て、RALカラー7012を有するRALカードに相応する測定値に90%のパーセントにより記載されるグレースケールを割り当てるものと規定される。言い換えれば、RALカード9017の測定値を20%として、7012を90%として参考にし、これにより、測定したグレースケールすべてについての線形変換を規定する。
【0119】
絶対測定値をパーセントにより記載されるグレースケールに変換する線形関数G=G(M)により、パーセントにより記載されるグレースケールGおよびGが、G=G(M)およびG=G(M)として計算される。
【0120】
また暗室には、例えば、RALカラー9006(ホワイトアルミニウム)および/またはRALカラー7038(アゲートグレー)を有するさらなるRALカードが任意でさらに備えられていてもよい。
【0121】
測定した双方の、パーセントにより記載されるグレースケールの差|G-G|は、デッドフロント効果の尺度である。5.0%未満の値は、人間の目でほぼ知覚不可能であることが判明した。言い換えれば、デッドフロント効果が達成される。さらにより良好なデッドフロント効果のためには、グレースケールの差が3.5%未満、さらに好ましくは2.5%未満、特に好ましくは1.5%未満であると好ましい。これらの値を求めるために、様々な観察者による統計分析を実施した。
【0122】
この測定において実施されるデッドフロント効果の評価は実行が特に難しい。というのも、参照として白色および黒色のカラーカードが使用されるが、これは最大限可能なコントラストに相応するからである。すなわち、これらの要求を満たす分離要素は、分離要素に面した側で明度のコントラストが強い部材であっても十分なデッドフロント効果を有する。これは例えば、暗色、例えば暗緑色のプリント基板上の、白色または高反射性の電子部材であり得る。
【0123】
好ましい実施形態において、本発明による物品は、分離要素を通して見てRALカラー9017のカラーカードのグレースケール測定値に相応する、パーセントにより記載されるグレースケールGと、分離要素を通して見てRALカラー9003のカラーカードのグレースケール測定値に相応する、パーセントにより記載されるグレースケールGとの間において、差|G-G|が5.0%未満、好ましくは3.5%未満、特に好ましくは2.5%未満、極めて特に好ましくは1.5%未満である。このグレースケールの差は、遮蔽材の中抜き部分の領域における分離要素の光透過率が少なくとも2%、好ましくは少なくとも3%、特に好ましくは少なくとも4%、極めて特に好ましくは少なくとも5%である場合に達成されることが好ましい。
【0124】
デッドフロント効果を定量化するための別の可能性は、遮蔽材なしに黒色の土台および白色の土台(Untergrund)の上に分離要素を置き、双方の土台について、それ以外は上記と同様に、CIELAB色空間における色座標を測定することである。これらの測定値から、最大色差(Farbabstand):
【数2】
を計算することができる。ここで、ΔE<10、好ましくはΔE<5、特に好ましくはΔE<1の色差が達成されることが好ましい。
【0125】
この値は試料の光透過率にも対応し、かつ光透過率が上がるほど増加する。好ましい実施形態において、光透過率に対する色差の比率は、光透過率が1%超である場合、1.5未満、好ましくは1未満、特に好ましくは0.8未満である。
【0126】
デッドフロント効果を定量化するための別の可能性は、例えばRALカラー9003を有する白色の背景に対する分離要素のスペクトル反射率R(λ)と、例えばRALカラー9017を有する黒色の背景に対する分離要素の400~700nmのスペクトル領域における遮断材のスペクトル反射率R(λ)とを、例えばPerkinElmer社のLambda850UV/VIS分光光度計により測定することである。
【0127】
測定された双方のスペクトル反射率から、式:
【数3】
[ただし、S=400nmおよびS=700nm]
に従って、反射能ρ(i=1、2)を計算することができる。好ましい実施形態において、反射能の差|ρ-ρ|は3%未満、好ましくは1.5%未満である。
【0128】
好ましい実施形態では、ガラス基板またはガラスセラミック基板は、発光素子の領域において、光の品質の向上に適した表面品質を有する。例えば本発明による物品の外部領域に面した側は研磨されていてもよく、したがって表面粗さが非常に低く、それにより、表示装置から放出された光の散乱が有利には、この表面において最小限に抑えられてもよい。このようにして、例えばエッジの鮮鋭度が特に高い発光する記号または7セグメントディスプレイを得ることができる。
【0129】
