(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】放射線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/18 20180101AFI20230425BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20230425BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/04
(21)【出願番号】P 2019172796
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮太
(72)【発明者】
【氏名】半杭 秀一
(72)【発明者】
【氏名】内田 敏徳
(72)【発明者】
【氏名】染谷 幸夫
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-292457(JP,A)
【文献】特開平07-157056(JP,A)
【文献】特開2014-080284(JP,A)
【文献】特開2004-212064(JP,A)
【文献】特開2017-014019(JP,A)
【文献】登録実用新案第3207873(JP,U)
【文献】特開2013-63429(JP,A)
【文献】特開2004-184357(JP,A)
【文献】特開2002-79186(JP,A)
【文献】特開2009-168590(JP,A)
【文献】特開2000-329704(JP,A)
【文献】米国特許第5023895(US,A)
【文献】米国特許第4989225(US,A)
【文献】国際公開第2011/037783(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 15/00 - G01B 15/08
A61B 6/00 - A61B 6/14
G01G 11/00 - G01G 11/20
G01G 21/00 - G01G 23/48
B65G 11/00 - B65G 49/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダーによって保持された被検査物を搬送する検査コンベア、前記検査コンベアの搬入側に設けられた搬入コンベア、前記検査コンベアの搬出側に設けられた搬出コンベア、及び前記搬出コンベア側に設けられ検査結果に応じて前記被検査物を選別する仕分け装置と、
前記検査コンベアの両側に、前記検査コンベア上の前記被検査物を挟んで配置された放射線発生器と放射線検出器と、
前記検査コンベアと前記搬入コンベアの間、及び前記検査コンベアと前記搬出コンベアの間にそれぞれ設けられたタイミングスクリューとを備え、
前記タイミングスクリューは、軸方向が前記被検査物の搬送方向に沿って設けられ、スクリューのピッチは、前記検査コンベア側が放射線撮影時における隣接する前記被検査物の間隔に応じて広く、前記搬入コンベア側又は前記搬出コンベア側がこれらコンベアによる前記被検査物の搬送間隔に応じて狭くなっている放射線検査装置。
【請求項2】
前記検査コンベア、前記タイミングスクリュー、及び前記仕分け装置を駆動するモーターと、
前記モーターを制御して、前記検査コンベア、前記タイミングスクリュー、及び前記仕分け装置の動作タイミングを同期させる制御部を備える請求項1に記載の放射線検査装置。
【請求項3】
前記検査コンベアの搬送面に設けられた前記ホルダーの位置決め部材を備える請求項1又は請求項2に記載の放射線検査装置。
【請求項4】
前記検査コンベアに設けられ、前記検査コンベアの移動に従って、前記検査コンベア上に載置された前記被検査物及び前記ホルダーの少なくとも一方に接触して、前記ホルダーを前記位置決め部材に対して押し付ける押圧部材を備える請求項3に記載の放射線検査装置。
【請求項5】
前記ホルダーに設けられた溝又は突起と、前記検査コンベアに設けられ前記ホルダーの溝又は突起を案内するレールを備える請求項4に記載の放射線検査装置。
【請求項6】
前記検査コンベア下部のリターン部分を支持する面状のベルト受け台と、
前記リターン部分に設けられたテンションローラと、
