(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】照明用電源およびその保護回路
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20230425BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
G05F1/56 320S
G05F1/56 310C
H02H7/00 B
(21)【出願番号】P 2019109017
(22)【出願日】2019-06-11
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100199864
【氏名又は名称】丹羽 良成
(72)【発明者】
【氏名】平岡 尚悟
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-117051(JP,A)
【文献】実開昭51-114633(JP,U)
【文献】特開2014-187811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
H02M 3/00- 3/44
H02M 7/00- 7/40
H02H 7/00
H05B 45/00-45/59
H05B 47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光器を介して入力された商用電源電圧を整流回路により整流した脈流電圧を照明負荷に対応した直流電力に変換して出力する照明用電源であって、
前記脈流電圧を定電圧化する
定電圧素子を有するレギュレータと、
前記調光器の保持電流の通流/停止を制御する保持電流制御素子を有
し、前記脈流電圧が所定値以下のときに前記保持電流制御素子をオンさせて前記保持電流を流す保持電流回路と、
前記レギュレ-タにより安定化された電圧が出力され、前記保持電流制御素子の短絡時に、
前記定電圧素子をショートさせることにより前記レギュレータの
出力を停止させる保護回路とを備え、
前記保護回路は、前記定電圧素子と並列に接続された第1の半導体素子と、前記第1の半導体素子のオン/オフを制御する第2の半導体素子と、前記第2の半導体素子の出力端子に電気的に接続されるとともに前記第1の半導体素子の制御端子電圧を保持可能な第1のコンデンサと、前記第1のコンデンサの充電経路上に介装された抵抗とを有し、
前記保持電流制御素子の正常時は、前記第2の半導体素子はオン動作を継続して前記第1のコンデンサを放電させて第1の半導体素子のオフ状態を保持し、前記保持電流制御素子の短絡時は、前記第2の半導体素子のオフ動作により、前記抵抗を介して前記第1のコンデンサを充電させ前記第1の半導体素子の制御端子電圧を上昇させて該第1の半導体素子をオンすることで前記定電圧素子をショートさせ、
前記第1のコンデンサの電圧が第1の半導体素子がオンする制御端子電圧の閾値に達するまでの時間を、前記商用電源電圧の波形周期が所定の1~2サイクル以内に前記レギュレータの出力を停止させるように前記第1のコンデンサと前記抵抗による時定数により決定することを特徴とする照明用電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用電源とその保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(以下、LED:Light Emitting Diode)は、環境に優しい光源として注目されており、自動車の車内照明やヘッドライト、信号機、液晶ディスプレイのバックライト、一般照明など幅広い分野に利用されている。また、オフィスや工場といった施設において、省エネ施策としてLEDを用いたLED照明システムの導入が進んでいる。
【0003】
LED照明システムの構成要素の一つにLED照明装置がある。LED照明装置は、電力変換回路を備えており、電源電圧を変換してLED負荷(照明負荷)に給電する。電力変換回路の制御方式としては、電力変換回路がLED負荷の特性や光量に合わせて電圧または電流を制御する方式が一般的である。
【0004】
LED照明装置においては、通常、降圧型チョッパー方式またはシリーズ式のレギュレータとDC-DCコンバータの組み合わせによりLEDを駆動する。
