(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/12 20060101AFI20230425BHJP
A61B 1/05 20060101ALI20230425BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
A61B1/12 541
A61B1/05
G02B23/24 A
(21)【出願番号】P 2019068548
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】別所 久徳
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/185554(WO,A1)
【文献】特開2012-050703(JP,A)
【文献】特開2012-034947(JP,A)
【文献】特開平06-327626(JP,A)
【文献】特開2011-217969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 -23/26
H04N 5/222- 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側から順に先端部、湾曲部、及び軟性部を有する挿入部と、
前記先端部に内蔵されており、撮像素子に接続されたドライバICと、
第1端が前記ドライバICの表面に固定され、第2端が前記湾曲部内に配置された放熱索と
を備え
、
前記放熱索は、一端が前記軟性部内に配置されており前記湾曲部を貫通する第1チューブに収容されており、
前記放熱索と前記第1チューブとの間に、前記放熱索よりも短い第2チューブを備え、
該第2チューブは前記放熱索の第1端側に固定されており、且つ、前記放熱索の前記第1チューブの内側に位置する部分と前記第1チューブの内周面との間に介在している内視鏡。
【請求項2】
前記放熱索は、複数の線材を編んで形成されたロープである
請求項
1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記放熱索は、外皮を有する
請求項1
又は2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記ドライバICと、前記放熱索の第1端とを収容し、一方の開口から前記放熱索と、前記ドライバICに接続されたケーブルとが延びるシールドパイプを備え、
前記撮像素子は、前記シールドパイプの他方の開口に配置されており、
前記シールドパイプの内部にモールド樹脂が充填されている
請求項1から
3のいずれか一つに記載の内視鏡。
【請求項5】
筒状の放熱部材と、
前記放熱部材の端面に配置された光源と、
前記放熱部材と前記シールドパイプとを囲む先端筒と、
前記シールドパイプの外面と、前記先端筒の内面との間に配置された樹脂層と
を備える
請求項
4に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば医療分野で、被挿入対象に挿入される挿入部を備える内視鏡が用いられている。挿入部は細長い管状をなす。挿入部の先端側には、光源及び撮像素子が内蔵されている。光源が発した光は被挿入対象の内側を照明し、撮像素子は被挿入対象の内側を撮像する。撮像された被挿入対象の内側の画像は、例えば表示装置に表示される。使用者は、表示された画像を視認することによって、被挿入対象の内側の様子を観察する。
【0003】
特許文献1に記載の内視鏡装置は、発光すると共に発熱するLED(光源)と、LEDが実装されているLED基板と、CCD(撮像素子)に導光する複数の光学レンズとを備える。挿入部は光学系受けと鏡枠とを備える。光学系受けはLED基板及び一の光学レンズを保持している。鏡枠は光学系受けに連接されており、他の光学レンズを保持している。鏡枠から挿入部の基端側に向けて、シート状の放熱部材が延びている。
