(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】周辺監視システム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20230425BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20230425BHJP
【FI】
G01S7/03 240
G01S7/03 246
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2019065051
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】袴田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】大石 庸平
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-095039(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072289(WO,A1)
【文献】特開2010-210297(JP,A)
【文献】特開平09-211116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0237655(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0037360(KR,A)
【文献】道路運送車両の保安基準の細目を定める告示〈第三節〉第 198 条(前照灯等),日本,国土交通省[online],2009年10月24日,Pages: 1-8,[検索日 2022.12.06], インターネット: <URL: https://www.mlit.go.jp/common/001056460.pdf>
【文献】富岡 恒憲 ほか,ContinentalのADAS/自動運転技術 車線検知や車載カメラが進化,日経Automotive,日本,日経BP社,2018年12月11日,第94号,Pages: 76-79,ISSN: 1881-9362
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
13/00 - 13/95
B60R 19/00 - 19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の右側前方を検出範囲とする第1センサー装置と前記車両の左側前方を検出範囲とする第2センサー装置とを備えた周辺監視システムであって、
前記第1センサー装置および前記第2センサー装置の各々は、
検出範囲に向けて検出波を照射するとともに前記検出範囲からの前記検出波の反射波を受信するアンテナ部を有し、
前記アンテナ部の基準位置が、
前記車両の高さ方向において路面から300mm~700mmの範囲に位置し、
前記車両の幅方向において前記幅方向の端面から30mm~50mmの範囲に位置し、
前記車両の前後方向において前記車両の前面から300mm以下の範囲に位置し、
前記車両の高さ方向からの平面視において前記基準位置を通る照射基準線が前記前後方向に対して前記車両の前方外側へ50°±3°の方向に設定され
、
前記車両の右側前方に凸な曲面状をなして前記第1センサー装置のアンテナ部を覆う第1カバーと前記車両の左側前方に凸な曲面状をなして前記第2センサー装置のアンテナ部を覆う第2カバーとを備え、
前記第1カバーおよび前記第2カバーの各々は、
前記高さ方向からの平面視において前記照射基準線上での前記アンテナ部に対するクリアランスが10mm~20mmであり、かつ、前記検出範囲の水平画角の境界線との交点における法線が当該境界線に対する±15°の方向に設定されている
周辺監視システム。
【請求項2】
前記第1カバーおよび前記第2カバーの各々は、
前記検出範囲の垂直画角の境界線との交点における法線が当該境界線に対する±10°の方向に設定されている
請求項
1に記載の周辺監視システム。
【請求項3】
前記第1センサー装置は、前記車両における右側前部に取り付けられ、
前記第2センサー装置は、前記車両における左側前部に取り付けられ、
前記第1センサー装置および前記第2センサー装置の各々は、
前記アンテナ部と、
前記アンテナ部を支持するとともに前記車両に取り付けられる基板と、
前記基板が前記車両に取り付けられた状態において前記基板
から前記車両の
幅方向における外側
に向かって延びるように配設され、ワイヤーハーネスが差し込み接続される接続部と、を有する
請求項
1または2に記載の周辺監視システム。
【請求項4】
前記車両は、
前記第1センサー装置の取付位置に前記第2センサー装置を取り付けようとした場合に前記第2センサー装置の接続部が干渉する第1干渉部と、
