(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 13/06 20060101AFI20230425BHJP
B29B 9/06 20060101ALI20230425BHJP
B29C 71/02 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
B29B13/06
B29B9/06
B29C71/02
(21)【出願番号】P 2019051552
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】桑村 五郎
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 益巳
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184568(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092745(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 9/00-13/10,
B29C 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタンの溶融樹脂を成形する成形工程と、
前記成形工程により得られた前記溶融樹脂の成形体を、
恒温器内において、1.0g/m
3以上の
一定の絶対湿度で、1時間以上エージングするエージング工程と、
前記エージング工程の後、
除湿乾燥機で、前記成形体を除湿乾燥する乾燥工程と
を含むことを特徴とする、ポリウレタン樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
前記エージング工程において、前記成形体を
、2g/m
3以上40g/m
3以下
の一定の絶対湿度、および、40℃以上100℃以下
の一定の温度で、2時間以上48時間以下エージングすることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリウレタンは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応により得られることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂成形体を製造する方法として、重合により得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂を溶融状態でストランド状に押し出し、押し出されたストランドを冷却した後、所定の長さに切断して、ペレット状に成形することが知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した方法では、得られたポリウレタン樹脂成形体を用いて成形品を製造した場合に、フィッシュアイが発生する場合がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、フィッシュアイを低減することができるポリウレタン樹脂成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明[1]は、熱可塑性ポリウレタンの溶融樹脂を成形する成形工程と、前記成形工程により得られた前記溶融樹脂の成形体を、絶対湿度1.0g/m3以上の雰囲気下で1時間以上エージングするエージング工程と、前記エージング工程の後、前記成形体を除湿乾燥する乾燥工程とを含む、ポリウレタン樹脂成形体の製造方法を含む。
【0007】
また、本発明[2]は、前記エージング工程において、前記成形体を、絶対湿度2g/m3以上40g/m3以下、温度40℃以上100℃以下の雰囲気下で、2時間以上48時間以下エージングする、上記[1]のポリウレタン樹脂成形体の製造方法を含む。
【0008】
また、本発明[3]は、前記熱可塑性ポリウレタンが、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応により得られる、上記[1]または[2]のポリウレタン樹脂成形体の製造方法を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリウレタン樹脂成形体の製造方法によれば、フィッシュアイを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のポリウレタン樹脂成形体の製造方法に使用できる成形システムの構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.成形システムの概略
まず、
図1を参照して、本発明のポリウレタン樹脂成形体の製造方法に使用できる成形システム1の構成について説明する。
【0012】
成形システム1は、ストランドカット方式を採用するペレット成形システムであって、重合により得られた熱可塑性ポリウレタンの不定形粉砕物を、所定の形状および所定のサイズを有するペレットに成形する。
【0013】
成形システム1は、原料タンク2と、原料乾燥機3と、押出成形機4と、搬送装置5と、ペレタイザー6と、選別機7と、恒温器8と、ペレット乾燥機9とを備える。
【0014】
原料タンク2には、原料として、熱可塑性ポリウレタンの不定形粉砕物が貯留される。原料タンク2内の原料は、気力輸送などの輸送方法により、原料乾燥機3へ輸送される。
【0015】
原料乾燥機3は、原料タンク2から輸送された原料を乾燥する。詳しくは、原料乾燥機3は、除湿乾燥機であり、吸湿剤等によって水分が除去された乾燥空気を用いて、原料を乾燥する。原料乾燥機3によって乾燥された原料は、気力輸送などの輸送方法により、押出成形機4に輸送される。
