(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】構造物基礎補強方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20230425BHJP
E02D 27/34 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D27/34 A
(21)【出願番号】P 2019175556
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】土屋 勉
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-177741(JP,A)
【文献】特開2011-236705(JP,A)
【文献】特許第4643364(JP,B2)
【文献】特許第4575858(JP,B2)
【文献】特開2018-071308(JP,A)
【文献】特開2016-160700(JP,A)
【文献】特開2017-125397(JP,A)
【文献】特開2012-062616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強するべき構造物基礎の外周の所定位置から所定深度まで削孔し、
前記所定位置は、改良体を造成することにより得られる抵抗力が想定される水平外力よりも大きくなる様に設定され、
固化材を噴射する噴射装置を先端に取り付けたロッドを、前記削孔によって形成される孔の所定深度まで挿入し、前記噴射装置から固化材を噴射して前記構造物基礎周辺の土壌を切削しつつ固化材と混合し、
前記噴射装置から噴射される噴流の軌跡が扇形となる様に前記ロッドを所定の角度だけ往復動しつつ、前記構造物基礎の下面を含めて当該下面よりも地上側まで引き上げて改良体を造成することを特徴とする構造物基礎補強方法。
【請求項2】
改良体を造成した後、前記削孔した孔に再び前記ロッドを前記所定深度またはそれ以浅まで挿入し、2回目以降の造成をすることを特徴とする請求項1の構造物基礎補強方法。
【請求項3】
改良体を造成する際に、固化材を水平方向よりも斜め上方へ噴射する請求項1、2の何れかの構造物基礎補強方法。
【請求項4】
前記削孔の位置が偶数箇所あり、構造物基礎の中心に対して点対称に配置されている請求項1~3の何れか1項の構造物基礎補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震対策、震災後の復旧、建築物更新のための既存杭再利用、国土強靭化対策の一環として、構造物基礎(例えばフーチングを有する杭基礎)を補強する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図15において、杭基礎50は、上部構造物の一部を構成するフーチング51と、地盤G内に埋設されフーチング51に頭部が接合された杭52(
図15の例では2本の杭52が表示される)を備えている。
ここで、地震で杭基礎50が破損するのは、水平外力である地震時水平力が作用することによるものであり、その破損箇所は、フーチング51との境界部である杭頭部52Aであることが圧倒的に多い。
図15で示す様なフーチング51を有する杭基礎50が地震により破損した場合や、その様な破損を予防するべき場合に、従来から、固化材で現地土を切削しつつ地中固結体を造成する地盤改良を杭頭部52Aに施すことにより補強することが行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、従来技術に係る補強方法では、想定される地震時水平力に対して、水平面に投影した場合の地中固結体の面積をどの程度に設定すれば必要な抵抗力が得られるかという演算について明確に定められておらず、そのため、従来技術に係る補強方法では、補強に必要な地中固結体の面積を必要以上に大きく造成してしまう事例が多々存在する。
また、
図15で示す様にフーチング下面51A(底面)は例えば砕石Nを含み、多数の凹凸が存在し、当該凹凸に空気が溜め込まれてしまう場合があり、その様な空気が存在した状態で改良体を造成してフーチング51の底面51Aを包囲してしまうと、改良体内部に空気が侵入してしまう等、従来の補強工法にはフーチング下面51Aと改良体の密接に関する課題も同時に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4643364号公報
【文献】特許第4575858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、構造物基礎(例えばフーチングを有する杭基礎)を補強する補強方法であって、想定される水平外力に対して、最適範囲の地中固結体造成手段(量的解決)と確実な構造物基礎補強方法(質的解決)の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の構造物基礎補強方法は、
補強するべき構造物基礎(10)の外周の所定位置から所定深度まで削孔し、
前記所定位置は、改良体(3)を造成することにより得られる抵抗力(F)が想定される水平外力(H:例えば地震時水平力)よりも大きくなる様に設定され、
固化材を噴射する噴射装置(4A)を先端に取り付けたロッド(4)を、前記削孔によって形成される孔の所定深度まで挿入し、前記噴射装置(4A)から固化材を噴射して前記構造物基礎周辺の土壌を切削しつつ固化材と混合し、