LEDが発した熱は、LED基板、光学系受け、鏡枠、及び放熱部材にこの順に伝わることによって、挿入部の基端側へ放散される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の内視鏡装置において、鏡枠には筒状のレンズ枠が連設されている。レンズ枠は、レンズ枠の先端側の開口を閉鎖するようにして、更に他の光学レンズを保持している。また、レンズ枠の軸長方向の中央部にはCCDが保持されている。
一般に、撮像素子は光源に比べて熱に弱い。特許文献1には、レンズ枠とレンズ枠に保持されている光学レンズとを熱伝導率の低い材料で形成することによって、LEDが発した熱からCCDを保護することが記載されている。しかしながら、CCD自体の放熱については言及されていない。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、撮像素子を高熱から保護することができる内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態に係る内視鏡は、先端側から順に先端部、湾曲部、及び軟性部を有する挿入部と、前記先端部に内蔵されており、撮像素子に接続されたドライバICと、第1端が前記ドライバICの表面に固定され、第2端が前記湾曲部内に配置された放熱索とを備える。
本実施の形態に係る内視鏡は、先端側から順に先端部、湾曲部、及び軟性部を有する挿入部と、前記先端部に内蔵されており、撮像素子に接続されたドライバICと、第1端が前記ドライバICの表面に固定され、第2端が前記湾曲部内に配置された放熱索とを備え、前記放熱索は、一端が前記軟性部内に配置されており前記湾曲部を貫通する第1チューブに収容されており、前記放熱索と前記第1チューブとの間に、前記放熱索よりも短い第2チューブを備え、該第2チューブは前記放熱索の第1端側に固定されており、且つ、前記放熱索の前記第1チューブの内側に位置する部分と前記第1チューブの内周面との間に介在している。
【0008】
本実施の形態にあっては、ドライバICの表面に放熱索の第1端が固定されている。ドライバICは挿入部の先端部に内蔵されている。放熱索の第2端は挿入部の湾曲部内に配置されている。
撮像素子はドライバICに接続されている。故に、撮像素子が発した熱は、ドライバICを通して放熱索に伝わる。また、ドライバICが発した熱は、放熱索に伝わる。放熱索に伝わった熱は、挿入部の先端部から挿入部の湾曲部へ放散される。この結果、撮像素子を高熱から保護することができる。また、ドライバICを高熱から保護することができる。
【0009】
本実施の形態に係る内視鏡は、前記放熱索は、一端が前記軟性部内に配置されており前記湾曲部を貫通する第1チューブに収容されている。
【0010】
本実施の形態にあっては、放熱索が第1チューブに収容されている。故に、挿入部に配置されている他部材と放熱索とが互いに干渉し合うことが抑制される。
第1チューブの一端は、挿入部の軟性部内に配置されている。第1チューブは湾曲部を貫通している。故に、第1チューブは湾曲部の曲直に追従し、第1チューブ内で放熱索も湾曲部の曲直に追従する。従って、湾曲部の曲直に起因する放熱索の捻じれを抑制することができる。第1チューブの他端は挿入部の先端部に配置されている。
【0011】
本実施の形態に係る内視鏡は、前記放熱索と前記第1チューブとの間に、前記放熱索よりも短い第2チューブを備え、該第2チューブは前記放熱索の第1端側に固定されている。
【0012】
本実施の形態にあっては、放熱索の第1端側と第1チューブとの間に、第2チューブが介在している。故に、第1チューブの内側で放熱索の第1端側が無用に変形又は位置ずれし、ドライバICへの放熱索の固定部分が破損することが抑制される。
【0013】
本実施の形態に係る内視鏡は、前記放熱索は、複数の線材を編んで形成されたロープである。
【0014】
本実施の形態にあっては、放熱索が、複数の線材を編んで形成されたロープである。故に、放熱索の端末処理が容易である。また、放熱索の第1端を構成する複数の線材を解すことによって、放熱索とドライバICとの接触面積を容易に広げることができる。
【0015】
本実施の形態に係る内視鏡は、前記放熱索は、外皮を有する。
【0016】
