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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】熱電モジュール及び光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/817 20230101AFI20230425BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20230425BHJP
   F25B 21/02 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H10N10/817
H02N11/00 A
F25B21/02 T
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019051808
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020155556
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】590000835
【氏名又は名称】株式会社KELK
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 哲史
(72)【発明者】
【氏名】福田 克史
(72)【発明者】
【氏名】小西 明夫
(72)【発明者】
【氏名】松並 博之
(72)【発明者】
【氏名】太田 崇明
(72)【発明者】
【氏名】是枝 晴華
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143111(JP,A)
【文献】特開2006-128522(JP,A)
【文献】特開2010-192764(JP,A)
【文献】特開2005-050863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/817
H02N 11/00
F25B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1面に設けられる電極と、
熱電素子と、
前記電極と前記熱電素子との間に配置される第1拡散防止層と、を備え、
前記第1拡散防止層は、水素よりもイオン化傾向の低い第1材料を含
前記第1拡散防止層は、水素よりもイオン化傾向の高い第2材料で形成された第2材料層と、前記第1材料で形成され前記第2材料層の側面を被覆する第1材料層と、を含む、
熱電モジュール。
【請求項2】
前記電極と前記第1拡散防止層との間に設けられる接合層を備え、
前記第1拡散防止層は、前記接合層に接触する第1接触面と、前記熱電素子に接触する第2接触面と、側面とを有し、
前記第1接触面、前記第2接触面、及び前記側面のそれぞれが、前記第1材料で形成される、
請求項1に記載の熱電モジュール。
【請求項3】
前記電極と前記第1拡散防止層との間に設けられる接合層を備え、
前記第1材料層の少なくとも一部は、前記接合層と前記第2材料層との間に配置され、
前記第2材料層は、前記熱電素子に接触する、
請求項1又は請求項2に記載の熱電モジュール。
【請求項4】
前記第2材料は、ニッケルを含む、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱電モジュール。
【請求項5】
前記第1材料は、パラジウム、白金、金、及びロジウムの少なくとも一つを含む、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の熱電モジュール。
【請求項6】
前記基板の第2面に設けられる第1金属層と、
第2金属層と、
前記第1金属層と前記第2金属層との間に配置される第2拡散防止層と、を備え、
前記第2拡散防止層は、水素よりもイオン化傾向の低い第3材料を含む、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の熱電モジュール。
【請求項7】
基板と、
前記基板の第2面に設けられる第1金属層と、
第2金属層と、
前記第1金属層と前記第2金属層との間に配置される第2拡散防止層と、を備え、
前記第2拡散防止層は、水素よりもイオン化傾向の低い第3材料を含
前記第2拡散防止層は、前記第1金属層に接触する第3接触面及び前記第2金属層に接触する第4接触面を有し、
前記第3接触面及び前記第4接触面のそれぞれが、前記第3材料で形成される、
熱電モジュール。
【請求項8】
前記第2拡散防止層は、水素よりもイオン化傾向の高い第4材料で形成された第4材料層と、前記第3材料で形成され前記第4材料層と前記第2金属層との間に配置される第3材料層と、を含む、
請求項に記載の熱電モジュール。
【請求項9】
前記第3材料層は、前記第2金属層に接触し、
前記第4材料層は、前記第1金属層に接触する、