前記噴射装置(4A)から噴射される噴流(C)の軌跡(の平面形状)が扇形となる様に前記ロッド(4)を所定の角度(
図5の例では角度θ)だけ往復動しつつ、前記構造物基礎(10)の下面(底面:フーチング1の底面)を含めて当該下面よりも地上側まで引き上げて改良体(3)を造成することを特徴としている。
ここで、構造物基礎(10)は例えばフーチング1を有する杭基礎であり、周辺地盤は包含しない。ただし、改良体(3)は構造物基礎(10)に包含される。
【0007】
また本発明において、改良体(3)を造成する際、ロッド先端噴射装置(4A)から固化材(C)を噴射して引き上げる際には固化材(C)を水平方向よりも斜め上方へ噴射(水平方向に対して45°以下の傾斜角度で噴射)することも可能である。
或いは本発明において、前記構造物基礎(10)の下面を含めて当該下面よりも地上側まで引き上げて改良体(3)を造成した後、ボーリング孔(BH)に再び(繰り返しの回数は1回とは限らない)前記ロッド(4)を前記所定深度またはそれ以浅の位置まで挿入して、噴射装置(4A)から固化材(C)を噴射して引き上げる場合や、固化材(C)を往復動する角度(θ1)を、前記構造物基礎(10)の下面を含めて当該下面よりも地上側まで引き上げて改良体(3)を造成する際の往復動する角度(θ)よりも大きくする場合もある。
【0008】
さらに本発明において、前記削孔孔の数が偶数の場合、その削孔位置は構造物基礎(10)の中心に対して点対称に配置されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上述の構成を具備する本発明によれば、補強するべき構造物基礎(10:例えばフーチング1を有する杭基礎)の外周の所定位置から所定深度まで削孔するが、前記所定位置は、改良体(3)を造成することにより得られる抵抗力(F:或いはF/安全率S)が想定される水平外力(H:例えば地震時水平力)よりも大きくなる様に設定されているので、想定される水平外力(H)よりも抵抗力(F)が確実に大きくなり、構造物基礎(10)の耐震強度を確実に向上させることが出来る。
そして、改良体(3)は構造物基礎(10)の下面(底面:フーチング1の底面)を含めて当該下面よりも地上側の領域まで延在して造成されているので、前記抵抗力(F)は「基礎(例えば杭2)のせん断抵抗力F1」と「基礎(例えばフーチング1)と改良体(3)の付着力F2」と「改良体(3)が基礎(フーチング1)を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3」との和となり(式(2)参照)、従来技術に比較して「改良体(3)が基礎(フーチング1)を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3」の分だけ抵抗力(F)は大きくなるため、水平外力(H)が作用しても十分に抵抗することが出来る。
ここで、杭基礎(2)が既に破損している場合には「基礎のせん断抵抗力F1」は非常に小さくなる(或いはゼロとなる)が、その分だけ「改良体(3)が基礎を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3」を大きくすれば、水平外力(H)が作用しても十分に抵抗することが出来る。そのため、本発明は健常な基礎の耐震補強のみならず、既に破損した基礎の耐震化をも実現することが出来る。
【0011】
また本発明において、改良体(3)を造成するに際して、改良体(3)を造成(地盤改良の第1の工程)した後、削孔孔に再びロッド(4)を前記所定深度またはそれ以浅の位置まで挿入して噴射装置(4A)から固化材(C)を噴射して引き上げ(地盤改良の第2以降の工程)、以て、改良体(3)の造成を複数回行えば、補強するべき構造物基礎(10)と改良体(3)との密着性や、改良体の強度をさらに向上することが出来る。
【0012】
本発明において、改良体(3)を造成する際には固化材を水平方向へ噴射するほか、水平方向よりも斜め上方へ噴射(水平方向に対して45°以下の傾斜角度で噴射)すれば、固化材(C)を基礎の下面(例えばフーチング下面1A)に衝突させることが出来る。
構造物基礎10(例えばフーチング1)の下面(1A)は多数の凹凸が形成され、当該凹凸に空気が溜まり易いが、固化材(C)を斜め上方に噴射することにより、フーチング下面(1A)の凹凸に溜まった空気を押し出し、排除することが可能であり、以て、改良体(3)内部に空気が存在する(いわゆる「巣」が出来る)ことを防止出来る。それにより、補強するべき構造物基礎(10)と改良体(3)との密着性を向上させることが出来る。
【0013】
それに加えて本発明において、削孔孔に再びロッド(4)を挿入して噴射装置(4A)から固化材(C)を噴射して引き上げる際(地盤改良の第2以降の工程)に、固化材(C)を往復動する角度(θ1)を、改良体(3)を造成(地盤改良の第1の工程)した際の往復動する角度(θ)よりも僅かに大きくすることでフーチング(1)の下面(1A)の凹凸に溜まった空気をより確実に排除することも可能で、補強するべき構造物基礎(10)と改良体(3)をより強固に密着させることも可能である。
【0014】
