(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】蓋付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 41/04 20060101AFI20230425BHJP
A47J 41/02 20060101ALI20230425BHJP
B65D 81/18 20060101ALI20230425BHJP
B65D 81/26 20060101ALI20230425BHJP
A45C 11/20 20060101ALN20230425BHJP
【FI】
B65D41/04 400
A47J41/02 104A
B65D81/18 A
B65D81/18 E
B65D81/26 D
A45C11/20 F
(21)【出願番号】P 2019090154
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591261602
【氏名又は名称】サーモス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 雄志
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-227034(JP,A)
【文献】特開2018-144832(JP,A)
【文献】特開2008-137670(JP,A)
【文献】特開2011-230807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
A47J 41/02
B65D 81/18
B65D 81/26
A45C 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部が設けられた容器本体と、
前記開口部を開閉する蓋体とを備え、
前記蓋体は、前記開口部を覆う外蓋と、
前記開口部から前記容器本体の内側に嵌め込まれる内蓋と、
前記内蓋の外周部に取り付けられた状態で、前記容器本体と前記内蓋との間を密閉するシール部材と、
前記外蓋の内側中央部に位置して、前記内蓋の内側に嵌め込まれる中栓と、
前記中栓の底面中央部に位置して、前記内蓋の中央部に設けられた通気孔を閉塞する栓体とを有し、
前記容器本体の外周部に設けられた雄ネジ部と、前記外蓋の内周部に設けられた雌ネジ部との螺合によって、前記容器本体に対して前記外蓋が着脱自在に取り付けられると共に、
前記雄ネジ部と前記雌ネジ部との螺合が完了する間にクリック感を付与するクリック機構が設けられ
、
前記クリック機構は、前記内蓋に設けられた外側係合凸部と、前記中栓に設けられた内側係合凸部とを有して、前記外側係合凸部と前記内側係合凸部との何れか一方が何れか他方を乗り越えたときにクリック感を付与することを特徴とする蓋付き容器。
【請求項2】
前記クリック機構は、前記内蓋に設けられて、前記内蓋の拡径方向に弾性変形可能な弾性片を有し、
前記外側係合凸部は、前記弾性片に設けられていることを特徴とする請求項
1に記載の蓋付き容器。
【請求項3】
前記内蓋を前記開口部から前記容器本体の内側に嵌め込んだ後に、前記中栓を前記内蓋の内側に嵌め込んだ状態から、前記外蓋を閉方向に回すことによって、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部とが螺合されて、前記容器本体に前記蓋体が取り付けられた状態となり、
前記容器本体に前記蓋体が取り付けられた状態から、前記外蓋を開方向に回すことによって、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部との螺合が解除されて、前記容器本体から前記蓋体が取り外し可能な状態となることを特徴とする請求項1
又は2に記載の蓋付き容器。
【請求項4】
前記外側係合凸部と前記内側係合凸部との何れか一方が何れか他方を乗り越えるときの抵抗が、前記外蓋を閉方向に回したときよりも前記外蓋を開方向に回したときの方が大きいことを特徴とする請求項
3に記載の蓋付き容器。
【請求項5】
前記クリック機構は、前記内蓋に設けられたストッパー凸部を有し、
前記内側係合凸部と前記外側係合凸部との何れか一方が何れか他方を乗り越えたときに前記外側係合凸部が前記内側係合凸部と前記ストッパー凸部との間に係合された状態となることを特徴とする請求項
3又は
4に記載の蓋付き容器。
【請求項6】
