(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】包装袋の製造方法及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20230425BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
B65D81/26 M
B65D30/02
(21)【出願番号】P 2019080489
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000234122
【氏名又は名称】萩原工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】國定 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】平松 直道
(72)【発明者】
【氏名】川口 公太郎
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-066846(JP,A)
【文献】特開昭61-264031(JP,A)
【文献】特開平07-041402(JP,A)
【文献】特開2012-035256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/26
B65D 30/00-33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムを溶着して得られる袋本体に機能材を封入した包装袋の製造方法であって、
機能材として低融点ポリオレフィン樹脂及び充填材を含む樹脂組成物を延伸してなる多孔質フィルムからなる帯状体を用い、
袋本体の溶着工程で、袋本体をなす熱可塑性樹脂フィルムの間に帯状体を挟み込み、帯状体の一部を袋本体に溶着し、帯状体を包装袋内に配置
し、
前記低融点ポリオレフィン樹脂は、前記袋本体を構成する熱可塑性樹脂よりも融点が低いものであり、
前記多孔質フィルムは、前記充填材の周囲に空隙を有するものである包装袋の製造方法。
【請求項2】
熱可塑性フィルムの長手方向と帯状体の長手方向を揃えて溶着工程に供給される請求項1に記載の包装袋の製造方法。
【請求項3】
帯状体の厚みが10~500μmである請求項1又は2に記載の包装袋の製造方法。
【請求項4】
帯状体は充填材の周囲に空隙を形成し、複数の空隙同士が連なり連通孔を形成している請求項1から3いずれかに記載の包装袋の製造方法。
【請求項5】
溶着された熱可塑性フィルムで構成される袋本体と、袋本体に封入された機能材とを有する包装袋であり、
機能材は、低融点ポリオレフィン樹脂と充填材とを含む樹脂組成物で構成され、延伸された状態の多孔質フィルムからなる帯状体であり、
帯状体は、袋本体を構成する熱可塑性樹脂フィルムの間に挟み込まれており、包装袋内に配置され
ており、
前記低融点ポリオレフィン樹脂は、前記袋本体を構成する熱可塑性樹脂よりも融点が低いものであり、
前記多孔質フィルムは、前記充填材の周囲に空隙を有するものである包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋の製造方法及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、医薬品、又は精密機器を含む金属部品等を包装する資材として、熱可塑性樹脂からなるフィルム又はシートを使用した種々の軟包装袋が提案されている。包装袋に封入される物の中には湿度や酸素に弱い物品もある。そのような性質の物品を封入する場合、物品と共に目的に応じて機能材、例えば乾燥剤、脱酸素剤、又は防錆剤等を包装袋に封入している。
【0003】
例えば、乾燥剤としてシリカゲル等の粒状の物質が一般的に使用される。そのような粒状の物質は、透湿性フィルムや紙製のシートで袋状に包装された状態で包装袋に物品と共に封入されている。しかし、この方法では物品を包装袋から取り出す際に、乾燥剤が物品に付着して一緒に取り出されてしまうことがしばしばある。特に物品が食品の場合には乾燥剤が食品に付着していることに気づかず、誤飲や誤食の事故に繋がりやすかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭59-87479号公報
