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特許7267798圧縮機及びシェルアンドチューブ型熱交換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】圧縮機及びシェルアンドチューブ型熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/06 20060101AFI20230425BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20230425BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20230425BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
F04B39/06 L
F28D7/16 A
F28F1/32 F
F28F1/32 V
F04C29/04 H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019056430
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020159214
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内樹 諒介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智夫
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-164955(JP,U)
【文献】特開2015-117676(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111120(WO,A1)
【文献】特開平09-292143(JP,A)
【文献】特開昭61-140791(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169595(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/06
F28D 7/16
F28F 1/32
F04C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源によって動力を供給される1段目圧縮機本体および2段目圧縮機本体と、
前記1段目圧縮機本体と前記2段目圧縮機本体との間に配置され、前記1段目圧縮機本体から吐出される圧縮気体を冷却するインタクーラと、
前記2段目圧縮機本体から吐出される圧縮気体を冷却するアフタクーラと、
前記1段目圧縮機本体および前記2段目圧縮機本体、及び前記インタクーラおよびアフタクーラを内部に格納する筐体とを備える圧縮機であって、
前記インタクーラおよび前記アフタクーラが、前記1段目圧縮機本体および前記2段目圧縮機本体の下方で、前記1段目圧縮機本体および前記2段目圧縮機本体に跨って延在するように配置され、
前記インタクーラもしくは前記アフタクーラは、
冷却媒体が内部を流通する外部ケーシングと、
前記外部ケーシング内に配置され内部を前記圧縮気体が流通する1又は複数の配管とを備え、
前記外部ケーシングの外周に、前記筐体内部の大気と熱交換を行う1又は複数のフィンを備え
前記フィンが、前記インタクーラもしくは前記アフタクーラの上部側の周面付近であって、前記1段目圧縮機本体もしくは前記2段目圧縮機本体と対向する外周面側のみに配置されることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の圧縮機において、
複数の前記フィンのうち少なくとも一部のフィン同士の間隔が等幅又は異なるものであることを特徴とする圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載の圧縮機において、
複数の前記フィンのうち少なくとも一部の前記フィンの高さが、他の前記フィンの高さと異なることを特徴とする圧縮機。
【請求項4】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記外部ケーシングは、
前記冷却媒体を内部に供給する冷却媒体入口と、冷却媒体出口とを夫々少なくとも1つ備え、
前記フィンを、前記冷却媒体入口及び前記冷却媒体出口の少なくとも一方寄りに配置することを特徴とする圧縮機。
【請求項5】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記外部ケーシングは、
