(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】エステル交換油脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C11B 3/06 20060101AFI20230425BHJP
A23D 9/02 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
C11B3/06
A23D9/02
(21)【出願番号】P 2019074259
(22)【出願日】2019-04-09
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 実
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀和
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-089527(JP,A)
【文献】特開2006-328383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B
A23D 9/02
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化カルシウムの存在下、グリセリンと油脂を反応させる工程
を含む、エステル交換油脂の製造方法であって、
グリセリンと油脂の合計に対して水酸化カルシウムを0.05~0.5質量%添加して、120~200℃にて反応させる工程の後、水酸化カルシウムに対して中和剤を1.2モル倍以上添加して、水酸化カルシウムを中和する工程を含む、エステル交換油脂の製造方法。
【請求項2】
グリセリンと油脂を反応させる工程におけるグリセリン基のモル数に対する油脂中の脂肪酸基のモル数の比が2.1以上、2.7以下である請求項1記載のエステル交換油脂の製造方法。
【請求項3】
水酸化カルシウムを中和する工程における水酸化カルシウムに対する中和剤のモル比が1.8以上である請求項1又は2記載のエステル交換油脂の製造方法。
【請求項4】
中和剤が硫酸、塩酸及びリン酸から選択される1種以上の酸である請求項1~3のいずれか1項に記載のエステル交換油脂の製造方法。
【請求項5】
中和工程の後、中和油に吸着剤を接触させる脱色工程を更に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のエステル交換油脂の製造方法。
【請求項6】
吸着剤が活性炭及び固体酸吸着剤から選択される1種又は2種以上である請求項5記載のエステル交換油脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアシルグリセロールに富むエステル交換油脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアシルグリセロールは、食品、化粧料等の様々な産業分野で利用されている。
一般的に、ジアシルグリセロールは、グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応、グリセリンと油脂とのグリセロリシス反応の方法により製造される。これらの製造法は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド等の化学触媒を用いた化学法と、リパーゼ等の酵素を用いた酵素法に大別される(例えば、特許文献1、2)。反応後のジアシルグリセロールは、食用に適する品質にするために、活性白土等を加えて脱色や、高温減圧下で水蒸気と接触させる脱臭が行われる(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-234392号公報
【文献】特開2010-59406号公報
【文献】特開2011-144343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジアシルグリセロールの製造法のうち、水酸化ナトリウム等のナトリウム系の触媒を用いたグリセロリシス法は反応性が高いという利点がある。しかしながら、グリセリンと油脂とをグリセロリシス反応させる場合にナトリウム系の触媒を用いると、副生成物としてグリシドール脂肪酸エステルが高比率で生成することが判明した。そこで、グリセリンと油脂とのグリセロリシス反応の条件を種々検討したところ、水酸化カルシウムを触媒として用いると、副生成物の生成が抑えられることを見出した。一方で、触媒として水酸化カルシウムを用いると、中和後の脱色工程において、ジアシルグリセロールに富むエステル交換油脂を濾過により脱色剤や中和生成物と分離する速度が遅くなる、収率が悪くなる、という新たな課題が発生した。