本発明において、前記削孔孔の数が偶数の場合の削孔位置は構造物基礎(10)の中心に対して点対称に配置すれば、2つの断面形状扇形の改良体(3)における円弧部分近傍のみに重複して固化材(C)が噴射され、例えば構造物基礎(10)が杭基礎(フーチング1と杭2を含む)である場合に、改良体(3)を造成する際に噴射される固化材(C)が杭(2)の反対側に存在する先行して造成された改良体(3)に直接衝突する領域を少なくすることが出来、先行して造成された改良体(3)が大きく攪乱されてしまうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】第1実施形態の一工程を示す工程図であって、削孔する工程を説明する図である。
【
図5】
図4の工程に連続する工程を示し、ボーリング孔内ロッド先端から固化材及びエアを噴射して改良体を造成する工程を説明する図である。
【
図7】
図6の地盤改良の第1の工程における固化材及び圧縮エアの噴射態様を示す説明図である。
【
図9】
図8で示す地盤改良の第2の工程における固化材噴射の態様を示す説明図である。
【
図10】
図8で示す地盤改良の第2の工程における地盤改良の平面形状を第1の工程と比較して示す説明図である。
【
図11】第1実施形態の施工手順を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第2実施形態を示す説明図である。
【
図13】本発明の第3実施形態を示す説明図である。
【
図14】本発明の第4実施形態を示す説明図である。
【
図15】構造物基礎の一例として、フーチングを有する杭基礎を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に
図1~
図11を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
第1実施形態を施工した状態を模式的に説明している
図1、
図2において、構造物基礎10としてフーチング1を有する杭基礎2(或いは杭2)が地盤Gに埋設されている。図示の実施形態では、フーチング1は一辺の長さBの正方形断面を有しており、杭2は直径Dの円形断面を有している。フーチング1と杭2は平面上の中心が一致しており、当該中心は
図2において符号Oで示される。
【0017】
構造物基礎10或いはフーチング1を有する杭2の周辺地盤Gには、所定の深度に亘って改良体3(地盤改良体)が造成されている。図示の実施形態では、後述する様に、改良体3は地盤改良の第1の工程で造成され、地盤改良の第2の工程で固化材が噴射される領域を有しており、連続して一体的に構成されており、フーチング1と杭2との境界近傍に造成される。
図1~
図11の第1実施形態において、改良体3の水平面形状は1辺Biの正方形であり、改良体3の平面上の中心はフーチング1、杭2の中心O(
図2参照)と一致している。
図1、
図2において、符号BHは改良体3を造成する際に削孔されるボーリング孔を示しており、ボーリング孔BHは構造物基礎10の中心Oに対して点対称に2箇所削孔されている(
図2)。
【0018】
改良体3を造成することにより得られる構造物基礎10の抵抗力F(F/S)が、地震時に想定される水平外力H(例えば地震時水平力)よりも大きくなる様に、改良体3の使用は設計される。そして改良体3の断面積は、
地震時水平力H≦抵抗力F/S(S:安全率)・・・式(1)
となる様に設計される。
式(1)における抵抗力Fは、次式(2)で示される。
抵抗力F=(杭2のせん断抵抗力F1)+(フーチング1と改良体3の付着力F2)+(改良体3がフーチング1を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3)・・・式(2)
地震時水平力H、杭2のせん断抵抗力F1、フーチング1と改良体3の付着力F2、改良体3がフーチング1を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3は、水平方向に作用する力或いはその成分である。
【0019】
式(2)の抵抗力Fを構成する「杭2のせん断抵抗力F1」、「フーチング1と改良体3の付着力F2」、「改良体3がフーチング1を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3」は、それぞれ以下の様に表すことが出来る。
杭2のせん断抵抗力F1は
F1=Zp・πD
2/4 ・・・式(3)
ここで、「Zp」は杭2の許容せん断応力(N/mm
2)であり、「πD
2/4」は直径Dの杭2の断面積(mm
2:
図2参照)である。
フーチング1と改良体3の付着力F2は
F2=k1・Fc・{B
2-(πD
2/4)} ・・・式(4)
ここで、「k1・Fc」は改良体を構成する材料とフーチング1との単位面積(1mm
2)当たりの付着強度であり、係数「k1」は発明者の実験によれば0.05~0.3であり、「Fc」は改良体の設計基準強度(N/mm
2)であり、例えば一軸圧縮応力である。そして、「B
2-(πD
2/4)」は一辺の長さBの正方形断面のフーチング1と改良体3が付着している面積(mm
2、
図2参照)である。
改良体3がフーチング1を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3は
F3=k2・Fc・(Bi
2-B
2)/(4・tanφ) ・・・式(5)
ここで「k2」は係数で、発明者の実験によれば0.15~0.6であり、「k2・Fc」は単位面積(1mm
2)当たりのせん断応力(N/mm