前記容器本体に前記蓋体が取り付けられた状態から、前記外蓋を開方向に回すことによって、前記通気孔の周囲に対する前記栓体の当接が解除されて、前記通気孔が開放された状態となり、
更に前記外蓋を開方向に回すことによって、前記内側係合凸部に前記ストッパー凸部が当接された状態で、前記内蓋が前記外蓋と一体に開方向に回ることを特徴とする請求項
5に記載の蓋付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、真空断熱構造を有する容器本体によって保温・保冷機能を持たせた蓋付き容器がある(例えば、下記特許文献1を参照。)。このような蓋付き容器では、内蓋及び外蓋を用いて容器本体に設けられた開口部を密閉する構造が採用されている。
【0003】
具体的に、蓋付き容器は、上部に開口部が設けられた容器本体と、開口部から容器本体の内側に嵌め込まれた状態で開口部を閉塞する内蓋と、内蓋に取り付けられた状態で容器本体と内蓋との間を密閉する止水パッキン(シール部材)と、開口部を外側から覆った状態で容器本体に螺合により装着される外蓋とを備えている。また、蓋付き容器は、内蓋に設けられた空気孔(通気孔)を外蓋に設けられた閉栓パッキン(栓体)が閉塞する構造となっている。
【0004】
蓋付き容器では、容器本体に外蓋が装着されたときに、閉栓パッキンが内蓋と当接されることによって、内蓋の上方側への移動を規制している。また、蓋付き容器では、容器本体から外蓋を取り外す際に、閉栓パッキンによる空気孔の閉塞が解除される。これにより、容器本体内の圧力が低下した(負圧となった)場合でも、容器本体から外蓋を取り外したときに空気孔を通して外気が導入されるため、容器本体内の圧力が大気圧と同じとなる。したがって、内蓋が容器本体の内側に引っ張られた状態を解除し、内蓋を容器本体から容易に取り外すことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来の蓋付き容器では、例えば容器本体の内部に高温の内容物を入れてから時間が経過したときに、その温度が下がることによって、内蓋及び外蓋により密閉された容器本体内の圧力が低下し(負圧となり)、内蓋が容器本体に押し付けられた状態となる。
【0007】
このとき、容器本体と外蓋との間で螺合による締結力が減少することにより、外蓋が緩み易くなることがあった。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、蓋体の緩みを防止し、蓋体を容易に且つ安全に取り外すことを可能とした蓋付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 上部に開口部が設けられた容器本体と、
前記開口部を開閉する蓋体とを備え、
前記蓋体は、前記開口部を覆う外蓋と、
前記開口部から前記容器本体の内側に嵌め込まれる内蓋と、
前記内蓋の外周部に取り付けられた状態で、前記容器本体と前記内蓋との間を密閉するシール部材と、
前記外蓋の内側中央部に位置して、前記内蓋の内側に嵌め込まれる中栓と、
前記中栓の底面中央部に位置して、前記内蓋の中央部に設けられた通気孔を閉塞する栓体とを有し、
前記容器本体の外周部に設けられた雄ネジ部と、前記外蓋の内周部に設けられた雌ネジ部との螺合によって、前記容器本体に対して前記外蓋が着脱自在に取り付けられると共に、
前記雄ネジ部と前記雌ネジ部との螺合が完了する間にクリック感を付与するクリック機構が設けられ、
前記クリック機構は、前記内蓋に設けられた外側係合凸部と、前記中栓に設けられた内側係合凸部とを有して、前記外側係合凸部と前記内側係合凸部との何れか一方が何れか他方を乗り越えたときにクリック感を付与することを特徴とする蓋付き容器。
〔2〕 前記クリック機構は、前記内蓋に設けられて、前記内蓋の拡径方向に弾性変形可能な弾性片を有し、
前記外側係合凸部は、前記弾性片に設けられていることを特徴とする前記〔1〕に記載の蓋付き容器。
〔3〕 前記内蓋を前記開口部から前記容器本体の内側に嵌め込んだ後に、前記中栓を前記内蓋の内側に嵌め込んだ状態から、前記外蓋を閉方向に回すことによって、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部とが螺合されて、前記容器本体に前記蓋体が取り付けられた状態となり、