【文献】特開2016-113213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように脱酸素剤を内包する収納袋を物品の保存袋の内部へ固定し、商品と共に取り出せないよう工夫した例もある。しかしながら、脱酸素剤を内包した収納袋は、脱酸素剤によって収納袋が膨らんだ状態になり、その周囲を均一に押圧することが難しくなることがある。また、収納袋を強固に融着しようとすれば保存袋に穴が開きやすくなってしまうことがあり、そのようなときは緩めに融着せざるを得ない。商品は物によっては保管、輸送、販売の過程で大きく揺り動かされることがあり、その摩擦や衝撃によって、前記脱酸素剤を封入した収納袋の接着が剥がれることがあった。また、融着工程において収納袋を適切な位置に配置することが難しくなることがあった。配置がずれると融着の際、脱酸素剤が噛み込むことで、収納袋のシートが過剰に引張られるなどして、融着部分と非融着部分の境界線から収納袋のシートが破損したりして脱酸素剤が袋内へ落下することがあった。
【0006】
特許文献2のように、吸湿成分としてゼオライトを含むフィルムとガス吸着成分としてゼオライトを含むフィルムとで包装袋を形成する試みも行われている。この場合、乾燥剤が別体で取り付けられていないため誤飲のおそれは低下する。しかし、単にゼオライトを配合しただけのフィルムはヒートシール性が得られにくい。ヒートシールが十分でない場合は、包装袋内の十分な気密性を保つことが難しい。このため、包装袋に封入された内容物が湿気たり、金属の場合は錆が発生したり、と機能材本来の効果を十分に発揮できないものになることもあった。また、包装袋では風合いや破れにくさ等といった性能も要求されるが、上記のような包装袋では、使用できる用途にも制約が生じていた。
【0007】
本発明は、包装袋内において機能材の落下がなく、気密性に優れるため機能材の効果の損失が少ない包装袋とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の方法により上記課題を解決する。熱可塑性樹脂フィルムを溶着して得られる袋本体に機能材を封入した包装袋の製造方法であって、機能材として低融点ポリオレフィン樹脂及び充填材を含む樹脂組成物を延伸してなる多孔質フィルムからなる帯状体を用い、袋本体の溶着工程で、袋本体をなす熱可塑性樹脂フィルムの間に帯状体を挟み込み、帯状体の一部を袋本体に溶着し、帯状体を包装袋内に配置する包装袋の製造方法である。
【0009】
また、溶着された熱可塑性フィルムで構成される袋本体と、袋本体に封入された機能材とを有する包装袋であり、機能材は、低融点ポリオレフィン樹脂と充填材とを含む樹脂組成物で構成され、延伸された状態の多孔質フィルムからなる帯状体であり、帯状体は、袋本体を構成する熱可塑性樹脂フィルムの間に挟み込まれており、包装袋内に配置された包装袋である。
【0010】
上記の製造方法において、熱可塑性フィルムの長手方向と帯状体の長手方向を揃えて溶着工程に供給することが好ましい。
【0011】
上記の包装袋及び上記の製造方法において、帯状体の厚みが10~500μmであることが好ましい。
【0012】
上記の包装袋及び上記の製造方法において、帯状体は充填材の周囲に空隙を形成し、複数の空隙同士が連なり連通孔を形成していることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、包装袋内において機能材の落下がなく、気密性に優れるため機能材の効果の損失が少ない包装袋及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の包装袋の一実施形態を示す平面図である。
【
図4】包装袋の製造方法の一実施形態を模式的に示した図である。
【
図5】
図4に示した工程の一部を上方から示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について説明するが、本発明の技術的範囲はこの実施形態に限定されるものではなく、対象とする内容物の種類等に応じてその構成を適宜変更することができる。
【0016】
本発明の包装袋の一実施形態を
図1及び
図2に示す。包装袋の袋本体1は、
図1に示すように、熱可塑性樹脂フィルム2を溶着して得られ、袋本体1には機能材となる帯状体3が封入される。
図1に示す袋本体1は、矩形であり、その三方が溶着されている。
図1における機能材は、充填材を含む樹脂組成物からなる帯状の多孔質フィルムであり、袋本体1に機能材の一部が溶着された状態で封入されている。
【0017】
<熱可塑性樹脂フィルム>
