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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/70 20160101AFI20230425BHJP
   A61B 90/96 20160101ALI20230425BHJP
【FI】
A61B90/70
A61B90/96
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019135317
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021016698
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000148025
【氏名又は名称】サクラ精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 誠
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-99180(JP,A)
【文献】特開2019-17672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/70
A61B 90/90 ― 90/98
A61B 1/00 ― 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留されている薬剤の種類が記録された記録部を各々有する複数の薬剤ボトルと、
前記複数の薬剤ボトルが設置される薬剤ボトル設置部と、
前記薬剤ボトル設置部内の位置と該位置に設置される前記薬剤ボトル内の薬剤の種類とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記各薬剤ボトル内の薬剤の液位を検出する各々の液位センサと、を備え、
さらに、
前記薬剤ボトル設置部内の位置を前記液位センサの別により認識する構成により、前記液位センサからの薬剤不足信号を受けると、薬剤の不足を認識する不足認識信号をONとし、ONとした該不足認識信号に対応する前記薬剤ボトル設置部内の位置を表示部に表示させ、
前記薬剤ボトル交換されて前記液位センサからの薬剤充足信号を受けると、前記表示部に表示されている前記不足認識信号がONになっている位置のうち、前記薬剤充足信号を受けた位置を操作部から選択可能とし、
該選択可能な位置を選択する入力を受けると、該選択された位置を対照位置として決定し、該対照位置に登録されている薬剤の種類を前記記憶部から読出し、
該記憶部から読出された該対照位置に登録されている薬剤の種類と、該対照位置に設置された前記薬剤ボトルの前記記録部から読取られた薬剤の種類とを照合し、
一致する場合には、前記薬剤充足信号を受けた位置に対応する前記不足認識信号をOFFとし、該薬剤充足信号を受けた位置における薬剤補充が完了したことを報知し、
不一致の場合には、前記薬剤充足信号を受けた位置に対応する前記不足認識信号をOFFとせずに、不一致を報知する制御を行う制御部を備えること
を特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記液位センサからの前記薬剤不足信号を受けると、直ちに、または、さらに前記液位センサに対応する薬剤供給管に設けられた送液ポンプの一定時間の継続的送液動作を受けて、薬剤の不足を認識する前記不足認識信号をONとすること
を特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記記憶部から読出された前記対照位置に登録されている薬剤の種類と前記対照位置に設置された前記薬剤ボトルの前記記録部から読取られた薬剤の種類とが不一致の場合には、薬剤補充が未完了であるとして洗浄運転を開始させない制御を行うこと
を特徴とする請求項1または請求項2記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定量の薬剤が貯留されている薬剤ボトルを備え、薬剤が不足した際、薬剤ボトルの交換により薬剤の補充が行われる洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設等に設置されて医療器材等を洗浄する洗浄装置として、ウォッシャーディスインフェクター、ジェットウォッシャー、ベッドパンウォッシャー等が知られている。
【0003】