前記容器本体に前記蓋体が取り付けられた状態から、前記外蓋を開方向に回すことによって、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部との螺合が解除されて、前記容器本体から前記蓋体が取り外し可能な状態となることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の蓋付き容器。
〔4〕 前記外側係合凸部と前記内側係合凸部との何れか一方が何れか他方を乗り越えるときの抵抗が、前記外蓋を閉方向に回したときよりも前記外蓋を開方向に回したときの方が大きいことを特徴とする前記〔3〕に記載の蓋付き容器。
〔5〕 前記クリック機構は、前記内蓋に設けられたストッパー凸部を有し、
前記内側係合凸部と前記外側係合凸部との何れか一方が何れか他方を乗り越えたときに前記外側係合凸部が前記内側係合凸部と前記ストッパー凸部との間に係合された状態となることを特徴とする前記〔3〕又は〔4〕に記載の蓋付き容器。
〔6〕 前記容器本体に前記蓋体が取り付けられた状態から、前記外蓋を開方向に回すことによって、前記通気孔の周囲に対する前記栓体の当接が解除されて、前記通気孔が開放された状態となり、
更に前記外蓋を開方向に回すことによって、前記内側係合凸部に前記ストッパー凸部が当接された状態で、前記内蓋が前記外蓋と一体に開方向に回ることを特徴とする前記〔5〕に記載の蓋付き容器。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、蓋体の緩みを防止し、蓋体を容易に且つ安全に取り外すことを可能とした蓋付き容器を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る蓋付き容器を上方側から見た分解斜視図である。
【
図2】
図1に示す蓋付き容器を下方側から見た分解斜視図である。
【
図3】
図1に示す蓋付き容器の構成を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す蓋付き容器が備える外蓋及び中栓を下方側から見た斜視図である。
【
図5】
図1に示す蓋付き容器が備える内蓋を上方側から見た斜視図である。
【
図6】
図1に示す蓋付き容器が備える内蓋を下方側から見た斜視図である。
【
図7】
図1に示す蓋付き容器が備えるクリック機構において、内蓋に対して中栓を閉方向に回したときの内側係合凸部が外側係合凸部を乗り越える前の状態を上方側から見た水平断面図である。
【
図8】
図1に示す蓋付き容器が備えるクリック機構において、内蓋に対して中栓を閉方向に回したときの内側係合凸部が外側係合凸部を乗り越えた後の状態を上方側から見た水平断面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る蓋付き容器が備える外蓋及び中栓を下方側から見た斜視図である。
【
図10】
図9に示す蓋付き容器が備える内蓋を上方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば
図1~
図8に示す蓋付き容器1Aについて説明する。
なお、
図1は、蓋付き容器1Aを上方側から見た分解斜視図である。
図2は、蓋付き容器1Aを下方側から見た分解斜視図である。
図3は、蓋付き容器1Aの構成を示す断面図である。
図4は、蓋付き容器1Aが備える外蓋9及び中栓11を下方側から見た斜視図である。
図5は、蓋付き容器1Aが備える内蓋10を上方側から見た斜視図である。
図6は、蓋付き容器1Aが備える内蓋10を下方側から見た斜視図である。
図7は、蓋付き容器1Aが備えるクリック機構19において、内蓋10に対して中栓11を閉方向に回したときの内側係合凸部20が外側係合凸部21を乗り越える前の状態を上方側から見た水平断面図である。
図8は、蓋付き容器1Aが備えるクリック機構19において、内蓋10に対して中栓11を閉方向に回したときの内側係合凸部20が外側係合凸部21を乗り越えた後の状態を上方側から見た水平断面図である。
【0013】
本実施形態の蓋付き容器1Aは、
図1及び
図2に示すように、容器本体2と、容器本体2の上部に設けられた開口部2aを開閉する蓋体3とを備えている。蓋付き容器1Aは、真空断熱構造を有する容器本体2によって、容器本体2に収容された具材(内容物)を保温することが可能なスープジャーである。
【0014】
なお、本実施形態の蓋付き容器1Aは、全体として略円筒状の外観形状を有しているが、蓋付き容器1Aの外観形状については、特に限定されるものではなく、サイズやデザイン等に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。また、容器本体2の外周面には、塗装や印刷等が施されていてもよい。
