(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置、RFコイル及び磁気共鳴イメージング方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
A61B5/055 350
A61B5/055 ZDM
(21)【出願番号】P 2019074087
(22)【出願日】2019-04-09
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2018077462
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 聡志
(72)【発明者】
【氏名】冨羽 貞範
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-131415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0213941(US,A1)
【文献】米国特許第06252403(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0124064(US,A1)
【文献】国際公開第2015/056494(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波磁場の送信に用いられる第1のエレメント部と、前記高周波磁場を受けて被検体から発生する磁気共鳴信号の受信に用いられる第2のエレメント部とを有する、架台に収容された全身用RFコイルを備え、
前記第1のエレメント部は、
円筒状に形成された誘電体の基材と、2つのエンドリングと、当該エンドリングの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数のラングとを
含むバードケージ型のRFコイルであり、
前記複数のラングのそれぞれは、前記基材の外周面上に軸方向に沿って配置された細長い矩形状の導体であり、
前記複数のラングは、第1のラング及び第2のラングを含み、
前記第2のエレメント部は、
それぞれがアンテナ導体及びグランド導体を含む第1のマイクロストリップアンテナ
及び第2のマイクロストリップアンテナを含み、
前記第1のマイクロストリップアンテナ及び前記第2のマイクロストリップアンテナの前記アンテナ導体は、それぞれ前記基材の内周面上における前記第1のラング及び前記第2のラングの内側の位置に配置され、かつ、静磁場の磁束に沿った第1の方向に沿って異なる位置に配置されており、
前記第1のラング及び前記第2のラングは、それぞれ前記第1のマイクロストリップアンテナ及び前記第2のマイクロストリップアンテナのグランド導体となっている
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第2のエレメント部は、
前記第1の方向に直交する方向を第2の方向とし、
前記第1の方向及び
前記第2の方向それぞれに直交する方向を第3の方向とした場合に、前記第2の方向及び前記第3の方向に沿った面内の感度分布が前記第1の方向の位置によって異なるように前記
第1のマイクロストリップアンテナ
及び前記第2のマイクロストリップアンテナの前記アンテナ導体が配置されて構成されている、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記第2のエレメント部に含まれる前記
第1のマイクロストリップアンテナ
及び前記第2のマイクロストリップアンテナの前記アンテナ導体は、
それぞれ前記第1
のラング
及び前記第2のラングに沿って配置さ
れている、
請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記第1のエレメント部は、さらに、前記高周波磁場
を受けて被検体から発生する前記磁気共鳴信号の受信に用いられる、
請求項1~3のいずれか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第2のエレメント部は、さらに、前記高周波磁場の送信に用いられる、
請求項1~4のいずれか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記全身用RFコイルは、前記第1のエレメント部が使用される際に、
前記第1のラング及び前記第2のラングが、それぞれ前記第2のエレメント部
に含まれる前記第1のマイクロストリップアンテナ及び前記第2のマイクロストリップアンテナの前記アンテナ導体に短絡される、
請求項1~5のいずれか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記第2のエレメント部
に含まれる前記第1のマイクロストリップアンテナ及び前記第2のマイクロストリップアンテナの前記アンテナ導体は、第1のエレメント部
に含まれる前記複数のラングより前記第1の方向の長さが短く、かつ、前記第1の方向の異なる位置に配置され
ている、
請求項
1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記第2のエレメント部
に含まれる前記第1のマイクロストリップアンテナ及び前記第2のマイクロストリップアンテナの前記アンテナ導体は、前記第1の方向の長さが異
なる、
請求項
1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記
複数のラング
それぞれは、前記第1の方向に対して斜めに配置されており、
前記第2のエレメント部に含まれる
前記第1のマイクロストリップアンテナ
及び前記第2のマイクロストリップアンテナの前記アンテナ導体は、
それぞれ前記第1
のラング及び前記第2のラングに沿って配置さ
れている、
請求項
1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記第2のエレメント部に含まれる
に含まれる前記第1のマイクロストリップアンテナ
及び前記第2のマイクロストリップアンテナそれぞれの感度分布を利用してパラレルイメージングを行う制御部をさらに備える、
請求項
1~
9のいずれか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記第1のマイクロストリップアンテナ
及び前記第2のマイクロストリップアンテナそれぞれの前記第1の方向に沿った感度分布を利用して前記パラレルイメージングを行う、
請求項
10に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
高周波磁場の送信に用いられる第1のエレメント部と、前記高周波磁場を受けて被検体から発生する磁気共鳴信号の受信に用いられる第2のエレメント部とを有するRFコイルであって、
前記第1のエレメント部は、
円筒状に形成された誘電体の基材と、2つのエンドリングと、当該エンドリングの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数のラングとを
含むバードケージ型のRFコイルであり、
前記複数のラングのそれぞれは、前記基材の外周面上に軸方向に沿って配置された細長い矩形状の導体であり、
前記複数のラングは、第1のラング及び第2のラングを含み、
前記第2のエレメント部は、
それぞれがアンテナ導体及びグランド導体を含む第1のマイクロストリップアンテナ
及び第2のマイクロストリップアンテナを含み、
前記第1のマイクロストリップアンテナ及び前記第2のマイクロストリップアンテナの前記アンテナ導体は、それぞれ前記基材の内周面上における前記第1のラング及び前記第2のラングの内側の位置に配置され、かつ、静磁場の磁束に沿った第1の方向に沿って異なる位置に配置されており、
前記第1のラング及び前記第2のラングは、それぞれ前記第1のマイクロストリップアンテナ及び前記第2のマイクロストリップアンテナのグランド導体となっている
RFコイル。
【請求項13】
架台に収容された全身用RFコイルを備え、当該全身用RFコイルは、2つのエンドリングと、当該エンドリングの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数のラングとを有するバードケージ型のRFコイルである第1のエレメント部と、複数のマイクロストリップアンテナを含む第2のエレメント部とを有し、前記第1のエレメント部は、
円筒状に形成された誘電体の基材と、2つのエンドリングと、当該エンドリングの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数のラングとを
含むバードケージ型のRFコイルであり、
前記複数のラングのそれぞれは、前記基材の外周面上に軸方向に沿って配置された細長い矩形状の導体であり、前記複数のラングは、第1のラング及び第2のラングを含み、前記第2のエレメント部は、
