(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
B23Q3/06 301H
(21)【出願番号】P 2019014391
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599085633
【氏名又は名称】株式会社タマディック
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 正宜
(72)【発明者】
【氏名】田中 健大
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特許第6435591(JP,B1)
【文献】特開昭59-182041(JP,A)
【文献】特開昭61-199268(JP,A)
【文献】特開平11-285938(JP,A)
【文献】特開2003-231032(JP,A)
【文献】特開2006-123103(JP,A)
【文献】特開2011-028248(JP,A)
【文献】特開2017-214760(JP,A)
【文献】米国特許第05733136(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00-33/00
B23C 1/00-9/00
B23Q 3/00-3/154
B24B 1/00-1/04
B24B 3/00-3/60
B24B 9/00-19/28
B24B 41/00-51/00
B25B 1/00-11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備部に対し、治具に設けられた治具側挿入部を挿入することで固定するクランプ装置であって、
前記治具側挿入部は、
挿入部本体と、
前記挿入部本体の一部が突出して形成されたベロと、
前記挿入部本体に設けられ、前記ベロが突出する方向とは異なる方向に突出するカム山と、を備え、
前記設備部は、
基部と、
前記基部上に配置されたベース部と、
前記ベロを挿入の先端とする状態で、前記治具側挿入部が挿入される挿入口と、
長手と、短手と、回転軸となる屈曲部と、を有し、前記挿入口に前記治具側挿入部が挿入される際に、前記カム山に
前記短手が当接する
くの字型のレバーと、
前記ベース部と、前記レバー
の前記長手と、を接続するバネと、を備え、
前記バネのばね力
が前記レバーの前記長手に加わることに応じて、前記レバー
の前記短手が前記カム山を押圧
して、前記設備部に前記治具側挿入部を固定する
クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような分野の技術として、特開2003-231032号公報がある。また、従来のクランプ装置では、設備機に複数のピン挿通孔が開口されており、このピン挿通孔に対して、スポット溶接用の治具に設けられた複数の位置決め部材を挿入することで、設備機内においてワークの位置決めを行うことができる。
【0003】
例えば、従来のクランプ装置では、ワーク本体下部にある旋回可能なプレートには2本のピンが設けられており、このピンと設備機側の穴の位相と芯の位置を合わせる。このとき、設備機側の穴に対して、2本のピンを同時に挿入することにより、ワークを設備機内にセットすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来のクランプ装置では、
図8に示すように設備機側の穴に対して2本のピンを同時に挿入しなければならず、作業性が悪い。また、プレートに設けられた2本のピンを挿入した後に、プレートを軸として本体を旋回動作させ、本体を設備機上に配置させた状態で、さらに
図9に示すように設備機上に設けられたクランプを用いてワーク本体を固定する。すなわち、設備機上に固定するために、所定の手数が必要となる。さらに、設備機から引き抜く際にも、穴とピンの芯をあわせて真っ直ぐ上方に引き抜くように持ち上げないと、ピンが抉れ、抜きづらくなり作業性が低下する。