前記検査コンベア上部に設けられたベルト支持部材の端部から前記検査コンベアのスプロケットに向けて突出して、前記検査コンベア両端の前記スプロケットと前記ベルト支持部材との隙間を塞ぐ受け部を備える請求項1又は請求項2のいずれかに記載の放射線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば、円柱あるいは角柱形の電池やコンデンサ等のように内部に捲回構造体を持った被検査物を対象として、捲回の巻ズレや異物の有無を検査する放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池などの被検査物の内部構造を検査する放射線検査装置として、例えば、特許文献1や特許文献2に示すものが知られている。この種の放射線検査装置は、一定の間隔でコンベアにより搬送された被検査物に対して、X線などの放射線を照射することで、その内部構造を検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-80284号公報
【文献】特開2017-53778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の放射線検査装置では、被検査物をコンベアに乗せたままの状態で、放射線発生器により被検査物に放射線を照射する。その場合、被検査物の全体像を観察するには、被検査物を支持するコンベアが透視画像に映り込まないように、放射線が透過しやすい樹脂製のホルダーによって被検査物をコンベア表面から一定の高さに支持しておくことが望ましい。ところが、被検査物が円柱状の電池のように比較的背の高い物品であると、搬送時においてコンベア上で傾いたり倒れたりするおそれがある。特に、放射線検査装置においては多量の被検査物を高速に検査する必要があることから、被検査物の高速移動と停止が繰り返されるために、ホルダーによって支持された被検査物をコンベア上で安定して支持することが要求されている。
【0005】
被検査物を安定して搬送するには、コンベア自体も滑らかに走行する必要があり、コンベアに弛みがなく、被検査物を常に平らな面で支持しながら搬送することが重要である。さらに、大量の被検査物を検査するには、検査前後の被検査物をストックヤードに貯留したり搬送用のコンベア上では極力被検査物を密集して配置する一方、放射線を照射する部分では隣接する被検査物が映り込まないように被検査物同士の間隔を広く取る必要がある。
【0006】
従来技術では、検査コンベア下部に位置するリターン部分を、所定の間隔で設けた複数の受けローラによって支持している。しかし、このような構成では、リターン部分が波打ち、その影響で被検査物を搬送するコンベア上部に振動が発生し、被検査物を安定して搬送することができない。特に、比較的軽量で安価な樹脂製のコンベアを使用すると、この傾向は増大する。また、コンベア上部では、支持部材によってコンベアと搬送する被検査物を下から支えているが、駆動用のスプロケットの外周が円弧状となっているため、スプロケットと支持部材との間に略V字状の隙間が生じ、これによってコンベア上部にたわみが生じることもある。
【0007】
従来技術では、各種コンベアの運転タイミング及び検査後における被検査物の仕分け機構の動作タイミングなどを、1台の駆動用モータから減速機と複数のギヤを経由して各部に伝えることで、機械的に同期させていた。しかし、このような機械的な同期は、正確なタイミングを取ることが難しい上に、構成の複雑化及び部品点数の増大を招く問題があった。
【0008】
以上のように、放射線検査装置では、搬送時における被検査物の安定した支持と、搬送間隔の適切かつ円滑な変更が要求される。しかし、前記のような従来技術においては、コンベアと検査台間の移送間隔の変更が不可能であり、また、被検査物を樹脂製のホルダーによって支持しながら搬送するという構成が採用されていないため、このような技術的要求を満足することは不可能であった。
【0009】