前記冷却媒体を内部に供給する冷却媒体入口と、冷却媒体出口とを夫々少なくとも1つ備え、
前記冷却媒体入口及び前記冷却媒体出口の少なくとも一方寄りに配置する前記フィン同士の間隔が、他の部分に配置する前記フィン同士の間隔と異なることを特徴とする圧縮機。
【請求項6】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記外部ケーシングは、
前記冷却媒体を内部に供給する冷却媒体入口と、冷却媒体出口とを夫々少なくとも1つ備え、
前記冷却媒体入口及び前記冷却媒体出口の少なくとも一方寄りに配置する前記フィンの高さが、他の部分に配置する前記フィンの高さと異なることを特徴とする圧縮機。
【請求項7】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記フィンは、前記外部ケーシングの外周面に沿った環状又は弧状の形状であることを特徴とする圧縮機。
【請求項8】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記フィンは、前記外部ケーシングの長手方向に沿って直線状に延伸していることを特徴とする圧縮機。
【請求項9】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記外部ケーシングと前記フィンは、同一素材が連続する一体成形物からなることを特徴とする圧縮機。
【請求項10】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記外部ケーシングと前記フィンは、同一素材からなる別体成形物からなり、
前記フィンは、前記外部ケーシングと熱伝導可能に接続することを特徴とする圧縮機。
【請求項11】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記外部ケーシングと前記フィンは、異なる素材からなる別体構成物からなり、
前記フィンは、前記外部ケーシングと熱伝導可能に接続することを特徴とする圧縮機。
【請求項12】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記外部ケーシングと前記フィンは、異なる素材からなる別体構成物からなり、
前記フィンは、前記外部ケーシングよりも熱伝導率の高い素材からなり、前記外部ケーシングと熱伝導可能に接続することを特徴とする圧縮機。
【請求項13】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記圧縮機は、給液式又は無給液式であり、容積形又は遠心形であることを特徴とする圧縮機。
【請求項14】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記駆動源を制御するインバータと、
前記駆動源と前記1段目圧縮機本体および前記2段目圧縮機本体と前記インタクーラもしくは前記アフタクーラとを配置した機械室と、
前記インバータを配置したインバータ室と前記機械室とを区画する内部区画壁とを有することを特徴とする圧縮機。
【請求項15】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記インタクーラもしくは前記アフタクーラは、シェルアンドチューブ型熱交換器であり、
シェル内に前記冷却媒体を取り込む冷却媒体入口と、
前記シェルから前記冷却媒体を排出する冷却媒体出口とを有し、
前記フィンの高さを、前記冷却媒体入口側の方が前記冷却媒体出口側に比べて高くする、
もしくは、
前記フィンの間隔を、前記冷却媒体入口側の方が前記冷却媒体出口側に比べて短かくすることを特徴とする圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機及びシェルアンドチューブ型熱交換器に係り、特に、周囲との熱交換を行うシェルアンドチューブ型熱交換器及び圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気等の気体を圧縮する圧縮機は、圧縮に伴って発生する圧縮気体の熱や、圧縮機本体等の駆動部で使用する潤滑液(油や水等)の熱を冷却するための熱交換器を備える。
【0003】
熱交換器としては、ファン風等による空冷式と、冷却液(水)による液冷式に主に分けられる。液冷式の熱交換器として、シェルアンドチューブ型の熱交換器が知られている。
【0004】