本発明は、設備部に治具を固定する際の作業効率を向上させたクランプ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるクランプ装置は、設備部に対し、治具に設けられた治具側挿入部を挿入することで固定するクランプ装置であって、前記治具側挿入部は、挿入部本体と、前記挿入部本体の一部が突出して形成されたベロと、前記挿入部本体に設けられ、前記ベロが突出する方向とは異なる方向に突出するカム山と、を備え、前記設備部は、基部と、前記基部上に配置されたベース部と、前記ベロを挿入の先端とする状態で、前記治具側挿入部が挿入される挿入口と、前記挿入口に前記治具側挿入部が挿入される際に、前記カム山に当接するレバーと、前記ベース部と、前記レバーと、を接続するバネと、を備え、前記バネのばね力により前記レバーが前記カム山を押圧することで、前記設備部に前記治具側挿入部を固定する。
これにより、挿入口に対して治具側挿入部を押し込むことで、レバーがカム山を押圧する状態になり、設備部に治具側挿入部を固定することができる。
【発明の効果】
【0007】
これにより、設備部に治具を固定する際の作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】挿入口に対して治具側挿入部を挿入開始する状態を示す図である。
【
図4】挿入口に対して治具側挿入部を挿入中の状態を示す図である。
【
図5】挿入口に対して治具側挿入部を挿入して固定する状態を示す図である。
【
図6】挿入口から治具側挿入部を取り外す動作におけるレバー操作前の状態を示す図である。
【
図7】挿入口から治具側挿入部を取り外す動作におけるレバー操作後の状態を示す図である。
【
図8】関連するクランプ装置においてピンを設備側に差し込む状態を示す図である。
【
図9】関連するクランプ装置においてクランプによる固定を行う状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、クランプ装置1は、治具11の下部に連結されている治具側挿入部12と、治具11を固定する設備部13と、を備える。
【0010】
ここで、
図1に示しているように、設備部13の基部31は平面を有する板状であり、基部31における後方側に、治具側挿入部12を挿入するための挿入口33が形成されているものとして説明する。また、挿入口33に挿入される際における治具側挿入部12の先側を、治具側挿入部12の前方側として説明する。
【0011】
図2に示すように、治具側挿入部12は、挿入部本体21と、挿入部本体21の前面から前方に延びるように形成されたベロ22と、右面において右方向に突起するカム山23と、を備える。
【0012】
挿入部本体21は、Z方向からの視点において略矩形である略直方体である。ここで、挿入部本体21の前方の面を前方面21a、後方の面を後方面21b、左側の面を左側面21c、右側の面を右側面21dとする。
【0013】
ベロ22は、挿入部本体21の前方面21aにおいて、左側面21c寄りの箇所から前方側に延びるように形成されている。なおベロ22の左側面は、挿入部本体21の左側面21cと直線的に連続する状態である。
【0014】
カム山23は、挿入部本体21の一部であって、挿入部本体21の右側面21dにおいて右方向に突出するように形成されている。すなわちカム山23は、右側方向に突出している頂点より前方側のテーパ面23aと、後方側のテーパ面23bと、を有している。例えばカム山23は、挿入部本体21の右側面21dにおいて、前方面21a寄りに形成されている。なお治具側挿入部12が設備部13の挿入口33に挿入される際には、カム山23には、後述するレバー34の短手の先端部分が当接する。
【0015】
さらに
図2に示すように、設備部13は、板状の基部31と、ベース部32と、ベース部32より左側かつ後方側に配置された挿入口33と、ベース部32より後方側に配置されたレバー34と、ベース部32とレバー34を繋ぐように配置されたバネ35と、を備える。ベース部32と、挿入口33と、レバー34と、バネ35は、それぞれ基部31上に配置されている。なお
図2に示した設備部13の上面図では、後述する挿入口33の上面部33cの表示を省略している。また、
図3~6についても同様に上面部33cを省略している。
【0016】
ベース部32は、基部31上に載置され、その下面が基部31に固定されている。また、ベース部32は、挿入口33の前方右側の近傍に配置されている。ベース部32には、バネ35の一端部が接続されている。なお、ベース部32は空洞部を有し、空洞部にバネ35の一部を配置した状態としても良い。
【0017】