それぞれがアンテナ導体及びグランド導体を含む第1のマイクロストリップアンテナ
及び第2のマイクロストリップアンテナを含み、前記第1のマイクロストリップアンテナ及び前記第2のマイクロストリップアンテナの前記アンテナ導体は、それぞれ前記基材の内周面上における前記第1のラング及び前記第2のラングの内側の位置に配置され、かつ、静磁場の磁束に沿った第1の方向に沿って異なる位置に配置されており、前記第1のラング及び前記第2のラングは、それぞれ前記第1のマイクロストリップアンテナ及び前記第2のマイクロストリップアンテナのグランド導体となっている磁気共鳴イメージング装置によって実行される磁気共鳴イメージング方法であって、
パラレルイメージング用のパルスシーケンスに基づいて、前記第1のエレメント部を用いて高周波磁場を送信し、前記高周波磁場を受けて被検体から発生する磁気共鳴信号を前記第2のエレメント部を用いて受信することで、前記
第1のマイクロストリップアンテナ
及び前記第2のマイクロストリップアンテナそれぞれごとに、位相エンコード方向に間引かれた第1のk空間データを収集し、
前記
第1のマイクロストリップアンテナ
と前記第2のマイクロストリップアンテナとの間の感度差を利用して前記第1のk空間データにおける折り返しを展開することで、画像を生成する
ことを含む、磁気共鳴イメージング方法。
【請求項14】
感度分布計測用のパルスシーケンスに基づいて、前記第1のエレメント部を用いて高周波磁場を送信し、前記高周波磁場を受けて被検体から発生する磁気共鳴信号を前記第2のエレメント部を用いて受信することで、前記
第1のマイクロストリップアンテナ
前記第2のマイクロストリップアンテナそれぞれごとに第2のk空間データを収集し、
前記第2のk空間データに基づいて、前記
第1のマイクロストリップアンテナ
前記第2のマイクロストリップアンテナそれぞれごとに、当該マイクロストリップアンテナの感度分布を示す第1の感度マップを生成する
ことをさらに含み、
前記
第1のマイクロストリップアンテナ
前記第2のマイクロストリップアンテナそれぞれごとに、前記第1の感度マップを用いて、前記第1のk空間データから生成された画像データ上で折り返しを展開して、前記画像を生成する、
請求項
13に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項15】
前記
第1のマイクロストリップアンテナ
前記第2のマイクロストリップアンテナそれぞれごとに、k空間の中心部分のデータを含むように、前記第1のk空間データを収集し、
前記
第1のマイクロストリップアンテナ
前記第2のマイクロストリップアンテナそれぞれごとに収集された前記第1のk空間データ間で信号値の重み付け加算を行うことによって前記第1のk空間データ上で折り返しを展開して、前記画像を生成する
請求項
13に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項16】
感度補正用のパルスシーケンスに基づいて、前記第1のエレメント部を用いて高周波磁場を送信し、前記高周波磁場を受けて被検体から発生する磁気共鳴信号を前記第1のエレメント部を用いて受信することで、第3のk空間データを収集し、
前記第3のk空間データに基づいて、前記第1のエレメント部の感度分布を示す第2の感度マップを生成し、
前記第2の感度マップを用いて、前記画像における不均一性を補正する感度補正を行う
ことをさらに含む、
請求項
13~
15のいずれか1つに記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項17】
高周波磁場の送信に用いられる第1のエレメント部と、前記高周波磁場を受けて被検体から発生する磁気共鳴信号の受信に用いられる第2のエレメント部とを有する、架台に収容された全身用RFコイルを備え、
前記第1のエレメント部は、2つのエンドリングと、当該エンドリングの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数のラングとを有するバードケージ型のRFコイルであり、
前記第2のエレメント部は、静磁場の磁束に沿った方向を第1の方向とし、当該第1の方向に直交する方向を第2の方向とし、当該第1の方向及び前記第2の方向それぞれに直交する方向を第3の方向とした場合に、前記第2の方向及び前記第3の方向に沿った面内の感度分布が前記第1の方向の位置によって異なるように配置された複数のマイクロストリップアンテナを含み、
前記複数のマイクロストリップアンテナは、前記第1のエレメント部より前記第1の方向の長さが短く、かつ、前記第1の方向の異なる位置に配置されている
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項18】
高周波磁場の送信に用いられる第1のエレメント部と、前記高周波磁場を受けて被検体から発生する磁気共鳴信号の受信に用いられる第2のエレメント部とを有する、架台に収容された全身用RFコイルを備え、
前記第1のエレメント部は、2つのエンドリングと、当該エンドリングの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数のラングとを有するバードケージ型のRFコイルであり、
前記第2のエレメント部は、静磁場の磁束に沿った方向を第1の方向とし、当該第1の方向に直交する方向を第2の方向とし、当該第1の方向及び前記第2の方向それぞれに直交する方向を第3の方向とした場合に、前記第2の方向及び前記第3の方向に沿った面内の感度分布が前記第1の方向の位置によって異なるように配置された複数のマイクロストリップアンテナを含み、
前記複数のマイクロストリップアンテナは、前記第1の方向の長さが異なる
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項19】
高周波磁場の送信に用いられる第1のエレメント部と、前記高周波磁場を受けて被検体から発生する磁気共鳴信号の受信に用いられる第2のエレメント部とを有するRFコイルであって、
前記第1のエレメント部は、2つのエンドリングと、当該エンドリングの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数のラングとを有するバードケージ型のRFコイルであり、
前記第2のエレメント部は、静磁場の磁束に沿った方向を第1の方向とし、当該第1の方向に直交する方向を第2の方向とし、当該第1の方向及び前記第2の方向それぞれに直交する方向を第3の方向とした場合に、前記第2の方向及び前記第3の方向に沿った面内の感度分布が前記第1の方向の位置によって異なるように配置された複数のマイクロストリップアンテナを含み、
前記複数のマイクロストリップアンテナは、前記第1のエレメント部より前記第1の方向の長さが短く、かつ、前記第1の方向の異なる位置に配置されている
RFコイル。
【請求項20】
高周波磁場の送信に用いられる第1のエレメント部と、前記高周波磁場を受けて被検体から発生する磁気共鳴信号の受信に用いられる第2のエレメント部とを有するRFコイルであって、
前記第1のエレメント部は、2つのエンドリングと、当該エンドリングの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数のラングとを有するバードケージ型のRFコイルであり、
前記第2のエレメント部は、静磁場の磁束に沿った方向を第1の方向とし、当該第1の方向に直交する方向を第2の方向とし、当該第1の方向及び前記第2の方向それぞれに直交する方向を第3の方向とした場合に、前記第2の方向及び前記第3の方向に沿った面内の感度分布が前記第1の方向の位置によって異なるように配置された複数のマイクロストリップアンテナを含み、
前記複数のマイクロストリップアンテナは、前記第1の方向の長さが異なる
RFコイル。
【請求項21】
架台に収容された全身用RFコイルを備え、当該全身用RFコイルは、2つのエンドリングと、当該エンドリングの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数のラングとを有するバードケージ型のRFコイルである第1のエレメント部と、静磁場の磁束に沿った方向を第1の方向とし、当該第1の方向に直交する方向を第2の方向とし、当該第1の方向及び前記第2の方向それぞれに直交する方向を第3の方向とした場合に、前記第2の方向及び前記第3の方向に沿った面内の感度分布が前記第1の方向の位置によって異なるように配置された複数のマイクロストリップアンテナを含む第2のエレメント部とを有し、前記複数のマイクロストリップアンテナは、前記第1のエレメント部より前記第1の方向の長さが短く、かつ、前記第1の方向の異なる位置に配置されている磁気共鳴イメージング装置によって実行される磁気共鳴イメージング方法であって、
パラレルイメージング用のパルスシーケンスに基づいて、前記第1のエレメント部を用いて高周波磁場を送信し、前記高周波磁場を受けて被検体から発生する磁気共鳴信号を前記第2のエレメント部を用いて受信することで、前記マイクロストリップアンテナごとに、位相エンコード方向に間引かれた第1のk空間データを収集し、