医療器材は、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、合成樹脂、ガラス等様々な素材によって構成され、また、これに付着する汚れはタンパク質、脂質等様々な成分に由来する。これに対して、例えばタンパク質の除去には酵素洗浄剤が特に好適であり、脂質の除去にはアルカリ性洗浄剤が特に好適である一方、アルミニウムはアルカリ条件下で腐食するおそれがあることから一般にアルカリ性洗浄剤が不適である等、素材や汚れに対してそれぞれ適合、不適合な薬剤がある。また、金属のように洗浄後に防錆剤で処理すべき素材もある。さらに、これらの薬剤は、各々で最適温度が異なる。
【0004】
そのため、上記の洗浄装置は、通常、複数の薬剤ボトルを備え、複数種類の薬剤により洗浄可能に構成されると共に、例えば使用する薬剤や使用温度等の異なる複数の洗浄プログラムが設定可能に構成されている(特許文献1:特開2018-126686号公報参照)。この構成によれば、素材や汚れの種類等に応じた洗浄プログラムを予め設定することができ、各被洗浄物に応じて適切な洗浄プログラムを選択することにより確実な洗浄を行うことができる。その結果、医療器材を介した感染を防止することができ、さらには医療の安全を確保することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-126686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような洗浄装置では、薬剤ボトル内の薬剤が不足すると、薬剤ボトルごと新たな薬剤ボトルに交換することによって薬剤の補充が行われている。従来の洗浄装置では、薬剤ボトル内の薬剤が不足した場合、いずれかの薬剤ボトル内で薬剤が不足している旨が報知されるのみであった。したがって、薬剤が不足している薬剤ボトルだけでなく、使用可能な量の薬剤が残っている薬剤ボトルまで誤って交換されるおそれがあった。
【0007】
そればかりでなく、不足している薬剤と異なる種類の薬剤を貯留する薬剤ボトルに交換されるおそれ、すなわち不足している薬剤と異なる種類の薬剤が補充されるおそれがあり、そのような場合でもそのまま洗浄プログラムが実行され得た。したがって、こうした薬剤の誤投入の結果、被洗浄物に対して不適切な種類の薬剤が用いられたり、不適切な温度で薬剤が用いられたりする可能性があり、ひいては被洗浄物の劣化あるいは破損を招くおそれや、洗浄不良を招くおそれがあった。
【0008】
さらに、洗浄装置に対する適合性が確認されていない薬剤が使用されたり、直ちに薬剤の補充が行われず、薬剤が規定量に達していない状態で装置が運転されたりすることによって洗浄装置自体の劣化や故障を招くおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、不足している薬剤と異なる種類の薬剤が補充されることが防止可能で、不適切や薬剤が使用されることによる被洗浄物の劣化、破損および洗浄不良、さらには洗浄装置の劣化や故障が防止可能な洗浄装置を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0011】
本発明に係る洗浄装置は、貯留されている薬剤の種類が記録された記録部を各々有する複数の薬剤ボトルと、前記複数の薬剤ボトルが設置される薬剤ボトル設置部と、前記薬剤ボトル設置部内の位置と該位置に設置される前記薬剤ボトル内の薬剤の種類とを関連付けて記憶する記憶部と、前記各薬剤ボトル内の薬剤の液位を検出する各々の液位センサと、を備え、さらに、前記薬剤ボトル設置部内の位置を前記液位センサの別により認識する構成により、前記液位センサからの薬剤不足信号を受けると、薬剤の不足を認識する不足認識信号をONとし、ONとした該不足認識信号に対応する前記薬剤ボトル設置部内の位置を表示部に表示させ、前記薬剤ボトル交換されて前記液位センサからの薬剤充足信号を受けると、前記表示部に表示されている前記不足認識信号がONになっている位置のうち、前記薬剤充足信号を受けた位置を操作部から選択可能とし、該選択可能な位置を選択する入力を受けると、該選択された位置を対照位置として決定し、該対照位置に登録されている薬剤の種類を前記記憶部から読出し、該記憶部から読出された該対照位置に登録されている薬剤の種類と、該対照位置に設置された前記薬剤ボトルの前記記録部から読取られた薬剤の種類とを照合し、一致する場合には、前記薬剤充足信号を受けた位置に対応する前記不足認識信号をOFFとし、該薬剤充足信号を受けた位置における薬剤補充が完了したことを報知し、不一致の場合には、前記薬剤充足信号を受けた位置に対応する前記不足認識信号をOFFとせずに、不一致を報知する制御を行う制御部を備えることを要件とする。