【0016】
押出成形機4は、原料を溶融して、溶融された原料(溶融樹脂)を所定の形状に成形する。この実施形態では、押出成形機4は、溶融樹脂をストランド形状に成形する。押出成形機4は、シリンダー4Aと、図示しないスクリューと、ギアポンプ4Bと、スクリーンチェンジャー4Cと、ダイ4Dとを備える。
【0017】
シリンダー4Aは、水平方向に延びる筒形状を有する。シリンダー4Aは、吐出口4Eと、投入口4Fとを有する。吐出口4Eは、シリンダー4Aの水平方向一端部に配置される。投入口4Fは、水平方向において吐出口4Eから離れて配置される。原料は、投入口4Fを通ってシリンダー4A内に投入される。シリンダー4Aは、図示しないヒーターを備える。ヒーターは、シリンダー4A内の原料を加熱する。
【0018】
スクリューは、シリンダー4A内に配置される。スクリューは、シリンダー4A内の原料を投入口4Fから吐出口4Eに向かって搬送する。シリンダー4A内に投入された原料は、ヒーターからの熱によって溶融されながら、スクリューによって、吐出口4Eへ向かって搬送される。溶融された原料(溶融樹脂)は、吐出口4Eを通ってシリンダー4Aから吐出される。
【0019】
ギアポンプ4Bは、シリンダー4Aの水平方向一端部に取り付けられる。ギアポンプ4Bは、シリンダー4Aから吐出された溶融樹脂をダイ4Dに向かって送る。
【0020】
スクリーンチェンジャー4Cは、ギアポンプ4Bとダイ4Dとの間に介在される。スクリーンチェンジャー4Cは、内部に、交換可能なスクリーンを備える。スクリーンは、ギアポンプ4Bからダイ4Dに送られる溶融樹脂から未溶融樹脂などの不純物を除去する。
【0021】
ダイ4Dは、スクリーンチェンジャー4Cを通過した溶融樹脂をストランド形状に成形する。
【0022】
搬送装置5は、ベルトコンベアであり、押出成形機4によって成形された溶融樹脂のストランドSを、ペレタイザー6へ向かって搬送する。搬送装置5は、押出成形機4とペレタイザー6との間に配置される。
【0023】
なお、ペレタイザー6へ向かって搬送されているストランドSは、必要により、空気や水によって冷却されてもよい。また、ストランドSには、必要により、ペレット同士がブロッキングすることを防止するためのブロッキング防止剤が、処理されてもよい。
【0024】
ペレタイザー6は、ストランドカット用のペレタイザーである。ペレタイザー6は、ストランドSを、所定の長さごとに切断する。これにより、所定の形状を有するペレットP(成形体)が成形される。得られたペレットPは、気力輸送などの輸送方法により、選別機7へ輸送される。
【0025】
なお、ペレタイザー6は、水中でストランドをカットするアンダーウォーターストランドカット用のペレタイザー(徳機社製など)や、ダイ4Dによって成形されたストランドを搬送装置5で搬送しないで、水中でカットするアンダーウォーターカット用のペレタイザー(GALA社製、田辺プラスチックス機械社製など)であってもよい。
【0026】
選別機7は、ペレットPを、適合品と不適合品とに選別する。適合品とは、所定の形状および所定のサイズを有するペレットPを指す。不適合品とは、例えば、複数のペレットPが連なった連粒ペレットや、所定の形状と異なる(すなわち、適合しない)形状を有する異形ペレットを指す。
【0027】
恒温器8は、選別機7によって適合品として選別されたペレットPを、一定の湿度、および、一定の温度でエージングする。
【0028】
ペレット乾燥機9は、エージングされたペレットPを乾燥する。詳しくは、ペレット乾燥機9は、除湿乾燥機であり、吸湿剤等によって水分が除去された乾燥空気を用いて、ペレットPを乾燥する。
【0029】
2.ポリウレタン樹脂成形体の製造方法
次に、ポリウレタン樹脂成形体の製造方法を説明する。
【0030】
本発明のポリウレタン樹脂成形体の製造方法では、熱可塑性樹脂として、熱可塑性ポリウレタンを成形する。
【0031】
熱可塑性ポリウレタンは、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応により得られる。
【0032】
ポリイソシアネート成分としては、例えば、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの直鎖状または分岐鎖状(非環式)の脂肪族ジイソシアネート、例えば、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、4,4’-、2,4’-または2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはそれらの混合物(水添MDI)、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはそれらの混合物(水添XDI)などの環式の脂肪族ジイソシアネート(脂環族ジイソシアネート)、例えば、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはそれらの混合物(TDI)、4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはそれらの混合物(MDI)などの芳香族ポリイソシアネート、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはそれらの混合物(XDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