前記第2センサー装置の取付位置に前記第1センサー装置を取り付けようとした場合に前記第1センサー装置の接続部が干渉する第2干渉部と、を備える
請求項
3に記載の周辺監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周辺を監視する周辺監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、車両周辺の物標について相対位置や相対速度などを検出することにより車両の周辺を監視する周辺監視システム(SAMS:Sight Around Monitor System)が知られている。周辺監視システムの一例は、車両の右側前方を検出範囲とする第1センサー装置、車両の左側前方を検出範囲とする第2センサー装置、および、各センサー装置の物標の検出結果に基づいて車両が物標に衝突する可能性などについて判断するシステム制御装置などを備えており、これらが通信回路によって相互に通信可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した周辺監視システムにおいては、システム制御装置による判断の信頼性を向上させるうえで車両の斜め前方に位置する物標を高い確度で検出することが求められる。
本発明は、車両の斜め前方に位置する物標を高い確度で検出することのできる周辺監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する周辺監視システムは、車両の右側前方を検出範囲とする第1センサー装置と前記車両の左側前方を検出範囲とする第2センサー装置とを備えた周辺監視システムであって、前記第1センサー装置および前記第2センサー装置の各々は、検出範囲に向けて検出波を照射するとともに前記検出範囲からの前記検出波の反射波を受信するアンテナ部を有し、前記アンテナ部の基準位置が、前記車両の高さ方向において路面から300mm~700mmの範囲に位置し、前記車両の幅方向において前記幅方向の端面から30mm~50mmの範囲に位置し、前記車両の前後方向において前記車両の前面から300mm以下の範囲に位置し、前記車両の高さ方向からの平面視において前記基準位置を通る照射基準線が前記前後方向に対して前記車両の前方外側へ50°±3°の方向に設定されている。
【0006】
上記構成によれば、車両の斜め前方を検出範囲とする第1センサー装置および第2センサー装置の各々について、車両の斜め前方に位置する物標を高い確度で検出することができる。
【0007】
上記構成の周辺監視システムにて、前記第1センサー装置および前記第2センサー装置の各々は、前記アンテナ部と、前記アンテナ部を支持するとともに前記車両に取り付けられる基板と、前記基板が前記車両に取り付けられた状態において前記基板に対する前記車両の外側からワイヤーハーネスが差し込み接続される接続部と、を有していてもよい。
【0008】
上記構成によれば、接続部に接続されたワイヤーハーネスは、その端部が接続部から車両の外側に向かって延びることとなる。そのため、各センサー装置に対する車両の内側の空間を有効利用することができる。
【0009】
上記構成の周辺監視システムにおいて、前記基板は、前記基板を前記車両に締結する締結部材が貫通する複数の貫通孔を有し、前記第1センサー装置および前記第2センサー装置の各々は、前記照射基準線に沿う方向からの前記アンテナ部の平面視において前記基準位置に対する前記複数の貫通孔の相対位置が互いに異なり、前記車両は、前記第1センサー装置の取付位置に前記第2センサー装置を取り付けようとした場合に前記第2センサー装置の接続部が干渉する第1干渉部と、前記第2センサー装置の取付位置に前記第1センサー装置を取り付けようとした場合に前記第1センサー装置の接続部が干渉する第2干渉部と、を備えるとよい。
【0010】
上記構成によれば、第1センサー装置の取付位置に第2センサー装置を誤って取り付けようとしても取り付けることができず、第2センサー装置の取付位置に第1センサー装置を誤って取り付けようとしても取り付けることができない。すなわち、第1センサー装置と第2センサー装置とを誤って取り付けることを回避することができる。
【0011】
上記構成の周辺監視システムは、前記車両の右側前方に凸な曲面状をなして前記第1センサー装置のアンテナ部を覆う第1カバーと前記車両の左側前方に凸な曲面状をなして前記第2センサー装置のアンテナ部を覆う第2カバーとを備え、前記第1カバーおよび前記第2カバーの各々は、前記高さ方向からの平面視において前記照射基準線上での前記アンテナ部に対するクリアランスが10mm~20mmであり、かつ、前記検出範囲の水平画角の境界線との交点における法線が当該境界線に対する±15°の方向に設定されていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、センサー装置のアンテナ部を保護しつつ、検出範囲に位置する物標をより高い確度のもとで検出することができる。
