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特許7267780運転支援装置、運転支援方法、コンピュータプログラム及び取水システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法、コンピュータプログラム及び取水システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230425BHJP
   E03B 1/00 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
E03B1/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019038975
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020144474
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岩 良太
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-157624(JP,A)
【文献】特開2007-156653(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073012(WO,A1)
【文献】特開2013-200586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
E03B 1/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水源から取水する複数のポンプの運転データを取得する運転データ取得部と、
過去に取得された前記運転データに基づいて前記複数のポンプのそれぞれについて電力原単位と運転データとの関係性を示す特性データを生成する特性データ生成部と、
前記特性データと現在の運転データとに基づいて前記複数のポンプのそれぞれの電力原単位の現在値を推定する電力原単位推定部と、
前記複数のポンプのそれぞれについて推定された前記電力原単位の現在値に関する支援データを出力する支援データ出力部と、
を備え
前記特性データ生成部は、前記複数のポンプのそれぞれについて電力原単位と吐出圧力との関係性を示す特性データを生成する、
運転支援装置。
【請求項2】
前記支援データ出力部は、前記複数のポンプのそれぞれについて推定された電力原単位の現在値に基づいて前記複数のポンプに順位づけを行い、前記順位づけの結果に関する支援データを出力する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記支援データ出力部は、前記複数のポンプのそれぞれについて推定された電力原単位の現在値が、過去の推定値から所定値以上乖離した場合、その旨を示す支援データを出力する、
請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記特性データ生成部は、前記複数のポンプのそれぞれについて吐出流量の範囲ごとに、前記関係性を示す特性データを生成する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
複数の水源から取水する複数のポンプの運転に関する運転データを取得する運転データ取得ステップと、
過去に取得された前記運転データに基づいて前記複数のポンプのそれぞれについて電力原単位と運転データとの関係性を示す特性データを生成する特性データ生成ステップと、
前記特性データと現在の運転データとに基づいて前記複数のポンプのそれぞれの電力原単位の現在値を推定する電力原単位推定ステップと、
前記複数のポンプのそれぞれについて推定された前記電力原単位の現在値に関する支援データを出力する支援データ出力ステップと、
を有し、
前記特性データ生成ステップにおいて、前記複数のポンプのそれぞれについて電力原単位と吐出圧力との関係性を示す特性データを生成する、
運転支援方法。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から4のいずれか一項に記載の運転支援装置として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項7】
複数の水源から取水する複数のポンプと、
前記複数のポンプの運転を支援するための情報を示す支援データを出力する運転支援装置と、
を備え、
前記運転支援装置は、
前記複数のポンプの運転に関する運転データを取得する運転データ取得部と、
過去に取得された前記運転データに基づいて前記複数のポンプのそれぞれについて電力原単位と運転データとの関係性を示す特性データを生成する特性データ生成部と、
前記特性データと現在の運転データとに基づいて前記複数のポンプのそれぞれの電力原単位の現在値を推定する電力原単位推定部と、
前記複数のポンプのそれぞれについて推定された前記電力原単位の現在値に関する情報を前記支援データとして出力する支援データ出力部と、
を備え