請求項に記載の熱電モジュール。
【請求項10】
前記第4材料は、ニッケルを含む、
請求項又は請求項に記載の熱電モジュール。
【請求項11】
前記第3材料は、パラジウム、白金、金、及びロジウムの少なくとも一つを含む、
請求項から請求項10のいずれか一項に記載の熱電モジュール。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の熱電モジュールと、
前記熱電モジュールにより温度調整される発光素子と、を備える、
光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電モジュール及び光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ペルチェ効果により吸熱又は発熱する熱電モジュールが知られている。熱電モジュールの熱電素子が通電されることにより、熱電モジュールは吸熱又は発熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-111326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱電モジュールが結露した状態で通電されると、エレクトロケミカルマイグレーションが発生し、電極又は拡散防止層として用いられる金属の移動に起因する電気的短絡又は断線が発生する可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、電気的短絡又は断線の発生を抑制できる熱電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、基板と、前記基板の第1面に設けられる電極と、熱電素子と、前記電極と前記熱電素子との間に配置される第1拡散防止層と、を備え、前記第1拡散防止層は、水素よりもイオン化傾向の低い第1材料を含む、熱電モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、電気的短絡又は断線の発生を抑制できる熱電モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る光モジュールを示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る熱電モジュールを示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る熱電モジュールの一部を示す拡大断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る熱電モジュールの製造方法を示すフローチャートである。
図5図5は、第2実施形態に係る熱電モジュールを示す断面図である。
図6図6は、第2実施形態に係る熱電モジュールの一部を示す拡大断面図である。
図7図7は、第2実施形態に係る熱電モジュールの製造方法を示すフローチャートである。
図8図8は、第2実施形態に係る熱電モジュールの一部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する複数の実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。所定面内のX軸と平行な方向をX軸方向、所定面内においてX軸と直交するY軸と平行な方向をY軸方向、所定面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。X軸とY軸とZ軸とは直交する。また、X軸及びY軸を含む平面をXY平面、Y軸及びZ軸を含む平面をYZ平面、Z軸及びX軸を含む平面をXZ平面とする。XY平面は所定面と平行である。XY平面とYZ平面とXZ平面とは直交する。
【0011】
[第1実施形態]
<光モジュール>
図1は、本実施形態に係る光モジュール100を示す断面図である。光モジュール100は、例えば光通信に使用される。図1に示すように、光モジュール100は、熱電モジュール1と、発光素子101と、ヒートシンク102と、第1ヘッダ103と、受光素子104と、第2ヘッダ105と、温度センサ106と、金属板107と、レンズ108と、レンズホルダ109と、第1端子110と、第2端子111と、ワイヤ112と、ハウジング113とを備える。
【0012】
また、光モジュール100は、光アイソレータ115と、光フェルール116と、光ファイバ117と、スリーブ118とを有する。
【0013】
熱電モジュール1は、ペルチェ効果により吸熱又は発熱する。熱電モジュール1は、一対の基板2と、一対の基板2の間に配置される熱電素子3とを有する。
【0014】
発光素子101は、光を射出する。発光素子101は、例えばレーザ光を射出するレーザダイオードを含む。ヒートシンク102は、発光素子101を支持する。ヒートシンク102は、発光素子101で発生した熱を放散する。第1ヘッダ103は、ヒートシンク102を支持する。ヒートシンク102は、第1ヘッダ103に固定される。