【0012】
これによれば、薬剤ボトル設置部内の位置を液位センサの別により認識する構成により、薬剤ボトル設置部内の位置と当該位置に設置される薬剤ボトルとを関連付けることができ、記憶部から読出された対照位置に登録されている薬剤の種類と、当該対照位置に設置された薬剤ボトルの記録部から読取られた薬剤の種類とを照合することで、予め設定された薬剤ボトル設置部内の各位置に補充されるべき薬剤と同一種類の薬剤が確実に補充されたことを確認することができる。したがって、不足している薬剤と異なる種類の薬剤が補充されることを防止することができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記記憶部から読出された前記対照位置に登録されている薬剤の種類と前記対照位置に設置された前記薬剤ボトルの前記記録部から読取られた薬剤の種類とが不一致の場合には、薬剤補充が未完了であるとして洗浄運転を開始させない制御を行うことが好ましい。これによれば、仮に薬剤の誤投入(誤補充)その他洗浄装置に対する適合性が確認されていない薬剤が投入された場合でも、その状態では洗浄運転が開始されない。したがって、被洗浄物に対して不適切な種類の薬剤が用いられたり、不適切な温度で薬剤が用いられたりすることを防止することができ、被洗浄物の劣化および破損ならびに洗浄不良を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、不足している薬剤と異なる種類の薬剤が補充されることを防止することが可能になり、不適切な薬剤が使用されることによる被洗浄物の劣化、破損および洗浄不良、さらには洗浄装置の劣化や故障を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る洗浄装置の例を示す概略構成図である。
図2図1の洗浄装置の表示部における薬剤登録画面の例である。
図3図1の洗浄装置の薬剤の補充に関する動作例を示すフローチャートである。
図4図1の洗浄装置の表示部における薬剤補充画面の例である。
図5図1の洗浄装置の表示部における薬剤補充履歴画面の例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1に、本実施形態に係る洗浄装置の概略構成図を示す。本実施形態に係る洗浄装置10は、医療施設等に設置されて医療器材等を洗浄する洗浄装置である。被洗浄物は、主として鑷子、鉗子等の医療器材であるが、これに以外にも、例えば介護用の尿器や便器等が含まれる。
【0018】
図1に示す洗浄装置10は、内部で被洗浄物の洗浄、すすぎ、消毒、乾燥が行われる洗浄槽12、複数の薬剤ボトルが設置される(収容される)薬剤ボトル設置部36、各種の操作を行う操作部44、各種の表示を行う表示部46等を備えている。
【0019】
洗浄槽12は被洗浄物を出し入れ可能に構成され、被洗浄物は一般的には複数段のラック(図示せず)に載置されて当該ラックごと洗浄槽12に収容される。
【0020】
洗浄槽12の内部には、一または複数の(本実施形態では上下に一ずつ)噴射ノズル14が設けられ、後述するように噴射ノズル14から洗浄液、すすぎ液、熱水等を噴射させて被洗浄物を洗浄、すすぎ、消毒等を行う仕組みとなっている。なお、これに加えてラックに噴射ノズル14を取付けてもよい。この場合、格子状に形成されるラックの一部を管で構成し、管内に洗浄液等を通流させて噴射ノズル14から洗浄液等を噴射させる構成が一般的である。
【0021】
また、洗浄槽12内の底面12aは、一例として傾斜面に形成され、傾斜面の最低部には、下方に向けて凹み、洗浄槽12内の洗浄液等が貯留される凹部16が形成されている。そして、凹部16内にはヒータ18が設けられており、洗浄槽12内の洗浄液等が加熱可能に構成されている。
【0022】
また、凹部16の底面には排水管20が設けられ、弁22の開閉によって洗浄槽12内の液体の排出および貯留が可能となっている。一方、排水管20が設けられている部位よりも上部には通流管24が設けられている。通流管24は、配管26を介して洗浄槽12内の噴射ノズル14に連結され、送液ポンプ28の動作によって洗浄槽12内の液体が各噴射ノズル14から噴射可能となっている。なお、ラックにも噴射ノズル14を取付ける構成の場合、洗浄槽12内にラックが収容されると配管26とラックを構成する管とが連結され、これによって洗浄槽12内の液体が配管26から管内を通流して噴射ノズル14から噴射可能となる構成が一般的である。
【0023】