上記構成の周辺監視システムにおいて、前記第1カバーおよび前記第2カバーの各々は、前記検出範囲の垂直画角の境界線との交点における法線が当該境界線に対する±10°の方向に設定されていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、センサー装置のアンテナ部を保護しつつ、検出範囲に位置する物標をより高い確度のもとで検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】周辺監視システムの一実施形態の概略構成を示す車両正面図。
【
図2】周辺監視システムの一実施形態の概略構成を示す車両上面図。
【
図5】センサー装置の搭載位置を示す車両左側面図。
【
図7】センサー装置の搭載位置を模式的に示す車両上面図。
【
図8】垂直画角に対するカバーの形状を模式的に示す図。
【
図9】水平画角に対するカバーの形状を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図9を参照して、周辺監視システムの一実施形態について説明する。
図1および
図2を参照して周辺監視システムの概要について説明する。
図1および
図2に示すように、周辺監視システムは、車両10に搭載されている。周辺監視システムは、第1センサー装置11R、第2センサー装置11L、第1通信回路13、第2通信回路14、および、システム制御装置15(以下、単に制御装置15という。)を備えている。
【0016】
なお、
図1において、X軸は車両10の幅方向、Y軸は車両10の前後方向、Z軸は車両10の高さ方向を示している。これらX軸、Y軸、および、Z軸は、互いに直交する軸である。また、
図2~
図9にXYZが示されている場合、そのXYZは、
図1に示されるXYZにそれぞれ対応している。
【0017】
第1センサー装置11Rは、車両10を構成するキャブ10Cの右側前方に配設され、車両10に対する右前方の領域である第1検出範囲16Rが検出範囲に設定されたセンサー装置である。第1センサー装置11Rは、第1検出範囲16Rに向けて検出波を照射するとともに第1検出範囲16Rからの反射波を受信する第1アンテナ部17Rを有している。第1センサー装置11Rは、第1アンテナ部17Rが受信した反射波に基づく反射波情報に対して所定の演算周期で演算を行うことにより、第1検出範囲16Rに位置している物標である第1物標18を検出するとともに車両10に対する第1物標18の相対位置や車両10に対する第1物標18の移動方向を含めた相対速度を演算する。第1センサー装置11Rは、演算結果に基づいて、第1物標18の検出結果を示す第1物標情報を生成する。また、第1センサー装置11Rは、自己に異常が生じているか否かを判断する自己診断機能を有している。第1センサー装置11Rは、自己診断機能に対する診断結果を示す第1診断情報を生成する。第1センサー装置11Rの一例は、ミリ波レーダーである。
【0018】
第2センサー装置11Lは、車両10を構成するキャブ10Cの左側前方に配設され、車両10に対する左前方の領域である第2検出範囲16Lが検出範囲に設定されたセンサー装置である。第2センサー装置11Lは、第2検出範囲16Lに向けて検出波を照射するとともに第2検出範囲16Lからの反射波を受信する第2アンテナ部17Lを有している。第2センサー装置11Lは、第2アンテナ部17Lが受信した反射波に基づいて所定の演算周期で演算を行うことにより、第2検出範囲16Lに位置している物標である第2物標19を検出するとともに車両10に対する第2物標19の相対位置や第2物標19の移動方向を含めた相対速度を演算する。第2センサー装置11Lは、演算結果に基づいて、第2物標19の検出結果を示す第2物標情報を生成する。また、第2センサー装置11Lは、自己に異常が生じているか否かを判断する自己診断機能を有している。第2センサー装置11Lは、自己診断機能に対する診断結果を示す第2診断情報を生成する。第2センサー装置11Lの一例は、ミリ波レーダーである。
【0019】
第1通信回路13は、第1センサー装置11Rと第2センサー装置11Lとに接続される有線式の通信回路である。第1通信回路13は、例えば複数の通信線や電源線などを有するワイヤーハーネスを含んで構成される。第1センサー装置11Rおよび第2センサー装置11Lは、第1通信回路13を通じて相互通信可能に構成されている。第1センサー装置11Rは、第1物標情報を示す信号および第1診断情報を示す信号を第1通信回路13を通じて第2センサー装置11Lに出力する。
【0020】