前記特性データ生成部は、前記複数のポンプのそれぞれについて電力原単位と吐出圧力との関係性を示す特性データを生成する、
取水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、運転支援装置、運転支援方法、コンピュータプログラム及び取水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の水源を有する浄水場や配水池等の取水システムでは、予め定めた運転計画に基づいて取水用のポンプのオン・オフを自動制御することが行われている。このような取水システムでは、必要な配水量や水質に応じて、適切な水源から、適時に、適切な量の取水が行われるようにポンプが制御される要がある。しかしながら、複数の水源を有する取水システムでは、配水池の水位や配水ルートなどの様々な要因に起因して配水に係る電力原単位に差が生じることがあり、必ずしも適切なポンプを稼働させることができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-197629号公報
【文献】特開2018-010490号公報
【文献】特開2014-142752号公報
【文献】特許第2864797号公報
【文献】特開2017-10215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ポンプの運転計画をより適切に支援することができる運転支援装置、運転支援方法、コンピュータプログラム及び取水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の運転支援装置は、運転データ取得部と、特性データ生成部と、電力原単位推定部と、支援データ出力部と、を持つ。運転データ取得部は、複数の水源から取水する複数のポンプの運転データを取得する。特性データ生成部は、過去に取得された前記運転データに基づいて前記複数のポンプのそれぞれについて電力原単位と運転データとの関係性を示す特性データを生成する。電力原単位推定部は、前記特性データと現在の運転データとに基づいて前記複数のポンプのそれぞれの電力原単位の現在値を推定する。支援データ出力部は、前記複数のポンプのそれぞれについて推定された前記電力原単位の現在値に関する支援データを出力する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態における取水システムのシステム構成の具体例を示す図。
図2】第1の実施形態の運転支援装置の機能構成の具体例を示すブロック図。
図3】第1の実施形態の運転支援装置が各ポンプの現在の電力原単位を推定し、その表示データを生成する処理の具体例を示すフローチャート。
図4】第1の実施形態において取得される特性情報の具体例を示す図。
図5】第2の実施形態の運転支援装置の機能構成の具体例を示す図。
図6】第2の実施形態における支援情報の表示例を示す図。
図7】第3の実施形態の運転支援装置の機能構成の具体例を示すブロック図。
図8】第3の実施形態における支援情報の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の運転支援装置、運転支援方法、コンピュータプログラム及び取水システムを、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における取水システムのシステム構成の具体例を示す図である。第1の実施形態における取水システムは、複数の水源と、複数のポンプと、運転支援装置と、を備え、ポンプにより水源から取水した水を配水するシステムである。図1は、複数の水源の一例である水源1-1~1-M(Mは2以上の整数)と、複数のポンプの一例であるポンプ2-1~2-Mと、ポンプで取水した水を貯留又は浄水処理する施設や設備等の一例である配水池3と、運転支援装置4と、表示装置5と、を備えた取水システム100の構成例を示す。
【0009】
例えば、水源1-1~1-Mは、井戸や河川、貯水池等の取水源である。ポンプ2-1~2-Mは、水源1-1~1-Mのそれぞれに対応して設けられた取水用のポンプである。ポンプ2-1~2-Mは、水源1-1~1-Mのうち対応する水源から取水して配水池3に送水する。ここで、ポンプ2-1~2-Mの運転は、オペレータの手動操作や、配水池水位に応じた運転など、予め設定された運転計画に基づく自動制御によって管理される。
【0010】
なお、取水システム100が備えるポンプ2の数は水源1の数と異なってもよいし、1つの水源1に対して複数のポンプ2が設けられてもよい。また、ポンプ2-1~2-Mは、一定の出力で動作するものであってもよいし、インバータ等の制御により出力の大きさを調整できるものであってもよい。ここでは、簡単のため、ポンプ2-1~2-Mの出力の大きさは各ポンプのそれぞれで一定であるものとする。また、以下では簡単のため特に区別する必要がない場合、水源1-1~1-Mを水源1と記載し、ポンプ2-1~2-Mをポンプ2と記載する。
【0011】