特許文献1は、シェルアンドチューブ式熱交換器の出口部で多量のドレンが発生するのを抑制することができ、チューブに発生する熱応力を低減できるシェルアンドチューブ式熱交換器で冷却するスクリュー圧縮機を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-204506
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧縮機は機器保守のために、設置可能とする周囲温度に限界がある。特に、圧縮機本体や駆動源といった圧縮機ユニットを筐体に格納するパッケージ型圧縮機の場合、筐体内部の温度(機械室や制御室等)も高くなる傾向にあり、設置周囲温度の管理は重要である。
【0007】
筐体内温度を低下させることで、圧縮機の性能向上を図ることもできるが、例えば、パッケージ内に配置した冷却ファンの回転数を増加させることはその分電力を必要とするし、騒音の一因ともなる。ファンを大型化することで装置全体の大型化を招来する。
【0008】
一方、特許文献1には、簡便かつコスト的に効率化して、圧縮機筐体(パッケージ)内温度を低減させることについては、配慮されていない。簡便かつコスト的に効率的に圧縮機の筐体内温度を低減できる技術が望まれる。
【0009】
本発明の目的は、簡便かつコスト的に効率化して、圧縮機の筐体内温度を、低減させることができる圧縮機及びシェルアンドチューブ型熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好ましい一例は、駆動源と、前記駆動源によって動力を供給される圧縮機本体と、前記圧縮機本体が吐き出す圧縮気体を冷却する熱交換器と、前記圧縮機本体及び前記熱交換器を内部に格納する筐体とを備える圧縮機であって、
前記熱交換器は、
冷却媒体が内部を流通する外部ケーシングと、
前記外部ケーシング内に配置され内部を前記圧縮気体が流通する1又は複数の配管とを備え、
前記外部ケーシングの外周に、前記筐体内部の大気と熱交換を行う1又は複数のフィンを備える圧縮機である。
【0011】
また、本発明の好ましい他の例は、冷却媒体が内部を流通するシェルと、前記シェル内に配置され、内部を前記圧縮気体が流通する1又は複数のチューブと備えるシェルアンドチューブ型熱交換器であって、
前記シェルの外周に、
前記シェルの外部にある大気と熱交換を行う1又は複数のフィンを備えるシェルアンドチューブ型熱交換器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便かつコスト的に効率化して、圧縮機の筐体内温度を、低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の圧縮機を模式的に示した斜視図である。
図2】実施例1の圧縮機を示した正面図・右側面図・背面図である。
図3】実施例1のインタクーラを示した正面及び径方向断面図である。
図4】実施例1のアフタクーラを示した正面及び径方向断面図である。
図5】実施例1のアフタクーラの外観構成を示す斜視図と正面図である。
図6】実施例2のアフタクーラの外観構成を示す斜視図と正面図である。
図7】実施例3のアフタクーラの外観構成を示す斜視図と正面図である。
図8】実施例4のアフタクーラの外観構成を示す斜視図と正面図である。
図9】実施例5のアフタクーラの外観構成を示す斜視図と正面図である。
図10】実施例6のアフタクーラの組み立ての遷移を模式的に示した斜視図である。
図11】実施例6のアフタクーラの外観構成を示す斜視図と正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1の空気圧縮機1(以下、単に「圧縮機1」と称する場合がある。)を模式的に表した斜視図を示す。また、図2は、圧縮機1の正面・右側面・背面を示す図である。図2(a)は、圧縮機1の正面図を示し、図2(b)は、圧縮機1の右側面図を示し、図2(c)は、圧縮機1の背面図を示す。圧縮機1は、圧縮媒体として空気(大気)を吸込み圧縮空気を吐き出す多段圧縮機である。なお、本実施例は多段式の空気圧縮機に限定するものではない。
【0016】
圧縮機1は、ベース5に、電動機10、ギアケース11、1段目圧縮機本体である低圧段圧縮機本体12、インタクーラ13、2段目圧縮機本体である高圧段圧縮機本体14、アフタクーラ15、インバータ室19等を備え、筐体6によってこれらが格納される構成を有する。
【0017】
電動機10は、低圧段圧縮機本体12及び高圧段圧縮機本体14を駆動する駆動源である。インバータ室19に格納されたインバータが、電動機10に供給する電力の周波数を制御することで、電動機の回転速度を制御する。本実施例では、駆動源として電動機10を用いるが、他の駆動源として内燃機関、蒸気機関、風力といった自然エネルギを用いることもできる。
