(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20230425BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H01L27/04 P
(21)【出願番号】P 2019045337
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鷹巣 博昭
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-303886(JP,A)
【文献】特開2003-347414(JP,A)
【文献】特開2002-289783(JP,A)
【文献】特開昭56-026462(JP,A)
【文献】特開2004-311840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された絶縁膜の上に、ノンドープのポリシリコン膜を形成する工程と、
前記ノンドープのポリシリコン膜に不純物を第1イオン注入して、第1導電型の第一不純物領域を形成する工程と、
前記ポリシリコン膜上に、シリコン酸化膜を形成する工程と、
前記シリコン酸化膜上に、第1のレジストパターンを形成し、前記第1のレジストパターンをマスクとして前記シリコン酸化膜をエッチングする工程と、
前記第1のレジストパターンと前記シリコン酸化膜をマスクとして、前記第1イオン注入よりも高いドーズ量にて第2イオン注入して、前記ポリシリコン膜に前記第一不純物領域よりも高不純物濃度となる第1導電型の第二不純物領域を形成する工程と、
前記第1のレジストパターンを除去した後に、前記第二不純物領域を前記第一不純物領域方向に拡散するための第1の熱処理をして、第1導電型の第三不純物領域を形成する工程と、
前記ポリシリコン膜上に形成した第2のレジストパターンをマスクとして第3イオン注入し、前記ポリシリコン膜に前記第三不純物領域よりも高濃度の第1導電型の第四不純物領域を形成する工程と、
前記第2のレジストパターンを除去した後に、前記第四不純物領域を覆うように前記ポリシリコン膜上に形成した第3のレジストパターンをマスクとして前記ポリシリコン膜をエッチングする工程と、
前記第一不純物領域と前記第三不純物領域と前記第四不純物領域とを有する前記ポリシリコン膜に第2の熱処理をして、第一高抵抗領域と第二高抵抗領域と低抵抗領域とを有する薄膜抵抗体とする工程と、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の熱処理は、前記第2の熱処理よりも長時間であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置、特に薄膜抵抗体を有する半導体装置および薄膜抵抗体を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧検出器などのアナログICでは、一般に複数のポリシリコン抵抗体からなるブリーダー抵抗が使用される。
例えば、ボルテージディテクタを例にすれば、基準電圧回路において発生した基準電圧とブリーダー抵抗回路において分圧された分圧電圧とを誤差増幅器で比較することにより電圧の検出が行われる。従ってブリーダー抵抗回路において分圧された分圧電圧の精度がきわめて重要となる。ブリーダー抵抗回路の分圧精度が悪いと誤差増幅器への入力電圧がばらつくので、所定の解除あるいは検出電圧が得られなくなってしまう。
【0003】
ブリーダー抵抗の分圧精度を高めるために、これまで様々な工夫がなされており、高精度のアナログICを作製するために高精度の抵抗分圧比を得る目的でポリシリコン抵抗体の上面あるいは下面に設置した導電体の電位を固定することで、所望の抵抗値(分圧比)を得るように工夫している例もある(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8に示すように、従来のブリーダー抵抗回路は、複数の薄膜抵抗体からなり、各々の薄膜抵抗体は、高抵抗領域301とその両端に低抵抗領域303を備えた基本構成の薄膜抵抗体400からなる。それぞれの薄膜抵抗体401~406は同じ幅のマスクによって形成されるため、同一幅の薄膜抵抗体が形成されると期待される。しかしながら、それぞれの薄膜抵抗体の幅はW2~W5に比べ、幅W1とW6が細く形成される傾向にある。