従って、本発明の課題は、グリセロリシス反応触媒として用いた水酸化カルシウムの中和後に容易に濾過することのできるエステル交換油脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが当該課題を検討したところ、水酸化カルシウムを中和した際に発生する微細な結晶が、中和後の濾過操作を困難にしていることが判明した。そこで、中和剤の検討を種々行ったところ、水酸化カルシウムに対する中和剤のモル比率を特定比以上にすることで、濾過性を向上できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、水酸化カルシウムの存在下、グリセリンと油脂を反応させる工程の後、水酸化カルシウムに対して中和剤を1.2モル倍以上添加して、水酸化カルシウムを中和する工程を含む、エステル交換油脂の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水酸化カルシウムの中和後の濾過性を向上でき、ジアシルグリセロールに富むエステル交換油脂を生産性良く得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のエステル交換油脂の製造方法は、水酸化カルシウムの存在下、グリセリンと油脂を反応させる工程の後、水酸化カルシウムに対して中和剤を1.2モル倍以上添加して、水酸化カルシウムを中和する工程を含むものである。
本明細書において、「油脂」と「油」とは同義であり、油脂(油)を構成する物質にはトリアシルグリセロールのみならずモノアシルグリセロールやジアシルグリセロールも含まれる。すなわち、油脂(油)は、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール及びトリアシルグリセロールのいずれか1種以上を含むものである。
【0009】
本発明で用いられるグリセリンは、反応性の点から、純度95質量%以上のものが好ましい。
【0010】
グリセリンと反応させる油脂は、植物性油脂、動物性油脂のいずれでもよいが、エステル交換油脂の乳化特性、取り扱いのし易さの点から、液状油脂であるのが好ましい。なお、液状油脂とは、基準油脂分析試験法2.2.8.2-1996による冷却試験を実施した場合、20℃で液状である油脂をいう。
具体的な油脂としては、トリアシルグリセロールを主体とするものであり、例えば、菜種油、ひまわり油、とうもろこし油、大豆油、オリーブ油、米油、紅花油、綿実油、胡麻油、あまに油等の植物性油脂を挙げることができる。油脂中のトリアシルグリセロールの含有量は、油脂の劣化抑制の点から、90~99.5質量%、更に93~99質量%であるのが好ましい。
油脂は、エステル交換油脂の乳化特性、及び取り扱いのし易さの点から、油脂を構成する脂肪酸中の不飽和脂肪酸が70~95質量%と多い油脂が好ましい。好ましい不飽和脂肪酸の炭素数は14~24、更に16~22であるが、得られるエステル交換油脂の利用性の観点から、油脂を構成する脂肪酸中のリノレン酸が4~70質量%、更に6~60質量%と多い油脂が好ましい。
油脂は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
グリセリンと油脂との反応は、水酸化カルシウムの存在下に行われる。
本発明で用いられる水酸化カルシウムは、反応触媒として用いられるものであればよい。グリセリンと油脂とのグリセロリシス反応の触媒に水酸化カルシウムを用いることで、副生成物であるグリシドール脂肪酸エステルの生成が大きく抑えられる。
水酸化カルシウムの使用量は、反応性の点から、反応原料、すなわちグリセリンと油脂の合計に対して0.03質量%以上が好ましく、また、中和剤の量を低減できる点から、1質量%以下が好ましい。より好ましくは、反応原料に対して0.05~0.5質量%である。また、水酸化カルシウムの使用量は、同様の点から、反応原料、すなわちグリセリンと油脂のグリセリン基に対するモル比が、0.0025以上であることが好ましく、0.11以下であることが好ましく、0.004~0.06であることがより好ましい。なお、ここでいう「グリセリン基」とは、グリセリン及び油脂中のグリセリン骨格部分の合計を指す。
【0012】