運転支援装置4は、ポンプ2の運転管理を支援するための情報(以下「支援情報」という。)を生成する機能を有する。具体的には、運転支援装置4は、各ポンプ2の運転状況を示す情報(以下「運転情報」という。)に基づいて支援情報を生成する。運転支援装置4は、生成した支援情報を表示装置5に表示させる。
【0012】
図2は、第1の実施形態の運転支援装置4の機能構成の具体例を示すブロック図である。運転支援装置4は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、プログラムを実行する。運転支援装置4は、プログラムの実行によって運転データ記憶部41、特性データ記憶部42、運転データ取得部43、特性データ生成部44、電力原単位推定部45及び支援データ出力部46を備える装置として機能する。なお、運転支援装置4の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0013】
運転データ記憶部41及び特性データ記憶部42は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。運転データ記憶部41は運転データを記憶する。運転データは運転情報を含むデータである。特性データ記憶部42は特性データを記憶する。特性データは、各ポンプ2の特性を示す情報(以下「特性情報」という。)を示すデータである。
【0014】
運転データ取得部43は、運転支援装置4を他の装置と通信可能に接続する通信インタフェースを含んで構成され、その通信インタフェースを介した通信により各ポンプ2の運転データを取得する。運転データ取得部43は、取得した運転データを運転データ記憶部41に記憶させる。このような運転データの取得が繰り返し実行されることにより、運転データ記憶部41に運転データが蓄積される。
【0015】
なお、運転データは、各ポンプ2の運転状況が適時に示されればどのような装置から取得されてもよい。例えば、運転データは各ポンプ2から直接的に取得されてもよいし、各ポンプ2の運転状況に関する事象を観測するセンサ等の装置から取得されてもよいし、各ポンプ2から運転データを取得する他の装置から取得されてもよい。
【0016】
また、運転データ取得部43は、運転データを取得する時点において、その時点での瞬時値を示す運転データを取得できることが望ましいが、ポンプ2に対する操作の頻度や制御周期等によってはある程度の遅延が許容される場合もある。そのような場合、運転データ取得部43は、許容範囲内での時間遅れを伴う形で運転データを取得してもよい。
【0017】
特性データ生成部44は、運転データ記憶部41に蓄積されている各ポンプ2の過去の運転データを用いて各ポンプ2の特性データを生成する。特性データは、各ポンプ2の電力原単位と、それに相関する物理量との関係性を示す情報であればどのような特性情報を示すものであってもよい。例えば、特性データ生成部44は、電力原単位と吐出圧力との関係性を示す特性データを各ポンプ2ごとに取得する。特性データ生成部44は、生成した特性データを特性データ記憶部42に記憶させる。このような特性データの生成が運転データの取得に応じて繰り返し実行されることにより、特性データ記憶部42に特性データが蓄積される。
【0018】
電力原単位推定部45は、特性データ記憶部42に保持されている最新の特性データと、現在の運転データとに基づいて、各ポンプ2の現時点での電力原単位を推定する。電力原単位推定部45は、各ポンプ2について推定された電力原単位の現在値を示すデータ(以下「推定データ」という。)を支援データ出力部46に出力する。
【0019】
支援データ出力部46は、特性情報に基づいて支援情報を生成し、生成した支援情報を示すデータ(以下「支援データ」という。)を出力する機能を有する。ここで支援情報は、各ポンプ2の特性に関する情報であればどのような情報であってもよい。例えば、支援情報は、各ポンプ2の特性を示す特性情報そのものであってもよいし、特性情報の生成に用いられた情報や特性情報に基づいて取得された情報等を含んでもよい。例えば、支援情報は、電力原単位の現在値を推定するために用いられた特性情報や運転情報などを含んでもよい。
【0020】
例えば、本実施形態では、支援データ出力部46が、特性データに基づいて推定された各ポンプ2の電力原単位の現在値を表示させるためのデータを支援データとして生成する場合について説明する。この場合、支援データ出力部46は、推定データによって示される電力原単位の現在値を所定の態様で表示する表示データに変換して表示装置5に出力する。これにより、各ポンプ2の電力原単位の現在値が支援情報として表示装置5に表示される。
【0021】
なお、支援情報の表示は、支援情報の提供形態の一例であって、支援情報の提供形態はこれに限定されない。例えば、支援情報の提供は、その内容を表す音声の出力によって行われてもよいし、支援データの入出力又は送受信によって行われてもよい。
【0022】
図3は、第1の実施形態の運転支援装置4が各ポンプ2の現在の電力原単位を推定し、その表示データを生成する処理の具体例を示すフローチャートである。まず、運転支援装置4において、運転データ取得部43が各ポンプ2の運転データを取得する(ステップS101)。例えば、運転データ取得部43は、所定の周期ごとに運転データの取得を行い、取得した運転データを運転データ記憶部41に記憶させる。