本実施の形態にあっては、放熱索が外皮を有する。外皮によって、放熱索を例えば絶縁又は補強することができる。
【0017】
本実施の形態に係る内視鏡は、前記ドライバICと、前記放熱索の第1端とを収容し、一方の開口から前記放熱索と、前記ドライバICに接続されたケーブルとが延びるシールドパイプを備え、前記撮像素子は、前記シールドパイプの他方の開口に配置されており、前記シールドパイプの内部にモールド樹脂が充填されている。
【0018】
本実施の形態にあっては、ドライバICと放熱索の第1端とがシールドパイプに収容されている。故に、シールドパイプの外側で発生した熱が、ドライバICに伝わることが抑制される。シールドパイプの一方の開口から、放熱索とドライバICに接続されたケーブルとが延びる。撮像素子は、シールドパイプの他方の開口に配置されている。シールドパイプの内部にモールド樹脂が充填されている。
【0019】
撮像素子が発した熱はドライバIC又はモールド樹脂を通って主に放熱索に伝わるが、ケーブルにも伝わる。ドライバICが発した熱は直接的に、又はモールド樹脂を通って主に放熱索に伝わるが、ケーブルにも伝わる。放熱索又はケーブルに伝わった熱は、放熱索又はケーブルに沿って放散される。
以上の結果、撮像素子及びドライバICを、より確実に高熱から保護することができる。
【0020】
本実施の形態に係る内視鏡は、筒状の放熱部材と、前記放熱部材の端面に配置された光源と、前記放熱部材と前記シールドパイプとを囲む先端筒と、前記シールドパイプの外面と、前記先端筒の内面との間に配置された樹脂層とを備える。
【0021】
本実施の形態にあっては、光源が発した熱が放熱部材に伝わり、放熱部材から先端筒に伝わる。先端筒の内面とシールドパイプの外面との間に樹脂層が配置されているので、先端筒からシールドパイプに熱が伝わることが抑制される。
【発明の効果】
【0022】
本実施の形態の内視鏡によれば、撮像素子を高熱から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】
図2におけるIII-III線による挿入部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0025】
図1は、実施の形態に係る内視鏡の外観図である。
図中1は内視鏡であり、内視鏡1は、上部消化管又は下部消化管向けの軟性鏡である。内視鏡1は、操作部11、コネクタ部12、及び挿入部2を備える。
操作部11は硬質の筐体を有する。操作部11の筐体の外面には、使用者に操作される操作ノブ111が設けられている。また、操作部11の筐体の外面には、鉗子栓112によって閉鎖されたチャンネル入口113が設けられている。
【0026】
コネクタ部12は、ユニバーサルコード121を介して操作部11の一側に接続されている。コネクタ部12から挿入部2に亘り、図示しない電力線及び信号線が配線されている。図示しない電源装置及び表示装置等にコネクタ部12が接続されることによって、内視鏡1の電力線及び信号線が電源装置及び表示装置等に電気的に接続される。
【0027】
挿入部2は細長い管状をなし、操作部11の他側から延びている。以下では、挿入部2の操作部11に近い側/操作部11から遠い側を、基端側/先端側という。挿入部2と操作部11との間には、挿入部2の基端部を保護するための折れ止め部13が設けられている。
挿入部2は、先端側から順に、先端部201、湾曲部202、及び軟性部203を有する。先端部201は最も短く、硬質である。湾曲部202は可撓性を有する。軟性部203は最も長く、柔軟である。
【0028】
図2は、挿入部2の断面図である。
挿入部2の軟性部203は、柔軟な軟性管21で覆われている。
挿入部2の湾曲部202は、可撓性を有し、湾曲/伸直が可能な湾曲管22を備える。湾曲管22は、いわゆる湾曲駒を複数、軸長方向に連接することによって形成されている。湾曲管22を構成している各湾曲駒は、例えばステンレス製である。
湾曲管22の基端部は、軟性管21の先端部に覆われている。
【0029】