【0015】
受光素子104は、発光素子101から発生した光を検出する。受光素子104は、例えばフォトダイオードを含む。第2ヘッダ105は、受光素子104を支持する。受光素子104は、第2ヘッダ105に固定される。
【0016】
温度センサ106は、金属板107の温度を検出する。温度センサ106は、例えばサーミスタを含む。
【0017】
金属板107は、第1ヘッダ103、第2ヘッダ105、及び温度センサ106を支持する。第1ヘッダ103、第2ヘッダ105、及び温度センサ106は、半田により金属板107に固定される。
【0018】
レンズ108は、発光素子101から射出された光を集める。レンズホルダ109は、レンズ108を保持する。
【0019】
第1端子110は、第1ヘッダ103、第2ヘッダ105、及び温度センサ106と接続される。第2端子111は、熱電モジュール1に接続される。第1端子110と第2端子111とは、ワイヤ112を介して接続される。
【0020】
ハウジング113は、熱電モジュール1、発光素子101、ヒートシンク102、第1ヘッダ103、受光素子104、第2ヘッダ105、温度センサ106、金属板107、レンズ108、レンズホルダ109、第1端子110、第2端子111、及びワイヤ112を収容する。ハウジング113は、発光素子101から射出された光が通過する開口部114を有する。
【0021】
光アイソレータ115は、ハウジング113の外側において開口部114を塞ぐように配置される。光アイソレータ115は、一方向に進行する光を通過させ、逆方向に進行する光を遮断する。発光素子101から射出されレンズ108を通過した光は、開口部114を介して光アイソレータ115に入射する。光アイソレータ115に入射した光は、光アイソレータ115を通過する。
【0022】
光フェルール116は、光アイソレータ115から射出された光を光ファイバ117に導く。スリーブ118は、光フェルール116を支持する。
【0023】
次に、光モジュール100の動作について説明する。発光素子101から射出された光は、レンズ108により集められた後、開口部114を介して光アイソレータ115に入射する。光アイソレータ115に入射した光は、光アイソレータ115を通過した後、光フェルール116を介して光ファイバ117の端面に入射する。
【0024】
発光素子101から発生した光の少なくとも一部は、受光素子104に向かって射出される。受光素子104は、発光素子101から射出された光を受ける。受光素子104により、発光素子101の発光状態がモニタされる。
【0025】
発光素子101から発生した熱は、ヒートシンク102及び第1ヘッダ103を介して金属板107に伝達される。温度センサ106は、金属板107の温度を検出する。金属板107の温度が規定温度に達したことを温度センサ106が検出した場合、熱電モジュール1に電流が供給される。熱電モジュール1の熱電素子3が通電されることにより、熱電モジュール1は、ペルチェ効果により吸熱する。これにより、発光素子101が冷却される。発光素子101は、熱電モジュール1により温度調整される。
【0026】
<熱電モジュール>
図2は、本実施形態に係る熱電モジュール1を示す断面図である。図3は、本実施形態に係る熱電モジュール1の一部を示す拡大断面図である。
【0027】
熱電モジュール1は、一対の基板2と、一対の基板2の間に配置される熱電素子3とを有する。
【0028】
基板2は、電気絶縁材料で形成される。本実施形態において、基板2は、セラミック基板である。基板2は、酸化物セラミック又は窒化物セラミックによって形成される。酸化物セラミックとして、酸化アルミニウム(Al)又は酸化ジルコニウム(ZrO)が例示される。窒化物セラミックとして、窒化珪素(Si)又は窒化アルミニウム(AlN)が例示される。
【0029】
熱電素子3は、例えばビスマステルル系化合物(Bi-Te)のような熱電材料によって形成される。熱電素子3は、n型熱電半導体素子である第1熱電素子3Nと、p型熱電半導体素子である第2熱電素子3Pとを含む。第1熱電素子3N及び第2熱電素子3Pのそれぞれは、XY平面内に複数配置される。X軸方向において、第1熱電素子3Nと第2熱電素子3Pとは交互に配置される。Y軸方向において、第1熱電素子3Nと第2熱電素子3Pとは交互に配置される。
【0030】
熱電素子3を形成する熱電材料として、ビスマス(Bi)、ビスマステルル系化合物(Bi-Te)、ビスマスアンチモン系化合物(Bi-Sb)、鉛テルル系化合物(Pb-Te)、コバルトアンチモン系化合物(Co-Sb)、イリジウムアンチモン系化合物(Ir-Sb)、コバルト砒素系化合物(Co-As)、シリコンゲルマニウム系化合物(Si-Ge)、銅セレン系化合物(Cu-Se)、ガドリウムセレン系化合物(Gd-Se)、炭化ホウ素系化合物、テルル系ペロブスカイト酸化物、希土類硫化物、TAGS系化合物(GeTe-AgSbTe)、ホイスラー型TiNiSn、FeNbSb、TiCoSb系物質等が例示される。