本実施形態は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本実施形態の目的は、被検査物をホルダーによって支持しながら、搬送時における被検査物の安定した支持と、搬送間隔の適切かつ円滑な変更を可能とした放射線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態の放射線検査装置は、次のような構成を有する。
(1)ホルダーによって保持された被検査物を搬送する検査コンベア、前記検査コンベアの搬入側に設けられた搬入コンベア、前記検査コンベアの搬出側に設けられた搬出コンベア、及び前記搬出コンベア側に設けられ検査結果に応じて前記被検査物を選別する仕分け装置。
(2)前記検査コンベアの両側に、前記検査コンベア上の前記被検査物を挟んで配置された放射線発生器と放射線検出器。
(3)前記検査コンベアと前記搬入コンベアの間、及び前記検査コンベアと前記搬出コンベアの間にそれぞれ設けられたタイミングスクリュー。
(4)前記タイミングスクリューは、軸方向が前記被検査物の搬送方向に沿って設けられ、スクリューのピッチは、前記検査コンベア側が放射線撮影時における隣接する前記被検査物の間隔に応じて広く、前記搬入コンベア側又は前記搬出コンベア側がこれらコンベアによる被検査物の搬送間隔に応じて狭くなっている。
【0011】
実施形態において、次のような構成を有することができる。
(1)前記検査コンベア、前記タイミングスクリュー、及び前記仕分け装置を駆動するモーターと、前記モーターを制御して、前記検査コンベア、前記タイミングスクリュー、及び前記仕分け装置の動作タイミングを同期させる制御部。
(2)前記検査コンベアの搬送面に設けられた前記ホルダーの位置決め部材。
(3)前記検査コンベアに設けられ、前記コンベアの移動に従って、前記コンベア上に載置された前記被検査物及び前記ホルダーの少なくとも一方に接触して、前記ホルダーを前記位置決め部材に対して押し付ける押圧部材。
(4)前記ホルダーに設けられた溝又は突起と、前記検査コンベアに設けられ前記ホルダーの溝又は突起を案内するレール。
(5)前記検査コンベア下部のリターン部分を支持する面状のベルト受け台と、前記リターン部分に設けられたテンションローラと、前記検査コンベア上部に設けられたベルト支持部材の端部から前記検査コンベアのスプロケットに向けて突出して、前記検査コンベア両端の前記スプロケットと前記ベルト支持部材との隙間を塞ぐ受け部。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の放射線検査装置の全体構成を模式的に示す平面図。
【
図2】第1実施形態の放射線検査装置の要部を示す斜視図。
【
図3】第1実施形態におけるホルダーの一例を示す斜視図。
【
図4】第1実施形態における位置決め部材と押圧部材を示す図で、(a)は平面図、(b)は斜視図。
【
図5】第1実施形態における検査コンベアを側方から見た模式図で、(a)はテンションローラをベルトの外側に配置した例、(b)は内側に配置した例を示す。
【
図7】第1実施形態における制御部と各部の関係を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1.第1実施形態]
[1-1.実施形態の構成]
図1及び
図2に示すように、第1実施形態に係る放射線検査装置1は、放射線発生器2、放射線検出器3、遮蔽箱4、搬送機構5、仕分け装置6及びこれら各部の動作を制御する制御部20を備える。
【0014】
放射線検査装置1は、被検査物Wに放射線を照射し、被検査物Wを透過した放射線を検出し、検出結果によって被検査物W内の透視画像を形成する。被検査物Wは、放射線により非破壊検査されるものであれば特に限定されないが、例えば、円筒型電池、角型電池、ラミネート型電池、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタ、等の捲回構造体である。被検査物Wは、中央に凹部Haを有する円形の樹脂製ホルダーHに嵌合された状態で移送される。ホルダーHの側面には、コンベアの搬送面と平行に伸びる円周状の溝Hbが設けられる。
【0015】