湾曲管22には、複数の操作用ワイヤ23,23,…が連結されている。このために、湾曲管22の内面に連結部231が内向きに突設されている。複数の連結部231,231,…が、湾曲管22の軸長方向及び周方向夫々に並設されている。各連結部231は、操作用ワイヤ23の長さ方向の適宜の箇所を保持している。
操作用ワイヤ23は、軟性管21及び湾曲管22夫々の全長に亘って延びる。操作用ワイヤ23,23,…夫々の基端部は操作部11に連結されている(
図1参照)。操作部11の操作ノブ111が操作されることによって、操作用ワイヤ23,23,…が個別に進退する。この結果、湾曲管22が曲直自在に変形する。
【0030】
図3は、
図2におけるIII-III線による挿入部2の断面図である。
図3は、挿入部2の先端部201の拡大断面図でもある。
図2及び
図3に示すように、挿入部2の先端部201は、キャップ24及び先端筒3を備える。
【0031】
図4は、キャップ24及び先端筒3の分解斜視図である。
先端筒3は硬質である。
図2~
図4に示すように、先端筒3は筒本体31,32を備える。筒本体31は有底筒状をなし、例えば真鍮製である。筒本体32は筒状をなし、例えば真鍮製である。筒本体31,32は、筒本体31の底壁311を先端側に向け、筒本体31の基端部に筒本体32の先端部が同軸に外嵌めされることによって、一体化されている。筒本体32の基端部には湾曲管22の先端部が同軸に連接されている。
筒本体31の底壁311の外面には、筒部312が先端側に向けて突設されている。筒部312の内側に位置する底壁311は開口している。
【0032】
キャップ24は有底筒状をなし、例えば合成樹脂製である。
図2に示すように、キャップ24の底壁の内面には、区隔壁241が基端側に向けて突設されている。区隔壁241は、キャップ24の内側を2分割している。
キャップ24の区隔壁241の一面とキャップ24の内周面との間には、先端筒3の筒本体31の筒部312が内嵌めされている。
【0033】
キャップ24の区隔壁241の他面とキャップ24の内周面との間には、チャンネルチューブ25の先端部が配されている。チャンネルチューブ25は筒本体31の底壁311に設けられている貫通孔313(
図4参照)を貫通し、挿入部2の全長に亘る。チャンネルチューブ25の基端部は、
図1に示す操作部11のチャンネル入口113に接続されている。
【0034】
図2及び
図3に示すように、挿入部2はカバーチューブ26を備える。カバーチューブ26は湾曲管22及び先端筒3夫々の外周面を覆っている。
キャップ24の周壁がカバーチューブ26の先端部に内嵌めされることによって、キャップ24の底壁がカバーチューブ26の先端側の開口を閉鎖している。
【0035】
先端部201には撮像ユニット4が収容されている。
図5は、撮像ユニット4の部分断面斜視図である。
図2~
図5に示すように、撮像ユニット4は、断熱筒41、レンズ保持筒42、及び放熱部材43を備える。
図2及び
図3に示すように、断熱筒41は、先端筒3の軸長方向の中央部に配されている。
【0036】
図6は、断熱筒41の断面図である。
図2~
図6に示す断熱筒41は、素子保持筒411及びシールドパイプ412を有する。素子保持筒411及びシールドパイプ412は、素子保持筒411の基端部にシールドパイプ412の先端部が同軸に嵌め合わされることによって、一体化されている。一体化された素子保持筒411及びシールドパイプ412夫々の外周面は、樹脂層413によって覆われている。樹脂層413は断熱性を有し、例えばポリイミドテープである。素子保持筒411は、例えば変性ポリフェニレンエーテル樹脂製である。シールドパイプ412は、例えばステンレス製である。シールドパイプ412の板厚は、例えば0.15mmである。
【0037】
素子保持筒411は、撮像素子44を保持している。
撮像素子44は、例えばCMOSイメージセンサ又はCCDイメージセンサである。撮像素子44は板状をなす。撮像素子44にはカバーレンズ441が一体的に設けられている。カバーレンズ441は、カバーガラス、カラーフィルタ、マイクロレンズ等を有し、撮像素子44の受光面を覆っている。
撮像素子44は、素子保持筒411の基端部に嵌め込まれており、シールドパイプ412の基端側の開口(他方の開口)を閉塞している。