【0023】
続いて、特性データ生成部44が、特性データの生成タイミングが到来したか否かを判定する(ステップS102)。ここで、特性データの生成タイミングは予め所定のタイミングに定められている。例えば、生成タイミングは、所定の周期ごとに到来するタイミングであってもよいし、運転データが取得されたタイミングであってもよい。生成タイミングが到来していない場合(ステップS102-NO)、特性データ生成部44はステップS101に処理を戻す。この場合、生成タイミングが到来するまでの間、運転データ取得部43によって運転データの取得が繰り返される。
【0024】
一方、生成タイミングが到来した場合(ステップS102-YES)、特性データ生成部44は、その時点で運転データ記憶部41に蓄積されている過去の運転データを用いて特性データを生成し、生成した特性データを特性データ記憶部42に記憶させる(ステップS103)。
【0025】
例えば、特性データ生成部44は、1mの水を送水するのに消費した電力量[kWh]を各ポンプ2の電力原単位として算出する。この場合、特性データ生成部44は、各ポンプ2が過去の所定期間において吐出した水の総量である総吐出量[m]と、その期間において各ポンプ2が消費した電力の総量である総電力量[kWh]と、をその期間に取得された運転データに基づいて取得し、総電力量を総吐出量で除することにより、当該期間における各ポンプ2の電力原単位[kWh/m]を算出する。この場合、過去の各時点における吐出流量[m/h]及び駆動電力[kW]の測定値を少なくとも含む運転データが各ポンプ2ごとに取得されるとよい。
【0026】
特性データ生成部44は、このように算出した各時点における電力原単位の値を、各時点における吐出圧力の関数として各ポンプ2ごとに近似し、その近似式を一意に定めるパラメータを各ポンプ2の特性データとして特性データ記憶部42に記憶させる。なお、電力原単位を吐出圧力の関数として近似する方法は、予め設定データとして特性データ生成部44に記憶されているものとする。
【0027】
続いて、電力原単位推定部45が、電力原単位の推定タイミングが到来したか否かを判定する(ステップS104)。ここで、電力原単位の推定タイミングは予め所定のタイミングに定められている。例えば、推定タイミングは、所定の周期ごとに到来するタイミングであってもよいし、特性データが更新されたタイミングであってもよい。推定タイミングが到来していない場合(ステップS104-NO)、電力原単位推定部45はステップS101に処理を戻す。この場合、推定タイミングが到来するまでの間、運転データ取得部43及び特性データ生成部44によって運転データの取得及び特性データの生成が繰り返される。
【0028】
一方、推定タイミングが到来した場合(ステップS104-YES)、電力原単位推定部45は、特性データ記憶部42に記憶されている最新の特性データと、現在の運転データとに基づいて、各ポンプ2の電力原単位の現在値を推定する(ステップS105)。ここで、現在の運転データは直近で取得された運転データであってもよい。電力原単位推定部45は、各ポンプ2について推定した電力原単位の現在値を示す推定データを支援データ出力部46に出力する。
【0029】
続いて、支援データ出力部46が、電力原単位推定部45が出力した推定データに基づいて表示データを生成し、生成した表示データを表示装置5に出力する(ステップS106)。
【0030】
図4は、第1の実施形態において取得される特性情報の具体例を示す図である。図4は、1台のポンプ2に関して、その吐出圧力と電力原単位との関係性を特性情報とした例を示す。一般に、ポンプ2の電力原単位は、ポンプ2の吐出流量[m/h]の範囲に応じて異なる範囲で変化することが知られている。図4は、このような性質を考慮して、吐出圧力と電力原単位との関係性を、吐出流量の範囲ごとに近似した例を示す。
【0031】
このような特性情報を示す特性データを生成する場合、特性データ生成部44は、各時点について算出した電力原単位の各値を、各時点における吐出流量[m/h]の範囲に応じたグループに分類し、各グループごとに所属する電力原単位の値を吐出圧力を変数として近似すればよい。
【0032】
このような特性情報を示す特性データが生成される場合、電力原単位推定部45は、現在の運転データが示す現在の吐出圧力の値を図4に示される近似式に適用することで電力原単位の現在値を推定することができる。
【0033】
なお、ここでは吐出圧力と電力原単位との関係性を特性情報とする例を示したが、上述のとおり、特性情報は電力原単位と、それに相関する物理量との関係性を示す情報であればどのような特性情報を示すものであってもよい。例えば、特性データ生成部44は、電力原単位と吐出流量の関係性を示す特性データを生成してもよいし、ポンプ2に対応する配水池3の水位と電力原単位との関係性を示す特性データを生成してもよい。
【0034】