本発明において、グリセリンと油脂とのグリセロリシス反応を行う際のグリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]は、モノアシルグリセロール生成抑制の点から、2.1以上が好ましく、2.2以上がより好ましい。また、ジアシルグリセロール生成の点から、2.7以下が好ましく、2.6以下がより好ましい。
グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]は、下式で表される。
FA/GLY=(脂肪酸のモル数+モノアシルグリセロールのモル数+ジアシルグリセロールのモル数×2+トリアシルグリセロールのモル数×3)/(グリセリンのモル数+モノアシルグリセロールのモル数+ジアシルグリセロールのモル数+トリアシルグリセロールのモル数)
【0013】
反応温度は、反応速度を向上する点から、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。また、副生成物の含有量低減の点から、200℃以下が好ましい。
【0014】
反応時間は、ジアシルグリセロール生成の点から、60分以上が好ましく、120分以上がより好ましい。また、生産性の点から、720分以下が好ましく、600分以下がより好ましい。
【0015】
グリセリンと油脂との反応は、反応性の点、触媒性能の低下を抑制する点から、反応原料に含まれる水を、減圧や乾燥窒素バブリング等により除いてから反応を行うのが好ましい。
また、反応は、通常、減圧下でも常圧でもよい。減圧下で行う場合の圧力は、特に限定されないが、反応促進の点から、400Pa以上が好ましく、また、エステル交換油脂の酸化を抑制する点から、26,600Pa以下が好ましい。また、常圧で行う場合、得られるエステル交換油脂の酸化を抑制するため、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0016】
グリセロリシス反応終了後は、反応油に触媒として用いた水酸化カルシウムが混在している。そのため、グリセロリシス反応終了後に、水酸化カルシウムを中和する工程を行う。本発明において、水酸化カルシウムの中和は、水酸化カルシウムに対して中和剤を1.2モル倍以上添加して行う。水酸化カルシウムに対する中和剤のモル比を1.2以上にすることで、水酸化カルシウムの中和後の濾過性を向上できる。
中和剤としては、特に制限されないが、水や油脂に不溶で、濾過で容易に除去できる点から、硫酸、塩酸、リン酸等の酸が好ましく、リン酸がより好ましい。
【0017】
中和剤の使用量は、脱色工程において濾過し易い中和物にする点から、反応原料に対して0.27質量%以上が好ましく、0.28質量%以上がより好ましい。また、中和に対し過剰添加を抑制する点から、反応原料に対して1.2質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましい。
【0018】
水酸化カルシウムに対する中和剤のモル比は、水酸化カルシウムの中和後の濾過性を向上できる点から、1.2以上であり、好ましくは1.21以上、より好ましくは1.4以上、更に好ましくは1.8以上である。また、モル比の上限は特に制限されないが、中和油の酸価の上昇抑制の点から、6.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。
【0019】
中和工程、すなわち水酸化カルシウムが混在している反応油に、中和剤を投入後、攪拌を終了させるまでの工程(以下同じ)の温度は、逆反応を抑制する点から、20℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。また、中和物を十分に生成する点から、200℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましい。
【0020】
中和工程の時間は、中和物を十分に生成する点から、1~240分が好ましく、3~180分がより好ましく、10~120分が更に好ましい。
【0021】
中和工程においては、中和物を十分に生成する点から、撹拌しつつ中和を行うのが好ましい。撹拌のための手段は特に制限されない。
【0022】
中和工程後は、中和油に吸着剤を接触させる脱色工程を行うことが好ましい。
吸着剤としては、多孔質吸着剤が好ましく、例えば、活性炭、二酸化ケイ素、及び固体酸吸着剤が挙げられる。固体酸吸着剤としては、酸性白土、活性白土、活性アルミナ、シリカゲル、シリカ・アルミナ、アルミニウムシリケート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なかでも、風味及び色相を良好とする点から、活性炭、固体酸吸着剤が好ましく、酸性白土、活性白土がより好ましい。