2)である。「(Bi
2-B
2)/(4・tanφ)」は一辺の長さBiの正方形断面の改良体3がフーチング1を包囲している領域であって、地震時水平力Hに抵抗する領域の面積(mm
2:
図2参照)である。そして「φ」は水平外力(H:例えば地震時水平力)が改良体に作用した際に生じる改良体内部の荷重分散角φであり、
図2で示されている。
【0020】
図2において、「改良体3がフーチング1を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3」は、当該領域に接しているフーチング領域の接触面に対して角度φの方向に作用し、角度φは通常は30°~45°である。
地震時水平力Hが
図2の矢印Hで示す様に作用した場合、地震時水平力Hに対する抵抗力となるせん断抵抗力F3(改良体3がフーチングを包囲している領域におけるせん断抵抗力)は、
図2の改良体3がフーチング1を包囲している領域の内、濃いハッチングで示す領域3Aにおけるせん断抵抗力であり、領域3Aの抵抗力である。
図2において、角度φ=45°の場合には、領域3Aの面積(水平面における面積)は改良体3がフーチング1を包囲する領域の面積(水平面における面積)の1/4(=1/4・tanφ)である。
【0021】
杭2のせん断抵抗力F1は杭2の材料と径寸法Dにより予め決定する(定数である)が、「フーチング1と改良体3の付着力F2」と「改良体3がフーチング1を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3」は、改良体3の面積により決定される。そして抵抗力Fを適正な値(地震時水平力H×安全率Sよりも大きな数値)に設定するには、改良体3がフーチング1を包囲している領域として必要な面積、すなわち、改良体3がフーチング1を包囲している領域であって地震時水平力Hに抵抗する領域3Aの必要面積を確保する必要がある。
(
図5を参照して)後述する様に、
図2において、改良体3がフーチング1を包囲している領域は、構造物基礎10の中心について点対称に配置された2本のボーリング孔BHから固化材を噴射することにより造成される。ボーリング孔BHから固化材を噴射して造成される改良体は、水平面における断面形状が扇形であり、造成された2つの扇形の改良体における円弧部分近傍領域を重複させることにより、フーチング1を包囲する様に改良体3が造成される。
その際、改良体3の辺の長さBi、すなわち固化材の到達距離を適宜選択することにより、2つの扇形の改良体で構成される改良体3の面積が、改良体3(フーチング1を包囲している改良体)における必要な面積(地震時水平力に抵抗する領域の面積)を確保出来る。そして後述する様に、必要な面積が求まれば、ボーリング孔BHの位置を決定することが出来る。
【0022】
式(2)における右辺第1項の「杭2のせん断抵抗力F1」は、例えば破損杭を補強する場合には「ゼロ」となる。換言すれば、健常杭を予め補強する場合には「杭2のせん断抵抗力F1」を前記抵抗力Fの一部として見込めるが、破損杭を補強する場合には「杭2のせん断抵抗力F1」は前記抵抗力Fの一部には見込めない。
また式(2)における右辺第3項の「改良体3がフーチング1を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3」は、改良体3がフーチング1の下面1Aよりも上方(地上側)に存在しない場合(例えば
図3の事例)はゼロとなる。
図3の事例(変形例)では、改良体3は、フーチング1の下面1Aよりも地中側(
図3では下方)のみに造成されており、フーチング1の下面1Aよりも上方(地上側:
図3では上方)には造成されていない。
図3の様な場合であっても、例えば「杭のせん断抵抗力F1」と「フーチング1と改良体3の付着力F2」のみで地震時水平力Hに抵抗できる場合であれば、杭頭部を補強することが可能である。
【0023】
図1において、式(2)における右辺第3項の「改良体3がフーチング1を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3」は、概略水平に延在しているフーチング下面3Aの延長線(
図1では一点鎖線で示す仮想線)と同一方向(水平方向)に作用する。
式(2)における右辺第3項のせん断抵抗力F3(フーチング下面3Aの延長線が為す方向)と荷重分散角が為す角度φが例えば45°であれば、鉛直方向についてフーチング1と改良体3とが重複している領域の鉛直方向寸法Lv(改良体3において、フーチング1の下面1Aから改良体3の上端までの寸法)と、当該領域の水平方向寸法Lhとは等しくなり、水平方向寸法Lhを改良体3の正方形断面の一辺の長さBiとフーチング1の一辺の長さBとの差から求めることが出来る。
φ=45°であれば
Lh=(Bi-B)/2・・・式(6)
Lv=Lh・・・式(7)
ここで、水平方向寸法Lhは、地震時水平力Hを決定すれば、式(1)~(6)を用いて演算することが出来る。後述する様に、水平方向寸法Lhが求まれば、改良体造成におけるボーリング孔BHの削孔位置を決定することが出来る。そして水平方向寸法Lhが求まれば鉛直方向寸法Lvも求まり、改良体を造成するべき領域の鉛直方向範囲を決定することが可能になる(
図11参照)。
ここで、垂直方向寸法Lvが小さ過ぎると鉛直方向についてフーチング1と改良体3とが重複する領域が水平外力である地震時水平力Hを十分に支持することが出来ず、改良体のせん断抵抗力F3により地震時水平力Hの抵抗力Fとして作用しない可能性がある。そのため、垂直方向寸法Lvは、改良体強度に依存する荷重分散角φを用いて、