前記マイクロストリップアンテナ間の感度差を利用して前記第1のk空間データにおける折り返しを展開することで、画像を生成する
ことを含む、磁気共鳴イメージング方法。
【請求項22】
架台に収容された全身用RFコイルを備え、当該全身用RFコイルが、2つのエンドリングと、当該エンドリングの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数のラングとを有するバードケージ型のRFコイルである第1のエレメント部と、静磁場の磁束に沿った方向を第1の方向とし、当該第1の方向に直交する方向を第2の方向とし、当該第1の方向及び前記第2の方向それぞれに直交する方向を第3の方向とした場合に、前記第2の方向及び前記第3の方向に沿った面内の感度分布が前記第1の方向の位置によって異なるように配置された複数のマイクロストリップアンテナを含む第2のエレメント部とを有し、前記複数のマイクロストリップアンテナは、前記第1の方向の長さが異なる磁気共鳴イメージング装置によって実行される磁気共鳴イメージング方法であって、
パラレルイメージング用のパルスシーケンスに基づいて、前記第1のエレメント部を用いて高周波磁場を送信し、前記高周波磁場を受けて被検体から発生する磁気共鳴信号を前記第2のエレメント部を用いて受信することで、前記マイクロストリップアンテナごとに、位相エンコード方向に間引かれた第1のk空間データを収集し、
前記マイクロストリップアンテナ間の感度差を利用して前記第1のk空間データにおける折り返しを展開することで、画像を生成する
ことを含む、磁気共鳴イメージング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置、RFコイル及び磁気共鳴イメージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置は、静磁場中に置かれた被検体に高周波磁場を印加し、当該高周波磁場の影響によって被検体から発生した磁気共鳴信号に基づいて被検体内の画像を生成する装置である。
【0003】
このような磁気共鳴イメージング装置において、撮像時間を短縮するための技術として、パラレルイメージングが知られている。パラレルイメージングは、複数のコイルエレメントを有するアレイコイルを用いた撮像法であり、アレイコイルに含まれる各コイルエレメントの感度分布を利用することで、撮像の高速化を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-275164号公報
【文献】特開2005-270674号公報
【文献】特開2005-523094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、アレイコイルを使用せずに、RF磁場の均一性を担保したまま、パラレルイメージングを行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るMRI装置は、高周波磁場の送信に用いられる第1のエレメント部と、前記高周波磁場を受けて被検体から発生する磁気共鳴信号の受信に用いられる第2のエレメント部とを有する、架台に収容された全身用RFコイルを備える。前記第1のエレメント部は、2つのエンドリングと、当該エンドリングの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数のラングとを有するバードケージ型のRFコイルである。前記第2のエレメント部は、マイクロストリップアンテナである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るWBコイルが有する第1のエレメント部の構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るWBコイルが有する第2のエレメント部の構成例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るWBコイルが有する送受信切替回路の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係るWBコイルの構成例を示す側面図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態に係るWBコイルの構成例を示す側面図である。
【
図7】
図7は、第4の実施形態に係るWBコイルの構成例を示す側面図である。
【
図8】
図8は、第5の実施形態に係るMRI装置によって実行されるパラレルイメージングの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第5の実施形態に係るMRI装置によって実行されるパラレルイメージングの他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、MRI装置、RFコイル及びMRI方法の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
【0010】
例えば、
図1に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、全身(Whole Body:WB)コイル4、寝台5、送信回路6、受信回路7、高周波(Radio Frequency:RF)シールド8、架台9、インタフェース10、ディスプレイ11、記憶回路12、及び処理回路13~16を備える。
【0011】
静磁場磁石1は、被検体Sが配置される撮像空間に静磁場を発生させる。具体的には、静磁場磁石1は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、円筒内に配置された撮像空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された冷却容器と、当該冷却容器内に充填された冷却材(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石等の磁石とを有する。ここで、例えば、静磁場磁石1は、永久磁石を用いて静磁場を発生させるものであってもよい。
【0012】
傾斜磁場コイル2は、静磁場磁石1の内側に配置されており、被検体Sが配置される撮像空間に複数の軸方向に沿って傾斜磁場を発生させる。具体的には、傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、円筒内に配置された撮像空間に、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を発生させる。ここで、X軸、Y軸、及びZ軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、Z軸は、傾斜磁場コイル2の円筒の軸に一致し、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束に沿って設定される。また、X軸は、Z軸に直交する水平方向に沿って設定され、Y軸は、Z軸及びX軸に直交する鉛直方向に沿って設定される。
【0013】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給することで、傾斜磁場コイル2の内側の空間に、X軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を発生させる。このように、傾斜磁場電源3がX軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を発生させることで、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることができる。ここで、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った各軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
【0014】
リードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場の各傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳され、被検体Sから発生する磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号に空間的な位置情報を付与する。リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、MR信号にリードアウト方向に沿った位置情報を付与する。位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、MR信号に位相エンコード方向の位置情報を付与する。スライス傾斜磁場は、MR信号にスライス方向に沿った位置情報を付与する。例えば、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させるために用いられる。