このように、半導体製造工程において、各薄膜抵抗体に加工ばらつきを生じてしまうと、ブリーダー抵抗回路内の複数の薄膜抵抗体の抵抗値を一定に揃えることが困難で、アナログICに必要とされる抵抗分圧比を高い精度で達成することが困難であるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、加工ばらつきによる薄膜抵抗体の抵抗値ばらつきを低減し、高精度な半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題解決のために、本発明の実施例に係る半導体装置の製造方法においては以下の手段を用いた。
【0009】
半導体基板上に形成された絶縁膜の上に、ノンドープのポリシリコン膜を形成する工程と、
前記ノンドープのポリシリコン膜に不純物を第1イオン注入して、第1導電型の第一不純物領域を形成する工程と、
前記ポリシリコン膜上に、シリコン酸化膜を形成する工程と、
前記シリコン酸化膜上に、第1のレジストパターンを形成し、前記第1のレジストパターンをマスクとして前記シリコン酸化膜をエッチングする工程と、
前記第1のレジストパターンと前記シリコン酸化膜をマスクとして、前記第1イオン注入よりも高いドーズ量にて第2イオン注入して、前記ポリシリコン膜に前記第一不純物領域よりも高不純物濃度となる第1導電型の第二不純物領域を形成する工程と、
前記第1のレジストパターンを除去した後に、前記第二不純物領域を前記第一不純物領域方向に拡散するための第1の熱処理をして、第1導電型の第三不純物領域を形成する工程と、
前記ポリシリコン膜上に形成した第2のレジストパターンをマスクとして第3イオン注入し、前記ポリシリコン膜に前記第三不純物領域よりも高濃度の第1導電型の第四不純物領域を形成する工程と、
前記第2のレジストパターンを除去した後に、前記第四不純物領域を覆うように前記ポリシリコン膜上に形成した第3のレジストパターンをマスクとして前記ポリシリコン膜をエッチングする工程と、
前記第一不純物領域と前記第三不純物領域と前記第四不純物領域とを有する前記ポリシリコン膜に第2の熱処理をして、第一高抵抗領域と第二高抵抗領域と低抵抗領域とを有する薄膜抵抗体とする工程と、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法とした。
【発明の効果】
【0010】
上記手段を用いることで、薄膜抵抗体を有するブリーダー抵抗回路を用いたアナログICにおいて、加工ばらつきによる薄膜抵抗体の抵抗値ばらつきを低減でき高精度な半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の薄膜抵抗体の平面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態にかかる半導体装置の薄膜抵抗体の平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の薄膜抵抗体の製造工程を示す断面図である。
【
図4】
図3に続く、本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の薄膜抵抗体の製造工程を示す断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の薄膜抵抗体の製造工程を示す断面図である。
【
図6】本発明にかかる薄膜抵抗体によって構成されたブリーダー抵抗回路を用いたボルテージディテクタの一実施例のブロック図である。
【
図7】本発明にかかる薄膜抵抗体によって構成されたブリーダー抵抗回路を用いたボルテージレギュレータの一実施例のブロック図である。
【
図8】従来の半導体装置の薄膜抵抗体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の薄膜抵抗体の平面図である。薄膜抵抗体200は高抵抗領域100とその両端に形成された低抵抗領域103を有する。高抵抗領域100は第一高抵抗領域101と第二高抵抗領域102とからなり、矩形に形成された第二高抵抗領域102の短手方向(第1方向、B-B’方向)の両側に接して第一高抵抗領域101が形成されている。短手方向と直交する長手方向(第2方向、A-A’方向)において第一高抵抗領域101と第二高抵抗領域102は同じ長さを有し、第一高抵抗領域101の長手方向の両端面と第二高抵抗領域の長手方向の両端面はおおむね同一の平面をなしている。そして、その平面、すなわち高抵抗領域100の長手方向の両端には低抵抗領域103が接している。