【0031】
熱電モジュール1は、Z軸方向において実質的に対称な構造である。以下の説明においては、図2に示す対称線CLよりも+Z側の構造について主に説明する。
【0032】
基板2は、第1面2Aと、第2面2Bとを有する。第1面2Aは、一対の基板2の間の空間に面する。すなわち、第1面2Aは、熱電素子3が存在する空間に面する。第2面2Bは、第1面2Aの逆方向を向く。第1面2A及び第2面2Bのそれぞれは、XY平面と実質的に平行である。
【0033】
熱電モジュール1は、基板2の第1面2Aに設けられる電極4と、電極4と熱電素子3との間に配置される第1拡散防止層5と、電極4と第1拡散防止層5との間に設けられる接合層6と、を備える。
【0034】
また、熱電モジュール1は、基板2の第2面2Bに設けられる第1金属層7と、第2金属層8と、第1金属層7と第2金属層8との間に配置される第2拡散防止層9と、を備える。
【0035】
電極4は、熱電素子3に電力を与える。電極4は、第1面2Aに接触する第1電極層4Aと、第1電極層4Aを覆う第2電極層4Bと、第2電極層4Bを覆う第3電極層4Cとを含む。
【0036】
電極4は、第1面2Aに複数設けられる。電極4は、隣接する一対の第1熱電素子3N及び第2熱電素子3Pのそれぞれに接続される。電極4は、接合層6及び第1拡散防止層5を介して、熱電素子3に接続される。
【0037】
第1電極層4Aは、銅(Cu)によって形成される。第2電極層4Bは、水素よりもイオン化傾向の低い材料によって形成される。第2電極層4Bを形成する材料として、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、及びロジウム(Rh)の少なくとも一つが例示される。本実施形態において、第2電極層4Bは、パラジウム(Pd)によって形成される。第3電極層4Cは、金(Au)によって形成される。
【0038】
接合層6は、電極4と第1拡散防止層5とを接合する。接合層6を形成する材料として、錫(Sn)を主成分とする鉛フリー半田が例示される。鉛フリー半田とは、鉛分が0.10質量%以下である半田をいう。接合層6を形成する半田の材料として、錫(Sn)とアンチモン(Sb)との金属間化合物である錫アンチモン合金系(Sn-Sb系)半田、金(Au)と錫(Sn)との金属間化合物である金錫合金系(Au-Sn系)半田、及び銅(Cu)と錫(Sn)との金属間化合物である銅錫合金系(Cu-Sn系)半田が例示される。
【0039】
すなわち、本実施形態において、電極4と第1拡散防止層5とは、半田により接合される。第1拡散防止層5は、接合層6を介して電極4と接続される。第1拡散防止層5は、接合層6と接触する。電極4は、接合層6と接触する。本実施形態において、電極4の第3電極層4Cが接合層6に接触する。
【0040】
第1拡散防止層5は、接合層6に含まれる元素が熱電素子3に拡散することを抑制する。接合層6に含まれる元素が熱電素子3に拡散することが抑制されることにより、熱電素子3の性能の低下が抑制される。
【0041】
第1拡散防止層5は、水素よりもイオン化傾向の低い材料(第1材料)によって形成される。第1拡散防止層5を形成する材料として、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、及びロジウム(Rh)の少なくとも一つが例示される。本実施形態において、第1拡散防止層5は、パラジウム(Pd)によって形成される。
【0042】
第1拡散防止層5は、接合層6及び熱電素子3のそれぞれと接触する。第1拡散防止層5は、接合層6に接触する第1接触面5Aと、熱電素子3に接触する第2接触面5Bと、第1接触面5Aの周縁部と第2接触面5Bの周縁部とを結ぶ側面5Cとを有する。第1接触面5A、第2接触面5B、及び側面5Cのそれぞれが、水素よりもイオン化傾向の低い材料で形成される。本実施形態において、第1拡散防止層5は、水素よりもイオン化傾向の低い材料のみで形成される。
【0043】
第3電極層4Cは、半田である接合層6により第1拡散防止層5と接合される。第3電極層4Cは、半田により第1拡散防止層5と接合し易い金(Au)によって形成される。第2電極層4Bは、第1電極層4Aに含まれる元素が第3電極層4Cに拡散することを抑制する拡散防止層として機能する。第2電極層4Bは、第1電極層4Aを覆うように設けられる。第1電極層4Aに含まれる元素が第3電極層4Cに拡散することが抑制されることにより、第3電極層4Cと第1拡散防止層5とは接合層6を介して十分に接続される。
【0044】
第1金属層7は、基板2の第2面2Bに接触する。第1金属層7は、熱伝導率が高い金属によって形成される。本実施形態において、第1金属層7は、銅(Cu)によって形成される。第1金属層7として熱伝導率が高い銅(Cu)が使用されることにより、複数の熱電素子3のそれぞれが吸熱又は発熱したとき、第1金属層7の温度は均一化される。