第2通信回路14は、第2センサー装置11Lと制御装置15とに接続される有線式の通信回路である。第1通信回路13は、例えば複数の通信線や電源線などを有するワイヤーハーネスを含んで構成される。第2センサー装置11Lおよび制御装置15は、第2通信回路14を通じて相互通信可能に構成されている。第2センサー装置11Lは、第2物標情報を示す信号および第2診断情報を示す信号を第2通信回路14を通じて制御装置15に出力する。また、第2センサー装置11Lは、第1センサー装置11Rから入力された第1物標情報および第1診断情報を示す信号を第2通信回路14を通じて制御装置15に出力する。
【0021】
制御装置15は、プロセッサ、メモリ、入力インターフェース、および、出力インターフェース等がバスを介して互いに接続されたマイクロコントローラーを中心に構成される。制御装置15は、各種の情報を入力インターフェースを介して取得する。そして制御装置15は、その取得した各種の情報、および、メモリに記憶したプログラムや各種のデータに基づいて各種の処理を実行する。
【0022】
例えば、制御装置15は、第2通信回路14を通じて入力された第1物標情報と第2物標情報とに基づいて、ドライバーの運転を支援する各種の処理を実行する。制御装置15は、各センサー装置11が検出した物標に対して車両10が衝突する可能性が高いことをドライバーに警告する警告処理を実行する。警告処理において、制御装置15は、各センサー装置11が検出した物標に対して車両10が衝突するまでの時間である衝突予測時間を演算する。そして制御装置15は、衝突予測時間が所定の警告時間以下である場合、警告装置20を通じて物標に衝突する可能があることをドライバーに警告する。警告装置20は、例えば、第1センサー装置11Rに対応する第1警報部20Rと第2センサー装置11Lに対応する第2警報部20Lとで構成される。第1警報部20Rは、車両10の右側前方に位置する第1物標18に対する警告音をドライバーの右側から発する。第2警報部20Lは、車両10の左側前方に位置する第2物標19に対する警告音をドライバーの左側から発する。なお、制御装置15は、衝突予測時間が所定の自動制動開始時間(<警告時間)以下である場合に図示されない制動装置を駆動して車両10を自動的に制動する自動制動処理を実行してもよい。
【0023】
図3を参照して第1センサー装置11Rについて説明する。
図3に示すように、第1センサー装置11Rは、センサー基板21、アンテナ部22、および、接続部23を有するセンサー装置11を中心に構成されている。センサー基板21は、照射基準線60に沿う方向からの平面視において矩形状をなしている支持板25と、支持板25に支持されてセンサー装置11を統括制御する図示されないECUを内蔵している基板本体26とを有している。基板本体26は、支持板25に対して積層されるように設けられている。センサー基板21は、矩形状をなす支持板25の短手方向が高さ方向Zに沿うように車両10に対して取り付けられる。
【0024】
支持板25は、短手方向で対向する一対の辺部である辺部25aと辺部25bとを有している。第1センサー装置11Rにおいて、辺部25aは上辺部に設定され、辺部25bは下辺部に設定される。第1センサー装置11Rは、支持板25の辺部25aに一対の上側取付部29a,29bを有し、支持板25の辺部25bに一対の下側取付部30a,30bを有している。上側取付部29a,29bには、車両10に対してセンサー基板21を締結する図示されない締結部材が貫通する上側貫通孔31a,31bが形成されている。下側取付部30a,30bには、車両10に対してセンサー基板21を締結する図示されない締結部材が貫通する下側貫通孔32a,32bが形成されている。上側貫通孔31a,31bのピッチP31は、下側貫通孔32a,32bのピッチP32よりも大きな値に設定される。すなわち、第1センサー装置11Rは、照射基準線60に方向からのアンテナ部22の平面視において各貫通孔31a,31b,32a,32bの中心を結ぶ凸多角形が非正多角形状、具体的には台形形状に形成されている。
【0025】
アンテナ部22は、基板本体26に対する支持板25の反対側において基板本体26に支持されている。アンテナ部22は、基板本体26における下側取付部30a,30b寄りに位置している。アンテナ部22は、アンテナ面33を有している。アンテナ面33は、平面状をなしており、検出範囲に向けて検出波を発信するとともに検出範囲からの反射波を受信する面である。
【0026】
センサー装置11が第1センサー装置11Rとして車両10に取り付けられた場合、接続部23には、第1通信回路13を構成するワイヤーハーネス13Cの一端部が差し込み接続される。接続部23は、センサー基板21の基板本体26から側方に向かって延びている。接続部23は、基板本体26から車両10の後方右側に向かって延びるように配設される。すなわち、接続部23に差し込み接続されたワイヤーハーネス13Cは、第1センサー装置11R側の端部が車両10の外側に向かって延びるように配設される。
【0027】