挿入口33は、左側壁部33aと、前方右側壁部33bと、上面部33cと、下面部33dと、ベロ挿入部33eと、を備える。例えば挿入口33は、基部31上であって、基部31の後方側端部近傍かつ左右方向の中央部付近に、左右方向に長く形成されている。なお、挿入口33に対して治具側挿入部12を挿入する際には、ベロ22が挿入の先端であるものとして挿入口33に先に挿入させつつ、治具側挿入部12を前進させる。
【0018】
左側壁部33aは略直方体状であって、挿入口33における左側に配置されている。左側壁部33aの右側面41は、前後方向に平行に延びるように形成されている。左側壁部33aの右側面41には、挿入口33に挿入部本体21が挿入されたときに、左側面21cが当接する。なお、左側壁部33aのZ方向の高さは、治具側挿入部12の挿入部本体21のZ方向の幅と略同一である。
【0019】
前方右側壁部33bは略直方体であって、挿入口33における前方側かつ右側に配置されている。前方右側壁部33bは、左側壁部33aとの間にベロ22が挿入可能であるように、左側壁部33aに対して離れた位置に配置されている。なお、前方右側壁部33bと左側壁部33aとの間の空間を、ベロ挿入部33eとする。ベロ挿入部33eは、治具側挿入部12が挿入口33に挿入された状態で前方方向に移動した場合に、ベロ22が入り込むことができるように設けられている。またこのとき、前方右側壁部33bの後方面42には、挿入部本体21の前方面21aが当接する。
【0020】
上面部33cは、挿入口33の全体を覆うように設けられている。上面部33cは、左右方向に長く形成されているとともに、左側壁部33aの上面、及び前方右側壁部33bの上面に下面が当接して固定されている。なお、上面部33cの下面は、基部31の上面と略平行となるように設けられている。
【0021】
下面部33dは、基部31上であって、挿入口33の下面として上面部33cに対向するように配置されている。挿入口33に治具側挿入部12を挿入して固定する際には、下面部33dと、上面部33cとの間に、治具側挿入部12を挿入することにより実現する。
【0022】
レバー34は、基部31上の後方右側寄りに配置されているとともに、レバー34の一部が上面部33cの下方に入り込むように配置されている。レバー34は、長手34aの端部と、短手34bの端部とが鈍角で接続した形状である、くの字型のレバーである。
【0023】
長手34a及び短手34bは、いずれも基部31の面と平行方向に延びるように設けられている。また、長手34aの端部と短手34bの端部とが接続した箇所を、屈曲部34cとする。レバー34の回転軸は屈曲部34cに設定されており、回転動作させることができる。
【0024】
例えば、レバー34の回転軸は、挿入口33における前方右側壁部33bより後方の位置であって、挿入口33に治具側挿入部12を挿入する場合に治具側挿入部12と干渉しない位置に設けられている。さらにレバー34の回転軸は、左右方向の延びる上面部33cの右側端部近傍の下面と、下面部33dの上面と、を上下方向に繋ぐように設けられている。なお、レバー34の回転軸は、屈曲部34cより短手34b寄りの位置に設定してもよい。
【0025】
長手34aは、レバー34に対して押圧力がかかっていない基本状態(初期状態)において、前方左側から後方右側に延びるように配置されている。ここで、長手34aの後方右側の端部を長手端部34dとする。なお、長手34aの前方左側である他端部に、短手34bの一端部が接続され、屈曲部34cとなる。また、長手34aがベース部32と対向する面には、バネ35の一端部が接続されている。
【0026】
短手34bは、初期状態において、前方右側から後方左側に延びるように配置されている。ここで、短手34bの後方左側の端部を短手端部34eとする。なお、短手34bの前方右側である他端部に、長手34aの一端部が接続され、屈曲部34cとなる。短手端部34eには、上下方向を軸として回転するローラ34fが設けられている。ここで短手34bは、治具側挿入部12が挿入口33に挿入される際に、挿入部本体21の右側面21dがローラ34fに当接しながら挿入されるように配置されている。さらに、短手端部34eは、治具側挿入部12が挿入口33に挿入された状態で前進し、クランプされる状態となったときに、右側面21dのカム山23の後方側のテーパ面23bにローラ34fが当接した状態となるように配置されている。
【0027】