また、電力原単位を表す関数(以下「原単位関数」という。)は、必ずしも1つの物理量を変数として近似される必要はなく、各ポンプ2の動作点(例えば、吐出圧力、吐出流量、駆動電力など)に関する複数の物理量を変数として近似されてもよい。また、原単位関数は、各ポンプ2の動作点に関する物理量以外の値を変数に含んでもよい。例えば、原単位関数は、各ポンプ2に対応する配水池3の水位や、各ポンプ2のオン・オフの状態、各ポンプ2の駆動時間等を示す値を変数に含んでもよい。
【0035】
このように構成された第1の実施形態の運転支援装置4は、取水システム100において用いられる各ポンプ2の特性データを随時更新することにより、各ポンプ2の電力原単位の現在値をより精度良く推定することができる。そして、運転支援装置4が、推定した電力原単位の現在値に関する情報を支援情報として提供することにより、ポンプの運転計画をより適切に支援することが可能となる。
【0036】
具体的には、電力原単位に基づく特性情報がポンプ2の操作員に提供されることにより、操作員はよりエネルギー効率の高いポンプ2を選択して動作させることが可能になる。また、このような特性情報が、ポンプ2を自動制御する制御装置に提供されることにより、制御装置にエネルギー効率の高いポンプ2を優先的に選択して動作させるようにすることが可能になる。
【0037】
また、一般に浅井戸取水井から取水するポンプは消費電力が小さく、深井戸取水井から取水するポンプは消費電力が大きくなる傾向にある。その一方で、深井戸取水井は浅井戸取水井よりも水質が良い傾向にあり、水源の深さと水質とはトレードオフの関係にあることが多い。そのため、従来は、水の需要量が多い日中には消費電力が小さい浅井戸取水井から取水するポンプ(以下「浅井戸ポンプ」という。)を多く稼働させ、水の需要量が少ない夜間には水質の良い深井戸取水井から取水するポンプ(以下「深井戸ポンプ」という。)を多く稼働させることで消費電力の削減を図る場合もあった。しかしながら、ポンプの特性は同じ浅井戸ポンプ同士又は深井戸ポンプ同士においても異なる場合が多い。そのため、従来は、浅井戸ポンプ同士又は深井戸ポンプ同士において必ずしも適切なポンプが選択されない場合があった。これに対して、第1の実施形態の運転支援装置4は、それぞれのポンプについて最新の特性情報を供給することができるため、より消費電力の無駄を少なくする運用の実現を支援することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態の運転支援装置4aの機能構成の具体例を示すブロック図である。運転支援装置4aは、支援データ出力部46に代えて支援データ出力部46aを備える点で第1の実施形態の運転支援装置4と異なる。運転支援装置4aのその他の構成は第1の実施形態と同様のため、その他の同様の構成については図2と同じ符号を付すことによりここでの説明を省略する。
【0039】
支援データ出力部46aは、第1の実施形態における支援データ出力部46が有する機能に加え、各ポンプ2の特性情報をそれぞれの順位に応じた態様で表示させる表示データを生成する機能を有する。例えば、支援データ出力部46aは、推定データにより示される各ポンプ2の電力原単位の現在値が小さい順(すなわちエネルギー効率が高い)に順位付けを行い、順位の高いものを優先して表示する表示データを生成する。
【0040】
図6は、第2の実施形態における支援情報の表示例を示す図である。ここでは、M台のポンプ2のうち、1位がポンプ2号機であり、2位がポンプ1号機であり、3位がポンプM号機である場合の表示の具体例を示す。例えば図6(A)は、各ポンプ2について決定された順位を電力原単位のグラフに表示した例である。具体的には、図6(A)において、各棒の上部に表示された括弧内の数値が対応するポンプ2について決定された順位を表している。また、例えば図6(B)は、各ポンプ2について決定された順位の順に電力原単位を並べて表示した例である。
【0041】
このように構成された第2の実施形態の運転支援装置4aは、推定した電力原単位の現在値に基づいて各ポンプ2の順位づけを行い、各ポンプ2について決定した順位を含む支援情報を出力する。このような構成を備えることにより、運転支援装置4aはポンプ2の運転計画をより適切に支援することが可能となる。例えば、各ポンプ2の特性情報が電力原単位が小さい順に表示装置5に表示されることにより、操作員はエネルギー効率の高いポンプ2を容易に把握することが可能となる。
【0042】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態の運転支援装置4bの機能構成の具体例を示すブロック図である。運転支援装置4bは、電力原単位推定部45に代えて電力原単位推定部45bを備える点、支援データ出力部46に代えて支援データ出力部46bを備える点で第1の実施形態の運転支援装置4と異なる。運転支援装置4bのその他の構成は第1の実施形態と同様のため、その他の同様の構成については図2と同じ符号を付すことによりここでの説明を省略する。
【0043】
電力原単位推定部45bは、各ポンプ2について電力原単位の現在値を推定する点では第1の実施形態における電力原単位推定部45と同様であるが、取得した推定データを特性データ記憶部42に記憶させる点で第1の実施形態における電力原単位推定部45と異なる。このような推定データの取得が繰り返し実行されることにより、各ポンプ2の推定データが特性データ記憶部42に蓄積される。