【0018】
ギアケース11は、低圧段圧縮機本体12と高圧段圧縮機本体14とに、電動機10からの駆動力を伝達するギヤを内部に備える。電動機10と、低圧段圧縮機本体12及び高圧段圧縮機本体14との間にギアケース11が配置される。ギアケース11は、電動機10と低圧段圧縮機本体12及び高圧段圧縮機本体14とを支持して一体に構成する機能を有する。
【0019】
本実施例において、電動機10の負荷側出力軸はブルギアを備え、低圧段圧縮機本体12及び高圧段圧縮機本体14の駆動軸に配置する夫々のギアとの噛み合いで、両圧縮機本体の圧縮機構(例えばスクリューロータ)を駆動するようになっている。なお、本実施例では、ギヤ接続の例で説明したが、ベルト懸架型や軸直結の構成であってもよい。
【0020】
低圧段圧縮機本体12は、無給液式のオイルフリースクリュー形圧縮機であり、雄雌ロータの歯溝の噛み合いによって空気を圧縮する容積形ツインスクリューロータ式の圧縮機構を備える。
【0021】
なお、前記の容積形ツインスクリューロータ式の圧縮機構に限定するものではなく、スクリュー式であれば、ゲートロータとスクリューロータとからなるシングルスクリュー式や、3以上のスクリューロータの噛み合いからなるマルチ式等種々の形式を用いることができる。
【0022】
更に、圧縮機構としてスクリュー式以外に、他の容積形圧縮機構や遠心形等を用いることもできる。低圧段圧縮機本体12は、吸込口16から空気を吸込み、一段目圧縮機で圧縮された空気をインタクーラ13に吐き出すようになっている。
【0023】
インタクーラ13は、低圧段圧縮機本体12から吐き出された一段目圧縮機で圧縮された空気を冷却するシェルアンドチューブ型の熱交換器である。シェルアンドチューブ式の熱交換器は、図3に示すように、外部ケーシングとなる筒状のシェル30の内部に、圧縮気体等が内部を流れる1又は複数の被冷却配管(チューブ35)を直線、蛇行或いは螺旋状に配置し、シェル30に配置する外部給液入口から出口に向かって冷却媒体である液体(水等)が流入し、内部に配置する被冷却配管と熱交換を行う構成である。出口から排出された冷却液は、例えば、水冷又は空冷の他の冷却装置(圧縮機システムの場合は冷却棟として実装される場合も多い。)に流れ出て、再度冷却液管を入口から還流するようにしてもよい。
【0024】
インタクーラ13は、低圧段圧縮機本体12及び高圧段圧縮機本体14の下方側で、これらに跨って延在するように配置する。インタクーラ13は、給水口20aを介して、圧縮機1の外部から供給された冷却液(本例では水とする。)と、一段目圧縮機で圧縮された空気との熱交換を行い、圧縮空気の中間冷却を行うようになっている。
【0025】
中間冷却された圧縮空気は、中間配管17を介して、高圧段圧縮機本体14の吸込側に流れるようになっている。インタクーラ13について、詳細は後述する。
【0026】
高圧段圧縮機本体14は、低圧段圧縮機本体12と同様に無給液式のツインスクリュー圧縮機形式を適用する。なお、他の形式を適用できるのは低圧段圧縮機本体12と同様である。二段目圧縮機である高圧段圧縮機本体14が、一段目圧縮機で圧縮された空気を吸込み、これから更に昇圧した高圧に圧縮した空気を吐き出すようになっている。二段目圧縮機である高圧段圧縮機本体14から吐き出された圧縮された空気は、アフタクーラ15に流れるようになっている。
【0027】
アフタクーラ15は、高圧段圧縮機本体14から吐き出された二段目圧縮機で圧縮された空気を冷却するシェルアンドチューブ型の熱交換器である。アフタクーラ15は、インタクーラ13と同様に、低圧段圧縮機本体12及び高圧段圧縮機本体14の下方側で、これらに跨って延在するように配置し、インタクーラ13よりも圧縮機1の右側面寄りに配置する。
【0028】
アフタクーラ15は、給水口20aを介して、圧縮機1の外部から供給された冷却液と、二段目圧縮機で圧縮された圧縮空気との熱交換を行い、圧縮空気の二段目の冷却を行うようになっている。二段目の冷却をされた圧縮空気は、アフタクーラ15の吐出口18を介して、圧縮機1の外部(ユーザ側配管系等)に流れるようになっている。アフタクーラ15について、詳細は後述する。
【0029】
筐体6は、電動機10、ギアケース11、低圧段圧縮機本体12、インタクーラ13、高圧段圧縮機本体14、アフタクーラ15、制御室9及びインバータ室19等を正面・側面・背面・上面から囲むパネルからなる。
【0030】