【0045】
第2金属層8は、熱電モジュール1による温度対象と接続される。第2金属層8は、第2拡散防止層9を覆うように設けられる。本実施形態において、第2金属層8は、図1を参照して説明した金属板107に接続される。第2金属層8と金属板107とは、半田により接合される。第2金属層8は、半田により金属板107と接合し易い金属によって形成される。本実施形態において、第2金属層8は、金(Au)によって形成される。
【0046】
第2拡散防止層9は、第1金属層7に含まれる元素が第2金属層8に拡散することを抑制する。第2拡散防止層9は、第1金属層7を覆うように設けられる。第1金属層7に含まれる元素が第2金属層8に拡散することが抑制されることにより、第2金属層8と金属板107とは十分に接続される。
【0047】
第2拡散防止層9は、水素よりもイオン化傾向の低い材料(第3材料)によって形成される。第2拡散防止層9を形成する材料として、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、及びロジウム(Rh)の少なくとも一つが例示される。本実施形態において、第2拡散防止層9は、パラジウム(Pd)によって形成される。
【0048】
本実施形態において、第1拡散防止層5を形成する材料と第2拡散防止層9を形成する材料とは同じである。なお、第1拡散防止層5を形成する材料と第2拡散防止層9を形成する材料とは異なってもよい。例えば、第1拡散防止層5を形成する材料がパラジウム(Pd)であり、第2拡散防止層9を形成する材料が白金(Pt)でもよい。
【0049】
第2拡散防止層9は、第1金属層7及び第2金属層8のそれぞれと接触する。第2拡散防止層9は、第1金属層7に接触する第3接触面9Aと、第2金属層8に接触する第4接触面9Bとを有する。第3接触面9A及び第4接触面9Bのそれぞれが、水素よりもイオン化傾向の低い材料で形成される。本実施形態において、第2拡散防止層9は、水素よりもイオン化傾向の低い材料のみで形成される。
【0050】
第2電極層4Bは、第1電極層4A及び第3電極層4Cのそれぞれと接触する。第2電極層4Bは、第1電極層4Aに接触する第5接触面15と、第3電極層4Cに接触する第6接触面16とを有する。第5接触面15及び第6接触面16のそれぞれが、水素よりもイオン化傾向の低い材料で形成される。本実施形態において、第2電極層4Bは、水素よりもイオン化傾向の低い材料のみで形成される。
【0051】
<熱電モジュールの製造方法>
図4は、本実施形態に係る熱電モジュール1の製造方法を示すフローチャートである。基板2の第1面2Aに第1電極層4Aが形成され、基板2の第2面2Bに第1金属層7が形成される。例えば基板2をメッキ処理することにより、第1電極層4A及び第1金属層7が形成される(ステップSA1)。
【0052】
次に、第1電極層4Aを覆うように第2電極層4Bが形成され、第1金属層7を覆うように第2拡散防止層9が形成される。例えばメッキ処理により、第2電極層4B及び第2拡散防止層9が形成される(ステップSA2)。
【0053】
次に、第2電極層4Bを覆うように第3電極層4Cが形成され、第2拡散防止層9を覆うように第2金属層8が形成される。例えばメッキ処理により、第3電極層4C及び第2金属層8が形成される(ステップSA3)。
【0054】
熱電素子3の端面に第1拡散防止層5が形成される。例えばスパッタにより、第1拡散防止層5が形成される(ステップSB)。
【0055】
ステップSA3の処理が終了した基板2の第3電極層4Cと、ステップSBの処理が終了した熱電素子3の第1拡散防止層5とが半田により接合される(ステップSC)。
【0056】
ステップSCの処理により、第1拡散防止層5が接合層6を介して電極4に接続される。
【0057】
<効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、第1拡散防止層5が、水素よりもイオン化傾向の低い材料によって形成される。これにより、熱電モジュール1が結露した状態で通電されても、エレクトロケミカルマイグレーションの発生が抑制される。そのため、電極又は拡散防止層として用いられる金属の移動に起因する電気的短絡又は断線の発生が抑制される。また、エレクトロケミカルマイグレーションに起因する熱電素子3の劣化が抑制される。したがって、熱電モジュール1の性能は長期間維持される。
【0058】
本発明者は、水素よりもイオン化傾向の高い材料によって第1拡散防止層(5)が形成されると、熱電モジュール1が結露した状態で通電したとき、エレクトロケミカルマイグレーションが発生する可能性が高いことを見出した。また、本発明者は、水素よりもイオン化傾向の低い材料によって第1拡散防止層5が形成されると、熱電モジュール1が結露した状態で通電しても、エレクトロケミカルマイグレーションの発生が抑制されることを見出した。なお、水素よりもイオン化傾向の高い材料として、ニッケル(Ni)が例示される。