ポリオール成分は、2つ以上の水酸基を有する化合物である。ポリオール成分は、数平均分子量が60以上、400未満、好ましくは、300以下の低分子量ポリオールと、数平均分子量が400以上、好ましくは、500以上、10000以下、好ましくは、5000以下の高分子量ポリオールとを含む。
【0034】
低分子量ポリオールとしては、例えば、1,2-エタンジオール(エチレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの直鎖ジオール、例えば、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)などの分岐鎖ジオールなどが挙げられる。
【0035】
これらの低分子量ポリオールは、単独使用または2種以上併用できる。
【0036】
高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテルポリオール、例えば、ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステルポリオール、例えば、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0037】
これらの高分子量ポリオールは、単独使用または2種以上併用できる。
【0038】
好ましくは、熱可塑性ポリウレタンは、脂環族ジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応により得られる。より好ましくは、熱可塑性ポリウレタンは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応により得られる。さらに好ましくは、ポリウレタン樹脂は、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの高トランス体(ポリイソシアネート成分)とポリテトラメチレンエーテルグリコール(高分子量ポリオール)との反応物であるプレポリマーと、鎖伸長剤としての1,4-ブタンジオール(低分子量ポリオール)との反応により得られる。
【0039】
なお、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの高トランス体とは、トランス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(トランス体)と、シス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(シス体)との混合物であって、トランス体を、例えば、50モル%以上、好ましくは、75モル%以上、より好ましくは、80モル%以上、さらに好ましくは、85モル%以上、例えば、96モル%以下、好ましくは、93モル%以下含有するものをいう。
【0040】
ポリウレタン樹脂成形体の製造方法は、成形工程と、エージング工程と、乾燥工程とを含む。
【0041】
(1)成形工程
成形工程では、熱可塑性ポリウレタンの溶融樹脂を成形する。
図1に示すように、押出成形によって、ポリウレタン樹脂成形体の一例としてのペレットPを製造する場合、成形工程は、ダイ4Dおよびペレタイザー6によって実行される。詳しくは、成形工程では、シリンダー4Aから吐出された熱可塑性ポリウレタンの溶融樹脂を、ダイ4Aによってストランド形状に成形し、得られたストランドSをペレタイザー6で切断することにより、ペレット形状に成形する。
【0042】
なお、射出成形によってポリウレタン樹脂成形体を製造する場合、成形工程は、射出成形機の金型によって実行される。
【0043】
(2)エージング工程
エージング工程では、成形工程において得られた成形体が、エージングされる。エージング工程は、恒温器8によって実行される。詳しくは、上記したように、冷却機7で冷却され、選別機7で選別されたペレットPが、恒温器8でエージングされる。
【0044】
恒温器8内の絶対湿度は、例えば、1.0g/m3以上、好ましくは、2.0g/m3以上であり、例えば、45g/m3以下、好ましくは、40g/m3以下である。
【0045】
絶対湿度が上記下限値以上であると、後述するように、恒温器8内の水分をイソシアネート基に反応させてアミノ基に変化させることができる。そのため、乾燥工程におけるアロファネート結合の生成を抑制でき、フィッシュアイを低減できる。また、絶対湿度が上記上限値以下であると、過剰な水分によって熱可塑性ポリウレタンが加水分解されて、熱可塑性ポリウレタンの分子量が低下することを抑制できる。
【0046】
恒温器8内の温度は、例えば、30℃以上、好ましくは、40℃以上であり、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下である。
【0047】
温度が上記下限値以上であると、恒温器8内の水分とイソシアネート基との反応を促進できる。そのため、乾燥工程におけるアロファネート結合の生成をより抑制でき、フィッシュアイを低減できる。また、温度が上記上限値以下であると、過度な加熱によってペレットPが変質することを抑制できる。
【0048】
エージングの時間は、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上であり、例えば、72時間以下、好ましくは、48時間以下である。
【0049】
エージングの時間が上記下限値以上であると、恒温器8内の水分とイソシアネート基とを確実に反応させることができる。そのため、乾燥工程におけるアロファネート結合の生成をより抑制でき、フィッシュアイを低減できる。また、エージングの時間が上記上限値以下であると、過度な加熱によってペレットPが変質することを抑制できる。
【0050】
(3)乾燥工程
乾燥工程では、エージング工程の後、成形体を除湿乾燥する。乾燥工程は、ペレット乾燥機9によって実行される。