また、洗浄槽12には、外部(給水源)から水を導入する給水管30が接続されている。また、洗浄槽12には、外部(各薬剤ボトル34)から薬剤(洗浄剤、防錆剤等)を導入する薬剤供給管32が接続されている。具体的に、各薬剤供給管32の一端32aが各々別の薬剤ボトル34内に挿入され、他端32bが各々洗浄槽12に接続されている。薬剤ボトル34に関する構成については後述する。給水管30は弁22の開閉により、また薬剤供給管32は送液ポンプ28の動作により、それぞれ水や薬剤の導入が調節可能となっている。なお、これらに加えて温水を導入する温水供給管(図示せず)を設けてもよい。
【0024】
また、洗浄槽12には、乾燥機構(図示せず)が設けられ、洗浄槽12内が乾燥可能となっている。また、温度センサおよび液位センサ(いずれも図示せず)が設けられ、洗浄槽12内の温度および液位が検出可能となっている。さらに、これらに加えて底面12a等に超音波発生器(図示せず)を設け、超音波洗浄機能を付加してもよい。その他、洗浄装置10内で液体や気体が通流する各構成には、図1に示す以外にも弁、ストレーナー等が適所に設けられている。
【0025】
以上の構成によれば、被洗浄物が収容された洗浄槽12内に水および洗浄剤を導入し、洗浄槽12内で混合および希釈すると共に所定温度まで加熱した洗浄液を、通流管24を介して洗浄槽12内外を循環させることによって噴射ノズル14から連続的に噴射させることができる。これによって、被洗浄物を洗浄することができる。また、同様にして被洗浄物のすすぎ、熱水消毒、防錆処理等を行うことができ、その後、洗浄槽12内で乾燥させることができる。
【0026】
以上の動作は、制御部42によって制御される。制御部42は、CPUおよびメモリから構成され、予め設定された動作プログラムおよび操作部44から入力される設定信号に基づいて動作する。具体的には、洗浄槽12に設けられている温度センサや液位センサからの信号を受け、弁22(不図示の弁を含む)や送液ポンプ28、さらにヒータ18や乾燥機構の動作を制御することによって、予め設定された動作プログラム(洗浄プログラム)の通りに各工程を実行する。
【0027】
なお、本実施形態では、使用者により洗浄プログラムが設定および変更可能に構成されている。すなわち、所定の工程で使用する薬剤(薬剤ボトル34)や使用温度等が操作部44の操作により設定可能に構成され、これによって設定された一または複数の洗浄プログラムが記憶部48に記憶されている。そして、使用者が洗浄前に操作部44の操作により所定の洗浄プログラムを選択すると、当該操作信号を受けた制御部42により記憶部48に記憶されている当該洗浄プログラムが読出され、実行される。
【0028】
続いて、薬剤ボトル34に関する構成について説明する。図1に示すように、洗浄装置10は、薬剤ボトル設置部36を備え、その内部には複数(本実施形態では5つ)の薬剤ボトル34が設置(収容)されている。各薬剤ボトル34には、洗浄剤、防錆剤等の薬剤が貯留されている。各薬剤ボトル34内の薬剤の種類は限定されず、また、各薬剤ボトル34の間で相違してもよく、同一でもよい。本実施形態では、一例として、5つの薬剤ボトル34のうち、2つにアルカリ性洗浄剤、2つに酵素洗浄剤および1つに防錆剤を貯留する構成としている(図2図4参照)。これらの薬剤ボトル34内の薬剤が不足すると、薬剤ボトル34ごと新たな薬剤ボトルに交換することにより薬剤の補充が行われる。
【0029】
また、各薬剤ボトル34には、少なくとも薬剤の種類が記録された記録部38が設けられている。これによって、薬剤ボトル34内に貯留されている薬剤の種類を制御部42で認識することができる。より詳しくは、読取手段40により記録部38の記録を読取って制御部42に記録信号を送ることによって、当該信号を受けた制御部42が当該薬剤ボトル34に貯留されている薬剤の種類を認識することが可能となっている。記録部38の構成は限定されないが、例えば数字、文字、記号、図形(例えばバーコード)等のコードの他、RFタグ等の記録または記憶媒体等とすればよい。特に、GTIN(JANコード)等の国際標準の商品識別コードは多くの製品に設けられており、記録部38として好適である。また、これに対する読取手段40の構成は、バーコードリーダーやリーダライタ等、記録部38に応じて適宜構成すればよい。
【0030】
また、読取手段40と制御部42との通信は、有線または無線のいずれの手段であってもよい。したがって、読取手段40は、洗浄装置10(制御部42)に接続して配設してもよく、または携帯型の機器等として独立して配設してもよい。
【0031】