【0059】
熱電モジュール1による温調温度が周囲の環境雰囲気の露点を下回った場合、熱電モジュール1が結露する可能性が高い。そのため、ニッケル(Ni)のような材料で第1拡散防止層が形成された場合、エレクトロケミカルマイグレーションの発生を防止するために、ハウジング(113)の気密性を高め、且つハウジングの内部空間を不活性ガスで満たす必要がある。ハウジングの気密性を高め、且つハウジングの内部空間を不活性ガスで満たす構成では、コストが上昇する。
【0060】
本実施形態においては、水素よりもイオン化傾向の低い材料によって第1拡散防止層5が形成される。そのため、ハウジング113の気密性が低くても、エレクトロケミカルマイグレーションの発生が抑制される。したがって、コストが抑制された熱電モジュール1及び光モジュール100を提供することができる。
【0061】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0062】
上述の実施形態においては、第1拡散防止層5、第2拡散防止層9、及び第2電極層4Bのそれぞれが、水素よりもイオン化傾向の低い材料のみで形成される例について説明した。本実施形態においては、第1拡散防止層5、第2拡散防止層9、及び第2電極層4Bのそれぞれが、水素よりもイオン化傾向の高い材料と水素よりもイオン化傾向の低い材料とで形成される例について説明する。
【0063】
<熱電モジュール>
図5は、本実施形態に係る熱電モジュール1を示す断面図である。図6は、本実施形態に係る熱電モジュール1の一部を示す拡大断面図である。
【0064】
本実施形態において、第1拡散防止層5は、水素よりもイオン化傾向の高い材料(第2材料)で形成された第2材料層52と、水素よりもイオン化傾向の低い材料(第1材料)で形成され第2材料層52の側面52Cを被覆する第1材料層51と、を含む。
【0065】
第1材料層51を形成する材料として、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、及びロジウム(Rh)の少なくとも一つが例示される。第2材料層52を形成する材料として、ニッケル(Ni)が例示される。
【0066】
第1材料層51は、第2材料層52の少なくとも側面52Cを覆う。第1材料層51により、第2材料層52の表面は露出しない。
【0067】
接合層6は、電極4と第1拡散防止層5との間に設けられる。第1材料層51の少なくとも一部は、接合層6と第2材料層52との間に配置される。第1材料層51は、接合層6に接触する。第2材料層52は、熱電素子3に接触する。
【0068】
本実施形態において、第2拡散防止層9は、水素よりもイオン化傾向の高い材料(第4材料)で形成された第4材料層92と、水素よりもイオン化傾向の低い材料(第3材料)で形成され第4材料層92と第2金属層8との間に配置される第3材料層91と、を含む。
【0069】
第3材料層91を形成する材料として、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、及びロジウム(Rh)の少なくとも一つが例示される。第4材料層92を形成する材料として、ニッケル(Ni)が例示される。
【0070】
第3材料層91は、第2金属層8及び第4材料層92のそれぞれに接触する。第4材料層94は、第1金属層7に接触する。
【0071】
本実施形態において、第2電極層4Bは、水素よりもイオン化傾向の高い材料で形成された第6材料層46と、水素よりもイオン化傾向の低い材料で形成され第6材料層46と第3電極層4Cとの間に配置される第5材料層45と、を含む。
【0072】
第5材料層45を形成する材料として、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、及びロジウム(Rh)の少なくとも一つが例示される。第6材料層46を形成する材料として、ニッケル(Ni)が例示される。
【0073】
第5材料層45は、第3電極層4C及び第6材料層46のそれぞれに接触する。第6材料層46は、第1電極層4Aに接触する。
【0074】
<熱電モジュールの製造方法>
図7は、本実施形態に係る熱電モジュール1の製造方法を示すフローチャートである。基板2の第1面2Aに第1電極層4Aが形成され、基板2の第2面2Bに第1金属層7が形成される。例えば基板2をメッキ処理することにより、第1電極層4A及び第1金属層7が形成される(ステップSA1)。
【0075】
次に、第1電極層4Aを覆うように第6材料層46が形成され、第1金属層7を覆うように第4材料層92が形成される。例えばメッキ処理により、第1金属層7及び第4材料層92が形成される(ステップSA2a)。
【0076】