【0015】
容器本体2は、
図1、
図2、及び
図3に示すように、例えばステンレス等からなる金属製の外容器4及び内容器5を有している。容器本体2は、一端が開口した有底筒状の外容器4の内側に、一端が開口した有底筒状の内容器5を収容した状態で、互いの開口端同士が接合されると共に、これら外容器4と内容器5との間に真空断熱層6が設けられた断熱容器により構成されている。
【0016】
真空断熱層6は、例えば、高真空に減圧(真空引き)されたチャンバー内で、外容器4の底面中央部に設けられた脱気孔をろう材により封止することによって形成することができる。
【0017】
容器本体2では、このような真空断熱構造を有することで、保温や保冷といった機能を持たせることが可能である。また、容器本体2では、このような真空断熱構造を有することで、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)の差により外容器4及び内容器5に対して常に張力が加わった状態となり、これら外容器4及び内容器5の機械的強度が増すことになる。これにより、外容器4及び内容器5の板厚を薄くした場合でも、容器本体2の剛性を高めることが可能であり、この容器本体2の軽量化を図ることが可能である。
【0018】
容器本体2は、略円形状の底面部2bと、底面部2bの外周から略円筒状に起立した胴部2cと、胴部2cの上部側において縮径された略円筒状の口頸部2dとを有している。また、口頸部2dの上端部は、容器本体2の開口部2aとして、円形状に開口している。また、口頸部2d(外容器4)の外周面には、雄ネジ部7が設けられている。さらに、口頸部2dと胴部2cとの間の内周面には、リング状の張出部8が全周に亘って縮径方向に突出して設けられている。
【0019】
蓋体3は、容器本体2の開口部2aを覆う外蓋9と、開口部2aから容器本体2の内側に嵌め込まれる内蓋10と、内蓋10の底面外周部に取り付けられた状態で、容器本体2と内蓋10との間を密閉するシール部材13と、外蓋9の内側中央部に位置して、内蓋10の内側に嵌め込まれる中栓11と、中栓11の底面中央部に位置して、内蓋10の底面中央部に設けられた通気孔17を閉塞する栓体18とを有している。
【0020】
外蓋9は、
図1~
図4に示すように、例えばポリプロピレン等の耐熱性樹脂からなり、容器本体2の胴部2cの外径に合わせて略円筒状に形成された周壁部9aと、周壁部9aの上部を閉塞する上壁部9bとを有している。
【0021】
周壁部9a(外蓋9)の内周面には、上述した容器本体2側の雄ネジ部7と螺合される雌ネジ部12が設けられている。蓋付き容器1Aでは、これら雄ネジ部7と雌ネジ部12との螺合によって、容器本体2に対して外蓋9が着脱自在に取り付けられている。
【0022】
蓋付き容器1Aでは、雄ネジ部7と雌ネジ部12とを螺合させながら、容器本体2に対して外蓋9を右回り(以下、「閉方向」という。)に回転させることによって、容器本体2に外蓋9を取り付けることが可能である。一方、容器本体2に外蓋9が取り付けられた状態から、容器本体2に対して外蓋9を左回り(以下、「開方向」という。)に回転させることによって、雄ネジ部7と雌ネジ部12との螺合を解除し、容器本体2から外蓋9を取り外すことが可能である。
【0023】
内蓋10は、
図1~
図3、
図5及び
図6に示すように、例えばポリプロピレン等の耐熱性樹脂からなり、略円形状の底壁部10aと、底壁部10aの外周から略円筒状に起立した周壁部10bとを有している。また、周壁部10bの外周面の上端側には、リング状の上側フランジ部10cが全周に亘って拡径方向に突出して設けられている。
【0024】
内蓋10の底面外周部には、止水パッキン13が着脱自在に取り付けられている。止水パッキン13は、容器本体2と内蓋10との間を密閉するリング状のシール部材であり、例えばシリコーンゴム等の耐熱性を有するゴムやエラストマーなどの弾性部材からなる。
【0025】
内蓋10には、リング状の下側フランジ部10dが底壁部10aの外周から拡径方向に突出して設けられている。止水パッキン13は、この下側フランジ部10dに全周に亘って嵌め付けられている。
【0026】
一方、止水パッキン13は、それ自体を弾性変形させる(引っ張り伸ばす)ことによって、下側フランジ部10dから取り外すことが可能である。これにより、内蓋10と止水パッキン13とをそれぞれ別々に洗浄することができ、内蓋10と止水パッキン13との間を衛生的に保つことが可能である。