袋本体に用いられる熱可塑性樹脂フィルムは、例えば熱可塑性樹脂をインフレーション法やTダイ法等の公知の押出成形方法により成形することで作製される。この熱可塑性樹脂フィルムは適宜延伸されたものであってもよい。
【0018】
熱可塑性樹脂フィルムに用いられる熱可塑性樹脂は、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、又はポリアミド等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、袋本体に入れる内容物等を考慮して適宜選択され、単層のみならず複数層で構成してもよい。単層又は複数層の熱可塑性樹脂フィルムを作製するに際しては、これらの樹脂を組み合わせても差し支えない。中でも低比重で、油分等に反応しにくく、耐久性に優れ、ヒートシール性が良好である等の観点から、少なくとも熱可塑性樹脂フィルムの溶着面にはポリオレフィンを用いるとよい。また、ポリオレフィンとしては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体等が挙げられ、袋本体では破れにくさが要求されることが多いことから、高密度ポリエチレンやポリプロピレンを用いることが特に好ましい。
【0019】
<機能材>
機能材は包装袋内で目的に応じた機能を得るために用いられる。例えば、包装袋内を乾燥させるために吸湿成分を配合させたり、内容物への錆の発生を防止する目的で防錆剤を配合させたりして、内容物を適切な状態で保存させる。その他、後述する多孔質フィルムの多孔質部分そのものも機能材として機能する。
【0020】
本実施形態の包装袋において、機能材となる帯状体3は、
図3に示すように、低融点ポリオレフィン樹脂31、充填材32、及び充填材32の周囲の空隙33(多孔質部分ということがある)を含む。ここでいう低融点ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、プロピレン-エチレンランダム共重合体、又は低立体規則性ポリプロピレン等が挙げられる。
【0021】
低融点ポリエチレン樹脂とは、例えば、ポリエチレンを主体にしたポリオレフィンの場合、80~125℃の融点を有する樹脂が例示され、ポリプロピレンを主体にしたポリオレフィンの場合、90~150℃の融点を有する樹脂が例示される。総じて、この低融点ポリオレフィン樹脂は80~150℃の融点を有することが好ましい。帯状体に用いられる樹脂は、上記融点の範囲にあれば袋本体の熱可塑性樹脂フィルムに用いられる樹脂と融点が同等のものであっても構わないが、特に高いヒートシール性を得る観点から袋本体に用いられる熱可塑性樹脂よりも低い融点の樹脂を用いる方が好ましい。後述するが、低融点ポリオレフィン樹脂を用いることが高いヒートシール性を実現する上で重要である。さらに低融点ポリオレフィン樹脂は、結晶化しにくいことで低融点を示すものが多く、延伸を行っても結晶化しにくい。機能材は、充填材及びその周囲の空隙を利用して、機能を得るものであり、結晶化が高くなりすぎると当該機能に関連する成分が樹脂内を通りにくくなり、当該機能が得られにくくなる。その結晶化が抑えられ、機能が発現しやすくなる観点でも低融点ポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。
【0022】
機能材となる帯状体に含まれる充填材は目的に応じて任意の充填剤を一種以上選択することができる。充填材としては、例えば、シリカ、酸化カルシウム、塩化カルシウム、ゼオライト、若しくはモレキュラーシーブ等の吸湿効果のある材料;又は炭酸カルシウム、タルク、マイカ、炭酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化チタン、若しくはアルミニウム等の無機フィラー等が挙げられる。空隙を形成する観点から無機材料であることが好ましいが、有機材料であっても差し支えない。防錆剤、虫除け剤、殺菌剤、又は芳香剤等の各種機能性成分を添加して併用してもよい。
【0023】
機能材となる帯状体は、例えば、低融点ポリオレフィン樹脂及び充填材を含む樹脂組成物をインフレーション法、Tダイ法等の押出成形方法で形成した後、延伸することで充填材の周囲に空隙が形成された多孔質フィルムとし、その後多孔質フィルムを細幅状にスリットすることで形成することができる。延伸する主な目的は、充填材の周囲に空隙を作ること、機能材の機能に関連する成分を当該空隙に取り込むことなどである。これに加えて、帯状体は、延伸されていることで引張強度に優れ、加工時に取り扱いやすく、包装袋内に配置した後に内容物との摩擦が生じても簡単には破損しにくくなる。ゆえに帯状体が包装袋内にちぎれ落ちることなどから起こる誤飲等の危険性を低減させる。帯状体をちぎれにくくする観点では、二軸に延伸するよりも一軸延伸に留める方が好ましい。一軸延伸を行うことで、帯状体の長さ方向には裂けやすくなるが、幅方向には裂けにくくなる。帯状体の長さ方向の両端を袋本体と共に溶着すれば、帯状体が包装袋内に落ちることはほぼなくなる。