筐体6の上面には、外部から空気を吸気するための外部吸込口7を配置し(図1を参照)、外部吸込口7から低圧段圧縮機本体12の吸込口16の間の機械室25には、吸気ダクト4が配置するようになっている(図2を参照)。また、本実施例では、電動機10、低圧段圧縮機本体12、高圧段圧縮機本体14、インタクーラ13及びアフタクーラ15等を格納する機械室25と、インバータ室19とは内部区画壁8で区画されるようになっている。
【0031】
また、制御室9は、圧縮機1を制御する制御装置を格納する筐体である。本実施例では、筐体6によって、電動機10、低圧段圧縮機本体12、高圧段圧縮機本体14、インタクーラ13、アフタクーラ15等と同じ内部空間(機械室25)に制御室9を配置しているが、配置場所はこれに限定するものではない。
【0032】
筐体6のパネルは、各面で1枚或いは複数のパネルから構成され、圧縮機1の内部は、一部の吸気や排気用の開口を除き、機器保守や防音を図るために外部との視覚的な開放は略無い半密閉構造となっている。この為、圧縮機1の機械室25は、電動機10、低圧段圧縮機本体12、高圧段圧縮機本体14等の発熱によって高温となる傾向にある。
【0033】
仮に、内部区画壁8がなく、インバータ室19と、機械室25とが同一空間内に配置する場合には、電力変換装置の熱も圧縮機1の内部空間温度上昇に寄与することとなる。内部空間温度の上昇は、潤滑油の耐熱温度を超えて性能を満たさなくなる場合や、電子部品の寿命を短くするといった悪影響を及ぼす。特に、圧縮機1を設置した周囲の温度が高温の場合、この傾向は更に増加することとなる。
【0034】
本実施例の特徴の1つは、シェルアンドチューブ型の熱交換器であるインタクーラ13及びアフタクーラ15の表面温度を利用して、圧縮機1の内部空間温度を低減させるようにしていることにある。以下、インタクーラ13及びアフタクーラ15について詳細に説明する。
【0035】
まず、図3を用いて、インタクーラ13の内部構成を説明する。図3(a)は、インタクーラ13の長手方向側断面図であり、図3(b)は、これに直交する上流側付近断面図である。インタクーラ13は、シェル30、ヘッダ32a・32b、フランジ33a・33b、バッフルプレート34及びチューブ35を備える。
【0036】
シェル30は、例えば長手方向の両端部に開口を有する円筒形状からなり、インタクーラ13の本体部を成す。シェル30の長手方向一方端部(図3(a)の左側端部)には、低圧段圧縮機本体12の吐出圧縮本体の吐出側流路と接続するヘッダ32aを備え、他方端部(図3(a)の右側端部)には、高圧段圧縮機本体14の吸込側流路と接続するヘッダ32bを備える。
【0037】
シェル30は、その外周のヘッダ32b寄りに、シェル30内部に、冷却水を供給するために冷却水を取り込む冷却水入口(配管)31aを備える。また、シェル30は、ヘッダ32a寄りに、冷却水をシェル30から排出する冷却水出口(配管)31bを備える。冷却水入口(配管)31a及び冷却水出口(配管)31bは、内部配管を介して夫々圧縮機1の給水口20a・排水口20b(図1等を参照)と接続する。
【0038】
ヘッダ32a、ヘッダ32bは、共に内部を圧縮空気が流通可能な管形状を有し、一方の端部がシェル30の端部に夫々ボルト等により接続される。
【0039】
シェル30の両端の開口部と、ヘッダ32a・32bとの接続部付近には、フランジ33a・33bを備える。フランジ33a・33bは、シェル30の内径と略同外径を有した所定厚みの円盤形状からなり、図3(b)に示すように、中央に複数の貫通穴36を有する。貫通穴36は、後述するチューブ35の外径と略同内径を有し、チューブ35の両端部が貫通穴36と接続する。これによって、シェル30の両端部間を複数のチューブ35が延在し、チューブ35の内部を圧縮空気が流通するようになっている。
【0040】
また、シェル30の内部には、図3(a)に示すように、複数のチューブ35を支持すると共にシェル30内を流れる冷却水の流れ方向を変更する複数のバッフルプレート34を備える。バッフルプレートは、シェル30の内径断面の外周部の一部を切欠いた形状を有する。
【0041】
例えば、半円形状以上から円形状未満の断面形状となるように外周側の一部を切欠いた形状を有する。複数のハッブルプレート34は、シェル30内部の径方向に向かって、切欠きが流水方向で一致しないように適宜回転位相(例えば180度)をして配置するようになっている。
【0042】
即ち図3(a)に示すように、シェル30の内部を流れる冷却水が、ハッブルプレート34によって蛇行する流れとなり、チューブ35との接触時間を増大させ、熱交換の効率を向上させるようになっている。なお、パッブルプレート34の構成や冷却水の流れ方は本例に限定するものではなく任意である。
【0043】