【0015】
WBコイル4は、傾斜磁場コイル2の内側に配置されており、被検体Sが配置される撮像空間にRF磁場を印加する送信コイルの機能と、当該RF磁場の影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信する受信コイルの機能とを有する全身用RFコイルである。具体的には、WBコイル4は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、送信回路6から供給されるRFパルス信号に基づいて、円筒内に配置された撮像空間にRF磁場を印加する。また、WBコイル4は、RF磁場の影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。
【0016】
寝台5は、被検体Sが載置される天板51を備え、被検体Sの撮像が行われる際に、被検体Sが載置された天板51を撮像空間に移動する。例えば、寝台5は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置されている。
【0017】
送信回路6は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有のラーモア周波数に対応するRFパルス信号をWBコイル4に出力する。具体的には、送信回路6は、パルス発生器、RF発生器、変調器、及びRFアンプを有する。パルス発生器は、RFパルス信号の波形を生成する。RF発生器は、共鳴周波数のRF信号を発生する。変調器は、RF発生器によって発生したRF信号の振幅をパルス発生器によって発生した波形で変調することで、RFパルス信号を生成する。RFアンプは、変調器によって発生したRFパルス信号を増幅してWBコイル4に出力する。
【0018】
受信回路7は、WBコイル4によって受信されたMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。具体的には、受信回路7は、プリアンプ、検波器、及びA/D(Analog/Digital)変換器を有する。プリアンプは、WBコイル4から出力されるMR信号を増幅する。検波器は、プリアンプによって増幅されたMR信号から共鳴周波数の成分を差し引いたアナログ信号を検波する。A/D変換器は、検波器によって検波されたアナログ信号をデジタル信号に変換することでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。
【0019】
RFシールド8は、傾斜磁場コイル2とWBコイル4との間に配置されており、WBコイル4によって発生するRF磁場から傾斜磁場コイル2を遮蔽する。具体的には、RFシールド8は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、傾斜磁場コイル2の内周側の空間に、WBコイル4の外周面を覆うように配置されている。
【0020】
架台9は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、WBコイル4及びRFシールド8を収容している。具体的には、架台9は、円筒状に形成された中空のボアBを有しており、ボアBを囲むように静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、WBコイル4及びRFシールド8を配置した状態で、それぞれを収容している。ここで、架台9が有するボアBの内側の空間が、被検体Sの撮像が行われる際に被検体Sが配置される撮像空間となる。
【0021】
なお、ここでは、MRI装置100が、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及びWBコイル4がそれぞれ略円筒状に形成された、いわゆるトンネル型の構成を有する場合の例を説明するが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置100は、被検体Sが配置される撮像空間を挟んで対向するように一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイル及び一対のRFコイルを配置した、いわゆるオープン型の構成を有していてもよい。
【0022】
インタフェース10は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、インタフェース10は、処理回路16に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路16に出力する。例えば、インタフェース10は、撮像条件や関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、インタフェース10は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路もインタフェース10の例に含まれる。
【0023】
ディスプレイ11は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ11は、処理回路16に接続されており、処理回路16から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ11は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0024】
記憶回路12は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路12は、MR信号データや画像データを記憶する。例えば、記憶回路12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0025】
処理回路13は、寝台制御機能131を有する。寝台制御機能131は、制御用の電気信号を寝台5へ出力することで、寝台5の動作を制御する。例えば、寝台制御機能131は、インタフェース10を介して、天板51を長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板51を移動するように、寝台5が有する天板51の移動機構を動作させる。
【0026】
処理回路14は、データ収集機能141を有する。データ収集機能141は、傾斜磁場電源3、送信回路6及び受信回路7を駆動することで、被検体SのMR信号データを収集する。具体的には、データ収集機能141は、処理回路16から出力されるシーケンス実行データに基づいて各種のパルスシーケンスを実行することで、MR信号データを収集する。ここで、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給する電流の強さ、送信回路6がWBコイル4に供給するRFパルス信号の強さや供給タイミング、受信回路7がMR信号を検出する検出タイミング等を定義した情報である。そして、データ収集機能141は、各種パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路7からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路12に記憶させる。なお、データ収集機能141によって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路12に記憶される。
【0027】
処理回路15は、画像生成機能151を有する。画像生成機能151は、記憶回路12に記憶されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能151は、データ収集機能141によって記憶回路12に記憶されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理、即ち、フーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像を生成する。また、画像生成機能151は、生成した画像の画像データを記憶回路12に記憶させる。
【0028】
処理回路16は、主制御機能161を有する。主制御機能161は、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、主制御機能161は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をディスプレイ11に表示する。そして、主制御機能161は、インタフェース10を介して受け付けられた入力操作に応じて、MRI装置100が有する各構成要素を制御する。例えば、主制御機能161は、インタフェース10を介して操作者から撮像条件の入力を受け付ける。そして、主制御機能161は、受け付けた撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成し、当該シーケンス実行データを処理回路14に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、例えば、主制御機能161は、操作者からの要求に応じて、記憶回路12から画像データを読み出してディスプレイ11に出力する。