【0024】
<包装袋の製造方法>
上記の実施形態に係る包装袋の製造方法の一実施形態を、
図4、及び
図5を用いて説明する。
図4は
図1のような形状の包装袋を製造する方法の一例である。
図4及び
図5において、符号2は熱可塑性樹脂フィルムの巻回物であり、符号3は帯状体の巻回物である。
図4では、上下から袋本体の構成材である熱可塑性樹脂フィルム2を供給し、その間に機能材となる帯状体3を配置し、三層を重ね合わせた状態でヒートシール工程へ供給している。
【0025】
図4では、熱可塑性樹脂フィルム2の長手方向と帯状体3の長手方向を揃えて連続してヒートシール工程に供給している。熱可塑性樹脂フィルムと帯状体とをヒートシールするに際しては、必ずしも製造工程の流れ方向と同じ方向に挿入される必要はなく、流れ方向と垂直方向に挿入することも可能である。その場合は帯状体の繰り出し及び挿入を間欠的に行ってもよい。しかしながら、本実施形態の方法では、帯状体に対して延伸を行うため、帯状体に熱収縮が生じやすい。このため、帯状体の位置がずれにくくなるように対策が必要なる場合もある。
図4のように熱可塑性樹脂フィルムの長手方向と帯状体の長手方向とを揃えて連続してヒートシール工程に供給すると、簡単な装置でありながら、熱可塑性樹脂フィルムに対し、帯状体の位置がずれにくくなり、ヒートシール工程で帯状体がずれず、シワもほとんど入らない状態で確実に溶着することができるため、好ましい。なお、帯状体を連続してヒートシール工程に供給した場合、帯状体は袋本体の一辺に亘る長さで配置される。
【0026】
図5は、
図4のヒートシール工程を上方から見た模式図である。ヒートシール工程に供給された熱可塑性樹脂フィルム2及び帯状体3を、帯状体3の一部が熱可塑性樹脂フィルム2に一体化されるよう溶着する。なお、第1溶着部4は熱可塑性樹脂フィルム2のみが溶着されている部分であり、第2溶着部5は熱可塑性樹脂フィルム2及び帯状体3が溶着されている部分である。第1溶着部4及び第2溶着部5は共に、熱板6等の溶着具を接触させることによって、溶着される。溶着を終えた後は、包装袋が連続して連なった連続袋体の状態をなしている。ヒートシール工程の後、カット工程(図示略)にて熱可塑性樹脂フィルム2の幅方向における破線に沿ってカットされる。
【0027】
溶着位置は所望の袋形状に応じて、任意に選択される。例えばサイドシール、二方シール、三方シール、四方シール、ピローシール、ガゼットシール、合掌シール、又はスタンディングパウチ等、用途に応じて各種形態の包装袋を形成できる。
【0028】
形成される包装袋において帯状体は熱可塑性樹脂フィルムの一辺と平行な方向に挿入されることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムの一辺と平行な方向に挿入することで、封入される内容物との摩擦が少なくなり、帯状体の破損や落下を防ぐことができる。なお、
図1には、三辺を溶着した袋形状が示されているが、内容物を入れた後、上辺を溶着して、最終的に四方シールの梱包体として利用される。
【0029】
帯状体を包装袋のいずれの位置に配置するかは任意に選択する。包装袋の開封を阻害せず、内容物の充填性も阻害しない位置であることから、
図1のように包装袋の底部にあたる辺に沿って帯状体が配置されることが好ましい。また、特に帯状体が長手方向に一軸延伸されている場合には、
図1のように帯状体の長手方向における両端部を袋本体をなす熱可塑性フィルムと溶着することで、帯状体が幅方向からの外力により破損しにくくなり、包装袋内に帯状体がちぎれ落ちることもほとんどなくなる。
【0030】
溶着方法は熱板、熱風、超音波、インパルシーラー等の公知の方法が挙げられる。それぞれの手法に応じて、適宜の溶着具を使用すればよい。例えば、強い圧力と共に加熱が行える熱板溶着によれば、高いヒートシール性と気密性が得られるので、好ましい。
【0031】
本実施形態の包装袋では、低融点ポリオレフィン樹脂を帯状体に用いるので、著しく高い温度で溶着をかける必要がない。溶着温度は高いほど樹脂の溶解度は上がり溶着には有利であるが、同時に高温による溶着にはデメリットも存在する。