【0038】
断熱筒41の素子保持筒411の先端部には、レンズ保持筒42の基端部が同軸に内嵌めされている。
レンズ保持筒42の先端部、基端部、及び長手方向中央部の複数箇所には、撮像用レンズ421,421,…が嵌め込まれている。レンズ保持筒42の両端の開口は、撮像用レンズ421,421によって閉塞されている。
【0039】
図2~
図5に示す放熱部材43は、肉厚の筒状をなす。放熱部材43は、例えば真鍮製である。放熱部材43は、レンズ保持筒42の長手方向の中途から断熱筒41の素子保持筒411の長手方向の中途に亘って、外嵌めされている。放熱部材43は、放熱部材43の外周面が全体的に先端筒3の筒本体31の筒部312の内周面に接触するようにして、先端筒3の筒本体31の筒部312に内嵌めされている。
【0040】
放熱部材43が先端筒3に内嵌め固定されることによって、放熱部材43に固定されているレンズ保持筒42とレンズ保持筒42に固定されている断熱筒41とが、先端筒3に固定される。
断熱筒41の素子保持筒411及びシールドパイプ412夫々は先端筒3に囲まれている。素子保持筒411及びシールドパイプ412夫々の外面と先端筒3の内面との間に樹脂層413が配されている。
【0041】
放熱部材43には、熱伝導性が高い環状の光源基板45が取り付けられている。具体的には、放熱部材43の先端面に、光源基板45の一面が、例えば熱伝導性が高い接着剤を用いて接着されている。光源基板45の熱伝導率は例えば2.0W/(m・K)である。
光源基板45の他面には、2つの光源451,451が実装されている。各光源451は、例えばLEDである。
【0042】
キャップ24の底壁には、2つの窓242,242が設けられている。窓242,242には照明用レンズ240,240が嵌め込まれている。照明用レンズ240,240は、光源451,451に対向している。
キャップ24の底壁には、開口243が設けられている。開口243は、窓242,242の間に位置している。開口243には、レンズ保持筒42の先端部が同軸に内嵌めされている。
キャップ24の底壁には、チャンネル出口244が設けられている。チャンネル出口244は、チャンネルチューブ25の基端側の開口に連通している。
【0043】
図2、
図3、
図5、及び
図6に示すように、断熱筒41のシールドパイプ412には、ドライバIC46が収容されている。
ドライバIC46は、例えばCMOS-ICである。ドライバIC46は、フレキシブルプリント基板461を介して撮像素子44に電気的に接続されており、撮像素子44を駆動する。
【0044】
ドライバIC46は、フレキシブルプリント基板461を介してケーブル47の一端部に電気的に接続されている。ケーブル47は、前述の電力線及び信号線がシースに覆われた構成であり、軟性管21及び湾曲管22夫々の変形に追従可能な柔軟性を有する。ケーブル47は、シールドパイプ412の基端側の開口(一方の開口)から湾曲管22の基端側に向けて伸び、コネクタ部12に亘る。
【0045】
ケーブル47が有する電力線の一部は、ケーブル47の先端部から引き出されて、断熱筒41及び放熱部材43を貫通し、光源基板45を介して光源451,451に接続されている(不図示)。
ケーブル47は、前述の電源装置から撮像素子44及び光源451,451への給電、及び撮像素子44から前述の表示装置への信号の出力等に用いられる。
【0046】
図3、
図5、及び
図6に示すように、撮像ユニット4は放熱索51を備える。
放熱索51は、金属製(例えば銅製)の複数の線材を編んで形成されたロープである。放熱索51は外皮511を有する。外皮511は、放熱索51の略全長に亘って放熱索51の表面を覆う。外皮511は絶縁性を有し、例えばシリコン製の被膜である。外皮511には、放熱索51を補強する効果もある。
【0047】
ただし、放熱索51の第1端512は外皮511に覆われておらず、剥き出しである。第1端512は、例えば熱伝導性が高い接着剤によって、ドライバIC46のケーシングの表面に固定されている。第1端512とドライバIC46との接触面積の増大のために、第1端512における放熱索51は、線材が解かれて扁平な形状にしてある。