次いで、図4を用いて、アフタクーラ15の内部構成を説明する。図4(a)は、アフタクーラ15の長手方向側断面図であり、図4(b)は、これに直交する上流側付近断面図である。
【0044】
インタクーラ13での説明と重複した記載は省略する。アフタクーラ15は、シェル40の長手方向一方端部(図4(a)の左側端部)には、高圧段圧縮機本体14側流路と接続するヘッダ42aを備え、他方端部(図4(a)の右側端部)には、圧縮機1の外部(ユーザ側配管系等)と繋がった吐出口の流路と接続するヘッダ42bを備える。
【0045】
シェル40は、その外周のヘッダ42b寄りに、シェル40内部に供給される冷却水入口(配管)41aを備え、ヘッダ42a寄りに、冷却水出口(配管)41bを備える。
シェル40に設けるチューブ45やバッフルプレート44の個数は、目標の冷却性能に応じて任意に決めてよい。
【0046】
ここで、シェルアンドチューブ型熱交換器であるインタクーラ13及びアフタクーラ15は、シェル30及びシェル40の径方向外周面が比較的低温となるという特徴がある。即ちシェル30及びシェル40が冷却対象とする圧縮空気は、その内部に延在するチューブ35・45を流れる。そして、チューブ35・45の外側には低温の冷却水があることから、径方向外周表面の裏側(内部側)は、低温の冷却水が流通する。この径方向外周表面の温度は、前記したように電動機10、低圧段圧縮機本体12、高圧段圧縮機本体14等から駆動時に発生する熱で満たされた圧縮機1の筐体6の内部温度よりも低温である。
【0047】
本実施例では、シェル30・40の径方向外周に、外部に延伸するフィン50を備えることを特徴の1つとする。
【0048】
図5は、アフタクーラ15の外観構成を示し、図5(a)は斜視図を、図5(b)は正面図を示す。なお、インタクーラ13も同趣旨の為、代表してアフタクーラ15の構成について主に説明する。
【0049】
アフタクーラ15のシェル40は、径方向外周に、その外周形状に沿った少なくとも1つの環状のフィン50を備える。本例では複数配置するものとして説明する。
【0050】
各フィン50は、シェル40の径方向外周表面から鉛直方向に延びるとともに、シェル40の中心角度で360度に渡って延伸した形状である。フィン50は、例えばシェル40が鉄系素材の鋳物からなるとすれば、一体に鋳物成型によって構成されるようになっている。
【0051】
即ちシェル40とフィン50が熱伝導する構成である。これにより、シェル40の表面積が増大し、内部を流通する冷却水の低温に対する圧縮機1の内部空間熱をアフタクーラ15の表面に吸熱しやすくなり、圧縮機1内部空間の温度を低下させることが可能となる。
【0052】
また、本実施例ではインタクーラ13とアフタクーラ15という2つの熱交換器を圧縮機1の内部空間の吸熱要素として利用することから、より内部空間の冷却性能の向上効果が期待できる。
【0053】
また、圧縮機1内部空間の冷却に専用のファン装置等の部品追加や当該部品を駆動するためのエネルギ増加といったコスト面での優位性も確保できる。
【0054】
更に、実施例1のフィン50は、シェル40と一体に成型し且つシェル40の径方向外周の略全てに渡って環状に配置することから、冷却媒体から一定の内部圧力が発生するシェル40における冷却媒体への対圧力性能の向上も期待できる。
【実施例2】
【0055】
実施例2は、アフタクーラ15(インタクーラ13)の複数のフィン50同士間隔が異なる点が、実施例1と異なる。以下、図面を用いて説明するが、実施例1と同一の構成要素については同一符号を用い、詳細な説明を省略する場合がある。
【0056】
図6は、実施例2のアフタクーラ15の外観構成を示し、図6(a)は斜視図を、図6(b)は正面図を示す。本実施例ではアフタクーラ15について説明するが、インタクーラ13についても同趣旨である。図6に示すように、アフタクーラ15は、シェル40の長手方向の両端側の各フィン50の間隔に比べて、中央付近のフィン50の間隔を長くする構成を特徴とする。
【0057】
かかる構成であっても、実施例1と同様の効果を期待することができるとともに、単一のクーラにおいて、長手方向での吸熱性に指向性を発揮することができる。
【0058】
例えば、アフタクーラ15の周辺で、特にシェル30の長手方向の両端部付近に存在する発熱源(吐出配管等)があれば、当該領域に近い部分のフィン50の間隔を密にすることで、当該領域に対する吸熱性効果の更なる向上が期待できる。
【実施例3】
【0059】
実施例3は、アフタクーラ15(インタクーラ13)の冷却水入口41a側のフィン50の高さが、冷却水出口41b側のフィン50よりも高い点が、実施例1及び2と異なる。