図4を参照して第2センサー装置11Lについて説明する。なお、第2センサー装置11Lは、第1センサー装置11Rとはセンサー装置11に対する上側取付部および下側取付部の取り付け位置が異なるだけである。
【0028】
図4に示すように、第2センサー装置11Lにおいて、センサー装置11を構成する支持板25の辺部25aは下辺部に設定され、辺部25bは上辺部に設定される。第2センサー装置11Lは、支持板25の辺部25bに一対の上側取付部39a,39bを有し、支持板25の辺部25aに一対の下側取付部40a,40bを有している。上側取付部39a,39bには、車両10に対してセンサー基板21を締結する図示されない締結部材が貫通する上側貫通孔41a,41bが形成されている。下側取付部40a,40bには、車両10に対してセンサー基板21を締結する図示されない締結部材が貫通する下側貫通孔42a,42bが形成されている。上側貫通孔41a,41bのピッチP41は、第1センサー装置11Rの上側貫通孔31a,31bのピッチP31と同じ値である。下側貫通孔42a,42bのピッチP42は、第1センサー装置11Rの下側貫通孔32a,32bのピッチP32と同じ値である。すなわち、第2センサー装置11Lは、照射基準線60に方向からのアンテナ部22の平面視において各貫通孔41a,41b,42a,42bの中心を結ぶ凸多角形が非正多角形状、具体的には台形形状に形成されている。
【0029】
また、第2センサー装置11Lは、第1センサー装置11Rとは異なり、アンテナ部22が基板本体26における上側取付部39a,39b寄りに位置している。すなわち、第1センサー装置11Rと第2センサー装置11Lは、照射基準線60に沿う方向からのアンテナ部22の平面視において照射基準位置Pに対する各貫通孔の相対位置が互いに異なるように構成されている。
【0030】
センサー装置11が第2センサー装置11Lとして車両10に取り付けられた場合、接続部23には、第1通信回路13を構成するワイヤーハーネス13Cの他端部が差し込み接続される。接続部23は、第2センサー装置11Lが車両10に取り付けられた状態において基板本体26から車両10の後方左側に向かって延びるように配設される。すなわち、接続部23に差し込み接続されたワイヤーハーネス13Cは、第2センサー装置11L側の端部が車両10の外側に向かって延びるように配設される。
【0031】
なお、
図3に示すように、車両10には、第1センサー装置11Rに第2センサー装置11Lを取り付けようとしたときに第2センサー装置11Lの接続部23が干渉する第1干渉部44が形成されている。また、
図4に示すように、車両10には、第2センサー装置11Lに第1センサー装置11Rを取り付けようとしたときに第1センサー装置11Rの接続部23が干渉する第2干渉部45が形成されている。
【0032】
図5~
図7を参照して第1センサー装置11Rおよび第2センサー装置11Lの搭載位置について説明する。なお、以下の説明では、第1センサー装置11Rおよび第2センサー装置11Lの各々を構成するセンサー装置11を用いて第1センサー装置11Rおよび第2センサー装置11Lの搭載位置について説明する。
【0033】
図5に示すように、センサー装置11は、照射基準線60が車両10の前後方向Yに沿うように設置される。センサー装置11の垂直画角は、照射基準線60に対する車両10の上方側8°に位置する上側境界線61と照射基準線60に対する車両10の下方側8°に位置する下側境界線62とを有している。センサー装置11は、アンテナ部22のアンテナ面33において照射基準線60が交差する位置である照射基準位置Pが路面63から高さHの位置に設置される。高さHは、300mm~700mmである。なお、センサー装置11は、車両10の斜め前方に位置する領域Aにおいて十分な信頼性のもとで物標が検出されればよい。そのため、上側境界線61および下側境界線62は、照射基準線60に対する角度が8°に限られるものではない。
【0034】
高さHが300mm以上であることにより、路面63からの反射波の影響を低減することができる。高さHが700mm以下であることにより、例えば幼児が運転する三輪車など、高さが低い物標もより確実に検出することができる。また、トラックなどの大型自動車においては、普通の乗用車に比べて重量が大きいため制動距離が長くなりやすい。そのため、センサー装置11の検出範囲が広い方がよい。しかしながら、検出範囲を拡大すると路面63からの反射波の影響を大きく受けてしまう。この点、高さHが700mmに近くなるほど路面63からの反射波の影響を抑えつつ検出範囲の拡大を図ることができる。
【0035】
図6を参照して、センサー装置11の水平画角について説明する。