バネ35は、一端部がベース部32に接続されており、他端部がレバー34の長手34aに接続されている。バネ35のバネ力により、レバー34が初期状態から回転した状態となった場合に、レバー34が初期状態に近づくように力が加わる。
【0028】
次に、挿入口33に治具側挿入部12を挿入することで、設備部13に治具11を固定する手順を説明する。
【0029】
図3に示すように、治具側挿入部12を挿入口33にあてがう。
【0030】
次に、
図4に示すように、治具側挿入部12を前方に押し込むように動作させる。これにより、ベロ22がベロ挿入部33eに挿入されるようにして、治具側挿入部12が前進する。さらにこのとき、ローラ34fが回転しながらカム山23の前方側のテーパ面23aを登る。
【0031】
このときレバー34では、短手34bがカム山23に押圧されることによって、長手端部34dがベース部32に近づくように回転動作する。これにより、レバー34に押圧されたバネ35が縮み、バネ力による反力が発生する。この反力によって、ローラ34fは、治具側挿入部12を左側壁部33aに押し付ける。
【0032】
次に、
図5に示すように、ローラ34fが、カム山23の頂点を登り超える。これによりローラ34fは、バネ35のバネ力によって、カム山23の後方側のテーパ面23bを押圧する。したがって、レバー34は、治具側挿入部12に対して前方側に移動させる力を発生させる。これにより、治具側挿入部12の前方面21aが、前方右側壁部33bの後方面42に当接し、押圧された状態で固定される。
【0033】
なおこのとき、ローラ34fはカム山23の後方側のテーパ面23bを押圧しているため、その押圧力は、治具側挿入部12を前方方向に動作させる力となるとともに、左側方向に押圧する力となる。したがって、ローラ34fは、治具側挿入部12を左側壁部33aに押し付けて固定した状態となる。
【0034】
これにより、治具側挿入部12は、設備部13に対して、挿入部本体21の左側面21cが左側壁部33aに押圧されることで位置決めされ、前方面21aが前方右側壁部33bに押圧されることで位置決めされた状態でクランプされる。
【0035】
次に、設備部13に対して固定された治具側挿入部12について、固定を解除する方法について説明する。
【0036】
図6に示すように、作業者は、レバー34の長手34aに力を加え、長手端部34dがベース部32に近づくように回転動作させる。
【0037】
これにより
図7に示すように、ローラ34fがカム山23に当接しない状態とすることができる。したがって、ローラ34fから治具側挿入部12に対して、前方方向及び左方向に押圧する力がかからないため、治具側挿入部12を挿入口33から後方に引き抜くことができる。なおこのとき、作業者がレバー34を操作して、ローラ34fがカム山23に引っ掛からない状態とすることで、治具側挿入部12を挿入口33から容易に引き抜くことができる。
【0038】
このようにして、治具11を設備部13に対して固定する場合には、挿入口33にあてがった治具側挿入部12を前進させて押し込むことで、クランプ状態とすることができる。また、治具11を設備部13から取り外したい場合には、レバー34を操作することでクランプ状態を解除し、治具側挿入部12を後方に引き抜くことによって取り外すことができる。したがって、設備部13に治具11を固定する際、及び、取り外しの際の作業効率を向上させることができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、レバー34の形状が、長手34aと短手34bとを鈍角で接続した、くの字状であるものとして説明したが、これに限られない。例えばレバー34はL字形状や円弧状であってもよく、自在に変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 クランプ装置
11 治具
12 治具側挿入部
13 設備部
21 挿入部本体
21a 前方面
21b 後方面
21c 左側面
21d 右側面
22 ベロ
23 カム山
23a テーパ面
23b テーパ面
31 基部
32 ベース部
33 挿入口
33a 左側壁部
33b 前方右側壁部
33c 上面部
33d 下面部
33e ベロ挿入部
34 レバー
34a 長手
34b 短手
34c 屈曲部
34d 長手端部
34e 短手端部
34f ローラ
35 バネ
41 右側面
42 後方面