放射線発生器2は、被検査物Wに向けて放射線ビームを照射する。この放射線発生器2は例えばX線管である。放射線検出器3は、放射線発生器2と対向して配置される。この放射線検出器3は、例えばイメージインテンシファイア(I.I.)とカメラ、又はフラットパネルディテクタ(FPD)により構成される。放射線発生器2と放射線検出器3は、ここでは1組設けられている。放射線検出器3は、放射線検出器3によって得られた透視画像と予め記録されている基準画像に基づいて被検査物Wの良否を判定する判定部31や、撮影された透視画像表示する表示部に接続されている。
【0016】
遮蔽箱4は、放射線発生器2と放射線検出器3を囲い、放射線を遮蔽する。遮蔽箱4は、鉛などの放射線を遮蔽する材料を含み構成されている。遮蔽箱4には、被検査物Wを内部に搬入する搬入口41、内部の被検査物Wを外部に搬出する搬出口42が設けられている。なお、
図1では、放射線検査装置1の内部構造を示すため遮蔽箱4の一部のみを示している。
【0017】
搬送機構5は、被検査物Wを搬送する機構である。搬送機構5は、被検査物Wを搬送する検査コンベア8、検査コンベア8の搬入側に設けられた搬入コンベア9、検査コンベア8の搬出側に設けられた搬出コンベア10を有する。各コンベアとしては、例えばベルトコンベヤ、チェーンコンベヤなどが使用できる。搬送機構5は、被検査物Wが電池などの捲回構造体である場合に、被検査物Wを水平面に対して垂直にした状態で搬送する。
【0018】
搬送機構5は、検査コンベア8と搬入コンベア9の間、及び検査コンベア8と搬出コンベア10の間にそれぞれ設けられたタイミングスクリュー11を有する。タイミングスクリュー11は、軸方向が被検査物Wの搬送方向に沿って設けられ、スクリューのピッチは、検査コンベア8側が放射線撮影時における隣接する被検査物Wの間隔に応じて広く、搬入コンベア9側又は搬出コンベア10側がこれらコンベアによる被検査物Wの搬送間隔に応じて狭くなっている。タイミングスクリュー11は、駆動用モーター111と、モーターの回転力をタイミングスクリュー11に伝達するギヤ機構112を備える。
【0019】
検査コンベア8は、両端のスプロケット81の間に掛け渡されており、一方のスプロケット81に連結された駆動用モーター82によって、上部の搬送面が
図1の左から右方向に向かって移動し、被検査物Wを搬送する。検査コンベア8の搬送面は、その下に配置されたベルト支持部材83によって支持されている。
【0020】
ベルト支持部材83の端部と外周が曲面であるスプロケット81との間には、
図5及び
図6に示すように、隙間Sが設けられている。本実施形態では、ベルト支持部材83の端部からスプロケット81に向けて突出した一対の受け部84が設けられ、コンベア両端のスプロケット81とベルト支持部材83との隙間Sにおいても、この受け部84によってコンベアの搬送面が下から支持されている。受け部84は、
図5に示すように、両端のスプロケット81の近傍にそれぞれ設けても良いし、いずれか一方のスプロケット81の近傍に設けても良い。どの部分にいくつ設けるかは、検査コンベア8の弛みや波打ち状況に合わせて適宜選択できる。
【0021】
本実施形態では、
図6に示すように、スプロケット81として、ベルトの幅方向の2個所を駆動するように一定の間隔を保って支軸81aに固定された一対の歯車81b,81cを使用している。また、支軸81aを支持する左右の側板81d,81eと、歯車81b,81cとの間にも一定の間隔が設けられている。そのため、各受け部84は、一対の歯車81b,81cと左右の側板81d,81eとの間隙部分にまで挿入されるような細い幅の部材から構成される。なお、受け部84を櫛歯状に3本設けて、中央の受け部84を歯車81b,81cの間に挿入しても良い。
【0022】
検査コンベア8下部のリターン部分は、面状のベルト受け台85によって広い面積で支持されている。ベルト受け台85は、両端のスプロケット81の部分を除き、リターン部分のほぼ全域にわたって設けられている。リターン部分におけるスプロケット81とベルト受け台85の端部との間には、ベルトのたわみを防止するテンションローラ86が設けられる。テンションローラ86の位置は、
図5(a)のようにリターン部分を外側から押圧する箇所でも、
図5(b)のように内側から押圧するものでも良い。また、
図5では、一方のスプロケット81とベルト受け台85と間にテンションローラ86を設けたが、両端のスプロケット81の近傍にそれぞれ設けても良い。