図6に示すように、センサー装置11の水平画角は、照射基準線60に対する車両10の前方側50°に位置する前側境界線65と、照射基準線60に対する車両10の後方側50°に位置する後側境界線66とを有している。なお、センサー装置11は、前側境界線65、後側境界線66、および、前側境界線65と後側境界線66とを結ぶ円弧67、これらによって囲まれる領域が検知範囲である。周辺監視システムにおいては、検知領域に含まれる領域Aを検出範囲として各種の運転支援を行う。なお、センサー装置11は、車両10の斜め前方に位置する領域Aが検知領域に含まれていればよい。そのため、前側境界線65および後側境界線66は、照射基準線60に対する角度が50°に限られるものではない。
【0036】
図7に示すように、センサー装置11は、高さ方向Zからの平面視において、車両10の幅方向Xにおける中央線68からの距離L1が0.9m~1.25mの範囲に照射基準位置Pが位置されるように設置される。
【0037】
言い換えれば、センサー装置11は、高さ方向Zからの平面視において、車両10の幅方向Xにおいて車両10の端面からの距離L2が30mm~50mmの範囲に照射基準位置Pに位置するように設置される。
【0038】
距離L2が30mm以上であることにより、センサー装置11から車両10の後方外側に延びるワイヤーハーネス13Cを車両10の内側に向けて屈曲させたとしてもその屈曲部分に作用する機械的な負荷を抑えることができる。距離L2が50mm以下であることにより、車両10の幅方向Xにおける第1センサー装置11Rと第2センサー装置11Lとの間の空間を有効的に使用することができる。例えば、第1センサー装置11Rと第2センサー装置11Lとの間の空間に、フロントガラスの清掃を目的の1つとして設置される開閉式ステップなどを幅広に配設することができる。
【0039】
センサー装置11は、高さ方向Zからの平面視において、車両10の前後方向Yにおいて車両10の前面からの距離L3が300mmm以下の範囲に照射基準位置Pが位置するように設置される。これにより、車両10の斜め前方を検出範囲とするセンサー装置11に対して車両10の一部が障害物となることが抑えられる。これにより、検出波の一部が車両10で反射されることによる物標の検出精度の低下を抑えることができる。
【0040】
センサー装置11は、車両10の高さ方向Zからの平面視において、照射基準位置Pを通って車両10の前後方向Yに沿って延びる仮想線69に対する車両10の外側への角度θcが50°±3°の範囲に含まれるように設置される。すなわち、角度θcは、センサー装置11の水平画角の1/2を基準角度とした±3°の範囲に含まれるように設置される。こうした構成によれば、各センサー装置11について車両10の斜め前方を検出範囲に設定することができる。
【0041】
図8および
図9を参照して、第1センサー装置11Rのアンテナ部22を覆う第1カバー70Rと、第2センサー装置11Lのアンテナ部22を覆う第2カバー70Lと、について説明する。第1カバー70R及び第2カバー70Lは、走行中の飛び石などからアンテナ部22を保護するとともに、アンテナ部22に対して直接雨や雪が付着することを抑える。第1カバー70Rと第2カバー70Lは、同様の構造を有する部材である。そのため、以下では、第1カバー70Rと第2カバー70Lとを区別することなく単にカバー70という。
【0042】
図8および
図9に示すように、カバー70は、車両10の前方外側に凸な曲面状をなしており、車両10の前方外側からアンテナ部22を覆っている。カバー70は、例えば透明性を有する厚さ3mm~5mmのポリカーボネートで作製される。カバー70の厚さは、
ポリカーボネート製の場合は1.09の整数倍であるとよい。カバー70は、照射基準線60上でのアンテナ部22に対するクリアランスL4が10mm~20mmに設定される。
【0043】
図8に示すように、カバー70は、垂直画角の上側境界線61と、当該上側境界線61との交点P1における法線71と、がなす角度θe1が±10°に設定される。また、カバー70は、垂直画角の下側境界線62と、当該下側境界線62との交点P2における法線72と、がなす角度θe2が±10°に設定される。こうした構成によれば、カバー70による検出波および反射波の減衰を抑えつつアンテナ部22を保護することができる。
【0044】
図9に示すように、カバー70は、高さ方向Zからの平面視において、水平画角の前側境界線65と、当該前側境界線65との交点P3における法線73と、がなす角度θa1が±15°に設定される。また、カバー70は、高さ方向Zからの平面視において、水平画角の後側境界線66と、当該後側境界線66との交点P4における法線74と、がなす角度θa2が±15°に設定される。
【0045】
本実施形態の作用および効果について説明する。
(1)センサー装置11は、高さHが300mm~700mm、車両10の中央線68からの距離L1が0.9m~1.25m、車両10の前面からの距離L3が300mm以下の範囲に照射基準位置Pが位置している。また、センサー装置11は、車両10の高さ方向Zからの平面視において、照射基準線60が車両10の前後方向Yに対する車両10の外側への角度θcが50°±3°に設定される。こうした構成によれば、検出範囲における物標を高い確度のもとで検出することができる。