このLEDを駆動する電源は、電源回路内の部品故障時や、異物混入などによる部品の短絡時、電源は発煙・発火を生じさせてはならず、対策のために保護回路が設けられている。電源回路の異常電流保護として電流ヒューズが使用されているが、スイッチング素子等の動作異常により回路の損失が増加した場合に、電流ヒューズの保護電流値に達していなくとも、損失増加により発煙・発火に至ることがある。
【0005】
特許文献1は、抵抗器と温度ヒューズを直列接続し熱的に結合させた保護素子を、スイッチング素子と直列に回路接続することにより、発煙・発火等に対して保護機能を備えたスイッチング電源装置の保護回路を提供するものである。この特許文献1には、熱的に結合される方法として、接着、結束、テーピング、モールド等が開示されている。
【0006】
図7は、その温度ヒューズを使用した照明用電源の従来回路の概略図である。
この従来の照明用電源100は、商用電源2から調光器3を介してダイオードブリッジ4で整流し、その出力をDC/DC変換回路11に供給し、照明負荷に対応した直流電圧および電流に変換しLED10に出力する。
また、ダイオードブリッジ4の出力を、抵抗5、半導体素子Q5およびツェナーダイオード7より構成されるレギュレータにより降圧し、抵抗8および半導体素子Q3より構成され保持電流を流す保持電流回路および保持電流を流す半導体素子Q3を制御する矩形波生成回路70に必要な電源を供給する。
【0007】
例えば、この回路で半導体素子Q3が不良となって短絡し、半導体素子Q5が異常発熱する場合、半導体素子Q5に温度ヒューズF1を取り付け、発煙・発火に至る前に温度ヒューズF1を溶断させることで、レギュレータの動作を停止させ半導体素子Q5の保護が可能である。
【0008】
つまり、半導体素子Q3のドレイン-ソース間が短絡(異物などによる短絡や、部品の故障による内部短絡)すると、半導体素子Q5および抵抗8(保持電流を流すためのブリーダー抵抗)が異常発熱する。これを防止するため、半導体素子Q5に温度ヒューズF1を直接取り付け、半導体素子Q5が異常発熱する際に温度ヒューズF1が溶断することで、発煙・発火を防ぐ事ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、半導体素子Q5への温度ヒューズF1の取り付けは、熱的な結合が必要であり、そのために、半導体素子Q5本体へのボンドによる接着や温度ヒューズのリード加工などの工数がかかる。
また、照明用電源の従来回路に使用される温度ヒューズF1はその材料にもよるが、概して照明など1日に何度もオン/オフすることが想定される環境の温度変動に弱く、照明用途には不適となる課題がある。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を鑑みてなされたものであって、温度ヒューズを使用しないで、保持電流回路の半導体素子が短絡した場合に、レギュレータの動作を安全に停止させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、脈流電圧を照明負荷に対応した直流電力に変換して出力する照明用電源であって、脈流電圧を定電圧化するレギュレータと、保持電流の通流/停止を制御する保持電流制御素子を有する保持電流回路と、保持電流制御素子の短絡時に、レギュレータの定電圧化機能を停止させる保護回路とを備えたことを特徴とする照明用電源である。
【0013】
この構成によれば、保持電流制御素子が短絡しても、保護回路の動作により、レギュレータの定電圧化機能が停止し、レギュレータ動作を安全に停止させて部品の過熱・焼損を防ぐことができる。
【0014】
また、保持電流回路は、脈流電圧が所定値以下のときに保持電流制御素子をオンさせて保持電流を流す回路であって、保持電流制御素子の短絡時に、保護回路は保持電流制御素子の出力信号に基づき、レギュレータの定電圧化機能を停止させることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、保持電流回路制御素子が故障して過電流となっても、その保持電流制御素子の出力信号により、レギュレータ動作を安全に停止させて部品の過熱・焼損を防ぐことができる。
【0016】
また、レギュレータは脈流電圧を定電圧化する定電圧素子を有し、保護回路は保持電流制御素子の短絡時に定電圧素子をショートさせることによりレギュレータの定電圧化機能を停止させることを特徴とする。