酸性白土としては、例えば、ミズカエース#20、ミズカエース#400(以上、水澤化学工業(株)製)等の市販品を用いることができ、活性白土としては、例えば、ガレオンアースV2R、ガレオンアースNV、ガレオンアースGSF(以上、水澤化学工業(株)製)等の市販品を用いることができる。
【0023】
吸着剤の使用量は、風味及び色相を良好とする点から、中和油に対して0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、濾過速度が速く生産性が良好である点から、中和油に対して10.0質量%以下が好ましく、6.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましい。
【0024】
脱色工程では、濾過速度が速く生産性が良好である点から、パーライト、二酸化珪素、珪藻土等の濾過助剤を適宜添加してもよい。
【0025】
中和油と吸着剤の接触温度は、副生成物の含有量低減、良好な色相、及び工業的生産性の点から、20~150℃が好ましく、40~135℃がより好ましく、60~120℃が更に好ましい。
【0026】
中和油と吸着剤の接触時間は、副生成物の含有量低減、良好な色相、及び工業的生産性の点から、3分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、7分以上が更に好ましい。また、油脂の酸化抑制、及び工業的生産性の点から、180分以下が好ましく、120分以下がより好ましく、90分以下が更に好ましい。
【0027】
圧力は、減圧下でも常圧でもよいが、油脂の酸化抑制、及び脱色性の点から、減圧下が好ましい。
【0028】
脱色工程では、吸着剤を濾過により除去するのが好ましい。本発明によれば、濾過速度を向上でき、また、得られるエステル交換油脂の収率に優れる。
濾過手段としては、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過等のいずれでも実施可能であり、油脂の脱色工程で使用される濾過機を使用することができる。
圧力は、減圧でも加圧でもよい。圧力は、特に限定されないが、生産性の点から、ゲージ圧(以下、圧力の数値において同じ)で0.01MPa以上が好ましく、0.03MPa以上がより好ましい。また、設備の耐圧、及び安全性の点から、5MPa以下が好ましく、3MPa以下がより好ましい。
【0029】
本発明の方法により得られるエステル交換油脂は、ジアシルグリセロールに富むものであるが、低温での流動性、乳化特性の点から、ジアシルグリセロールの含有量は、25~40質量%が好ましい。当該エステル交換油脂には、ジアシルグリセロールの他、トリアシルグリセロールが含まれ、また、これらに比して量的には少ないが、未反応のグリセリン、モノアシルグリセロールが含まれる。
低温での流動性、乳化特性の点から、エステル交換油脂におけるモノアシルグリセロールは少ないことが好ましく、その含有量は、10質量%以下、更に7質量%以下が好ましい。
【0030】
本発明の方法により得られるエステル交換油脂は、上記工程の他、必要に応じて精製工程を行って、一般の食用油脂と同様に使用することができる。
【実施例】
【0031】
以下の実施例において、「%」は「質量%」を意味する。
【0032】
〔分析方法〕
(i)グリセリド組成の測定
遠心分離が可能な試験管に反応生成物のサンプルを約3g採取し、3000r/minで10分間遠心分離を行い、沈降した触媒を除去した。次いで、ガラス製サンプル瓶に、上層を約10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学(株)製)0.5mLを加え、密栓し、70℃で15分間加熱した。これに水1.5mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して、グリセリド組成の分析を行った。
【0033】
(ii)〔収率の算出方法〕
濾過装置に投入した質量[a]、濾過された脱色油の質量[b]を用いて、式(1)から収率を算出した。
収率=b/a×100(%) (1)
【0034】
〔実施例1〕
グリセロリシス反応の原料となる脱臭菜種油974.7g及びグリセリン25.3gを、攪拌羽根(90mm×24mm)を取り付けた2L4ツ口フラスコに入れた。グリセリン基のモル数に対する脂肪酸残基のモル数の比[FA/GLY]は2.4であった。