【0060】
以下、図面を用いて説明するが、実施例1及び2と同一の構成要素については同一符号を用い、詳細な説明を省略する場合がある。
【0061】
図7は、実施例3のアフタクーラ15の外観構成を示し、図7(a)は斜視図を、図7(b)は正面図を示す。本実施例ではアフタクーラ15について説明するが、インタクーラ13についても同趣旨である。図7に示すように、冷却水入口41a側のフィン50の高さが、冷却水出口41b側のフィン50の高さよりも高くしてある。
【0062】
更に、冷却水入口41a側のフィン50同士の間隔が、冷却水出口41b側のフィン50同士の間隔よりも短くした点も特徴とする。かかる構成であっても、実施例1及び2と同様の効果を期待することができると共に以下の効果も期待できる。
【0063】
一般に冷却を目的とする熱交換器において、冷却媒体である冷却水の温度は冷却水出口側よりも冷却水入口側の方が低い。そこで、より低温となる冷却水入口41a側のシェルの外表面に配置するフィン50の高さを、冷却水出口側の高さよりも高くする。もしくは冷却水入口41a側のフィン50の間隔を、冷却水出口側での間隔より短くする。
【0064】
そのような構成とすることで、圧縮機1の内部空間に対して、シェルの外表面が低温である部分の吸熱面積を広くするとともに、相対的に高温になる傾向のある冷却水出口41b側の表面積を抑制し、チューブ45内の空気の冷却性を確保することができる。
【実施例4】
【0065】
実施例4は、アフタクーラ15(インタクーラ13)のフィン50の延在方向が実施例1~3と異なる。以下、図面を用いて説明するが、実施例1~3と同一の構成要素については同一符号を用い、詳細な説明を省略する場合がある。
【0066】
図8は、実施例4のアフタクーラ15の外観構成を示し、図8(a)は斜視図を、図8(b)は正面図を示す。本実施例ではアフタクーラ15について説明するが、インタクーラ13についても同趣旨である。
【0067】
フィン50は、シェル40の径方向外周において、長手方向に沿って直線状に延伸する形状である。各フィン50の周方向間隔はフィン50の数で除した同位相角度とするが、これに限定するものではなく異なる位相確度で配置する構成であってもよい。
【0068】
また、図8では各フィン50の高さは同一とするが、これが異なる高さであってもよい。異なる高さとは、フィン50同士の高さが異なる場合や、1つのフィン50で高さが異なる構成であってもよい。例えば、実施例3のように、外周面がより低温となる傾向にある冷却水入口41a側部分のフィン50の高さを、冷却水出口41b側部分のフィン50の高さより、高くした形状であってもよい。
【0069】
以上の構成でも、フィン50が圧縮機1の内部空間温度を冷却する吸熱作用を発揮しえる。
【実施例5】
【0070】
実施例5は、アフタクーラ15(インタクーラ13)のフィン50の延在方向が実施例4と同様にシェル40の長手方向であるが、外周表面の一部にのみフィン50を配置する点で異なる。
以下、図面を用いて説明するが、実施例1~4と同一の構成要素については同一符号を用い、詳細な説明を省略する場合がある。
【0071】
図9は、実施例5のアフタクーラ15の外観構成を示し、図9(a)は斜視図を、図9(b)は正面図を示す。本実施例ではアフタクーラ15について説明するが、インタクーラ13についても同趣旨である。図9に示すように、フィン50は、シェル40の水平方向周面付近にのみ配置する。外周表面の一部にのみフィン50を配置する構成であっても、実施例4と同様の効果を期待することができると共に以下の効果も期待できる。
【0072】
即ち、単一のクーラにおいて、吸熱作用に周方向の指向性も発揮しえる。例えば、図1に示すように、本例の圧縮機1では、インタクーラ13及びアフタクーラ15が、低圧段圧縮機本体12及び高圧段圧縮機本体14の下方で、低圧段圧縮機本体12及び高圧段圧縮機本体14の両者に渡って延在して配置される。このような配置をすることで、配管を短くできると共に、インタクーラ13及びアフタクーラ15の保守を容易にできる。
【0073】
低圧段圧縮機本体12及び高圧段圧縮機本体14といった圧縮本体は、圧縮機1内部空間において比較的高い発熱体である。
【0074】
したがって、図では示していないが、フィン50を、アフタクーラ15もしくはインタクーラ13の上部側の周面付近であって、低圧段圧縮機本体12もしくは高圧段圧縮機本体14と対向する外周面側のみに配置することで、低圧段圧縮機本体12もしくは高圧段圧縮機本体14といった発熱源からの熱の吸熱効果を向上させることができる。さらに、ベース5側については、チューブ45を流れる圧縮空気の冷却効果を確保することができる。