この構成によれば、保護回路により、保持電流制御素子の短絡時に定電圧素子をショートさせて、レギュレータ動作を安全に停止させることができる。
【0017】
さらに、保護回路は、定電圧素子と並列に接続された第1の半導体素子と、第1の半導体素子のオン/オフを制御する第2の半導体素子と、第2の半導体素子の出力端子に電気的に接続されるとともに第1の半導体素子の制御端子電圧を保持可能な第1のコンデンサとを備え、保持電流制御素子の正常時は、第2の半導体素子はオン動作を継続して第1のコンデンサを放電させて第1の半導体素子のオフ状態を保持し、保持電流制御素子の短絡時は、第2の半導体素子のオフ動作により、第1のコンデンサを充電させ第1の半導体素子の制御端子電圧を上昇させてその第1の半導体素子をオンさせ、定電圧素子をショートさせることを特徴とする。
【0018】
この構成により、保護回路は、保持電流制御素子の正常時は第1の半導体素子が動作する電圧を超えないようにオフ状態を保持し、異常時には第1のコンデンサが充電されて電圧が上昇し第1の半導体素子が動作し、レギュレータの動作を停止させて部品を保護する。
【0019】
また、保護回路は、第1のコンデンサの充電経路上に介装された抵抗をさらに備え、
第2の半導体素子のオフ動作により、第1のコンデンサが抵抗を介して充電され、第1のコンデンサの電圧が第1の半導体素子がオンする制御端子電圧の閾値に達するまでの時間を、第1のコンデンサと抵抗による時定数により決定することを特徴とする。
この構成によれば、抵抗とコンデンサ(第1のコンデンサ)による時定数を選定することにより、過電流となって焼損が拡大する前に保護回路を動作させることができる。
【0020】
さらに、脈流電圧を照明負荷に対応した直流電力に変換して出力する照明用電源の保護回路であって、保持電流の通流/停止を制御する保持電流制御素子の短絡時に、脈流電圧を定電圧化するレギュレータの定電圧化機能を停止させることを特徴とする照明用電源の保護回路である。
【0021】
この保護回路により、保持電流制御素子の短絡時には、保護回路が動作してレギュレータの動作を安全に停止させることにより、部品を保護する。
【発明の効果】
【0022】
以上、本発明によれば、温度ヒューズを用いることなく、保持電流制御素子が短絡となった場合、レギュレータの定電圧化機能を安全に停止させることにより過電流による部品の過熱・焼損を防ぐことができる。
また、温度ヒューズを熱的に結合させる必要がなく保護回路を構成する部品はチップ部品で構成できるため、工数削減・コスト低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る照明用電源の概略図である。
【
図3】設定電圧と脈流電圧との関係を説明する図である。
【
図5】調光量最大時の保護回路の動作を説明する図である。
【
図6】調光量最小時の保護回路の動作を説明する図である。
【
図7】温度ヒューズを使用した照明用電源の従来回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に係る照明用電源について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る照明用電源の概略図である。照明用電源1は、調光器3、ダイオードブリッジ4、抵抗5、半導体素子6、ツェナーダイオード7、抵抗8、半導体素子9、DC/DC変換回路11、矩形波生成回路12および保護回路13を備え、この照明用電源1に、商用電源2および照明負荷としてLED10が接続される。
ここで、抵抗8と半導体素子9は調光器3の誤動作を防ぐ保持電流を流す保持電流回路15として機能する。また、半導体素子6および9には、例えばMOSFET(N型)が用いられる。
【0025】
抵抗5、半導体素子(Q5)6およびツェナーダイオード(定電圧素子)7は、レギュレータ14として機能する(定電圧化機能)。すなわち、抵抗5とツェナーダイオード7とを直列に接続して、ダイオードブリッジ4の出力電圧(脈流電圧)Vdcと並列に接続し、その出力電圧Vdcを降圧し、矩形波生成回路12、保護回路13および保持電流回路15に電源を供給する。
本実施形態では、例えば、ツェナーダイオード7のツェナー電圧を24[V]とすると、レギュレータ14は約20[V]の方形波を出力する。
【0026】