代替的に、外部領域に面した表面を、例えば圧延、エッチングまたはアンチグレア被覆により適切に構造化して、散乱光の割合を高めることも有利であり得る。これには、外側における反射を最小限に抑え、それにより、配向された殊に明るい周囲光が低い拡散割合を有する場合に、発光素子により発光された光のより良好な可視性が可能になるという利点があり得る。
【0130】
さらなる好ましい実施形態において、ガラス基板またはガラスセラミック基板は、可視光に対する散乱ができるだけ起こらないように、少なくとも発光素子の領域で最適化されている。それには例えば基板が、少なくとも直径100μmの気泡径について、ガラスまたはガラスセラミック1kgあたり3個未満の気泡、好ましくは1kgあたり2個未満の気泡、特に好ましくは1kgあたり1個未満の気泡を有することが挙げられる。さらに、基板がガラスセラミックからなる場合、基板は、含有されている結晶子における内在的な光散乱ができるだけ少ないことが有利である。これは、結晶子が直径250nm未満の平均径を有し、結晶相と残りのガラス相との間の屈折率の差ができるだけ小さい場合に殊に該当する。どちらのパラメーターも、材料組成の選択およびセラミック化条件、殊に温度傾斜の上昇、セラミック化時間およびセラミック化の間の最大温度により大きく影響を受け得る。よって、ガラスセラミック基板は主要な結晶相として高温石英混晶を有することが好ましい。
【0131】
分離要素は、可視スペクトル領域におけるヘイズが最大でも5%、好ましくは最大でも2%、特に好ましくは最大でも1%であることが好ましい。ここで規格ASTM D1003によると、ヘイズとは試料に入射した光源CIE-Cの光の光軸に対して2.5°超の角度で散乱により逸れる、試料を透過した光の割合と理解される。ヘイズは、例えばBYK社の測定装置haze-gardを用いて規格ASTM D1003に準拠して測定することが可能である。ヘイズが最大でも5%である場合、特に良好な表示装置の可視性が保証される。
【0132】
代替的または補足的に、分離要素は可視スペクトル領域において透明度が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、極めて特に好ましくは少なくとも98%であることが好ましい。ここで規格ASTM D1003によると、透明度とは試料に入射した光源CIE-Cの光の光軸に対して2.5°以下の角度で散乱により逸れる、試料を透過した光の割合と理解される。透明度は、例えばBYK社の測定装置haze-gardを用いて規格ASTM D1003に準拠して測定することが可能である。
【0133】
本発明による物品における使用に適した透明な着色されたガラスセラミックの実施例および比較例は表1~4に記載されている。
【0134】
表1および3は、結晶性ガラスの基本組成、およびガラス状態における、すなわちセラミック化前のそれらの特性を示す。
【0135】
表2は、各出発ガラスに含有されている着色添加剤を「ドーピング」の領域に含み、かつ得られたガラスセラミックについて幾つか選択した特性を含む。表2における例はすべて、表1のガラスの基本組成に基づいている。
【0136】
表4は、得られたガラスセラミックについて幾つか選択した特性を含む。これらは、表3のガラスの基本組成に基づいている。
【0137】
表5は、モリブデン-ケイ素-サーメット被覆を有する、着色されていない透明なガラスセラミックについて幾つか選択した特性を含む。
【0138】
表1は、結晶性ガラスについての基本組成およびそれらの特性を示す。ベースガラス1の基本組成は、着色成分以外は本発明外の従来技術による比較用ガラス1に相応する。表1には、ガラス状態における特性、すなわち変態温度T[℃]、加工温度VA[℃]、10温度[℃]および失透上限OEG[℃]も記載されている。OEGを測定するためには、ガラスをPt/Rh10るつぼ内で溶融させる。引き続き、加工温度の範囲内にある様々な温度で5時間にわたって、るつぼを維持する。るつぼ壁に対するガラス溶融物の接触面に第一の結晶が生じる最大温度によりOEGが求められる。
【0139】
この基本組成の混合物原料に、様々な含量の着色化合物を添加し、新たなガラスを溶融させる。成分MoOを添加することで、本発明による組成物が得られる。そのようにして得られた表2のガラスはガラス1の基本組成を有しており、かつ記載されている着色化合物および任意で還元添加剤において異なるのみである。これらのガラスを、表2に記載のセラミック化手順により結晶化させる。得られたガラスセラミックの透過特性が記載されている。X線回折により測定された主要な結晶相も記載されている。
【0140】
ここで例1および2は、従来技術(国際公開第2010/102859号(WO/2010/102859A1))からの比較例であるが、ただし、V含量は0.023質量%であり、ガラス1から様々な手順でセラミック化されたものである。