【0014】
第一高抵抗領域101と第二高抵抗領域102と低抵抗領域103は同一層のポリシリコン膜にボロンなどのP型の不純物を導入した薄膜である。薄膜抵抗体200の表面を被覆して層間絶縁膜が設けられ、層間絶縁膜には低抵抗領域103を部分的に露出するコンタクトホール104が形成されている。このコンタクトホール104は他の抵抗体あるいは内部回路等と金属配線を介して電気的接続を行うために用いられる。
【0015】
ここで、第二高抵抗領域102のシート抵抗値は、第一高抵抗領域101のシート抵抗値に比べて高くなるように不純物濃度を調整して形成されており、以下の効果を一層顕著に奏するために10倍以上の差をもたせるように設定されることが望ましく、例えば、第一高抵抗領域101のシート抵抗値が5kΩ/□である場合、第二高抵抗領域102のシート抵抗値は50kΩ/□以上となるように設定されている。
【0016】
また、第一高抵抗領域101および、第二高抵抗領域102には、ボロンなどのP型の不純物に代えてリンやヒ素などのN型の不純物を導入してN型の導電型を有するポリシリコン薄膜抵抗体を形成しても良い。更に、第二高抵抗領域102のシート抵抗値を一層高めるため、第二高抵抗領域102をノンドープのポリシリコン薄膜により形成することでも良い。
これらの薄膜抵抗体を複数組み合わせて、ブリーダー抵抗回路が構成されている。
【0017】
図1に示した実施形態によれば、半導体の製造工程において、薄膜抵抗体200の加工ばらつきを生じてしまった場合でも、加工ばらつきを生じる部分は、高いシート抵抗値を有する第二高抵抗領域102であるため、薄膜抵抗体全体の抵抗値の変動を小さく抑えることができる。詳しい製造工程については
図3~
図5を用いて説明する。
【0018】
薄膜抵抗体全体の抵抗値は、第一高抵抗領域101と第二高抵抗領域102の組合せにより規定されるが、第二高抵抗領域102のシート抵抗値は第一高抵抗領域101のシート抵抗値より高く、例えば10倍以上に設定されているため、加工ばらつきで第二高抵抗領域102の幅が多少変動しても、その影響は従来の薄膜抵抗体全体が一つの高抵抗領域のみで形成されていた場合の1/10以下に低減される。
【0019】
ここで、
図8に示した従来の薄膜抵抗体と比較して、本発明の半導体装置にかかる薄膜抵抗体の加工ばらつきについて説明する。従来の薄膜抵抗体400はフォトリソ工程およびエッチング工程によって線幅が決められ、W2~W5の線幅に比べ、W1およびW6の線幅が細いことは既に述べたが、その要因はフォトリソ工程での現像時の現像促進種の生成である。ポジ型レジストを利用してレジストパターンを形成する場合、アルカリ現像液(例えば、TMAH)を用いて露光された領域が除去される。このとき、レジストが溶け込んだアルカリ現像液は現像を促進する働きを持つ現像促進種を生成するため、薄膜抵抗体の端部に位置する401、406を形成するためのレジストパターンが402~405を形成するためのレジストパターンよりも細くなる。これは402~405を形成するためのレジストパターンの両側に小面積の現像領域が存在するのに対し、401、406を形成するためのレジストパターンの片側に大面積の現像領域が存在することに起因する。
以上のように、各薄膜抵抗体の周囲の現像面積が同一でないことが原因で加工ばらつきが生じることから、本出願人は加工ばらつきを抑えるべく、
図1(b)に示す構成とした。
【0020】
詳しい製造工程については、後に
図3~
図5を用いて説明するが、薄膜抵抗体201~206は隣接して設けられ、薄膜抵抗体201~206の外側(外周)はフォトリソ工程およびエッチング工程によって形成される。薄膜抵抗体201~206の外側を規定するパターンは、フォトリソ工程およびエッチング工程によって形成され、そのB-B’方向の幅W11~W61、或いは
図1(a)に示す高抵抗領域100の幅c1の線幅のばらつきは従来の薄膜抵抗体と同じである。
【0021】