Lv≧Lh・tanφ に設定する。
【0024】
ここで、上述した式(1)~(5)は、地表面と平行な座標系であるXY座標系において、X地震時水平力がX軸或いはY軸と平行な方向に作用した場合の抵抗力のみを演算しており、X軸或いはY軸に対して傾斜した方向に作用する地震時水平力の抵抗力は考慮していない。
図2から明らかな様に、「改良体3がフーチング1を包囲している領域」は地震時水平力がX軸或いはY軸と平行な方向に作用する場合に最小となり、「改良体がフーチングを包囲している領域におけるせん断抵抗力」も最小となる。従って、地震時水平力がX軸或いはY軸と平行な方向に作用する場合に必要な抵抗力が確保できれば、その他の方向に地震時水平力が作用しても、「改良体がフーチングを包囲している領域」の面積はX軸或いはY軸と平行な方向に作用する場合よりも大きくなるため、(地震時水平力に耐えるために)必要な抵抗力が得られる。そして、地震時水平力が作用する方向を事前に予測することは困難であるため、図示の実施形態では、X軸或いはY軸と平行な方向に作用する地震時水平力の抵抗力についてのみ検討している。
【0025】
次に
図4~
図10を参照して、第1実施形態を施工する際の手順について説明する。
ボーリング孔BHを削孔する工程を示す
図4において、改良体3がフーチング1を包囲する領域は、フーチング1の外周に存在する一辺の長さBi(Bi=B+2Lh:式(6)より)の正方形断面(破線で示している)で表示されている。改良体3の平面上の中心はフーチング1及び杭2の平面上の中心Oと一致している。
ボーリング孔BHの削孔位置は、フーチング1及び杭2の中心(構造物基礎10の中心)に対して相互に点対称であって、当該一辺Biの正方形の向かい合った2箇所の頂部に相当する位置である。
ボーリング孔BHの位置を決定する際は、地震時の水平力Hを決定した上、前記式(1)~(6)により水平方向寸法Lhを演算し、ボーリング孔BHの削孔位置を決定する。決定された位置において所定深度までボーリング孔BHを削孔する。
ボーリング孔BHを削孔後、
図5の工程を実行する。
図5の工程では、ボーリング孔BHに噴射装置4A(モニタ)を挿入し、噴射装置4Aから固化材を噴射して改良体3を造成する。
【0026】
図5において、先端にモニタ4Aを備えたロッド4をボーリング孔BH内に挿入し、モニタ4Aから固化材C及び圧縮エアAを噴射して、構造物基礎10(フーチング1、杭2)周辺の土壌を切削しつつ固化材と混合し改良体3を造成する。圧縮エアAを噴射する場合には、圧縮エアAにより固化材Cを包囲して、圧縮エアAの噴射量を調整する(
図9のように噴射しない場合もある)ことにより、固化材の到達距離(固化材Cによる地盤切削距離)を調整することができる。
固化材C及び圧縮エアAを噴射する際に、モニタ4Aから噴射される固化材C、圧縮エアAの軌跡(噴流C、Aの平面形状)が扇形となる様に、モニタ4A(或いはロッド4)を角度θだけ繰返し往復動或いは揺動しつつ、地盤改良し、引き上げて改良体3を造成する。改良体3を造成する領域は、杭頭部の補強に必要な範囲である。
ここで、
図5の例では角度θは90°であり、θ=90°というのは第1の工程(
図6参照して後述)における往復動の角度或いは揺動角度である。
【0027】
改良体3はフーチング1下方の領域からフーチング1の下面(底面)を含めて当該下面よりも地上側の領域まで延在して造成されているので、改良体3を造成する鉛直方向の範囲は、
図1で示す様にフーチング1の鉛直方向範囲と重複している。改良体3とフ
ーチング1が鉛直方向で重複する領域(改良体3がフーチング1を包囲する領域)の鉛直方向寸法Lvは、改良体3の平面形状は正方形である第1実施形態では、改良体3のフーチング1の外周に延在している領域の水平方向寸法Lhに等しい。
図5で示す工程では、モニタ4Aから固化材を噴射して、平面形状が正方形の改良体3を造成するが、改良体3の幅寸法Bi(1辺の長さ:Bi=B+2Lh)は、想定される地震時水平力Hに基づき前記式(1)~(6)から演算される。
図5において、点対称に配置された一対のボーリング孔BH内のモニタ4Aからの固化材Cにより造成された2つの断面形状扇形の改良体3は、円弧部分近傍の領域が重複している。
【0028】
図5で示す地盤改良工程(改良体3を造成する工程)は、地盤改良の第1の工程と第2の工程の2段階に分けて行われる。
第1の工程(地盤改良の第1の工程)では、
図6で示す様に、鉛直方向において、所定深度位置K1からフーチング下面1Aよりも地上側(
図6では上側)の鉛直方向位置K2(例えば、フーチング下面1Aから0.3m~0.5mの位置)までモニタ4A(
図5)を引き上げて行われ、立方体形状の改良体3を造成する。
【0029】
図示の第1実施形態における第1の工程では、
図7で示す様に、モニタ4Aからは固化材Cに加えて圧縮エアAも噴射する。上述した様に図示の実施形態では、固化材C及び圧縮エアAは、固化材Cを圧縮エアAで包囲する態様で、水平方向に噴射される。
【0030】
明確には図示されていないが、
図6、
図7の第1の工程で改良体3を造成してボーリング孔BHからモニタ4Aを抜き出した後、所定時間(例えば5時間~8時間)経過後、
図8~
図10で示す第2の工程が実行される。