【0048】
放熱索51の第1端512はシールドパイプ412に収容されている。放熱索51は、シールドパイプ412の基端側の開口から湾曲管22の基端側に向けて伸びる。放熱索51の第2端は、湾曲部202内に配置されている(
図1参照)。
【0049】
放熱索51は、第1チューブ52に収容されている。第1チューブ52は放熱索51よりも長く、放熱索51が遊びを有して挿通されている。例えば、放熱索51の長さは100mmであり、第1チューブ52の長さは300mmである。
第1チューブ52は湾曲管22を貫通している。第1チューブ52の先端部から、放熱索51の第1端512が突出している。第1チューブ52の先端部は、シールドパイプ412の基端部の近傍に配置されている。第1チューブ52の基端部は、軟性部203内に配置されている(
図1参照)。
【0050】
放熱索51の第1端512側と第1チューブ52の先端部との間に、第2チューブ53が介在している。第2チューブ53は放熱索51よりも短く、放熱索51の第1端512に隣り合うようにして、放熱索51に固定されている。例えば、第2チューブ53の長さは10mmである。
【0051】
第2チューブ53は、第1端512の近傍の放熱索51と第1チューブ52との間隙を埋めている。このため、第1端512の近傍の放熱索51が第1チューブ52の内側で無用に変形又は位置ずれすることが抑制される。故に、放熱索51が変形又は位置ずれしたせいで第1端512とドライバIC46との固定部分が破損することが抑制される。
なお、放熱索51と第1チューブ52との間の間隙が十分に小さい場合、第2チューブ53は省略されてもよい。
【0052】
図2に示すように、シールドパイプ412の内部にはモールド樹脂48が充填されている。
図2において、モールド樹脂48は破線のハッチングで示されている。
図3、
図5、及び
図6におけるモールド樹脂48の図示は省略されている。
モールド樹脂48の絶縁性及び熱伝導性は高い。モールド樹脂48の熱伝導率は例えば2.4W/(m・K)である。モールド樹脂48は、例えば熱伝導性フィラーが配合された高熱伝導性樹脂である。モールド樹脂48によって、ドライバIC46とフレキシブルプリント基板461と放熱索51の第1端512とケーブル47のフレキシブルプリント基板461に接続されている部分とがモールドされている。
【0053】
図6に示すように、シールドパイプ412の周面には、2つの貫通孔414,414が設けられている。貫通孔414,414は、シールドパイプ412の基端部において、互いに対向配置されている。一体化された素子保持筒411及びシールドパイプ412を樹脂層413で覆う前に、貫通孔414,414を通してモールド樹脂48が充填される。シールドパイプ412の先端側の開口は撮像素子44によって閉塞されているので、モールド樹脂48の充填に伴い、シールドパイプ412の中の空気はシールドパイプ412の基端側の開口から抜け出る。以上の結果、シールドパイプ412内にモールド樹脂48を隙間なく充填することができる。
【0054】
図1に示す内視鏡1の使用者は、挿入部2を先端側から消化管に挿入する。軟性部203は、消化管の形状に応じて柔軟に変形する。
使用者は、操作ノブ111を操作することによって、湾曲管22を曲直させる。この結果、湾曲部202が曲直するので、挿入部2の先端部201が、使用者が所望する方向に向く。
光源451,451が発した光は、照明用レンズ240,240を通って消化管の内側を照明する。
【0055】
撮像素子44は、消化管の内側を撮像する。更に詳細には、消化管の内側にて反射した光が、撮像用レンズ421,421,…を通って撮像素子44に入射する。撮像素子44は、入射した光に応じた電気信号を、フレキシブルプリント基板461を介してドライバIC46に出力する。ドライバIC46は、入力された電気信号を、ケーブル47及びコネクタ部12を介して内視鏡1の外部(例えば表示装置)に出力する。
【0056】