【0141】
本発明による例3および4は、0.015質量%未満のVを含有する。V不含の例に比べて、例3および4は標準光源D65の光を赤色方向、すなわち0.4超のx座標により強くシフトさせる。しかしながら、比較例1および2とは反対に、この値は、依然としてx<0.5の範囲にある。厚さ4mmの例3および4のガラスセラミックを透過する光は白色領域W1内にあるものの、V含量に基づいて白色領域W2内にはない。
【0142】
表2からの例17は0.02質量%のCoO含量に基づいて、同様に白色領域W1内にあるが、白色領域W2内にはない。さらに、例19および20は、たしかに白色領域W2内にあるものの、白色領域W3内にはない。
【0143】
表2からの比較用ガラスセラミック15は、たしかにVを含有しないものの、0.02質量%のCr含量に基づいて白色領域W1内にはない。
【0144】
表3は、さらなる結晶性ガラスの組成および選択した特性を示す。ここで比較用ガラス13は、その組成が、EuroKera社のガラスセラミックKeraVision(登録商標)に相応する。Fe、V、MnおよびCoをドープしたガラスは、比較用ガラスセラミック18(表4)への変換後に、本発明による僅かな色彩に達することはなく、殊にこのようなガラスセラミックを通ると、透過光はもはや白色領域W1内にはないため、本発明による物品における使用には不適切である。
【0145】
セラミック化手順1(セラミック化時間96分):
a)23分以内に室温から680℃に加熱
b)19分以内に温度を680℃から800℃に上昇、ここで、10℃/分で730℃に加熱し、5℃/分で800℃にさらに加熱
c)24分以内に温度を800℃から918℃に上昇、最大温度で保持時間10分
d)20分以内に800℃に冷却、それから室温に急速に冷却。
【0146】
セラミック化手順2では、セラミック化時間が短縮されている。
【0147】
セラミック化手順2(セラミック化時間68分):
a)26分で室温から740℃に急速に加熱
b)18分で温度を740℃から825℃に上昇
(加熱速度4.7℃/分)
c)4分で温度を825℃から930℃に上昇
(加熱速度26℃/分)、最大温度で保持時間4分
d)16分以内に800℃に冷却、それから室温に急速に冷却。
【0148】
すべての例が、主要な結晶相として高温石英混晶(HQMK)を有する。
【0149】
高温石英混晶を主要な結晶相として有するガラスセラミックの熱膨張率は、20~700℃の範囲で0±0.5・10-6/Kであり、すなわち、温度安定性のガラスセラミックに対する要求に相応する。
【0150】
透過率の測定は、装置Perkin-Elmer Lambda 900を用いて、研磨したプレートにおいて実施した。厚さ3.5~4.1mmの試料について透過率を求め、これを厚さ4mmに変換した。選択した波長についてスペクトル透過率が記載されている。選択した標準光源および観察者角2°について、可視光スペクトルを表す380nm~780nmの範囲にある測定されたスペクトル値から、明度Lと、CIELAB表色系における色度座標a、bおよび明度(brightness)Yと、CIE表色系におけるDIN5033に準拠した色度座標x、yとを計算する。ここで明度Yは、DIN EN410による光透過率に相応する。標準光源D65の光の元々の色度座標(x=0.3127およびy=0.3290)に対する、厚さ4mmの試料を透過した後の標準光源D65の光の彩度cおよび色差dが記載されている。これを以下のように計算した:
【数4】
【0151】
本発明によるガラスセラミック、すなわち本発明による物品における基板としての使用に適したものは、色差が約0.03~0.14であり、結果的に比較例よりも透過光のシフトが明らかに少ない。
【0152】
470~630nmの範囲にある透過曲線のプロファイルから、透過率の平坦度を計算した(この範囲における、最小透過率の値に対する最大透過率の値の比率)。最大透過率の値および最小透過率の値についての波長も同様に記載されている。これらの値は、厚さ4mmの研磨された試料について記載されている。
【0153】
ガラスセラミックの散乱率は、曇り度(英訳:Haze)を測定することで求められる。その際、両面を研磨した厚さ3.5~4.1mmの試料について、標準光源Cを用いてBYK Gardener社の市販の測定装置「haze-guard plus」(規格ASTM D1003-13)により測定する。散乱率は、表にあるヘイズ値を特徴とする。
【0154】