【0023】
検査コンベア8の搬送面には、
図3及び
図4に示すように、被検査物Wを一定の間隔で搬送するための位置決め部材87が設けられる。この位置決め部材87は、円形のホルダーHの外周に当接して、ホルダーHを検査コンベア8の幅方向中心部に位置決めすると共に、検査コンベア8上におけるホルダーHの搬送方向の間隔を規制する。位置決め部材87は、検査コンベア8に限らず、搬入コンベア9や搬出コンベア10の搬送面にも、被検査物Wの搬送間隔に合わせて設けられるが、コンベア上で隣接するホルダーHを密着させて搬送する場合には、ホルダーH自体が位置決めの役割を果たすので設けなくても良い。
【0024】
検査コンベア8の入口部分及び出口部分には、検査コンベア8の両側に、検査コンベア8上のホルダーHと接触して、ホルダーHを位置決め部材87に押し付ける一対の押圧部材88が設けられる。押圧部材88は、先端がホルダーH外周面に接触するブラシあるいはスポンジ状の柔軟な部材から構成され、検査コンベア8の両側に配置された支持部89に取り付けられている。押圧部材88は、
図4に示すように、検査コンベア8の両側に、被検査物Wの進入側がホルダーHの外形よりも広く、送出側が狭くなるように、被検査物Wの搬送方向に対して斜めに配置される。押圧部材88は、検査コンベア8の入口部分及び出口部分に限らず、搬入コンベア9や搬出コンベア10上における被検査物W位置決めが必要な箇所に適宜配置することができる。
【0025】
仕分け装置6は、判定部31による検査結果に応じて被検査物Wを例えば、良品と不良品に選別するもので、アームやロッド、フラップなどによって搬出コンベア10上から被検査物Wを排出するものや、ターンテーブルと吸着ノズルを利用したものなど各種の装置を適宜採用できる。本実施形態では、図示しない駆動用モータによって回転するターンテーブル61と、被検査物Wを係合する凹部62と、被検査物Wを吸着保持する吸着ノズル63を備える。搬出コンベア10のタイミングスクリュー11と反対側に、搬出コンベヤ10上の被検査物Wを吸着保持して移送するターンテーブル61が設けられる。
【0026】
検査コンベア8の駆動用モーター82、搬入側と搬出側のタイミングスクリュー11の駆動用モーター111、及び仕分け装置6のターンテーブル61は、制御部20によって同期制御されている。図示しないが、放射線発生器2及び放射線検出器3による透視画像の撮影タイミングも、前記各駆動用モーター82,111による被検査物Wの搬送タイミングに同期されている。
【0027】
[1-2.実施形態の作用]
本実施形態の放射線検査装置1では、搬送コンベア上では被検査物Wは円形のホルダーH上に支持された状態で、狭い間隔、例えば隣接するホルダーH同士が密着した状態で搬送される。被検査物Wが搬入コンベア9の出口近くに達すると、搬入コンベア9と検査コンベア8の間に設けられたタイミングスクリュー11の溝内に、搬入コンベア9上の被検査物Wが入り込み、タイミングスクリュー11の回転に伴ってその軸方向に移送される。この際、タイミングスクリュー11の溝のピッチは搬入コンベア9側が狭く、検査コンベア8側が広くなっているため、搬入コンベア9上で近接して搬送されていた被検査物Wは、タイミングスクリュー11の溝幅の拡大に伴い、隣接する被検査物Wとの間隔が徐々に広がり、検査コンベア8に移送された状態では、検査時に隣接する被検査物Wが画像に写り込まないような間隔に設定される。
【0028】
この場合、タイミングスクリュー11の駆動用モーター111と検査コンベア8の駆動用モーター82とは制御部20によって同期されているので、タイミングスクリュー11から送り出される被検査物Wは、検査コンベア8上に設けられた各位置決め部材87の間に1つずつ送り出される。
【0029】
検査コンベア8上に移送された被検査物Wは、押圧部材88によって位置決め部材87に押し付けられ、その搬送間隔が正しいものとなる。すなわち、両側の押圧部材88の間に進入した被検査物Wは、検査コンベア8の入口側に設けられた押圧部材88に接触し、押圧部材88の間隔が狭まるにつれてその進行が遮られるのに対し、検査コンベア8は移動を続けるため、結果として被検査物Wが位置決め部材87に押し付けられる。この際、押圧部材88はブラシやスポンジなどのような弾性材料によって構成されているため、被検査物Wが位置決め部材87に当接した後は、位置決め部材87を介して伝わる検査コンベア8の搬送力が勝るため、押圧部材88の先端が変形してその狭くなった隙間の部分を被検査物Wは通過する。