具体的に、読取手段40を洗浄装置10(制御部42)に接続して配設する構成は、読取手段40を所定範囲まで移動可能としてもよく、または固定してもよい。このとき読取手段40をバーコードリーダーとした場合、薬剤ボトル34または読取手段40の一方を他方にかざす等して読取ればよい。さらに、薬剤ボトル設置部36内に薬剤ボトル34が設置された状態で各々の薬剤ボトル34の記録部38に面した位置に読取手段40を各々配設する構成としてもよい。この構成では、読取手段40をバーコードリーダーとした場合、薬剤ボトル設置部36内に薬剤ボトル34が設置された状態で、薬剤ボトル34および読取手段40を移動させることなく読取ることができる。一方、読取手段40を洗浄装置10と独立して配設する構成は、読取手段40を携帯型の専用機器等としてもよく、または携帯型の電子計算機や電話機等の他の物品に読取機能を付加して読取手段40としてもよい。
【0032】
また、各薬剤ボトル34内には、薬剤供給管32の一端32aが各々挿入され、薬剤内に挿込まれている。そして、各一端32aには、薬剤ボトル34内の薬剤の液位を検出する液位センサ50が設けられている。これによって、薬剤ボトル34内の薬剤の充足および不足を検出することができる。液位センサ50の構成は限定されないが、例えば公知のフロートスイッチ等とすればよい。この場合、例えば薬剤が充足している場合には制御部42にはフロートスイッチONの信号が送信されており、不足するとフロートスイッチOFFとなって、フロートスイッチONの信号が停止される。
【0033】
ここで、本実施形態は、制御部42が薬剤ボトル設置部36内の位置を液位センサ50の別により認識する構成としている。この構成によれば、薬剤ボトル設置部36の各位置(液位センサ50の別)に対して、その位置に設置される薬剤ボトル34を(特定の液位センサ50に対応する特定の薬剤ボトル34として)関連付け、記憶させることができる。そして、これらの薬剤ボトル34は薬剤の種類の別により認識可能に構成され、具体的に読取手段40により薬剤ボトル34内の薬剤の種類を読取る方法により、または操作部44(例えばテンキー)から薬剤の種類を識別する番号等を直接入力する方法により、薬剤ボトル34内の薬剤の種類が制御部42で認識可能となっている。その結果、洗浄装置10では、薬剤ボトル設置部36内の各位置に設置される薬剤ボトル34内の薬剤の種類を設定し(以下、「薬剤登録」と称する)、記憶部48に記憶させることができる。なお、各位置に設定(薬剤登録)可能な薬剤の種類の数は限定されず、本実施形態の場合、各位置に2ずつ設定(薬剤登録)可能としている。図2に、薬剤登録の際、一例として表示部46(ここでは表示画面46)に表示される表示(「薬剤登録画面」)の例を示す。
【0034】
上記の薬剤登録は、通常、洗浄装置10の使用開始時(洗浄装置10の設置時)に行われ、各位置に設置される一または複数の薬剤(薬剤の種類)が登録される。薬剤登録は、薬剤を補充する際、後述するように補充する薬剤の正誤を判定する基準となるものであり、みだりに変更されるべきではない。したがって、例えば薬剤登録およびその変更の操作に際してはパスワードの入力を必要とする構成等として適宜管理されることが好ましい。
【0035】
続いて、本実施形態に係る洗浄装置10の薬剤の補充(薬剤ボトル34の交換)に関する動作について説明する。図3は、洗浄装置10の薬剤の補充に関する動作例を示すフローチャートである。また、図4は、表示部における「薬剤補充画面」の例である。また、図5は、表示部における「薬剤補充履歴画面」の例である。
【0036】
本実施形態では、薬剤の補充に関する表示部46の構成を一例として表示画面46とし、薬剤の補充に関する操作部44の構成を一例として当該表示画面46に表示されるタッチパネル44としている。ただし、これに限定されず、例えば操作部44を表示部46とは独立して構成してもよい。また、本実施形態では、薬剤の補充に関する報知部52の構成を、表示部46(具体的には表示画面46)における表示、および案内音声としている。ただし、これに限定されず、例えばブザー、ランプ等としてもよい。
【0037】
以下、図3のフローチャートに沿って説明する。先ず、薬剤ボトル34内の薬剤が不足すると(S100)、液位センサ50から薬剤不足信号(例えばフロートスイッチOFF)が制御部42に送られる(S102)。これを受けた制御部42は、直ちにまたはさらに所定の条件(例えば当該液位センサ50を有する薬剤供給管32に設けられた送液ポンプ28の一定時間の継続動作)を満たした場合に薬剤不足を認識し(不足認識信号ON)(S104)、報知部52に報知させる制御を行う。このとき、制御部42は薬剤不足を認識した薬剤ボトル設置部36内の位置をメモリ等に記憶する。