【0046】
(2)第1センサー装置11Rは、車両10の後方右側からワイヤーハーネス13Cの一端部が差し込み接続される接続部23を有している。第2センサー装置11Lは、車両10の後方左側からワイヤーハーネス13Cの他端部が差し込み接続される接続部23を有している。こうした構成によれば、第1センサー装置11Rと第2センサー装置11Lとの間の空間を有効利用することができる。
【0047】
(3)周辺監視システムは、第1センサー装置11Rの取り付け位置に対して第2センサー装置11Lが取り付け不能に構成されているとともに、第2センサー装置11Lの取り付け位置に対して第1センサー装置11Rが取り付け不能に構成されている。こうした構成によれば、第1センサー装置11Rの取り付け位置と第2センサー装置11Lの取り付け位置とを誤ることがなくなる。
【0048】
(4)カバー70は、高さ方向Zからの平面視において、照射基準線60上でのアンテナ部22に対するクリアランスL4が10mm~20mmであり、かつ、検出範囲の水平画角についての境界線65,66と該境界線65,66に対する法線73,74とがなす角度θa1,θa2が±15°以下に設定されている。こうした構成によれば、センサー装置11のアンテナ部22を保護しつつ、検出範囲に位置する物標をより高い確度のもので検出することができる。
【0049】
(5)カバー70は、検出範囲の垂直画角についての境界線61,62と該境界線61,62に対する法線71,72とがなす角度θe1,θe2が±10°に設定されている。こうした構成によれば、センサー装置11のアンテナ部22を保護しつつ、検出範囲に位置する物標をより高い確度のもので検出することができる。
【0050】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・カバー70は、検出範囲の垂直画角についての境界線61,62と該境界線61,62に対する法線71,72とがなす角度θe1,θe2の少なくとも一方が±10°の範囲を外れていてもよい。
【0051】
・カバー70は、検出範囲の水平画角についての境界線65,66と該境界線65,66に対する法線73,74とがなす角度θa1,θa2の少なくとも一方が±15°の範囲を外れていてもよい。
【0052】
・センサー装置11は、例えば車両10の他の部品よってアンテナ部22が保護可能である場合などには、カバー70を備えていなくともよい。
・第1センサー装置11Rと第2センサー装置11Lにおいて照射基準線60に沿う方向からのアンテナ部22の平面視において照射基準位置Pに対する各貫通孔の相対位置が互いに異なっている場合には、第1および第2干渉部44,45が設けられていなくともよい。こうした構成であっても、接続部23の向きによって第1センサー装置11Rと第2センサー装置11Lとを誤って取り付けることを回避可能である。
【0053】
・第1センサー装置11Rと第2センサー装置11Lは、照射基準線60に沿う方向からのアンテナ部22の平面視において、照射基準位置Pに対する各貫通孔の相対位置が同じであってもよい。こうした場合、車両10に第1および第2干渉部44,45が設けられていることによって、第1センサー装置11Rと第2センサー装置11Lとを誤って取り付けることを回避できる。
【0054】
・第1センサー装置11Rおよび第2センサー装置11Lの少なくとも一方は、車両10の内側からワイヤーハーネス13Cが差し込み接続される接続部を有していてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…車両、10C…キャブ、11…センサー装置、11R…第1センサー装置、11L…第2センサー装置、13…第1通信回路、13C…ワイヤーハーネス、14…第2通信回路、15…制御装置、16R…第1検出範囲、16L…第2検出範囲、17R…第1アンテナ部、17L…第2アンテナ部、18…第1物標、19…第2物標、20…警告装置、20R…第1警報部、20L…第2警報部、21…センサー基板、22…アンテナ部、23…接続部、25…支持板、25a,25b…辺部、26…基板本体、29a,29b…上側取付部、30a,30b…下側取付部、31a,31b…上側貫通孔、32a,32b…下側貫通孔、33…アンテナ面、39a,39b…上側取付部、40a,40b…下側取付部、41a,41b…上側貫通孔、42a,42b…下側貫通孔、44…第1干渉部、45…第2干渉部、60…照射基準線、61…上側境界線、62…下側境界線、63…路面、65…前側境界線、66…後側境界線、68…中央線、69…仮想線、70…カバー、70R…第1カバー、70L…第2カバー、71,72,73,74…法線。