このレギュレータ14の出力は、保持電流回路15の半導体素子9が矩形波生成回路12によってオンすることにより、抵抗(ブリーダー抵抗)8に電流が流れ、この電流は調光器3の保持電流となる。このように、半導体素子(Q3)9が本発明の「保持電流制御素子」に該当し、保持電流の通流/停止を制御する。
さらに、ダイオードブリッジ4の出力電圧Vdcは、DC/DC変換回路11に接続され、DC/DC変換回路11はLED10の照明負荷に対応した直流電力(直流電圧および直流電流)に変換する。
【0027】
本発明の実施形態に係る照明用電源1は、商用電源2からトライアック等により交流波形の点弧角を制御する調光可能な調光器3により、調光された交流波形をダイオードブリッジ(整流回路)4により全波整流された波形を生成する。
この全波整流された出力電圧Vdcをレギュレータ14により、トライアックの保持電流をオン/オフする矩形波生成回路12や保護回路13に直流の電源として供給する。
さらに、この出力電圧VdcをDC/DC変換回路11により変換してLED10に出力する。
【0028】
初めに、矩形波生成回路12について説明する。
図2は、矩形波生成回路12の詳細な回路図であり、レギュレータ14および保持電流回路15も併せて示す。
矩形波生成回路12は、半導体素子21、オペアンプ22、ダイオード23、コンデンサ24、抵抗25~28および設定電圧源29により構成される。レギュレータ14からダイオード23を介して電源が供給され、コンデンサ24により平滑されて半導体素子21およびオペアンプ22の駆動電源として利用される。
なお、本実施形態の半導体素子21はMOSFET(N型)である。
また、矩形波生成回路12の平滑電圧は、信号TRM1として保護回路13にも供給される。
【0029】
この矩形波生成回路12は、ダイオードブリッジ4の出力電圧Vdcが抵抗27と抵抗28により分圧されてオペアンプ22の一方の入力端子に入力される。オペアンプの他方の入力端子には設定電圧源29の設定電圧(所定値)V29が入力される。
【0030】
この分圧された電圧と設定電圧V29が比較され、分圧された電圧が設定電圧V29以下のとき、オペアンプ22の出力はローレベルとなり半導体素子21がオフする。半導体素子21がオフすると、抵抗25と抵抗26の接続点の電圧が高くなり、半導体素子9はオンする。このとき抵抗8には保持電流が流れる。
【0031】
一方、分圧された電圧が設定電圧V29より高いとき、オペアンプ22の出力はハイレベルとなり半導体素子21がオンする。その結果、半導体素子9のゲート電圧は0[V](接地電圧)となり半導体素子9はオフする。このとき保持電流は流れない。
【0032】
さらに、保持電流回路15および矩形波生成回路12の動作について
図3の波形をもとに説明する。
図3は設定電圧と脈流電圧の関係を説明する図である。
図3は、3つの波形が示されており、上から順に(A)ダイオードブリッジ4の出力電圧Vdc、(B)半導体素子9のドレイン―ソース間電圧Q3Vds、(C)抵抗8の消費電力RPである。縦軸は、(A)および(B)が電圧、(C)が電力を示す。横軸は時間を示し、全体では商用電源2の2サイクル分の40[ms]である。
(以下、設定電圧V29と、出力電圧Vdcを基に抵抗27と抵抗28とで分圧した電圧とを比較するとき、説明の煩雑さを避けるため、分圧した電圧に代えて出力電圧Vdcを用いる。)
【0033】
図3に示す出力電圧Vdcは、調光器3の光量が最大のときの出力であり、商用電源2の全波整流波形である。この出力電圧Vdcと設定電圧V29とが比較される。
出力電圧Vdcが、設定電圧V29以下のときは、半導体素子9のゲート電圧が高くなって、半導体素子9がオンする。その結果、電圧Q3Vdsは0[V]になる(同図(B))。
【0034】
半導体素子9がオンすると、抵抗8がGNDに接続された状態となり、抵抗8に流れる電流が増加する。この電流が調光器3の保持電流となる。
しかし、保持電流が流れるのは短時間である。半導体素子9はオンするものの、出力電圧Vdcが低下するとレギュレータ14の出力も停止し、0[V]となるため、電圧Q3Vdsも0[V]のままである(同図(B))。
よって、抵抗8を流れる電流も矩形波生成回路12の動作電流を除けば、0[mA]となるから、抵抗8の電流波形は短時間のパルス状となる。
【0035】
一方、出力電圧Vdcが設定電圧V29より高いときは、半導体素子21がオンし、半導体素子9はオフする。よって、電圧Q3Vdsはハイレベル(約20[V])になる(同図(B))。抵抗8に保持電流は流れない。