【0030】
この状態で、被検査物Wが撮影箇所に達すると、検査コンベア8の両側に配置された放射線発生器2と放射線検出器3により、被検査物Wの透視画像が撮影される。この放射線透視画像の撮影は、被検査物Wの撮影位置で検査コンベア8を停止させて行っても良いし、高速度カメラを利用した静止画像の撮影や、動画による撮影によって被検査物Wの良否を判定することが可能な場合には、検査コンベア8を移動させながら撮影を行っても良い。本実施形態においては、タイミングスクリュー11の駆動用モーター111、検査コンベア8の駆動用モーター82及び放射線発生器2及び放射線検出器3による透視画像の撮影タイミングを制御部20によって同期させることにより、検査コンベア8を間欠的に搬送及び停止させて、個々の被検査物Wの静止画像を撮影する。
【0031】
撮影された被検査物Wの静止画像は判定部31に送られ、判定部31において予め保存されている基準画像と比較されることにより、その良否が判定される。このようにして得られた個々の被検査物Wに関する判定結果は制御部20に送られ、制御部20は判定結果に基づいて仕分け対象の被検査物Wが仕分け装置6に達した場合に、仕分け装置6を駆動させる。
【0032】
撮影が終了した被検査物Wは、検査コンベア8によってその出口側に送られ、出口側のタイミングスクリュー11に達する。出口側のタイミングスクリュー11は、検査コンベア8側のピッチが広く、搬出コンベア10側のピッチが狭くなっている。そのため、検査コンベア8によって広い間隔で送られてきた被検査物Wは、タイミングスクリュー11によってその間隔を徐々に狭められながら、搬出コンベア10に送られる。
【0033】
仕分け対象となる被検査物Wが、搬出コンベア10の経路上に設けられた仕分け装置6に達すると、制御部20からの指令に基づいて仕分け装置6のターンテーブル61が作動し、ターンテーブル61の外周に設けられた凹部62に係合し、吸着ノズル63に吸着保持され、仕分け対象の被検査物Wを搬出コンベア10上から排出する。仕分け対象以外の被検査物Wについては、仕分け装置6が駆動されることなくそのまま搬出コンベア10によって検査装置外部に送り出される。
【0034】
[1-3.実施形態の効果]
本実施形態は、次のような効果を有する。
(1)本実施形態では、ピッチが徐々に増減していくタイミングスクリュー11を利用して、搬入コンベア9によって搬送された被検査物Wの搬送間隔を変更する。その結果、検査前後の被検査物Wを貯留しておくストックヤードや搬入コンベア9、搬出コンベア10上では被検査物Wを密集して配置する一方、放射線を照射する検査コンベア8では隣接する被検査物Wが映り込まないように被検査物W同士の間隔を広く取ることができる。そのため、装置全体を小型化しながらも、大量の被検査物Wを迅速かつ正確に検査することが可能となる。
【0035】
(2)本実施形態では、放射線が透過しやすい樹脂製のホルダーHによって被検査物Wをコンベア表面から一定の高さに支持しておくため、被検査物Wを支持するコンベアが透視画像に映り込むことがなく、被検査物W全体、特に従来技術では透視が難しい被検査物W下部の鮮明な透視画像を得ることができる。特に、コンベア上にホルダーHと係合する位置決め部材87を設けることにより、コンベア上でホルダーHがずれることなく、被検査物Wを正確な位置でしかも高速に移動させることができる。コンベアの側方に、ホルダーHと接触してホルダーHを位置決め部材87に押し付けるための押圧部材88を設けたため、ホルダーHと位置決め部材87との位置決めの正確に行われる。
【0036】
(3)
図3に示すように、ホルダーHの側面に設けた溝Hbに対してコンベア側方に配置したレールRを嵌め込みながら被検査物Wを移動させるため、コンベアの高速移動及び停止を繰り返しても、被検査物Wがコンベア上で倒れることなく安定して移動させることが可能となる。