表示装置は、入力された電気信号に応じた画像を表示する。表示された画像は、消化管の内側の様子を示している。使用者は、表示された画像を視認することによって、消化管の内側の様子を観察する。
使用者は、操作部11の鉗子栓112を介して、チャンネル入口113から図示しない処置具をチャンネルチューブ25に挿入する。処置具の先端部は、チャンネルチューブ25を通ってキャップ24のチャンネル出口244から消化管の内側に出る。使用者は、消化管の内側の様子を観察しながら、処置具を用いて適切な処置(例えば検体の採取)を行なう。
【0057】
光源451,451は発熱する。光源451,451が発した熱は、光源基板45、放熱部材43、先端筒3、及び湾曲管22をこの順に伝わって、湾曲管22の基端側へ放散される。或いは、光源451,451が発した熱は、先端筒3又は湾曲管22からカバーチューブ26を通って内視鏡1の外部に放散される。この結果、光源451,451を高熱から保護することができる。
なお、湾曲管22における熱伝導性を高めるために、例えば湾曲管22の表面にシート状の放熱部材を配してもよい。
【0058】
撮像素子44及びドライバIC46は発熱する。
撮像素子44が発した熱は、フレキシブルプリント基板461を通ってドライバIC46に伝わり、ドライバIC46から主に放熱索51に伝わるが、ケーブル47にも伝わる。
ドライバIC46が発した熱は、主に放熱索51に伝わるが、ケーブル47にも伝わる。
或いは、撮像素子44(又はドライバIC46)が発した熱は、モールド樹脂48を通って放熱索51又はケーブル47に伝わる。
【0059】
放熱索51(又はケーブル47)に伝わった熱は、放熱索51(又はケーブル47)に沿って、放熱索51(又はケーブル47)の基端側へ放散される。
一般に、撮像素子44及びドライバIC46は光源451よりも熱に弱い。しかしながら、光源451の放熱経路と撮像素子44の放熱経路との間には断熱筒41が介在している。故に、光源451の放熱経路を通る熱が、撮像素子44及びドライバIC46に伝わることを抑制することができる。
以上の結果、撮像素子44及びドライバIC46を高熱から保護することができる。
【0060】
放熱索51は第1チューブ52によって保護されている。故に、挿入部2に配置されている他部材(例えばチャンネルチューブ25又はケーブル47)と放熱索51とが互いに干渉し合うことが抑制される。
第1チューブ52は湾曲部202を貫通している。故に、第1チューブ52は湾曲部202の曲直に追従し、第1チューブ52内で放熱索51も湾曲部202の曲直に追従する。従って、湾曲部202の曲直に起因する放熱索51の捻じれを抑制することができる。
放熱索51と第1チューブ52との間には空隙が存在するので、放熱索51に伝達した熱が第1チューブ52の外側に伝わることが抑制される。
【0061】
なお、断熱筒41を構成する素子保持筒411及びシールドパイプ412夫々の熱伝導性が十分に低い場合、樹脂層413は省略されてもよい。
放熱索51の長さは100mmに限定されず、例えば50mmでもよい。放熱索51が短いほど経済性が高く、放熱索51が長いほど放熱効果が向上する。ただし、放熱索51の長さが100mmを越えると、放熱効果は劇的には向上しないことが実験的に分かっている。
【0062】
放熱索51は編み線に限定されず、例えば撚り線又は単線でもよい。しかしながら、撚り線に比べて編み線の放熱索51には基端側の端末処理が不要という利点がある。また、単線に比べて編み線の放熱索51にはドライバIC46との接触面積を広げやすいという利点がある。
放熱索51は金属製に限定されず、例えばカーボンファイバ製でもよい。
内視鏡1は、医療分野で用いられるものに限定されない。
【0063】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 内視鏡
2 挿入部
201 先端部
202 湾曲部
203 軟性部
243 開口
3 先端筒
412 シールドパイプ
413 樹脂層
43 放熱部材
44 撮像素子
451 光源
46 ドライバIC
47 ケーブル
48 モールド樹脂
51 放熱索
511 外皮
512 第1端
52 第1チューブ
53 第2チューブ