図5で示す地盤改良を行う工程を、第1の工程と第2の工程の2段階に分けて実行し、地盤改良の第1の工程完了後、所定時間(5時間~8時間)経過した後に地盤改良の第2の工程を施工するのは、フーチング下面1Aと改良体3とが間隙なく密着した状態となる様に造成するためである。
【0031】
図8で示す第2の工程(地盤改良の第2の工程)では、ボーリング孔BH(
図5)に再びモニタ4Aを挿入し、フーチング下面1Aのやや下方の鉛直方向位置K3(例えば、フーチング下面1Aから0.3m~0.5mの位置)から、フーチング下面1Aよりも鉛直方向寸法Lv(
図1)だけ上方の鉛直方向位置K2までの領域において、固化材を噴射する。地盤改良の第2の工程で固化材を噴射された領域は、地盤改良の第1の工程で造成された改良体3と連続して且つ一体的である。
【0032】
地盤改良の第2の工程では、
図9においては、モニタ4Aからは圧縮エアAを噴射せず、固化材Cのみを噴射しており、その固化材Cは水平方向(一点鎖線で示す)に対して角度ξ(ξ<45°)だけ上方に向けて噴射されている。
図15で示す様に、フーチング51の下面51Aは例えば砕石Nで構成されており、多数の凹凸が形成され、当該凹凸に空気が溜まり易い。固化材Cを角度ξだけ斜め上方に噴射することにより、フーチング下面の凹凸に溜まった空気を押し出し、排除することが出来、以て、改良体内部に空気が存在する(いわゆる「巣」が出来る)ことを防止している。
【0033】
フーチングの下面の凹凸に溜まった空気を改良体3内から確実に排除するため、地盤改良の第2の工程では、
図10で示す様にモニタ4A(ロッド4)は、第1の工程において往復動する角度θ(
図5参照)よりも僅かに大きな角度θ1だけ往復動している。地盤改良の第2の工程において角度θ1(角度θ)で往復動(揺動)することにより、改良体3の外郭(
図10の実線)は、地盤改良の第1の工程において造成された改良体3の外殻(破線で示す)に比較して、
図10のハッチングで示す箇所だけ大きくなる。当該ハッチングで示す箇所から、第2の工程で斜め上方に噴射した固化材により押し出された空気(フーチング下面の凹凸に溜まっていた空気)を地上側に抜け出させることが出来る。
【0034】
上述した構造物基礎補強方法の施工手順の一例を、主として
図11を参照して説明する。
図11において、ステップS1では、構造物基礎10(フーチング1、杭2)の抵抗力Fが地震時に想定される水平力Hより大きくなる様に、すなわち、「地震時水平力H<抵抗力F/S(Sは安全率)」(式(1)参照)となるように、造成すべき改良体3の仕様を決定する。
改良体3の仕様の決定に関して、予め決定している構造物基礎10の仕様、基礎データ(杭2の直径D、許容せん断応力Zp、フーチング1の一辺の長さB、係数k1、k2、改良体の設計基準強度Fc)に基づき、想定される地震時水平力Hよりも大きな抵抗力(F/S)を有する改良体R3の面積を演算し、さらに改良体R3の領域の鉛直方向寸法Lv、水平方向寸法Lhを演算する。この様に改良体3の仕様を決定すると、ボーリング孔BHの削孔位置が確定する。
【0035】
明確には図示されていないが、ステップS1では、補強対象である構造物基礎10における杭2の状況として、例えば破損杭を補強するのか、或いは、健常杭を予め補強するのかについても考慮する。
破損杭の場合、式(3)で示す杭2のせん断抵抗力F1(=Zp・πD
2/4)は見込めないことを改良体3の仕様決定に反映させる必要がある。例えば、健常杭の補強の場合に比較して、せん断抵抗力F1が存在しない分だけせん断抵抗力F3を大きして、地震時水平力Hが作用しても十分に抵抗出来る様に設定する。
また、改良体3がフーチング1の下面1Aよりも上方(地上側)に存在する場合(改良体3がフーチング1を包囲している領域がある場合)であるのか、或いは、
図3で示す様に改良体3がフーチング1の下面1Aよりも上方に存在しない場合であるのかについても考慮する。
改良体3がフーチング1の下面1Aよりも上方(地上側)に存在しない場合(改良体3がフーチング1を包囲している領域がない場合)、式(5)で示すせん断抵抗力F3(=k2・Fc・(Bi
2-B
2)/4・tanφ)はゼロとなるので、そのことを改良体3の仕様決定に反映させる必要がある。
【0036】
地震時水平力Hよりも大きな抵抗力(F/S)を有する改良体R3の面積の演算について、以下に例示する。
式(1)及び式(2)から
H≦{F1+F2+F3}/S ・・・式(8)
式(3)において、直径Dの杭2の断面積を符号Adで示し、
式(4)においてフーチング1と改良体3が付着している面積を符号A1fで示し、
式(5)において改良体3がフーチング1を包囲している領域であって、せん断抵抗力F3により地震時水平力Hに抗している面積を符号A13で示すと、式(8)は
S・H≦Zp・Ad+k1・Fc・A1f+k2・Fc・A13 ・・・式(9)
式(9)から面積A13は
A13≧(S・H-Zp・Ad-k1・Fc・A1f)/(k2・Fc) ・・・式(10)
式(10)により改良体の面積A13を演算すれば良い。
例えば、改良体3とフーチング1が共に水平断面が正方形であり、1辺の長さをそれぞれBi、Bの場合において、式(10)を正方形の改良体の1辺の長さBiについて解けば、長さBiは正なので(≧0)、
Bi≧{4(S・H-Zp・Ad-k1・Fc・A1f)/(k2・Fc)+B2}1/2・・・式(11)
となる。