ここで、設定電圧V29は、調光器3の保持電流が確実に流れるように設定されるが、設定値を高くすれば抵抗8による消費電力が増加するため、消費電力RPが多くならないように設定される。
【0036】
次に、保護回路13について
図4を参照して説明する。
図4は、保護回路の詳細な回路図である。保護回路13は、半導体素子51(第1の半導体素子、Q1))および52(第2の半導体素子、Q2)、ダイオード53、コンデンサ54(第1のコンデンサ)および55(第2のコンデンサ)、抵抗56~60から構成される。
なお、本実施形態の半導体素子51はMOSFET(N型)であり、半導体素子52はバイポーラトランジスタ(NPN型)である。
【0037】
矩形波生成回路12から入力される信号TRM2(半導体素子9のソースードレイン間電圧Q3Vds、半導体素子9の出力信号)が、ダイオード53のアノードに入力される。
ダイオード53のカソードには、抵抗56の一端が接続され、抵抗56の他端は、抵抗57および抵抗58の一端、コンデンサ55の一端と接続され、抵抗57およびコンデンサ55の他端はGNDに接続される。
抵抗58の他端は半導体素子52のベースに接続され、半導体素子52のコレクタは抵抗59の一端に接続され、抵抗59の他端は矩形波生成回路12から入力される信号TRM1(ダイオード23のカソードとコンデンサ24の接続点の電圧)に接続される。
【0038】
また、抵抗59の一端は、抵抗60、コンデンサ54の一端および半導体素子51のゲートに接続される。抵抗60、コンデンサ54の他端および半導体素子51のソースはGNDに接続される。半導体素子51のドレインは、レギュレータ14のツェナーダイオード7のカソードに接続される。
なお、信号TRM1は保持電流回路15の抵抗8を介するレギュレータ14出力の平滑電圧の信号であり、信号TRM1を使用しないで保護回路13内に平滑回路を設けてもよい。その場合、レギュレータ14の出力が保護回路13と接続される。
【0039】
この保護回路13は、保持電流回路15の半導体素子9が故障して短絡となった場合、その故障によりレギュレータの半導体素子6および保持電流回路15の抵抗8に過電流が流れ、部品の焼損および部品の実装されたプリント基板の焼損につながるため、保護回路13は半導体素子9の出力信号(半導体素子9のソースードレイン間電圧Q3Vds)により、レギュレータ14の定電圧化機能を停止させる。
具体的には、半導体素子9の短絡時に半導体素子9の出力信号(電圧Q3Vds)がローレベル(0[V])に変化すると、ツェナーダイオード7と並列に接続された半導体素子51をオンさせることで、ツェナーダイオード7の両端子間を、オン状態とされた半導体素子51によりショートさせる。これにより、ツェナーダイオード7のツェナー電圧を0[V]にして、レギュレータ14の出力を停止させ、部品の保護を図るものである。
【0040】
以下、
図5および
図6に示す波形を参照して、保護回路13の動作を説明する。
図5は、調光器3の光量が最大時の保護回路13の動作を説明する波形図であり、
図6は、調光器3の光量が最小時の同様の波形図である。
図5および
図6は、共に上から順に、(A)半導体素子6のドレイン―ソース間電圧Q5Vds(以下、単に電圧Q5Vdsという)、(B)半導体素子6に流れる電流Q5Id(同、電流Q5Id)、(C)半導体素子6の消費電力Q5P(同、消費電力Q5P)、(D)半導体素子52のベース―エミッタ間電圧Q2Vbe(同、電圧Q2Vbe)、(E)半導体素子51のゲート―ソース間電圧Q1Vgs(同、電圧Q1Vgs)、(F)保持電流回路15の半導体素子9のドレイン―ソース間電圧Q3Vds(同、電圧Q3Vds)、(G)半導体素子51のドレイン―ソース間電圧Q1Vds(同、電圧Q1Vds)である。
なお、
図5および
図6は、シミュレーション結果であり、消費電力もシミュレーションによる算出値である。また、半導体素子9のドレイン―ソース間電圧Q3Vdsは、保持電流回路15の半導体素子9の出力信号TRM2である。
【0041】
図5の縦軸は、各波形の電圧、電流、電力を示す。横軸は時間を示し、200[ms]の期間である。横軸は3つの期間、電源投入後の正常なA期間、半導体素子9の故障により短絡(過電流状態)が発生したB期間および短絡後保護回路13が動作したC期間に分けている。