【0032】
その一つは熱可塑性樹脂フィルムの熱劣化である。熱可塑性樹脂からなるフィルムが高温に曝されることによって劣化が起こることは一般的に知られている。溶着によって成形された包装袋は、フィルムの溶着部分が劣化し、そこから包装袋が破損する可能性を少なからず含む。
【0033】
二つ目はポリ玉と呼ばれる現象が生じやすくなることである。複数の層を溶着によって一体化させる場合、溶着部分と非溶着部分の境目において、溶解した樹脂がはみ出して層間に付着する。これをポリ玉といい、これが起点となり破袋を起こすおそれがある。ポリ玉が包装袋の内容物との摩擦等で内部に剥がれ落ちると、コンタミや食品用途の場合には誤飲、誤食のおそれも出てくる。この現象は特に圧力を掛けながら加熱する際に起きやすい。
【0034】
三つ目は帯状体の機能性に関係する成分が熱分解しやすくなることである。高温に曝すことによって揮発性の物質を含む場合には、成分が揮発しやすくなり、溶着する面に出てきて接着面に介在し、高い接着強度が得られにくくなる。
【0035】
本実施形態の包装袋では、低融点ポリオレフィン樹脂を帯状体に用いるため、上記各々の問題について発生確率が小さくなる。
【0036】
通常であれば、袋本体をなす熱可塑性樹脂フィルムの間に一層挟むために、溶着に必要な熱量が不足し、熱可塑性樹脂フィルム同士を溶着するよりも高い温度に設定する必要がある。ここで高温の溶着をしない場合、通常ならば、ヒートシール性や気密性が不足する等の問題が出てくる。しかしながら、本実施形態の包装袋においては、帯状体に低融点ポリオレフィン樹脂からなる多孔質フィルムを用いることで、その問題を解決できる。溶着を行う際に熱可塑性樹脂は溶解状態にあり、流動性が高くなっている。その状態でさらに熱板6によって圧力をかけると帯状体の多孔質部分に溶解された樹脂が入り込み、強固に溶着されると共に、包装袋にした際の気密性が向上する。第1溶着部4と第2溶着部5の境目等では第1溶着部4と第2溶着部5の厚みが異なることから隙間が生じやすいが、このような隙間にも樹脂が入り込み、その隙間を埋める。
【0037】
溶着は帯状体の一部において行われる。これは帯状体が多孔質である特徴を生かすためである。
図3における帯状体の多孔質部分33は、多孔質中に包装袋内から除去したい成分を取り込む、又は多孔質部分に担持された成分を放出する機能を有する。溶着を行えば、その多孔質部分は前述の通り溶解された樹脂によって閉塞され、多孔質としての機能を失う。多孔質の特徴を生かすためには帯状体が溶着されていない部分が包装袋の内部に配置されている必要がある。
【0038】
さらに帯状体の多孔質部分は、複数の空隙が連なり、連通孔を形成していることが好ましい。溶着されていない部分において多孔質部分の機能をより効果的に発揮させる上では、連通孔ができるくらいに充填材を分散させ、延伸させておくことが有利である。
【0039】
例えば充填材に吸湿効果のある材料を用いた場合には、包装袋内の湿気を連通孔を通じてより多く吸収できる。単にトータルの吸湿量が多いだけではなく、連通孔が存在している場合には初期吸湿速度が速いのが特徴である。初期の吸湿速度が速いため、内容物が湿気を吸う前に包装袋内の湿度を取り払うことができ、内容物を乾燥した状態で保存可能である。
【0040】
充填材は配合量が多いほど包装袋の機能は向上すると考えられるが、実際には樹脂飽和量を超えて配合すると、成形物表面に充填材の成分が溶け出すことがある。ここで、連通孔を有していれば、連通孔内にも成分を担持させることができるため、樹脂飽和量を超えて充填材を配合することが可能である。充填材が揮発性の成分である場合には、連通孔に多量の成分が担持された帯状体が包装袋に封入されると、連通孔を通じて徐放される成分の効果が長期間持続することとなり好ましい。
【0041】
包装袋において、より優れたヒートシール性と気密性を実現するためには、帯状体の厚みは10~500μmであることが好ましい。機能材において機能性を得るためには厚みが厚い方が有利といえる。しかし、厚みが厚くなりすぎると、熱が通りにくくなり溶着しにくくなることがある。特に第1溶着部4と第2溶着部5の境目にあたる部分で隙間が生じることがある。溶融した樹脂がはみ出しやすくなりポリ玉が発生することがある。本実施形態の包装袋では、上記のとおり、多孔質の機能を利用する。このため、比較的薄い厚みであっても高い機能性を発揮する。また、多孔質を利用することで、溶着時に押圧しても、樹脂が空隙を塞ぐように流れるために、ポリ玉になりにくい。