しかしながら、高抵抗領域100の外側に位置する第一高抵抗領域101の幅a1は、薄膜抵抗体201~206の表面に形成されたシリコン酸化膜をマスクとしてその外側にイオン注入法などで導入された不純物が、後続の熱処理工程で内方に拡散して形成された拡散幅にて決定されるため、第一高抵抗領域101の幅a1や形状、および面積は薄膜抵抗体201~206の全てにおいて同じにすることができる。よって、薄膜抵抗体201~206の幅の太りや細りといった加工ばらつきは、高抵抗領域100の内側に位置する第二高抵抗領域102の幅b1が変化することで吸収できることになる。
【0022】
ここで、第一高抵抗領域101の抵抗値は、第二高抵抗領域102の抵抗値に比べて低く設定されているため、薄膜抵抗体100の抵抗値を決定する主な要素は、第一高抵抗領域101の幅である。上述したように、第一高抵抗領域101の幅a1は複数の薄膜抵抗体200において、ほぼ同一とすることが可能となるため、薄膜抵抗体200の加工ばらつきによる抵抗値ばらつきを低減できる。
(実施形態2)
【0023】
図2は、本発明の第2の実施例形態にかかる半導体装置の薄膜抵抗体の平面図である。
薄膜抵抗体200の幅が加工ばらつきによって、
図1に示した実施形態に比べて細くなった場合を示している。
【0024】
上述のとおり、薄膜抵抗体200の加工ばらつきは、第二高抵抗領域102の幅が変化して吸収する形となっている。このため、
図1に示した実施形態に比べて、第二高抵抗領域102の幅b2が細くなっている。これに対し、第一高抵抗領域101の幅a2は、
図1に示した実施形態の第一高抵抗領域101の幅a1と変わらない。
【0025】
薄膜抵抗体全体の抵抗値は、第一高抵抗領域101と第二高抵抗領域102の組合せにより規定されるが、第二高抵抗領域102のシート抵抗値は第一高抵抗領域101のシート抵抗値の10倍以上に設定されているため、
図2に示したように、加工ばらつきによって第二高抵抗領域102の幅b2が細くなっても、その影響は、薄膜抵抗体全体を一つの高抵抗領域のみで形成していた従来の薄膜抵抗体に比べて小さく抑えられる。
【0026】
例えば、従来の薄膜抵抗体では、薄膜抵抗体全体が1um幅の第二高抵抗領域102で形成され、加工ばらつきにより、0.1umの細りを生じた場合には、細りを生じた薄膜抵抗体と、細りの無い薄膜抵抗体とでは、10%もの抵抗値の差が生じてしまう。
【0027】
一方、上記の実施形態に拠り、1umの幅の第二高抵抗領域102と、その側面を覆うように同じく1umの幅の第一高抵抗領域101とによって薄膜抵抗体を形成した場合には、製造加工ばらつきに拠り局所的に薄膜抵抗体の幅が0.1um細ったとしても、細りを生じるのは第二高抵抗領域102のみであり、第二高抵抗領域102のシート抵抗値は、第二高抵抗領域101のシート抵抗値の10倍以上高いため、細りを生じた薄膜抵抗体と、細りの無い薄膜抵抗体との抵抗値の差は1%以下に大きく低減することができる。
【0028】
図3~
図5は、本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の薄膜抵抗体の製造工程を示す断面図である。
図3および
図4は、
図1の短手方向(B-B’方向)に沿った断面図であり、
図5は、
図1の長手方向(A-A’方向)に沿った断面図である。
【0029】
図3(a)に示すように、半導体基板10の上に絶縁膜20を2000Å~8000Åの膜厚で堆積した後、さらにノンドープのポリシリコン膜30を500Å~2000Åの膜厚で堆積し、次いで、ポリシリコン膜30にP型の不純物、例えばBF2をイオン注入D1して、第一不純物領域30aを形成する。なお、第一不純物領域30aをノンドープのポリシリコン膜とする場合はイオン注入D1工程をせずとも良い。
【0030】
次いで、
図3(b)に示すように、ポリシリコン膜30の上にシリコン酸化膜50を1000Å~5000Å程度形成する。
【0031】
次いで、
図3(c)に示すように、シリコン酸化膜50の上にレジストパターン40aを形成した後に、レジストパターン40aをマスクとしてシリコン酸化膜50をエッチングする。
【0032】
次いで、レジストパターン40aと、エッチングによって所望の形に形成されたシリコン酸化膜50をマスクとして、P型の不純物、例えばBF2をイオン注入D2して、第二不純物領域30bを形成する。ここで、第二不純物領域30bの不純物濃度は、第一不純物領域30aに比べて高い濃度になるように形成される。次に、レジストパターン40aを除去した後、