A期間の電圧Q5Vdsは、ダイオードブリッジ4の出力電圧Vdcからレギュレータ14の出力の約20[V]を減じた電圧波形となっている(同図(A))。この期間は、半導体素子9の動作は正常なため、電流Q5Idは、出力電圧Vdcが設定電圧V29以下のときは短時間保持電流が流れ、出力電圧Vdcが設定電圧V29より高いときは、保持電流は流れず矩形波生成回路12に供給される電流のみ流れる(同図(B))。よって、半導体素子6の消費電力Q5Pは保持電流と矩形波生成回路12による消費電力となる(同図(C))。
【0042】
電圧Q3Vdsは、正常時は出力電圧Vdcが設定電圧V29以下のとき短時間のみオンしその後は0[V]になる一方、出力電圧Vdcが設定電圧V29よりも大きいときは、ほぼ20[V]の一定値である(同図(F))。電圧Q1Vdsも正常時はツェナーダイオードの両端の電圧値、つまりツェナー電圧値となる。
電圧Q2Vbe(同図(D))は、電圧Q3Vds(同図(F))がハイレベル(約20[V])の間は半導体素子52がオンしているため、約0.7[V]でほぼ一定である。出力電圧Vdcが0[V]になる間は、電圧Q3Vdsがローレベル(0[V])になっても、コンデンサ55によりほとんど電圧は低下していない。また、電圧Q1Vgs(同図(E))は、半導体素子52がオン動作を継続しているため、コンデンサ54には充電されず、ほぼ0[V]である。
なお、このA期間のシミュレーションによる消費電力Q5Pは194[mW]である。
【0043】
B期間は、半導体素子9の短絡直後から保護回路13が動作するまでの期間である。電圧Q5Vdsは、A期間と同じで変化はない(同図(A))。電圧Q3Vdsは、半導体素子9が短絡故障のため、0[V]になっている(同図(F))。半導体素子9が短絡してオン状態となるため、半導体素子6の電流は増加し、消費電力Q5Pも増大する(同図(B)および(C))。この期間の消費電力Q5Pは、2.4[W]になり、定常時の10倍以上となっている。
【0044】
B期間では、半導体素子52はオフし、コンデンサ54の充電は開始されているが、電圧Q1Vgsは半導体素子51のゲート閾値電圧(制御端子電圧の閾値)まで上昇していないため、半導体素子51はオンしていない(同図(E))。よって、保護回路13はまだ動作しておらず、電圧Q1VdsもA期間と同じ状態である(同図(G))。
【0045】
C期間は、B期間中半導体素子52はオフしているのでコンデンサ54の充電が継続して、電圧Q1Vgsが半導体素子51のゲート閾値電圧を超え、半導体素子51がオンした状態である(同図(E))。このとき、電圧Q1Vdsは0[V]になっている(同図(G))。
半導体素子51は、レギュレータ14のツェナーダイオード7と並列に接続されているため、半導体素子51がオンするとツェナー電圧が0[V]になり、レギュレータ14の動作が停止する。半導体素子6はオフし、オフ状態の半導体素子6に出力電圧Vdcが印加された状態で(同図(A))、半導体素子6の電流Q5Idは0[mA]になり(同図(B))、この期間の消費電力Q5Pも、0[W]である(同図(C))。
【0046】
C期間の電圧Q2Vbeは、信号TRM2(電圧Q3Vds)が0[V]のままなので、コンデンサ55の放電が継続して電圧が低下し(同図(D))、電圧Q1Vgsは、信号TRM1の電圧が供給されているためコンデンサ54が充電され電圧が上昇し続ける(同図(E))。
また、この期間の電圧Q5Vdsは、ほぼ出力電圧Vdcがそのまま印加されており、A期間およびB期間とは異なり、ツェナー電圧分だけ電圧のピーク値が高くなっている(同図(A))。
このC期間は、この保護回路13の動作により、半導体素子9が短絡故障し半導体素子6および抵抗8が過電流によって加熱また焼損するのを防止していることを示す。
【0047】
図6は、調光器3の光量が最小となるため、電圧Q5Vdsは調光器3により商用電源2の点弧された時点からゼロクロスまでの全波整流波形となっていること(同図(A))、その結果、電圧Q3Vds(同図(F))および電圧Q1Vds(同図(G))のハイレベルの時間が短くなっている点が、
図5と異なっている。
しかし、A期間では電圧Q2Vbe(同図(D))は、電圧Q3Vdsのハイレベルの期間が短いため(同図(F))、放電による電圧低下があり、電圧Q1Vgsは、コンデンサ54は充電されるが、放電も行われるため電圧値が変動する(同図(E))。