【0051】
乾燥中のペレット乾燥機9内の温度は、例えば、40℃以上であり、例えば、150℃以下である。
【0052】
乾燥時間は、例えば、1時間以上であり、例えば、48時間以下である。
【0053】
3.効果
このポリウレタン樹脂成形体の製造方法によれば、溶融樹脂の成形体を、特定の絶対湿度、および、特定の温度の雰囲気下で、所定の時間、エージングした後、除湿乾燥する。
【0054】
具体的には、
図1に示すように、押出成形機4とペレタイザー6とでペレットPを成形し(成形工程)、得られたペレットPを、恒温器8でエージング(エージング工程)した後、ペレット乾燥機9で除湿乾燥する(乾燥工程)。
【0055】
そのため、エージング工程において、ペレットP中のイソシアネート基と雰囲気中の水分とを反応させてアミノ基に変化させた後に、乾燥工程を実行することができ、乾燥工程におけるアロファネート結合の生成を抑制できる。
【0056】
詳しくは、熱可塑性ポリウレタンを得るとき、イソシアネート成分とポリオール成分との反応により、ウレタン結合の他に、一定の割合で不可避的に、アロファネート結合が生成する。アロファネート結合が生成することにより、熱可塑性ポリウレタン中に架橋構造が形成される。
【0057】
このアロファネート結合は、成形工程において、シリンダー4A内で熱可塑性ポリウレタンが加熱されることにより、ウレタン結合とイソシアネート基とに分解される。
【0058】
しかし、エージング工程を実行しないで乾燥工程を実行すると、再度、ウレタン結合とイソシアネート基とが結合して、アロファネート結合が生成する。
【0059】
対して、乾燥工程を実行する前に特定条件下においてエージング工程を実行すると、イソシアネート基が、恒温器8内の水分と反応してアミノ基に変化する。これにより、乾燥工程におけるアロファネート結合の生成を抑制できる。
【0060】
アロファネート結合の生成を抑制できれば、ペレットP中に架橋構造が形成されることを抑制できる。
【0061】
ペレットP中に架橋構造が形成されないことにより、そのペレットPを原料として成形品を製造したときに、フィッシュアイを低減できる。
【0062】
とりわけ、ポリイソシアネート成分として、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを用いた場合には、その傾向が顕著となる。
【0063】
また、溶融樹脂の温度の変化に対する溶融樹脂の粘度の変化量(溶融粘度の温度依存性)を低くすることができる。そのため、溶融樹脂を緩やかに固化させることができ、成形性を向上させることができる。
【0064】
なお、溶融粘度の温度依存性は、後述する実施例のように、溶融樹脂の粘度が10000Pa・sであるときの溶融樹脂の温度と、溶融樹脂の粘度が1000Pa・sであるときの溶融樹脂の温度との差ΔTとして測ることもできる。
【実施例】
【0065】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0066】
<熱可塑性ポリウレタンの製造>
表1に示す部数で、ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオールとのプレポリマーと、低分子量ポリオールとを反応させて、合成例1~3の熱可塑性ポリウレタンを得た。
【0067】
【0068】
なお、表1中、「1,4-H6XDI」は、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを示し、「MDI」は、ジフェニルメタンジイソシアネートを示し、「PTMEG1000」は、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコールを示し、「PCL1000」は、数平均分子量1000のポリカプロラクトンジオールを示し、「1,4-BD」は、1,4-ブタンジオールを示す。
【0069】
<ポリウレタン樹脂成形体の製造>
合成例1~3の熱可塑性ポリウレタンのうちのいずれか1つ(表2および表3に示す。)を原料として、
図1に示す成形システム1を用いて、表2および表3に示すエージング条件(絶対湿度、温度および時間)で、熱可塑性ポリウレタンのペレット(ポリウレタン樹脂成形体)を製造した。
【0070】
【0071】
【0072】
<評価>
(1)溶融粘度の温度依存性(ΔT)
フローテスタ(製品名:細管式レオメーター フローテスタCFT-500EX、島津製作所社製)を用いて、予め80℃で5時間以上真空乾燥したペレットサンプルを、160℃~270℃の温度範囲で、長さが10mmで径が1mmのダイを用いて、荷重196N、昇温速度2.5℃/分の昇温法で溶融粘度を測定した。測定結果より、溶融樹脂の粘度が10000Pa・sであるときの溶融樹脂の温度と、溶融樹脂の粘度が1000Pa・sであるときの溶融樹脂の温度との差ΔTを得た。
【0073】
結果を表2および表3に示す。
(2)フィッシュアイ
得られたペレットを、先端に幅150mmのコートハンガーダイを取付したφ20mm単軸押出機(株式会社テクノベル製、SZW20GT-25MG-MIS、L/D=25)を用い、成形温度は、溶融樹脂の粘度が2000Pa・sであるときの溶融樹脂の温度T+5℃、ダイは、溶融樹脂の粘度が2000Pa・sであるときの溶融樹脂の温度T(℃)として、ベルトコンベア上に放流・冷却して、厚さ100μmのフィルムを得た。10cm×10cmのマーキングしたものを5枚採取し、大きさ0.2mm以上のフィッシュアイをルーペでカウントし、5枚の平均値とした。
【0074】
結果を表2および表3に示す。
【符号の説明】
【0075】
4 押出成形機
6 ペレタイザー
8 恒温器
9 ペレット乾燥機
P ペレット