図4(a)に示すように、第1の熱処理工程を施して、第二不純物領域30bの不純物をシリコン酸化膜50下面の第一不純物領域30a方向、すなわち高抵抗領域の内方へ拡散させて第三不純物領域30cを形成する。次いで、
図4(b)に示すように、シリコン酸化膜をマスクとしてポリシリコン膜30の第二不純物領域30bをエッチングした後、シリコン酸化膜50を除去し、第三不純物領域30cからなる第一高抵抗領域101と第一不純物領域30aからなる第二高抵抗領域102とを有する高抵抗領域100の平面形状が出来上がる。第二高抵抗領域102は両側の第一高抵抗領域101に挟まれる構成である。
【0033】
次いで、
図5に示すように、
図1に示す低抵抗領域103となる領域が開口するようにレジストパターン40bを形成し、P型の不純物、例えばBF2をポリシリコン膜30にイオン注入して第四不純物領域30dを形成する。ここで注入される不純物は先のイオン注入D2に比べ極めて高濃度であって、注入時のドーズ量は3E15atoms/cm2~6E15atoms/cm2である。
【0034】
次に、レジストパターン40b除去後、
図1に示す高抵抗領域100および低抵抗領域103を覆うレジストパターンを形成する。このレジストパターン形成は低抵抗領域103を形成するためのものであって、既に平面形状が形成されている高抵抗領域100がエッチングダメージを受けないように、第一不純物領域30aと第三不純物領域30cに対しては高抵抗領域100に対してはオーバーサイズのレジストパターンを設ける。そして、このレジストパターンをマスクとしてポリシリコン膜30をエッチングした後、レジストパターンを除去する。これにより、第四不純物領域30dからなる低抵抗領域103の平面形状が決まる。さらに、第2の熱処理工程を行ってポリシリコン膜30中の不純物の活性化を行い、第一不純物領域30aと第三不純物領域30cと第四不純物領域30dとを第一高抵抗領域と第二高抵抗領域と低抵抗領域とする。
上述の第1の熱処理工程は不純物の拡散するためのものであり、第2の熱処理工程は単にイオン注入された不純物の活性化が目的であるから、第1の熱処理工程においてポリシリコン膜30にかかる熱量は第2の熱処理工程においてかかる熱量よりも大きく、通常、第1の熱処理における温度は第2の熱処理工程に比べ高く処理時間も長い。ただ、第1の熱処理工程に炉を用い、第2の熱処理にRTA(ランプアニール装置)を用いた場合は、第2の熱処理工程が第1の熱処理工程に比べ温度が高く、処理時間が極めて短くなることもある。これらの工程によって、第一高抵抗領域101と第二高抵抗領域102と低抵抗領域103とを有する薄膜抵抗体200が出来上がる。このようにして得られた薄膜抵抗体200を構成する各部位のシート抵抗値は高い方から順に第二高抵抗領域102、第一高抵抗領域101、低抵抗領域103となる。平面構造は
図1(a)に示すとおりである。
【0035】
上記では、P型の抵抗を形成する一例について説明したが、N型の抵抗を形成する場合はリンやヒ素をイオン種として選択すれば良い。
【0036】
図6は、本発明の実施形態にかかる薄膜抵抗体によって構成されたブリーダー抵抗回路を用いたボルテージディテクタのブロック図の一例である。
【0037】
図1、
図2に示した本発明の実施形態にかかる複数の薄膜抵抗体によって構成された高精度な分圧比を有するブリーダー抵抗回路を用いることにより、高精度な半導体装置、例えばボルテージディテクタ、ボルテージレギュレータ等の半導体装置を得ることができる。
【0038】
図6の例では、簡単のため単純な回路の例を示したが、実際の製品には必要に応じて機能を追加すればよい。ボルテージディテクタの基本的な回路構成要素は基準電圧回路901、ブリーダー抵抗回路902、誤差増幅器904であり他にN型トランジスタ908、P型トランジスタ907などが付加されている。以下に簡単に動作の一部を説明する。
【0039】
誤差増幅器904の反転入力はブリーダー抵抗回路902に分圧された分圧電圧Vr、即ちRB/(RA+RB)*VDDとなる。基準電圧回路901の基準電圧Vrefは、電源電圧VDDが所定の検出電圧Vdetの時の分圧電圧Vrに等しく設定される。即ち、Vref=RB/(RA+RB)*Vdetとする。電源電圧VDDが所定電圧Vdet以上の時は、誤差増幅器904の出力がLOWとなるように設計されるので、P型トランジスタ907はONし、N型トランジスタ908がOFFとなり出力OUTには電源電圧VDDが出力される。そして、VDDが低下し検出電圧Vdet以下になると出力OUTにはVSSが出力される。