なお、B期間になればコンデンサ54は、光量の違いに関わらず同じように充電されるため、同様な時間で半導体素子51はオンし、保護回路13が動作する。
【0048】
ここで、コンデンサ54(第1のコンデンサ)およびコンデンサ55(第2のコンデンサ)の静電容量について説明する。
コンデンサ55は、正常動作時調光器3の光量が最大でも最小でも、第2の半導体素子52がオフしないように定数(静電容量)を選定する。また、電源投入時は、第1の半導体素子51が先にオンすると照明用電源1が動作しないため、第2の半導体素子52が先にオンして第1の半導体素子51のゲートに接続されているコンデンサ54を放電させるように、コンデンサ55の定数を決定する。
上記観点からコンデンサ55の定数として、0.47[μF]~4.7[μF]が望ましい。なお、本実施形態では、コンデンサ55の定数を1.0[μF]とした。
【0049】
また、コンデンサ54は、コンデンサ54の充電経路上に介装された抵抗59との組合せで、第2の半導体素子52がオフしてから、第1の半導体素子51をオンさせるまでの時間を決める時定数を決定する。コンデンサ54の定数が大きいほど、保護回路13が動作するまで時間を要する。
図5および
図6に示すB期間が長いと、部品の焼損等が継続してしまうので、商用電源2の1~2サイクル以内に保護が働くよう設定する。
本実施形態では、コンデンサ54の定数は2.2[μF]とし、抵抗59との時定数は220[ms]である。コンデンサ54の定数は4.4[μF]以下が望ましい。
【0050】
さらに、コンデンサ54には次のような機能も有する。商用電源2が投入され、レギュレータ14の半導体素子6がオンして、矩形波生成回路12に電源を供給し照明用電源1の保持電流を流す動作が開始される。同時にコンデンサ54も充電されるが、半導体素子51のゲート閾値電圧まで上昇するのに時間がかかるので、半導体素子51はすぐにはオンしない。
コンデンサ54がないと、商用電源2投入後、すぐに保護回路13の半導体素子51がオンしてレギュレータ14の動作を停止させてしまい、照明用電源は動作が開始できないことになる。コンデンサ54は、商用電源2投入時の意図しない半導体素子51のオン動作を防ぐことにもなる。
よって、コンデンサ54の定数は、少なくとも1.0[μF]以上が望ましい。以上より、コンデンサ54の定数範囲としては、1.0[μF]~4.4[μF]が望ましい。
【0051】
なお、本実施形態では、保護回路13の第2の半導体素子52は、バイポーラトランジスタを使用したが、MOSFETを使用することもできる。
第2の半導体素子52がMOSFETになれば、ゲート電圧がトランジスタのベースーエミッタ間電圧のようにクランプされることもなく、ゲート電圧が高く設定できるので、第2の半導体素子52のオンからオフするまでの時間を、第2のコンデンサ55の定数で設定することもできる。
【0052】
また、本実施形態では、ツェナーダイオード7の両端子をショートさせることで、レギュレータ14の定電圧化機能を停止させているが、半導体素子9(Q3)の短絡時に保護回路13がレギュレータ14の定電圧化機能を停止させる限り、これに限定されない。
また、矩形波生成回路12は、LEDドライバICなどのコントロールICから出力される信号を利用することができる場合(コントロールICが矩形波を出力する端子を有している場合)には、コントロールICを用いることで本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・照明用電源、2・・・商用電源、3・・・調光器、4・・・ダイオードブリッジ(整流回路)、5、8・・・抵抗、6・・・半導体素子(Q5)、7・・・ツェナーダイオード(定電圧素子)、9・・・半導体素子(保持電流制御素子、Q3),10・・・LED、11・・・DC/DC変換回路、12、70・・・矩形波生成回路、13・・・保護回路、14・・・レギュレータ、15・・・保持電流回路、21・・・半導体素子、22・・・オペアンプ、23・・・ダイオード、24・・・コンデンサ、25~28・・・抵抗、29・・・設定電圧源、V29・・・設定電圧、51・・・半導体素子(第1の半導体素子、Q1)、52・・・半導体素子(第2の半導体素子、Q2)、53・・・ダイオード、54・・・コンデンサ(第1のコンデンサ)、55・・・コンデンサ(第2のコンデンサ)、56~60・・・抵抗、100・・・照明用電源。