次に、400r/minで攪拌しながら、80℃、400Paの条件で30分間減圧脱水した。次に、常圧に戻し、触媒として水酸化カルシウム(成績書濃度97.9%、関東化学(株)製)1.5gを添加した。次に、8000Paの減圧下で、温度140℃の条件にてグリセロリシス反応を行った。
反応開始から300分でジアシルグリセロール含量が平衡に達した後、90℃に冷却し、中和剤としてリン酸(成績書濃度85.5%、富士フィルム和光純薬(株)製)を2.83g添加して、60分混合して反応生成物を得た。水酸化カルシウムに対するリン酸のモル比は1.25であった。また、反応生成物の分析結果は表1のとおりであった。
【0035】
次に、中和油を400r/minで攪拌しながら、80℃、400Paの条件で30分間減圧脱水した。その後、常圧に戻し、活性白土(ガレオンアースV2R 水澤化学工業(株)製)等)10.0g及び濾過助剤(ロカヘルプ4109 三井金属鉱業(株)製)2.1gを添加した。次に、8000Paの減圧下で、温度100℃の条件にて脱色処理を行った。
脱色開始から60分後、80℃に冷却し、80℃でジャケット保温された濾過装置に移して、定圧濾過を行い、濾液(脱色油)を回収した。濾過は、濾過面積39cm2、濾紙(No.24 安積濾紙(株)製)、加圧圧力0.08MPaの条件とした。
表1に、各条件、濾液が250mL得られる濾過時間、及び脱色油の収率を示した。
【0036】
〔実施例2〕
リン酸(成績書濃度85.5%)を3.17g添加した以外は、実施例1と同様にグリセロリシス反応、脱色処理、及び定圧濾過を行い、濾液(脱色油)を回収した。水酸化カルシウムに対するリン酸のモル比は1.40であった。
表1に、各条件、濾液が250mL得られる濾過時間、及び脱色油の収率を示した。
【0037】
〔実施例3〕
リン酸(成績書濃度85.5%)を4.23g添加した以外は、実施例1と同様にグリセロリシス反応、脱色処理、及び定圧濾過を行い、濾液(脱色油)を回収した。水酸化カルシウムに対するリン酸のモル比は1.86であった。
表1に、各条件、濾液が250mL得られる濾過時間、及び脱色油の収率を示した。
【0038】
〔実施例4〕
リン酸(成績書濃度85.5%)を5.29g添加した以外は、実施例1と同様にグリセロリシス反応、脱色処理、及び定圧濾過を行い、濾液(脱色油)を回収した。水酸化カルシウムに対するリン酸のモル比は2.33であった。
表1に、各条件、濾液が250mL得られる濾過時間、及び脱色油の収率を示した。
【0039】
〔比較例1〕
リン酸(成績書濃度85.5%)を1.76g添加した以外は、実施例1と同様にグリセロリシス反応、脱色処理、及び定圧濾過を行い、濾液(脱色油)を回収した。濾過が遅く120分で中止した。水酸化カルシウムに対するリン酸のモル比は0.78であった。
表1に、各条件、濾液が250mL得られる濾過時間、及び脱色油の収率を示した。
【0040】
〔比較例2〕
リン酸(成績書濃度85.5%)を2.38g添加した以外は、実施例1と同様にグリセロリシス反応、脱色処理、及び定圧濾過を行い、濾液(脱色油)を回収した。水酸化カルシウムに対するリン酸のモル比は1.05であった。濾過が遅く180分で中止した。
表1に、各条件、濾液が250mL得られる濾過時間、及び脱色油の収率を示した。
【0041】
〔比較例3〕
リン酸(成績書濃度85.5%)を2.65g添加した以外は、実施例1と同様にグリセロリシス反応、脱色処理、及び定圧濾過を行い、濾液(脱色油)を回収した。水酸化カルシウムに対するリン酸のモル比は1.16であった。濾過が遅く180分で中止した。
表1に、各条件、濾液が250mL得られる濾過時間、及び脱色油の収率を示した。
【0042】
〔実施例5〕
中和剤として塩酸(成績書濃度36.0%)を3.73g添加した以外は、実施例1と同様にグリセロリシス反応、脱色処理を行い、定圧濾過を行った。水酸化カルシウムに対する塩酸のモル比は1.86であった。表1に、各条件及び結果である濾液が250mL得られる濾過時間、脱色油の収率を示した。
【0043】
【0044】
表1より明らかなように、実施例1~5のように水酸化カルシウムを触媒としてグリセロリシス反応を行い、その後、水酸化カルシウムに対して中和剤を1.2モル倍以上添加して中和することにより、脱色工程で活性白土と触媒中和物を容易に濾過して除くことができ、高い収率でエステル交換油脂を得ることができた。これに対して、比較例1~3のように水酸化カルシウムに対して中和剤を1.2モル倍未満とした場合、脱色工程で活性白土と触媒中和物を容易に濾過できず、収率が低かった。