【0040】
このように、基本的な動作は、基準電圧回路901で発生した基準電圧Vrefとブリーダー抵抗回路902で分圧された分圧電圧Vrとを誤差増幅器904で比較することにより行われる。従ってブリーダー抵抗回路902で分圧された分圧電圧Vrの精度がきわめて重要となる。ブリーダー抵抗回路902の分圧精度が悪いと誤差増幅器904への入力電圧がバラツキ、所定の解除あるいは検出電圧が得られなくなってしまう。本発明にかかる薄膜抵抗体によって構成されたブリーダー抵抗回路を用いることにより高精度の分圧が可能となるためICとしての製品歩留まりが向上したり、より高精度なボルテージディテクタを製造したりする事が可能となる。
【0041】
図7は、本発明の実施形態にかかる薄膜抵抗体によって構成されたブリーダー抵抗回路を用いたボルテージレギュレータのブロック図の一例である。
【0042】
図7では、簡単のため単純な回路の例を示したが、実際の製品には必要に応じて機能を追加すればよい。ボルテージレギュレータの基本的な回路構成要素は基準電圧回路901、ブリーダー抵抗回路902、誤差増幅器904そして電流制御トランジスタとして働くP型トランジスタ907などである。以下に簡単に動作の一部を説明する。
【0043】
誤差増幅器904は、ブリーダー抵抗回路902によって分圧された分圧電圧Vrと基準電圧回路901で発生した基準電圧Vrefとを比較し、入力電圧VINの変化に因らない一定した所定の出力電圧VOUTを得るために必要なゲート電圧をP型トランジスタ907に供給する。ボルテージレギュレータにおいても
図4で説明したボルテージディテクタの場合と同様に、基本的な動作は、基準電圧回路901で発生した基準電圧Vrefとブリーダー抵抗回路902で分圧された分圧電圧Vrとを誤差増幅器904で比較することにより行われる。従ってブリーダー抵抗回路902で分圧された分圧電圧Vrの精度がきわめて重要となる。ブリーダー抵抗回路902の分圧精度が悪いと誤差増幅器904への入力電圧がバラツキ、一定した所定の出力電圧VOUTが得られなくなってしまう。本発明にかかる薄膜抵抗体によって構成されたブリーダー抵抗回路を用いることにより高精度の分圧が可能となるためICとしての製品歩留まりが向上したり、より高精度なボルテージレギュレータを製造したりする事が可能となる。
【0044】
以上のとおり、本発明による薄膜抵抗体を用いることにより、半導体の製造工程において、薄膜抵抗体の加工ばらつきを生じてしまった場合でも、加工ばらつきを生じる部分は、第一高抵抗領域であるため、薄膜抵抗体の抵抗値の変動を小さく抑えることができ、本発明による薄膜抵抗体を有するブリーダー抵抗回路を用いたアナログICにおいて、加工ばらつきによる薄膜抵抗体の抵抗値ばらつきを低減でき、アナログICにおけるブリーダー抵抗回路において正確な分圧比を保持できる高精度のブリーダー抵抗回路、及び、このようなブリーダー抵抗回路を用いた高精度なボルテージディテクタ、ボルテージレギュレータ等の半導体装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
10 半導体基板
20 絶縁膜
30 ポリシリコン膜
30a 第一不純物領域
30b 第二不純物領域
30c 第三不純物領域
30d 第四不純物領域40a、40b レジストパターン50 シリコン酸化膜
100 高抵抗領域
101 第一高抵抗領域
102 第二高抵抗領域
103 低抵抗領域
104 コンタクトホール
200、201、202、203、204、205、206 薄膜抵抗体
301 高抵抗領域
303 低抵抗領域
400、401、402、403、404、405、406 薄膜抵抗体
901 基準電圧回路
902 ブリーダー抵抗回路
904 誤差増幅器
907 P型トランジスタ
908 N型トランジスタ
D1、D2 イオン注入
W1、W2、W3、W4、W5、W6 高抵抗領域の幅
W11、W21、W31、W41、W51、W61 高抵抗領域の幅
W12、W22、W32、W42、W52、W62 第二抵抗領域の幅
a1 第一高抵抗領域の幅
a2 第一高抵抗領域の幅
b1 第二高抵抗領域の幅
b2 第二高抵抗領域の幅
c1 高抵抗領域全体の幅
c2 高抵抗領域全体の幅