【0037】
(4)検査コンベア8下部においては、リターン部分を面状のベルト受け台85によって広い面積で支持しているので、ベルトのたわみや波打ちが解消される。また、リターン部分にテンションローラ86を設けることで、ベルトの緩みがなくなる。検査コンベア8上部においては、ベルト支持部材83の端部からスプロケット81に向けて突出した受け部84を設け、この受け部84によってコンベア両端のスプロケット81とベルト支持部材83との隙間Sを塞ぐようにしたため、ベルトのたるみが解消される。これらの構成の組み合わせにより、コンベア上部の搬送面を平らにして、被検査物Wを安定して搬送することができる。
【0038】
(5)タイミングスクリュー11、検査コンベア8、仕分け装置6のターンテーブル61にそれぞれ専用の駆動用モーターを設けて、これらの駆動用モーターの同期制御を制御部20により行うようにしたので、従来の機械的同期制御に比較して、装置の製作時間・コスト・重量の削減や省スペース化が可能となる。特に、被検査物Wの形状や寸法に合わせて、その搬送速度や撮影タイミングを変更することは、従来のような機械的同期では不可能であったが、本実施形態によれば、制御部20によるプログラミングを適宜に変更することにより、様々な対応が可能となる。
【0039】
[2.他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。具体的には、次のような他の実施形態も包含する。
【0040】
(1)放射線発生器2と放射線検出器3を複数組設けて、1つの被検査物Wに対して異なる方向から同時に放射線を照射して複数の透視画像を撮影する。特に、角形の積層電池の左右のコーナー部を同時に検査したり、被検査物Wの上部と下部を異なる方向から検査する場合に有効である。
【0041】
(2)搬入コンベア9と検査コンベア8と間にのみタイミングスクリュー11を配置し、検査コンベア8と搬出コンベア10との間は、プッシュロッドやカムなどの他の手段によって被検査物Wを移送させる。すなわち、タイミングスクリュー11による被検査物Wの正確な位置決めは検査コンベア8上において不可欠なものであり、搬出コンベア10上では、搬送コンベアの速度を検査コンベア8に比較して低速とすると共に、
図4に示した押圧部材88と位置決め部材87とによって被検査物Wの間隔を調整することもできる。
【0042】
(3)一対の押圧部材88を設ける代わりに、コンベアの搬送面に設ける位置決め部材87の配置によっては、1つの押圧部材88をコンベアの片側にのみ配置し、被検査物Wのコンベア幅方向及び搬送方向を規制することもできる。押圧部材としては、ブラシやスポンジ以外に、弾性を有する構造体であれば、板ばねや、ばねによって支持されたガイド板なども使用できる。
【0043】
(4)ホルダーHの側面に突起を設けて、この突起をコンベア側方に配置した溝状のガイドに嵌め込みながら被検査物Wを移動させる。
【0044】
(5)仕分け装置6としては、ターンテーブル61を使用したもの以外に、アームやフラップによって被検査物Wを分別するもの、あるいは吸着ノズル63のみ、ターンテーブル61と吸着ノズル63との組み合わせによって被検査物Wの寸法・形状、或いは仕分け方向などに応じて各種のものを使用できる。ターンテーブル61の代わりに、例えば、長円形に走行するコンベアに、被検査物Wを保持する複数個の突起や吸着ノズル63を一定の間隔で設けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
W…被検査物
H…ホルダー
Ha…凹部
Hb…溝
1…放射線検査装置
2…放射線発生器
3…放射線検出器
31…判定部
4…遮蔽箱
41…搬入口
42…搬出口
5…搬送機構
6…仕分け装置
61…ターンテーブル
62…凹部
63…吸着ノズル
8…検査コンベア
81…スプロケット
82…駆動用モーター
83…ベルト支持部材
84…受け部
85…ベルト受け台
86…テンションローラ
87…位置決め部材
88…押圧部材
89…支持部
9…搬入コンベア
10…搬出コンベア
11…タイミングスクリュー
111…駆動用モーター
112…ギヤ機構
20…制御部