【0038】
本実施形態では、表示画面46に薬剤不足を認識した旨の「薬剤不足画面」が表示されると共に、その旨の音声が発せられる。これに対して、使用者が「薬剤不足画面」の指示に従いタッチパネル44を操作することによって図4に例示する「薬剤補充画面」が表示される。
【0039】
「薬剤補充画面」には、制御部42が記憶した不足認識信号ONの位置が表示されると共に、薬剤ボトル34の交換を指示する旨が表示される。また、「薬剤補充画面」が表示されると、薬剤ボトル34の交換を指示する旨の音声が発せられる。以上の「薬剤不足画面」および「薬剤補充画面」の表示ならびに案内音声はいずれも制御部42の制御によって行われる。
【0040】
次いで、指示を受けた使用者は薬剤ボトル34を交換する(S106)。このとき、複数の薬剤ボトル34で薬剤不足が発生している場合には、いずれか一の薬剤ボトル34を交換する。従来の洗浄装置10ではいずれかの薬剤ボトル34内で薬剤が不足している旨が報知されるのみであった。したがって、例えば実際に薬剤が不足している薬剤ボトル34だけでなく、使用可能な量の薬剤が残っている薬剤ボトル34まで誤って交換され、薬剤を無駄にしてしまうおそれがあった。これに対して、本実施形態では、「薬剤補充画面」において制御部42が薬剤不足を記憶している位置(不足認識信号ONの位置)が表示されるため、使用者は当該位置の薬剤ボトル34を交換することによって不要な交換を防止することができる。
【0041】
使用者が、薬剤ボトル34を交換し、新たな薬剤ボトル34内に薬剤供給管32の一端32aを挿込むことによって液位センサ50における薬剤不足信号(例えばフロートスイッチOFF)が薬剤充足信号(例えばフロートスイッチON)に変わり、制御部42に送られる(S108)。これを受けた制御部42は、「薬剤補充画面」に表示されている不足認識信号ONの位置のうち、薬剤充足信号(例えばフロートスイッチON)を受けた位置(図4矢印A)を、操作部44(タッチパネル44)から選択可能とする制御を行う(S110)。そして、その旨を報知部52に報知させる制御を行う結果、薬剤判定(補充する薬剤の種類の正誤判定)を行う位置を選択して記録部38の記録の読取りを指示する旨の音声が発せられる。
【0042】
次いで、指示を受けた使用者は薬剤判定を行う位置を選択し(図4矢印A)、読取手段40を用いて選択した位置に設置した(交換した)新たな薬剤ボトル34の記録部38の記録を読取る(S112、S116)。図4の矢印Aは、「薬剤補充画面」において使用者により薬剤判定を行う位置が選択された状態を示している。
【0043】
ここで、使用者が薬剤判定を行う位置を選択すると(S112)、これを受けた制御部42は選択された位置を交換された薬剤ボトル34の位置として認識する。すなわち、選択位置を薬剤判定における対照位置に決定し、当該対照位置に設定(薬剤登録)されている薬剤の種類が記憶部48から読出される(S114)。
【0044】
つまり、薬剤判定に際し、先ず薬剤不足が認識され、その後に薬剤充足が認識された位置(不足認識信号がON、且つ薬剤充足信号がONである位置)のみが操作部44から選択可能に制御される。そして、当該位置が実際に薬剤ボトル34を交換した位置であることが使用者によって確認された上で、操作部44から当該位置が選択され、これを受けてはじめて制御部42は当該位置を交換された薬剤ボトル34の位置と認識する。したがって、いわば制御部42および使用者による二重の点検が行われることによって交換された薬剤ボトル34の位置を正確に決定することができ、交換された薬剤ボトル34の記録部38から読取られた記録と照合することができる。
【0045】
そして、使用者が読取手段により記録部38の記録を読取ると(S116)、これを受けた制御部42は薬剤判定を実施する(S118)。なお、薬剤ボトル34および読取手段40を移動させることなく読取可能な構成の場合、例えば使用者による位置選択を受けた制御部42が読取手段40から記録信号を受取る構成等としてもよい。そして、制御部42は、交換された薬剤ボトル34の位置(対照位置)に設定されている薬剤の種類のうちの一と、交換された薬剤ボトル34の記録部38から読取られた薬剤の種類とが一致するか否かの判定を行う。その結果、一致する場合は、補充する薬剤の種類が正しいことが確認されたとして薬剤不足の認識を解除し(不足認識信号をOFFとし)(S120)、薬剤補充が完了したことを報知部52に報知させる制御を行う(S122)。