改良体3の中心は構造物基礎10の中心と一致すること、正方形断面を有する改良体3の一辺の長さBiが式(11)により求まることから、ボーリング孔BHの位置を定めることが出来る。
【0037】
ここで、フーチング1を有する杭2の周辺に各種制限が存在して改良体3に必要な面積を確保することが出来ない場合や、ボーリング孔BHを設計位置で削孔することが困難な場合には、設計基準強度Fc(N/mm2)が大きくなるよう固化材配合を適宜変更するなど、式(1)における「H≦F/S」という条件を充足させることが出来る。
式(9)を設計基準強度Fcについて解けば、
Fc≧(S・H-Zp・Ad)/(k1・A1f+k2・A13) ・・・式(12)
施工条件その他によりボーリング孔BHを位置や改良体3の面積が制限される場合には、不等式(12)を用いて設計基準強度Fcを決定すれば良い。そして、決定された設計基準強度Fcに対応する様に、固化材配合を適宜変更する。
また例えば、図示はしないが、前記不等式(12)を満たすよう、改良体3の鉛直方向下方の領域における固化材を低強度配合として、杭2頭部に近い鉛直方向上方の領域(改良体3の上端側の領域)における固化材を高強度配合とすることも出来る。
【0038】
ステップS2では、モニタ4Aを備えたロッド4を挿入するボーリング孔BHを、所定深度まで削孔する。ボーリング孔BHを削孔する位置については、ステップS1で確定した改良体3の仕様に基づいて決定される。上述した様に、ボーリング孔BHは、フーチング1及び杭2の中心O(
図4参照)に対して相互に点対称であって、造成されるべき一辺Biの正方形断面の改良体3の2箇所の角部(頂部)に削孔される。ボーリング孔BH削孔後、ステップS3に進む。
ステップS3では、地盤改良の第1の工程を実行する(
図6、
図7)。モニタ4Aを備えたロッド4をボーリング孔BH内に挿入し、モニタ4Aから固化材C及び圧縮エアAを水平方向へ噴射しつつ、モニタ4Aを角度θだけ往復回転或いは揺動する。そして所定深度位置K1からフーチング下面1Aよりも地上側(上方)の鉛直方向位置K2(例えば、フーチング下面1Aから0.3m~0.5mの位置)までモニタ4Aを引き上げて、地盤改良し、改良体3を造成する。改良体3を造成した後、ロッド4をボーリング孔BHから引き出し、ステップS4に進む。
【0039】
ステップS4では、地盤改良の第1の工程の施工後、所定時間(例えば5時間~8時間)が経過したか否かを判断する。
地盤改良の第1の工程の施工後に所定時間が経過したならば(ステップS4が「Yes」)、ステップS5に進み、所定時間が経過していない場合(ステップS4が「No」)、ステップS4に戻りステップS4が「No」のループを繰り返す。
ステップS5(地盤改良の第1の工程の施工後に所定時間が経過した場合)では、地盤改良の第2の工程を実行する(
図8~
図10)。当該第2の工程では、モニタ4Aを備えたロッド4を再びボーリング孔BH内に挿入し、圧縮エアAは噴射せず、固化材Cのみを斜め上方(角度ξ)へ噴射しつつ、モニタ4Aを角度θ1(>θ)だけ往復回転或いは揺動する。そして、フーチング下面1A下方の鉛直方向位置K3(例えば、フーチング下面1Aから0.3m~0.5mの位置)から、フーチング下面1Aより鉛直方向寸法Lvだけ上方の鉛直方向位置K2までモニタ4Aを引き上げる。
【0040】
図1~
図11に示す本発明の第1実施形態によれば、補強するべき構造物基礎10(フーチング1を有する杭基礎2)の外周の所定位置からボーリング孔BHを所定深度まで削孔し、ボーリング孔BH内に挿入したモニタ4Aから固化材C及び圧縮エアA(或いは固化材Cのみ)を噴射して改良体3を造成する。ここで、ボーリング孔BHの位置は前記式(1)~(7)に基づいて演算することが出来るので、改良体3を造成することにより得られる抵抗力F(F/S)が想定される地震時水平力Hよりも大きくなる様に設定することが出来る。そして、想定される地震時水平力Hよりも抵抗力Fが確実に大きくなるので、構造物基礎10の耐震強度を確実に向上させることが出来る。
ここで、改良体(3)は構造物基礎(10)の下面(底面:フーチング1の底面)を含めて当該下面よりも地上側の領域まで延在して造成されており、従来技術に比較して「改良体(3)が基礎(フーチング1)を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3」の分だけ抵抗力(F)は大きくなる。
杭2が既に破損している場合には「杭2のせん断抵抗力F1」は非常に小さくなる(或いはゼロとなる)が、その分だけ「改良体3がフーチング1を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3」を大きくすることにより、地震時水平力Hに対して十分に抵抗することが出来る。そのため、第1実施形態によれば、健常な杭2を有する構造物基礎の耐震補強のみならず、既に破損した杭2となってしまっている構造物基礎の耐震化をも実行することが出来る。
【0041】
また図示の第1実施形態では、改良体3を造成するに際して、改良体3を造成して(地盤改良の第1の工程)、その後、所定時間(例えば5時間~8時間)経過後に地盤改良の第2の工程を施工している。
改良体3の造成を2段階で行うことで補強するべき構造物基礎10(フーチング1、杭2)の強度をさらに向上することが出来る。
【0042】