【0029】
ここで、上述した処理回路13~16は、例えば、プロセッサによって実現される。この場合に、各処理回路が有する処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路12に記憶される。各処理回路は、記憶回路12から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。ここで、各処理回路は、複数のプロセッサによって構成され、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、各処理回路が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、ここでは、単一の記憶回路12が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0030】
以上、本実施形態に係るMRI装置100の全体的な構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係るMRI装置100は、パラレルイメージングを行う機能を有する。
【0031】
一般的に、MRI装置では、複数のコイルエレメントを有するアレイコイルを患者(被検体)に装着して撮像が行われるが、アレイコイルのセッティング作業は煩雑になり易く時間がかかる場合や、アレイコイルを体に密着させるため患者が不快感を受ける場合がある。一方、MRI装置に内蔵されたバードケージ型のWBコイルだけを用いる場合には、この問題は発生しないが、パラレルイメージングを行うことができない。これに対し、例えば、パラレルイメージング用にコイルエレメントを複数配置すると、コイルエレメントごとにRF磁場を送信することになるため、RF磁場の均一性が確保できない。これらを両立させるために、例えば、均一なRF磁場を発生させるように配置されたコイルエレメントと、パラレルイメージング用のコイルエレメントとを組み合わせて使用することも考えられるが、単純にコイルエレメントを配置するとお互いのエレメント間のデカップリングを行うことが難しくなる。
【0032】
このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100は、アレイコイルを使用せずに、RF磁場の均一性を担保したまま、パラレルイメージングを行うことができるように構成されている。
【0033】
具体的には、本実施形態では、WBコイル4が、送信用又は送受信用の第1のエレメント部と、受信用又は送受信用の複数の第2のエレメント部とを有する。ここで、本実施形態では、第1のエレメント部は、2つのエンドリングと、当該エンドリングの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数のラングとを有するバードケージ型のRFコイルであり、第2のエレメント部は、それぞれが第1のエレメント部の一部をグランド導体として構成された複数のマイクロストリップアンテナ(マイクロストリップパッチアンテナ、パッチアンテナとも呼ばれる)である。
【0034】
すなわち、本実施形態に係るWBコイル4は、バードケージ型のRFコイルと、複数のマイクロストリップアンテナとを組み合わせたRFコイルである。このようなWBコイル4によれば、送信時はバードケージ型のRFコイルを用いることで、RF磁場の均一性を確保しつつ、受信時は複数のマイクロストリップアンテナを用いることで、パラレルイメージングを行うことができるようになる。これにより、本実施形態では、アレイコイルを使用せずに、RF磁場の均一性を担保したまま、パラレルイメージングを行うことができるようになる。
【0035】
以下、上述した本実施形態に係るMRI装置100の構成について詳細に説明する。
【0036】
図2は、第1の実施形態に係るWBコイル4が有する第1のエレメント部の構成例を示す斜視図である。
【0037】
例えば、
図2に示すように、WBコイル4は、基材41と、2つのエンドリング42と、複数のコンデンサ43と、複数のラング44とを有している。
【0038】
基材41は、円筒状に形成された誘電体の部材(ボビンとも呼ばれる)であり、エンドリング42、ラング44、コンデンサ43等をそれぞれ支持している。
【0039】
エンドリング42は、それぞれ、基材41の外周面上に周方向に沿って配置されたリング状の導体であり、基材41の軸方向の両端部に1つずつ配置されている。各エンドリング42は、基材41の周方向に沿って並べて配置された複数の導体で構成されており、各導体の間がコンデンサ43によって接続されている。
【0040】
コンデンサ43は、それぞれ、所定量の静電容量を有する固定コンデンサであり、エンドリング42における周方向に沿った複数の位置に配置されている。各コンデンサ43は、エンドリング42の周方向に沿って、エンドリング42とラング44とが接続する複数の接続部分それぞれの両側に配置されている。
【0041】
ラング44は、それぞれ、基材41の外周面上に軸方向に沿って配置された細長い矩形状の導体であり、エンドリング42の周方向に沿って一定の間隔を空けて複数配置されている。具体的には、ラング44は、エンドリング42の周方向に沿って、エンドリング42を構成している複数の導体の1つおきに設けられている。各ラング44は、長手方向の一方の端部が2つのエンドリング42の一方に接続され、長手方向の他方の端部が2つのエンドリング42の他方に接続されている。
【0042】
そして、本実施形態では、第2のエレメント部に含まれる各マイクロストリップアンテナは、第1のエレメント部に含まれるラング44に沿って配置され、当該ラングをグランド導体として構成されている。
【0043】
図3は、第1の実施形態に係るWBコイル4が有する第2のエレメント部の構成例を示す側面図である。なお、
図3では、説明の便宜上、基材41及びコンデンサ43については図示を省略している。
【0044】
例えば、
図3に示すように、WBコイル4は、複数のアンテナ導体45を有している。
【0045】
アンテナ導体45は、それぞれ、細長い平板状に形成された導体であり、基材41の内周面上におけるラング44の内側の位置に配置されている。ここで、アンテナ導体45は、ラング44と長手方向の長さが略同一の大きさとなるように形成されており、ラング44の長手方向における全体にわたって、ラング44に沿うように配置されている。
【0046】
このように、本実施形態では、アンテナ導体45とラング44との間に誘電体の基材41が配置されることによって、ラング44をマイクロストリップアンテナのグランド導体として用いることができるようにしている。
【0047】
そして、本実施形態では、WBコイル4は、送信時に第1のエレメント部及び第2のエレメント部の一方が使用され、受信時に第1のエレメント部及び第2のエレメント部の一方が使用される。
【0048】
例えば、WBコイル4は、送信時に第1のエレメント部が使用され、受信時に第1のエレメント部及び第2のエレメント部の一方が使用される。
【0049】
ここで、WBコイル4は、第1のエレメント部が使用される際には、第2のエレメント部と第1のエレメント部とが短絡される。この一方で、WBコイル4は、第2のエレメント部が使用される際には、ラング44がマイクロストリップアンテナのグランド導体として用いられる。
【0050】
具体的には、WBコイル4は、送信時の状態と受信時の状態とを切り替えるための送受信切替回路を有している。
【0051】
図4は、第1の実施形態に係るWBコイル4が有する送受信切替回路の構成例を示す図である。なお、
図4では、エンドリング42とラング44とが接続する複数の接続部分のうちの1つを例示しているが、他の接続部分も同様に構成されている。
【0052】
例えば、
図4に示すように、WBコイル4は、送受信切替回路として、第1~第4のダイオード461~464と、第1~第4のトラップ回路465~468と、コンデンサ469とを有しており、さらに、バラン47と、アンプ48とを有している。
【0053】
ここで、第1のダイオード461は、一端が、コンデンサ469を介してエンドリング42に接続され、それとは並列に、さらに第1のトラップ回路465を介して処理回路14に接続されており、他端がグランドに接続されている。
【0054】
また、第2のダイオード462は、一端がアンテナ導体45に接続され、他端が、エンドリング42及び第2のトラップ回路466を介して処理回路14に接続されている。