補足的に、7型セグメントディスプレイの市販の白色LED(メーカー:opto devices、OS39D3BWWA型)を用いて、試料について目視検査を行う。研磨したガラスセラミック試料を、1mmの間隔を空けて白色LEDに置き、上から31cmの間隔を空けて角度範囲全体で、すなわちガラスセラミック表面に対して垂直ないし表面をかすめるまで観察した。ガラスセラミック試料の明度に応じて、白色LEDの輝度を、この距離でガラスセラミックプレートに対して垂直に60cd/mになるよう調整するか、またはガラスセラミック試料がY<0.5%と非常に暗い場合には最大出力で操作する。外部光の影響を排除するために、暗室内での評価を、約4ルクスの低い周囲照明で行う。これらの条件は、コンロの場合、非常に厳しい取り付け状況および照明状況を意味する。
【0155】
ここで表における目視評価は、(1=知覚不可能な散乱、2=許容可能な僅かな散乱、3=コンロの構成にさらなる費用を要する明らかな散乱、4=許容不可能な著しい妨げとなる散乱)を意味する。段階4以降の評価は認めることができず、段階3以降のものは回避することが好ましい。この試験において、いずれの例も目視によれば顕著な散乱を示さなかった。
【0156】
表5の例B1およびB2は、ガラスセラミック基板上のMoSiOx-サーメット被覆についての2つの例を示す。これらの層について、基板としては、SCHOTT AG社のCERAN CLEARTRANS(登録商標)タイプである、厚さ4mmの着色されていない透明なLASガラスセラミックを使用した。
【0157】
これらの被覆は、SiOマトリックス中にモリブデン(Mo)を金属成分として含有するMoSiO-サーメットである。被覆における質量%でのMo:Siの比は、どちらにおいても10:90のMo:Si~50:50のMo:Siの範囲にある。どちらの被覆も、27<L<30、-1<a<1、-1<b<1の範囲にある反射状態で測定された色座標により黒色の印象を生じる。光源D65の標準光源の色座標は、被覆および基板の通過後に、それぞれ白色領域W1内にある。光透過率に相応する明度Yは、2.6%または2.9%である。どちらの被覆も可視スペクトル領域において、平坦な透過率プロファイルを有する。これらの例は、可視スペクトル領域における透過率が低いにもかかわらず、赤外における透過率が高い。これらの例は、1500nm超の波長の場合は殊に40.0%超の透過率を有する。よって、これらの例は、例えば多数の異なる光学センサと共に使用するために適している。このようなセンサには、殊に上記の検出器およびセンサがある。
【0158】
どちらの層も、抵抗が20MOhm超である。よって、これらの層は静電容量センサおよび誘導センサまたは誘導発熱体と共に使用するために非常に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0159】
図1a】2°の標準観察者による色空間CIExyYの色度図を示す(CIExyY-2°)。
図1b図1(a)の拡大図の一部を示す。
図2】本発明による物品の断面概略図を示す。
【0160】
図面において、黒体曲線は点線として、2つの白色領域W1およびW2は破線として、本発明による物品における使用に適した表2および4に記載の例の色度座標は黒色の正方形として、従来技術からの例は黒色の×印として表される。
【0161】
黒体曲線上の各点は、規定温度、いわゆる色温度における黒体放射体から放出された光の色座標に相応する。この曲線は、人間の知覚にとって特別な役割を果たす。というのも、太陽も同様に黒体放射体に相応し、したがって太陽光の色が黒体曲線上にあるからである。色座標は、太陽の位置に応じて、より冷たい色座標とより暖かい色座標の間でシフトし、20,000Kの色温度は晴天に相応し、3,500Kの温度は夕暮れ直前の夕日に相応する。よって、黒体曲線上または黒体曲線近傍の色座標は白色として、特に自然のものとして知覚される。
【0162】
記載した従来技術は部分的に、国際公開第2012076414号(WO2012076414A1)に挙げられるガラスセラミックタイプからなり、かつ部分的に市場で入手可能なSCHOTT AG社およびEurokera社のガラスセラミックからなる。従来技術からのこれらの例はすべて白色領域W1外にある。国際公開第2012076414号(WO2012076414A1)から公知であるように、これらのガラスセラミックを有する白色領域W1は、高コストな追加の補正フィルタを使用することによって得ることができるにすぎない。しかしながら本発明による例は、このようなフィルタを用いなくても、この領域をカバーする。記載したすべて色座標は厚さ4mmの材料に関連する。
【0163】
表2および4から得られる例はすべて白色領域W1内にある。これらのうち、0.01質量%未満のVをガラスセラミック中に含有する例であって、0.02質量%のCoOを含有する例17を除くすべての例は、白色領域W2内にもある。よって、分離要素はVおよびCoOを含有しないガラスセラミックを含むことが好ましい。