さらに図示の第1実施形態において、改良体3を造成する際、地盤改良の第1の工程には固化材C及び圧縮エアAの噴流を水平方向へ噴射し、地盤改良の第2の工程には固化材Cのみを水平方向よりも斜め上方へ噴射(水平方向に対して45°以下の傾斜角度で噴射)している。
そのため、地盤改良の第2の工程を施工する際に、固化材Cをフーチング1の下面1Aに衝突させてフーチング下面1Aの凹凸に溜まった空気を押し出し、排除することが可能である。それにより、改良体3内部に空気が存在する(いわゆる「巣」が出来る)ことを防止すると共に、補強するべき構造物基礎10(フーチング1、杭2)と改良体3との密着性を向上させることが出来る。
【0043】
それに加えて図示の第1実施形態において、地盤改良の第2の工程を施工する際に、固化材Cを往復動する角度θ1を、改良体3を造成(地盤改良の第1の工程)で往復動する角度θよりも僅かに大きくしているので、角度θ1が角度θよりも僅かに大きくなったことに相当する地盤改良領域で施工中に、フーチング1の下面1Aの凹凸に溜まった空気が確実に排除される。
斜め上方に噴射した固化材Cにより押し出された空気(フーチング下面1Aの凹凸に溜まっていた空気)が地上側に抜け出ることにより、補強するべき構造物基礎10(フーチング1、杭2)と改良体3とをより強固に密着させることが可能となる。
【0044】
図示の第1実施形態において、ボーリング孔BHの削孔位置を構造物基礎10(フーチング1、杭2)の中心に対して点対称に配置したので、2つの断面形状扇形の改良体3における円弧部分近傍の領域のみが重複して固化材Cが噴射されるので、当該重複する領域が小さくなり、その分だけ固化材使用量を減少することが出来る。そして改良体3を造成する際に噴射される固化材Cが杭2の反対側に先行して造成された改良体3に直接衝突する領域が少なくなるので、先行して造成された改良体3が大きく攪乱することを防止できる。
【0045】
次に、
図12を参照して本発明の第2実施形態を説明する。
図1~
図11の第1実施形態では、フーチング1に杭基礎2は1本のみ設けられているが、
図12の第2実施形態では杭基礎は2本造成されている。そのため、改良体造成のためのボーリング孔の位置や改良体の平面形状等が第1実施形態とは異なっている。
図12において、構造物基礎20として断面形状長方形のフーチング21に接続された2本の杭22が地盤に埋設されており、フーチング21の長方形断面及び杭22を包囲する様に、扇形或いは半円形の改良体23、24、25が造成される。改良体23、24、25を造成する際のボーリング孔は、それぞれ符号BH23、BH24、BH25で示されている。
【0046】
図示の第2実施形態においても、3本の改良体23、24、25を造成する際は、第1実施形態と同様、第1の工程と第2の工程の2段階に分けて行ない、改良体を造成後、所定時間(例えば5時間~8時間)経過後、地盤改良の第2の工程を施工する。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様、杭22のせん断抵抗力F1、フーチング21と改良体23、24、25の付着力F2、改良体23、24、25がフーチング21を包囲している領域におけるせん断抵抗力F3が、地震時水平力H(
図1、
図2)に対する抵抗力Fとして作用し、構造物基礎20の耐震強度を向上させることが出来る。
図12の第2実施形態のその他の構成及び作用効果は、
図1~
図11の第1実施形態と同様である。
【0047】
図13を参照して本発明の第3実施形態を説明する。
図13の第2実施形態では杭基礎は3本造成されている。そのため、改良体造成のためのボーリング孔の位置や改良体の平面形状等が第1実施形態、第2実施形態とは異なっている。
図13において、構造物基礎30として正方形断面の3本のフーチング31のそれぞれに接続された3本の杭32が直列して地盤に埋設されており、3本のフーチング31及び杭32の長方形断面を包囲する様に、扇形或いは半円形の改良体33、34、35、36が造成される。
改良体33、34、35、36を造成する際のボーリング孔が、それぞれ符号BH33、BH34、BH35、BH36で示されている。
図13の第3実施形態のその他の構成及び作用効果は、
図1~
図11の第1実施形態、
図12の第2実施形態と同様である。
【0048】
図14を参照して本発明の第4実施形態を説明する。
図14の第4実施形態では杭基礎は4本造成されている。そのため、改良体造成のためのボーリング孔の位置や改良体の平面形状等が第1実施形態~第3実施形態とは異なっている。
図14において、構造物基礎40として概略六角形状の平面形状を有するフーチング41には4本の杭42が接続されて地盤に埋設されており、フーチング41の六角形断面(及び杭42)を包囲する様に、半円形状の改良体43、44、45が造成されている。
改良体43、44、45を造成する際のボーリング孔が、それぞれ符号BH43、BH44、BH45で示されている。
図14の第4実施形態のその他の構成及び作用効果は、
図1~
図11の第1実施形態、
図12の第2実施形態、
図13の第3実施形態と同様である。
【0049】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0050】
1・・・フーチング
2・・・杭
3・・・改良体
4・・・ロッド
4A・・・モニタ(噴射装置)
10・・・構造物基礎
A・・・圧縮エア
C・・・固化材
BH・・・ボーリング孔