【0044】
支援データ出力部46bは、第1の実施形態における支援データ出力部46が有する機能に加え、各ポンプ2の特性の変化に関する情報(以下「第2の特性情報」という。)を表示させる表示データを生成する機能を有する。例えば、支援データ出力部46bは、次の図8に示す各グラフの表示データを生成する。
【0045】
図8は、第3の実施形態における支援情報の表示例を示す図である。例えば図8(A)は、ある1台のポンプ2(ここではポンプ1号機)の電力原単位の値を時系列に表示した例である。このような表示によれば、操作員は現在の電力原単位の値が過去の電力原単位の値と比べてどの程度変化したかを、過去のトレンドとともに視覚的に容易に把握することができる。また、このような表示を、複数のポンプ2について同時に行うことにより、操作員は各ポンプ2の特性の変化の妥当性を判断しやすくなる。
【0046】
また、図8(B)は、ある1台のポンプ2(ここではポンプ1号機)の過去の基準時点における電力原単位の値を基準として電力原単位の変動量を時系列に表示した例である。すなわち過去の基準時点における変動量はゼロである。このような表示によれば、操作員は電力原単位の現在値が許容範囲内であるか否かを、過去のトレンドとともに視覚的に容易に把握することができる。この場合の許容範囲は、予め定められた所定値であってもよいし、過去の変動量の大きさに基づいて決定されてもよい。また、比較対象とする電力原単位の基準値を過去の基準時点における電力原単位の値とする代わりに、過去の所定期間における電力原単位の平均値を比較対象としてもよい。また、このような表示を、複数のポンプ2について同時に行うことにより、操作員は各ポンプ2の特性の変化の妥当性を判断しやすくなる。
【0047】
また、図8(C)は、M台のポンプ2のうち、電力原単位の変動量が閾値を超えたポンプ2(要注意ポンプ)のみを時系列に表示した例である。このような表示によれば、操作員は、特性が大きく変化したポンプ2を容易に把握することができる。
【0048】
このように構成された第3の実施形態の運転支援装置4bは、各ポンプ2の特性の変化に関する第2の特性情報を含む支援情報を出力することにより、ポンプ2の運転計画をより適切に支援することが可能となる。一般に、ポンプの電力原単位は、機器の異常や経年劣化等により大きく変化することが知られている。そのため、第2の特性情報が図8に例示したような態様で提供されることにより、操作員は機器の異常や経年劣化の度合い等を視覚的に容易に判断することが可能になる。
【0049】
(変形例)
上記の各実施形態の運転支援装置が備える機能の一部又は全部は、浄水場や配水池等に備えられた既存の監視制御システムの一部として実現されてもよいし、監視制御システムから独立した専用の装置として実現されてもよい。また、上記の各実施形態の運転支援装置は、インターネット等の広域ネットワークを介して複数の取水システムに接続され、各取水システムに対して支援情報を提供するサーバ(いわゆるクラウドサーバ)として構成されてもよい。
【0050】
各ポンプ2について推定される電力原単位には、各ポンプ2の運転に要した電力以外の電力量が含まれてもよい。例えば、各ポンプ2の電力原単位には、浄水場や配水池等の取水施設において他の機器が各ポンプ2と同じタイミングで消費した電力量(以下「他の電力量」という。)が含まれてもよい。例えば、他の電力量は、当該施設の照明機器や空調機器等によって消費された電力量であってもよい。この場合、他の電力量が施設全体の合計値として取得される場合には、他の電力量を稼働中のポンプ2の台数で按分した電力量が各ポンプ2の電力原単位に含まれてもよい。また、他の電力量が各ポンプ2のそれぞれに対応して消費される場合には、他の電力量は対応するポンプ2の電力原単位に含まれてもよい。
【0051】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、過去に取得された運転データに基づいて複数のポンプのそれぞれについて電力原単位と運転データとの関係性を示す特性データを生成する特性データ生成部と、特性データと現在の運転データとに基づいて複数のポンプのそれぞれの電力原単位の現在値を推定する電力原単位推定部と、を持つことにより、ポンプの運転計画をより適切に支援することができる運転支援装置、運転支援方法、コンピュータプログラム及び取水システムを提供することができる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
100…取水システム、1,1-1~1-M…水源、2,2-1~2-M…ポンプ、3…配水池、4,4a,4b…運転支援装置、41…運転データ記憶部、42…特性データ記憶部、43…運転データ取得部、44…特性データ生成部、45,45b…電力原単位推定部、46,46a,46b…支援データ出力部、5…表示装置
図1
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