【0027】
また、止水パッキン13の外周部には、弾性フランジ部13aが設けられている。弾性フランジ部13aは、止水パッキン13の外周面の上端から下方に向かって湾曲しながら突出した形状を有している。
【0028】
止水パッキン13は、容器本体2に蓋体3が取り付けられた際に、弾性フランジ部13aが弾性変形しながら、張出部8に全周に亘って密着した状態となる。これにより、容器本体2と内蓋10との間を止水パッキン13により密閉することができる。
【0029】
中栓11は、
図1~
図4に示すように、例えばポリプロピレン等の耐熱性樹脂からなり、有底略円筒形状を有して、上壁部9bの下面中央部に溶着等により一体に取り付けられている。中栓11の内側には、断熱層として、例えば発泡ウレタン樹脂などからなる断熱材14が配置されている。また、断熱層としては、上述した断熱材14の代わりに、空気(空隙)であってもよい。
【0030】
内蓋10には、
図1~
図3、
図5及び
図6に示すように、底壁部10aの中央部分を貫通する円形状の通気孔17が設けられている。一方、中栓11の底面中央部には、通気孔17を閉塞する栓体18が設けられている。
【0031】
栓体18は、例えばシリコーンゴム等の耐熱性を有するゴムやエラストマーなどの弾性部材からなる。栓体18は、その中央部分をドーム状に膨出させた突起部18aと、突起部18aの周囲から拡径方向に延長されたフランジ部18bと、突起部18aとは反対側から円筒状に突出された円筒部18cと、円筒部18cの外周面を切り欠くリング状の溝部18dとを有している。
【0032】
一方、中栓11は、その底面中央部に円筒部18cが嵌合される嵌合凹部11aと、嵌合凹部11aの内周面から縮径方向に突出されて溝部18dに嵌合される嵌合凸部11bとを有している。これにより、栓体18は、中栓11の底面中央部に着脱自在に取り付けられている。
【0033】
蓋体3では、容器本体2に蓋体3が取り付けられた際に、栓体18の突起部18aが弾性変形しながら、通気孔17の周囲と当接されることによって、通気孔17を閉塞することが可能となっている。また、蓋体3では、中栓11から栓体18を取り外して、中栓11と栓体18を別々に洗浄できるため、これら中栓11と栓体18との間を衛生的に保つことが可能である。
【0034】
蓋体3は、
図1、
図2及び
図4~
図8に示すように、上述した雄ネジ部7と雌ネジ部12との螺合が完了する間にクリック感を付与するクリック機構19を備えている。
【0035】
クリック機構19は、中栓11に設けられた内側係合凸部20と、内蓋10に設けられた外側係合凸部21及びストッパー凸部22とを有している。
【0036】
内側係合凸部20は、中栓11の外周面における相対(対向)する位置から、それぞれ上下方向に延在しながら拡径方向に突出して設けられている。
【0037】
外側係合凸部21は、内蓋10の周壁部10bに設けられた一対の弾性片23の先端側に設けられている。一対の弾性片23は、周壁部10bの相対(対向)する位置に周壁部10bと連続して設けられている。具体的に、各弾性片23は、その周囲を切り欠くスリット24の間から上方に向かって延長して設けられている。これにより、弾性片23は、その先端(上端)側が拡径方向に弾性変形可能となっている。
【0038】
外側係合凸部21は、弾性片23の先端(上端)側の内周面から縮径方向に突出して設けられている。また、外側係合凸部21は、内蓋10に対して中栓11を閉方向に回す側に向かって漸次勾配が高くなる傾斜面21aを有している。
【0039】
ストッパー凸部22は、周壁部10b(内蓋10)の内周面における相対(対向)する位置から、それぞれ上下方向に延在しながら縮径方向に突出して設けられている。また、ストッパー凸部22は、弾性片23の内蓋10に対して中栓11を閉方向に回す側に隣接して設けられている。
【0040】
クリック機構19では、
図7に示すように、容器本体2に対して外蓋9を閉方向(図中の右回り方向)に回すことによって、内蓋10に対して中栓11が閉方向に回転することになる。このとき、内側係合凸部20が外側係合凸部21の傾斜面21aと摺接しながら、弾性片23を拡径方向に弾性変形させる。そして、
図8に示すように、内側係合凸部20が外側係合凸部21を乗り越えることによって、内側係合凸部20が外側係合凸部21とストッパー凸部22との間に係合された状態となる。