【実施例6】
【0075】
実施例1~5では、シェル30・40と、フィン50とが同一素材からなる(例えば鋳物の)一体成形物として説明した。実施例6は、フィン50がシェル30・40とは別体成形物としたり、これに加えて異なる素材から構成する例である点が他の実施例と異なる点である。以下、図面を用いて説明するが、実施例1~5と同一の構成要素については同一符号を用い、詳細な説明を省略する場合がある。
【0076】
図10は、実施例6のアフタクーラ15の組み立ての遷移を模式的に示した斜視図である。図11は、実施例6のアフタクーラ15の外観構成を示し、図11(a)は斜視図を、図11(b)は正面図を示す。本実施例ではアフタクーラ15について説明するが、インタクーラ13も同趣旨である。実施例6では、シェル30・40とフィン50とは別体であり、両者が、ボルト締め、カシメ、溶接、接着、係止や嵌合構造或いはこれらの組み合わせ等により接続する構成であるものの両者の熱伝導性は保持する構造である。
【0077】
図10は、上から下に向かって順に別体構成の接続遷移を示す。本実施例において、フィン50は、シェル30・40の外周面に沿った半弧形状であり、これが前記した接続方法によって順に接続配置するようになっている。
【0078】
また、実施例1等の環状のフィン50とする場合には、逆側(下方)から別の半弧状フィンを接続する等により実現できる。また、環状にせずとも、図11に示すように、シェル30・40の上方及び下方に、長手方向に間隔を違えて交互にフィン50接続するようにする構成も可能である、
また、フィン50は、シェル30・40よりも熱伝導率の高い素材で構成するようにしてもよい。例えば、シェル30・40が鉄であれば、フィン50はアルミ等である。
【0079】
また、全てのフィン50が同一素材で構成されるものでなくてもよい。例えば、実施例1~5で、フィン50の形状、大きさ、間隔、配置領域等について種々の例を述べたが、これら種々の構成例の趣旨に沿って、より吸熱効果を期待する部分(領域)のフィン50が、熱伝導率の高い素材から構成するものであってもよい。また、一部のフィン50がシェル30・40と一体成型からなり、他のフィン50が別体構成物となる構成とすることも可能である。
【0080】
以上、実施例について説明したが、前記構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、他の実施例の一部又は全部の構成を含む又は置換することも可能である。
【0081】
また、前記した例では、フィン50をシェル30・40の径方向側面の周方向や長手方向に沿って延在する形状について例示したが、格子となるフィン形状や、複数の突起(針状)からなるフィン形状等であってもよい。
【0082】
また、フィン50は、インタクーラ13とアフタクーラ15の両方に配置する例を説明したが、何れか一方のみに配置する構成であってもよい。
【0083】
また、前記の例ではインタクーラ13やアフタクーラ15の冷却水供給方向と圧縮空気の流通方向も前記の例に限定するものではなく、仕様に応じて任意の両方に設定することもできる。
【0084】
また、前記の例では、インタクーラ13とアフタクーラ15について、シェル30・40が長手筒状の形状を有するシェルアンドチューブ型熱交換器について説明したが、外部ケーシング内部に被冷却媒体が流通し、外表面側に冷却媒体が流通する構成であれば、前記の実施例を適用することができる。例えば、シェルの断面形状は、円に限らず、内部に冷却媒体などを流通させるのであれば、矩形などの形状でもよい。また、前記の例では、冷却媒体である水をシェル内に流す例で説明したが、冷却媒体としては、液体に限らず、気体であってもよい。
【0085】
また、前記の例では圧縮機1として、多段式の無給液式空気圧縮機を例としたが、給液式圧縮機、空気以外の気体を圧縮する圧縮機、種々の形式の容積形・遠心形の圧縮機にも前記の実施例を適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…圧縮機、6…筐体、10…電動機、12…低圧段圧縮機本体、13…インタクーラ、14…高圧段圧縮機本体、15…アフタクーラ、19…インバータ室、30、40…シェル、31a、41a…冷却水入口、31b、41b…冷却水出口、35、45…チューブ
図1
図2
図3
図4
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図7
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図10
図11