【0055】
また、第3のダイオード463は、一端がグランドに接続され、他端がアンテナ導体45に接続されている。
【0056】
また、第4のダイオード464は、エンドリング42を構成している複数の導体のうちのラング44が接続されていない導体に設けられており、当該導体を周方向に2つに分割する間隙を両端で架け渡すように設けられている。そして、第4のダイオード464は、一端が第3のトラップ回路467を介して処理回路14に接続され、他端が第4のトラップ回路468を介してグランドに接続されている。
【0057】
ここで、第1~第4のトラップ回路465~468は、それぞれ、共鳴周波数の高周波を遮断するように同調された同調回路である。
【0058】
また、バラン47は、入力端が、コンデンサ469とエンドリング42とを接続する経路、及び、第3のダイオード463とアンテナ導体45とを接続する経路それぞれに接続され、出力端が、アンプ48を介して受信回路7(Rx)に接続されている。また、エンドリング42は、送信回路6(Tx)に接続されている。
【0059】
ここで、第1のダイオード461を介したエンドリング42とグランドとの間の経路、及び、第3のダイオード463を介したアンテナ導体45とグランドとの間の経路は、それぞれ、送信回路6から供給されるRFパルス信号の波長をλとした場合に、電気的な経路長がλ/4となるように構成されている。
【0060】
そして、本実施形態では、処理回路14のデータ収集機能141が、パルスシーケンスを実行する際に、送信時と、受信時とで、上述した送受信切替回路の状態を切り替える。
【0061】
なお、ここでは、送信時に第1のエレメント部が使用され、受信時に第2のコイルエレメントが使用される場合の例を説明する。
【0062】
例えば、データ収集機能141は、送信時に第1のエレメント部を使用する場合には、第1のトラップ回路465を介して第1のダイオード461に制御電流(直流電流)DC1を供給し、第2のトラップ回路466を介して第2のダイオード462及び第3のダイオード463に制御電流(直流電流)DC2を供給し、第3のトラップ回路467を介して第4のダイオード464に制御電流(直流電流)DC3を供給することで、各ダイオードをオンにする。
【0063】
ここで、第4のダイオード464がオンになることによって、エンドリング42及びラング44の全体が電気的に接続された状態となる。また、第1のダイオード461がオンになることによって、エンドリング42とグランドとが電気的に接続された状態となる。また、第2のダイオード462がオンになることによって、アンテナ導体45と、エンドリング42及びラング44とが電気的に接続された状態となる。また、第3のダイオード463がオンになることによって、アンテナ導体45とグランドとが電気的に接続された状態となる。
【0064】
これにより、送信回路6からWBコイル4にRFパルス信号が供給された際に、2つのエンドリング42及び複数のラング44で構成されたバードケージ型のコイルにRFパル信号の電流が流れるようになる。すなわち、第1のエレメント部によって、撮像空間にRF磁場が印加されるようになる。
【0065】
なお、このとき、前述したように、第1のダイオード461を介したエンドリング42とグランドとの間の経路、及び、第3のダイオード463を介したアンテナ導体45とグランドとの間の経路が、それぞれ、電気的な経路長がλ/4となるように構成されているため、エンドリング42及びラング44から受信系への入力端がオープン状態になる。そのため、エンドリング42及びラング44を流れるRFパルス信号の電流、並びに、エンドリング42及びラング44に短絡されたアンテナ導体45を流れるRFパルス信号の電流は、いずれも、受信回路7には流れないようになる。
【0066】
一方、データ収集機能141は、受信時に第2のエレメント部を使用する場合には、第1~第4のダイオード461~464への制御電流の供給を行わないことによって、各ダイオードをオフにする。
【0067】
ここで、第4のダイオード464がオフになることによって、各ラング44が互いに電気的に切り離された状態となる。また、第1のダイオード461がオフになることによって、エンドリング42及びラング44と受信系とが電気的に接続された状態となる。また、第2のダイオード462がオフになることによって、アンテナ導体45と、エンドリング42及びラング44とが電気的に切り離された状態となる。また、第3のダイオード463がオフになることによって、アンテナ導体45と受信系とが電気的に接続された状態となる。
【0068】
これにより、被検体SからMR信号が発生した際に、ラング44がグランド導体となり、アンテナ導体45及びラング44で構成されたマイクロストリップアンテナによってMR信号が受信されて、受信回路7に出力されるようになる。すなわち、第2のエレメント部によって、MR信号が受信されるようになる。
【0069】
なお、WBコイル4に設けられる送受信切替回路の構成は、上述したものに限られず、各種の回路素子を用いて実現することが可能である。
【0070】
このように、本実施形態では、第1のエレメント部が使用される際には、第2のエレメント部と第1のエレメント部とが短絡されることによって、デカップリングが不要となる。一方、第2のエレメント部が使用される際には、ラング44がマイクロストリップアンテナのグランド導体として用いられることによって、デカップリングが不要となる。
【0071】
そして、本実施形態では、処理回路16の主制御機能161が、第2のエレメント部に含まれる各マイクロストリップアンテナの感度分布を利用してパラレルイメージングを行う機能を有している。ここで、主制御機能161が行うパラレルイメージングとしては、例えば、SENSE(Sensitivity Encoding)やSMASH(Simultaneous Acquisition of Spatial Harmonics)、GRAPPA(Generalized Autocalibrating Partially Parallel Acquisitions)等の公知の各種の方法を用いることができる。
【0072】
また、本実施形態では、例えば、処理回路15の画像生成機能151が、第1のエレメント部によって収集されたMR信号に基づいて生成された画像を基準として、第2のエレメント部に含まれる各マイクロストリップアンテナによって受信されたMR信号に基づいて生成された画像における不均一性を補正する感度補正を行う機能を有している。例えば、画像生成機能151は、リファレンススキャンとして、第1のエレメント部を使用した第1のスキャンと、第2のエレメント部を使用した第2のスキャンとをそれぞれ行う。また、画像生成機能151は、第1のスキャンによって収集されたMR信号に基づいて第1の画像を生成し、第2のスキャンによって収集されたMR信号に基づいて第2の画像を生成し、両画像を比較することで感度マップを生成する。そして、画像生成機能151は、生成した感度マップを用いて、第2のエレメント部を使用した本スキャンによって収集されたMR信号に基づいて生成した画像における不均一性を補正する。
【0073】
このような画像の感度補正を行う場合には、基準として用いられる画像は感度が均一であることが求められる。これについて、本実施形態では、第1のエレメント部がバードケージ型のコイルであるため、均一な感度の基準画像を得ることができる。
【0074】
なお、上述した例では、パラレルイメージンが行われる場合を想定して、送信時に第1のエレメント部が使用され、受信時に第2のコイルエレメントが使用される場合の例を説明したが、各コイルエレメントの使用法はこれに限られない。例えば、パラレルイメージング以外の撮像が行われる場合には、送信時及び受信時の両方に第1のエレメント部が使用されてもよいし、送信時及び受信時の両方に第2のエレメント部が使用されてもよい。
【0075】
上述したように、本実施形態では、WBコイル4が、第1のエレメント部として、バードケージ型のコイルを有し、さらに、第2のエレメント部として、バードケージ型のコイルのラング44をグランド導体とした複数のマイクロストリップアンテナを有している。このような構成によれば、バードケージ型のコイルを用いることによって、均一なRF磁場を発生させることができるとともに、各マイクロストリップアンテナの感度分布を利用して、パラレルイメージングを行うことができるようになる。したがって、本実施形態によれば、アレイコイルを使用せずに、RF磁場の均一性を担保したまま、パラレルイメージングを行うことができる。
【0076】
また、本実施形態では、画像の感度補正を行う場合に、第1のエレメント部を使用することによって、均一な感度の基準画像を得ることができる。したがって、本実施形態によれば、アレイコイルを使用せずに、WBコイル4だけでも、パラレルイメージングで十分なSNRの画像を得ることができる。
【0077】
