(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 7/06 20060101AFI20230425BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H02K7/06 A
F16H25/24 G
(21)【出願番号】P 2018243637
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】横塚 力
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-075511(JP,A)
【文献】特公昭46-019321(JP,B1)
【文献】特開2008-115888(JP,A)
【文献】特開2016-051075(JP,A)
【文献】特開2014-043159(JP,A)
【文献】特開平06-159374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/06
F16H 25/20
F16H 25/24
F16C 35/077
G02B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象物を軸方向に沿って移動させる駆動装置であって、
樹脂からなるフレームと、
前記軸方向に延びるリードスクリューと、
前記リードスクリューに連結され、前記リードスクリューを回転させるモータと、
前記リードスクリューの端部を前記フレームに回転可能に保持するベアリングと、
前記リードスクリューに螺合するナット部と、前記駆動対象物が取り付けられる取付部とを有する可動フランジ部と、
を備え、
前記フレームには、前記ベアリングを収容する収容部
であって、前記ベアリングが挿入される挿入方向に向かって凹んだ収容部が形成され、
前記フレームは、前記ベアリングを前記収容部内に係止する複数の係止片であって、
前記収容部の側壁において前記挿入方向に延びることで半径方向外側に弾性変形可能に構成され
、前記挿入方向における端部は前記収容部内で径方向内側に突出するように構成される複数の係止片を有する、
駆動装置。
【請求項2】
前記複数の係止片は、前記ベアリングの中心軸に対して対称な位置に配置される、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記複数の係止片のそれぞれは、前記収容部に収容される前記ベアリングに向かうにつれ半径方向内側に張り出す爪部を有する、請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記軸方向に沿って延びるガイドシャフトをさらに備え、
前記可動フランジ部は、前記ガイドシャフトにガイドされつつ該ガイドシャフト上を摺動可能な摺動部をさらに有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に係り、特にレンズやカメラなどの駆動対象物を軸方向に沿って移動させる駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ照射型ディスク装置やスマートフォンなどの電子機器においては、レンズやカメラなどを必要に応じて移動させる機構(駆動装置)が搭載されることが増えてきている。例えば、カメラを備えたスマートフォンにおいては、カメラをスマートフォン本体から出し入れする機能を付加することがある。このようなレンズやカメラなどの駆動対象物を移動させるために、例えばリードスクリューを用いた駆動装置を用いることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなリードスクリューを用いた駆動装置においては、リードスクリューに取り付けられた可動部にレンズやカメラなどの駆動対象物が固定され、このリードスクリューをモータにより回転させることで駆動対象物が軸方向に移動するようになっている。このようなリードスクリューはフレームにベアリングにより支持されるが、一般的に、このようなフレームは金属又は金属粉末射出成形(MIM(Metal Injection Molding))材料から形成されることが多い。ベアリングは金属製であるため、ベアリングをフレームに取り付ける際には、溶接や圧入などの方法が採用される。
【0004】
近年、このような駆動装置においては、コストの低減及び寸法精度の向上のために、金属又はMIM材料からなるフレームに代えて樹脂製のフレームを採用することが検討されている。しかしながら、樹脂製のフレームに金属製のベアリングを溶接や圧入により取り付けることは難しく、ベアリングをフレームに取り付けるための取付具や接着材を別途用意する必要が生じ、その取付作業も煩雑なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国実用新案公告第207526979号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、リードスクリューを支持するベアリングの取付作業を容易にすることができる安価な駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、リードスクリューを支持するベアリングの取付作業を容易にすることができる安価な駆動装置が提供される。この駆動装置は、駆動対象物を軸方向に沿って移動させるために使用される。上記駆動装置は、樹脂からなるフレームと、上記軸方向に延びるリードスクリューと、上記リードスクリューに連結され、上記リードスクリューを回転させるモータと、上記リードスクリューの端部を上記フレームに回転可能に保持するベアリングと、可動フランジ部とを備える。上記可動フランジ部は、上記リードスクリューに螺合するナット部と、上記駆動対象物が取り付けられる取付部とを有する。上記フレームには、上記ベアリングを収容する収容部であって、上記ベアリングが挿入される挿入方向に向かって凹んだ収容部が形成される。上記フレームは、上記ベアリングを上記収容部内に係止する複数の係止片を有する。上記複数の係止片は、上記収容部の側壁において上記挿入方向に延びることで半径方向外側に弾性変形可能に構成される。上記複数の係止片の上記挿入方向における端部は上記収容部内で径方向内側に突出するように構成される。