【0164】
図2は、断面における本発明による物品の概略図を含む。図示したキッチン用または実験室用の設備または備付品(1)は、発光素子(2)と、物品(1)の内部領域(4)を外部領域(5)から部分的に分離する分離要素(3)とを含む。物品(1)の内部領域(4)内の発光素子(2)は、発光素子(2)により放出された光が、分離要素(3)の一部を通過し、かつ物品(1)の外部領域(5)にいるユーザーにより知覚可能であるように配置されている。図示した実施形態において、分離要素(3)は、20℃~300℃の温度範囲で0~6×10-6/Kの熱膨張係数CTEを有するガラス基板またはガラスセラミック基板からなる。さらに、分離要素(3)は、少なくとも0.1%かつ12%未満の光透過率を有し、座標L20~40、a-6~6およびb-6~6のCIELAB色空間における色座標を有する。標準光源D65の光の色座標は、分離要素(3)の通過後に白色領域W1内にある。
【0165】
キッチン用または実験室用の本発明による設備または備付品は、その内部領域において、発光素子だけでなく、多数のさらなる部材および要素をさらに含んでいてもよい。
【0166】
これらの物品は、例えば1つ以上の発熱体を、物品、例えば鍋を加熱するために、物品の外部領域または内部領域にも有することができる。これらは殊に、放射発熱体、誘導発熱体、ガス式発熱体またはマイクロ波発生器であってもよい。
【0167】
これらの物品は、表示素子、例えばLCDまたはOLEDディスプレイまたはビデオプロジェクタ、およびその他の発光素子、例えば、点光源、線光源または面光源をさらに有していてもよい。これには、例えばLED、光ファイバーおよびOLEDがある。これらの光源は、特定の色、殊に白色、赤色、緑色および/または青色の光で発光しても、また可変色で発光してもよい。これらの発光素子と分離要素との間に、例えば規定された色座標および高い色飽和で有彩色の照明効果を生み出すための白色LEDを利用可能にするために、さらなるカラーフィルタが備えられていてもよい。
【0168】
また発光素子は殊に、発熱体近くの高温領域に配置されていてもよい。ここで殊に、感温性黒体補正フィルタが必要とされないことが、物品の外部領域において白色の照明効果を生み出すのに有利である。
【0169】
これらの物品は、例えば外部領域に面した側の分離要素において食品または薬品を冷却するための冷却面を生成するために、冷却ユニット、例えばペルティエ素子を、分離要素と熱的に接触した状態で有していてもよい。
【0170】
本物品は、様々なセンサ、例えば制御用の静電容量式タッチセンサ、またはジェスチャー制御用もしくは高温物品の温度測定用の赤外線センサを、外部領域、例えば高温の鍋内に有していてもよい。さらに本物品は、例えば音声制御またはユーザー認識および認証のために、マイクロフォンおよびカメラを有していてもよい。これは、相応して教育を受けた者のみが物品を使用することを許可されている場合、例えば実験室において特に有利であり得る。このようなセンサは、分離要素の内側に、プリントするか、圧接するか、結合するか、貼設するか、またはそれ以外のやり方で配置されていてもよい。これは、殊にタッチセンサに該当する。
【0171】
本物品は、通信のための様々なインターフェース、例えばWLAN、BluetoothもしくはNFCモジュール、または赤外線インターフェースを有していてもよい。このようなインターフェースを介して物品は、例えばインターネットと、または相応するインターフェースもしくはその他の電子デバイスを有する近くにあるその他の物品、例えば鍋と接続可能である。これは、殊に制御および通信のために、携帯式の電子デバイス、例えば携帯電話またはタブレットと接続可能である。
【0172】
本物品は、外部領域において、殊に誘導コイルにより、かつQi標準に従って、無線で物品のエネルギーを伝達するための装置を含んでいてもよい。
【0173】
分離要素は、外部領域に面した側において、被覆、例えばキズ防止層、反射防止層、アンチグレア層、装飾層、洗浄が容易な層または赤外線反射層を、これらが分離要素の実質的な光学特性を変化させない限り有していてもよい。
【0174】
分離要素は、中抜き部分、例えば、流し台またはダウンドラフト式換気フードまたは配管用引込口のための切り取り部分を有していてもよい。
【0175】
分離要素は同様に、エッジ処理部、例えばファセットまたはCカットを任意で有していてもよい。
【0176】
これらの構成要素はすべて、個別または組み合わせで存在していてもよい。
【表7】
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表9-1】
【表9-2】
【表10-1】
【表10-2】
【表11】
図1a
図1b
図2