【0042】
多孔質部分に満たされる樹脂は、溶着部分の熱可塑性樹脂フィルム及び帯状体の樹脂であるから、多孔質部分が多すぎるとその全てを樹脂で満たすことが難しくなることがある。多孔質部分の割合は包装袋に封入される帯状体あたり20~60%の範囲にあることが好ましい。この範囲を実現しようとすると帯状体の厚みは10~500μmが好適である。より好ましくは50~300μmである。
【0043】
多孔質部分の割合は帯状体に含まれる充填材の割合に左右されるため、充填材は、帯状体の質量の20質量%以上を占める程度に添加することが好ましい。より好適には帯状体の質量の40~70質量%の範囲である。この範囲で充填材を添加することによって、延伸によって形成される複数の空隙がつながりやすくなる。
【0044】
上記ヒートシール工程の後、カット工程の前又は後で内容物が詰められることになり、内容物が詰められた後、密閉するため開口されている一辺を閉じて梱包体になる。
【0045】
包装袋に詰められる内容物に特に制限されるものではなく、食品、医薬品、電子部品、精密機械、又は記録材料等の梱包や包装に用いることができる。
【0046】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
(熱可塑性樹脂フィルムA)
市販されている厚さ50μmのOPPフィルムのロールを用意し、熱可塑性フィルムAとした。
(帯状体A)
プロピレン-エチレンランダム共重合体(密度0.900g/cm3、融点135℃)60質量%と、シリカ(粒径3.7μm)40質量%とを混合し、インフレーション法を用いてフィルムを作製した。フィルムを細断後、一軸延伸及びアニーリング処理を行ったものを巻取り、幅15mmの帯状体Aを得た。帯状体Aの厚みは110μmであった。
【0048】
(包装袋の製造方法)
図4、及び
図5に示すとおり、2枚の熱可塑性樹脂フィルムAの間に帯状体Aを端部を合わせて挟み込むようにして、包装袋の製造設備へ供給する。その状態で三方を溶着し連続袋体を作製する。その後カット工程で各々の袋体を切り離し本発明の包装袋Aを得た。
【0049】
[比較例1]
帯状体Aを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして包装袋Xを得た。
【0050】
[実施例2]
(熱可塑性フィルムB)
市販されている厚さ60μmのポリエチレンフィルムのロールを用意し、熱可塑性フィルムBとした。
【0051】
(帯状体B)
線状低密度ポリエチレン(密度0.932g/cm3、融点123℃)30質量%と、炭酸カルシウム(平均粒径5μm)60質量%と、有機アミン系防錆剤10質量%とを混合した混合物を、Tダイ法によりフィルムにした。得られたフィルムを、細断後、延伸及びアニーリング処理を行い巻き取ることで、幅17mmの帯状体Bを得た。帯状体Bの厚みは160μmであった。
【0052】
得られた帯状体Bと熱可塑性樹脂フィルムBを用いて実施例1と同様に製袋を行い包装袋Bを得た。
【0053】
[比較例2]
熱可塑性フィルムBの代わりに、市販の気化性防錆フィルムのロールを用い、帯状体Bを用いなかったこと以外は実施例2と同様にして包装袋Yを得た。
【0054】
包装袋A及び包装袋Xに対し、それぞれ、内容物として野菜を素材としたフライ菓子を詰めた。包装袋Xにのみ小袋に収納されたパッケージ型の乾燥剤として「エージレスドライ」(登録商標)(三菱ガス化学株式会社製)を詰めた。これを密閉し、梱包体とした。それぞれの梱包体について、25℃で7日間、暗所にて保存した。その後梱包体を開封し、内容物の風味を確認した。包装袋Aの中のフライ菓子の風味は、包装袋Xの中のフライ菓子に比べて、何ら遜色はなかった。包装袋Xの中のフライ菓子を取り出す際には、パッケージ型の乾燥材がフライ菓子と共に外に出てきてしまった。一方、包装袋Aの中のフライ菓子を取り出す際には、帯状体は包装袋に固定されているため、フライ菓子だけを外に取り出すことができた。
【0055】
包装袋B及び包装袋Yに対し、内容物として金属片をそれぞれ封入した。これを、密閉し、梱包体とした。それぞれの梱包体について、25℃で14日間、暗所にて保存した。保存開始から7日後、14日後に梱包体を開封し、内容物を目視で観察し、錆の発生の有無を確認したが、いずれも錆の発生は認められなかった。
【符号の説明】
【0056】
1 袋本体
2 熱可塑性樹脂フィルム
3 帯状体
31 低融点ポリオレフィン樹脂
32 充填材
33 空隙
4 第1溶着部
5 第2溶着部
6 熱板