【0041】
クリック機構19では、このような内側係合凸部20が外側係合凸部21を乗り越えたときにクリック感を得ることができる。なお、クリック機構19におけるクリック感の強弱については、内側係合凸部20、外側係合凸部21及び弾性片23の形状、表面状態、材質等で調整することが可能である。一方、クリック感を全く出さないようにすることも可能である。また、弾性片23については、その周囲を切り欠くスリット24の間から上方に向かって延長して設けられた構成に限らず、例えば、互いに並列する一対のスリット24の間において弾性変形可能に設けられた構成であってよい。また、この構成の場合、弾性片の中央部に外側係合凸部21を設けた構成とすればよい。
【0042】
クリック感を得た後に、更に容器本体2に対して外蓋9を閉方向に回すことによって、内側係合凸部20にストッパー凸部22が当接された状態で、内蓋10が外蓋9と一体に閉方向に回転する。これにより、容器本体2に対して蓋体3を取り付けることができる。
【0043】
ここで、内蓋10の中心が容器本体2の中心に対して若干ずれた位置に取り付けられていたとしても、内蓋10が外蓋9と一体に閉方向に回るうちに、緩やかなすり鉢形状に形成された張出部8の形状に沿うように内蓋10が誘導され、中心軸が合う方向へ内蓋10が移動する。これにより、容器本体2と内蓋10との中心軸が一致することで、止水パッキン13が張出部8に全周に亘って偏りなく密着し、良好な止水性を発揮することができる。
【0044】
一方、クリック機構19では、
図8に示すように、容器本体2に蓋体3が取り付けられた状態から、容器本体2に対して外蓋9を開方向(図中の左回り方向)に回すことによって、内蓋10に対して中栓11が開方向に回転することになる。このとき、
図7に示すように、弾性片23を拡径方向に弾性変形させながら、内側係合凸部20が外側係合凸部21を乗り越えることによって、内側係合凸部20と外側係合凸部21との係合が解除された状態となる。
【0045】
クリック機構19では、上述した傾斜面21aの勾配の向きによって、閉方向に向かって内側係合凸部20が外側係合凸部21を乗り越えるときよりも、開方向に向かって内側係合凸部20が外側係合凸部21を乗り越えるときの抵抗が高くなっている。これにより、容器本体2に蓋体3が取り付けられた状態において、外蓋9が容器本体2に対して不用意に緩むことを防止している。
【0046】
なお、本実施形態のクリック機構19では、上述した傾斜面21aが設けられた外側係合凸部21を内側係合凸部20が乗り越えたときにクリック感を付与する構成となっているが、それとは逆に、傾斜面が設けられた内側係合凸部20を外側係合凸部21が乗り越えたときにクリック感を付与する構成としてもよい。
【0047】
以上のような構成を有する本実施形態の蓋付き容器1Aでは、内蓋10を開口部2aから容器本体2の内側に嵌め込んだ後に、中栓11を内蓋10の内側に嵌め込んだ状態とする。そして、この状態から、外蓋9を閉方向に回すことによって、雄ネジ部7と雌ネジ部12とが螺合される。
【0048】
これにより、容器本体2に蓋体3を取り付けることが可能である。また、このとき通気孔17の周囲に栓体18が当接されることによって、通気孔17が密閉(閉塞)された状態となる。さらに、止水パッキン13が張出部8に全周に亘って密着することによって、容器本体2と内蓋10との間が止水パッキン13により密閉された状態となる。
【0049】
一方、容器本体2に蓋体3が取り付けられた状態から、外蓋9を開方向に回すことによって、内蓋10に対して中栓11が外蓋9と一体に開方向に回りながら、雄ネジ部7と雌ネジ部12との螺合が解除され始める。
【0050】
また、このとき通気孔17の周囲に対する栓体18の当接が解除されることによって、通気孔17が開放された状態となる。これにより、通気孔17を通して容器本体2内の圧力が開放されるため、容器本体2内の圧力が外部と同じ圧力(大気圧)となる。
【0051】
そして、この状態から、更に外蓋9を開方向に回すことによって、閉方向に回したときとは反対側から内側係合凸部20にストッパー凸部22が当接された状態で、内蓋10が外蓋9と一体に開方向に回りながら、張出部8に対する止水パッキン13の密着状態が解除される。また、雌ネジ部7と雄ネジ部12との螺合が完全に解除されることによって、容器本体2から蓋体3が取り外し可能な状態となる。
【0052】