【0008】
このような構成によれば、駆動装置の組み立ての際に、ベアリングをフレームの収容部に挿入していくと、係止片がベアリングに押されることによって半径方向外側に弾性変形する。ベアリングが係止片を乗り越えると、係止片に作用する力がなくなるため、係止片の変形が元に戻り、ベアリングがフレームの係止片によって係止されることとなる。このように、本発明によれば、安価な樹脂製のフレームを用いた場合にも、ベアリングをフレームに取り付けるための取付具や接着材を別途用意することなく、ベアリングを容易にフレームに固定することができる。
【0009】
上記複数の係止片は、上記ベアリングの中心軸に対して対称な位置に配置されることが好ましい。この場合には、ベアリングの中心軸に対して対称な位置に配置された複数の係止片によって、ベアリングを安定的に固定することができる。
【0010】
上記複数の係止片のそれぞれは、上記収容部に収容される上記ベアリングに向かうにつれ半径方向内側に張り出す爪部を有することが好ましい。この場合には、爪部の半径方向内側に傾斜面が形成されるため、ベアリングを収容部に挿入する際に、ベアリングの外縁がこの爪部の傾斜面に当接しつつ、傾斜面を滑らかに移動することとなる。したがって、ベアリングの挿入が容易になる。
【0011】
上記駆動装置は、上記軸方向に沿って延びるガイドシャフトをさらに備えていてもよい。この場合には、上記可動フランジ部が、上記ガイドシャフトにガイドされつつ該ガイドシャフト上を摺動可能な摺動部をさらに有していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動装置の組み立ての際に、ベアリングをフレームの収容部に挿入していくと、係止片がベアリングに押されることによって半径方向外側に弾性変形する。ベアリングが係止片を乗り越えると、係止片に作用する力がなくなるため、係止片の変形が元に戻り、ベアリングがフレームの係止片によって係止されることとなる。このように、本発明によれば、安価な樹脂製のフレームを用いた場合にも、ベアリングをフレームに取り付けるための取付具や接着材を別途用意することなく、ベアリングを容易にフレームに固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における駆動装置を駆動対象物とともに示す正面図である。
【
図5】
図5は、
図2の駆動装置の一部を破断して示す破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る駆動装置の実施形態について
図1から
図5を参照して詳細に説明する。なお、
図1から
図5において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図5においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における駆動装置1を駆動対象物としてのカメラユニット2とともに示す正面図である。例えば、駆動装置1は、スマートフォン本体3の内部に設けられるものであり、撮像レンズ及び撮像素子を含むカメラユニット2をZ方向に移動させるものである。
図1は、カメラユニット2が使用されていない状態を示しており、この状態ではカメラユニット2がスマートフォン本体3の内部に収容されている。カメラを使用する際には、駆動装置1によりカメラユニット2を上方に移動して、カメラユニット2をスマートフォン本体3から外部に突出させる。なお、本実施形態では、便宜的に、
図1における+Z方向を「上」又は「上方」といい、-Z方向を「下」又は「下方」ということとする。
【0016】
図2は駆動装置1を示す平面図、
図3は
図2のA-A線断面図、
図4は駆動装置1を示す斜視図である。
図3においては、一部の部材のみが断面で示されている。
図1から
図4に示すように、駆動装置1は、樹脂からなるフレーム10と、フレーム10に取り付けられたステッピングモータ20とを含んでいる。フレーム10は、+Z方向側に設けられた上側フランジ11と、-Z方向側に設けられた下側フランジ12と、下側フランジ12に隣接して設けられたギアボックス13とを有している。ステッピングモータ20は、フレーム10の下側フランジ12に溶接などにより固定されている。
【0017】
また、駆動装置1は、フレーム10の下側フランジ12と上側フランジ11との間でZ方向(軸方向)に延びるリードスクリュー30と、フレーム10の下側フランジ12と上側フランジ11との間でZ方向に延びるガイドシャフト32と、リードスクリュー30に係合しつつガイドシャフト32上をZ方向に沿って摺動可能な可動フランジ部40とを備えている。可動フランジ部40は、リードスクリュー30に螺合するナット部42と、ガイドシャフト32にガイドされつつガイドシャフト32上を摺動可能な摺動部44と、カメラユニット2が取り付けられる取付部46とを有している。可動フランジ部40の取付部46に取り付けられたカメラユニット2は、可動フランジ部40とともにZ方向に移動するようになっている。