【0046】
本実施形態では、「薬剤補充画面」において薬剤判定を行った位置の薬剤にOK表示(図4矢印B)が点灯し、次いで「薬剤補充完了画面」が表示される。そして、薬剤補充が完了した旨の音声が発せられる。これらは、いずれも薬剤補充の完了の報知(S122)の例である。
【0047】
なお、複数の薬剤ボトル34で薬剤不足が発生している場合には、「薬剤補充画面」において薬剤判定を行った位置の薬剤にOK表示が点灯するが、「薬剤補充完了画面」には遷移せず、引き続き「薬剤補充画面」が表示される。これに対して、使用者は、薬剤不足が発生している残りの薬剤ボトル34についても同一の手順により順次一ずつ薬剤ボトル34の交換および薬剤判定を行う(S124)。そして、全ての薬剤判定が終了すると、「薬剤補充完了画面」が表示され、薬剤補充が完了した旨の音声が発せられる。
【0048】
一方、薬剤判定の結果、不一致の場合は、補充する薬剤の種類が正しいことが確認されないとして制御部42は薬剤不足の認識を解除せず(不足認識信号をOFFとせずにONのままで)、不一致を報知部52に報知させる制御を行う(S222)。
【0049】
本実施形態では、「薬剤補充画面」において薬剤判定を行った位置の薬剤にNG表示(図4矢印C)が点灯し、再度記録部38の記録の読取りを指示する旨の音声が発せられる。これらは、いずれも不一致の報知(S222)の例である。この動作は、交換された薬剤ボトル34の位置に設定(薬剤登録)されている薬剤の種類のうちの一と、交換された薬剤ボトル34の記録部38から読取られた薬剤の種類とが一致するまで繰返される。したがって、使用者は、例えば補充すべき薬剤ボトル34以外の薬剤ボトル34を交換していたこと等を認識することができ、この場合、補充すべき薬剤ボトル34に交換し直すことができる(S224)。
【0050】
以上の動作によって、薬剤の補充(薬剤ボトル34の交換)に際し、交換される薬剤ボトル34の位置に設定されている薬剤と同一種類の薬剤を確実に補充することができる。ここで、仮に薬剤の誤投入(誤補充)その他洗浄装置10に対する適合性が確認されていない未設定の薬剤が投入されても、薬剤補充は完了されないため、洗浄運転を開始することができない。さらに、制御部42が薬剤不足を認識すると、一連の動作によって使用者を薬剤判定に誘導するため、薬剤が規定量に達していないまま洗浄装置10の運転が行われることが防止される。したがって、不適切な薬剤が使用されることによる被洗浄物の劣化、破損および洗浄不良を防止することができ、且つ洗浄装置10の劣化や故障を防止することができる。
【0051】
さらに、任意の動作として、制御部42は補充する薬剤の種類が正しいことを確認し、記録部38から記録を読取った際または薬剤補充を完了させる際等に、記録部38から読取られた薬剤の種類およびその他の情報を、交換された位置、日時等の情報と共に記憶部48に記憶させる制御を行う。この記録(記憶)は、操作部44の操作によって図5に例示する「薬剤補充履歴画面」等に表示されるように制御され、使用者が確認可能に構成される。これによって、薬剤の交換頻度等を確認することができ、余剰在庫を減らしてコストを低下させることができる。また、仮に薬剤供給管32の詰まり等の装置の不具合が生じている場合、これを発見することが可能になる。
【0052】
以上、説明した通り、本発明に係る洗浄装置によれば、薬剤の補充に際し、交換される薬剤ボトルの位置に設定されている薬剤と同一の種類の薬剤を確実に補充することができる。したがって、薬剤の誤投入や適合性が確認されていない薬剤の投入を防止することができる。その結果、不適切な薬剤の使用が未然に防止され、被洗浄物の劣化、破損および洗浄不良のおそれを防止することができ、且つ洗浄装置の劣化や故障を防止することができる。
【0053】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。本実施形態は、複数の薬剤ボトルを備える洗浄装置であるが、本発明は、一の薬剤ボトルを備える洗浄装置に対して当然に適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 洗浄装置
12 洗浄槽
14 噴射ノズル
20 排水管
24 通流管
26 配管
30 給水管
32 薬剤供給管
34 薬剤ボトル
36 薬剤ボトル設置部
38 記録部
40 読取手段
42 制御部
44 操作部(タッチパネル)
46 表示部(表示画面)
48 記憶部
50 液位センサ
52 報知部
図1
図2
図3
図4
図5