次に、第6材料層46を覆うように第5材料層45が形成され、第4材料層92を覆うように第3材料層91が形成される。例えばメッキ処理により、第5材料層45及び第3材料層91が形成される(ステップSA2b)。
【0077】
次に、第5材料層45を覆うように第3電極層4Cが形成され、第3材料層91を覆うように第2金属層8が形成される。例えばメッキ処理により、第3電極層4C及び第2金属層8が形成される(ステップSA3)。
【0078】
熱電素子3の端面に第2材料層52が形成される。例えばメッキ処理により、第2材料層52が形成される(ステップSBa)。
【0079】
次に、第2材料層52を覆うように第1材料層51が形成される。例えばスパッタにより、第1材料層51が形成される(ステップSBb)。
【0080】
ステップSA3の処理が終了した基板2の第3電極層4Cと、ステップSBbの処理が終了した熱電素子3の第1材料層51とが半田により接合される(ステップSC)。
【0081】
ステップSCの処理により、第1拡散防止層5が接合層6を介して電極4に接続される。
【0082】
<効果>
以上説明したように、本実施形態においては、第1拡散防止層5は、ニッケルのような水素よりもイオン化傾向の高い材料で形成された第2材料層52を含む。第2材料層52の表面(露出面)は、水素よりもイオン化傾向の低い材料で形成された第1材料層51で覆われる。これにより、熱電モジュール1が結露しても、第2材料層52に水分が接触することが抑制される。そのため、熱電素子3が通電されても、エレクトロケミカルマイグレーションの発生が抑制される。したがって、電極又は拡散防止層として用いられる金属の移動に起因する電気的短絡又は断線の発生が抑制される。また、熱電素子3の劣化が抑制され、熱電モジュール1の性能は長期間維持される。
【0083】
<変形例>
図8は、本実施形態に係る熱電モジュール1の一部を示す拡大断面図である。図8に示すように、第1材料層51は、第2材料層52の表面を覆う第1材料層51Aと、熱電素子3の表面を覆う第1材料層51Bとを含んでもよい。例えば上述のステップSBbにおいて、熱電素子3に設けられた第2材料層52の表面に第1材料層51Aが形成され、第2材料層52が設けられた熱電素子3の表面に第1材料層51Bが形成されてもよい。
【0084】
[その他の実施形態]
第1拡散防止層5が水素よりもイオン化傾向の低い材料のみで形成され、第2拡散防止層9が第3材料層91及び第4材料層94を含んでもよい。第1拡散防止層5が第1材料層51及び第2材料層52を含み、第2拡散防止層9が水素よりもイオン化傾向の低い材料のみで形成されてもよい。
【0085】
上述の実施形態においては、熱電モジュール1は、ペルチェ効果により吸熱又は発熱することとした。熱電モジュール1は、ゼーベック効果により発電してもよい。熱電モジュール1の一対の基板2に温度差が与えられることにより、熱電モジュール1は、ゼーベック効果により発電することができる。
【0086】
上述の実施形態において、熱電モジュール1に接続される第2端子111も、水素よりもイオン化傾向の低い材料で形成されてもよい。また、第2端子111が、水素よりもイオン化傾向の高い材料の表面を水素よりもイオン化傾向の低い材料で被覆することによって形成されてもよい。ワイヤ112と接続される第2端子111の接続部は、ワイヤ112と接続可能な材料により形成される。ワイヤ112と接続可能な第2端子111の接続部の表面として、例えば金の膜が例示される。第2端子111の接続部の表面が金の膜で形成されることにより、ワイヤ112をボンディングすることができる。なお、ワイヤ112の代わりにリード線を用いる場合、リード線及び接続部の材料も、水素よりもイオン化傾向の低い材料で形成されてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…熱電モジュール、2…基板、2A…第1面、2B…第2面、3…熱電素子、3N…第1熱電素子、3P…第2熱電素子、4…電極、4A…第1電極層、4B…第2電極層、4C…第3電極層、5…第1拡散防止層、5A…第1接触面、5B…第2接触面、5C…側面、6…接合層、7…第1金属層、8…第2金属層、9…第2拡散防止層、9A…第3接触面、9B…第4接触面、15…第5接触面、16…第6接触面、51…第1材料層、51A…第1材料層、51B…第1材料層、52…第2材料層、52C…側面、45…第5材料層、46…第6材料層、91…第3材料層、92…第4材料層、100…光モジュール、101…発光素子、102…ヒートシンク、103…第1ヘッダ、104…受光素子、105…第2ヘッダ、106…温度センサ、107…金属板、108…レンズ、109…レンズホルダ、110…第1端子、111…第2端子、112…ワイヤ、113…ハウジング、114…開口部、115…光アイソレータ、116…光フェルール、117…光ファイバ、118…スリーブ、CL…対称線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8