さらに、止水パッキン13と張出部8との間がウォーターシールにより強く密着した場合でも、内蓋10が外蓋9と一体に開方向に回ることで、止水パッキン13と張出部8との間のウォーターシールによる密着を解除し、容器本体2から蓋体3を取り外すことが可能である。
【0053】
以上のように、本実施形態の蓋付き容器1Aでは、上述したクリック機構19によって、雄ネジ部7と雌ネジ部12との螺合が完了する間に、クリック感を付与することが可能である。また、上述したクリック機構19によって、容器本体2に蓋体3が取り付けられた状態において、外蓋9が容器本体2に対して不用意に緩むことを防止することが可能である。
【0054】
また、本実施形態の蓋付き容器1Aでは、上述した容器本体2に蓋体3が取り付けられた状態から、外蓋9を開方向に回すことによって、通気孔17が開放された後に、内側係合凸部20にストッパー凸部22が当接した状態で、内蓋10が外蓋9と一体に開方向に回りながら、張出部8に対する止水パッキン13の密着状態が解除される。
【0055】
これにより、容器本体2内の圧力低下により内蓋10が容器本体2の内側に引っ張られたとしても、容易に雄ネジ部7と雌ネジ部12との螺合を解除し、容器本体2から蓋体3を取り外すことが可能である。
【0056】
したがって、本実施形態の蓋付き容器1Aでは、容器本体2内の圧力が低下した場合でも、蓋体3を容易に且つ安全に取り外すことが可能である。
【0057】
なお、容器本体2内の圧力が低下する(負圧となる)場合としては、例えば、容器本体2の内部に高温の内容物を入れた後に、その内容物が冷めたときなどを挙げることができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば
図9及び
図10に示す蓋付き容器1Bについて説明する。
なお、
図9は、蓋付き容器1Bが備える外蓋9及び中栓11を下方側から見た斜視図である。
図10は、蓋付き容器1Aが備える内蓋10を上方側から見た斜視図である。また、以下の説明では、上記蓋付き容器1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0059】
本実施形態の蓋付き容器1Bにおいて、蓋体3は、
図9及び
図10に示すように、上述したクリック機構19の代わりに、内蓋10の内側に中栓11が嵌め込まれた状態において、内蓋10に設けられた外側係合部26と、中栓11に設けられた内側係合部27とが互いに係合されることによって、内蓋10が外蓋9と一体に回る連れ回り機構28を備えている。
【0060】
具体的に、外側係合部26は、内蓋10(周壁部10b)の内周面において、複数の山状凸部26aと複数の谷状凹部26bとが周方向に交互に並んだ凹凸構造を有している。同様に、内側係合部27は、中栓11の外周面において、複数の山状凸部27aと複数の谷状凹部27bとが周方向に交互に並んだ凹凸構造を有している。
【0061】
連れ回り機構28では、外側係合部26側の山状凸部26aと内側係合部27側の谷状凹部27bとが各々係合され、外側係合部26側の谷状凹部26bと内側係合部27側の山状凸部27aとが各々係合されることによって、内蓋10の内側に中栓11が嵌め込まれた状態となる。
【0062】
また、外側係合部26と内側係合部27とは、互いに複数の山状凸部26a,27aと複数の谷状凹部26b,27bとが周方向に交互に並んだ凹凸構造を有することで、内蓋10に対して中栓11が周方向の何れの位置にあったとしても、これら外側係合部26と内側係合部27とを係合させることが可能である。
【0063】
また、内蓋10の内側に中栓11が嵌め込まれた状態では、外側係合部26と内側係合部27との係合によって、中栓11に対して内蓋10が軸回りに回転することを規制している。これにより、連れ回り機構28では、内蓋10の内側に中栓11が嵌め込まれた状態で、容器本体2に対して外蓋9を閉方向又は開方向に回したときに、内蓋10が外蓋9と一体に回ることになる。
【0064】
以上のような構成を有する本実施形態の蓋付き容器1Bでは、内蓋10を開口部2aから容器本体2の内側に嵌め込んだ後に、中栓11を内蓋10の内側に嵌め込んだ状態とする。そして、この状態から、外蓋9を閉方向に回すことによって、雄ネジ部7と雌ネジ部12とが螺合される。
【0065】
これにより、容器本体2に蓋体3を取り付けることが可能である。また、このとき通気孔17の周囲に栓体18が当接されることによって、通気孔17が密閉(閉塞)された状態となる。さらに、止水パッキン13が張出部8に全周に亘って密着することによって、容器本体2と内蓋10との間が止水パッキン13により密閉された状態となる。