なお、上述した第1の実施形態では、第2のエレメント部に含まれるアンテナ導体45が、ラング44の長手方向における全体にわたって、ラング44に沿うように配置されている場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
【0078】
例えば、上述した構成では、第2のエレメント部において、静磁場の磁束に沿った方向をZ方向とし、Z方向に直交する水平方向をX方向とし、Z方向及びX方向それぞれに直交する鉛直方向をY方向とした場合に、X方向及びY方向に沿った面内の感度分布が、Z方向における各位置で同じとなる。すなわち、上述した構成によれば、X方向及びY方向に沿った面内の感度分布を利用したパラレルイメージングを行うことができる。
【0079】
これに対し、例えば、第2のエレメント部が、X方向及びY方向に沿った面内の感度分布がZ方向の位置によって異なるように複数のマイクロストリップアンテナが配置されて構成されていてもよい。この構成によれば、X方向及びY方向に沿った面内の感度分布に加えて、さらにZ方向に沿った感度分布も利用して、パラレルイメージングを行うことができるようになる。
【0080】
そこで、以下では、このような場合のWBコイルに関する他の実施形態について説明する。なお、以下で説明する実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、第1の実施形態と共通する内容については説明を省略する。
【0081】
(第2の実施形態)
例えば、WBコイルにおいて、第2のエレメント部が、第1のエレメント部よりZ方向の長さが短く、かつ、第1の方向の異なる位置に配置された複数のマイクロストリップアンテナを含むようにしてもよい。
【0082】
図5は、第2の実施形態に係るWBコイル104の構成例を示す側面図である。なお、
図5でも、説明の便宜上、基材41及びコンデンサ43については図示を省略している。
【0083】
例えば、
図5に示すように、本実施形態では、アンテナ導体1045が、それぞれ、Z方向の長さがラング44より短くなるように形成されている。そして、本実施形態では、各アンテナ導体1045は、基材41の内周面上において、ラング44のZ方向における両端のいずれか一方の側に寄せて配置されており、かつ、それぞれのZ方向における位置がWBコイル104の周方向に沿って1つずつ交互に入れ替わるように配置されている。
【0084】
なお、各アンテナ導体1045のZ方向における位置は、WBコイル104の周方向に沿って、1つずつ入れ替わるのではなく、例えば、2つごと、又は3つごとのように、複数の数ごとに入れ替わっていてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、各アンテナ導体1045は、ラング44の長さの1/2より長くなるように形成されている。これにより、本実施形態では、WBコイル104の軸方向における中央付近では、X方向及びY方向に沿った面内に、全てのアンテナ導体1045が配置されるようになっている。
【0086】
このような構成によれば、第2のエレメント部において、Z方向における中央付近と、Z方向の両端における一端側に近い範囲と、Z方向の両端における他端側に近い範囲とで、X方向及びY方向に沿った面内の感度分布が異なるようになる。
【0087】
(第3の実施形態)
また、例えば、WBコイルにおいて、第2のエレメント部が、Z方向の長さが異なる複数のマイクロストリップアンテナを含むようにしてもよい。
【0088】
図6は、第3の実施形態に係るWBコイル204の構成例を示す側面図である。なお、
図6でも、説明の便宜上、基材41及びコンデンサ43については図示を省略している。
【0089】
例えば、
図6に示すように、本実施形態では、アンテナ導体2045が、それぞれ、Z方向の長さがラング44より短くなるように形成されており、かつ、それぞれの長さが異なるように形成されている。そして、本実施形態でも、各アンテナ導体2045は、基材41の内周面上において、ラング44のZ方向における両端のいずれか一方の側に寄せて配置されており、かつ、WBコイル104の周方向に沿って、Z方向の位置が1つずつ交互に入れ替わるように配置されている。
【0090】
なお、本実施形態でも、各アンテナ導体1045のZ方向における位置は、WBコイル104の周方向に沿って、1つずつ入れ替わるのではなく、例えば、2つごと、又は3つごとのように、複数の数ごとに入れ替わっていてもよい。
【0091】
このような構成によれば、第2のエレメント部において、Z方向の各位置におけるX方向及びY方向に沿った面内の感度分布がそれぞれ異なるようになる。
【0092】
(第4の実施形態)
また、例えば、WBコイルにおいて、第1のエレメント部に含まれる各ラング44が、Z方向に対して斜めに配置されていてもよい。
【0093】
図7は、第4の実施形態に係るWBコイル304の構成例を示す側面図である。なお、
図7でも、説明の便宜上、基材41及びコンデンサ43については図示を省略している。
【0094】
例えば、
図7に示すように、本実施形態では、各ラング3044が、それぞれ、Z方向に対して斜めに配置されている。すなわち、各ラング3044は、基材41の外周面に沿って、2つのエンドリング42の周方向に対して斜めに配置さている。そして、本実施形態では、各アンテナ導体3045は、ラング3044の長手方向における全体にわたって、ラング3044に沿うように配置されている。
【0095】
このような構成によれば、第2のエレメント部において、X方向及びY方向に沿った面内の感度分布が、Z方向の位置がずれるにつれて、WBコイル304の周方向に回転しながら変化するようになる。
【0096】
なお、上述した第2及び第3の実施形態において、第2のエレメント部に含まれる各マイクロストリップアンテナは、アンテナ導体とラングとの間の距離、基材41の誘電体の材料、及び、アンテナ導体の幅の少なくとも1つに基づいて、アンテナ導体のZ方向の長さが定められている。
【0097】
上述した第2~第4の実施形態によれば、第2のエレメント部において、X方向及びY方向に沿った面内の感度分布がZ方向の位置によって異なるように複数のマイクロストリップアンテナが配置されることによって、X方向及びY方向に沿った面内の感度分布に加えて、さらにZ方向に沿った感度分布も利用して、パラレルイメージングを行うことができるようになる。
【0098】
なお、上述した第1~第4の実施形態では、アンテナ導体とラングとの間に誘電体の基材41が配置されることによって各マイクロストリップアンテナが構成される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、アンテナ導体とラングとの間に基材41とは別の誘電体を配置することによって各マイクロストリップアンテナが構成され、各マイクロストリップが、基材41の外周面上に配置されてもよい。
【0099】
(第5の実施形態)
以上、第1~第4の実施形態に係るMRI装置100について説明した。各実施形態に係るMRI装置100は、前述したように、上述した構成によって、アレイコイルを使用せずに、RF磁場の均一性を担保したまま、パラレルイメージングを行うことができる。以下では、第5の実施形態として、上述した各実施形態に係るMRI装置100によって実行されるパラレルイメージングについて詳細に説明する。
【0100】
具体的には、各実施形態で説明したように、MRI装置100は、RF磁場の送信に用いられる第1のエレメント部と、RF磁場を受けて被検体から発生するMR信号の受信に用いられる第2のエレメント部とを有する、架台に収容された全身用RFコイル4を備えている。ここで、第1のエレメント部は、2つのエンドリングと、当該エンドリングの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数のラングとを有するバードケージ型のRFコイルである。また、第2のエレメント部は、マイクロストリップアンテナである。
【0101】
そして、パラレルイメージングが行われる際には、処理回路14のデータ収集機能141が、パラレルイメージング用のパルスシーケンスに基づいて、第1のエレメント部を用いてRF磁場を送信し、当該RF磁場を受けて被検体から発生するMR信号を第2のエレメント部を用いて受信することで、マイクロストリップアンテナごとに、位相エンコード方向に間引かれた第1のk空間データを収集する。その後、処理回路15の画像生成機能151が、マイクロストリップアンテナ間の感度差を利用して第1のk空間データにおける折り返しを展開することで、画像を生成する。
【0102】
図8は、第5の実施形態に係るMRI装置100によって実行されるパラレルイメージングの一例を示すフローチャートである。ここでは、パラレルイメージングの一例として、SENSEが実行される場合の例を説明する。
【0103】
例えば、