【0018】
図5は、フレーム10の一部を破断して示す破断斜視図である。
図5に示すように、フレーム10のギアボックス13の内部にはステッピングモータ20の出力軸の回転を減速する遊星歯車機構22が収容されている。この遊星歯車機構22の入力軸22Aには、ステッピングモータ20のモータシャフトが連結されており、遊星歯車機構22の出力軸22Bには、リードスクリュー30の下端部が連結されている。リードスクリュー30の上端部は、ベアリング50を介してフレーム10の上側フランジ11に固定されており、リードスクリュー30は、ベアリング50によりフレーム10に対して回転可能に構成されている。
【0019】
このような構成において、ステッピングモータ20を駆動すると、ステッピングモータ20のモータシャフトの回転が遊星歯車機構22を介してリードスクリュー30に伝達され、リードスクリュー30が回転するようになっている。リードスクリュー30が回転すると、リードスクリュー30に螺合するナット部42を介して可動フランジ部40及びこれに取り付けられたカメラユニット2が上下動するようになっている。
【0020】
図5に示すように、フレーム10の上側フランジ11には、ベアリング50を収容する収容部15が形成されている。本実施形態におけるベアリング50としてはボールベアリングが用いられているが、リードスクリュー30を保持するベアリング50として他の種類のベアリングを用いることもできる。
【0021】
フレーム10の収容部15の側壁には、収容部15内で径方向内側に突出する2つの係止片60が形成されており、この係止片60によってベアリング50が収容部15内に固定されている。すなわち、この係止片60は、
図3に示すように、収容部15内でベアリング50に向かうにつれ半径方向内側に張り出す爪部62を有しており、この爪部62がベアリング50の上面に係合することによりベアリング50が収容部15内に固定されている。
【0022】
ここで、それぞれの係止片60の下端は自由端となっているため、係止片60は半径方向外側に弾性変形が可能となっている。したがって、駆動装置の組み立ての際に、ベアリング50を上方からフレーム10の収容部15に挿入していくと、係止片60がベアリング50に押されることによって半径方向外側に弾性変形する。そして、ベアリング50が係止片60を乗り越えると、係止片60に作用する力がなくなるため、係止片60の変形が元に戻り、ベアリング50の上面が係止片60の爪部62によって係止されることとなる。このように、本実施形態によれば、ベアリング50をフレーム10に取り付けるための取付具や接着材を別途用意することなく、ベアリング50をフレーム10に固定することができる。これにより、部材コストが低減されるとともにベアリングの取付作業が容易になる。
【0023】
本実施形態では、ベアリング50の中心軸に対して対向する位置に2つの係止片60が設けられているため、ベアリング50は、2つの係止片60によってベアリング50の中心軸の両側から保持される。したがって、これらの係止片60によってベアリング50を安定的に固定することができる。なお、係止片60の数は2つに限られるものではなく、3つ以上であってもよい。その場合には、係止片60をベアリング50の中心軸に対して対称な位置に配置すれば、ベアリング50を係止片によって安定的に固定することができる。
【0024】
また、本実施形態では、それぞれの係止片60が、ベアリング50に向かうにつれ半径方向内側に張り出す爪部62を有しているため、爪部62の半径方向内側には傾斜面が形成される。したがって、ベアリング50を収容部15に挿入する際に、ベアリング50の外縁がこの爪部62の傾斜面に当接しつつ、傾斜面を滑らかに移動することとなるため、ベアリング50の挿入が容易になる。
【0025】
本実施形態では、ベアリング50とリードスクリュー30との連結は、リードスクリュー30の上端に形成された凹部31(
図3参照)に所定の工具を挿入し、凹部31を押し広げてリードスクリュー30の上端をベアリング50に加締めることにより行われるが、ベアリング50とリードスクリュー30との連結の形態はこれに限られるものではない。
【0026】
また、上述した実施形態では、リードスクリュー30を回転させるためにステッピングモータ20を用いた例を説明したが、リードスクリュー30を回転させるモータはステッピングモータに限られるものではない。ただし、カメラユニット2の移動量を正確に制御するためには、リードスクリュー30を回転させるモータとしてステッピングモータを用いることが好ましい。
【0027】
また、上述した実施形態では、ステッピングモータ20の出力軸の回転を減速する歯車機構として遊星歯車機構22を用いた例を説明したが、ステッピングモータ20の出力軸の回転を減速する歯車機構としては任意の歯車機構を用いることができる。
【0028】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 駆動装置
2 カメラユニット(駆動対象物)
3 スマートフォン本体
10 フレーム
11 上側フランジ
12 下側フランジ
13 ギアボックス
15 収容部
20 ステッピングモータ
22 遊星歯車機構
22A 入力軸
22B 出力軸
30 リードスクリュー
31 凹部
32 ガイドシャフト
40 可動フランジ部
42 ナット部
44 摺動部
46 取付部
50 ベアリング
60 係止片
62 爪部