【0066】
ここで、内蓋10の中心が容器本体2の中心に対して若干ずれた位置に取り付けられていたとしても、内蓋10が外蓋9と一体に閉方向に回るうちに、緩やかなすり鉢形状に形成された張出部8の形状に沿うように内蓋10が誘導され、中心軸が合う方向へ内蓋10が移動する。これにより、容器本体2と内蓋10との中心軸が一致することで、止水パッキン13が張出部8に全周に亘って偏りなく密着し、良好な止水性を発揮することができる。
【0067】
また、本実施形態の蓋付き容器1Bでは、上述した連れ回り機構28によって、容器本体2に蓋体3が取り付けられた状態において、外蓋9が容器本体2に対して不用意に緩むことを防止している。
【0068】
一方、容器本体2に蓋体3が取り付けられた状態から、外蓋9を開方向に回すことによって、上述した連れ回り機構28により内蓋10が外蓋9と一体に開方向に回りながら、雄ネジ部7と雌ネジ部12との螺合が解除される。
【0069】
また、このとき通気孔17の周囲に対する栓体18の当接が解除されることによって、通気孔17が開放された状態となる。これにより、通気孔17を通して容器本体2内の圧力が開放されるため、容器本体2内の圧力が外部と同じ圧力(大気圧)となる。
【0070】
そして、この状態から、更に外蓋9を開方向に回すことによって、上述した連れ回り機構28により内蓋10が外蓋9と一体に開方向に回りながら、張出部8に対する止水パッキン13の密着状態が解除される。また、雌ネジ部7と雄ネジ部12との螺合が完全に解除されることによって、容器本体2から蓋体3が取り外し可能な状態となる。
【0071】
以上のように、本実施形態の蓋付き容器1Bでは、上述した容器本体2に蓋体3が取り付けられた状態から、外蓋9を開方向に回すことによって、連れ回り機構28により内蓋10が外蓋9と一体に開方向に回りながら、通気孔17が開放された後に、張出部8に対する止水パッキン13の密着状態が解除される。
【0072】
これにより、容器本体2内の圧力低下により内蓋9が容器本体2の内側に引っ張られたりすることなく、雄ネジ部7と雌ネジ部12との螺合を解除し、容器本体2から蓋体3を取り外すことが可能である。
【0073】
したがって、本実施形態の蓋付き容器1Bでは、容器本体2内の圧力が低下した場合でも、蓋体3を容易に且つ安全に取り外すことが可能である。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記蓋付き容器1A,1Bでは、上述した中栓11に取り付けられた栓体18によって、内蓋10に設けられた通気孔17を閉塞する構成となっているが、通気孔が設けられた弾性部材を内蓋10に取り付けて、中栓11に設けられた栓体となる突起部を弾性部材に当接させることによって、通気孔を閉塞する構成とすることも可能である。
【0075】
また、上記蓋付き容器1Bにおいて、外側係合部26と内側係合部27とは、それぞれ複数の山状凸部26a,27aと複数の谷状凹部26b,27bとが周方向に交互に並んだ構成を有しているが、このような構成に必ずしも限定されるものではない。
【0076】
例えば、外側係合部26と内側係合部27とは、上記蓋付き容器1Aが備えるストッパー凸部22と内側係合凸部20とにより構成することも可能である。この場合、ストッパー凸部22及び内側係合凸部20を複数設けることも可能である。また、ストッパー凸部22及び内側係合凸部20を配置する数については、必ずしも同数である必要はなく、例えば6つのストッパー凸部22と、5つの内側係合凸部20とを設けるといったことも可能である。
【0077】
なお、本発明は、上述した真空断熱構造を有する容器本体によって保温・保冷機能を持たせた蓋付き容器に好適に適用できるが、上述した開口部が設けられた容器本体と、開口部を開閉する蓋体とを備えた蓋付き容器に対して本発明を幅広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1A,1B…蓋付き容器 2…容器本体 2a…開口部 3…蓋体 7…雄ネジ部 8…張出部 9…外蓋 10…内蓋 11…中栓 12…雌ネジ部 13…止水パッキン(シール部材) 18…栓体 19…クリック機構 20…内側係合凸部 21…外側係合凸部 22…ストッパー凸部 23…弾性片 26…外側係合部 27…内側係合部 28…連れ回り機構