図8に示すように、まず、データ収集機能141が、予め設定された感度分布計測用のパルスシーケンスに基づいて、第1のエレメント部を用いてRF磁場を送信し、当該RF磁場を受けて被検体から発生するMR信号を第2のエレメント部を用いて受信することで、マイクロストリップアンテナごとに第2のk空間データを収集する(ステップS11)。
【0104】
その後、画像生成機能151が、収集された第2のk空間データに基づいて、マイクロストリップアンテナごとに、当該マイクロストリップアンテナの感度分布を示す第1の感度マップを生成する(ステップS12)。
【0105】
続いて、データ収集機能141が、予め設定された感度補正(輝度補正とも呼ばれる)用のパルスシーケンスに基づいて、第1のエレメント部を用いてRF磁場を送信し、当該RF磁場を受けて被検体から発生するMR信号を第1のエレメント部を用いて受信することで、第3のk空間データを収集する(ステップS13)。
【0106】
その後、画像生成機能151が、収集された第3のk空間データに基づいて、第1のエレメント部の感度分布を示す第2の感度マップを生成する(ステップS14)。
【0107】
続いて、データ収集機能141が、予め設定されたSENSE用のパルスシーケンスに基づいて、第1のエレメント部を用いてRF磁場を送信し、当該RF磁場を受けて被検体から発生するMR信号を第2のエレメント部を用いて受信することで、マイクロストリップアンテナごとに、位相エンコード方向に間引かれた第1のk空間データを収集する(ステップS15)。
【0108】
その後、画像生成機能151が、マイクロストリップアンテナごとに、第1の感度マップを用いて、第1のk空間データから生成された画像データ上で折り返しを展開して、画像を生成する(ステップS16)。ここで、画像生成機能151が画像データ上で折り返しを展開して画像を生成するための方法は、従来のSENSEで行われている方法と同じである。
【0109】
さらに、画像生成機能151は、第2の感度マップを用いて、生成した画像における不均一性を補正する感度補正を行う(ステップS17)。例えば、画像生成機能151は、第1のエレメント部を用いて得られた第2の感度マップと、マイクロストリップごとに得られた第1の感度マップとを画素ごとに比較し、その比率に応じて各画素の信号値を補正することで、画像における不均一性を補正する。
【0110】
ここで、上述した処理のうち、ステップS11、S13及びS15の処理は、例えば、処理回路14がデータ収集機能141に対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS12、S14、S16及びS17の処理は、例えば、処理回路15が画像生成機能151に対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。
【0111】
なお、画像の感度補正が不要な場合は、ステップS13(感度補正用のデータ収集)、S14(感度補正用の感度マップ生成)及びS17(画像の感度補正)の処理は実行されなくてもよい。
【0112】
また、上述したステップS11~S14の処理は、必ずしも上述した順序で実行されなくてもよい。例えば、ステップS13及びS14の処理(感度補正用のデータ収集及び感度マップ生成)が実行された後に、ステップS11及びS12の処理(感度分布計測用のデータ収集及び感度マップ生成)が実行されてもよい。または、例えば、ステップS11及びS13(感度分布計測用及び感度補正用のデータ収集)の処理が実行された後に、ステップS12及びS14の処理(感度分布計測用及び感度補正用の感度マップ生成)が実行されてもよい。
【0113】
図9は、第5の実施形態に係るMRI装置100によって実行されるパラレルイメージングの他の例を示すフローチャートである。ここでは、パラレルイメージングの他の例として、GRAPPAが実行される場合の例を説明する。
【0114】
例えば、
図9に示すように、まず、データ収集機能141が、予め設定された感度補正(輝度補正とも呼ばれる)用のパルスシーケンスに基づいて、第1のエレメント部を用いてRF磁場を送信し、当該RF磁場を受けて被検体から発生するMR信号を第1のエレメント部を用いて受信することで、第3のk空間データを収集する(ステップS21)。
【0115】
その後、画像生成機能151が、収集された第3のk空間データに基づいて、第1のエレメント部の感度分布を示す第2の感度マップを生成する(ステップS22)。
【0116】
続いて、データ収集機能141が、予め設定されたGRAPPA用のパルスシーケンスに基づいて、第1のエレメント部を用いてRF磁場を送信し、当該RF磁場を受けて被検体から発生するMR信号を第2のエレメント部を用いて受信することで、マイクロストリップアンテナごとに、位相エンコード方向に間引かれた第1のk空間データを収集する(ステップS23)。このとき、データ収集機能141は、マイクロストリップアンテナごとに、k空間の中心部分のデータを含むように、第1のk空間データを収集する。
【0117】
その後、画像生成機能151が、マイクロストリップアンテナごとに収集された第1のk空間データ間で信号値の重み付け加算を行うことによって第1のk空間データ上で折り返しを展開して、画像を生成する(ステップS24)。ここで、画像生成機能151が第1のk空間データ上で折り返しを展開して画像を生成するための方法は、従来のGRAPPAで行われている方法と同じである。
【0118】
さらに、画像生成機能151は、第2の感度マップを用いて、生成した画像における不均一性を補正する感度補正を行う(ステップS25)。例えば、画像生成機能151は、第1のエレメント部を用いて得られた第2の感度マップと、マイクロストリップごとに折り返しを展開した第1のk空間データから生成された画像とを画素ごとに比較し、その比率に応じて各画素の信号値を補正することで、画像における不均一性を補正する。
【0119】
ここで、上述した処理のうち、ステップS21及びS23の処理は、例えば、処理回路14がデータ収集機能141に対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS22、S24及びS25の処理は、例えば、処理回路15が画像生成機能151に対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。
【0120】
なお、画像の感度補正が不要な場合は、ステップS13、S14及びS17の処理は実行されなくてもよい。
【0121】
以上、SENSE及びGRAPPAが実行される場合を例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限られない。上述した各実施形態に係るMRI装置100は、WBコイル4に含まれる第1のエレメント部及び第2のエレメント部を同様に用いることで、他の各種のパラレルイメージングを実行することが可能である。
【0122】
上述したように、本実施形態に係るMRI装置100は、パラレルイメージングを行う際に、RF磁場の送信に、バードケージ型のRFコイルである第1のエレメント部を用い、MR信号の受信に、複数のマイクロストリップアンテナを含む第2のエレメント部を用いる。これにより、本実施形態では、均一なRF磁場を発生させることができるとともに、マイクロストリップアンテナ間の感度差を利用して、パラレルイメージングを行うことができる。したがって、本実施形態によれば、アレイコイルを使用せずに、RF磁場の均一性を担保したまま、パラレルイメージングを行うことができる。
【0123】
また、本実施形態に係るMRI装置100は、画像の感度補正を行う場合に、RF磁場の送信及びMR信号の受信に、バードケージ型のRFコイルである第1のエレメント部を用いて、感度補正用の感度マップ(第2の感度マップ)を収集する。これにより、本実施形態では、感度が均一な感度マップを基準として画像の感度補正を行うことができ、SNRの良好な画像を得ることができる。
【0124】
なお、上述した説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0125】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、例えば、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0126】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、アレイコイルを使用せずに、RF磁場の均一性を担保したまま、パラレルイメージングを行うことができる。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0128】
100 磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置
4 WBコイル
42 エンドリング
44 ラング
45 アンテナ導体